TOP > 国内特許検索 > 放送装置 > 明細書

明細書 :放送装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5124768号 (P5124768)
公開番号 特開2008-085520 (P2008-085520A)
登録日 平成24年11月9日(2012.11.9)
発行日 平成25年1月23日(2013.1.23)
公開日 平成20年4月10日(2008.4.10)
発明の名称または考案の名称 放送装置
国際特許分類 G10L  21/0364      (2013.01)
G10L  21/0316      (2013.01)
FI G10L 21/02 302B
G10L 21/02 303
請求項の数または発明の数 9
全頁数 20
出願番号 特願2006-261675 (P2006-261675)
出願日 平成18年9月27日(2006.9.27)
審査請求日 平成21年7月17日(2009.7.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
発明者または考案者 【氏名】中島 祥好
【氏名】上田 和夫
【氏名】河原 一彦
【氏名】安村 真奈
個別代理人の代理人 【識別番号】100085257、【弁理士】、【氏名又は名称】小山 有
審査官 【審査官】山下 剛史
参考文献・文献 特開平5-172619(JP,A)
特開平5-249994(JP,A)
特開平9-146588(JP,A)
特開2002-149200(JP,A)
特開2003-280696(JP,A)
特開平2-235424(JP,A)
調査した分野 G10L 21/02
H04R 3/00,27/00
B61L 99/00
特許請求の範囲 【請求項1】
入力された音声信号の所定の周波数成分を通過させるフィルタ部と、前記フィルタ部を通過した音声信号の特定の時刻の前後に複数の時間フレームを形成するフレーム分割部と、前記フレーム分割部で分割されたフレーム内の音声信号のパワーをそれぞれ算出するパワー算出部と、前記パワー算出部で算出されたそれぞれのパワーからパワーの変化率を算出するパワー変化率算出部と、前記パワー変化率算出部で算出されたパワー変化率から入力音声信号を増幅するか否かを決定する増幅決定部と、前記増幅決定部で増幅すると決定された場合に前記パワー変化率に基づいて増幅度を算出する増幅度算出部と、前記増幅度算出部で算出された増幅度に応じて入力音声を増幅する音声増幅部と、この音声増幅部で増幅された音声信号が通過するくし型フィルタおよび音声信号の通過帯域と異なる通過帯域の警告音用のくし型フィルタからなるくし型フィルタユニットを備えたことを特徴とする放送装置。
【請求項2】
入力された音声信号を並列に配置された通過帯域の異なる複数のフィルタに通過させるフィルタ部と、前記フィルタ部を通過したそれぞれの音声信号の特定の時刻の前後に複数の時間フレームを形成するフレーム分割部と、前記フレーム分割部で分割されたフレーム内の音声信号のパワーをそれぞれ算出するパワー算出部と、前記パワー算出部で算出されたそれぞれのパワーからパワーの変化率を算出するパワー変化率算出部と、前記パワー変化率算出部で算出されたパワー変化率から入力音声信号を増幅するか否かを決定する増幅決定部と、前記増幅決定部で増幅すると決定された場合に、前記フィルタ部を通過したそれぞれの音声信号に対するパワー変化率に基づいて増幅度を算出する増幅度算出部と、前記増幅度算出部で算出された増幅度に応じて入力音声を増幅する音声増幅部、この音声増幅部で増幅された音声信号が通過するくし型フィルタおよび音声信号の通過帯域と異なる通過帯域の警告音用のくし型フィルタからなるくし型フィルタユニット備えたことを特徴とする放送装置。
【請求項3】
前記くし型フィルタユニットを、複数従属接続したことを特徴とする請求項1または2に記載の放送装置。
【請求項4】
入力信号が音声信号の場合に、前記音声信号の特定の部分を増幅する音声強調部と、前記音声強調部における増幅度に応じて前記くし型フィルタの周波数特性を調整するフィルタ特性調整部を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の放送装置。
【請求項5】
