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明細書 :カーボンナノチューブセンサ及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4825968号 (P4825968)
公開番号 特開2006-329802 (P2006-329802A)
登録日 平成23年9月22日(2011.9.22)
発行日 平成23年11月30日(2011.11.30)
公開日 平成18年12月7日(2006.12.7)
発明の名称または考案の名称 カーボンナノチューブセンサ及びその製造方法
国際特許分類 G01N  27/12        (2006.01)
G01N  27/04        (2006.01)
G01N  27/447       (2006.01)
FI G01N 27/12 C
G01N 27/12 B
G01N 27/04 E
G01N 27/26 331Z
請求項の数または発明の数 10
全頁数 18
出願番号 特願2005-153365 (P2005-153365)
出願日 平成17年5月26日(2005.5.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2005年1月28日 社団法人電気学会主催の「放電 誘電・絶縁材料 高電圧 合同研究会」において文書をもって発表
特許法第30条第1項適用 2005年3月29日 社団法人応用物理学会発行の「2005年(平成17年)春季 第52回 応用物理学関係連合講演会講演予稿集 第1分冊」に発表
審査請求日 平成20年5月23日(2008.5.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
発明者または考案者 【氏名】末廣 純也
個別代理人の代理人 【識別番号】100103621、【弁理士】、【氏名又は名称】林 靖
審査官 【審査官】大竹 秀紀
参考文献・文献 特開2004-095850(JP,A)
特開2004-111870(JP,A)
特開2004-282039(JP,A)
特表2004-515782(JP,A)
特表2004-534662(JP,A)
特開2003-000224(JP,A)
特開2003-227808(JP,A)
特開2003-332266(JP,A)
特表2003-517604(JP,A)
特開2001-050916(JP,A)
特開昭56-070448(JP,A)
Junya Suehiro(外2名),Detection of partial discharge in SF6 gas using a carbon nanotube-based gas sensor,Sensors and Actuators B,2005年 3月28日,Vol. B105, Issue 2,p. 164-169
調査した分野 G01N 27/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
半導体カーボンナノチューブ材料が一対のアルミニウム電極と架橋端で電気的に接合され、周囲のNOまたはSF分解ガス何れかの測定ガスの吸着に基づく前記アルミニウム電極間の抵抗変化を測定してガス濃度を検出するカーボンナノチューブセンサであって、前記半導体カーボンナノチューブ材料と前記アルミニウム電極間には、ショットキー接合部が形成されていることを特徴とするカーボンナノチューブセンサ。
【請求項2】
前記測定ガスが、前記ショットキー接合部への吸着により前記アルミニウム電極との間で該アルミニウムの性質に基づく電荷移動を誘起し、これによってショットキー障壁の高さを変化させ、所定の逆バイアスの抵抗を生じさせることを特徴とする請求項1記載のカーボンナノチューブセンサ。
【請求項3】
前記ショットキー障壁の高さが前記測定ガス濃度に依存して変化することを特徴とする請求項2記載のカーボンナノチューブセンサ。
【請求項4】
前記半導体カーボンナノチューブ材料がp型半導体であって、前記測定ガスを含んだガス雰囲気下においてアルミニウムの仕事関数より大きな仕事関数を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のカーボンナノチューブセンサ。
【請求項5】
前記半導体カーボンナノチューブ材料がn型半導体であって、前記測定ガスを含んだガス雰囲気下においてアルミニウムの仕事関数より小さな仕事関数を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のカーボンナノチューブセンサ。
【請求項6】
前記半導体カーボンナノチューブ材料が前記アルミニウム電極の間に架橋された集積体から構成されることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載されたカーボンナノチューブセンサ。
【請求項7】
前記アルミニウム電極が交流電圧印加時に不平等電界を発生するための電界集中用縁部を備え、前記集積体が誘電泳動によって形成されたことを特徴とする請求項記載のカーボンナノチューブセンサ。
【請求項8】
前記アルミニウム電極が絶縁基板上に設けられた薄膜電極であって、前記電界集中用縁部が該電極のそれぞれに形成された突出部のエッジであることを特徴とする請求項7記載のカーボンナノチューブセンサ。
【請求項9】
p型半導体カーボンナノチューブ材料とアルミニウムの仕事関数をNOまたはSF分解ガス何れかの測定ガス雰囲気下で測定し、前記p型半導体カーボンナノチューブ材料の仕事関数がアルミニウムの仕事関数より大きいものを選び、アルミニウムを一対の電極として前記p型半導体カーボンナノチューブ材料を架橋することを特徴とするカーボンナノチューブセンサの製造方法。
