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明細書 :新規DNA分解酵素

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4452834号 (P4452834)
公開番号 特開2007-312744 (P2007-312744A)
登録日 平成22年2月12日(2010.2.12)
発行日 平成22年4月21日(2010.4.21)
公開日 平成19年12月6日(2007.12.6)
発明の名称または考案の名称 新規DNA分解酵素
国際特許分類 C12N   9/16        (2006.01)
C12Q   1/34        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12N 9/16 Z
C12Q 1/34
C12N 15/00 ZNAA
請求項の数または発明の数 2
全頁数 18
出願番号 特願2006-148872 (P2006-148872)
出願日 平成18年5月29日(2006.5.29)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成17年11月29日~平成17年12月2日 独立行政法人海洋研究開発機構主催の「International Symposium on Extremophiles and Their Applications」において平成17年11月30日に文書をもって発表
審査請求日 平成20年11月10日(2008.11.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
発明者または考案者 【氏名】石野 良純
【氏名】當利 和夫
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100089705、【弁理士】、【氏名又は名称】社本 一夫
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100080137、【弁理士】、【氏名又は名称】千葉 昭男
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100113309、【弁理士】、【氏名又は名称】野▲崎▼ 久子
審査官 【審査官】佐藤 巌
参考文献・文献 国際公開第2004/022736(WO,A1)
TORI, K. and ISHINO, Y. ,"Identification and characterization of a novel deoxyribonuclease in archaea",Genes Genet. Syst.,2005年,Vol.80, No.6,p.495
WEISS, R.B. et al.,"Hypothetical protein PF2046",NCBI web site (accession Q8TZE9),2002年 6月 1日,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?74535119:CAGE_DDBJ:401548
WEISS, R.B.,"Pyrococcus furiosus DSM 3638, section 171 of 173 of the complete genome",NCBI web site (accession AE010296),2002年 2月25日,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?db=nuccore&id=18894251
COHEN, G.N. et al.,"Hypothetical protein",NCBI web site (accession Q9V2K0),2003年 6月 1日,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?74548181:CAGE_DDBJ:406141
KAWARABAYASHI, Y. et al.,"Hypothetical protein PH0067",NCBI web site (accession O57796),2003年 6月 1日,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?74570401:CAGE_DDBJ:417032
FUKUI, T. et al.,"Hypothetical protein",NCBI web site (accession Q5JIU0),2005年 5月10日,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?74506181:CAGE_DDBJ:390489
調査した分野 C12N 15/00-15/90
MEDLINE/CAPlus/BIOSIS/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の特徴を有する、DNA分解酵素:
(ア)一本鎖DNAを分解することができるが、環状DNA及び二本鎖DNAを分解せず;
(イ)80℃、1時間の処理で失活せず;
(ウ)ホモ二量体であり、二量体の分子量が約59.2 kDaであり;かつ
(エ)至適温度が、約65℃であって、
ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)由来である、DNA分解酵素。
【請求項2】
請求項1に記載のDNA分解酵素を用いることを特徴とする、一本鎖DNAの分解方法。
発明の詳細な説明
【発明の詳細な説明】
【0001】

【技術分野】
【0002】
本発明は試験管内遺伝子試薬として有用なDNA分解酵素及び、遺伝子工学的手法を用いた該酵素の製造方法に関する。
【従来技術】
【0003】