前記パワー変化率算出部が、前記パワー算出部で算出された前記フィルタ部を通過したそれぞれの音声信号のパワーの比率を算出し、この比率に基づいて前記パワー変化率を算出することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の放送装置。
【請求項6】
前記増幅度算出部が、前記フィルタ部を通過したそれぞれの音声信号に対するパワー変化率に基づいて算出された増幅度の平均値を増幅度とすることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の放送装置。
【請求項7】
前記増幅度算出部が、前記フィルタ部を通過したそれぞれの音声信号に対するパワー変化率に基づいて算出された増幅度の最大値を増幅度とすることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の放送装置。
【請求項8】
前記増幅決定部で増幅すると決定された場合に、前記特定の時刻の前後に音声信号の増幅区間を特定するための増幅区間特定部を備え、前記増幅区間内の音声信号に関して前記増幅度算出部で算出された増幅度の平均値を、前記増幅区間内の一部又は全部の音声信号に対する増幅度とすることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の放送装置。
【請求項9】
前記増幅決定部で増幅すると決定された場合に、前記特定の時刻の前後に音声信号の増幅区間を特定するための増幅区間特定部を備え、前記増幅区間内の音声信号に関して前記増幅度算出部で算出された増幅度の最大値を、前記増幅区間内の一部又は全部の音声信号に対する増幅度とすることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の放送装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、駅構内などで使用される電車等の発車ベルなどの警告音、報知音とアナウンス音声が重複した際に、両者の情報を使用者に的確に知らせるための公共放送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
都会など多くの電車が行き来する場所では、駅構内の発車ベル等の警告音、報知音と、発車時のアナウンスが同時に鳴らされることが多い。これらの音は、その構成周波数成分を同一帯域に有している場合が多く、必要なアナウンスが極めて聞き取りづらくなっている。そのため、さらにアナウンスの音量を上げるという悪循環から、構内に響く様々な音の音量が相対的に上げられ、ますます全体の騒音が増している。
【0003】
構内アナウンス、発車ベル、エレベーターの到着音など異なる役割の音が、無秩序に共存することで、音源同士がぶつかりあい、必要な情報が得られないというケースが頻発しているのが現状である。
【0004】
駅構内などでは、発車ベルとアナウンスとをあえて違うタイミングで流したり、アナウンスを流すときには発車ベルの音量を下げるなどの措置を施している場合もある。
【0005】
このような状況下においては、聴力が低下してきた高齢者や聴覚障害者にとっては、必要なアナウンスや発車ベルを聞き分けるのは困難である。特に視覚障害者にとっては、音による誘導が駅構内における情報の大部分を占めるので、適切な情報を明瞭に伝達できるような環境を構築する事が強く望まれている。
【0006】
一方、平成12年に施行された交通バリアフリー法では、視覚障害者に案内を行う設備の例示として「音による案内」が加えられ、公共空間における音声誘導の導入なども記述されており、福祉社会における音による情報伝達の重要性が高まってきている。近年は、短いメロディや電子音によって特定の行動や意味を、言葉ではなく音に置き換えることによって、場所や方向などの情報を伝えるため音サインの導入も各所で検討されてきている。
【0007】
特許文献1には、音声を入力する手段と、音声を分析して加工する手段と、音声を再生して出力する手段を有する音響処理装置において、音声波形から音声の音響的特徴量を計算する特徴量計算部と、該音響的特徴量の単位時間あたりの時間変化量を計算する特徴量変化量計算部と、該時間変化量を変更する時間変化量変更部と、該変更後時間変化量を用いて該音響的特徴量を変更する音響的特徴量変更部と、該変更後音響的特徴量から音声波形を再構築する波形再構築部を有する音声強調方法および装置に関する記載がある。

