TOP > 国内特許検索 > リン酸化酵素の新規基質ポリペプチド > 明細書

明細書 :リン酸化酵素の新規基質ポリペプチド

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5476559号 (P5476559)
公開番号 特開2007-236388 (P2007-236388A)
登録日 平成26年2月21日(2014.2.21)
発行日 平成26年4月23日(2014.4.23)
公開日 平成19年9月20日(2007.9.20)
発明の名称または考案の名称 リン酸化酵素の新規基質ポリペプチド
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07K   7/06        (2006.01)
C07K   7/08        (2006.01)
C12Q   1/48        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C07K 7/06
C07K 7/08
C12Q 1/48 Z
請求項の数または発明の数 27
全頁数 28
出願番号 特願2007-032018 (P2007-032018)
出願日 平成19年2月13日(2007.2.13)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 掲載者:Elsevier B.V. 掲載物:Biochimie 掲載アドレス:http://www.sciencedirect.com/ 電気通信回線発表日:2006年9月11日
優先権出願番号 2006034243
優先日 平成18年2月10日(2006.2.10)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年2月8日(2010.2.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
発明者または考案者 【氏名】片山 佳樹
【氏名】姜 貞勲
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100101904、【弁理士】、【氏名又は名称】島村 直己
【識別番号】100130443、【弁理士】、【氏名又は名称】遠藤 真治
審査官 【審査官】北村 弘樹
参考文献・文献 特表2008-519861(JP,A)
Mamm. Genome,2000年,11 (10),p.890-898
Biochimie,2007年,89,p.39-47
LIM-kinase [Homo sapiens],NCBI Protein[online],2000年11月22日,[2012年6月25日検索], インターネット<URL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/AAC13886.1>, Accession No.AAC13886
調査した分野 C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
Gly-Leu-Gln-Met-Gly-Thr-Asn-Lys-Phe-Ala(配列番号1)、
Met-Thr-Ala-Tyr-Gly-Thr-Arg-Arg-His-Leu(配列番号2)、
Cys-Gln-Gln-Arg-Glu-Lys-Thr-Arg-Trp-Leu-Asn(配列番号3)、
Lys-Ser-Arg-Leu-Gln-Thr-Ala-Pro-Val-Pro-Met(配列番号4)、
Ala-Glu-Thr-His-Lys-Leu-Thr-Phe-Arg-Glu-Asn(配列番号5)、
Cys-Arg-Asp-Lys-Tyr-Lys-Thr-Leu-Arg-Gln-Ile-Arg(配列番号6)、
Gly-Leu-Gln-Met-Gly-Ser-Asn-Lys-Phe-Ala(配列番号7)、
Met-Thr-Ala-Tyr-Gly-Ser-Arg-Arg-His-Leu(配列番号8)、
Cys-Gln-Gln-Arg-Glu-Lys-Ser-Arg-Trp-Leu-Asn(配列番号9)、
Lys-Ser-Arg-Leu-Gln-Ser-Ala-Pro-Val-Pro-Met(配列番号10)、
Ala-Glu-Thr-His-Lys-Leu-Ser-Phe-Arg-Glu-Asn(配列番号11)、
Cys-Arg-Asp-Lys-Tyr-Lys-Ser-Leu-Arg-Gln-Ile-Arg(配列番号12)、
Arg-Lys-Lys-Arg-Tyr-Thr-Val-Val-Gln-Asn-Pro(配列番号23)、または
Arg-Lys-Lys-Arg-Tyr-Ser-Val-Val-Gln-Asn-Pro(配列番号24)
のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項2】
配列番号3、6、9、12、23、または24のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列を含む請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
標識物質により標識化されている請求項1または2記載のポリペプチド。
【請求項4】
Rho-キナーゼ活性の測定方法であって、
(a) 請求項1~3のいずれか1項記載のポリペプチドと、Rho-キナーゼ活性を有する可能性のある試料とを反応させて、ポリペプチドをリン酸化する工程と、
(b) 工程(a)でリン酸化されたポリペプチドを定量する工程と
を含む前記方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項記載のポリペプチドを含む、Rho-キナーゼ活性の測定用試薬。
【請求項6】
Arg-Asp-Met-Arg-Asn-Ser-Phe-Asn-Leu-Gly-Val(配列番号13)、
Leu-Asp-Met-Arg-Asn-Ser-Phe-Asn-Leu-Gly-Val(配列番号14)、
Arg-Asp-Met-Arg-Asn-Thr-Phe-Asn-Leu-Gly-Val(配列番号15)、または
Leu-Asp-Met-Arg-Asn-Thr-Phe-Asn-Leu-Gly-Val(配列番号16)
のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項7】
配列番号13または配列番号15のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列を含む請求項記載のポリペプチド。
【請求項8】
標識物質により標識化されている請求項または記載のポリペプチド。
【請求項9】
タンパク質キナーゼ C eta活性の測定方法であって、
(a) 請求項のいずれか1項記載のポリペプチドと、タンパク質キナーゼ C eta活性を有する可能性のある試料とを反応させて、ポリペプチドをリン酸化する工程と、
(b) 工程(a)でリン酸化されたポリペプチドを定量する工程と
を含む前記方法。
【請求項10】
請求項のいずれか1項記載のポリペプチドを含む、タンパク質キナーゼ C eta活性の測定用試薬。
【請求項11】
Leu-Asp-Arg-Pro-Gln-Ser-Phe-Asn-Leu-Gly-Val(配列番号17)、または
Leu-Asp-Arg-Pro-Gln-Thr-Phe-Asn-Leu-Gly-Val(配列番号18)により表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項12】
標識物質により標識化されている請求項11記載のポリペプチド。
【請求項13】
タンパク質キナーゼ C beta活性の測定方法であって、
(a) 請求項11または12記載のポリペプチドと、タンパク質キナーゼ C beta活性を有する可能性のある試料とを反応させて、ポリペプチドをリン酸化する工程と、
(b) 工程(a)でリン酸化されたポリペプチドを定量する工程と
を含む前記方法。
【請求項14】
請求項11または12記載のポリペプチドを含む、タンパク質キナーゼ C beta活性の測定用試薬。
【請求項15】
Phe-Lys-Lys-Gln-Gly-Ser-Phe-Ala-Lys-Lys-Lys(配列番号19)、または
Phe-Lys-Lys-Gln-Gly-Thr-Phe-Ala-Lys-Lys-Lys(配列番号20)
により表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項16】
標識物質により標識化されている請求項15記載のポリペプチド。
【請求項17】
タンパク質キナーゼ C alpha活性の測定方法であって、
(a) 請求項15または16記載のポリペプチドと、タンパク質キナーゼ C alpha活性を有する可能性のある試料とを反応させて、ポリペプチドをリン酸化する工程と、
(b) 工程(a)でリン酸化されたポリペプチドを定量する工程と
