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明細書 :遺伝子発現画像構築方法および遺伝子発現画像構築システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4724497号 (P4724497)
公開番号 特開2007-064689 (P2007-064689A)
登録日 平成23年4月15日(2011.4.15)
発行日 平成23年7月13日(2011.7.13)
公開日 平成19年3月15日(2007.3.15)
発明の名称または考案の名称 遺伝子発現画像構築方法および遺伝子発現画像構築システム
国際特許分類 G01N  21/17        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI G01N 21/17 A
C12Q 1/68 A
C12M 1/00 A
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 12
全頁数 21
出願番号 特願2005-248312 (P2005-248312)
出願日 平成17年8月29日(2005.8.29)
審査請求日 平成20年8月15日(2008.8.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】独立行政法人理化学研究所
発明者または考案者 【氏名】横田 秀夫
【氏名】於保 祐子
【氏名】下川 和郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100089118、【弁理士】、【氏名又は名称】酒井 宏明
審査官 【審査官】小暮 道明
参考文献・文献 特開2003-254964(JP,A)
特開2002-148153(JP,A)
特開2002-085094(JP,A)
特開2003-242154(JP,A)
バイオイメージング, 11[3](2002) p.155-156
医用電子と生体工学, 36[3](1998) p.244-251
調査した分野 C12N15/
C12Q1/
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の試料を切断する切断ステップと、前記切断ステップで切断した試料の断面を撮像し、撮像した複数の撮像断面画像に基づいて試料の3次元画像である試料立体画像を構築する試料立体画像構築ステップと、を含み、試料に存在する遺伝子の発現状態と試料立体画像とを対応付けた遺伝子発現画像を構築する遺伝子発現画像構築方法であって、
前記切断ステップで試料を切断した際に作製した前記撮像した前記撮像断面画像に対応付けられた複数の切片に基づいて、前記撮像断面画像に対応する試料に存在する遺伝子の発現量を測定する発現量測定ステップと、
前記試料立体画像構築ステップで構築した各試料の試料立体画像および前記発現量測定ステップで測定した各試料の前記撮像断面画像に対応付けられた発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて前記遺伝子発現画像を構築する遺伝子発現画像構築ステップと
をさらに含むことを特徴とする遺伝子発現画像構築方法。
【請求項2】
前記切断ステップは、試料ごとに予め定めた切断方向で各試料を切断すること
を特徴とする請求項1に記載の遺伝子発現画像構築方法。
【請求項3】
前記試料立体画像構築ステップは、
前記撮像した各撮像断面画像から、撮像断面画像ごとに予め定めた領域を認識し、当該認識した領域の断面画像である領域断面画像を抽出する領域断面画像抽出ステップと、
前記領域断面画像抽出ステップで抽出した複数の領域断面画像に基づいて、前記領域断面画像抽出ステップで認識した複数の領域で構成される3次元画像である領域立体画像を構築する領域立体画像構築ステップと
をさらに含み、
当該試料立体画像構築ステップは、領域立体画像を試料立体画像として構築すること
を特徴とする請求項1または2に記載の遺伝子発現画像構築方法。
【請求項4】
前記遺伝子発現画像構築ステップは、
前記領域断面画像抽出ステップで抽出した領域断面画像に基づいて前記予め定めた領域の面積を算出し、算出した面積に基づいて前記発現量測定ステップで測定した各試料の前記撮像断面画像に対応付けられた発現量を補正する発現量補正ステップと、
前記領域立体画像構築ステップで構築した各試料の領域立体画像および前記発現量補正ステップで補正した各試料の前記撮像断面画像に対応付けられた発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて前記遺伝子発現画像を構築する補正発現画像構築ステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の遺伝子発現画像構築方法。
【請求項5】
前記発現量測定ステップは、遺伝子の発現量を測定すると共に、当該測定した発現量の信頼性に関する情報である信頼性情報を算出し、
前記遺伝子発現画像構築ステップは、前記試料立体画像構築ステップで構築した各試料の試料立体画像ならびに前記発現量測定ステップで測定した各試料の前記撮像断面画像に対応付けられた発現量および算出した信頼性情報から、所定の画像再構築手法に基づいて前記遺伝子発現画像を構築すること
を特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の遺伝子発現画像構築方法。
【請求項6】
前記所定の画像再構築手法として、解析的手法または近似解推定手法を用いること
を特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の遺伝子発現画像構築方法。
【請求項7】
複数の試料を切断する切断手段と、前記切断手段で切断した試料の断面を撮像し、撮像した複数の撮像断面画像に基づいて試料の3次元画像である試料立体画像を構築する試料立体画像構築手段と、を備え、試料に存在する遺伝子の発現状態と試料立体画像とを対応付けた遺伝子発現画像を構築する遺伝子発現画像構築システムであって、
前記切断手段で試料を切断した際に作製した前記撮像した前記撮像断面画像に対応付けられた複数の切片に基づいて、前記撮像断面画像に対応する試料に存在する遺伝子の発現量を測定する発現量測定手段と、
前記試料立体画像構築手段で構築した各試料の試料立体画像および前記発現量測定手段で測定した各試料の前記撮像断面画像に対応付けられた発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて前記遺伝子発現画像を構築する遺伝子発現画像構築手段と
をさらに備えたことを特徴とする遺伝子発現画像構築システム。
【請求項8】
前記切断手段は、試料ごとに予め定めた切断方向で各試料を切断すること
を特徴とする請求項7に記載の遺伝子発現画像構築システム。
【請求項9】
前記試料立体画像構築手段は、
前記撮像した各撮像断面画像から、撮像断面画像ごとに予め定めた領域を認識し、当該認識した領域の断面画像である領域断面画像を抽出する領域断面画像抽出手段と、
前記領域断面画像抽出手段で抽出した複数の領域断面画像に基づいて、前記領域断面画像抽出手段で認識した複数の領域で構成される3次元画像である領域立体画像を構築する領域立体画像構築手段と
をさらに備え、
当該試料立体画像構築手段は、領域立体画像を試料立体画像として構築すること
を特徴とする請求項7または8に記載の遺伝子発現画像構築システム。
【請求項10】
前記遺伝子発現画像構築手段は、
前記領域断面画像抽出手段で抽出した領域断面画像に基づいて前記予め定めた領域の面積を算出し、算出した面積に基づいて前記発現量測定手段で測定した各試料の前記撮像断面画像に対応付けられた発現量を補正する発現量補正手段と、
前記領域立体画像構築手段で構築した各試料の領域立体画像および前記発現量補正手段で補正した各試料の前記撮像断面画像に対応付けられた発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて前記遺伝子発現画像を構築する補正発現画像構築手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項9に記載の遺伝子発現画像構築システム。