【特許文献1】特開平8-110796
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発車ベルとアナウンスとを違うタイミングで流したり、アナウンスを流すときには発車ベルの音量を下げるなどの処置は最も有効な措置ではあるが、電車の到着のタイミングなど、適切な情報伝達のために、やむをえず両者を重ねなければならなかったり、他のアナウンスなどが交じって聞こえてしまうケースも多い。
【0009】
特に、このような状況下において、視覚障害者や、老人性難聴によって言葉の聞き取り能力が低下した高齢者へ十分な情報伝達を行う技術は確立されてないのが現状である。
【0010】
また、サイン音の導入は有益な一方策ではあるが、インフラ整備やサイン音の種類と内容の周知徹底など、普及させるには大変な時間と労力が必要となる上に、現在の発車ベルやアナウンスの音量では、このような誘導音も十分に伝達できない場合も多い。
【0011】
特許文献1には、音声の音響的特徴の時間変化の変更、発話速度および時間変化の同時変更、周波数特性および時間変化の同時変更、および、発話速度、周波数特性、時間変化の同時変更に関する技術については詳細に記載されているが、騒音下や発車ベル等の鳴り響く環境下で聞き落としやすい子音等の音声情報のみを選択的に増幅し、音声の音量を不必要に上げることなく、且つ、音声の自然性を損なわずにアナウンス等の内容を明瞭に伝達する手段などについての開示も示唆も無い。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、駅構内などで使用される電車等の発車ベルなどの警告音、報知音とアナウンス音声が重複した際に、両者の情報を使用者に的確に知らせる放送装置に関して、以下の構成とした。
【0013】
放送装置において、入力された音声信号の所定の周波数成分を通過させるフィルタ部と、前記フィルタ部を通過した音声信号の特定の時刻の前後に複数の時間フレームを形成するフレーム分割部と、前記フレーム分割部で分割されたフレーム内の音声信号のパワーをそれぞれ算出するパワー算出部と、前記パワー算出部で算出されたそれぞれのパワーからパワーの変化率を算出するパワー変化率算出部と、前記パワー変化率算出部で算出されたパワー変化率から入力音声信号を増幅するか否かを決定する増幅決定部と、前記増幅決定部で増幅すると決定された場合に前記パワー変化率に基づいて増幅度を算出する増幅度算出部と、前記増幅度算出部で算出された増幅度に応じて入力音声を増幅する音声増幅部を含むようにした。これにより、駅構内などで、アナウンス音声と発車ベル等の警告音が重複しても、聞き落としやすい子音等を強調し、明瞭な音声を提供することができる。
【0014】
また、放送装置において、入力された音声信号を並列に配置された通過帯域の異なる複数のフィルタに通過させるフィルタ部と、前記フィルタ部を通過したそれぞれの音声信号の特定の時刻の前後に複数の時間フレームを形成するフレーム分割部と、前記フレーム分割部で分割されたフレーム内の音声信号のパワーをそれぞれ算出するパワー算出部と、前記パワー算出部で算出されたそれぞれのパワーからパワーの変化率を算出するパワー変化率算出部と、前記パワー変化率算出部で算出されたパワー変化率から入力音声信号を増幅するか否かを決定する増幅決定部と、前記増幅決定部で増幅すると決定された場合に、前記フィルタ部を通過したそれぞれの音声信号に対するパワー変化率に基づいて増幅度を算出する増幅度算出部と、前記増幅度算出部で算出された増幅度に応じて入力音声を増幅する音声増幅部を含むようにした。これにより、駅構内などで、アナウンス音声と発車ベル等の警告音が重複しても、子音等の部分を正確に抽出及び強調し、明瞭な音声を提供することができる。
【0015】
また、前記パワー変化率算出部が、前記パワー算出部で算出された前記フィルタ部を通過したそれぞれの音声信号に対するパワーの比率を算出し、この比率に基づいて前記パワー変化率を算出する構成とした。これにより、複数の周波数成分のパワーの比率を基に、より正確に子音等の部分を抽出及び強調し、明瞭な音声を提供することができる。
【0016】