遺伝子である二本鎖DNAを、塩基配列特異的に認識して切断するDNA分解酵素として最も頻繁に用いられているのは制限酵素と呼ばれるもので、一般に4~8塩基を認識して切断する。制限酵素としては、これまで種々のものが見つかっている(特許文献1~3)。制限酵素以外に、二本鎖DNAの塩基配列を認識して切断する酵素としては、DNA組換え過程に関わる酵素が知られており、さらにホーミングエンドヌクレアーゼと呼ばれる一群の酵素が発見されて、最近しばしば遺伝子工学的実験に利用されている。一般に、これらの酵素は20塩基以上もの長い配列を認識に必要とするが、それぞれの酵素にとって、認識配列は特異的であるから、部位特異的DNA切断の目的で利用することができる。このように、DNAの配列を認識して切断する酵素については、これまでに多くの実用例がある。
【0004】
一方、DNAの特異的な構造を認識して切断する酵素については、基礎分子生物学研究から、種々のものが報告されている。例えば、一本鎖DNAを特異的に切断する酵素として市販されているものには、Aepergillus oryzae由来のS1 nuclease(一本鎖DNA又はRNA に作用してモノヌクレオチドに分解するエンドヌクレアーゼ)、Penicillium citrinum由来のP1 nuclease(一本鎖DNA又はRNA に作用してモノヌクレオチドに分解するエンドヌクレアーゼ)、Alteromonas espejiana由来のBal31 nuclease(一本鎖DNAに特異的なendonucleaseであるが、一本鎖がないときは二本鎖DNAに作用し、両端を末端から同時に分解する5'→3'および3'→5' exonuclease活性を示す)、Mung bean nuclease(一本鎖特異的endonucleaseであり、5'-P末端をもつモノまたはオリゴヌクレオチドを生成する)、Micrococcal nuclease(エンドヌクレアーゼで、一本鎖および二本鎖の核酸に作用して3'リン酸末端を生じる)、大腸菌Exonuclease I (3'→5'方向の一本鎖特異的ヌクレアーゼ),大腸菌Exonuclease III(二本DNAの3’末端から切断するヌクレアーゼ)、Exonuclease T(3'→5'方向の一本鎖特異的ヌクレアーゼで、DNAでもRNAでも作用する)、Lambda Exonuclease(5'→3'方向に切断する二本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼで5’ 末端にリン酸があることが必要)、T7 exonuclease(5'→3'方向に切断する二本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼで末端のリン酸の有無は関係しない)などが市販されている。また、本発明者らは、ホリデイ構造DNAに特異的に作用する酵素(特許文献4)、及び損傷によって生じる特異的なDNA構造を認識して作用する酵素(特許文献5)について報告した。
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した一本鎖DNAを特異的に切断する酵素はすべて常温生物由来の酵素であり、熱安定性は低い。また、一本鎖特異的であって、3’→5’ エキソヌクレアーゼ活性を有することが明確な耐熱性酵素として詳しく性質が調べられているものは、DNA ポリメラーゼに付随するエキソヌクレアーゼ活性以外にはないと思われる。
【0007】
分子生物学の発展によって、種々の目的によって遺伝子(DNA)解析を行う機会が急激に増している。したがって、試験管内でDNA鎖やRNA鎖を目的に応じて細工するために、様々な活性を有する種々の酵素が必要とされている。本発明の目的は、新規DNA切断酵素を遺伝子操作用試薬等として提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明を概説すれば、本発明は、一本鎖DNAを特異的に認識して切断する酵素に関し、さらに末端を特異的に認識する酵素である。さらに加えて該酵素は耐熱性であって、少なくとも80℃で1時間置いても、活性を有している。また、本発明の第二の発明は、該DNA分解酵素の製造方法に関し、該酵素蛋白質をコードする遺伝子を発現用ベクターに組込み、その組換えプラスミドを保有する形質転換体を培養して、該培養物から、該DNA分解酵素を採取することを特徴とする。
【0009】
本発明者らは鋭意研究の結果、超好熱性古細菌ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)から新規DNA分解酵素活性を発見し、該酵素をコードする遺伝子をクローニングすることに成功した。遺伝子配列から推定される該酵素のアミノ酸配列は、現在までに知られているDNA鎖分解酵素、RNA鎖分解酵素の配列とは全く相同性を示さず、またゲノムデータベース上では、Hypothetical proteinとアノテーションされていた。本発明者らは、この遺伝子を導入した大腸菌形質転換体を作製し、該DNA分解酵素を大量生産する製造法を確立した。Pyrococcus属のゲノムはGT 含量が38%と低く、大腸菌細胞内で発現させるのにも適している。
【0010】
I. DNA分解酵素遺伝子:
本発明は、新規なDNA分解酵素をコードする遺伝子及びそのホモログ、すなわち下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)又は(g)を含有するポリヌクレオチドを提供する:
(a)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)(a)に記載のポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつDNA分解活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
(c)(a)に記載のポリヌクレオチドの塩基配列において1若しくは複数の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加された塩基配列からなり、かつDNA分解活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