【請求項10】
n型半導体カーボンナノチューブ材料とアルミニウムの仕事関数をNOまたはSF分解ガス何れかの測定ガス雰囲気下で測定し、前記n型半導体カーボンナノチューブ材料の仕事関数がアルミニウムの仕事関数より小さいものを選び、アルミニウムを一対の電極として前記n型半導体カーボンナノチューブ材料を架橋することを特徴とするカーボンナノチューブセンサの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、安価で高速に応答し、検出精度が高く、製造が容易な測定ガスを検出するカーボンナノチューブセンサ(以下、CNTセンサ)と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンナノチューブ(以下、CNT)を使ってガスを検出するガスセンサ、CNTセンサが将来性を秘めている点で注目されている。このCNTセンサは、ガス分子が半導体CNTに吸着すると両者間で電荷移動を起こし、半導体CNTの電気的特性(コンダクタンス、キャパシタンス)が変化するため、この現象を利用してガス検知するものである。しかし、いまのところ実際にセンサの対象として実用性があるガスは限られており、応答の速さについても十分ではない。
【0003】
このようなCNTセンサの構造については、磁場をかけた雰囲気下で一対の電極間にCVD法によってセンサ電極上で多数の半導体CNTを成長させたCNTセンサや、予め生成した多数の半導体CNTを溶媒に分散して電極間に塗布、乾燥させてランダムに集積したCNTセンサ等が提案されている(特許文献1参照)。しかし、両センサとも、ナノサイズの半導体CNTを自在に操れないために、直接電極で成長させ、または塗布を行うものである。
【0004】
本発明者は、従来から不平等電界を印加してバクテリア等のマイクロサイズの微小物体を分極させ、この分極した微小物体を誘電泳動力で操作してマイクロ電極に捕集するDEPIM(Dielectrophoretic Impedance Measurement Method)法を研究してきたが(特許文献2)、このDEPIM法を使えば、CNTのマイクロ電極間への集積が、インピーダンスをモニタリング装置で計測しながら簡単且つ高精度で実施できる上に、このモニタリングで用いた同一の装置を使用して、作製したCNTセンサを使ってそのままガス検出が可能になることが分った。
【0005】
そこで、本発明者は、このDEPIM法によって作製したCNTセンサを、今まで比較的信頼性が乏しく、十分な解明もなされていない高電圧電気機器、例えばガス絶縁開閉装置(Gas Insulated Switchgear、以下GIS)における絶縁ガス、六フッ化硫黄(SF)ガスの分解ガス検知のためのガスセンサとして使うことを提案し、従来のガスチェッカーでは計測できないppbレベルで分解ガスを測定することに成功した(特願2004-21531)。
【0006】
しかし、CNTセンサの研究はいわば緒に付いたばかりである。例えば、金属と半導体の接合部にはポテンシャル障壁が形成されることは従来から知られているが、最近になって、半導体CNTのポテンシャル障壁に周囲の酸素が吸着して影響することが報告された(非特許文献1参照)。しかしながら、現在のところこれ以上の詳細な報告はなされていない。いわば、CNTセンサはマクロ的な研究は開始されたが、CNTセンサの実用化のための課題は未解決のままである。
【0007】
ところで、上記のポテンシャル障壁の高低には金属の仕事関数(Work function)が関係する。金属の仕事関数は金属中のフェルミ準位にある電子を表面から真空中に取り出すのに要するエネルギーの最小値であるが、表面に原子、分子が吸着して電荷をもつと電気双極子が誘起され、表面から電子を真空中に取り出すときのポテンシャル障壁の高さが変化し、仕事関数が変化するためだと考えられている(非特許文献2参照)。これが非特許文献1の報告の背景にあると考えられる。
【0008】
そして例えば、金属表面に電気陰性度の大きい上述の酸素、ハロゲン原子等が吸着すると、これらの吸着子はマイナスに帯電し、放出される電子は表面で反発力を受けるため、仕事関数は増大する。また逆に、イオン化ポテンシャルが小さいアルカリ金属、アルカリ土類金属原子が吸着すると吸着原子はプラスに帯電し、ポテンシャル障壁は低くなり、仕事関数は減少する、と考えられる。
【0009】
なお、仕事関数の測定が必要になる場合、従来から電子線や紫外線、イオンビームを使って測定されてきた(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
しかし、CNTの仕事関数がどれくらいの値になるかについては、CNTは材質のコントロールが難しく不確定要素が多いため、おおむね4eV~5eVといわれている。ただし、他の異種物質を挿入などしてコントロールのレベルを上げることは可能である。例えば、Csがインターカレートされたときの単一壁カーボンナノチューブ管束の仕事関数は4.6eV~4.9eVとなる(例えば特許文献4参照)。
【0011】

【特許文献1】特開2003-227808号公報
【特許文献2】特開2003-224号公報
【特許文献3】特開2001-50916号公報
【特許文献4】特開2004-534662号公報
【非特許文献1】V.Derycke,R.Martel,J.Appenzeller,Ph.Avouris、“Controlling doping and carrier injection in carbon nanotube tarnsister”,Appl.Phys.Lett.、80巻、2002年、p.2773-p.2775
【非特許文献2】村田好正、八木克道、服部建雄共著、アドバンスト エレクトロニクス シリーズI-19「固体表面と界面の物性」、培風館、1999年3月20日、p.80