を含む前記方法。
【請求項18】
タンパク質キナーゼ C alpha活性に関連する浸潤性及び転移性癌疾患の検出補助方法であって、
(a) 請求項15または16記載のポリペプチドと、哺乳動物から単離された成分を含むタンパク質キナーゼ C alpha活性を有する可能性のある試料とを反応させて、ポリペプチドをリン酸化する工程と、
(b) 工程(a)でリン酸化されたポリペプチドを定量する工程と
を含む前記方法。
【請求項19】
請求項15または16記載のポリペプチドを含む、タンパク質キナーゼ C alpha活性の測定用試薬。
【請求項20】
請求項15または16記載のポリペプチドを含む、タンパク質キナーゼ C alpha活性に関連する浸潤性及び転移性癌疾患の診断薬。
【請求項21】
Leu-Arg-Val-Gln-Asn-Ser-Leu-Arg-Arg-Arg-Arg(配列番号21)、または
Leu-Arg-Val-Gln-Asn-Thr-Leu-Arg-Arg-Arg-Arg(配列番号22)
により表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項22】
標識物質により標識化されている請求項21記載のポリペプチド。
【請求項23】
請求項1または2記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項24】
請求項または記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項25】
請求項11記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項26】
請求項15記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項27】
請求項21記載のポリペプチドをコードする核酸。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はセリン/スレオニンキナーゼに分類される各種リン酸化酵素により特異的にリン酸化される基質ポリペプチドおよびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
セリン/スレオニンキナーゼであるタンパク質キナーゼA(Protein Kinase A, PKA)、タンパク質キナーゼ C (Protein Kinase C, PKC)およびRho-キナーゼは RXS/TまたはRXXS/Tという同じリン酸化基質モチーフを有する。これらのセリン/スレオニンキナーゼは、基質モチーフが共通であるため、個々のセリン/スレオニンキナーゼに特異的な基質ポリペプチドは特定されていない。
【0003】
これらのセリン/スレオニンキナーゼは生体内のシグナル伝達系の制御に重要な酵素である。従って、個々のセリン/スレオニンキナーゼに特異的な基質ポリペプチドが提供されれば、生体内のシグナル伝達系の研究を効率的に行うことができるものと期待される。
【0004】
Rho-キナーゼは循環器疾患等に深く関係するリン酸化酵素として注目されていることから(非特許文献1)、Rho-キナーゼに対する特異的基質ポリペプチドは循環器疾患の診断や研究の用途に用いることができる。
【0005】
タンパク質キナーゼ Cは幾つかのサブグループに分類される。そのサブグループにタンパク質キナーゼ C eta(η)、タンパク質キナーゼ C alpha(α)、タンパク質キナーゼ C beta(β)等がある。タンパク質キナーゼ C etaは、脳神経膠細胞腫(グリオーマ)に深く関係するリン酸化酵素として注目されている。またタンパク質キナーゼ C alpha およびタンパク質キナーゼ C beta は共に発ガンやガンの増殖などに重要な酵素である。よって、タンパク質キナーゼ C eta(η)、タンパク質キナーゼ C alpha(α)、タンパク質キナーゼ C beta(β)等に対する特異的基質ポリペプチドはそれが関与する疾患の診断や研究の用途に用いることができる。
【0006】

【非特許文献1】Somlyo, A. P., and Somlyo, A. V. (2003) Physiol. Rev. 83, 1325-1358
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、Rho-キナーゼ、タンパク質キナーゼ C eta、タンパク質キナーゼ C alpha、またはタンパク質キナーゼ C betaにより特異的にリン酸化を受ける基質ポリペプチドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の発明を包含する。
(1) 以下の(a)または(b)のポリペプチド:
(a) 一般式(I)
Xaa-Xaa-Xaa-Xaa1-Xaa-Xaa-Ser/Thr-Xaa2-Xaa3-Xaa-Xaa4
(式中、Xaaは互いに独立に任意のアミノ酸残基であり;Xaa1はArgまたはLysであり;Xaa2およびXaa3は互いに独立にPhe, Leu, Val, Trp, ArgおよびLysからなる群から選択され;Xaa4は1個の任意のアミノ酸残基または2個の任意のアミノ酸残基からなるペプチドである)
で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b) 上記(a)に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列を含み、Rho-キナーゼにより選択的にリン酸化され得るポリペプチド。
【0009】
(2) Xaa1がArgであり、Xaa4が1個の任意のアミノ酸残基である、(1)記載のポリペプチド。
(3)以下の(a)または(b)のポリペプチド:
(a) Gly-Leu-Gln-Met-Gly-Thr-Asn-Lys-Phe-Ala(配列番号1)、
Met-Thr-Ala-Tyr-Gly-Thr-Arg-Arg-His-Leu(配列番号2)、
Cys-Gln-Gln-Arg-Glu-Lys-Thr-Arg-Trp-Leu-Asn(配列番号3)、
Lys-Ser-Arg-Leu-Gln-Thr-Ala-Pro-Val-Pro-Met(配列番号4)、
Ala-Glu-Thr-His-Lys-Leu-Thr-Phe-Arg-Glu-Asn(配列番号5)、
Cys-Arg-Asp-Lys-Tyr-Lys-Thr-Leu-Arg-Gln-Ile-Arg(配列番号6)、
Gly-Leu-Gln-Met-Gly-Ser-Asn-Lys-Phe-Ala(配列番号7)、
Met-Thr-Ala-Tyr-Gly-Ser-Arg-Arg-His-Leu(配列番号8)、
Cys-Gln-Gln-Arg-Glu-Lys-Ser-Arg-Trp-Leu-Asn(配列番号9)、
Lys-Ser-Arg-Leu-Gln-Ser-Ala-Pro-Val-Pro-Met(配列番号10)、
Ala-Glu-Thr-His-Lys-Leu-Ser-Phe-Arg-Glu-Asn(配列番号11)、
Cys-Arg-Asp-Lys-Tyr-Lys-Ser-Leu-Arg-Gln-Ile-Arg(配列番号12)、
Arg-Lys-Lys-Arg-Tyr-Thr-Val-Val-Gln-Asn-Pro(配列番号23)、または
Arg-Lys-Lys-Arg-Tyr-Ser-Val-Val-Gln-Asn-Pro(配列番号24)
のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b) 上記(a)に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列を含み、Rho-キナーゼにより選択的にリン酸化され得るポリペプチド。
【0010】
(4) 配列番号3、6、9、または12のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列を含む(3)記載のポリペプチド。
(5) 標識物質により標識化されている(1)~(4)のいずれかに記載のポリペプチド。
(6) Rho-キナーゼ活性の測定方法であって、
(a) (1)~(5)のいずれかに記載のポリペプチドと、Rho-キナーゼ活性を有する可能性のある試料とを反応させて、ポリペプチドをリン酸化する工程と、
(b) 工程(a)でリン酸化されたポリペプチドを定量する工程と
を含む前記方法。
【0011】
(7) Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の診断方法であって、
(a) (1)~(5)のいずれかに記載のポリペプチドと、哺乳動物から単離された成分を含むRho-キナーゼ活性を有する可能性のある試料とを反応させて、ポリペプチドをリン酸化する工程と、
(b) 工程(a)でリン酸化されたポリペプチドを定量する工程と
を含む前記方法。
(8) (1)~(5)のいずれかに記載のポリペプチドを含む、Rho-キナーゼ活性の測定用試薬。