また、前記増幅度算出部が、前記フィルタ部を通過したそれぞれの音声信号に対するパワー変化率に基づいて算出された増幅度の平均値を増幅度とする構成にした。これにより、複数の周波数成分のパワーの比率を基に、子音の前後のパワー変化なども考慮した上で、子音等の部分を強調し、明瞭な音声を提供することができる。
【0017】
また、前記増幅度算出部が、前記フィルタ部を通過したそれぞれの音声信号に対するパワー変化率に基づいて算出された増幅度の最大値を増幅度とする構成にした。これにより、複数の周波数成分のパワーの比率を基に、子音の前後のパワー変化なども考慮した上で、子音等の部分を強調し、明瞭な音声を提供することができる。
【0018】
また、前記増幅決定部で増幅すると決定された場合に、前記特定の時刻の前後に音声信号の増幅区間を特定するための増幅区間特定部を備え、前記増幅区間内の音声信号に関して前記増幅度算出部で算出された増幅度の平均値を、前記増幅区間内の一部又は全部の音声信号に対する増幅度とする構成にした。これにより、子音開始時の端点だけでなく、その前後の音声成分をも同時に強調し、明瞭な音声を提供することができる。
【0019】
また、前記増幅決定部で増幅すると決定された場合に、前記特定の時刻の前後に音声信号の増幅区間を特定するための増幅区間特定部を備え、前記増幅区間内の音声信号に関して前記増幅度算出部で算出された増幅度の最大値を、前記増幅区間内の一部又は全部の音声信号に対する増幅度とする構成にした。これにより、子音開始時の端点だけでなく、その前後の音声成分をも同時に強調し、明瞭な音声を提供することができる。
【0020】
また、放送装置において、並列に配置された互いに通過帯域が異なる複数のくし型フィルタからなるくし型フィルタユニットを備え、異なる音信号をそれぞれ異なる前記通過帯域が異なるくし型フィルタに通して出力する構成とした。これにより、アナウンス音声と警告音が、その構成周波数成分を同一帯域に有することなく、警告音と共に明瞭なアナウンス音声を提供することができる。
【0021】
また、前記くし型フィルタユニットを、複数従属接続する構成とした。これにより、警告音や音声の特性に応じて、くし型フィルタ特性を変更できるようになり、状況に応じて、警告音と共に明瞭なアナウンス音声を提供することができる。
【0022】
また、前記放送装置において、入力信号が音声信号の場合に、前記音声信号の特定の部分を増幅する音声強調部と、前記音声強調部における増幅度に応じて前記くし型フィルタの周波数特性を調整するフィルタ特性調整部を含むようにした。これにより、アナウンス音声を強調し、その強調度合いに応じて最適なくし型フィルタ特性を選択できるようになり、状況に応じて警告音と明瞭なアナウンス音声を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の放送装置は、駅構内等の発車ベル等の警告音、報知音と、発車時のアナウンスが同時に鳴らされた場合に、音声内容の伝達にとって重要でありながら警告音等にかき消されがちなパワーが小さい音声の子音部等を、音声の短時間パワーの変化率に基づいて、選択的に、さらに最適な増幅度で強調するので、音声の音量を不必要に上げることなく、且つ、音声の自然性を損なわずにアナウンス等の内容を明瞭に伝達することができる。
【0024】
従来、このような音声処理においては、パワーが小さい子音部等を正確に抽出することが困難であったが、本発明の放送装置は、複数のフィルタを通過した音声情報のパワーの変化率を複合的に参照することによって、パワーが小さい子音部等を正確に抽出、強調することが出来る。
【0025】
また、子音部等のレベルや特性は、その音韻内容や発話者によって変化するので、常に最適な増幅度を適用するのは困難であったが、本発明の放送装置は、複数の周波数帯域から算出された増幅度の平均値や最大値を前記子音部等の増幅度とすることによって、当該子音部のレベルや特性などに応じて、常に最適な増幅度を適用し、音声の自然性を損なわずに明瞭なアナウンス音声を提供することができる。
【0026】
本発明の放送装置は、音声信号の特定の時刻の前後に適当な時間幅の増幅区間を設け、その区間内で算出された増幅度の平均値や最大値を、前記増幅区間内の全ての音声信号に適用することによって、前記子音部等の端点のみならず、音声信号中の子音成分を余すことなく増幅することができるので、より明瞭なアナウンス音声を提供することができる。
【0027】