【請求項11】
前記発現量測定手段は、遺伝子の発現量を測定すると共に、当該測定した発現量の信頼性に関する情報である信頼性情報を算出し、
前記遺伝子発現画像構築手段は、前記試料立体画像構築手段で構築した各試料の試料立体画像ならびに前記発現量測定手段で測定した各試料の前記撮像断面画像に対応付けられた発現量および算出した信頼性情報から、所定の画像再構築手法に基づいて前記遺伝子発現画像を構築すること
を特徴とする請求項7から10のいずれか1つに記載の遺伝子発現画像構築システム。
【請求項12】
前記所定の画像再構築手法として、解析的手法または近似解推定手法を用いること
を特徴とする請求項7から11のいずれか1つに記載の遺伝子発現画像構築システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に存在する遺伝子の発現状態(発現パターン)と試料の3次元画像である試料立体画像とを対応付けた遺伝子発現画像を構築する遺伝子発現画像構築方法および遺伝子発現画像構築システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、動物や植物などの生体試料内で発現した遺伝子(発現遺伝子)の局在、つまり遺伝子の発現パターンを3次元的に観察する技術として、特許文献1や特許文献2が開示されている。
【0003】
特許文献1には、特定の遺伝子の発現時に検出が可能となるマーカー(蛍光物質や発光物質など)を有する遺伝子組み換え生体試料を連続して切断し、生体試料の切断毎に該切断面の画像たる断面画像を撮像し、切断面毎に撮像した画像に基づいて3次元的な生体試料の観察を行う技術について記載されている。これにより、生体試料一個全体を観察対象として、生体試料内における発現遺伝子の3次元局在を観察することができる。
【0004】
また、特許文献2には、特定の遺伝子の発現時に検出が可能となるマーカー(蛍光物質や発光物質など)を有する遺伝子組み換え生体試料を一定の方向に順次押し出し、押し出された遺伝子組み換え生体試料の断面に光を集光させ、光を集光させた断面からの反射光によって断面の2次元画像を撮像し、撮像した2次元画像に基づいて3次元的な遺伝子組み換え生体試料の観察を行う技術について記載されている。これにより、生体試料一個全体を観察対象領域とし、且つその観察対象領域内の微細な領域(1つの細胞の大きさ程度の領域)における発現遺伝子の3次元局在を観察することができる。
【0005】
ところで、Affymetrix社製のGeneChip(登録商標)やAgilent Technologies社製のオリゴDNAマイクロアレイ(OligoDNA Microarray)に代表されるように、生物に存在する遺伝子の発現パターンを解析するDNAマイクロアレイ技術が開発されている。現在では、約3万個の遺伝子の発現パターンを解析するDNAチップの開発も行われている。
【0006】

【特許文献1】特開2003-254902号公報
【特許文献2】特開2003-254964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の技術では、生体試料に組み込んだ、特定の遺伝子の発現時に検出が可能となるマーカー(蛍光物質や発光物質など)を介して遺伝子の発現パターンを3次元的に示していたので、対象とする遺伝子の数が1から5個程度の少数に制限されていた、という問題点があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、これまでと比べて格段な数の遺伝子の発現パターンを3次元的に示すことができる遺伝子発現画像構築方法および遺伝子発現画像構築システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明にかかる遺伝子発現画像構築方法は、試料を切断する切断ステップと、前記切断ステップで切断した試料の断面を撮像し、撮像した複数の撮像断面画像に基づいて試料の3次元画像である試料立体画像を構築する試料立体画像構築ステップと、を含み、試料に存在する遺伝子の発現状態と試料立体画像とを対応付けた遺伝子発現画像を構築する遺伝子発現画像構築方法であって、前記切断ステップで試料を切断した際に作製した複数の切片に基づいて、試料に存在する遺伝子の発現量を測定する発現量測定ステップと、前記試料立体画像構築ステップで構築した試料立体画像および前記発現量測定ステップで測定した発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて前記遺伝子発現画像を構築する遺伝子発現画像構築ステップとをさらに含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる遺伝子発現画像構築方法は、前記の遺伝子発現画像構築方法において、複数の試料を対象とし、試料ごとに予め定めた切断方向で、各試料に対し、前記切断ステップならびに前記試料立体画像構築ステップおよび前記発現量測定ステップを実行し、前記遺伝子発現画像構築ステップは、前記試料立体画像構築ステップで構築した各試料の試料立体画像および前記発現量測定ステップで測定した各試料の発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて前記遺伝子発現画像を構築することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる遺伝子発現画像構築方法は、前記の遺伝子発現画像構築方法において、前記試料立体画像構築ステップは、前記撮像した各撮像断面画像から、撮像断面画像ごとに予め定めた領域を認識し、当該認識した領域の断面画像である領域断面画像を抽出する領域断面画像抽出ステップと、前記領域断面画像抽出ステップで抽出した複数の領域断面画像に基づいて、前記領域断面画像抽出ステップで認識した複数の領域で構成される3次元画像である領域立体画像を構築する領域立体画像構築ステップとをさらに含み、当該試料立体画像構築ステップは、領域立体画像を試料立体画像として構築することを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる遺伝子発現画像構築方法は、前記の遺伝子発現画像構築方法において、前記遺伝子発現画像構築ステップは、前記領域断面画像抽出ステップで抽出した領域断面画像に基づいて前記予め定めた領域の面積を算出し、算出した面積に基づいて前記発現量測定ステップで測定した発現量を補正する発現量補正ステップと、前記領域立体画像構築ステップで構築した領域立体画像および前記発現量補正ステップで補正した発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて前記遺伝子発現画像を構築する補正発現画像構築ステップとをさらに含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる遺伝子発現画像構築方法は、前記の遺伝子発現画像構築方法において、前記発現量測定ステップは、遺伝子の発現量を測定すると共に、当該測定した発現量の信頼性に関する情報である信頼性情報を算出し、前記遺伝子発現画像構築ステップは、前記試料立体画像構築ステップで構築した試料立体画像ならびに前記発現量測定ステップで測定した発現量および算出した信頼性情報から、所定の画像再構築手法に基づいて前記遺伝子発現画像を構築することを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる遺伝子発現画像構築方法は、前記の遺伝子発現画像構築方法において、前記所定の画像再構築手法として、解析的手法または近似解推定手法を用いることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は遺伝子発現画像構築システムに関するものであり、本発明にかかる遺伝子発現画像構築システムは、試料を切断する切断手段と、前記切断手段で切断した試料の断面を撮像し、撮像した複数の撮像断面画像に基づいて試料の3次元画像である試料立体画像を構築する試料立体画像構築手段と、を備え、試料に存在する遺伝子の発現状態と試料立体画像とを対応付けた遺伝子発現画像を構築する遺伝子発現画像構築システムであって、前記切断手段で