(9) (1)~(5)のいずれかに記載のポリペプチドを含む、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の診断薬。
【0012】
(10)以下の(a)または(b)のポリペプチド:
(a) 一般式(II)
Xaa5-Xaa-Xaa6-Xaa7-Asn-Ser/Thr-Xaa8-Xaa9-Leu-Xaa-Xaa
(式中、XaaおよびXaa6は互いに独立に任意のアミノ酸残基であり;Xaa5はArgまたはLysであり;Xaa7はArgまたはLysであり;Xaa8およびXaa9は互いに独立にPhe, Leu, Val, およびTrpからなる群から選択される)
で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b) 上記(a)に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列を含み、タンパク質キナーゼC etaにより選択的にリン酸化され得るポリペプチド。
【0013】
(11) Xaa6がMet, Arg, Lys, およびHisからなる群から選択される、(10)記載のポリペプチド。
(12)以下の(a)または(b)のポリペプチド:
(a) Arg-Asp-Met-Arg-Asn-Ser-Phe-Asn-Leu-Gly-Val(配列番号13)、
Leu-Asp-Met-Arg-Asn-Ser-Phe-Asn-Leu-Gly-Val(配列番号14)、
Arg-Asp-Met-Arg-Asn-Thr-Phe-Asn-Leu-Gly-Val(配列番号15)、または
Leu-Asp-Met-Arg-Asn-Thr-Phe-Asn-Leu-Gly-Val(配列番号16)
のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b) 上記(a)に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列を含み、タンパク質キナーゼC etaにより選択的にリン酸化され得るポリペプチド。
【0014】
(13) 配列番号13または配列番号15のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列を含む(12)記載のポリペプチド。
(14) 標識物質により標識化されている(10)~(13)のいずれかに記載のポリペプチド。
(15) タンパク質キナーゼ C eta活性の測定方法であって、
(a) (10)~(14)のいずれかに記載のポリペプチドと、タンパク質キナーゼ C eta活性を有する可能性のある試料とを反応させて、ポリペプチドをリン酸化する工程と、
(b) 工程(a)でリン酸化されたポリペプチドを定量する工程と
を含む前記方法。
【0015】
(16) タンパク質キナーゼ C eta活性に関連する疾患の診断方法であって、
(a) (10)~(14)のいずれかに記載のポリペプチドと、哺乳動物から単離された成分を含むタンパク質キナーゼ C eta活性を有する可能性のある試料とを反応させて、ポリペプチドをリン酸化する工程と、
(b) 工程(a)でリン酸化されたポリペプチドを定量する工程と
を含む前記方法。
(17) (10)~(14)のいずれかに記載のポリペプチドを含む、タンパク質キナーゼ C eta活性の測定用試薬。
(18) (10)~(14)のいずれかに記載のポリペプチドを含む、タンパク質キナーゼ C eta活性に関連する疾患の診断薬。
【0016】
(19) 以下の(a)または(b)のポリペプチド:
(a) 一般式(III)
Leu-Xaa-Xaa10-Xaa-Xaa11-Ser/Thr-Xaa12-Xaa13-Leu-Xaa-Xaa
(式中、Xaaは互いに独立に任意のアミノ酸残基であり; Xaa10はArg, Lys,およびHisからなる群から選択され;Xaa11はGlnまたはAsnであり;Xaa12はPhe, Leu, Val, およびTrpからなる群から選択され;Xaa13はPhe, Leu, Val, Trp, およびAsnからなる群から選択される)
で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b) 上記(a)に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列を含み、タンパク質キナーゼC betaにより選択的にリン酸化され得るポリペプチド。
(20) Xaa11がGlnである、(19) 記載のポリペプチド。
(21) 以下の(a)または(b)のポリペプチド:
(a) Leu-Asp-Arg-Pro-Gln-Ser-Phe-Asn-Leu-Gly-Val(配列番号17)、または
Leu-Asp-Arg-Pro-Gln-Thr-Phe-Asn-Leu-Gly-Val(配列番号18)により表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b) 上記(a)に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列を含み、タンパク質キナーゼC betaにより選択的にリン酸化され得るポリペプチド。
【0017】
(22) 標識物質により標識化されている(19)~(21)のいずれかに記載のポリペプチド。
(23) タンパク質キナーゼ C beta活性の測定方法であって、
(a) (19)~(22)のいずれかに記載のポリペプチドと、タンパク質キナーゼ C beta活性を有する可能性のある試料とを反応させて、ポリペプチドをリン酸化する工程と、
(b) 工程(a)でリン酸化されたポリペプチドを定量する工程と
を含む前記方法。
(24) タンパク質キナーゼ C beta活性に関連する疾患の診断方法であって、
(a) (19)~(22)のいずれかに記載のポリペプチドと、哺乳動物から単離された成分を含むタンパク質キナーゼ C beta活性を有する可能性のある試料とを反応させて、ポリペプチドをリン酸化する工程と、
(b) 工程(a)でリン酸化されたポリペプチドを定量する工程と
を含む前記方法。
(25) (19)~(22)のいずれかに記載のポリペプチドを含む、タンパク質キナーゼ C beta活性の測定用試薬。
(26) (19)~(22)のいずれかに記載のポリペプチドを含む、タンパク質キナーゼ C beta活性に関連する疾患の診断薬。
【0018】
(27) 以下の(a)または(b)のポリペプチド:
(a) Phe-Lys-Lys-Gln-Gly-Ser-Phe-Ala-Lys-Lys-Lys(配列番号19)、または
Phe-Lys-Lys-Gln-Gly-Thr-Phe-Ala-Lys-Lys-Lys(配列番号20)
により表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b) 上記(a)に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列を含み、タンパク質キナーゼC alphaにより選択的にリン酸化され得るポリペプチド。
(28) 標識物質により標識化されている(27)記載のポリペプチド。
(29) タンパク質キナーゼ C alpha活性の測定方法であって、
(a) (27)または(28)記載のポリペプチドと、タンパク質キナーゼ C alpha活性を有する可能性のある試料とを反応させて、ポリペプチドをリン酸化する工程と、
(b) 工程(a)でリン酸化されたポリペプチドを定量する工程と
を含む前記方法。
(30) タンパク質キナーゼ C alpha活性に関連する疾患の診断方法であって、
(a) (27)または(28)記載のポリペプチドと、哺乳動物から単離された成分を含むタンパク質キナーゼ C alpha活性を有する可能性のある試料とを反応させて、ポリペプチドをリン酸化する工程と、
(b) 工程(a)でリン酸化されたポリペプチドを定量する工程と
を含む前記方法。
(31) (27)または(28)記載のポリペプチドを含む、タンパク質キナーゼ C alpha活性の測定用試薬。
(32) (27)または(28)記載のポリペプチドを含む、タンパク質キナーゼ C alpha活性に関連する疾患の診断薬。
【0019】
(33) 以下の(a)または(b)のポリペプチド:
(a) Leu-Arg-Val-Gln-Asn-Ser-Leu-Arg-Arg-Arg-Arg(配列番号21)、または
Leu-Arg-Val-Gln-Asn-Thr-Leu-Arg-Arg-Arg-Arg(配列番号22)
により表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b) 上記(a)に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列を含み、タンパク質キナーゼC alpha, beta, gamma, deltaおよびzetaによりリン酸化され得るポリペプチド。