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上説明したように、特許文献1のようにCNTセンサはマクロ的な研究は開始されたが、CNTセンサ実用化上の課題は未解決のままである。この点、本発明者の提案した特許文献2のDEPIM法によるCNTセンサは飛躍的にガスセンサの可能性を拓いたが、CNTセンサの更なる高速応答、高精度化といった問題は未解決のままである。そして、このようなCNTセンサに対する実用的課題が解決されたとき、CNTセンサはガスセンサとして不動の位置を占めるものと考えられる。
【0013】
そこで本発明は、測定ガスに対して、高感度で高速に応答し、安価で、製造が容易なカーボンナノチューブセンサを提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、測定ガスに対して、高感度で高速に応答し、安価で、製造が容易なカーボンナノチューブセンサを製造する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、半導体カーボンナノチューブ材料が一対のアルミニウム電極と架橋端で電気的に接合され、周囲のNOまたはSF分解ガス何れかの測定ガスの吸着に基づくアルミニウム電極間の抵抗変化を測定してガス濃度を検出するカーボンナノチューブセンサであって、半導体カーボンナノチューブ材料とアルミニウム電極間には、ショットキー接合部が形成されていることを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のカーボンナノチューブセンサによれば、測定ガスに対して、高感度で高速に応答でき、安価で製造が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の第1の形態は、半導体カーボンナノチューブ材料が一対のアルミニウム電極と架橋端で電気的に接合され、周囲のNOまたはSF分解ガス何れかの測定ガスの吸着に基づくアルミニウム電極間の抵抗変化を測定してガス濃度を検出するカーボンナノチューブセンサであって、半導体カーボンナノチューブ材料とアルミニウム電極間には、ショットキー接合部が形成されているカーボンナノチューブセンサであり、半導体カーボンナノチューブ材料とアルミニウム電極間の接合部がショットキー接合部となっているため、ガス測定を開始したとき急速な応答が得られ、短時間で測定することができ、感度も高くなる。アルミニウム電極はクロム電極の100倍以上の感度と応答速度を示し、排気ガス等で問題となるNOやGISで発生するSF分解ガス安価なガスセンサにより短時間で、正確に測定できる。
【0018】
本発明の第2の形態は、第1の形態に従属する形態であって、測定ガスが、ショットキー接合部への吸着によりアルミニウム電極との間で該アルミニウムの性質に基づく電荷移動を誘起し、これによってショットキー障壁の高さを変化させ、所定の逆バイアスの抵抗を生じさせるカーボンナノチューブセンサであり、測定ガスとアルミニウムの性質、例えば仕事関数、酸化皮膜等により、ショットキー障壁の高さを変化させることができ、所定の逆バイアスの抵抗を生じさせて急速な応答が行え、短時間で測定できる。
【0019】
本発明の第3の形態は、第2の形態に従属する形態であって、ショットキー障壁の高さが測定ガス濃度に依存して変化するカーボンナノチューブセンサであり、ショットキー障壁の高さが測定ガス濃度に依存して変化するため、測定が容易となり、精度が高くなる。
【0020】
本発明の第4の形態は、第1~第3の形態に従属する形態であって、半導体カーボンナノチューブ材料がp型半導体であって、測定ガスを含んだガス雰囲気下においてアルミニウムの仕事関数より大きな仕事関数を有するカーボンナノチューブセンサであり、p型半導体とアルミニウム電極との組み合わせにおいて、ショットキー障壁を形成し、ガス測定を開始したとき急速な応答が行え、短時間で測定できる。
【0021】
本発明の第5の形態は、第1~第3の形態に従属する形態であって、半導体カーボンナノチューブ材料がn型半導体であって、測定ガスを含んだガス雰囲気下においてアルミニウムの仕事関数より小さな仕事関数を有するカーボンナノチューブセンサであり、n型半導体とアルミニウム電極との組み合わせにおいて、ショットキー障壁を形成し、ガス測定を開始したとき急速な応答が行え、短時間で測定できる。
【0023】
本発明の第の形態は、第1~第の形態に従属する形態であって、半導体カーボンナノチューブ材料がアルミニウム電極の間に架橋された集積体から構成されるカーボンナノチューブセンサであり、カーボンナノ材料の架橋構造によって高速に応答し、検出精度が高いものとなる。常温で使用でき、高感度で、応答が速く、製造が容易で安価であり、簡単に電気的出力を得ることができ、繰り返し利用することができる。
【0024】
本発明の第7の形態は、第6の形態に従属する形態であって、アルミニウム電極が交流電圧印加時に不平等電界を発生するための電界集中用縁部を備え、集積体が誘電泳動によって形成されたカーボンナノチューブセンサであり、電極に電界集中用縁部を設けて電気力学的に誘電泳動で操作するので安価に製造でき、カーボンナノ材料は電界方向に向くのが基本で、この架橋構造によって高速に応答し、検出精度が高いものとなる。
【0025】
本発明の第の形態は、第の形態に従属する形態であって、アルミニウム電極が絶縁基板上に設けられた薄膜電極であって、電界集中用縁部が該電極のそれぞれに形成された突出部のエッジであるカーボンナノチューブセンサであり、小型、薄型の電極とすることができ、製造が容易である。
【0026】