試料を切断した際に作製した複数の切片に基づいて、試料に存在する遺伝子の発現量を測定する発現量測定手段と、前記試料立体画像構築手段で構築した試料立体画像および前記発現量測定手段で測定した発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて前記遺伝子発現画像を構築する遺伝子発現画像構築手段とをさらに備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる遺伝子発現画像構築システムは、前記の遺伝子発現画像構築システムにおいて、複数の試料を対象とし、試料ごとに予め定めた切断方向で、各試料に対し、前記切断手段ならびに前記試料立体画像構築手段および前記発現量測定手段を実行し、前記遺伝子発現画像構築手段は、前記試料立体画像構築手段で構築した各試料の試料立体画像および前記発現量測定手段で測定した各試料の発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて前記遺伝子発現画像を構築することを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる遺伝子発現画像構築システムは、前記の遺伝子発現画像構築システムにおいて、前記試料立体画像構築手段は、前記撮像した各撮像断面画像から、撮像断面画像ごとに予め定めた領域を認識し、当該認識した領域の断面画像である領域断面画像を抽出する領域断面画像抽出手段と、前記領域断面画像抽出手段で抽出した複数の領域断面画像に基づいて、前記領域断面画像抽出手段で認識した複数の領域で構成される3次元画像である領域立体画像を構築する領域立体画像構築手段とをさらに備え、当該試料立体画像構築手段は、領域立体画像を試料立体画像として構築することを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかる遺伝子発現画像構築システムは、前記の遺伝子発現画像構築システムにおいて、前記遺伝子発現画像構築手段は、前記領域断面画像抽出手段で抽出した領域断面画像に基づいて前記予め定めた領域の面積を算出し、算出した面積に基づいて前記発現量測定手段で測定した発現量を補正する発現量補正手段と、前記領域立体画像構築手段で構築した領域立体画像および前記発現量補正手段で補正した発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて前記遺伝子発現画像を構築する補正発現画像構築手段とをさらに備えたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかる遺伝子発現画像構築システムは、前記の遺伝子発現画像構築システムにおいて、前記発現量測定手段は、遺伝子の発現量を測定すると共に、当該測定した発現量の信頼性に関する情報である信頼性情報を算出し、前記遺伝子発現画像構築手段は、前記試料立体画像構築手段で構築した試料立体画像ならびに前記発現量測定手段で測定した発現量および算出した信頼性情報から、所定の画像再構築手法に基づいて前記遺伝子発現画像を構築することを特徴とする。
【0020】
また、本発明にかかる遺伝子発現画像構築システムは、前記の遺伝子発現画像構築システムにおいて、前記所定の画像再構築手法として、解析的手法または近似解推定手法を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる遺伝子発現画像構築方法および遺伝子発現画像構築システムによれば、(1)試料を切断し、(2)切断した試料の断面を撮像し、撮像した複数の撮像断面画像に基づいて試料の3次元画像である試料立体画像を構築し、(3)試料を切断した際に作製した複数の切片に基づいて、試料に存在する遺伝子の発現量を測定し、(4)構築した試料立体画像および測定した発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて、試料に存在する遺伝子の発現状態と試料立体画像とを対応付けた遺伝子発現画像を構築する。これにより、これまでと比べて格段な数(具体的には約3万種類程度)の遺伝子の発現パターンを3次元的に示すことができるという効果を奏する。換言すると、これまでと比べて格段な数の遺伝子の試料内での局在および発現量を3次元的に明らかにすることができるという効果を奏する。また、このことから、試料内で発現している遺伝子(発現遺伝子)間の相互作用などに関する情報を得ることができる。
【0022】
また、本発明にかかる遺伝子発現画像構築方法および遺伝子発現画像構築システムによれば、複数の試料を対象とし、試料ごとに予め定めた切断方向(例えば、互いに直交する切断方向)で、各試料に対し、上記の(1)ならびに(2)および(3)を実行し、上記の(4)において、構築した各試料の試料立体画像および測定した各試料の発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて遺伝子発現画像を構築する。これにより、遺伝子発現画像上で遺伝子の発現パターンを細かく示すことができるという効果を奏する。換言すると、遺伝子発現画像における、遺伝子の発現パターンの空間分解能を向上することができるという効果を奏する。つまり、遺伝子発現画像上で示す遺伝子の発現パターンのマッピングの精度を向上することができるという効果を奏する。
【0023】
また、本発明にかかる遺伝子発現画像構築方法および遺伝子発現画像構築システムによれば、上記の(2)において、(2-1)撮像した各撮像断面画像から、撮像断面画像ごとに予め定めた領域を認識し、当該認識した領域の断面画像である領域断面画像を抽出し、(2-2)抽出した複数の領域断面画像に基づいて、認識した複数の領域で構成される3次元画像である領域立体画像を試料立体画像として構築する。具体的には、例えば、各撮像断面画像から遺伝子がない領域(例えば、試料周辺の領域、対象とする遺伝子の発現がないことが予め判っている領域など)を除くことで、関心のある領域(例えば、対象とする遺伝子が在る領域、組織領域など)の領域断面画像を抽出し、抽出した複数の領域断面画像に基づいて領域立体画像を構築する。これにより、所望の領域立体画像と遺伝子の発現状態とを対応付けた遺伝子発現画像上で遺伝子の発現パターンを3次元的に示すことができるという効果を奏する。また、本発明によれば、所望の領域断面画像を抽出する際、例えば遺伝子の発現部位を限定することができるので、最終的に構築された遺伝子発現画像における、遺伝子の発現パターンの空間分解能を向上することができるという効果を奏する。
【0024】
また、本発明にかかる遺伝子発現画像構築方法および遺伝子発現画像構築システムによれば、上記の(4)において、(4-1)上記の(2-1)で抽出した領域断面画像に基づいて、予め定めた領域の面積を算出し、算出した面積に基づいて、測定した発現量を補正し、(4-2)上記の(2-2)で構築した領域立体画像および上記の(4-1)で補正した発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて遺伝子発現画像を構築する。これにより、遺伝子発現画像上で示す発現量の値の精度を高めることができるという効果を奏する。また、遺伝子発現画像上で単位面積あたりの発現量を示すことができるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明にかかる遺伝子発現画像構築方法および遺伝子発現画像構築システムによれば、上記の(3)において、遺伝子の発現量を測定すると共に、当該測定した発現量の信頼性に関する情報である信頼性情報を算出し、上記の(4)において、構築した試料立体画像(例えば、領域立体画像)ならびに測定した発現量(例えば、補正した発現量)および算出した信頼性情報から、所定の画像再構築手法に基づいて遺伝子発現画像を構築する。これにより、遺伝子発現画像上で示す遺伝子の発現パターンの信頼性を高めることができるという効果を奏する。
【0026】
さらに、本発明にかかる遺伝子発現画像構築方法および遺伝子発現画像構築システムによれば、所定の画像再構築手法として、解析的手法または近似解推定手法を用いる。これにより、既存の手法を利用して遺伝子発現画像の構築ができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明にかかる遺伝子発現画像構築方法および遺伝子発現画像構築システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0028】