(34) 標識物質により標識化されている(33)記載のポリペプチド。
(35) (1)~(4)のいずれかに項記載のポリペプチドをコードする核酸。
(36) (10)~(13)のいずれかに項記載のポリペプチドをコードする核酸。
(37) (19)~(21)のいずれかに項記載のポリペプチドをコードする核酸。
(38) (27)記載のポリペプチドをコードする核酸。
(39) (33)記載のポリペプチドをコードする核酸。
【0020】
なお本明細書においてSer/Thrという表現は、Ser残基またはThr残基のいずれか一方であることを意味する。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、Rho-キナーゼ、タンパク質キナーゼ C eta、タンパク質キナーゼ C alpha、またはタンパク質キナーゼ C betaにより特異的にリン酸化を受ける基質ポリペプチドが提供される。
【0022】
本発明の基質ポリペプチドは、対応するキナーゼの活性の測定に用いることができる。
本発明の基質ポリペプチドはまた、対応するキナーゼの活性が関与する疾患の診断に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明をより詳細に説明する。
(1) ポリペプチド
本発明は第1に、Rho-キナーゼにより特異的にリン酸化を受ける基質ポリペプチド、それを用いたRho-キナーゼ活性の測定方法と測定用試薬、ならびにRho-キナーゼ活性に関連する疾患の診断方法と診断薬に関する。
【0024】
Rho-キナーゼにより特異的にリン酸化を受ける基質ポリペプチドとしては、一般式(I)
Xaa-Xaa-Xaa-Xaa1-Xaa-Xaa-Ser/Thr-Xaa2-Xaa3-Xaa-Xaa4
(式中、Xaaは互いに独立に任意のアミノ酸残基であり;Xaa1はArgまたはLysであり;Xaa2およびXaa3は互いに独立にPhe, Leu, Val, Trp, ArgおよびLysからなる群から選択され;Xaa4は1個の任意のアミノ酸残基または2個の任意のアミノ酸残基からなるペプチドである)
で表されるアミノ酸配列を含む、好ましくは20アミノ酸残基以下のポリペプチドが挙げられ、なかでも一般式(I)で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが好ましい。特に、Xaa1がArgであり、Xaa4が1個の任意のアミノ酸残基であることが好ましい。Xaa3はArgまたはLysであることが好ましい。
【0025】
上記の通りXaa2およびXaa3は疎水性アミノ酸残基(Phe, Leu, Val, Trp)であってもカチオン性アミノ酸残基(Arg, Lys)であってもよい。疎水性アミノ酸残基である場合にはRho-キナーゼによる特異性が高まり、カチオン性アミノ酸残基である場合にはリン酸化反応の反応性が高まる。
【0026】
一般式(I)で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドとして特に好ましいものは、配列番号3、6、9、12、23または24のアミノ酸配列を含む、好ましくは20アミノ酸残基以下のポリペプチドである。配列番号3、6、9、12、23または24のアミノ酸配列からなるポリペプチドがより好ましく、配列番号3、6、9または12のアミノ酸配列からなるポリペプチドが特に好ましく、なかでも、配列番号3または9のアミノ酸配列からなるポリペプチドが好ましい。
【0027】
Rho-キナーゼにより特異的にリン酸化を受ける基質ポリペプチドとしては、上記以外に配列番号1,2,4,5,7,8,10,11のアミノ酸配列を含む、好ましくは20アミノ酸残基以下のポリペプチドが挙げられる。配列番号1,2,4,5,7,8,10,11のアミノ酸配列からなるポリペプチドがより好ましい。
【0028】
Rho-キナーゼにより特異的にリン酸化を受ける基質ポリペプチドとしてはまた、上記のポリペプチドが有するアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列を含み、Rho-キナーゼにより選択的にリン酸化され得るポリペプチドも好適に使用できる。ここで「1以上」とは通常は「1~5個」であり、より典型的には「1~3個」であり、最も好ましくは「1~2個」である。また「Rho-キナーゼにより選択的にリン酸化され得るポリペプチド」とは、Rho-キナーゼのみによりリン酸化され、その他のセリン/スレオニンキナーゼ類によっては全くリン酸化を受けないポリペプチドだけでなく、Rho-キナーゼによるリン酸化速度が他のセリン/スレオニンキナーゼ類によるリン酸化速度と比較して高く、Rho-キナーゼによるリン酸化を測定する際に、混在する他のセリン/スレオニンキナーゼ類によるリン酸化の影響を実質的に無視できるポリペプチドをも包含する。
【0029】
本発明は第2に、タンパク質キナーゼ C etaにより特異的にリン酸化を受ける基質ポリペプチド、それを用いたタンパク質キナーゼ C eta活性の測定方法と測定用試薬、ならびにタンパク質キナーゼ C eta活性に関連する疾患の診断方法と診断薬に関する。
【0030】
タンパク質キナーゼ C etaにより特異的にリン酸化を受ける基質ポリペプチドとしては、一般式(II)
Xaa5-Xaa-Xaa6-Xaa7-Asn-Ser/Thr-Xaa8-Xaa9-Leu-Xaa-Xaa
(式中、XaaおよびXaa6は互いに独立に任意のアミノ酸残基であり;Xaa5はArgまたはLysであり;Xaa7はArgまたはLysであり;Xaa8およびXaa9は互いに独立にPhe, Leu, Val, およびTrpからなる群から選択される)
で表されるアミノ酸配列を含む、好ましくは20アミノ酸残基以下のポリペプチドが挙げられ、なかでも一般式(II)で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが好ましい。特に、Xaa6がMet, Arg, Lys, およびHisからなる群から選択されるアミノ酸残基であることが好ましく、Xaa6がMetまたはHisであることがより好ましく、Xaa6がMetであることが最も好ましい。
【0031】
一般式(II)で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドとして特に好ましいものは、配列番号13または15のアミノ酸配列を含む、好ましくは20アミノ酸残基以下のポリペプチドである。配列番号13または15のアミノ酸配列からなるポリペプチドがより好ましい。
【0032】
タンパク質キナーゼ C etaにより特異的にリン酸化を受ける基質ポリペプチドとしては、上記以外に配列番号14または16のアミノ酸配列を含む、好ましくは20アミノ酸残基以下のポリペプチドが挙げられる。配列番号14または16のアミノ酸配列からなるポリペプチドがより好ましい。
【0033】
タンパク質キナーゼ C etaにより特異的にリン酸化を受ける基質ポリペプチドとしてはまた、上記のポリペプチドが有するアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列を含み、タンパク質キナーゼ C etaにより選択的にリン酸化され得るポリペプチドも好適に使用できる。ここで「1以上」とは通常は「1~5個」であり、より典型的には「1~3個」であり、最も好ましくは「1~2個」である。また「タンパク質キナーゼ C etaにより選択的にリン酸化され得るポリペプチド」とは、タンパク質キナーゼ C etaのみによりリン酸化され、他のセリン/スレオニンキナーゼ類によっては全くリン酸化を受けないポリペプチドだけでなく、タンパク質キナーゼ C etaによるリン酸化速度が他のセリン/スレオニンキナーゼ類によるリン酸化速度と比較して高く、タンパク質キナーゼ C etaによるリン酸化を測定する際に、混在する他のセリン/スレオニンキナーゼ類によるリン酸化の影響を実質的に無視できるポリペプチドをも包含する。
【0034】
本発明は第3に、タンパク質キナーゼ C betaにより特異的にリン酸化を受ける基質ポリペプチド、それを用いたタンパク質キナーゼ C beta活性の測定方法と測定用試薬、ならびにタンパク質キナーゼ C beta活性に関連する疾患の診断方法と診断薬に関する。
【0035】
タンパク質キナーゼ C betaにより特異的にリン酸化を受ける基質ポリペプチドとしては、一般式(III)
Leu-Xaa-Xaa10-Xaa-Xaa11-Ser/Thr-Xaa12-Xaa13-Leu-Xaa-Xaa
(式中、Xaaは互いに独立に任意のアミノ酸残基であり; Xaa10はArg, Lys,およびHisからなる群から選択され;Xaa11はGlnまたはAsnであり;Xaa12はPhe, Leu, Val, およびTrpからなる群から選択され;Xaa13はPhe, Leu, Val, Trp, およびAsnからなる群から選択される)
