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明細書 :テラヘルツ波発生方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4609993号 (P4609993)
公開番号 特開2006-163026 (P2006-163026A)
登録日 平成22年10月22日(2010.10.22)
発行日 平成23年1月12日(2011.1.12)
公開日 平成18年6月22日(2006.6.22)
発明の名称または考案の名称 テラヘルツ波発生方法及び装置
国際特許分類 G02F   1/39        (2006.01)
FI G02F 1/39
請求項の数または発明の数 12
全頁数 14
出願番号 特願2004-355182 (P2004-355182)
出願日 平成16年12月8日(2004.12.8)
審査請求日 平成19年12月6日(2007.12.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】独立行政法人理化学研究所
発明者または考案者 【氏名】碇 智文
【氏名】南出 泰亜
【氏名】伊藤 弘昌
個別代理人の代理人 【識別番号】100097515、【弁理士】、【氏名又は名称】堀田 実
審査官 【審査官】佐藤 宙子
参考文献・文献 Optics Letters,2001年 4月15日,Vol.26,No.8,563-565
調査した分野 G02F 1/39
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamII)
Science Citation Index Expanded(Web of Science)
特許請求の範囲 【請求項1】
パラメトリック効果によってテラヘルツ波発生が可能な非線形光学結晶内にポンプ光を入射し、ノンコリニア位相整合条件を満たす方向にアイドラー光とテラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発生方法であって、
非線形光学結晶の一端面をテラヘルツ波の発生方向にほぼ直交させ、該端面上のほぼ同一点においてポンプ光とアイドラー光を全反射させ、かつ発生したテラヘルツ波をほぼ垂直に出射する、ことを特徴とするテラヘルツ波発生方法。
【請求項2】
非線形光学結晶の前記端面に対するポンプ光とアイドラー光の入射角θp、θiはそれぞれの全反射角より大きく、テラヘルツ波の入射角はその全反射角より小さい、ことを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ波発生方法。
【請求項3】
前記ポンプ光として第1レーザー光を入射し、非線形光学結晶内で発生するアイドラー光を該全反射点で全反射させかつ増幅する登頂型の共振器を構成する、ことを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ波発生方法。
【請求項4】
前記ポンプ光として単一周波数の第1レーザー光を使用し、かつ、非線形光学結晶内で発生するアイドラー光の発生方向に単一周波数の別の第2レーザー光を光注入する、ことを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ波発生方法。
【請求項5】
前記ポンプ光の波長又はその入射角を変化させて、テラヘルツ波の波長を変化させる、ことを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ波発生方法。
【請求項6】
パラメトリック効果によってテラヘルツ波発生が可能な非線形光学結晶と、該非線形光学結晶内にポンプ光を入射するレーザー装置とを備え、ノンコリニア位相整合条件を満たす方向にアイドラー光とテラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発生装置であって、
前記非線形光学結晶の一端面がテラヘルツ波の発生方向にほぼ直交し、該端面上のほぼ同一点においてポンプ光とアイドラー光が全反射し、これにより発生したテラヘルツ波がほぼ垂直に出射するように位置決めされている、ことを特徴とするテラヘルツ波発生装置。
【請求項7】
非線形光学結晶の前記端面に対するポンプ光とアイドラー光の入射角θp、θiはそれぞれの全反射角より大きく、テラヘルツ波の入射角はその全反射角より小さい、ことを特徴とする請求項6に記載のテラヘルツ波発生装置。