〔本発明の基本原理〕
本発明の基本原理について図1を参照して説明する。図1は、本発明の基本原理を示す図である。まず、本発明では、遺伝子発現画像を構築するために用いる試料を準備する(工程1)。ここで、試料は、遺伝子が存在するものであり、具体的には、動物や植物などの生体(個体)、当該生体に含まれる臓器・器官などである。準備する試料の数は、1つでもよく、また複数でもよい。なお、遺伝子発現画像(試料に存在する遺伝子の発現状態と、試料の3次元画像である試料立体画像とを対応付けたもの)上で示す遺伝子の発現パターンの空間分解能を向上させる場合には、ほぼ同一の遺伝子が存在する複数の試料を準備することが望ましい。以下で説明する工程2から工程12は1つの試料に対して行う。
【0029】
つぎに、本発明では、工程1で準備した試料を、mRNAが失活しない包埋剤で包埋(例えば、凍結包埋、パラフィン包埋、樹脂包埋など)する(工程2)。つぎに、本発明では、工程2で包埋した試料を固化(例えば、凍結、冷却、加熱、重合など)する(工程3)。つぎに、本発明では、工程3で固化した試料を、3次元内部構造顕微鏡に設けられた試料設置場所に、所定の角度(向き)で設置する(工程4)。なお、当該所定の角度(向き)とは、試料ごとに予め定めた切断方向で試料を切断するための角度(向き)である。
【0030】
つぎに、本発明では、工程4で設置した試料を、3次元内部構造顕微鏡に設けられた、試料を切削するナイフで所定の厚さに切断する(工程5)。ここで、当該ナイフは、図2に示すような形状(出っ張りのある形状)のものを用いてもよく、また、図3に示すような形状(切り欠けのある形状)のものを用いてもよい。これにより、図示の如く、1回の切断で短冊状の切片を複数枚作製することができる。すなわち、1つの試料から、2次元方向を規定した短冊状の切片を作製することができる。つまり、1つの試料を2つの切断方向から同時に切断することができる。この結果、最終的に構築する遺伝子発現画像上で遺伝子の発現パターンを細かく示すことができる。つまり、遺伝子発現画像上で示す遺伝子の発現パターンの空間分解能を高めることができる。また、これにより、工程1で準備する試料の数を減らすことができる。
【0031】
つぎに、本発明では、工程5で切断した試料の断面を、所定の位置に設置したCCDカメラやスキャナで撮像する(工程6)。ここで、工程6において、試料の断面へ白色光を照射して当該断面をCCDカメラで撮像し、さらに当該断面へ特定光(蛍光)を照射して当該断面をCCDカメラで撮像してもよい。なお、工程6において、試料の断面を、試料を切断する度に撮像しなくてもよい。例えば試料の断面を、試料を複数回(例えば2、3回)切断する度に撮像してもよい。
【0032】
また、本発明では、工程6と並行して、工程5で試料を切断した際に作製した切片を所定の容器を用いて回収すると共に、切片の回収回数をカウントする(工程7)。ここで、工程7において、当該切片の回収回数が所定の数(例えば100)になった場合、当該所定の数の切片が収められた容器を新たな容器に交換する。これにより、工程7で回収した切片を、例えば連続する所定の枚数(例えば100枚程度)の切片からなる複数の切片群(試料(試料立体画像)上における場所が既知の切片群)に分別する。なお、本発明では、工程6で撮像した撮像断面画像と工程7で作製した切片とを対応付けて管理する。また、1つの切片群に含まれる切片の枚数は、集める切片の体積(最小枚数と切削量との積)やmRNAの検出限界などを考慮して適宜変更する。
【0033】
そして、本発明では、試料を所定の距離だけ移動しながら、試料の切断が完了するまで、工程5から工程7を繰り返し実行する。
【0034】
つぎに、本発明では、工程6で撮像した複数の撮像断面画像に基づいて試料立体画像を構築する(工程8)。ここで、工程8において、工程6で撮像した各撮像断面画像から、撮像断面画像ごとに予め定めた領域(例えば、対象とする遺伝子が在る領域や組織領域など)を認識し、当該認識した領域の断面画像である領域断面画像を抽出し(工程8-1)、工程8-1で抽出した複数の領域断面画像に基づいて、工程8-1で認識した複数の領域で構成される3次元画像である領域立体画像を構築し(工程8-2)てもよい。
【0035】
また、本発明では、工程8と並行して、工程7で分別した各切片群を、切片群ごとに保存液に溶解する(工程9)。つぎに、本発明では、工程9で溶解した各保存液からmRNAを抽出する(工程10)。つぎに、本発明では、工程10で抽出したmRNAをDNAマイクロアレイ(例えば、Affymetrix社製のGeneChip(登録商標)、Agilent Technologies社製のオリゴDNAマイクロアレイなどの遺伝子発現を解析するマイクロアレイ)にハイブリダイズする(工程11)。つぎに、本発明では、工程11でハイブリダイズしたDNAマイクロアレイをスキャナ(例えば共焦点レーザースキャナなど)でスキャンし、スキャンした画像に基づいて、工程7で分別した各切片群に含まれる遺伝子の発現量を測定する(工程12)。ここで、工程12において、遺伝子の発現量を測定すると共に、当該測定した発現量の信頼性に関する情報である信頼性情報を算出してもよい。なお、工程9から工程12までは公知の遺伝子発現解析手法で行う。
【0036】
そして、本発明では、工程1で準備した試料の個数分、工程2から工程12を繰り返し実行する。
【0037】
つぎに、本発明では、工程8で構築した各試料の試料立体画像および工程12で測定した各試料の発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて遺伝子発現画像を構築する(工程13)。換言すると、試料立体画像上へ発現量をマッピングすることで、遺伝子発現画像を構築する。具体的には、各切断方向で切断した各試料の切片に基づいて測定した発現量の値を3次元空間(具体的には試料立体画像)上にポテンシャル(濃度)としてプロットし、プロットした発現量から、妥当と思われる発現量の分布を推定することで、遺伝子発現画像を構築する。なお、試料立体画像の空間分解能は、切片群(具体的には約100枚の切片)に対応する遺伝子の発現量の3次元空間上での空間分解能に比べて遥かに細かい。
【0038】
ここで、工程13において、工程8で構築した試料立体画像および工程12で測定した発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて遺伝子発現画像を試料ごとに構築し、構築した各試料に対応する遺伝子発現画像に基づいて、最終的に得る遺伝子発現画像を構築してもよい。
【0039】
また、工程13において、工程8-1で抽出した領域断面画像に基づいて、工程8-1で記した予め定めた領域の面積を算出し、算出した面積に基づいて、工程12で測定した発現量を補正し、工程8-2で構築した領域立体画像および補正した発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて遺伝子発現画像を構築してもよい。
【0040】
また、工程13において、工程8で構築した各試料の試料立体画像(例えば、領域立体画像)ならびに工程12で測定した各試料の発現量(例えば、補正した発現量)および算出した信頼性情報から、所定の画像再構築手法に基づいて遺伝子発現画像を構築してもよい。具体的には、所定の切断方向から切断した各試料に対応する各切片群を用いて測定した、各試料の各切片群に含まれる遺伝子の発現量を、3次元空間(具体的には試料立体画像)にプロットすることで、発現量の確率モデルを構築し、遺伝子発現画像を構築してもよい。より具体的には、例えば切断方向が互いに直交する3方向(x方向、y方向、z方向)の場合、発現量の寄与率をそれぞれの方向に対し例えば33%とし、この寄与率に各遺伝子の信頼性情報を積算することで発現量の確率モデルを構築し、遺伝子発現画像を構築してもよい。これにより、信頼性の低い発現量が、遺伝子発現画像上で示す遺伝子の発現パターンに与える影響を低減することができる。つまり、遺伝子発現画像上で示す遺伝子の発現パターンの信頼性を向上させることができる。なお、工程11でAffymetrix社製のGeneChip(登録商標)やAgilent Technologies社製のオリゴDNAマイクロアレイなどを用いた場合、工程12では発現量の他に当該発現量の信頼性に関する信頼性情報を算出し、工程13では当該信頼性情報をさらに用いることが望ましい。