で表されるアミノ酸配列を含む、好ましくは20アミノ酸残基以下のポリペプチドが挙げられ、なかでも一般式(III)で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが好ましい。特に、Xaa11はGlnであることが好ましい。Xaa13はAsnであることが好ましい。
【0036】
一般式(III)で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドとして特に好ましいものは、配列番号17または18で表されるアミノ酸配列を含む、好ましくは20アミノ酸残基以下のポリペプチドである。配列番号17または18のアミノ酸配列からなるポリペプチドがより好ましい。
【0037】
タンパク質キナーゼ C betaにより特異的にリン酸化を受ける基質ポリペプチドとしてはまた、上記のポリペプチドが有するアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列を含み、タンパク質キナーゼ C betaにより選択的にリン酸化され得るポリペプチドも好適に使用できる。ここで「1以上」とは通常は「1~5個」であり、より典型的には「1~3個」であり、最も好ましくは「1~2個」である。また「タンパク質キナーゼ C betaにより選択的にリン酸化され得るポリペプチド」とは、タンパク質キナーゼ C betaのみによりリン酸化され、他のセリン/スレオニンキナーゼ類によっては全くリン酸化を受けないポリペプチドだけでなく、タンパク質キナーゼ C betaによるリン酸化速度が他のセリン/スレオニンキナーゼ類によるリン酸化速度と比較して高く、タンパク質キナーゼ C betaによるリン酸化を測定する際に、混在する他のセリン/スレオニンキナーゼ類によるリン酸化の影響を実質的に無視できるポリペプチドをも包含する。
【0038】
本発明は第4に、タンパク質キナーゼ C alphaにより特異的にリン酸化を受ける基質ポリペプチド、それを用いたタンパク質キナーゼ C alpha活性の測定方法と測定用試薬、ならびにタンパク質キナーゼ C alpha活性に関連する疾患の診断方法と診断薬に関する。
【0039】
タンパク質キナーゼ C alphaにより特異的にリン酸化を受ける基質ポリペプチドとしては、配列番号19または20により表されるアミノ酸配列を含む、好ましくは20アミノ酸残基以下のポリペプチドが挙げられ、なかでも配列番号19または20により表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが好ましい。
【0040】
タンパク質キナーゼ C alphaにより特異的にリン酸化を受ける基質ポリペプチドとしてはまた、上記のポリペプチドが有するアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列を含み、タンパク質キナーゼ C alphaにより選択的にリン酸化され得るポリペプチドも好適に使用できる。ここで「1以上」とは通常は「1~5個」であり、より典型的には「1~3個」であり、最も好ましくは「1~2個」である。また「タンパク質キナーゼ C alphaにより選択的にリン酸化され得るポリペプチド」とは、タンパク質キナーゼ C alphaのみによりリン酸化され、他のセリン/スレオニンキナーゼ類によっては全くリン酸化を受けないポリペプチドだけでなく、タンパク質キナーゼ C alphaによるリン酸化速度が他のセリン/スレオニンキナーゼ類によるリン酸化速度と比較して高く、タンパク質キナーゼ C alphaによるリン酸化を測定する際に、混在する他のセリン/スレオニンキナーゼ類によるリン酸化の影響を実質的に無視できるポリペプチドをも包含する。
【0041】
本発明は第5に、タンパク質キナーゼ C alpha、beta、gamma、deltaおよびzetaによりリン酸化を受ける基質ポリペプチドに関する。かかる基質ポリペプチドは診断用および治療用のポジティブコントロール基質として利用できる。
【0042】
タンパク質キナーゼ C alpha、beta、gamma、deltaおよびzetaによりリン酸化を受ける基質ポリペプチドとして好ましいものは、配列番号21または22により表されるアミノ酸配列を含む、好ましくは20アミノ酸残基以下のポリペプチドが挙げられ、なかでも配列番号21または22により表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが好ましい。これらのポリペプチドはタンパク質キナーゼ C alpha、betaおよびgammaにより特に強くリン酸化される。
【0043】
タンパク質キナーゼ C alpha、beta、gamma、deltaおよびzetaによりリン酸化を受ける基質ポリペプチドとしてはまた、上記のポリペプチドが有するアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列を含み、タンパク質キナーゼC alpha, beta, gamma, deltaおよびzetaによりリン酸化され得るポリペプチドも好適に使用できる。ここで「1以上」とは通常は「1~5個」であり、より典型的には「1~3個」であり、最も好ましくは「1~2個」である。
【0044】
なお一般式(I), (II)および(III)は以下のようにして決定した。PKCおよびRho-キナーゼの基質ペプチドはRXS/TまたはRXXS/Tといった基本骨格(またはモチーフ)を有している。これらの基本骨格に基づいてペプチドライブラリー(peptide library)を作成した。ペプチドライブラリーを作成することによって、ある基質ペプチドが特異性を発現するために欠かせないアミノ酸配列が探索できる。ペプチドライブラリーを構成する各ペプチド配列のリン酸化効率を調べた結果、Xで示されたアミノ酸の種類によって、リン酸化効率が大きな影響を受けることが確認された。例えば、PKC eta特異性配列(表5)の場合、N-末端に導入されるアミノ酸残基(ArgもしくはLeu)の違いによってPKC etaに対する特異性は変らないが、リン酸化効率は変ることが確認される。我々はペプチドライブラリーに基づいて一般式(I), (II)および(III)を作成した。
【0045】
(2) ポリペプチドの合成
本発明のポリペプチドは公知のペプチド合成方法、例えば全自動ペプチド合成装置を用いた方法により製造することができる。
【0046】
(3) セリン/スレオニンキナーゼの活性測定方法
本発明のポリペプチドは、それをリン酸化することができるセリン/スレオニンキナーゼの活性を測定するために用いることができる。
【0047】
例えば、一般式(I)で表されるポリペプチドと、Rho-キナーゼ活性を有する可能性のある試料とを反応させて、ポリペプチドをリン酸化し、次いで、リン酸化されたポリペプチドを定量することによりRho-キナーゼ活性を測定することができる。一般式(I)で表されるポリペプチドはRho-キナーゼにより特異的にリン酸化され、他の類似のキナーゼによるリン酸化をほとんど受けないため、Rho-キナーゼ活性を精度よく測定することが可能となる。他のポリペプチドを用いた場合も同様に、それに対応するセリン/スレオニンキナーゼの活性を精度よく測定することができる。
【0048】
リン酸化されたポリペプチドの定量は常法により行うことができる。例えば、リン酸化されたポリペプチドに結合する抗体を用いて免疫学的方法により定量することが可能である。
【0049】
本発明のポリペプチドは、リン酸化されたポリペプチドの定量をより容易にする目的で標識物質により標識化されていてもよい。標識物質としては、通常の免疫学的測定方法に使用し得るものであれば特に限定されることなく使用できる。例えば、酵素、ビオチン、蛍光物質、放射性物質等を単独または組合せて使用することができる。酵素としてはペルオキシダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、マイクロペルオキダーゼが挙げられる。蛍光物質としてはフルオレッセインイソチオシアネート、フィコビリプロテイン、フィコエリスリン等が挙げられる。発光物質としてはイソルシノール、ルシゲニン等が挙げられる。放射性物質としては125I、131I、14C、3H 等が挙げられる。また、標識物質としてビオチンを用いた場合にはさらに酵素標識アビジンを用いることにより標識ビオチンの量を高い感度で測定できるので、好ましい。酵素標識アビジンの酵素としては、抗体に標識した場合の酵素と同様の酵素を用いることができるが、ペルオキシダーゼが好ましい。
【0050】
本発明のポリペプチドは測定用途で許容される担体または賦形剤等の任意の成分と組み合わせてセリン/スレオニンキナーゼ活性の測定用試薬として提供され得る。また、当該測定用試薬は、検出用抗体などと組み合わせて測定用キットとして提供され得る。
【0051】
(4) セリン/スレオニンキナーゼ活性に関連する疾患の診断方法