【請求項8】
前記ポンプ光として第1レーザー光を出力する第1レーザー装置と、非線形光学結晶内で発生するアイドラー光を該全反射点で全反射させかつ増幅する登頂型の共振器とを備える、ことを特徴とする請求項6に記載のテラヘルツ波発生装置。
【請求項9】
前記ポンプ光として単一周波数の第1レーザー光を出力する第1レーザー装置と、かつ、非線形光学結晶内で発生するアイドラー光の発生方向に単一周波数の別の第2レーザー光を光注入する第2レーザー装置とを備える、ことを特徴とする請求項6に記載のテラヘルツ波発生装置。
【請求項10】
前記第1レーザー装置は、ポンプ光の波長を変えることができる可変波長レーザー装置である、ことを特徴とする請求項8又は9に記載のテラヘルツ波発生装置。
【請求項11】
前記非線形光学結晶の一端面にテラヘルツ波の反射率を低減する反射低減部材を備える、ことを特徴とする請求項6に記載のテラヘルツ波発生装置。
【請求項12】
前記非線形光学結晶の一端面にテラヘルツ波を集光する集光レンズを備える、ことを特徴とする請求項6に記載のテラヘルツ波発生装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はノンコリニア型のテラヘルツ波発生方法及び装置に係わり、更に詳しくは、結晶内部で発生したテラヘルツ波を結晶外に取り出す方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1THz前後の周波数を有する電磁波、すなわちこの領域の遠赤外線及びサブミリ波を「テラヘルツ波」と呼ぶ。テラヘルツ波は、光波と電波の境界に位置しており、光波と電波の両方の特性を有する。
テラヘルツ波の特徴の1つは、電波の物質透過性を有する最短波長域であり、かつ光波の直進性を備えた最長波長であるという点である。すなわち、電波のように様々な物質を透過することができ、波長が短い(1mm前後~30μm前後)ことから、電波帯では最も高い空間分解能が得られ、かつ光波のようにレンズやミラーによる引き回しが可能である。
【0003】
図10(A)は、このテラヘルツ波の発生原理図である。この図において、1は非線形光学結晶(例えばLiNbO)、2はポンプ光(又は励起光と呼ぶ)、3はアイドラー光、4はテラヘルツ波である。なおポンプ光2とアイドラー光3は波長1μm前後の赤外光である。
ラマン活性かつ遠赤外活性を有する非線形光学結晶1にポンプ光2を一定方向に入射すると、誘導ラマン効果(又はパラメトリック相互作用)により物質の素励起波(ポラリトン)を介してアイドラー光3とテラヘルツ波4が発生する。この場合、ポンプ光2(ω)、テラヘルツ波4(ω)、アイドラー光3(ω)の間には、式(1)で示すエネルギー保存則と式(2)で示す運動量保存則(位相整合条件)が成り立つ。なお、式(2)はベクトルであり、ノンコリニアな位相整合条件は、この図10(B)に示すように表現できる。
【0004】
ω=ω+ω...(1)
κ=κ+κ...(2)
【0005】
このとき発生するアイドラー光3とテラヘルツ波4は空間的な広がりを持ち、その出射角度に応じてそれらの波長は連続的に変化する。このシングルパス配置におけるブロードなアイドラー波及びテラヘルツ波の発生をTPG(THz-wave Parametric Generation)と呼ぶ。
なお、基本的な光パラメトリック過程は、1個のポンプ光子の消滅と、1個のアイドラー光子および1個のシグナル光子の同時生成によって定義される。アイドラー光あるいはシグナル光が共振する場合、ポンプ光強度が一定のしきい値を超えるとパラメトリック発振が生じる。また、1個のポンプ光子の消滅と、1個のアイドラー光子および1個のポラリトンの同時生成が誘導ラマン散乱であり、広義のパラメトリック相互作用に含まれる。
【0006】
しかし、上述したシングルパス配置のテラヘルツ波発生装置で発生したテラヘルツ波は非常に微弱であり、しかもその大部分は、非線形光学結晶中を数百μm進む間に吸収されてしまうという問題があった。例えば、LiNbO結晶の吸収によって、長さ3mmを進む間にテラヘルツ波は約0.1%程度の小さい値となる。
【0007】
この問題を解決するために、特許文献1、2が開示されている。また特許文献3(非公開)及び非特許文献1、2等が本発明に関連する。
【0008】