【0041】
なお、所定の画像再構築手法として、解析的手法(文献「S.Iwasaki, S.Odanaka, Y.Shintoku, M.Kitamura, M.Haruyama, M.Takase, K.Ara,“New CT image reconstruction algorithm based on the Bayes estimation”, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research, A422, pp.683-687, 1999」参照)、近似解推定手法(文献「工藤博幸,“逐次近似法を用いたCT画像再構成法の考え方と驚異”, MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY, Vol.23, No.1, January, 2005」参照)、などを用いてもよい。解析的手法を用いれば、撮像方向および切断間隔(切片回収のピッチ)を細かくすることで、3次元空間(具体的には遺伝子発現画像)上で示す遺伝子の発現パターンの格子(ボクセル)を細かくすることができる。また、近似解推定手法を用いれば、比較的少ない撮像方向、比較的粗い切断間隔(切片回収のピッチ)でも、遺伝子発現画像上で示す遺伝子の発現パターンを統計的に推定することができる。工程11で用いるDNAマイクロアレイ(特にGeneChip(登録商標:Affymetrix社製)やオリゴDNAマイクロアレイ(Agilent Technologies社製))は、最近では安価になってきているが、依然、高価であるので、工程13で近似解推定手法を用いることは本発明を安価に実現するために非常に有効である。
【0042】
ここで、3つの試料(試料A、試料Bおよび試料C)を対象として、試料Aを第1切断方向で、試料Bを第2切断方向で、試料Cを第3切断方向で切断した場合に遺伝子発現画像を構築する手法の一例について、図4を参照して概念的に説明する。なお、第1切断方向(図4で示すように、z軸に垂直な方向)、第2切断方向(図4で示すように、x軸に垂直な方向)および第3切断方向(図4で示すように、y軸に垂直な方向)は互いに直交する方向である。また、試料A、試料Bおよび試料Cは、ほぼ同一の遺伝子が存在するものである。
【0043】
まず、第1切断方向で切断した試料Aの断面を含む各撮像断面画像に対し、第2切断方向で切断した試料Bに含まれる遺伝子の発現パターンを対応付けることで、第2切断方向の発現パターンを対応付けた遺伝子発現画像I2を構築する。また、第1切断方向で切断した試料Aの断面を含む各撮像断面画像に対し、第3切断方向で切断した試料Cに含まれる遺伝子の発現パターンを対応付けることで、第3切断方向の発現パターンを対応付けた遺伝子発現画像I3を構築する。ついで、遺伝子発現画像I2と遺伝子発現画像I3とを重ね合わせることで、第2切断方向および第3切断方向の発現パターンを対応付けた遺伝子発現画像I23を構築する。
【0044】
なお、構築した遺伝子発現画像I23上で示す遺伝子の発現パターンの空間分解能をさらに向上させるために、図5に示すように、試料A,試料Bおよび試料Cとほぼ同一の遺伝子が存在する試料Dおよび試料Eをさらに追加し、試料Dおよび試料Eをそれぞれ図示の如く第4切断方向および第5切断方向で切断し、第4切断方向の発現パターンを対応付けた遺伝子発現画像I4および第5切断方向の発現パターンを対応付けた遺伝子発現画像I5を上記と同様に構築し、遺伝子発現画像I4および遺伝子発現画像I5を遺伝子発現画像I23と重ね合わせることで、第2切断方向から第5切断方向の発現パターンを対応付けた遺伝子発現画像I25を構築してもよい。
【0045】
以上、本発明の基本原理について説明したが、本発明では、特定の遺伝子の発現時に検出が可能となるマーカー(蛍光物質)を組み込んだ試料(蛍光物質で染色した試料)を対象として、3次元内部構造顕微鏡での観察(切断および撮像)と蛍光観察とを組み合わせてもよい。これにより、試料中の発現遺伝子(遺伝子個別に問わない)の量を遺伝子発現画像上で示すことが可能であり、さらに、遺伝子の発現の様子(活性度)と発現している遺伝子の種類との関係を遺伝子発現画像上で確認することが可能である。ただし、発現遺伝子の染色で用いる蛍光色素の蛍光波長と工程11で用いるDNAマイクロアレイで使用する蛍光物質の蛍光波長とが重ならないように、染色で用いる蛍光色素を選択することが重要である。また、その中の全ての細胞で蛍光を発現するように設計した遺伝子組み替え体を対象としてもよい。これにより、例えば、消化器官内など遺伝子発現がない体外の部分を明らかにすることが可能となり、その結果、遺伝子発現画像上で遺伝子の発現パターンをより鮮明に示すことが可能となる。
【0046】
〔システム構成〕
本実施の形態の遺伝子発現画像構築システム100の構成について、図6を参照して説明する。図6は、遺伝子発現画像構築システム100の構成を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
【0047】
図6に示すように、遺伝子発現画像構築システム100は、大別して、3次元内部構造顕微鏡102と、DNAマイクロアレイシステム104と、ワークステーション106と、遺伝子発現画像データベース108とで構成され、これらは通信可能に接続されている。
【0048】
3次元内部構造顕微鏡102は、主に、試料を切断し、切断した試料の断面を撮像する機能を有する。3次元内部構造顕微鏡102は、後述するワークステーション106の統合制御部106aから受け取った入力情報(具体的には、試料番号、画像枚数、温度情報および試料交換トリガ)に基づいて出力情報(具体的には、撮像断面画像(画像情報)、撮像断面画像の空間分解能、切削間隔および光源情報)を出力すると共に、切片を作製する。具体的には、3次元内部構造顕微鏡102は、制御部102aと、試料供給部102bと、切断部102cと、撮像部102dと、試料確認部102eと、試料移動部102fと、画像記憶部102gと、で構成される。
【0049】
制御部102aは、3次元内部構造顕微鏡102を統括的に制御するCPU等であり、OS(Operating System)等の制御プログラム、各種の処理手順等を規定したプログラムおよび所要データを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラムに基づいて種々の処理を実行するための情報処理を行う。制御部102aは、ワークステーション106やDNAマイクロアレイシステム104から転送された情報に基づいて試料供給部102b、切断部102c、撮像部102d、試料確認部102e、試料移動部102f、画像記憶部102gを制御したり、ワークステーション106やDNAマイクロアレイシステム104へ情報を転送したりする。なお、制御部102aはシーケンサーを含む。
【0050】
試料供給部102bは、試料の準備、試料の包埋、試料の固化、試料の設置を行う。切断部102cは、ミクロトームなどであり、3次元内部構造顕微鏡102に設けられた試料設置場所に所定の角度(向き)で設置された試料を、試料を切削するナイフで切断する。
【0051】
撮像部102dは、具体的にはカメラ(例えばCCDカメラ、デジタルCCDカメラなど)、撮像管、フォトマル(Photo Multiplier:光電子増倍管)、スキャナなどで構成され、切断部102cで切断した試料の断面を撮像する。画像記憶部102eは、ストレージ手段であり、例えば、RAM、ROM等のメモリ装置や、ハードディスクのような固定ディスク装置や、フレキシブルディスクや、光ディスク、ビデオテープ、写真用のフィルム等を用いることができる。
【0052】
試料確認部102eは、3次元内部構造顕微鏡102に設けられた試料設置場所に設置された試料の残量を確認する。試料移動部102fは、3次元内部構造顕微鏡102に設けられた試料設置場所に設置された試料を所定の距離だけ移動する。画像記憶部102gは、撮像部102dで撮像した撮像断面画像を記憶する。