(d)(a)に記載のポリヌクレオチドの塩基配列と少なくとも80%以上の同一性を有し、かつDNA分解活性を有する蛋白質コードするポリヌクレオチド;
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
(f)(e)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつDNA分解活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
(g)(e)に記載の蛋白質のアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつDNA分解活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
【0011】
本明細書で蛋白質又は酵素の性質に関し、「DNA分解活性を有する」というときは、特別な場合を除き、少なくとも一本鎖又は二本鎖のDNAを加水分解する活性を有することをいいう。これには、その蛋白質又は酵素が二量体を形成してDNA分解活性を発揮する場合も含まれる。本明細書で蛋白質又は酵素の性質に関し、二本鎖DNAを分解しないというときは、特別な場合を除き、完全に二本鎖であるDNAは分解することができないことを指し、基質として提供されるDNAが二本鎖である部分と一本鎖である部分とを有する場合は、一本鎖の部分を分解することができる場合がある。
【0012】
本発明でいう「ストリンジェントな条件」とは、特別な場合を除き、6M尿素、0.4% SDS、0.5×SSCの条件又はこれと同等のハイブリダイゼーション条件を指し、さらに必要に応じ、本発明には、よりストリンジェンシーの高い条件、例えば、6M尿素、0.4% SDS、0.1×SSC又はこれと同等のハイブリダイゼーション条件を適用してもよい。それぞれの条件において、温度は約40℃以上とすることができ、よりストリンジェンシーの高い条件が必要であれば、例えば約50℃、さらに約65℃としてもよい
【0013】
また、本発明で「1若しくは複数の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加された塩基配列」というときの置換等されるヌクレオチドの個数は、その塩基配列からなるポリヌクレオチドがコードする蛋白質が所望の機能を有する限り特に限定されないが、1~9個又は1~4個程度であるか、同一又は性質の似たアミノ酸配列をコードするような置換等であれば、さらに多くの個数の置換等がありうる。また、本発明で「1若しくは複数の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列」というときの置換等されるアミノ酸の個数は、そのアミノ酸配列を有する蛋白質が所望の機能を有する限り特に限定されないが、1~9個又は1~4個程度であるか、同一又は性質の似たアミノ酸配列をコードするような置換等であれば、さらに多くの個数の置換等がありうる。このような塩基配列又はアミノ酸配列に係るポリヌクレオチドを調製するための手段は、当業者にはよく知られている。
【0014】
本発明には、配列番号:1に記載の塩基配列と高い同一性を有する塩基配列からなり、かつDNA分解を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドが含まれる。塩基配列に関し、高い同一性とは、少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列の同一性を指す。また、本発明には、配列番号:2に記載のアミノ酸配列の全部又は少なくともシグナル配列を除いた部分を含む一部と高い同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつDNA分解活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドが含まれる。アミノ酸配列に関し、高い同一性とは、少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列の同一性を指す。
【0015】
ポリヌクレオチド配列又はアミノ酸配列の同一性(相同性ということもある)に関する検索・解析は、当業者には周知のアルゴリズム又はプログラム(例えば、DNASIS ソフトウェア、BLAST、CLUSTAL W及びJALVIEW等を用いる。)により行うことができる。プログラムを用いる場合のパラメーターは、当業者であれば適切に設定することができ、また各プログラムのデフォルトパラメーターを用いてもよい。これらの解析方法の具体的な手法もまた、当業者には周知である。
【0016】
本発明のポリヌクレオチドは、天然物からハイブリダイゼーション技術、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術等を利用して得ることができる。具体的には、ピロコッカス(Pyrococcus)属、又はサーモコッカス(Thermococcus)属に属する菌;好ましくは、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)、ピロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)、又はサーモコッカス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis KOD)に属する細菌;より好ましくは、ピロコッカス・フリオサスから、ゲノムDNA(gDNA)を調製し、あるいは同細菌体から全RNAを調製して逆転写によりcDNAを合成する。gDNA又はcDNAから、本発明のDNA分解の適切な部分塩基配列をプローブ又はプライマーとして設計・利用して、全長の本発明のポリヌクレオチドを得ることができる。
【0017】