図11は特許文献1に開示されたサブミリ波発生装置の模式図である。この図に示すように、上述したブロードなアイドラー光3に対して特定方向(角度θ)に共振器M1、M2を構成することで、特定方向のアイドラー光3の強度を高めることができる。なお、この図で5は、レーザー光をポンプ光2として照射するレーザ装置、6はテラヘルツ波4を外部に取り出すためのプリズムである。またプリズム6は、テラヘルツ波に対して吸収係数の小さい材質からなる。
【0009】
図12は特許文献2に開示されたテラヘルツ波発生装置の模式図である。この図に示すように、ポンプ光2として単一周波数の第1レーザー光7を使用し、かつアイドラー光3の発生方向に単一周波数の別の第2レーザー光8を光注入することによって、発生するテラヘルツ波の出力を大幅に増大することができる。またこの図で9は、上述したプリズム6を複数並べたプリズムアレイである。
【0010】

【特許文献1】特開平09-146131号公報、「サブミリ波発生装置」
【特許文献2】特開2002-072269号公報、「テラヘルツ波発生方法及び装置」
【特許文献3】特願2003-107885号、未公開
【0011】

【非特許文献1】K.Kawase et.al,”Arrayed silicon prism coupler for a THz-wave parametric oscillator”,Applied Optics,vol.40,No.9,pp.1423-1426,2001
【非特許文献2】K.Kawase et.al,”Terahertz wave parametric source”,Journal of Physics D; Applied Physics,vol.35,No.3,pp.R1-R14,2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、ラマン活性かつ遠赤外活性を有する非線形光学結晶1にポンプ光2(励起光)を一定方向に入射すると、パラメトリック相互作用によりアイドラー光3とテラヘルツ波4が発生する。このとき発生するアイドラー光3とテラヘルツ波4は図10に示した位相整合条件を満たす方向に空間的な広がりを持ち、その出射角度に応じてそれらの波長は連続的に変化する。
また図11に示したようにアイドラー光3に対して特定方向に共振器M1,M2を構成することで、特定方向のアイドラー光3とテラヘルツ波4の強度を高めることができる。
【0013】
しかし結晶内部で発生したテラヘルツ波4を結晶外に取り出すためには結晶端面で全反射条件を避ける必要がある。そのため、これまでは図11、12に示したように、非線形光学結晶1に比べ屈折率が小さい材料でプリズム6やプリズムアレイ9を形成し、これを非線形光学結晶1に取付けることでテラヘルツ波4を結晶外に取り出していた。
しかし、かかる従来の手段には、以下の問題点があった。
(1)テラヘルツ波の発生点が非線形光学結晶の内部であるため、結晶内部での吸収量が多い。例えば、上述のように、LiNbO結晶の吸収によって、長さ3mmを進む間にテラヘルツ波は約0.1%程度まで減少する。
(2)非線形光学結晶とプリズムの境界面では斜めにテラヘルツ波が入射するため、透過率が減少し、テラヘルツ波の取り出し効率が低い。
(3)単一のプリズムでは取り出せるテラヘルツ波の出力が弱すぎ、またプリズムアレイを用いると、出力は高まるが、複数のプリズムからなるプリズムアレイでテラヘルツ波4が分散して取り出されるので、テラヘルツ波の波面が不均一となり出射ビーム径も円状(もしくは楕円状)にならず、応用展開において支障をきたしてきた。
すなわち、テラヘルツ波4の出力分布がその光軸まわりに回転対称であれば、光軸上から出た光線の屈折、反射などにおける光線追跡が容易にできるが、従来の手段では発生時のテラヘルツ波が回転対称から大きく外れているためガウス光学系の適用が困難であった。
【0014】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、結晶内での吸収を大幅に低減でき、界面から外部への取出し効率を高めることができ、かつガウス光学系の適用が容易な回転対称に近いテラヘルツ波の出力分布を得ることができるテラヘルツ波発生方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、パラメトリック効果によってテラヘルツ波発生が可能な非線形光学結晶内にポンプ光を入射し、ノンコリニア位相整合条件を満たす方向にアイドラー光とテラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発生方法であって、