【0053】
DNAマイクロアレイシステム104は、主に、3次元内部構造顕微鏡102の切断部102cで試料を切断した際に作製した複数の切片に基づいて、試料に存在する遺伝子の発現量を測定する機能を有する。DNAマイクロアレイシステム104は、統合制御部106aから受け取った試料番号、切片枚数、切片回収番号、位置情報および回収トリガに基づいて切片を回収・分別し、分別した切片(切片群)ならびに統合制御部106aから受け取った試料番号、切片枚数、切片回収番号、位置情報およびDNAマイクロアレイ番号に基づいて遺伝子番号、発現量および信頼性を出力する。具体的には、DNAマイクロアレイシステム104は、制御部104aと、切片回収・分別部104bと、mRNA抽出部104cと、ハイブリダイゼーション部104dと、発現量測定部104eと、で構成される。
【0054】
制御部104aは、DNAマイクロアレイシステム104を統括的に制御するCPU等であり、OS(Operating System)等の制御プログラム、各種の処理手順等を規定したプログラムおよび所要データを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラムに基づいて種々の処理を実行するための情報処理を行う。制御部104aは、ワークステーション106や3次元内部構造顕微鏡102から転送された情報に基づいて切片回収・分別部104b、mRNA抽出部104c、ハイブリダイゼーション部104d、発現量測定部104eを制御したり、ワークステーション106や3次元内部構造顕微鏡102へ情報を転送したりする。
【0055】
切片回収・分別部104bは、3次元内部構造顕微鏡102の切断部102cで試料を切断した際に作製した切片を回収したり、回収した複数の切片を、例えば連続する所定の枚数(例えば100枚程度)の切片からなる複数の切片群に分別したりする。mRNA抽出部104cは、切片回収・分別部104bで分別した各切片群を、切片群ごとに保存液に溶解し、溶解した各保存液からmRNAを抽出する。ハイブリダイゼーション部104dは、mRNA抽出部104cで抽出したmRNAをDNAマイクロアレイにハイブリダイズする。
【0056】
発現量測定部104eは、ハイブリダイゼーション部104dでハイブリダイズしたDNAマイクロアレイをスキャナでスキャンし、スキャンした画像に基づいて、切片回収・分別部104bで分別した各切片群に含まれる遺伝子の発現量を測定すると共に、当該測定した発現量の信頼性に関する情報である信頼性情報を算出する。
【0057】
ワークステーション106は、主に、3次元内部構造顕微鏡102の撮像部102dで撮像した複数の撮像断面画像に基づいて試料の3次元画像である試料立体画像を構築したり、構築した試料立体画像およびDNAマイクロアレイシステム104の発現量測定部104eで測定した発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて、試料に存在する遺伝子の発現状態(発現パターン)と試料立体画像とを対応付けた遺伝子発現画像を構築したりする。具体的には、ワークステーション106は、統合制御部106aと、試料立体画像構築部106bと、遺伝子発現画像構築部106cと、画像表示部106dと、で構成される。
【0058】
統合制御部106aは、本システム全体を統括的に制御するCPU等であり、OS(Operating System)等の制御プログラム、各種の処理手順等を規定したプログラムおよび所要データを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラムに基づいて種々の処理を実行するための情報処理を行う。統合制御部106aは、3次元内部構造顕微鏡102やDNAマイクロアレイシステム104から転送された情報に基づいて試料立体画像構築部106b、遺伝子発現画像構築部106c、画像表示部106dを制御したり、3次元内部構造顕微鏡102やDNAマイクロアレイシステム104へ情報を転送したりする。
【0059】
試料立体画像構築部106bは、3次元内部構造顕微鏡102の撮像部102dで撮像した複数の撮像断面画像に基づいて試料の3次元画像である試料立体画像を構築する。試料立体画像構築部106bは、3次元内部構造顕微鏡102から受け取った入力情報(具体的には、撮像断面画像(画像情報)、撮像断面画像の空間分解能、切削間隔および光源情報)および統合制御部106aから受け取った入力情報(具体的には、試料番号、位置情報、画像枚数および撮像時刻)に基づいて、出力情報(具体的には、試料立体画像(3次元画像情報)、位置情報および属性情報(組織情報など))を出力する。ここで、試料立体画像構築部106bは、領域断面画像抽出部106b1と、領域立体画像構築部106b2とをさらに備える。領域断面画像抽出部106b1は、3次元内部構造顕微鏡102の撮像部102dで撮像した各撮像断面画像から、撮像断面画像ごとに予め定めた領域を認識し、当該認識した領域の断面画像である領域断面画像を抽出する。領域立体画像構築部106b2は、領域断面画像抽出部106b1で抽出した複数の領域断面画像に基づいて、領域断面画像抽出部106b1で認識した複数の領域で構成される3次元画像である領域立体画像を試料立体画像として構築する。
【0060】
遺伝子発現画像構築部106cは、試料立体画像構築部106bで構築した試料立体画像ならびにDNAマイクロアレイシステム104の発現量測定部104eで測定した発現量および算出した信頼性情報から、所定の画像再構築手法に基づいて遺伝子発現画像を構築する。遺伝子発現画像構築部106cは、試料立体画像構築部106bから受け取った入力情報(具体的には、試料立体画像(3次元画像情報)、位置情報および属性情報(組織情報など))、統合制御部106aから受け取った入力情報(具体的には、試料番号、切片枚数、切片回収番号、位置情報、DNAマイクロアレイ番号、処理条件)およびDNAマイクロアレイシステム104から受け取った入力情報(具体的には、遺伝子番号、発現量、信頼性)に基づいて、出力情報(具体的には、試料名、部位名、遺伝子発現画像(3次元画像)、発現遺伝子情報、測定条件)を出力する。ここで、遺伝子発現画像構築部106cは、発現量補正部106c1と、補正発現画像構築部106c2とをさらに備える。発現量補正部106c1は、領域断面画像抽出部106b1で抽出した領域断面画像に基づいて、予め定めた領域の面積を算出し、算出した面積に基づいてDNAマイクロアレイシステム104の発現量測定部104eで測定した発現量を補正する。補正発現画像構築部106c2は、領域立体画像構築部106b2で構築した領域立体画像ならびに発現量補正部106c1で補正した発現量および算出した信頼性情報から、所定の画像再構築手法に基づいて遺伝子発現画像を構築する。
【0061】
画像表示部106dは、試料立体画像構築部106bで構築した試料立体画像や遺伝子発現画像構築部106cで構築した遺伝子発現画像をモニタに表示する。具体的には、遺伝子発現画像上で示す各遺伝子の発現量の値が視覚的に識別可能となるように、遺伝子発現画像をモニタに表示する。
【0062】
遺伝子発現画像データベース108は、ワークステーション106の遺伝子発現画像構築部106cで構築した遺伝子発現画像を、当該遺伝子発現画像に関連する情報(具体的には、試料名、部位名、遺伝子発現情報、測定条件など)と共に記憶する。
【0063】
〔システムの処理〕
以上の構成において、遺伝子発現画像構築システム100で行われる処理を、図7を参照して説明する。図7は、遺伝子発現画像構築システム100で行われる処理の一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、試料の準備の処理、試料の包埋の処理および試料の固化の処理に関する説明を省略する。
【0064】
まず、ワークステーション106は、統合制御部106aの処理により、3次元内部構造顕微鏡102へ撮像開始を指示する(ステップSA-1)。
【0065】