本発明のポリヌクレオチドには、DNA及びRNAが含まれ、DNAには、ゲノムDNA、cDNA及び化学合成DNAが含まれる。DNAは、一本鎖DNA及び二本鎖DNAでありうる。
本発明のポリヌクレオチドは、ピロコッカス属、又はサーモコッカス属に属する細菌;好ましくは、ピロコッカス・フリオサス、ピロコッカス・アビシ、ピロコッカス・ホリコシイ、又はサーモコッカス・コダカラエンシスに属する細菌;より好ましくは、ピロコッカス・フリオサス由来でありうる。配列表の配列番号:1にピロコッカス・フリオサス、配列番号:3にピロコッカス・アビシ、配列番号:5にピロコッカス・ホリコシイ、配列番号:7にサーモコッカス・コダカラエンシスに由来する塩基配列を示す。
【0018】
本発明は、ピロコッカス・アビシ、ピロコッカス・ホリコシイ又はサーモコッカス・コダカラエンシスに由来する新規なDNA分解酵素をコードする遺伝子及びそのホモログ、すなわち下記の(h)、(i)、(j)、(k)、(l)、(m)又は(n)を含有するポリヌクレオチドも提供する:
(h)配列番号:3、5又は7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(i)(h)に記載のポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつDNA分解活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
(j)(h)に記載のポリヌクレオチドの塩基配列において1若しくは複数の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加された塩基配列からなり、かつDNA分解活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
(k)(h)に記載のポリヌクレオチドの塩基配列と少なくとも80%以上の同一性を有し、かつDNA分解活性を有する蛋白質コードするポリヌクレオチド;
(l)配列番号:2、4又は6に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
(m)(l)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつDNA分解活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
(n)(l)に記載の蛋白質のアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつDNA分解活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
【0019】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチド(新規遺伝子及びそのホモログ)を含む組換えベクター、その組換えベクターにより形質転換された、形質転換体も提供する。本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチドを用いて宿主(菌若しくは細菌、動物細胞、又は植物細胞。例えば、大腸菌)を形質転換する工程を含む、形質転換方法も提供する。
【0020】
本発明のポリヌクレオチドが挿入されるベクターは、宿主内で挿入物を発現させることが可能なものであれば特に制限はなく、ベクターは、通常、プロモーター配列、ターミネーター配列、外的な刺激により誘導的に挿入物を発現させるための配列、目的遺伝子を挿入するための制限酵素により認識される配列、及び形質転換体を選択するためのマーカーをコードする配列を有する。組換えベクターの作成、組換えベクターによる形質転換方法は、当業者に周知の方法を適用することができる。
【0021】
II. 新規酵素蛋白質:
本発明はまた本発明のポリヌクレオチドによってコードされる蛋白質又はそのホモログ、すなわち下記の(e')、(f')又は(g')を含有する蛋白質を提供する:
(e')配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質;
(f')(e')に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつDNA分解活性を有する蛋白質;
(g')(e')に記載の蛋白質のアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつDNA分解活性を有する蛋白質。
【0022】
本発明者らは、配列番号:2の229アミノ酸配列からなる分子量25,596(配列から算出した。)である蛋白質を、新規DNA切断酵素としてPfuDNase Iと名付けた。
このような蛋白質はまた、以下の性質を有するDNA分解酵素でもある:
(ア)一本鎖DNAを分解することができるが、環状DNA及び二本鎖DNAを分解せず;
(イ)80℃、1時間の処理で失活せず;かつ
(ウ)分子量が約59.2 kDa又はその1/2である。(測定は、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー分析による。なお、本明細書で分子量をいうときは、特別な場合を除き、ゲルろ過カラムクロマトグラフィ分析による値をいう)。
【0023】
このような蛋白質又は加水分解酵素はまた、ピロコッカス属、又はサーモコッカス属に属する細菌;好ましくは、ピロコッカス・フリオサス、ピロコッカス・アビシ、ピロコッカス・ホリコシイ、又はサーモコッカス・コダカラエンシスに属する細菌;より好ましくは、ピロコッカス・フリオサスである細菌が生産する、分子量約59.2 kDa又はその1/2のDNA分解酵素でもある。
【0024】
配列番号:2のアミノ酸配列と相同性を示す蛋白質は現在のデータベース上、ピロコッカス属とサーモコッカス属の古細菌ゲノム中にのみ見出される。該酵素はヌクレアーゼ蛋白質の進化的な観点からも大変興味深い酵素である。配列表の配列番号:4にピロコッカス・アビシ、配列番号:6にピロコッカス・ホリコシイ、配列番号:8にサーモコッカス・コダカラエンシスに由来する塩基配列から推定されるアミノ酸配列を示す。