非線形光学結晶の一端面をテラヘルツ波の発生方向にほぼ直交させ、該端面上のほぼ同一点においてポンプ光とアイドラー光を全反射させ、かつ発生したテラヘルツ波をほぼ垂直に出射する、ことを特徴とするテラヘルツ波発生方法が提供される。
【0016】
また本発明によれば、パラメトリック効果によってテラヘルツ波発生が可能な非線形光学結晶と、該非線形光学結晶内にポンプ光を入射するレーザー装置とを備え、ノンコリニア位相整合条件を満たす方向にアイドラー光とテラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発生装置であって、
前記非線形光学結晶の一端面がテラヘルツ波の発生方向にほぼ直交し、該端面上のほぼ同一点においてポンプ光とアイドラー光が全反射し、これにより発生したテラヘルツ波がほぼ垂直に出射するように位置決めされている、ことを特徴とするテラヘルツ波発生装置が提供される。
【0017】
上記本発明の方法及び装置によれば、非線形光学結晶の一端面上のほぼ同一点においてポンプ光とアイドラー光を全反射させてテラヘルツ波を発生させるので、テラヘルツ波の発生箇所が結晶の端面又は端面近傍となり結晶内での吸収を大幅に低減できる。
また、発生したテラヘルツ波を非線形光学結晶の一端面に対してほぼ垂直に出射するので、端面(界面)での反射がほとんどなく、界面から外部への取出し効率を高めることができる。
さらに、テラヘルツ波の発生点はポンプ光とアイドラー光の全反射点またはその近傍となり、実質的に1点で発生しかつ端面に対してほぼ垂直に出射するので、ガウス光学系の適用が容易な回転対称に近いテラヘルツ波の出力分布を得ることができる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、非線形光学結晶の前記端面に対するポンプ光とアイドラー光の入射角θp、θiはそれぞれの全反射角より大きく、テラヘルツ波の入射角はその全反射角より小さい。
【0019】
この手段により、ポンプ光とアイドラー光を非線形光学結晶の端面で全反射させ、テラヘルツ波を全反射なしで外部へ取出すことができる。
【0020】
また、前記ポンプ光として第1レーザー光を出力する第1レーザー装置と、非線形光学結晶内で発生するアイドラー光を該全反射点で全反射させかつ増幅する登頂型の共振器とを備え、前記ポンプ光として第1レーザー光を入射し、非線形光学結晶内で発生するアイドラー光を該全反射点で全反射させかつ増幅する登頂型の共振器を構成する。前記共振器は、アイドラー光を多重往復することで増幅することが好ましい。
【0021】
この手段により、前記ポンプ光として第1レーザー光を入射し、非線形光学結晶内で発生するアイドラー光を該全反射点で全反射させかつ増幅することができる。
登頂型の共振器は回転ステージ上に配置し回転することで、ポンプ光の共振器に対する角度を変化させることで、テラヘルツ波の波長を連続的に変えることができる。また、ポンプ光の入射角を可動ミラーなどで変えることにより固定された共振器に対してポンプ光の共振器に対する角度を変化させることが可能であるので、テラヘルツ波の波長を連続的に変えることもできる。
【0022】
また、前記ポンプ光として単一周波数の第1レーザー光を出力する第1レーザー装置と、かつ、非線形光学結晶内で発生するアイドラー光の発生方向に単一周波数の別の第2レーザー光を光注入する第2レーザー装置とを備え、前記ポンプ光として単一周波数の第1レーザー光を使用し、かつ、非線形光学結晶内で発生するアイドラー光の発生方向に単一周波数の別の第2レーザー光を光注入する。
【0023】
この手段により、第1レーザー装置を用いてポンプ光として単一周波数の第1レーザー光を出力し非線形光学結晶内に入射することができる。また、第2レーザー装置を用いて非線形光学結晶内で発生するアイドラー光の発生方向に単一周波数の別の第2レーザー光を光注入するので、パラメトリック相互作用のみで非線形光学結晶内にアイドラー波を発生させるよりも、強いアイドラー波を発生することができる。
これにより、この方向のアイドラー波の光強度が高まり、ノンコリニアな位相整合条件を満たすテラヘルツ波の強度を大幅に高まることができる。
また、第2レーザー光で強化されるアイドラー波の指向性が強く、かつ第1レーザー光と第2レーザー光の両方が単一周波数のレーザー光であるので、発生するテラヘルツ波の発生方向の指向性が高まるばかりでなく、スペクトル幅も大幅に狭線化できる。