本発明の第9の形態は、p型半導体カーボンナノチューブ材料とアルミニウムの仕事関数をNOまたはSF分解ガス何れかの測定ガス雰囲気下で測定し、p型半導体カーボンナノチューブ材料の仕事関数がアルミニウムの仕事関数より大きいものを選び、アルミニウムを一対の電極としてp型半導体カーボンナノチューブ材料を架橋するカーボンナノチューブセンサの製造方法であり、NOまたはSF分解ガス何れかの測定ガスとアルミニウム、p型半導体カーボンナノチューブ材料の特性によりショットキー障壁の高さを変化させることができ、急速な応答が行え、短時間で測定できる。
【0027】
本発明の第10の形態は、n型半導体カーボンナノチューブ材料とアルミニウムの仕事関数をNOまたはSF分解ガス何れかの測定ガス雰囲気下で測定し、n型半導体カーボンナノチューブ材料の仕事関数がアルミニウムの仕事関数より小さいものを選び、アルミニウムを一対の電極としてn型半導体カーボンナノチューブ材料を架橋するカーボンナノチューブセンサの製造方法であり、NOまたはSF分解ガス何れかの測定ガスとアルミニウム、n型半導体カーボンナノチューブ材料の特性によりショットキー障壁の高さを変化させることができ、急速な応答が行え、短時間で測定できる。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
以下、本発明の実施例1のCNTセンサとガス検出装置、CNTセンサの製造方法について説明をする。なお、本明細書においては、ナノ、ミクロンサイズの長尺のカーボンナノチューブがセンサ材料として好適なため全体としてCNTというが、このCNTにはカーボンナノホーン、カーボンナノオニオン、カーボンナノファイバ等で長尺の構成をもつものを含むものである。また実施例1においては、測定ガスとしてNOガス、金属電極はアルミニウム、CNT材料は単層ナノチューブ(SWCNT)の場合を説明するが、これだけに限られるものではない。
【0029】
図1(a)は本発明の実施例1におけるカーボンナノチューブセンサの説明図、図1(b)は(a)の要部説明図、図2(a)は本発明における誘電泳動によって電極間に集積されたカーボンナノチューブ材料のSEM写真、図2(b)は(a)の電界分布のシミュレーション図、図3は本発明の実施例1におけるカーボンナノチューブセンサを装着してガス検出するガス測定装置の構成図である。
【0030】
図1(a)(b)において、1はNO,NOガス等のNOガス、SF分解ガス等のを検出するためのチップ状のCNTセンサ、1a,1bはキャッスルウォール型電極、櫛歯型電極等の形状を備えたアルミニウム等の一対の電極、2は単層ナノチューブ(SWCNT)等からなる集積体の半導体カーボンナノチューブ材料(以下、CNT材料)、3a,3bは誘電泳動を実施可能にする不平等電界を発生する屈曲した縁部(以下、エッジ)等の電界集中用縁部、4は絶縁基板、5a,5bは電極1a,1bの接続端子である。CNT材料2が実施例1における検出素子である。6はCNT材料2の架橋端が電極1a,1bと電気的に接合される接合部である。実施例1の接合部6はショットキー接合部となっている。
【0031】
さて本発明には、測定ガス、CNT材料2、金属電極の3要素間に密接な関係があるので、最初にこれを簡単に説明する。測定ガスと金属電極の関係は、前者が後者に吸着して電荷移動を誘起し、接合部における金属の仕事関数φを変化させることができ、これによってショットキー障壁高さφを変化させ、所定逆バイアスの抵抗を生じさせることが可能な関係を有するものであればよい。また、CNT材料2と測定ガスの関係は、前者が後者と接触すると、センサ(検出素子)本体としてガス濃度に依存して抵抗変化(あるいはインピーダンス変化)を生じると共に、ショットキー障壁高さφのコントロールが容易な半導体CNT、言い換えればS値(=∂φ/∂φ)が1にできるだけ近い半導体CNTであればよい。このように本発明の実施例1のCNTセンサは、測定ガスと、電極1a,1bの金属の仕事関数、またCNT材料2の仕事関数など複数の要素の相互的関係から定まるものである。
【0032】
最初に、実施例1におけるCNT材料2の説明をする。上述したようにCNT材料2は単層ナノチューブ(SWCNT)や多層ナノチューブ(MWCNT)等のCNTである。CNTは、炭素原子が円筒状等の様々な長尺の形状のものを基本とするが、閉じたラグビーの球のような長尺の形状のものを含んだ総称であり、ナノメートル(10-9m)スケールの大きさ(直径)の構造を成した物質を意味する。なお、「ナノ」とはあくまで材料の構成単位に着目した際の呼称であり、これらが複数凝集するなどして集積体となってミクロンスケール(10-6m)になったとしても、同じくCNTという。また、主たる構成元素は炭素であるが、特性を制御する目的で炭素以外の元素が挿入されたものがCNT材料に含まれるのは当然である。
【0033】
誘電泳動(DEPIM法)でCNT材料2を電極1a,1bに集積する場合、CNT材料2は一旦エタノール等の溶媒に混合し、この懸濁液中の電極1a,1bへ交流電圧を印加し、これによって発生する不平等電界の中で電界強度が最も大きくなる電界集中用縁部3a,3b(図1(b)、図2(b)参照)間に誘電泳動によって集積する。この誘電泳動によるこの製造方法については後で詳述する。集積後に溶媒が蒸散され、架橋された状態で絶縁基板4上に吸着される(図2(a)の写真参照)。
【0034】
実施例1で使用するCNT材料2はp型半導体としての性質を有している。平均直径1nm(束として直径15nm)、長さ1μm~4μm、純度50%でアーク放電法によって生成されたものである。半導体の特性を示すCNT材料2には、キャリアが正孔であるp型と電子であるn型が存在することが知られている。どちらの型にするかは、CNT材料の構造や他元素のドープにより制御することができる。例えばKやRb等をドーピングすることによりn型半導体にすることが可能である。CNT材料2はCVD法、熱分解法など、どのような作製方法で作製したものでもよい。また、これらの方法によって電極1a,1b上に直接CNT材料2を成長させることができる場合は、誘電泳動による集積化は必ずしも必要ではない。CNTセンサ1は、このようなCNT材料2の集積体の表面にNOガス等の測定ガスが吸着することにより電子の授受を行い、電極1a,1b間の抵抗変化として現れることを利用するものである。
