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明細書 :カーボンナノチューブ組成物およびこれを用いた製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5382756号 (P5382756)
公開番号 特開2006-248816 (P2006-248816A)
登録日 平成25年10月11日(2013.10.11)
発行日 平成26年1月8日(2014.1.8)
公開日 平成18年9月21日(2006.9.21)
発明の名称または考案の名称 カーボンナノチューブ組成物およびこれを用いた製造方法
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
C01G  23/047       (2006.01)
FI C01B 31/02 101F
C01G 23/047
請求項の数または発明の数 14
全頁数 12
出願番号 特願2005-064898 (P2005-064898)
出願日 平成17年3月9日(2005.3.9)
審査請求日 平成20年2月26日(2008.2.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】独立行政法人理化学研究所
発明者または考案者 【氏名】国武 豊喜
【氏名】李 丞祐
【氏名】二神 渉
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】西山 義之
参考文献・文献 特開2005-053720(JP,A)
VINCENT, P. et al.,Inclusion of carbon nanotubes in a TiO2 sol-gel matrix,J. Non-Cryst. Solid.,2002年,Vol. 311,p. 130-137
JITIANU, A. et al.,New carbon multiwall nanotubes-TiO2 nanocomposites obtained by the sol-gel method,J. Non-Cryst. Solid.,2004年,Vol. 345-346,p. 596-600
HERNADI, K. et al.,Synthesis of MWNT-based composite materials with inorganic coating,Acta Mater.,2003年,Vol. 51,p. 1447-1452
調査した分野 C01B 31/00-31/36
C01G 23/00
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
溶媒と、チタン酸化物前駆体としてのチタンアルコキシドを含み、加水分解されたチタンアルコキシドを含まない系に、未修飾のカーボンナノチューブが可溶化されたカーボンナノチューブ組成物。
【請求項2】
前記チタンアルコキシドが有するアルキル鎖の炭素数は1~10である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ組成物。
【請求項3】
前記チタンアルコキシドが有するアルキル鎖の炭素数は3または4である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ組成物。
【請求項4】
前記チタンアルコキシドは、チタンテトラブトキシドまたはチタンテトラプロポキシドである、請求項1に記載のカーボンナノチューブ組成物。
【請求項5】
前記チタンアルコキシドを含む系はトルエンを溶媒とする、請求項1~4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のカーボンナノチューブ組成物を用いることを特徴とする、チタン酸化物/カーボンナノチューブ複合体の製造方法。
【請求項7】
前記チタン酸化物/カーボンナノチューブ複合体は、カーボンナノチューブが分散したチタン酸化物薄膜である、請求項6に記載のチタン酸化物/カーボンナノチューブ複合体の製造方法。
【請求項8】
前記チタン酸化物薄膜の膜厚が100nm以下である、請求項7に記載のチタン酸化物/カーボンナノチューブ複合体の製造方法。
【請求項9】
カーボンナノチューブ組成物を加水分解する工程を含む、請求項6~8のいずれかに記載のチタン酸化物/カーボンナノチューブ複合体の製造方法。
【請求項10】
請求項1~5のいずれかに記載のカーボンナノチューブ組成物を用いることを特徴とする、カーボンナノチューブの表面にチタン酸化物薄膜を形成する方法。
【請求項11】
前記カーボンナノチューブ組成物を加水分解する工程を含む、請求項10に記載のカーボンナノチューブの表面にチタン酸化物薄膜を形成する方法。
【請求項12】