【0024】
前記ポンプ光の波長又はその入射角を変化させて、テラヘルツ波の波長を変化させる、ことが好ましい。
この方法により、テラヘルツ波の波長を変化させることができる。
【0025】
また、前記第1レーザー装置は、ポンプ光の波長を変えることができる可変波長レーザー装置である、ことが好ましい。
この構成により、ポンプ光の波長を変えてテラヘルツ波の波長を変化させることができる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記非線形光学結晶の一端面にテラヘルツ波の反射率を低減する反射低減部材を備える。
かかる反射低減部材として非線形光学結晶の屈折率より低い屈折率を有する複数の異なる平行基板を用いて、段階的に屈折率を大気の屈折率に近づけることで、反射率を低減し、テラヘルツ波の取り出し効率を向上できる。また、減反射加工を用いることにより、端面でのテラヘルツ波の反射をさらに低減し、界面から外部への取り出し効率を更に高めることができる。
【0027】
また前記非線形光学結晶の一端面にテラヘルツ波を集光する集光レンズを備える、ことが好ましい。
かかる集光レンズにより、テラヘルツ波を平行光として取り出すことができる。また、テラヘルツ波をテラヘルツファイバーの端面に集光させ、テラヘルツファイバーを介して自由に伝播させることができる。また、集光レンズとして反射低減部材の一部もしくは全部を用いることにより、光学素子の点数を少なくし、効率の良い光学系の配置が可能となる。
【発明の効果】
【0028】
上述したように、本発明のテラヘルツ波発生方法及び装置は、結晶内での吸収を大幅に低減でき、界面から外部への取出し効率を高めることができ、かつガウス光学系の適用が容易な回転対称に近いテラヘルツ波の出力分布を得ることができる、等の優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0030】
図1(A)は、本発明のテラヘルツ波発生装置の第1実施形態図である。
この図に示すように、本発明のテラヘルツ波発生装置10は、パラメトリック効果によってテラヘルツ波発生が可能な非線形光学結晶12と、この非線形光学結晶12内にポンプ光2としてレーザ光を入射する第1レーザー装置14とを備え、ノンコリニア位相整合条件を満たす方向にアイドラー光3とテラヘルツ波4を発生させるようになっている。
また、この例において、本発明のテラヘルツ波発生装置10は、更に、非線形光学結晶12内で発生するアイドラー光3を同一の全反射点13で全反射させかつ増幅する登頂型の共振器15とを備える。共振器15は、2枚の反射ミラー15a,15bからなる。反射ミラー15a,15bは、ポンプ光2は透過し、アイドラー光3は反射して、非線形光学結晶12内で発生するアイドラー光3を増幅するように構成されている。
なお、この共振器15の代わりに、非線形光学結晶12内で発生するアイドラー光3の発生方向に単一周波数の別の第2レーザー光を光注入する第2レーザー装置を備えてもよい。
また、発生するテラヘルツ波4の波長を可変にするために、第1レーザー装置14は、ポンプ光2の波長を変えることができる可変波長レーザー装置であるのがよい。
また、可変波長レーザー装置を用いる代わりに、その他の構成位置を変えずに、ポンプ光の入射角を変化させてもよい。
【0031】
図1(B)は、全反射点13における角度位相整合条件を示している。
この図に示すように、非線形光学結晶12の一端面12a(この図で上面)は、テラヘルツ波4の発生方向にほぼ直交し、この端面12a上のほぼ同一点13においてポンプ光2とアイドラー光3が全反射し、これにより発生したテラヘルツ波4がほぼ垂直に出射するように位置決めされている。
【0032】
図2は、本発明におけるポンプ光及びアイドラー光のテラヘルツ取り出し面に対する入射角及び屈折率の説明図である。
この図において、非線形光学結晶12の端面12aに対するポンプ光2とアイドラー光3の入射角θp、θiはそれぞれの全反射角θrより大きく設定されている。また、テラヘルツ波4の端面12aに対する入射角は、その全反射角より小さく、この例では端面12aに対しほぼ直交するように設定される。
【0033】