本発明のポリペプチドを用いて、哺乳動物(例えばヒト、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ)から単離された成分(例えば血液、尿、哺乳動物の任意の組織(脳、肝臓、心臓、筋肉、皮膚など)の溶解産物(lysate)、哺乳動物の正常または癌培養細胞の溶解産物、および哺乳動物に発生した癌組織の溶解産物)を含む試料中のセリン/スレオニンキナーゼ活性を測定することにより、セリン/スレオニンキナーゼ活性に関連する疾患を診断することができる。
【0052】
本発明において「Rho-キナーゼ活性に関連する疾患」とは、罹患患者と健常者との間で上記試料中のRho-キナーゼ活性が相違するような疾患を指す。このような疾患としては循環器疾患、浸潤性および転移性癌疾患等が挙げられるがこれらには限定されない。
【0053】
本発明において「タンパク質キナーゼ C eta活性に関連する疾患」とは、罹患患者と健常者との間で上記試料中のタンパク質キナーゼ C eta活性が相違するような疾患を指す。このような疾患としては脳神経膠細胞腫(グリオーマ)、乳癌、白血病、腎細胞癌(renal cell carcinoma, RCC)、皮膚癌、免疫系疾患等が挙げられるがこれらには限定されない。
【0054】
本発明において「タンパク質キナーゼ C beta活性に関連する疾患」とは、罹患患者と健常者との間で上記試料中のタンパク質キナーゼ C beta活性が相違するような疾患を指す。このような疾患としてはガン、糖尿病、免疫系疾患(特に免疫欠損)等が挙げられるがこれらには限定されない。
【0055】
本発明において「タンパク質キナーゼ C alpha活性に関連する疾患」とは、罹患患者と健常者との間で上記試料中のタンパク質キナーゼ C alpha活性が相違するような疾患を指す。このような疾患としては様々なガン(皮膚癌、乳癌、肝臓癌、大腸癌など)、炎症、免疫系疾患等が挙げられるがこれらには限定されない。
【0056】
本発明のポリペプチドは診断用途で許容される担体または賦形剤等の任意の成分と組み合わせてセリン/スレオニンキナーゼ活性に関連する疾患の診断薬として提供され得る。また、当該診断薬は、検出用抗体などと組み合わせて診断用キットとして提供され得る。
【0057】
(5) 核酸
本発明はまた、上記の有用なポリペプチドをコードする核酸に関する。核酸としてはDNAまたはRNAが挙げられ、DNAが好ましい。当該核酸をベクターに導入し、生体内において本発明の基質ポリペプチドを発現させることが可能である。また、当該核酸と、マーカー分子(例えば抗原抗体反応を使って検出可能なマーカー分子)をコードする核酸とを融合した核酸配列をベクターに組み込み、生体内において本発明の基質ポリペプチドとマーカー分子との融合ポリペプチドを発現させることにより、生体内のキナーゼ活性をインビボで解析することができるものと期待される。
【実施例1】
【0058】
Rho-キナーゼ特異的基質ポリペプチドの検討
本実施例の目的はRho-キナーゼによりリン酸化されるがPKAまたはPKCではリン酸化されないポリペプチドを見出すことである。本実施例では19種類の公知のRho-キナーゼ基質タンパク質の基質配列(表1参照)を模した19種類の合成ポリペプチドを作成し、これらの合成ポリペプチドがPKAまたはPKCによりリン酸化され得るか否かを検討した。そして19種類の合成ポリペプチドのうち7種類がPKAおよびPKCによりリン酸化されないことを見出した。7種類の合成ポリペプチドのうちの2種類は特にRho-キナーゼ特異性が高いことが判明した。以下にその手順を詳述する。
【0059】
1. 材料と方法
1.1. Rho-キナーゼ基質ポリペプチドの合成
Rho-キナーゼ基質ポリペプチドは、標準的なFmoc法により自動ペプチド合成装置を用いて合成した。TFA切断の後、ポリペプチドはBioCADパーフュージョンクロマトグラフィーシステム (Ikemoto Scientific Technology, Co., 東京,日本) を用い、Intersil ODS-3 カラム (250 x 20 mm, 3.5μm, GL Sciences Inc., 東京,日本) により精製した。このとき、溶出液Aとして0,1% トリフルオロ酢酸 (TFA)水溶液を用い、溶出液Bとして0.1% TFA アセトニトリル溶液を用いて、流速8ml/分のA-Bリニアグラジエントにより溶出を行った。このグラジエントは、30分間かけてアセトニトリル/水を10/90から30/70へするというものである。ポリペプチドの種類には関係なく、目的とするポリペプチドの保持時間は12.1分~28.4分であった。
【0060】
1.2. マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF/MS)
本実施例では、合成ポリペプチドにおけるリン酸化の検出をMALDI-TOF/MSにより行った。MALDI-TOF/MSは Voyager DE RP BioSpectrometry Workstation 装置 (Applied Biosystems, Framingham, MA, USA)をポジティブイオンモードで用いて行った。加速電圧を20kVとし、遅延引き出し時間を100-nsとした。原則として100回のレーザーショットを平均化してシグナルノイズ比を高めた。全てのスペクトルはData Explore TM ソフトウェア (Applied Biosystems) を用いて分析した。
【0061】
1.3. MALDI-TOF/MS用の試料調製
α-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸 (CHCA) マトリクス (10 mg/ml) を50% 水/アセトニトリルおよび0.1% TFA中で調製した。マトリクスと試料とを1:1~2:1の比で混合した。各混合物1μlの全量をサンプルプレートに適用し、乾燥させて結晶化させた。リン酸化されたポリペプチドの相対強度 (%) は次の算式で算出した。
(リン酸化されたポリペプチドの強度)/{(リン酸化されたポリペプチドの強度)+(リン酸化されていないポリペプチドの強度)} x 100
【0062】
1.4. PKAおよびPKCによるRho-キナーゼ基質のリン酸化
Rho-キナーゼ基質ポリペプチドをPKCによりリン酸化するときは、リン酸化反応は、30μMのポリペプチドと10μg/mlのPKC alphaを含有する50μlの緩衝液 [20 mM Tris-HCl (pH 7.5), 10 mM MgCl2, 0.5 mM CaCl2, 100μM ATP, 2.0μg/mlジアシルグリセロール (DAG) および2.5μg/ml フォスファチジルセリン (PS)] 中で行った。ただし PKC deltaによりリン酸化反応を行う場合は CaCl2を含まない緩衝液を用い、PKC zetaによりリン酸化反応を行う場合は CaCl2およびDAGを含まない緩衝液を用いた。
【0063】
PKAによりリン酸化反応を行う場合は、10 mM MgCl2、100μM ATP、30μM ポリペプチドおよび10 UのPKAを含有する50μlのPBS中でリン酸化反応を行った。37℃で60分間インキュベーションを行った後、MALDI-TOF/MSにより分析を行った。
【0064】
2. 結果
2.1. Rho-キナーゼによるリン酸化部位
Rho-キナーゼによるリン酸化部位のコンセンサスモチーフはRXS/TまたはRXXS/Tである。本実施例ではリン酸化部位のSerとThrの比率を9:9とした。Rho-キナーゼの基質となる19種類のタンパク質のリン酸化部位周辺のアミノ酸配列を表1に示す。Rho-キナーゼは、リン酸化部位(SerまたはThr)のアミノ末端方向の-2~-3位のアミノ酸残基が塩基性アミノ酸残基であることを要求しているように思われる。また、カルボキシル末端方向の+2位にあるアミノ酸残基の大部分は塩基性アミノ酸残基であるか疎水性アミノ酸残基である。
【0065】
2.2. MALDI-TOF/MS分析のための試料の調節
CHCAマトリクスと試料との容積比を 1:1 としたことにより結晶の形成が抑制され、イオン化が妨げられた。これらの結果は、TrisおよびPBSのような既知の混入物質や、DAGやPSなどの生体分子が原因であると考えられる。これらの問題は希釈方法の選択により解消された。CHCAの試料に対する容積比を2倍にしたところ良好な結晶形成とイオン化が実現された。
【0066】
リン酸化されたポリペプチドとリン酸化されていないポリペプチドとの間には80Daの分子量差があるため、ポリペプチドのリン酸化はマススペクトルにより検出可能であることが確認できた(図1A参照)。
【0067】