【0035】
次に、電極1a,1bについて説明すると、図1に示すキャッスルウォール型電極は、電極1a,1bの互いに対向する側に1ピッチ(例えば50μm~100μm)おきに矩形の突出部が多数形成されたものであり、互いに1ピッチずらして例えば5μm~10μm離して配設されたものである。電極1a,1bの突出部のエッジ部分が電界集中用縁部3a,3bであり、この電界集中用縁部3a,3b間にとくに電界が集中する(図2(b)参照)。矩形に限らず、櫛歯状、鋸歯状のものなど多くの形状が利用できる。なお、櫛歯状の櫛歯型電極は、櫛のように歯(例えば30μm~100μm幅)を形成された一対の電極が溝に入れ子状に挿入、組み合わされ、狭いギャップ(例えば5μm~10μm幅)で対向した電極であり、主として厚さ方向のエッジ間の溝に不平等電界が形成され、これによってCNT材料2が多数集積されるものである。
【0036】
実施例1の電極1a,1bはアルミニウムの薄膜電極とし、ガラス、プラスチック、酸化シリコンなどの絶縁基板4にメッキ、あるいは蒸着、スパッタリング等で成膜し、フォトリソグラフィー等でエッチングして形成する。薄膜の厚さは50nm~200nm程度のものが望ましい。
【0037】
上述したことから分かるように理論的には電極1a,1bの材質は、アルミニウムに限られない。測定ガス、例えばNOが吸着してショットキー接合部で仕事関数φが変化するものであればよく、合わせてp型のCNT材料2の場合、仕事関数φが測定ガス雰囲気下でφ<φを満たすものが選ばれればよい。また、電極1a,1bの材質は誘電泳動(DEPIM法)を利用する場合は、交流電圧を印加したとき電気分解が生じないようにイオン化傾向の小さい金属が望ましい。しかし、電極1a,1bの材質としてはアルミニウムが好適である。

【0038】
続いて、実施例1のCNTセンサと、その検出原理について説明する。図4(a)は本発明の実施例1におけるCNTセンサの金属とカーボンナノチューブの仕事関数の説明図、図4(b)は(a)のCNTセンサの等価回路の要部説明図、図5(a)は本発明の実施例1におけるCNTセンサの金属とカーボンナノチューブの接触前のショットキー障壁の説明図、図5(b)は(a)のCNTセンサの金属とカーボンナノチューブの接触後のショットキー障壁の説明図、図6は本発明の実施例1におけるCNTセンサのNOへの応答を示す分解説明図である。
【0039】
実施例1のCNT材料2はp型半導体であり、図4(a)の表に示すような金属の中でも、仕事関数φが本来的に小さい金属(アルミニウム)が選ばれ、またCNT材料2の仕事関数φもφより大きくなるように選ばれているため、半導体のCNT材料2の集積体と金属の電極1a,1b間には、整流作用を有するショットキー接合部が簡単に形成される。なお、電極がアルミニウムの場合、通常のCNTであればφ<φを満たしている。図4(b)のCNTセンサの等価回路に示すように、このショットキー接合部の抵抗をRj1、Rj2、CNT材料2の抵抗をRNTとすると、CNTセンサの等価回路におけるCNTセンサ1の抵抗RはR=Rj1+RNT+Rj2と表すことができる。
【0040】
電極1a,1bとCNT材料2の間にショットキー接合部が形成される条件、すなわちφ<φが満たされているとすると、等価回路においては必ずRj1,Rj2のいずれ一方が逆バイアス、他方が順バイアスの抵抗となる。このうち仮にRj1を逆バイアス、Rj2を順バイアスとすると、Rj2≪Rj1,RNTとなり、R≒Rj1+RNTと表すことができる。このRj1が本発明の応答速度を上げる要因となる。
【0041】
次に、図5(a)(b)に基づいてCNTセンサのショットキー障壁の説明を行う。図5(a)は金属と半導体であるCNT材料2が接触前の状態を示している。φは金属の仕事関数、φはCNT材料2の仕事関数である。なお、仕事関数は内部の電子を真空中へ放出するのに必要なエネルギーで、真空準位VLとフェルミ準位Eの差で与えられる。CNT材料2の導電帯の底Eから真空準位VLまでのエネルギーは電子親和力χとして表され、価電帯頂上のエネルギーをEとすると、エネルギーギャップEはE=E-Eとなる。また、真空準位VLから価電帯表面の頂上Eとの差がエネルギーEである。
【0042】
CNT材料2側のフェルミ準位が金属側のフェルミ準位より低いので、金属とCNT材料2を接触させると、金属側からCNT材料2側へ電子が移動し、p型半導体の価電子帯の正孔が中和される。そして、CNT材料2表面では電子が残って負に帯電し、金属表面では電子が不足し、正に帯電するようになる。このため図5(b)に示すように、CNT材料2のエネルギー帯は金属側に湾曲して傾き、正孔に対するショットキー障壁が形成される。
【0043】
このとき拡散電位Vは、eV=φ-φで与えられ、金属側からみたときの正孔の拡散に対するショットキー障壁の高さφはE-φとなる。図5(a)から分るようにE=χ+Eであるから、ショットキー障壁の高さφは、φ=χ+E-φで表される。これに対しn型半導体では、電子に対するショットキー障壁の高さはφ=φ-χである。
【0044】