図1(A)において、非線形光学結晶12にポンプ光2(励起光)を入射するとポラリトンを介したノンコリニア型のパラメトリック効果によりアイドラー光3とテラヘルツ波4が発生する。このとき発生するアイドラー波3とテラヘルツ波4は空間的な広がりを持ち、その出射角度に応じてそれらの波長は連続的に変化する。
この空間的な広がりを持って出射するアイドラー光3に対して特定方向(角度θi)に共振器15を構成することで、特定方向のアイドラー光3の強度を高めることができる。
このとき、ポンプ光2(励起光)、アイドラー光3、テラヘルツ波4の3波間には式(1)(2)で示したエネルギー保存則および運動量保存則である位相整合条件が成り立つ。
本発明は、ポンプ光2(励起光)を非線形光学結晶12の端面12aに斜めに入射し、非線形光学結晶の端面12aで全反射させ、全反射点13を頂点に登頂型の左右対称な共振器15を構成し、テラヘルツ波4は非線形光学結晶12の端面12aに対してほぼ垂直に取り出すことを特徴とする。
【0034】
結晶12の端面12aから垂直方向にテラヘルツ波4を取り出すことで、端面12aでの反射率を抑え,テラヘルツ波4の取出し効率を改善でき、かつ出射したテラヘルツ波4のビーム形状がガウス型のビームプロファイルで取り出すことができる。さらに、テラヘルツ波4の取り出し面をアイドラー光3の全反射点13とすることで、非線形光学結晶12によるテラヘルツ波4の吸収ロスを回避でき出射効率が向上する。
【0035】
図1(B)に例示するように、テラヘルツ波4のパラメトリック発生において、ポンプ光2(励起光)とアイドラー光3の角度は近接し、かつテラヘルツ波4に対して比較的大きな角度を持って発生する。そのため、ポンプ光2とアイドラー光3を結晶端面12aで全反射させて共振器15の構成を保ちながら、テラヘルツ波4を非線形光学結晶12の端面12aに対して垂直に取り出すことが可能となる。
例えば非線形光学結晶12にLiNbOを用いた場合、ポンプ光2およびアイドラー光3はテラヘルツ波4とそれぞれ例えば、64.3°、65°をなすため、テラヘルツ波4を結晶端面12aに対して垂直(出射角0°)に発生させるには、結晶端面にポンプ光を64.3°の角度で入射させる必要がある。このときアイドラー光は端面に対して65°の角度で発生するように2枚のミラー15a,15bを配置する必要がある。
【0036】
図2において、ポンプ光2の波長を1.064μmとするとアイドラー光3の波長は1.07μmとなり、LiNbOのこれらの波長に対する屈折率np, iは2.15であるため、全反射角θrは27.7°である。そのため、ポンプ光2とアイドラー光3の入射角θp、θiを64.3°、65°と設定することで、結晶端面12aに入射するポンプ光2、アイドラー光3は全反射し登頂型の共振器15を構成できる。
【0037】
図3は、本発明のテラヘルツ波発生装置の第2実施形態図である。この例では、非線形光学結晶12の一端面12aにテラヘルツ波4の反射率を低減する反射低減部材16を備えている。この反射低減部材16とは、屈折率及び/又は厚さを、テラヘルツ波4の結晶端面12a での反射率を低減させるために設計及び選択されたものであり、より好ましくは、テラヘルツ波4の吸収係数が低く、かつ低屈折率の材料であり、相殺的な干渉を生じさせることで反射を低下させ、透過率を100%に近づけるように設計された厚さのものが好ましい。
境界面(端面12a)での透過率Tは屈折率差にも依存する。テラヘルツ波4を非線形光学結晶12から大気中に取り出す場合、非線形光学結晶12の端面12aに低屈折率の材料16を取り付け、内部反射を抑え大気中への取り出し効率を向上することができる。
【0038】
一般に、屈折率の異なる境界面において光の透過率は入射角に依存する。例えば、非線形光学結晶12としてLiNbOを用いた場合、テラヘルツ波帯の屈折率nTHzは5.2である。
【0039】
図4は、本発明におけるテラヘルツ波の入射角と透過率との関係図である。この図において横軸は入射角、縦軸は透過率であり、大気中に出てくるテラヘルツ波の透過率を計算した結果である。
またこの図において、○印(case1)は、非線形光学結晶にLiNbO結晶を用いて、LiNbO結晶(テラヘルツ波屈折率:5.25)から直接大気中にテラヘルツ波を取り出す場合のLiNbOと大気境界面での透過率である。
この図から入射角0°のとき透過率が最大となり入射角が大きくなるにつれて減少することがわかる。このことはLiNbOで発生したテラヘルツ波を最も効率よく取り出せる角度は、入射角0°つまり、非線形光学結晶から垂直に出射するときを意味している。すなわち、非線形光学結晶12からテラヘルツ波4を垂直に取り出す場合が、最も効率よくテラヘルツ波を取り出せることがわかる。