本発明の放送装置は、アナウンス音声や警告音などの異なる音信号を通過帯域が異なるくし型フィルタに通すので、アナウンス音声と警告音を同時に鳴らしても両者の構成周波数帯域が重複することなく、アナウンス音声の音量を上げたり、アナウンス音声と警告音の提示時刻をずらさずとも、明瞭なアナウンス音声を提供することができる。
【0028】
本発明の放送装置は、警告音や音声の特性に応じて、前記くし型フィルタ特性を変更できるので、音声の自然性を損なうことなく、明瞭なアナウンス音声を提供することができる。
【0029】
アナウンス音声と警告音を通過帯域が異なるくし型フィルタに通すと、子音部等や警告音のレベルや特性によっては、アナウンス音声及び警告音の連続性が損なわれる場合があるが、本発明の放送装置は、音声の子音部等の強調処理を施したアナウンス音声と警告音を通過帯域が異なるくし型フィルタに通し、さらに警告音や音声の特性に応じて、前記くし型フィルタ特性を変更できるので、アナウンス音声や警告音の連続性が損なわれることなく、自然で明瞭なアナウンス音声と警告音を同時に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一機能を有するものは同一の符号とし、その繰り返しの説明は省略する。
【0031】
図1は、本発明の実施形態におけるシステムのブロック図であり、入力音声Sの所定の周波数成分を通過させるフィルタ部1と、音声信号の特定の時刻の前後に複数の時間フレームを形成するフレーム分割部2と、前記フレーム分割部で分割されたフレーム内の音声信号のパワーをそれぞれ算出するパワー算出部3と、前記パワー算出部で算出されたそれぞれのパワーからパワーの変化率を算出するパワー変化率算出部4と、前記パワー変化率算出部で算出されたパワー変化率から入力音声信号を増幅するか否かを決定する増幅決定部5と、前記増幅決定部で増幅すると決定された場合に前記パワー変化率に基づいて増幅度を算出する増幅度算出部6と、前記増幅度算出部で算出された増幅度に応じて入力音声を増幅する音声増幅部7から構成されている。
【0032】
ここでフィルタ部1の周波数特性は、音声の音節構造を分かりやすくするために、音声の母音の音エネルギーがある1000 Hz 付近にピークを持ち、3000 Hz 以上の成分を殆ど通さないような周波数特性とする。
【0033】
フレーム分割部2は、図2に示すように、フィルタを通過した音声Sfの時刻tの前後に、例えばそれぞれ 15 ms のフレーム(時間窓) W1、W2 を形成する。このフレームは、連続的に(1サンプルずつ)時間軸上を移動する。パワー算出部3は急激にレベルが増加、または減少する部分を見つけるために、W1、W2内のパワーをそれぞれ算出する。
【0034】
パワー変化率算出部4は、 W1 の平均パワーをpf1(t)、W2 の平均パワー をpf2(t) として変化率を算出する。本実施例では、この変化率の算出に、例えば、以下の式を使用する。
【数1】
JP0005124768B2_000002t.gif

【0035】
q(t) は -1~1 の値を取り、時刻 t の近傍におけるパワーの変化がなければ 0、パワーの減少に対しては正、増加に対しては負となる。増幅決定部5は、このq(t)の値を参照し、パワーの変化がなければ増幅しないなどの決定を行う。
【0036】
増幅度算出部6は、増幅決定部5で増幅すると決定された場合に、q(t)をパラメータとして、W1、W2 の境界となる時刻 t におけるパワーの変化率が大きい時には、その時刻における音声信号の増幅度を上げる(子音・音節端の強調)。
【0037】
本実施例では、例えば、入力音声Sの振幅を n^{q(t)^2} 倍するという操作によって、音声増幅部7においてパワーの変化が大きい部分のみを増幅することができる(1<n、例えば n=4 とする。振幅を n 倍することが、増幅の上限となる)。図3は、本発明の第2の実施形態におけるシステムのブロック図であり、図1の実施の形態におけるフィルタ部が、通過帯域の異なる複数のフィルタで構成されている。
【0039】
人間が騒音下で音声を聴取、認識する際には、音声の端点を正確に認識することが最も重要であり、その部分が認識できれば、後に続く音節ないし音脈を知覚することは極めて容易となることが知られている。
【0040】