前記カーボンナノチューブ組成物を、前記加水分解の前または後に濾過する工程を含む、請求項11に記載のカーボンナノチューブの表面にチタン酸化物薄膜を形成する方法。
【請求項13】
前記チタン酸化物薄膜の厚さが100nm以下である、請求項10~12のいずれかに記載のカーボンナノチューブの表面にチタン酸化物薄膜を形成する方法。
【請求項14】
請求項1~5のいずれかに記載のカーボンナノチューブ組成物を燃焼する工程を含む、チタン酸化物構造体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶化剤、可溶化方法、カーボンナノチューブ組成物、ならびに、該組成物を用いた、金属酸化物/カーボンナノチューブ複合体の製造方法、カーボンナノチューブが分散した金属酸化物薄膜の製造方法、カーボンナノチューブの表面に金属酸化物薄膜を形成する方法および金属酸化物構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(以下、本明細書において「CNTs」と表すことがある。)の複合材料を開発するにあたり、CNTsの可溶化は極めて重要な技術であり、CNTsの可溶化が種々検討されている。
例えば、CNTsを化学処理する方法が知られている(非特許文献1)。この方法では、CNTsを酸などの化学物質で処理し、切断部や側壁の欠陥部位に生じるカルボキシル基を利用している。しかしながら、この方法では、CNTsを過酷な条件下で処理することが必要であり、CNTsの優れた機能を損なう可能性が指摘されている。
そこで、CNTsの表面に物理的吸着を行う方法も検討されている。この方法では、CNTsの側面に可溶化剤(ピレン、DNA、ポルフィン、ポリマー、脂質、界面活性剤等)を物理的に吸着させて利用している(非特許文献2)。また、非特許文献3には、イミダゾリウム型イオン性液体に分散したCNTsがゲルになることを利用して、ポリマー/CNTs複合ソフトマテリアルの開発が行われている(非特許文献3)。しかしながら、イミダゾリウム型イオン性液体は高価で、材料としての用途は限られてくる。
【0003】
一方、無機系に直接CNTsを添加して複合材料を作成した例は無かった。従って、従来の方法でCNTsに金属酸化物をコーティングするには、有機系可溶化剤を用いてCNTs側壁を化学修飾した後、金属の無機塩またはアルコキシドなどの金属酸化物前駆体を吸着させる場合が殆どであった。これらの方法は、操作が多段階であることから手間がかかる。
【0004】

【非特許文献1】Nano Lett.3,681-683(2003)
【非特許文献2】Chem,Mat.16,2691-2693(2004)
【非特許文献3】Science 300,2072-2074(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決することを目的としたものであって、簡単にCNTsを可溶化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)金属酸化物前駆体を含むことを特徴とする、カーボンナノチューブ可溶化剤。
(2)前記金属酸化物前駆体は、金属アルコキシドである、カーボンナノチューブ可溶化剤。
(3)(1)または(2)に記載の可溶化剤を用いてゾルゲル反応する工程を含む、カーボンナノチューブの可溶化方法。
(4)金属酸化物前駆体を含む系に可溶化されたカーボンナノチューブ組成物。
(5)前記金属酸化物前駆体は金属アルコキシドである、カーボンナノチューブ組成物。
(6)前記金属アルコキシドはチタンアルコキシドである、(5)に記載のカーボンナノチューブ組成物。
(7)前記金属アルコキシドが有するアルキル鎖の炭素数は1~10である、(5)または(6)に記載のカーボンナノチューブ組成物。
(8)前記金属アルコキシドが有するアルキル鎖の炭素数は3または4である、(5)または(6)に記載のカーボンナノチューブ組成物。
(9)前記金属アルコキシドは、チタンテトラブトキシドまたはチタンテトラプロポキシドである、(5)に記載のカーボンナノチューブ組成物。
(10)前記金属酸化物前駆体を含む系はトルエンを溶媒とする、(4)~(9)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ組成物。
(11)チタンテトラブトキシドまたはチタンテトラプロポキシドとトルエンを含む系に可溶化された、(5)に記載のカーボンナノチューブ組成物。
(12)前記カーボンナノチューブは未修飾である、(4)~(11)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ組成物。
(13)(4)~(12)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ組成物を用いることを特徴とする、金属酸化物/カーボンナノチューブ複合体の製造方法。