つぎに、3次元内部構造顕微鏡102は、制御部102aの処理により、ワークステーション106からの指示を受けてそれを試料供給部102bへ伝え、試料供給部102bの処理により、予め固化した試料を、3次元内部構造顕微鏡102に設けられた試料設置場所に、所定の角度(向き)で設置する(ステップSA-2)。なお、当該所定の角度(向き)とは、試料ごとに予め定めた切断方向で試料を切断するための角度(向き)である。
【0066】
つぎに、3次元内部構造顕微鏡102は、切断部102cの処理により、ステップSA-2で設置した試料を、3次元内部構造顕微鏡102に設けられたナイフで所定の厚さに切断する(ステップSA-3)。
【0067】
つぎに、3次元内部構造顕微鏡102は、制御部102aの処理により、試料の切断が終了したという通知をDNAマイクロアレイシステム104へ転送する(ステップSA-4)。
【0068】
つぎに、DNAマイクロアレイシステム104は、制御部104aの処理により、ステップSA-4で3次元内部構造顕微鏡102から転送された通知を受けてそれを切片回収・分別部104bへ伝え、切片回収・分別部104bの処理により、ステップSA-3で試料を切断した際に作製した切片を所定の容器を用いて回収すると共に、切片の回収回数をカウントする(ステップSA-5)。ここで、ステップSA-5において、当該切片の回収回数が所定の数(例えば100)になった場合、切片回収・分別部104bの処理により、当該所定の数の切片が収められた容器を新たな容器に交換する。これにより、ステップSA-5で回収した切片を、例えば連続する所定の枚数(例えば100枚程度)の切片からなる複数の切片群(試料上における場所が既知の切片群)に分別する。
【0069】
つぎに、DNAマイクロアレイシステム104は、制御部104aの処理により、切片の回収・分別が終了したという通知を3次元内部構造顕微鏡102へ転送する(ステップSA-6)。
【0070】
一方、3次元内部構造顕微鏡102は、ステップSA-4の処理に続いて、撮像部102dの処理により、ステップSA-3で切断した試料の断面を、所定の位置に設置したCCDカメラで撮像し、撮像した撮像断面画像をデジタルデータへ変換する(ステップSA-7)。ここで、ステップSA-7において、試料の断面へ白色光を照射して当該断面をCCDカメラで撮像し、さらに当該断面へ特定光(蛍光)を照射して当該断面をCCDカメラで撮像してもよい。
【0071】
つぎに、3次元内部構造顕微鏡102は、制御部102aの処理により、ステップSA-6でDNAマイクロアレイシステム104から転送された通知を受けてそれを試料確認部102eへ伝え、試料確認部102eの処理により、3次元内部構造顕微鏡102の試料設置場所に設置された試料の残量を確認する(ステップSA-8)。
【0072】
つぎに、3次元内部構造顕微鏡102は、試料の切断が完了してない場合(ステップSA-9:No)、試料移動部102fの処理により、試料を所定の距離だけ移動してから(ステップSA-10)、ステップSA-3へ戻る。また、3次元内部構造顕微鏡102は、試料の切断が完了した場合(ステップSA-9:Yes)、制御部102aの処理により、試料の切断が完了したという通知をDNAマイクロアレイシステム104へ転送する(ステップSA-11)。
【0073】
つぎに、DNAマイクロアレイシステム104は、制御部104aの処理により、ステップSA-11で3次元内部構造顕微鏡102から転送された通知を受けてそれをmRNA抽出部104cへ伝え、mRNA抽出部104cの処理により、ステップSA-5で分別した各切片群を、切片群ごとに保存液に溶解し、溶解した各保存液からmRNAを抽出する(ステップSA-12)。
【0074】
つぎに、DNAマイクロアレイシステム104は、ハイブリダイゼーション部104dの処理により、ステップSA-12で抽出したmRNAをDNAマイクロアレイ(例えば、Affymetrix社製のGeneChip(登録商標)、Agilent Technologies社製のオリゴDNAマイクロアレイなどの遺伝子発現を解析するマイクロアレイ)にハイブリダイズする(ステップSA-13)。
【0075】
つぎに、DNAマイクロアレイシステム104は、発現量測定部104eの処理により、ステップSA-13でハイブリダイズしたDNAマイクロアレイをスキャナ(例えば共焦点レーザースキャナなど)でスキャンし、スキャンした画像に基づいて、ステップSA-5で分別した切片群に含まれる遺伝子の発現量を切片群ごとに測定すると共に、当該測定した発現量の信頼性情報を算出する(ステップSA-14)。
【0076】
そして、遺伝子発現画像構築システム100は、予め準備した試料の個数分、上述したステップSA-2からステップSA-14までの処理を繰り返し実行する。
【0077】
つぎに、3次元内部構造顕微鏡102は、ステップSA-11の処理に続いて、制御部102aの処理により、ステップSA-7で撮像した試料ごとの複数の撮像断面画像(デジタル化した撮像断面画像)をワークステーション106へ転送する(ステップSA-15)。
【0078】
一方、DNAマイクロアレイシステム104は、ステップSA-15の処理と並行して、制御部104aの処理により、ステップSA-14で測定した各試料の各切片群に含まれる遺伝子の発現量および信頼性情報をワークステーション106へ転送する(ステップSA-16)。
【0079】
つぎに、ワークステーション106は、統合制御部106aの処理により、ステップSA-15で3次元内部構造顕微鏡102から転送された試料ごとの複数の撮像断面画像およびステップSA-16でDNAマイクロアレイシステム104から転送された各試料の各切片群に含まれる遺伝子の発現量および信頼性情報を受け取り、試料立体画像構築部106bの処理により、複数の撮像断面画像に基づいて試料立体画像を試料ごとに構築する(ステップSA-17)。ここで、試料立体画像構築部106bは、領域断面画像抽出部106b1の処理により、撮像部102dで撮像した各撮像断面画像から、撮像断面画像ごとに予め定めた領域(例えば、対象とする遺伝子が在る領域や組織領域など)を認識し、当該認識した領域の断面画像である領域断面画像を抽出し、領域立体画像構築部106b2の処理により、領域断面画像抽出部106b1で抽出した複数の領域断面画像に基づいて、領域断面画像抽出部106b1で認識した複数の領域で構成される3次元画像である領域立体画像を試料立体画像として構築してもよい。
【0080】
つぎに、ワークステーション106は、遺伝子発現画像構築部106cの処理により、ステップSA-17で構築した各試料の試料立体画像ならびにステップSA-17で受け取った各試料の各切片群に含まれる遺伝子の発現量および信頼性情報から、所定の画像再構築手法に基づいて遺伝子発現画像を構築し、統合制御部106aの処理により、構築した遺伝子発現画像を遺伝子発現画像データベース108に格納する(ステップSA-18)。換言すると、試料立体画像上へ発現量を信頼性情報を考慮してマッピングすることで、遺伝子発現画像を構築する。具体的には、発現量の値を試料立体画像上に信頼性情報を考慮してポテンシャル(濃度)としてプロットし、プロットした発現量から、妥当と思われる発現量の分布を推定することで、遺伝子発現画像を構築する。
【0081】
ここで、遺伝子発現画像構築部106cは、発現量補正部106c1の処理により、領域断面画像抽出部106b1で抽出した領域断面画像に基づいて、撮像断面画像ごとに予め定めた領域(例えば、対象とする遺伝子が在る領域や組織領域など)の面積を算出し、算出した面積に基づいてステップSA-17で受け取った発現量を補正し、領域立体画像構築部106b2で構築した領域立体画像ならびに発現量補正部106c1で補正した発現量およびステップSA-17で受け取った信頼性情報から、所定の画像再構築手法に基づいて遺伝子発現画像を構築してもよい。具体的には、各試料の各切片群に含まれる遺伝子の発現量を試料立体画像上にプロットすることで発現量の確率モデルを構築して、遺伝子発現画像を構築してもよい。より具体的には、例えば切断方向が互いに直交する3方向(x方向、y方向、z方向)で試料を切断した場合、発現量の寄与率をそれぞれの方向に対し例えば33%とし、この寄与率に各遺伝子の信頼性情報を積算することで発現量の確率モデルを構築して、遺伝子発現画像を構築してもよい。
【0082】