PKAにより vimentin-ペプチド、neurofilamin-L-ペプチドおよび MARCKS-ペプチドのリン酸化を行った場合に一リン酸化されたポリペプチドのピークと、二リン酸化されたポリペプチドのピークとが認められた(表2および3参照)。興味深いことに三リン酸化されたポリペプチドのピークが、MBS-ペプチドをPKAでリン酸化した場合に認められた(図1B参照)。MARCKS-ペプチドをPKC alphaを用いてリン酸化した場合、2つのリン酸化されたピークが観察された。2つまたは3つのピークは、PKAまたはPKC alphaによりリン酸化される部位が2ヵ所または3ヵ所存在することを意味している(表2および3参照)。
2.3. PKAによるRho-キナーゼ基質ポリペプチドのリン酸化
合成した19種類のRho-キナーゼ基質ポリペプチドのうち、12種類がPKAによりリン酸化された(LIMK1のThr-508、vimentinのSer-71、neurofilament-LのSer-57、GFAPのThr-7、Ser-13、およびSer-34、CRMP-2のThr-555、tauのSer-409、MAP2のSer-1796、MBSのSer-854、MLCのSer-19、MARCKSのSer-159)。vimentinのSer-72、neurofilament-LのSer-55、MBSのThr-855、Ser-858、およびMARCKSのSer-163もまたPKAによりリン酸化された。リン酸化されたポリペプチドの相対強度は18~100%であった(表2参照)。
【0068】
しかしながら、calponin、adduction、tauの2つの試料(No. 12と13)、および ERM (Ezrin/Radixin/Moesin、それぞれ Thr-567/564/558)についてはPKAによるリン酸化は認められなかった(表2参照)。
【0069】
2.4. PKCによるRho-キナーゼ基質ポリペプチドのリン酸化
PKC alpha, delta, およびzetaによりRho-キナーゼ基質ポリペプチドのリン酸化を行った。7種類のRho-キナーゼ基質ポリペプチド (calponin, LIMK1, GFAP (No.10), CRMP-2, ERM, MBSおよびMARCKS)においてPKC alphaによるリン酸化が認められた。これらのリン酸化部位はRho-キナーゼによるリン酸化部位と同じであった。MARCKSについては、PKC alphaはSer-159およびSer-163という2つの部位をリン酸化した。ただし、相対強度には大きな差があり、Ser-159は100%であるのに対し、Ser-163は21%であった。
【0070】
PKC deltaによるリン酸化は3つの基質 (LIMK1, CRMP-2,およびMARCKS) で確認された。CRMP-2については、PKC deltaによりリン酸化されたポリペプチドの相対強度は31%であり、これはPKC alphaによりリン酸化されたポリペプチドの相対強度である12%を上回っていた。さらにまた、PKC deltaによりリン酸化されたMARCKSのSer-159およびSer-163の相対強度はそれぞれ100%と11%であった。PKC zetaによりリン酸化を受けた基質は実験の範囲内では認められなかった。
【0071】
2.5. PKAおよびPKCによりリン酸化されないかリン酸化の程度が低いRho-キナーゼ基質のVmax、Kmおよびkcat値の測定
6種類のRho-キナーゼ基質ポリペプチド (No. 1, 2, 5, 12, 13および16) はPKAおよびPKCによりリン酸化されないかリン酸化の程度が低い(<20%)ことが明らかとなった。そこで、これらのうちRho-キナーゼによるリン酸化の程度が高い4種類 (No. 5, 12, 13および16) についてKm値およびkcat値を測定した。結果を表4に示す。各基質のKm値は0.06から0.38mMの範囲であり、kcat値は0.43から20.9minの範囲であった。なお、No. 5のポリペプチドの場合、Rho-キナーゼによりリン酸化されたポリペプチドの相対強度は平均80%であり、No. 16のポリペプチドの場合、Rho-キナーゼによりリン酸化されたポリペプチドの相対強度は平均56%である。一方、No. 4のペプチドはNo. 5と16に使用されたRho-キナーゼ酵素濃度よりも十分の一の濃度である1 ng/μlでも80%以上のリン酸化率を示した。
【0072】
6種類のRho-キナーゼ基質ポリペプチド No.1,2,5,12,13および16のアミノ酸配列をそれぞれ、配列番号1, 2, 3, 4, 5,および6に示す。また、これらのポリペプチドのリン酸化部位であるSerがThrに置換されたポリペプチドのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号7, 8, 9, 10, 11,および12に示す。本実験により、これらのポリペプチドはRho-キナーゼ特異的基質であることが示された。さらに、Rho-キナーゼ基質ポリペプチド No.4のアミノ酸配列を配列番号23に示す。このポリペプチドのリン酸化部位であるThrがSerに置換されたポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号24に示す。本実験により、これらのポリペプチドはRho-キナーゼに高親和性基質であることが示された。
【0073】
【表1】
JP0005476559B2_000002t.gif
JP0005476559B2_000003t.gif
【0074】
【表2】
JP0005476559B2_000004t.gif
JP0005476559B2_000005t.gif
【0075】
【表3】
JP0005476559B2_000006t.gif

【0076】
【表4】
JP0005476559B2_000007t.gif

【実施例2】
【0077】
PKC eta特異的基質ポリペプチドの検討
本実施例では2種類の合成ポリペプチドを調製し、PKC etaにより特異的にリン酸化されるか否かを検討した。基本的な実験手順は実施例1と同様である。
【0078】
Arg-Asp-Met-Arg-Asn-Ser-Phe-Asn-Leu-Gly-Valのアミノ酸配列(配列番号13)を有するポリペプチドと、Leu-Asp-Met-Arg-Asn-Ser-Phe-Asn-Leu-Gly-Valのアミノ酸配列(配列番号14)を有するポリペプチドを合成した。
【0079】
これらのポリペプチドに対してPKC alpha, beta, gamma, delta, zeta, eta, epsilon, theta, lambda, および iotaによりリン酸化を行い、リン酸化されたポリペプチドの相対強度を求めた。結果を表5に示す。
【0080】
配列番号13および14で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドはともにPKC etaにより選択的にリン酸化された。特に前者のポリペプチドは選択性が高かった。これらのポリペプチドはPKC eta特異的基質であることが示された。
【0081】
配列番号13のポリペプチドのリン酸化部位であるThrをSerに置換したものを配列番号15に示す。配列番号14のポリペプチドのリン酸化部位であるThrをSerに置換したものを配列番号16に示す。配列番号15および16で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドもまたPKC eta特異的基質であることは明らかである。
【0082】
【表5】
JP0005476559B2_000008t.gif

【実施例3】
【0083】
PKC beta特異的基質ポリペプチドの検討
本実験では1種類の合成ポリペプチドを調製し、PKC betaにより特異的にリン酸化されるか否かを検討した。基本的な実験手順は実施例1と同様である。
【0084】
Leu-Asp-Arg-Pro-Gln-Ser-Phe-Asn-Leu-Gly-Val(配列番号17)で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを合成した。
【0085】
このポリペプチドに対してPKC alpha, beta, gamma, delta, zeta, eta, epsilon, theta, lambda, および iotaによりリン酸化を行い、リン酸化されたポリペプチドの相対強度を求めた。結果を表6に示す。
【0086】
配列番号17で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドはPKC betaによってリン酸化されるが、他のPKCサブフェミリーまたはアイソザイム(subfamilyまたはisozyme)には反応しなかった。この結果から配列番号17で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドはPKC beta特異的基質であることが示された。
【0087】
配列番号17のポリペプチドのリン酸化部位であるSerをThrに置換したものを配列番号18に示す。配列番号18で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドもまたPKC beta特異的基質であることは明らかである。