(14)前記金属酸化物/カーボンナノチューブ複合体は、カーボンナノチューブが分散した金属酸化物薄膜である、(13)に記載の金属酸化物/カーボンナノチューブ複合体の製造方法。
(15)前記金属酸化物薄膜の膜厚が100nm以下である、(14)に記載のカーボンナノチューブ複合体を分散させた金属酸化物薄膜の製造方法。
(16)カーボンナノチューブ組成物を加水分解する工程を含む、(13)~(15)のいずれかに記載の金属酸化物/カーボンナノチューブ複合体の製造方法。
(17)(4)~(12)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ組成物を用いることを特徴とする、カーボンナノチューブの表面に金属酸化物薄膜を形成する方法。
(18)前記カーボンナノチューブ組成物を加水分解する工程を含む、(17)に記載のカーボンナノチューブの表面に金属酸化物薄膜を形成する方法。
(19)前記カーボンナノチューブ組成物を、前記加水分解の前または後に濾過する工程を含む、(18)に記載のカーボンナノチューブの表面に金属酸化物薄膜を形成する方法。
(20)前記金属酸化物薄膜の厚さが100nm以下である、(17)~(19)のいずれかに記載のカーボンナノチューブの表面に金属酸化物薄膜を形成する方法。
(21)前記カーボンナノチューブが未修飾の状態で行なう、(17)~(20)のいずれかに記載のカーボンナノチューブの表面に金属酸化物薄膜を形成する方法。
(22)(4)~(12)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ組成物を燃焼する工程を含む、金属酸化物構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明を採用することにより、CNTsを可溶化することが容易になった。特に、未修飾のCNTsについても可溶化することが可能になった。
さらに、無機系のものに可溶化可能となったため、金属酸化物/CNTs複合体(特に、CNTsを分散させた金属酸化物薄膜)の形成、CNTsの表面に金属酸化物薄膜を設けることが、著しく容易になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本明細書において「CNTs」とは、特に定めるものではなく、例えば、その組成の大半が炭素からなり、ナノメータレベルのチューブ状をしたものをいう。CNTsのチューブは開環状であっても閉環状であってもよい。また、コーン状であってもよい。さらに、CNTsは、単層構造であっても、多層構造であってもよい。加えて、CNTsは、金属性であっても、半導体性であってもよい。特に、本発明では、未修飾のCNTsも可溶化できるため、応用の範囲が広がる。ここで、「未修飾」とは、CNTsの表面に化学的処理を施していないもの、および/または、官能基を有さないもの等をいう。
【0010】
本発明のCNTs可溶化剤は、金属酸化物前駆体を含む。
本発明で用いることができる金属酸化物前駆体としては、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではない。金属酸化物前駆体が有する金属としては、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ニオブ、ケイ素、ホウ素、インジトリウム、錫等が好ましい例として挙げられ、チタンがより好ましい。また、2種以上の金属から構成されていてもよい。
金属酸化物前駆体としては、金属アルコキシド、適当な溶媒に溶解することにより金属アルコキシドを形成するもの(例えば、TiCl4等)や、溶媒中でゾルゲル反応を起こす化合物であって金属および酸素を含有する化合物(例えば、Si(OCN)4等)等が挙げられる。この中でも金属アルコキシドが好ましい。
【0011】
金属アルコキシドを形成するアルキル鎖の炭素数は1~10が好ましく、金属アルコキシドが有する総炭素数は、10以上であることが好ましい。
金属アルコキシドは、2個以上のアルコキシル基を有するもの、配位子を有し2個以上のアルコキシル基を有するもの等であってもよい。
【0012】
具体的には、本発明の金属アルコキシドとしては、チタンテトラブトキシド(Ti(O-nBu)4)、ジルコニウムテトラプロポキシド(Zr(O-nPr)4)、ジルコニウムテトラブトキシド(Zr(O-nBu)4)、アルミニウムトリブトキシド(Al(O-nBu)3)、ニオブペンタブトキシド(Nb(O-nBu)5)、シリコンテトラメトキシド(Si(O-Me)4)、ホウ素テトラエトキシド(B(O-Et)3)、チタンテトラプロポキシド(Ti(O-nPr)4)、スズテトラブトキシド(Sn(O-iPr)4)、ゲルマニウムテトラブトキシド(Ge(O-nBu)4)、インジウムトリ(メトキシエトキシド)(In(O-Et-O-Me)3)等の金属アルコキシド化合物;メチルトリメトキシシラン(MeSi(O-Me)3)、ジエチルジエトキシシラン(Et2Si(O-Et)2)等の2個以上のアルコキシル基を有する金属アルコキシド;アセチルアセトン等の配位子を有し2個以上のアルコキシル基を有する金属アルコキシド; BaTi(OR)xなどのダブルアルコキシドが挙げられる。中でも、Ti(O-nBu)4、Ti(O-nPr)4、Sn(O-iPr)4、Sn(O-nBu)4、Ge(O-nBu)4、In(O-Et-O-Me)3などの金属アルコキシドを用いることが好ましく、特に、Ti(O-nBu)4またはTi(O-nPr)4を用いることがさらに好ましい。