従って、このショットキー障壁の高さφは、測定ガス、例えばNOが接合部6の金属に吸着してNOから電子が移動し仕事関数φが変化すると、この影響を受け変化するものである。このとき、変化の程度はガス濃度に依存するとともに、MOS構造のダイオードなどと同様、金属の表面に形成されている酸化皮膜の存在、性質等の影響を受ける。例えば、Alの仕事関数は4.28eVであり、Tiの仕事関数は4.33eVでかなり接近した値を有しているが、Tiは酸化チタンの皮膜等のためか、NOガス等に曝してもショットキー障壁の高さφは大きな変化を生じない。このため逆バイアスの抵抗を生じない。このようにφのコントロールのためには金属の性質の影響を考慮しなければならない。
【0045】
続いて、CNTセンサのセンサ本体(CNT)と測定対象である測定ガスとの関係について説明する。図4(b)の等価回路で示すように所定の直流電圧を印加して電流値を測定し、電極1a,1b間の抵抗を算出する。そして、このようにして測定した抵抗を用い、校正データを使ってガス濃度を求めるものである。DEPIM法ではインピーダンス(コンダクタンス、キャパシタンス)を測定してモニタリングしながら誘電泳動を行うが、このコンダクタンスの測定装置を使用すれば誘電泳動のための装置がそのままガス検出に使用できる。これは後述する。
【0046】
さて、測定ガスが酸化性あるいは還元性のガスかによって、CNT材料2の示す応答は変化する。例えば、還元性のNHに対してはその抵抗が急激に上昇するのに対し、酸化性ガス、例えばNOでは逆に抵抗が減少する。これは、実施例1のCNT材料2がp型半導体であるためである。すなわち還元性のNH分子がCNT材料2に吸着すると、NH分子からCNT材料2に電子が移動し、CNT材料2の表面近くでは正孔密度が低下し、これによって抵抗が上昇する。これに対し酸化性のNO分子が吸着すると、CNT材料2からNOに電子が移動し、正孔密度が上がり、抵抗が下がるからである。そして、CNT材料2がn型半導体であれば、測定ガスに対して逆の傾向を示すことになる。
【0047】
このようにCNT材料2のp型、n型を使い分ければ、酸化性ガス、還元性ガスを、測定した抵抗が上下することでガス濃度を検出できる。そして本発明においては、さらにCNTセンサを構成するため、酸化性ガス、還元性ガスに対して金属電極とCNT材料2を仕事関数の点から選び、この接合部6にこれらの測定ガスが吸着したときショットキー障壁を変化させることで、きわめて迅速な濃度測定が可能になる。
【0048】
そこで、以下、アルミニウム電極にCNT材料を架橋したCNTセンサをNOガスに曝したときの抵抗Rの変化について説明する。上述したようにR≒Rj1+RNTであり、図6上段のグラフによれば、逆バイアスとなる抵抗Rj1は、ショットキー障壁が高いため、NOガスと接触した直後にきわめて急速に上昇している。これに対し図6中段のグラフに示すように、CNT材料2自身の抵抗RNTは、NOガスと接触していない状態でRNTOであるが、NOガスと接触してからは徐々に減少している。CNT材料2からNOに電子が移動し、応答は緩慢であるが正孔密度が上がるため抵抗が下がっている。従って、図6下段のグラフに示すように、CNTセンサ全体の抵抗Rは、NOガスに曝されたとき、CNT材料2の固有の抵抗値RNTOからシャープに立ち上がり、抵抗Rj1が最大となる点を最大値として徐々に漸減していく傾向を有していることが分る。
【0049】
この点に関し、従来のCNTセンサ1では、金属電極とCNT材料2の測定ガス雰囲気下における関係(仕事関数)を考慮することがなく、Rj1,Rj2≪RNTと考え、単純に電極とCNTを接続して図6中段のようにRNTだけを測定していた。従って、CNTセンサ1の応答速度は基本的にCNT材料2に対する測定ガスの吸着速度だけで決まり、応答性を向上させることには限界があった。
【0050】
しかし、本発明においては、ショットキー接合を利用することにより、R≒Rj1+RNTのRj1によって格段に応答性を向上させることができるものである。このRj1による応答速度の向上は、従来と異なって、CNT材料2と測定ガスのほかに、電極の金属の種類、性質等を重要なファクターとしてショットキー障壁の高さをコントロールすることによって得られるものであり、まったく新たな視点で応答速度を向上させるものである。
【0051】
そして、実施例1においては、Rj1とRNTのいずれでもガス濃度を測定するものを開示しているが、校正データを収集することにより、ショットキー接合部のRj1だけできわめて高速、短時間にガス濃度を測定するCNTセンサも実現可能であり、本発明はこれを含むものである。
【0052】
このように本発明のCNTセンサの製造方法としては、p型半導体CNT材料の場合は、これと金属の仕事関数を測定ガスの雰囲気下で測定し、p型半導体CNT材料の仕事関数が金属の仕事関数より大きいものを選び、金属を一対の電極としてp型半導体CNT材料を架橋すればよく、同様に、n型半導体CNT材料の場合は、これと金属の仕事関数を測定ガスの雰囲気下で測定し、n型半導体CNT材料の仕事関数が金属の仕事関数より小さいものを選んで、金属を一対の電極としてn型半導体CNT材料を架橋すればよい。簡単に測定ガスと金属、CNT材料の特性によりショットキー障壁障壁の高さを変化させたCNTセンサを提供することができる。
【0053】
続いて、NOガス等の測定ガスを測定する実施例1のCNTセンサを使用するガス検出装置について、図3に基づいて説明する。図3において、7はCNTセンサ1を装着してNOガス等の測定ガスを検出するガス測定装置である。実施例1のガス測定装置7は、測定時使用するだけでなく、CNTセンサ1の作製時に、CNT材料2を誘電泳動させるCNT材料泳動装置にそのまま利用できるものである。
【0054】