【0025】
本発明はまた、ピロコッカス・アビシ、ピロコッカス・ホリコシイ又はサーモコッカス・コダカラエンシスに由来する蛋白質又はそのホモログ、すなわち下記の(l')、(m')又は(n')を含有する蛋白質を提供する:
(l')配列番号:4、6又は8に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質;
(m')(l')に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつDNA分解活性を有する蛋白質;
(n')(l')に記載の蛋白質のアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつDNA分解活性を有する蛋白質。
【0026】
[PfuDNase Iの酵素学的性質]
PfuDNase Iの酵素学的性質を以下に説明する。
(1) 作用
本発明の酵素は、一本鎖DNAの3'末端を認識し、加水分解することができる。本発明者らが用いた条件では、49残基からなる一本鎖DNAを基質とした場合、まず3’末端に近い位置の切断産物が見られるが、鎖中央付近の切断産物はほとんど見られず、一定時間経過後に5’末端付近の切断産物が見られた(図5A)。切断方向は、3'末端から5'末端の方向と考察される。
【0027】
(2) 基質特異性
一本鎖の3'末端を有するDNAに作用する。本明細書の実施例に示した条件では、環状DNA及び二本鎖DNAには作用しなかった。
【0028】
より詳細には、該酵素の基質特異性を検討したところ、該酵素は図5のように一本鎖DNAに特異的な切断活性を示し、二本鎖DNAには作用せず、また、図6に示したように、末端を持たない環状DNAには全く作用しなかった。該酵素は基質認識としてDNAの末端を必要とし、3'側から切断する性質を有していることが分かった。また、図7のような一本鎖部分と二本鎖部分を有するDNAを基質とした場合には、3'末端側に一本鎖部分があるDNAに作用して、一本鎖部分を切断するのに対して、5'側に一本鎖部分がある基質に対しては作用しないことが分かった。さらに、精製した酵素をゲルろ過カラムに供することによって、溶液中での状態を分析した結果、該酵素はホモ二量体で存在することが分かった(図8)。
【0029】
(3) 至適条件
本発明者らが実験した条件では、5℃刻みで調べた結果、65℃が最も切断効率がよかった(データ示さず)。本酵素は、65℃付近でよく作用する。
【0030】
[DNA分解酵素の製法]
本発明者らは、該酵素をコードする遺伝子を大腸菌での発現ベクターpET21a(Novagen社)に組み込んだプラスミドpPFDNAase1を大腸菌BL21 codon plus(DE3)-RIL(Novagen)に導入して得られた組換え体を用いて 該酵素の多量産生系の構築にも成功した。したがって、本発明のDNA分解は、本発明の遺伝子を用いた形質転換菌により、産生させることができる。特定の宿主を用いる場合に適した形質転換の方法は、当業者にはよく知られている。
【0031】
III. 新規酵素蛋白質の利用
本発明の酵素は、DNA鎖を試験管内で加工するための道具の一つとなる。DNAの一本鎖と二本鎖の構造上の違いを利用して、任意のDNA鎖を特定の部位で切断する技術開発に利用することができる。本発明の酵素は、高温で作用を発揮できるので、基質であるDNA鎖自身の高次構造形成による切断反応抵抗性を回避した状態で用いることができる。現在までに数多くの酵素が市販されているが、このような条件で利用できる実用的な酵素は存在しない。
【0032】
以下、実施例をもって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0033】
(1)ピロコッカス・フリオサス ゲノムDNAの調製
P. furiosusDSM3638 はDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zelkulturen GmbHより入手し、文献(ヌクレイック アシッド リサーチ Nucleic Acids Research, 第21巻、259-265ページ)の方法に従って培養した。1000 mlの培養液から約2 gの菌体を得た。これを緩衝液 L(10 mM トリスー塩酸(pH8.0),1 mM EDTA, 100 mM NaCl)10 mlに懸濁し、10% SDSを1ml加えた。撹拌の後、プロテイナーゼK(20 mg/ml)を50 ml 加えて、55℃で60 分静置した。その後反応液を順次フェノール抽出、フェノール/クロロホルム抽出、クロロホルム抽出した後、エタノールを加えてDNAを不溶化した。回収したDNAを1 mlのTE液(10 mM トリスー塩酸, (pH8.0), 1 mM EDTA)に溶解し、0.75 mgのRNase Aを加えて37 ℃で60 分反応させた。その後反応液をもう一度フェノール抽出、フェノール/クロロホルム抽出、クロロホルム抽出した後、エタノール沈殿によりDNAを回収した。0.75 mgのDNAが得られた。
【0034】
(2)コスミドライブラリーの作製
ストラタジーン社製 SuperCos1 Cosmid Vector kitを用いて、ライブラリーを作製した。実施例(1)で得られたDNAを制限酵素Sau3AIで部分分解した時に、30-42キロ塩基対の断片が生じるように反応条件を決めた。切断後のDNA断片をコスミドベクターのBamHI部位に挿入して、組換えコスミドのライブラリーとした。大腸菌を形質転換して得られたコロニーから適当に10数個を選んで、コスミドを回収し、予想される大きさのDNA断片が挿入されていることを確認した。
【0035】
(3)ライブラリーより粗抽出液の調製
(2)で作製した、組換えコスミドによる形質転換体から、約500個を選んで、それぞれを2mlのLB培地で培養し、集菌後バッファーA(10 mM トリスー 塩酸(pH 8.0), 2 mM 2-メルカプトエタノール, 10 % グリセロール)500 mlに懸濁後、超音波処理により破砕した。得られた粗抽出液を80 ℃10 分の熱処理を行って、大部分の大腸菌由来の蛋白質を変性させ、遠心分離により上清を集め、耐熱性プロテインライブラリーとした。