上記金属アルコキシドは、必要に応じて二種以上の金属アルコキシドを組み合わせて用いることもできる。
【0013】
本発明では、上記可溶化剤を用いることにより、CNTsを可溶化することができる。ここで、 本発明の可溶化剤は、CNTsを分散させやすい溶媒に添加して用いることが好ましい。このような溶媒としては、例えば、トルエン、メタノール、エタノール、プロパノール、ベンゼン等が挙げられ、これらは、2種以上の混合物であってもよい。また、可溶化剤を上記溶媒系に添加した場合の金属酸化物前駆体の濃度は、CNTs0.1mgに対し、好ましくは1~200mM、より好ましくは10~150mM、さらに好ましくは40~120mMである。
【0014】
本発明では、CNTsは、金属酸化物前駆体を含む可溶化剤によってゾルゲル反応され、可溶化される。すなわち、そして、例えば、金属アルコキシドを含む系に可溶化されたCNTs組成物が得られる。
上記CNTs組成物は、金属酸化物/CNTs複合体の製造、さらには、CNTsが分散した金属酸化物薄膜に好ましく用いることができる。ここで、金属酸化物/CNTs複合体とは、金属酸化物中にCNTsが分散した状態で存在していることをいい、特に、膜状(板状、プレート状等を含む)のものを、CNTsが分散した金属酸化物薄膜という。
このような金属酸化物/CNTs複合体は、例えば、該CNTs組成物を加水分解することにより得られる。さらに、加水分解の前または後に、余分な金属酸化物前駆体および溶媒を除去してもよい。余分な金属酸化物前駆体および溶媒の除去は、不活性雰囲気下(窒素雰囲気下等)で、行うことが好ましい。
具体的な製造工程については、公知の方法、例えば、特開平9-241008号公報、特開平10-249985号公報、特開2003-252609号公報等に記載の方法に従って行うことができる。
ここで、本発明の方法では、膜厚が、例えば、100nm以下のもの、さらには、500~1000nmのものも得られる。もちろん、膜を積層することにより、より厚いものとすることも可能である。
【0015】
金属酸化物/CNTs複合体の製造にCNTs組成物を用いる場合、金属酸化物前駆体の濃度は、CNTs0.1mgに対し、1~200mMであることが好ましく、10~150mMであることがより好ましい。
【0016】
このような金属酸化物/CNTs複合体は、例えば、触媒や色素増感太陽電等の特異的な用途の多い機能性セラミックスに用いることができ、CNTsを分散させることにより、これらの機能の飛躍的な増加、さらには、新たな熱交換材料等としての利用が期待される。
【0017】
加えて、本発明のCNTs組成物を用いることにより、CNTsの表面に金属酸化物薄膜を形成することができる。この場合も、CNTs組成物を加水分解することにより形成することができる。ここで、従来の方法では、CNTsの表面に官能基等を形成させる必要があったが、本発明のCNTs組成物を採用することにより、ワンステップでCNTsの表面に金属酸化物薄膜を形成できるようになった。
また、必要に応じて、加水分解の前または後にCNTs組成物を濾過してもよい。濾過することにより、不要な金属酸化物前駆体を除去することが可能になる。濾過は、0.05~0.5μmのフィルターで行うことが好ましい。
CNTsの表面に金属酸化物薄膜を形成するのにCNTs組成物を用いる場合、金属酸化物前駆体の濃度は、CNTs0.1mgに対し、CNTs0.1mgに対し、好ましくは1~200mM、より好ましくは10~150mM、さらに好ましくは40~120mMである。
尚、CNTsの表面に金属酸化物薄膜を形成する場合、該金属酸化物薄膜の厚さは、例えば、100nm以下、さらには10nm以下、特には5nm以下とすることができる。もちろん、複数層を積層することにより、より厚い薄膜を形成することも可能である。
【0018】
一方、CNTsは、研究が進み、様々な形状に調整が可能となっている。そこで、CNTsを鋳型として、金属酸化物構造体を製造することができる。すなわち、公知の方法により形成した鋳型となるCNTsの表面に、上記の方法で、金属酸化物薄膜を形成し、さらに、CNTsが燃焼する温度で燃焼することにより、金属酸化物薄膜部分のみが残り、金属酸化物構造体が得られる。ここで、燃焼条件は、金属酸化物を燃焼・分解させず、CNTsを燃焼する条件であれば、特に定めるものではない。例えば、350~1000℃で、30分~10時間である。