本発明は、このような、人間の既知の聴覚的特性に鑑みて為されたものであり、単に子音を強調し、その明瞭度のみを上げることを目的とするのではなく、警告音等に聴取を妨げられる子音等の音声の端点を確実に聴き取らせ、その後に続く音節ないし音脈の知覚的体制化を容易にするためのものである。
【0041】
例えば、本実施例では、図3のフィルタ部を音声の母音の音エネルギーがある1000 Hz 付近にピークを持ち、3000 Hz 以上の成分を殆ど通さないような周波数特性を有するフィルタと、8000 Hz 以下の成分をほぼ均等に通すフィルタの2種類のフィルタによる構成とする。
【0042】
この2種類のフィルタ出力より、図1と同様の方法でそれぞれパワー変化率を算出し、それぞれ増幅決定部5で増幅するか否かの決定をした上で、増幅することが決定された際には、それぞれのパワー変化率に基づいて、最も適した最終的な増幅度を決定する。
【0043】
図4に示す第3の実施形態におけるシステムのブロック図では、例えば、8000 Hz 以下の成分をほぼ均等に通すフィルタを通した時に得られる信号 S0 の W1、W2 における平均パワーを p01(t)、p02(t) とする。
【0044】
ここで、各フィルタ部を通過したそれぞれの音声信号に対するパワーの比率をp1(t)=pf1(t)/p01(t)、p2(t)=pf2(t)/p02(t) とすると、
【数2】
JP0005124768B2_000003t.gif
は、自乗することによって音声スペクトル中の第1フォルマント、第2フォルマントの代表される母音らしさに関連付けられているパワーの、音全体に占める比率がどのくらい急激に変化しているかを表すので、q(t)と同様に子音、音節端を抽出し、増幅するか否かの決定や増幅度の算出に使用することができる。
【0045】
なお、q(t)、u(t)はそれぞれ単独でも使うことができるし、r1(t) = 1/{n^(q(t)^2)} と、r2(t) = 1/{n^(u(t)^2)}との平均値もしくは加重平均値を採用したり、両者のうち小さな値を取ったりすることによって、併用することもできる。
【0046】
図5は、本発明の第4の実施形態におけるシステムのブロック図であり、増幅するための時間幅を特定する増幅区間特定部8が設けられている。
【0047】
音声の端点をより明瞭に認識するためには、パワーの変化が大きい時点だけでなく、その時点の近傍にも重要な情報が含まれる。本実施例では、例えば、tの前後 7 ms (計 14 ms)の増幅区間(時間窓)を取って、 r(t) = 1/{n^(q(t)^2)} の代表値c(t) を求める(t-0.007~t+0.007 秒の範囲における r の値を平均したり、両者のうちの小さな値を取って時刻 t の近傍における r の代表値 c(t) とする。すなわち、時間窓 14 ms の移動平均)。この場合は、増幅度算出部6では、c(t)の逆数を増幅度とする。
【0048】
図6は、本発明の第5の実施形態におけるシステムのブロック図であり、並列に配置された互いに通過帯域が異なる複数のくし型フィルタからなるくし型フィルタユニット9に対し、音声信号と警告音信号をそれぞれ異なるくし型フィルタに通して出力している。
【0049】
本実施例では、音声を知覚する上で特に重要な 3500 Hz 以下の帯域において、音声信号と発車ベルとをくし型フィルタに通している。この場合のくしの通常帯域に当たる帯域幅を、臨界帯域程度、あるいはそれよりも大きくし、二つのフィルタの通過帯域を交互に組み合わせる。このことによって、両信号に極端なレベル差がない限り、どちらの信号も交互の帯域で聴きとられることが保証される。
【0050】
時刻 t秒における入力信号を x(t) とし、出力信号を y(t) とする。0、 1100、 2200... Hz の付近の成分を残し、550、 1650、 2750... Hz の付近の成分を抑えるようなフィルターは、
【数3】
JP0005124768B2_000004t.gif
によって得られる。
【0051】
逆に0、 1100、 2200... Hz の付近の成分を抑え、550、 1650、 2750... Hz の付近の成分を残すようなフィルターは、
【数4】
JP0005124768B2_000005t.gif
によって得られる。
【0052】
図7、図8に、数3、数4で表されたくし型フィルタの周波数特性をそれぞれ示す。本実施例では、音声信号に図7の、警告音に図8のフィルタを用いることを想定しているが、それぞれのフィルタに異なる警告音信号を通すなど、さまざまな変形がありうる。