【実施例2】
【0036】
DNA鎖分解反応
適当な配列を有するオリゴDNAを 100 p mol 用いてポリヌクレオチドキナーゼと[γ-32P] ATP で 5' 末端リン酸化した後に精製したDNAを基質とした。DNA 切断反応溶液として、DNA を5 nM の濃度で含む20 mM トリス-塩酸(pH 8.8), 5 mM MgCl2, 50 mM NaCl, 0.1 mg/ml BSA溶液36 μl に対して耐熱性プロテインライブラリーの各抽出液より 0.8 μl を 5 クローンずつ、即ち 4 μl を1反応分として加え、65 ℃で適当な時間インキュベーションした。反応停止液(95 % ホルムアミド、10 mM EDTA)を加えて100 ℃ 5分処理して、8M尿素存在下の10 % ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。アクリルアミドゲルを乾燥させた後にオートラジオグラフィーを行って、切断バンドの有無を検出した。この結果、 実施例1~3で調製した耐熱性プロテインライブラリー中に DNA鎖を切断する活性が発見された(図1)。この操作によって、DNA鎖切断活性を示すクローンを選別した。
【実施例3】
【0037】
(1)目的遺伝子の同定と塩基配列決定
実施例2で得られた大腸菌クローンからコスミドを単離し、そのコスミドをPstIによって処理して、さらに小さな断片化し、それらをpUC118 ベクターのPstI 部位にサブクローンした。得られた各クローンを実施例2と同様にDNA 切断活性を調べると、約 5 kbの断片が組み込まれたクローンが切断活性を示すことが判明した。該 PstI 断片が pUC118 ベクターに組み込まれたものをプラスミド pPF200 と命名した。
【0038】
プラスミド pPF200 を用いて挿入 DNA の両端から塩基配列を解析し、その配列をP. furiosus ゲノムデータベースと照合することによって、挿入断片を同定した。挿入断片の塩基配列から推定される遺伝子コード領域(オープンリーディングフレーム、ORF)は7つ存在し、両端は部分的に欠損していたので、完全なORFは5つあり、それらがDNA鎖切断活性を有する蛋白質遺伝子の候補であると考えられた。
【0039】
(2)目的遺伝子の多量発現系の構築
実施例3の(1)で得られた塩基配列中に存在する5つの ORF のそれぞれの両端に相当する塩基配列をもとに PCR プライマーを作製し、それぞれフォワードプライマー、リバースプライマー配列の中に NdeI(CATATG), EcoRV(GATATC)配列を組み入れ、NdeI 配列中の ATG を翻訳の開始コドンとして利用できるように調節した。これらのプライマーでPCR を行うことによって増幅した遺伝子を pET21a ベクターに組み込んで、それぞれの遺伝子産物を産生するプラスミドを得、該プラスミド中のPCRで増幅された部分の塩基配列に変化がないことを確認した後、 pPF2001~pPF2005 と命名した。また、該プラスミドで形質転換された大腸菌 BL21(DE3)を Eschrichia coliBL21(DE3)/ pPF2001~pPF2005 と命名した。
【0040】
(3)目的酵素蛋白質の精製
実施例3の(2)で得られた発現プラスミドを大腸菌 Eschrichia coliBL21 codon plus(DE3)-RIL に導入し、アンピシリンが 100 μg/ml、クロラムフェニコールが34 mg/ml の濃度で存在する LB 培地 [トリプトン10 g/リットル、酵母エキス5g/リットル、NaCl 5g/リットル、pH 7.2] 10 mlで培養した。培養液の濁度が 0.5 A600に達した時、誘導物質であるイソプロピル-β-D-チオガラクトシド(IPTG)を添加し、さらに3時間培養を行った。集菌後、菌体を 3 ml のバッファーA に 1 mM フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を加えたものに懸濁し、超音波破砕機にかけた。16, 000 rpm 、20分間の遠心分離により粗抽出液を上清として回収し、75℃ 15分の熱処理を行って宿主大腸菌由来の蛋白質を変性させて取り除いた。この熱処理上清液を用いて、実施例2に示した方法により DNA 鎖分解活性を測定した。その結果、図2に示すようにORF2 に相当する蛋白質がDNA 鎖切断活性を有することが確認された。そこで、ORF2遺伝子を含む発現プラスミドを導入したEschrichia coli BL21 codon plus(DE3)-RIL/pPF2002を 1リットルのLB培地(アンピシリンが 100 μg/ml、クロラムフェニコールが34 mg/ml の濃度で含む)で培養し、上記に示した培養条件で目的の遺伝子発現を誘導した。集菌後、菌体を 40 ml のバッファーA に 0.5 M NaCl と1 mM フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を加えたものに懸濁し、超音波破砕機にかけた。16, 000 rpm 、20分間の遠心分離により粗抽出液を上清として回収し、75 ℃ 15分の熱処理を行って宿主大腸菌由来の蛋白質を変性させて取り除いた。熱処理をした上清に含まれる核酸を除去するために、ポリエチレンイミンを0.15 %(w/v)になるように加え、氷中で30 分撹拌した後、14000 rpm で10分遠心した。この上清に 80 % 飽和になるように硫酸アンモニウムを加えた。16, 000 rpm 、20分間の遠心分離により得られた沈殿を 8mlの1 M 硫酸アンモニウムを含むバッファーAに溶解し、同様の溶液で平衡化した疎水クロマトカラム(HiTrap phenyl, GE社製)に供し、AKTAシステム(GE社製)を用いてクロマトグラフィーを行った。展開は 1 M → 0 M の硫酸アンモニウム 直線濃度勾配により行った。実施例2の方法で活性測定を行って目的の活性のある画分を集め、0.1 M NaClを含むバッファーA 2リットルで透析した後、同様の溶液で平衡化した陰イオン交換カラム(HiTrap Q, GE 社製)に供した。AKTAシステムを用いて 0.1 M → 1 M のNaCl直線濃度勾配により展開した結果、目的の活性は 0.15 M NaCl 濃度のところに溶出されたので、この画分を集めて、NaCl 濃度が10分の1 になるまで希釈して、同様の溶液で平衡化したアフィニティークロマトカラム(HiTrap Q, GE 社製)に供した。活性を示す画分を酵素評品として、4℃に保存した。以上のような精製操作により、1リットルの溶液から、約2mgの高純度酵素が得られた(図3)。