【実施例】
【0019】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0020】
実施例1 CNTsの可溶化の確認(1)
トルエンに、0.1mg/mlとなるように 単層CNTs(Aldrich製、51,930-8)を添加し、100mM Ti(O-nBu)4-トルエン溶液に加え、超音波処理を30分間行った。また、比較サンプルとして、Ti(O-nBu)4を添加せず、他は同様にして行った。図1は、超音波処理の30分後の写真である。図1中、右側はTi(O-nBu)4-トルエン溶液に、左側はトルエンのみの液に、それぞれ、単層CNTsを添加したものである。その結果、Ti(O-nBu)4を添加しなかったトルエン中の単層CNTsは沈殿してしまったが(図1左)、Ti(O-nBu)4-トルエン溶液では可溶化していることが認められた(図1右)。
【0021】
実施例2 CNTsの可溶化の確認(2)
実施例1において、Ti(O-nBu)4をTi(O-nPr)4に代え、他は同様に行った。Ti(O-nPr)4においても、可溶化していることが認められた。
【0022】
実施例3 単層CNTsが可溶化Ti(O-nBu)4-トルエン溶液のキャスト膜
0.1mg/mlとなるように単層CNTsが可溶化した100mM Ti(O-nBu)4-トルエン溶液をガラス板上にキャストし、十分に加水分解した後、電界放出型走査電子顕微鏡(SEM)(日立製作所製、S-5200)を用いて観察した。また、比較例として、単層CNTsを含まない100mM Ti(O-nBu)4-トルエン溶液についても同様に行った。図2(a)は、Ti(O-nBu)4-トルエン溶液をキャストしたときの写真であり、TiO2膜が確認できた。一方、図2(b)は、単層CNTsが可溶化したTi(O-nBu)4-トルエン溶液をキャストしたときの写真であり、TiO2膜中に単層CNTsが分散していることが観察できた。すなわち、単層CNTsが可溶化したTi(O-nBu)4-トルエン溶液の加水分解を行うことでTiO2膜/CNTs複合体が得られることが認められた。
【0023】
実施例4 TiO2/CNTsプレートの作製(1)
0.1mg/mlとなるように単層CNTsが可溶化した50mM Ti(O-nBu)4-トルエン溶液の上澄みを取り出し、室温でトルエンを揮発させると、茶色で透明なプレート状の物質が確認できた(図3右上部)。SEM写真(図3左下部)から、TiO2バルクに単層CNTsが混入している様子が認められた。
【0024】
実施例5 TiO2/CNTsプレートの作製(2)
実施例4と同様に0.1mg/mlとなるように単層CNTsを可溶化させた100mM Ti(O-nBu)4-トルエン溶液を、沈澱を含めて、室温でトルエンを揮発させると、真っ黒なプレートができた(図4左上部)。上と同様にTiO2バルクに単層CNTsが分散したものであることが認められた(図4右下部)。
【0025】
実施例6 CNTsが分散したTiO2薄膜の作製
0.1mg/mlとなるように単層CNTsを可溶化させた100mM Ti(O-nBu)4-トルエン溶液 (30℃)に、表面を水酸基修飾したガラス板に20分間浸漬した。その後、トルエンに1分間浸漬して過剰吸着したTi(O-nBu)4と単層CNTsを除去し、窒素ガスで乾燥させた。イオン交換水に浸漬して加水分解を行った後、再び窒素ガスで乾燥させた。以上の操作を1サイクルとし、この操作の繰り返しにより薄膜形成を行った。単層CNTsを可溶化させた100mM Ti(O-nBu)4-トルエン溶液の吸着によるQCM振動数変化を図5に示した。QCM振動数変化はΔF=158±95であった。浸漬時間を増やしても振動数に大きな違いは生じなかったため、20分で十分飽和に達していることが認められた。20サイクルの吸着を行った膜の表面をSEMを用いて観察した。その結果を図6に示した。吸着後の表面には多くの単層CNTsが分散している様子が観察された。この結果より、本発明のCNTs組成物を用いることにより、100nm以下の単層CNTsが分散したTiO2薄膜を形成できることが認められた。
【0026】
実施例7 CNTsの金属酸化物コーティング