【0040】
図3のcase2とcase3は、反射低減部材16として低屈折率基板を取り付けた場合を示している。case2は、LiNbOの端面にMgO(屈折率3.25)の低屈折率基板を取付けた場合、case3は、LiNbOの端面にMgOの低屈折率基板16とテラヘルツ波に対して透明な樹脂(屈折率1.5)を取付けた場合である。
【0041】
図3からcase1~case3のいずれの場合も垂直入射(出射角0°)が最も透過率が高いことがわかる。なお、テラヘルツ波に対して透明な樹脂としては、特許文献3(特願2003--107885号)にあげられる樹脂が使用可能である。
ただし、この低屈折率の条件として、非線形光学結晶との端面にてポンプ光、アイドラー光に対しては全反射となることが条件である。例えば、非線形光学結晶にLiNbO結晶を用い、反射低減部材としてMgO結晶を用いる場合、ポンプ光およびアイドラー光に対するLiNbOとMgO屈折率はそれぞれ2.15、1.72であることから全反射角はその境界面で53.1°となる。テラヘルツ波を垂直に取り出すにはポンプ光とアイドラー光の結晶への入射角が64.3°、65°であるため、ポンプ光とアイドラー光は結晶端面に対して64.3°、65°で入射させる。これは全反射角53.1°より大きいため全反射となり、登頂型の共振器構成が可能となる。
【0042】
前述の登頂型の共振器構成に加え、結晶端面から垂直に出射するテラヘルツ波に対しては反射低減部材となり、ポンプ光およびアイドラー光に対しては全反射する材料を取付けることでさらに効率よくテラヘルツ波を取り出すことができる。また、効率の良いテラヘルツ波の取り出しのために、低屈折率基板16に加え、もしくはその代わりに、相殺的な干渉を生じさせることで反射を抑えるために設計された厚さの材料(ARコーティング)と組み合わせることが可能である。
テラヘルツ波4を非線形光学結晶の端面12aから垂直に取り出すことで、テラヘルツ波のビーム形状を乱れなくほぼガウス型のビームプロファイルで取り出すことができる。
すなわち、従来の技術ではテラヘルツ波の取り出しにシリコンプリズムアレイ9を用いていたため、波面が乱れてしまい、集光に複数のレンズを用いる必要があったが、本発明では平面からテラヘルツ波が出射するため、ガウス型のビーム径は出射するためこれらの問題が改善できる。
【0043】
図5、図6は、本発明のテラヘルツ波発生装置の第3、第4実施形態図である。この例では、非線形光学結晶12の一端面12aに、低屈折率基板16に加えてテラヘルツ波4を集光する集光レンズ18を直接取り付けている。
なお、上記で述べた反射低減部材を材料としたコリメートレンズを直接取り付けてもよい。
【0044】
図5、図6のように、テラヘルツ波発生点13の直後にレンズ18を取付けることで小さいビーム径で平行化でき、同時にこの樹脂レンズが反射低減部材の役割を果たしている。このことで、これまでは一旦大気中に取り出し、複数枚のレンズでビーム径を小さくするか、ビームの一部を切り出してビーム径を小さくしていたため、各光学部品端面で生じるロスの問題を改善できる。
また樹脂レンズを用いることができるので、図6のようにレンズ18とテラヘルツファイバー19を組み合わせたファイバーカプラーを直接取り付けることができる。
【実施例1】
【0045】
図7は、本発明のテラヘルツ波発生装置の実験光学系の構成図である。
この実施例では、非線形光学結晶12は、4×5×50mmのLiNbO結晶2本と台形状のLiNbO結晶で構成されている。また非線形光学結晶12の頂端面12aには厚さ1mmのMgO基板16を貼り付け、そこからテラヘルツ波4を取り出している。ポンプ光2を入射するためには1.064μmのNd:YAGレーザー14を用いた。ポンプ光2はミラー(M1)15aから共振器内に入射し登頂点(頂端面12a)で反射されミラー(M2)15bから出射する。結晶内で発生したアイドラー光3は共振器ミラーM1,M2で共振し増幅されテラヘルツ波4が登頂点12aから垂直方向に出射する。出射したテラヘルツ波4はMgO基板16とテラヘルツ用レンズ22を介してボロメーター検出器23で検出される。なお、21はポンプ光2を遮断するダンパーである。
【0046】