【実施例4】
【0041】
アミノ酸配列の相同性の検索
実施例1~3の操作で見出されたDNA分解酵素の構造について、ORF2をコードするDNAの塩基配列から推定されるアミノ酸配列を、 National Center for Biotechnology Information(NCBI)の BRAST 検索を使用して、有為な相同性を示す蛋白質を検索した。その結果、図4に示すように、全ゲノム配列が解読されている4種類の古細菌について、相同性のある配列をコードしうる遺伝子が発見された。これらはいずれもHypothetical protein とアノテートされており、機能未知の新規蛋白質であった。そこで、該酵素をPfuDnase I と命名し、その基質特異性を調べた。
【実施例5】
【0042】
(1)基質特異性
本発明の、PfuDNase IのDNA 切断における基質特異性を解析するために、まずDNA鎖が一本鎖か二本鎖かの違いによる切断反応を比較した。適当な配列を有するオリゴDNAを 100 p mol 用いてポリヌクレオチドキナーゼと[γ-32P]ATP で 5' 末端リン酸化した後 50 p mol をそのまま、または適当な相補鎖とアニーリングすることによって完全な二本鎖や、部分的に二本鎖になった構造のDNAを調製した。アニーリングは、DNA 鎖を混合後30分間の熱処理に続いて15時間かけて自然冷却で徐々に室温になるまで温度を下げることによって行い、二本鎖 DNA を形成させた。DNA 切断反応溶液として、DNA を5 nM の濃度で含む20 mM トリス-塩酸(pH 8.8), 5 mM MgCl2, , 50 mM NaCl, 0.1 mg/ml BSA溶液36 μl に対して精製PfuDNase I を10 nM になるように加え、65 ℃で20分まで反応を追跡した。切断産物の泳動度から、DNA 鎖中の切断位置を特定するために、8M尿素存在下の10 % ポリアクリルアミドゲル電気泳動で、反応産物を分析した。マーカーとして、同じ末端標識DNAを用いて、マキサムーギルバート(Maxam-Gilbert)法により GA ラダーを作成し、隣のレーンで電気泳動を行って両者のバンドサイズを比較し、切断部位を決定した。 切断反応後に反応停止液(95 % ホルムアミド、10 mMEDTA)を加えて100℃ 5分処理して電気泳動を行った。アクリルアミドゲルを乾燥させた後にオートラジオグラフィーを行って、切断バンドの有無を検出した。その結果、図5に示すようにPfuDnase I は一本鎖DNA に作用したが、二本鎖DNAには働かなかった。電気泳動のパターンから、該酵素はDNA 鎖の3'末端から切断反応が進み、5'の末端まで分解せずに手前でストップするとい性質があるように見えた。
【0043】
そこで、次にDNAの末端を有しない環状構造を持ったDNAを基質に用いて切断反応を試みた。環状DNA として一本鎖DNAはM13 mp18 DNA(タカラバイオ社製)、二本鎖DNA としてpBR322(タカラバイオ社製)を用いた。これらのDNA を100 ng 用いて、20 mM トリス-塩酸(pH 8.8), 5 mM MgCl2, , 50 mM NaCl, 0.1 mg/ml BSA溶液中100nM の酵素濃度で60 ℃ 20 分処理し、フェノール処理によって反応を停止させた後、1 % アガロースゲル電気泳動に供して、エチジウムブロミド染色によりDNA 鎖切断の有無を検出した。その結果図6に示すように両基質ともに酵素の有無に関わらず、同様の泳動パターンを示したことから、該酵素はDNA 鎖の末端がないと作用しないことが分かった。
【0044】
線状DNA基質についてさらに解析するために、一本鎖部分と二本鎖部分を有する基質を2種類用意した。それぞれ5'側、3'側に一本鎖領域を有する基質を用いて、該酵素による切断反応を行ったところ、図7に示すように5'側に一本鎖領域を持つ基質は全く切断されず、3'側に一本鎖領域をもつ基質は切断されて、二本鎖領域に入る8ヌクレオチド手前で停止することが観察された。これは完全な一本鎖を用いた場合に5'末端から4ヌクレオチド手前で停止した結果(図5)と間連するものと考えられる。
【0045】
これらの結果を総合すると、該酵素は末端を有する一本鎖DNA 鎖を特異的に認識して作用するものと考えられる。切断がDNA鎖の末端まで進まないのは基質認識上の特徴であろう。本発明においては、限られた基質においてのみ切断反応を試みたが、該酵素の生体内での真の基質については、現段階で結論できない。DNA 複製、修復などのDNA 代謝課程における特異的な中間体構造を認識して作用する可能性があると考えられる。
【実施例6】
【0046】
溶液中における形状