【0088】
【表6】
JP0005476559B2_000009t.gif

【実施例4】
【0089】
PKC alpha特異的基質ポリペプチドの検討
1.酵素反応実験
本実験では1種類の合成ポリペプチドを調製し、PKC alphaにより特異的にリン酸化されるか否かを検討した。基本的な実験手順は実施例1と同様である。
【0090】
Phe-Lys-Lys-Gln-Gly-Ser-Phe-Ala-Lys-Lys-Lys(配列番号19)で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを合成した。
【0091】
このポリペプチドに対してPKC alpha, beta I, beta II, deltaおよびzetaによりリン酸化を行い、リン酸化されたポリペプチドの相対強度を求めた。結果を図2に示す。
【0092】
配列番号19で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドはPKC alphaによってリン酸化され易いが、他のPKCサブフェミリーまたはアイソザイム(subfamilyまたはisozyme)によってはリン酸化され難いことが明らかとなった。この結果から配列番号19で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドはPKC alpha特異的基質であることが示された。
【0093】
配列番号19のポリペプチドのリン酸化部位であるSerをThrに置換したものを配列番号20に示す。配列番号20で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドもまたPKC alpha特異的基質であることは明らかである。
【0094】
2.皮膚癌組織を用いた実験
癌細胞においてPKC alphaが過剰発現することが知られている。そこで本実験では、配列番号19で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを皮膚癌組織と共存させた場合に同ポリペプチドがリン酸化を受けるか否か確認した。
【0095】
実験手順は次の通りである。正常および皮膚癌組織を採取してホモジナイザーでホモジナイズし、ガーゼでろ過した。1,000 gで10分間遠心した後、上澄みを除去した。沈殿物にバファーを入れて超音波(1回、30秒)で細胞を破壊した。5,000 gで15分間遠心し、上澄みを組織溶解産物として回収し実験に用いた。リン酸化率の決定は組織溶解産物(全タンパク質濃度200 μg/ml)と基質ペプチドを混合して反応させた後、MALDI-TOFにより行った。
【0096】
皮膚癌組織としては2種類(メラノーマAおよびメラノーマB)を用いた。メラノーマAとBは同一個体より採取した皮膚癌組織であるが、採取した部位が異なる。メラノーマAは組織の中央部、メラノーマBは組織の周辺部から採取したものである。
【0097】
リン酸化の測定は図3に示す4種類の条件下で行った。条件1:ATP+Mg2+、条件2:DAG+PS+Ca2++ATP+Mg2+,条件3:血漿(100μg/ml)+ATP+Mg2+、条件4:血漿(200μg/ml)+ATP+Mg2+である。これらの条件を設定した趣旨は次の通りである。PKC alphaには四つのドメインが存在し、PKC alphaにより基質のリン酸化を行うためにはそれぞれのドメインに結合する因子が必要である。基質のリン酸化に必要な因子には活性化因子としてのジアシルグリセロール(diacylglycerol, DAG)と補助因子としてのリン脂質であるホスファチジルセリン(phosphatidylserine, PS)、カルシウム、ATPおよびマグネシウムがある。細胞や組織溶解産物には二つのPKCが存在する。一つはドメインにこれらの因子が結合している活性型PKCであり、もう一つはこれらの因子が結合していない非活性型PKCである。細胞や組織溶解産物においては、PKC alphaに結合したジアシルグリセロール、ホスファチジルセリンおよびカルシウムには変化が見られないが、ATPとマグネシウムはすぐ失活してしまう。したがって、活性化されたPKC alphaにはATPとマグネシウムを添加するだけでリン酸化反応を誘導することができる(条件1)。また、上記の非活性型のPKC alphaについても活性化因子と補助因子を添加することで、活性化される。したがって、細胞や組織溶解産物に活性化因子と補助因子を加えることによって溶解産物に含まれている全PKC量(活性型PKC+非活性型PKC)を調べることができる(条件2)。また、血漿は全ての組織に含まれているので、組織溶解産物を作成する際、これによって汚染されている可能性が高い。もし汚染されていると血漿に含まれている活性化因子と補助因子によってPKC alphaが活性化される。また、血漿には基質のリン酸化に必要な活性化因子と補助因子が理想的な量を含まれているので、人工的にそれらを加えた場合よりもリン酸化効率が高くなる(条件3および4)。
【0098】
結果を図3に示す。B16 メラノーマ癌組織の方が正常組織より3~5倍高いリン酸化相対強度であることが示された(図3)。
【0099】
これらの結果から、配列番号19で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドはPKC alphaが過剰発現している癌の診断や治療に利用可能であることが明らかになった。
【0100】
また、これの結果から、メラノーマ組織はその採取部位によってPKC alpha活性が異なり、正常組織と比べPKC alpha活性型および全量は高いことが分かった。また、組織溶解産物を作成する際、血漿によって汚染されても配列番号19を用いた診断には支障がないことが示された。
【実施例5】
【0101】
タンパク質キナーゼ C alpha、beta、gamma、deltaおよびzetaによりリン酸化を受ける基質ポリペプチドの検討
本実験では1種類の合成ポリペプチドを調製し、PKC alpha、beta、gamma、deltaおよびzetaによりリン酸化されるか否かを検討した。基本的な実験手順は実施例1と同様である。
【0102】
Leu-Arg-Val-Gln-Asn-Ser-Leu-Arg-Arg-Arg-Arg(配列番号21)で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを合成した。
【0103】
このポリペプチドに対してPKC alpha、beta、gamma、deltaおよびzetaによりリン酸化を行い、リン酸化されたポリペプチドの相対強度を求めた。結果を図4に示す。
【0104】
配列番号21で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、cPKCsであるPKC alpha, beta, およびgammaに対しては優れたリン酸化感受性(100%)を示した。また、PKC deltaおよびzetaにも感受性を示した(図4)。これらの結果から、配列番号21で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは診断用および治療用のポジティブコントロール基質として利用可能であることが示された。
【0105】
配列番号21のポリペプチドのリン酸化部位であるSerをThrに置換したものを配列番号22に示す。配列番号22で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドもまた診断用および治療用のポジティブコントロール基質として利用可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1A】図1Aはセリン/スレオニンキナーゼによるリン酸化を説明する図である。
【図1B】図1BはMBS-ペプチドをPKAでリン酸化した場合のマススペクトルを示す。
【図2】配列番号19で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを各種PKCアイソザイムによりリン酸化した場合のリン酸化率を示す図である。
【図3】配列番号19で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを正常組織または癌組織に供した場合のリン酸化率を示す図である。
【図4】配列番号21で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド各種PKCサブファミリーによりリン酸化した場合のリン酸化率を示す図である。

【配列表フリ-テキスト】
【0107】
配列番号1~63:合成ペプチド
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図2】
2
【図3】
3
【図4】
4