0.1mg/mlとなるように単層CNTsを可溶化させた100mM Ti(O-nBu)4-トルエン溶液の上澄み3mlを、窒素雰囲気下で疎水性四ふっ化エチレン樹脂メンブレンフィルター(サイズ:25mm、膜孔:0.2μm)を用いて吸引濾過した。その後トルエンで数回洗浄し、十分に乾燥した。乾燥したメンブレンフィルターをエタノールに入れ、超音波処理により、メンブレンフィルターからTiO2でコーティングされた単層CNTsを取り出した。この時の単層CNTsを透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子(JEOL)製、JEM-3010)、SEMを用いて観察した。その結果を図7に示した。TEM写真からCNTの周りにTiO2がコーティングされている様子が認められた(図7(a))。この時の単層CNTsの直径は3nm、TiO2の厚さは1~2nmであった。SEMでは10~12nmのチューブが多く観察された(図7(b))。Ptコーティングを約3nm行ったことを考慮すれば、4~6nmのチューブが形成しており、TEMでの結果とほぼ等しいことが確認された。
【0027】
実施例8 金属酸化物構造体の製造
実施例7で作製したTiO2でコーティングした単層CNTs、および、未処理の単層CNTsを450℃で2時間加熱した。そのときのSEM写真を図8に示した。ここで、図8(a)は、過熱後の未処理の単層CNTsの写真であって、本実施例で用いた単層CNTsは450℃で燃焼されていることが認められた。一方、図8(b)は、加熱後のTiO2でコーティングした単層CNTsの写真であって、チューブ状の物が多く観察できた。これは単層CNTs分散Ti(O-nBu)4-トルエン溶液を濾過することで、単層CNTsの側壁にTiO2がコーティングされていることの明確な証拠であるとともに、金属酸化物構造体であることが認められた。
すなわち、単層CNTs分散Ti(O-nBu)4溶液を濾過することで単層CNTsの周りに数nmのTiO2をコーティングできることが判明した。さらに、図8(b)のようなTiO2は、CNTsの形状に応じて自由に形成できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明を採用することにより、容易にCNTsを可溶化することが可能になる。金属アルコキシドを含む系、すなわち、無機系のものに可溶化されたCNTsは、強く求められていたにも関らず今までに例がなかったため、広く種々の産業への応用が期待される。さらに、コスト的にも極めて有利であり、容易な方法であることから、工業的量産が期待できる。
【0029】
加えて、金属酸化物前駆体中に可溶化されたCNTs組成物を用いることにより、金属酸化物/CNTs複合体の形成が可能になった。このため、低コストかつ大量生産が可能なCNTs複合材料の製造が期待できる。特に、CNTsが分散した金属酸化物薄膜を製造することも容易になった。
また、TiO2等の金属酸化物は光触媒や色素増感太陽電池など特異的な用途の多い機能性セラミックスであり、CNTsを混入することでそれらの機能性の飛躍的な増加、更に、大幅に導電性が向上すれば新しい熱電交換材料などの新しいエネルギー変換材料にも期待が持たれる。
【0030】
さらに、表面に金属酸化物薄膜を形成したCNTsは通常バンドルとして存在するCNTsを単離するという目的のほか、新しい化学センサー材料、一次元量子細線などの電子材料としても重要な技術である。加えて、CNTsを機能性金属酸化物でコーティングすることで新たな機能を有する材料としても期待できる。その他の利点として、金属酸化物薄膜を被覆することよりCNTs表面上に様々な化学修飾や有機・無機ナノ複合化が可能となる。例えば、ポリマー、タンパク質などの固定化、官能基の導入などが挙げられる。
特に、本発明では、未修飾CNTsを金属酸化物前駆体を含む組成物を用いることにより、ワンステップで金属酸化物をコーティングできるため、かかる観点からも、工業化が期待される。
また、CNTsは、形状が比較的容易に調整できるため、表面に金属酸化物をコーティングしたCNTsを燃焼することにより、所望の形状の金属酸化物構造体を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本願実施例1で行った超音波処理後の単層CNTs溶液の状況を示す写真である。
【図2】図2は、本願実施例3で作製したキャスト膜を示す写真である。
【図3】図3は、本願実施例4で作製したTiO2/CNTsプレート(1)を示す写真である。
【図4】図4は、本願実施例5で作製したTiO2CNTsプレート(2)を示す写真である。
【図5】図5は、本願実施例6における、CNTs分散Ti(O-nBu)4-トルエン溶液の基板表面への吸着によるQCM振動数変化を示す図である。
【図6】図6は、本願実施例6で作製した金属酸化物薄膜を示す写真である。
【図7】図7は、本願実施例7で作製した金属酸化物がコーティングされたCNTsを示す写真である。
【図8】図8は、本願実施例8における金属酸化物構造体を示す写真である。
図面
【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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