【0053】
図9は、本発明の第6の実施形態におけるシステムのブロック図であり、並列に配置された互いに通過帯域が異なる複数のくし型フィルタで構成されたくし型フィルタユニット9を複数従属接続している。
【0054】
警告音とアナウンス音声とを聴覚的に分離するためには、単一のくし型フィルタでは充分ではない場合があるので、フィルタを従属接続することによって、特性を変えることができるフィルタ構成としている。
【0055】
図10は、本発明の第7の実施形態におけるシステムのブロック図であり、音声強調部10とフィルタ特性調整部11が設けられている。第5の実施の形態及び第6の実施の形態のように、通過帯域が異なるくし型フィルタをアナウンス音声と警告音に交互に適用すると、くし型フィルタの特性によっては、パワーが小さい音声の子音部等の情報を損ない、音声の連続性が失われてしまう場合があるので、くし型フィルタへの入力の前段で子音部を強調する。
【0056】
本実施例では、音声強調部10を第1~第4の実施の形態で述べたような音声強調方式を使用するものとする。
【0057】
第1~第4の実施の形態で述べたような音声強調(子音強調、音節端強調)を受けた部分に、このようなくし型フィルタをかけると、音声としての自然さを著しく減じてしまうので、そのような部分についてはフィルタ特性調整部11でフィルタのかかり具合を弱める。
【0058】
そのためには、強調の程度を示す c(t) を 0~1 の変域に置きかえることが、計算上都合がよいので、例えば、
【数5】
JP0005124768B2_000006t.gif
を算出する。c(t) は 1/n ~ 1 の値を取り、この値が1未満のときに強調がなされるのであるが、Q(t) は 0~1 の値を取り、この値が1未満のときに強調がなされる。この値の小さいほど強調の程度(増幅度)が大きくなる。
【0059】
図7、図8に示したフィルタの代わりに、
【数6】
JP0005124768B2_000007t.gif
あるいは、
【数7】
JP0005124768B2_000008t.gif

【0060】
なお、本実施例では、アナウンス音声と警告音に対して、常に音声強調処理およびくし型フィルタ処理を行うように想定されているが、両信号がやむをえず重なった時にのみ、本発明の方式を用いても良い。
【0061】
また、本実施例では、音声信号と警告音信号をそれぞれ異なるくし型フィルタに通して出力しているが、これは、銀行のATM機が複数並んで同時にガイド音声を発しているようなケースで、それぞれのガイド音声をそれぞれ異なるくし型フィルタに通して出力し、各ATM機の使用者が、それぞれのガイド音声を明瞭に聞き取れるようにするような構成としても良い。
【0062】
また、本実施例では、くし型フィルタを構成する際に、くし状の周波数ノッチを線形周波数スケール上で周波数的に等間隔に配置しているが、これはアナウンス音声と警告音の周波数成分が重なり合わねば良いので、周波数スケールを対数スケールやバークスケールとしてくし型フィルタを構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるシステムのブロック図
【図2】フレーム分割部の一例
【図3】本発明の第2の実施形態におけるシステムのブロック図
【図4】本発明の第3の実施形態におけるシステムのブロック図
【図5】本発明の第4の実施形態におけるシステムのブロック図
【図6】本発明の第5の実施形態におけるシステムのブロック図
【図7】くし型フィルタの周波数特性の一例
【図8】くし型フィルタの周波数特性の一例
【図9】本発明の第6の実施形態におけるシステムのブロック図
【図10】本発明の第7の実施形態におけるシステムのブロック図
【図11】かかり具合を減じた場合のくし型フィルタの周波数特性の一例
【符号の説明】
【0064】
1…フィルタ部、 2…フレーム分割部、 3…パワー算出部、 4…パワー変化率算出部、 5…増幅決定部、 6…増幅度算出部、 7…音声増幅部、 8…増幅区間特定部、 9…くし型フィルタユニット、 10…音声強調部、 11…フィルタ特性調整部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10