11は電極1a,1b間に測定用の交流電圧を印加する電源部、12は電極1a,1b間のインピーダンスを測定することができる測定部、13はマイクロプロセッサ等から構成され、プログラムやデータを読み込んで機能し、少なくとも電源部11及び測定部12を制御するとともに演算を行う演算制御部、14は表示部、15はプログラムやデータを記憶したメモリ部、15aは測定ガスの抵抗変化の校正データを格納した校正データ部、16は計時部である。電源部11は直流または交流電源であり、交流電源は演算制御部13によって制御される。本実施例1においては、直流電圧の場合振幅0.5V~10V、交流の場合は更に周波数を1kHz~10MHzの間で調整することができる。なお、実施例1では、交流電圧として正弦波を印加するが、ほぼ一定の周期で流れの向きを変える三角波、方形波等の電圧を意味し、正負両サイドの電流の平均値が等しいものである。
【0055】
測定部12には1kΩ程度の電流検出用の抵抗が設けられ、図3に示す電圧印加回路に直列に挿入されており、周波数100kHz、振幅0.5Vの正弦波高周波電圧を印加し、コンダクタンスを測定することによりガス濃度を求める。なお、以下説明するが、本ガス検出装置は、交流電圧で測定する場合、CNT材料泳動装置と要素を同じくするため共用できるものである。直流電圧を利用する場合は、電流検出用の抵抗によって電流の大きさのみを測定して、電極1a,1b間の抵抗を算出し、校正データ部15aの校正データからガス濃度を算出する。
【0056】
さて、実施例1のCNTセンサ1を作製するためのCNT材料泳動装置について説明する。図7は本発明の実施例1におけるCNT材料泳動装置の構成図である。図7において、21は電極1a,1b間に誘電泳動を発生させるために交流電圧を印加する誘電泳動用の電源部、22は電極1a,1b間のインピーダンスを測定することができる測定部、23はマイクロプロセッサ等から構成され、プログラムやデータを読み込んで機能し、少なくとも電源部21及び測定部22を制御するとともに演算を行う演算制御部、24はディスプレィに表示を行う表示部、25はプログラムやデータを記憶したメモリ部、25aは集積量と時間を収めたデータ部、26は計時部である。誘電泳動中におけるCNT懸濁液体や電極材料の電気分解を抑制するために、電源部21は交流電源であることが望ましい。CNT材料泳動装置の以上説明した制御構成は、基本的にガス測定装置7と同一構成であり、いわばガス測定装置7をガス測定/誘電泳動制御装置7aとして共用している。
【0057】
次に、27はエタノール等の溶媒にCNT材料2を懸濁させた懸濁溶媒を誘電泳動させるために導入するための泳動用チャンバである。28は懸濁させた懸濁溶媒を貯めた容器、29は懸濁溶媒を泳動用チャンバ27に送るポンプ、30は溶媒にCNT材料2を懸濁させために設けられた超音波振動を容器28に与える等の攪拌装置、31,32は電磁弁である。
【0058】
このCNT材料泳動装置を使ってCNTセンサ1を作製するときのプロセスを説明する。薄膜電極の電極1a,1bを絶縁基板4に形成し、容器28内の例えば濃度1μg/ml程度のエタノール中に予め作成しておいたCNT材料2、例えばアーク放電法によって作製した平均直径1nm(平均束径15nm),長さ1μm~4μmの単層CNT(純度50%)を注ぐ。演算制御部23が攪拌装置30を60分程度動作させ、CNT材料2を分散させる。この状態で、データ部は電磁弁31,32を開きポンプ29を運転し、懸濁液を0.5ml/minで15μl程度の容積の泳動用チャンバ27内に送る。
【0059】
次いで電極1a,1b間に100kHz、振幅4Vの高周波数の正弦波高周波電圧を印加し、発生する不平等電界によって誘電泳動を開始する。このタイミングから計時部26がカウントを開始する。計時部26による時間の測定とともに、測定部22で電流を測定する。演算制御部23は、CNTセンサ1の予定の集積量に対応した所定の電流値またはコンダクタンスをデータ部25aから読み出して、カウントアウトしたら電源部21を停止し、ポンプ29を止め、落水後に電磁弁31,32を閉止する。泳動用チャンバ27内を室温のまま空気を循環させ、比較的短時間にエタノールを蒸散させる。乾燥後、CNT材料2が集積されて架橋されたCNTセンサ1を取り出す。このように誘電泳動する時間やCNTセンサのコンダクタンスを管理することでCNT材料2の集積量をコントロールでき、高感度のCNTセンサ1の作製を容易に行える。
【0060】
ところで、誘電泳動力FDEPは複素数表現でFDEP=2πε・a・Re[K]▽Eで表現できる。ここに、ε:懸濁液の誘電率、a:球形近似したときのCNT材料の半径、Re[K]:微小物体と懸濁液の複素誘電率に依存するパラメータ、E:電界強度である。このRe[K]は、誘電泳動に用いる電界の周波数fをパラメータとして、正負に変化する。特定の周波数域、例えば10kHz~1MHzで正の誘電泳動力が働き、それ以外では負の誘電泳動力が働く、といった性格を有す。従って周波数を選んで、正の最大の誘電泳動力FDEPを作用させてCNT材料2を集積する必要がある。
【0061】
CNT材料にはフラーレンのような球体状のものもあるが、本発明の実施例1のCNT材料2はナノサイズの長尺、繊維状のものである。しかし、実験によれば長尺、繊維状のものも球体とまったく同様に操作可能であり、CNT材料泳動装置では、正の誘電泳動力を用い、分極した物体を電界が最大となる領域に移動させることができる。周波数は実験的に定めればよい。なお、CNT材料2ごとに、このような周波数、電圧の振幅を設定し、誘電泳動時間と集積量の関係をデータ部25aに格納しておく。
【0062】
このように実施例1のCNTセンサ1は、電気力学現象である誘電泳動を利用してCNT材料2をマイクロ電極上に容易に集積し、電極1a,1b間に容易に架橋を形成することができ、低コストでCNTセンサ1を容易に製造することができる。
【0063】