図8は、この実施例で発生したテラヘルツ波のビーム形状を示す図である。この図はMgO基板16から約20cmのところで測定した横方向のビーム形状である。測定は1mmφのピンホールをステージで走査し強度をプロットして測定した。
この図から、半値全幅は約7mmであり、ほぼガウス形状で出射していることが確認された。このときのテラヘルツ波は1.6THzである。
【0047】
図9は、本発明で発生したテラヘルツ波の入出力特性図である。この図に示すように、発振閾値は13.5mJ/pulseであった。また26mJ/pulseのポンプ光入力に対して、テラヘルツ波の出力は42pJ/pulseであり、従来のテラヘルツ波パラメトリック発振器とほぼ同等の出力を観測した。これはボロメーター検出器の飽和エネルギーのほぼ5倍であり各種分光測定には十分な出力エネルギーである。
【0048】
上述したように、従来は、テラヘルツ波の取り出しにプリズムアレイを用いていたことから、結晶から出射直後のビーム形状がギザギザ状になっていた。
これに対して、本発明では、テラヘルツ波の発生点がポンプ光とアイドラー光の全反射点またはその近傍となり、実質的に1点で発生しかつ端面に対してほぼ垂直に出射するので、ガウス光学系の適用が容易な回転対称に近いテラヘルツ波の出力分布を得ることができることが、図8の実施例からも確認された。
【0049】
また、本発明は、結晶端面から垂直にテラヘルツ波を取り出すことで反射による損失の低下、波面の乱れの回避、ビーム形状の改善が可能である。また、この構成を用いることで、これまで困難であったARコーティングやテラヘルツ波ファイバーなどを光源と一体型で取付けることも実施形態で示したように可能となる。
本発明では、テラヘルツ波パラメトリック発振器の構成において、非線形光学結晶の端面でポンプ光とアイドラー光を反射させ、反射点を頂点とした登頂型の共振器を構成する。ポンプ光の端面での反射角は、ポンプ光自身とアイドラー光が全反射し、位相整合条件下でテラヘルツ波が反射面に対して垂直に出射する角度とする。
このとき、テラヘルツ波出射点(ポンプ光、アイドラー光の反射点)に、ポンプ光、アイドラー光は全反射し、テラヘルツ波に対しては、その反射を低減させるような素材を取付けることが重要となる。
例えば、MgO結晶は、ポンプ光とアイドラー光に対する屈折率が1.72であり、テラヘルツ波に対する屈折率は3.25であるため、非線形光学結晶面でテラヘルツ波の反射を低減させ、アイドラー光に対して共振器を構成することが可能となる。MgO基板16にはレンズ18や樹脂などの取り付けが可能である。
【0050】
なお、本発明は上述した実施例及び実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のテラヘルツ波発生装置の第1実施形態図である。
【図2】本発明におけるポンプ光及びアイドラー光のテラヘルツ取り出し面に対する入射角及び屈折率の説明図である。
【図3】本発明のテラヘルツ波発生装置の第2実施形態図である。
【図4】本発明におけるテラヘルツ波の入射角と透過率との関係図である。
【図5】本発明のテラヘルツ波発生装置の第3実施形態図である。
【図6】本発明のテラヘルツ波発生装置の第4実施形態図である。
【図7】本発明のテラヘルツ波発生装置の実験光学系の構成図である。
【図8】本発明で発生したテラヘルツ波のビーム形状を示す図である。
【図9】本発明で発生したテラヘルツ波の入出力特性図である。
【図10】テラヘルツ波の発生原理図である。
【図11】特許文献1に開示されたサブミリ波発生装置の模式図である。
【図12】特許文献2に開示されたテラヘルツ波発生装置の模式図である。
【符号の説明】
【0052】
1,1′ 非線形光学結晶、2 ポンプ光(励起光)、
3 アイドラー光、4 テラヘルツ波、
5 レーザ装置、6 プリズム、
7 第1レーザー光、8 第2レーザー光、
9 プリズムアレイ
10 テラヘルツ波発生装置、
12 非線形光学結晶(LiNbO結晶)、12a 一端面(頂端面)、
13 全反射点、15 共振器、15a,15b 反射ミラー(共振器ミラー)、
16 反射低減部材(低屈折率基板、MgO基板)、
18 集光レンズ、19 テラヘルツファイバー、
21 ダンパー、22 テラヘルツ用レンズ、23 ボロメーター検出器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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