PfuDNaseの構造について情報を得るために、精製酵素評品を用いてゲルろ過カラムクロマトグラフィー分析を行った。SMART System(GE 社製)を用いてSuperdex 200 カラムを用いて解析した結果、該酵素蛋白質が溶出された位置を分子量サイズマーカーの溶出位置と比較することによって、該酵素蛋白質の溶液中での分子量を推定した(図8)。その結果PfuDNase I は分子量59.2kDaと計算され、2量体を形成していると予想された。2量体を形成しているとすると、酵素一分子中活性中心を2カ所有する可能性があり、該酵素の反応機構について大変興味が持たれる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】耐熱性プロテインライブラリーからのDNA 切断活性スクリーニング. コスミドを用いて作成したP. furiosus のゲノムライブラリーから調製された耐熱性プロテインライブラリー中のDNA鎖切断活性を調べた。反応産物を変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、その泳動パターンをオートラジオグラフィーによって視覚化した。その結果、クローン#8に切断活性が検出された。左端のレーンはサイズマーカー。
【図2】DNA 鎖切断活性を示す蛋白質をコードする遺伝子の同定. DNA鎖切断活性を示すクローンに含まれるP. furiosus ゲノムDNA断片から、その活性の基になる遺伝子を同定すべく絞り込んで行った結果、左パネルに示す約6キロベースの遺伝子断片中に目的の遺伝子が存在することが分かった。塩基配列解析の結果その中には5つのORF が含まれていたので、それぞれをクローニングし、独立に発現させて、活性測定を行った。その結果右パネルに示すように、左から二番目のORF(黒矢印で示している)が 目的の活性を示すことが分かった。
【図3】ORF2(PfuDNase I)蛋白質の精製. ORF2 を発現ベクターに組み込んだプラスミドを有する大腸菌を培養し、その細胞抽出液から目的の蛋白質を、左パネルに示した手順に従って高純度に精製した。精製の各ステップをSDS-PAGE によって確認した(右パネル)。各レーンは次の通りである。TC: 細胞粗抽出液、HS: 熱処理後の上清、AP: 硫安沈殿分画、P: 疎水カラム分画、Q:陰イオンカラム分画、HE: ヘパリンアフィニティ分画。
【図4】PfuDNase Iのアミノ酸配列と相同性を有する古細菌由来の遺伝子産物. ピロコッカス・フリオサス以外に、3種類の古細菌で相同性を有するオープンリーディングフレームが見つかった。Pfu: ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)、Pab: ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abbysi)、Pho: ピロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)、Kod: サーモコッカス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis KOD)。
【図5】PfuDNase I の基質特異性1. 化学合成オリゴデオキシリボヌクレオチドを用いて、末端を放射性標識(32P)したDNA を一本鎖のまま、または相補的な配列を有するDNA とアニーリングすることによって二本鎖にした後、精製したPfuDNase I で作用させた。DNA 鎖の5' 末端を標識した場合(A)と3' 末端を作用させた場合(B)の結果を示す。切断反応の電気泳動パターンをそれぞれ左パネルに示す。また電気泳動の結果主として見られる切断位置を右図の矢印で示した。PfuDNase は一本鎖のDNA に特異的に作用し、3'末端側から切断するが、必ずしも均等に端から順番に切断していくわけではなく、特異的な性質を有する。また、末端に近いところは完全には分解されない。
【図6】PfuDNase I の基質特異性2. 末端を有しない環状DNAを基質として用いて、PfuDNase I 反応を行った。基質DNA は一本鎖としてM13 mp13 DNA, 二本鎖としてpBR322 を用いた。反応液をアガロースゲル電気泳動に供して、臭化エチジウム染色によりDNAを検出した。PfuDNase I を反応液に加えた時(+)の結果は加えなかった場合(-)と全く差が見られる、PfuDNase I は環状DNA には作用しないことが分かった。
【図7】PfuDNase I の基質特異性3. DNA の構造として、一本鎖部分と二本鎖部分を有する基質を調製し、PfuDNase I 反応に供した。反応産物を変性アクリルアミドゲル電気泳動で分離したオートラジオグラフィーを左パネルに示す。その結果、PfuDNase I は3' 末端側に一本鎖部分を有するDNA には作用したが、5' 末端側に一本鎖部分を有するDNA には作用しなかった。用いた基質の切断位置を右パネルに示す。
【図8】PfuDNase I の溶液中での形状. 精製PfuDNase I 蛋白質をゲルろ過カラムに供し、その溶出位置から見かけ上の分子量を推定した。サイズマーカー蛋白質の溶出位置から検量線を求め(右パネル)、計算された分子量(59200)から、PfuDNase I は溶液中2量体で存在するものと推定された。
【図9】PfuDNase Iの塩基配列及びアミノ酸配列. 本発明により提供されるPfuDNase Iの塩基配列及びアミノ酸配列を示した。
【図10】ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abbysi)由来の塩基配列及びアミノ酸配列. 本発明により提供される塩基配列及びアミノ酸配列を示した。
【図11】ピロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)由来の塩基配列及びアミノ酸配列. 本発明により提供される塩基配列及びアミノ酸配列を示した。
【図12】サーモコッカス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis)由来の塩基配列及びアミノ酸配列. 本発明により提供される塩基配列及びアミノ酸配列を示した。
図面
【図9】
0
【図10】
1
【図11】
2
【図12】
3
【図1】
4
【図2】
5
【図3】
6
【図4】
7
【図5】
8
【図6】
9
【図7】
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【図8】
11