さて、以上説明した実施例1のCNTセンサの実験結果について説明する。図8は本発明の実施例1におけるCNTセンサの金属電極の種類とNO中での応答図、図9は本発明の実施例1におけるCNTセンサのAl,Cr電極のNOガス濃度変化に伴う応答図、図10は本発明の実施例1におけるCNTセンサのAl,Cr電極のNO中での抵抗変化速度とガス濃度変化の説明図、図11は本発明の実施例1におけるCNTセンサのAl,Cr電極のSF分解ガス中でのコンダクタンス変化の応答図である。
【0064】
図8は、Ti、Cr、Pd、Alでそれぞれ一対の電極を作り、1ppmのNOガスに暴露し、抵抗の変化量ΔRを測定し、初期抵抗Rで規格化したものである。CNTセンサの電極がTi、Cr、Pdの場合は、540秒間NOガスに曝すと、徐々に抵抗変化量ΔR/Rが低下している。その後Nガスを導入すると、抵抗変化量ΔR/Rは緩やかに増加した。その後、紫外線を照射すると、ΔR/Rは速やかに初期値に戻った。
【0065】
しかし、CNTセンサの電極がAlの場合は、540秒間NOガスに曝すと、急速にΔR/Rが上昇している。Ti、Cr、Pdの場合とは逆になる。その後CNT材料2の作用で徐々に減少し、Nガスを導入すると、抵抗変化量ΔR/Rは緩やかに増加した。その後、紫外線を照射すると、ΔR/Rは速やかに初期値に戻っている。このように電極がAlの場合、ショットキー障壁を簡単にコントロールでき、ガス濃度の高速測定が可能になる。
【0066】
図9はAl電極とCr電極に対してNOガス濃度を変化させたときの応答を示すものであるが、Al電極のNOガス暴露直後の抵抗変化量ΔR/Rの増加率は濃度と比例して小さくなっている。このAl電極,Cr電極の抵抗変化率とガス濃度変化は図10に示すようになる。Al電極,Cr電極もガス濃度変化とほぼ比例しているが、Al電極の抵抗変化率はCr電極の抵抗変化率の10倍近い(とくに0.01ppm付近)値を示し、CNTセンサの応答速度をきわめて向上させることが分る。
【0067】
このほかのCNTセンサの実験例を示すと、SF分解ガス(酸化性ガス)に対して、Al電極はCr電極の100倍以上の感度と応答速度を示す。図11は、GISに接続された配管中に置いたAl電極と、配管中とタンク内にそれぞれ置いた2つのCr電極に対するSF分解ガス発生後のCNTセンサ抵抗の変化量ΔR/Rを示している。従来SF分解ガスはGISタンク内で検出するよう設計されてきたが、これが仕方のないことは図11の2つのCr電極(配管中とタンク内)のΔR/Rの測定結果からみても明らかである。すなわち、配管中のCr電極でSF分解ガスを検出しようと思っても、拡散してきたSF分解ガスを有意的なレベルで検出できなかったからである。
【0068】
しかし、Al電極の場合は、配管に配置したときでもSF分解ガス発生後にGISのタンクから拡散したSF分解ガスを定量可能に検出できており、同一位置に置いたCr電極と比較すると、データによれば100倍以上の感度差(0.01ppbレベルまで検出可能)を示している。しかもこの応答速度はきわめて高速で、このCNTセンサを使えば、従来のようにGISの設備診断のためにガスセンサをタンク内に設置する必要はなくなり、有力なSF分解ガスセンサとして、またGIS設備診断のための画期的な診断用ガスセンサとなりえるものである。
【0069】
以上説明したように、本発明の実施例1のCNTセンサ、及びその製造方法によれば、測定ガスに対して、高感度で高速に応答でき、安価で製造が容易になる。また、排気ガス中のNOガス、GISのSF分解ガス等の従来困難であったガス検出を安価で高感度、高速に検出することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、安価で高速に応答し、検出精度が高く、製造が容易な測定ガスを検出するCNTセンサに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】(a)本発明の実施例1におけるカーボンナノチューブセンサの説明図、(b)(a)の要部説明図
【図2】(a)本発明における誘電泳動によって電極間に集積されたカーボンナノチューブ材料のSEM写真、(b)(a)の電界分布のシミュレーション図
【図3】本発明の実施例1におけるカーボンナノチューブセンサを装着してガス検出するガス測定装置の構成図
【図4】(a)本発明の実施例1におけるCNTセンサの金属とカーボンナノチューブの仕事関数の説明図、(b)(a)のCNTセンサの等価回路の要部説明図
【図5】(a)本発明の実施例1におけるCNTセンサの金属とカーボンナノチューブの接触前のショットキー障壁の説明図、(b)(a)のCNTセンサの金属とカーボンナノチューブの接触後のショットキー障壁の説明図
【図6】本発明の実施例1におけるCNTセンサのNOへの応答を示す分解説明図
【図7】本発明の実施例1におけるカーボンナノチューブ材料泳動装置の構成図
【図8】本発明の実施例1におけるCNTセンサの金属電極の種類とNO中での応答図
【図9】本発明の実施例1におけるCNTセンサのAl,Cr電極のNOガス濃度変化に伴う応答図
【図10】本発明の実施例1におけるCNTセンサのAl,Cr電極のNO中での抵抗変化速度とガス濃度変化の説明図
【図11】本発明の実施例1におけるCNTセンサのAl,Cr電極のSF分解ガス中での抵抗変化の応答図
【符号の説明】
【0072】
1 CNTセンサ
1a,1b 電極
2 カーボンナノチューブ材料
3a,3b 電界集中用縁部
4 絶縁基板
5a,5b 検出端子
6 接合部
7 ガス測定装置
7a ガス測定/誘電泳動制御装置
11,21 電源部
12,22 測定部
13,23 演算制御部
14,24 表示部
15,25 メモリ部
15a 校正データ部
16,26 計時部
25a データ部
27 泳動用チャンバ
28 容器
29 ポンプ
30 攪拌装置
31,32 電磁弁
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図10】
8
【図11】
9
【図2】
10