なお、所定の画像再構築手法として、解析的手法(文献「S.Iwasaki, S.Odanaka, Y.Shintoku, M.Kitamura, M.Haruyama, M.Takase, K.Ara,“New CT image reconstruction algorithm based on the Bayes estimation”, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research, A422, pp.683-687, 1999」参照)、近似解推定手法(文献「工藤博幸,“逐次近似法を用いたCT画像再構成法の考え方と驚異”, MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY, Vol.23, No.1, January, 2005」参照)、などを用いてもよい。
【0083】
以上説明したように、遺伝子発現画像構築システム100によれば、(1)試料を切断し、(2)切断した試料の断面を撮像し、撮像した複数の撮像断面画像に基づいて試料の3次元画像である試料立体画像を構築し、(3)試料を切断した際に作製した複数の切片に基づいて、試料に存在する遺伝子の発現量を測定し、(4)構築した試料立体画像および測定した発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて、試料に存在する遺伝子の発現状態と試料立体画像とを対応付けた遺伝子発現画像を構築する。これにより、これまでと比べて格段な数(具体的には約3万種類程度)の遺伝子の発現パターンを3次元的に示すことができる。換言すると、これまでと比べて格段な数の遺伝子の試料内での局在および発現量を3次元的に明らかにすることができる。また、このことから、試料内で発現している遺伝子(発現遺伝子)間の相互作用などに関する情報を得ることができる。
【0084】
これまで、注目する1から5個程度の遺伝子を外からマーキングして3次元局在を見たり、遺伝子組み換え生物を対象に遺伝子の発現プロファイルを観察したりする手法について、特開2003-254902号公報、特開2003-254964号公報で開示されていた。しかしながら、この手法では、対象とする遺伝子の数が1から5個程度と少数であるので、対象とする遺伝子の数に制限があった。一方、Affymetrix社製のGeneChip(登録商標)やAgilent Technologies社製のオリゴDNAマイクロアレイ(OligoDNA Microarray)に代表されるように、生物の発現遺伝子を解析する手法が開発されている。現在では、約3万個にも及ぶ全発現遺伝子のDNAチップの開発も行われている。しかしながら、この手法では、1枚のチップで1つのサンプルの遺伝子発現パターンを解析するのみであり、生物体内での遺伝子局在を知ることはできない。また、これからの研究では、発現遺伝子間の相互作用を明らかにすることも求められている。
【0085】
そこで、遺伝子発現画像構築システム100を用いれば、これまでと比べて格段な数(具体的には約3万種類程度)の遺伝子の発現パターンを3次元的に示すことができる。換言すると、これまでと比べて格段な数の遺伝子の試料内での局在および発現量を3次元的に明らかにすることができる。また、このことから、試料内で発現している遺伝子(発現遺伝子)間の相互作用などに関する情報を得ることができる。
【0086】
また、遺伝子発現画像構築システム100によれば、複数の試料を対象とし、試料ごとに予め定めた切断方向(例えば、互いに直交する切断方向)で、各試料に対し、上記の(1)ならびに(2)および(3)を実行し、上記の(4)において、構築した各試料の試料立体画像および測定した各試料の発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて遺伝子発現画像を構築する。これにより、遺伝子発現画像上で遺伝子の発現パターンを細かく示すことができる。換言すると、遺伝子発現画像における、遺伝子の発現パターンの空間分解能を向上することができる。つまり、遺伝子発現画像上で示す遺伝子の発現パターンのマッピングの精度を向上することができる。
【0087】
また、遺伝子発現画像構築システム100によれば、上記の(2)において、(2-1)撮像した各撮像断面画像から、撮像断面画像ごとに予め定めた領域を認識し、当該認識した領域の断面画像である領域断面画像を抽出し、(2-2)抽出した複数の領域断面画像に基づいて、認識した複数の領域で構成される3次元画像である領域立体画像を試料立体画像として構築する。具体的には、例えば、各撮像断面画像から遺伝子がない領域(例えば、試料周辺の領域、対象とする遺伝子の発現がないことが予め判っている領域など)を除くことで、関心のある領域(例えば、対象とする遺伝子が在る領域、組織領域など)の領域断面画像を抽出し、抽出した複数の領域断面画像に基づいて領域立体画像を構築する。これにより、所望の領域立体画像と遺伝子の発現状態とを対応付けた遺伝子発現画像上で遺伝子の発現パターンを3次元的に示すことができる。また、遺伝子発現画像構築システム100によれば、所望の領域断面画像を抽出する際、例えば遺伝子の発現部位を限定することができるので、最終的に構築された遺伝子発現画像における、遺伝子の発現パターンの空間分解能を向上することができる。
【0088】
また、遺伝子発現画像構築システム100によれば、上記の(4)において、(4-1)上記の(2-1)で抽出した領域断面画像に基づいて、予め定めた領域の面積を算出し、算出した面積に基づいて、測定した発現量を補正し、(4-2)上記の(2-2)で構築した領域立体画像および上記の(4-1)で補正した発現量から、所定の画像再構築手法に基づいて遺伝子発現画像を構築する。これにより、遺伝子発現画像上で示す発現量の値の精度を高めることができる。また、遺伝子発現画像上で単位面積あたりの発現量を示すことができる。
【0089】
また、遺伝子発現画像構築システム100によれば、上記の(3)において、遺伝子の発現量を測定すると共に、当該測定した発現量の信頼性に関する情報である信頼性情報を算出し、上記の(4)において、構築した試料立体画像(例えば、領域立体画像)ならびに測定した発現量(例えば、補正した発現量)および算出した信頼性情報から、所定の画像再構築手法に基づいて遺伝子発現画像を構築する。これにより、遺伝子発現画像上で示す遺伝子の発現パターンの信頼性を高めることができる。
【0090】
また、遺伝子発現画像構築システム100によれば、所定の画像再構築手法として、解析的手法または近似解推定手法を用いる。これにより、既存の手法を利用して遺伝子発現画像の構築ができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上のように、本発明にかかる遺伝子発現画像構築方法および遺伝子発現画像構築システムは、試料に存在する遺伝子の発現状態(発現パターン)と試料の3次元画像である試料立体画像とを対応付けた遺伝子発現画像を構築することができ、医療、製薬、創薬、生物学研究、臨床検査などにおいて極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の基本原理を示す図である。
【図2】本発明におけるナイフの形状の一例を示す図である。
【図3】本発明におけるナイフの形状の別の一例を示す図である。
【図4】3つの試料(試料A、試料Bおよび試料C)を対象とした場合に遺伝子発現画像を構築する手法の一例を示す図である。
【図5】5つの試料(試料A、試料B、試料C、試料Dおよび試料E)を対象とした場合に遺伝子発現画像を構築する手法の一例を示す図である。
【図6】遺伝子発現画像構築システム100の構成を示すブロック図である。
【図7】遺伝子発現画像構築システム100で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
100 遺伝子発現画像構築システム
102 3次元内部構造顕微鏡
102a 制御部
102b 試料供給部
102c 切断部
102d 撮像部
102e 試料確認部
102f 試料移動部
102g 画像記憶部
104 DNAマイクロアレイシステム
104a 制御部
104b 切片回収・分別部
104c mRNA抽出部
104d ハイブリダイゼーション部
104e 発現量測定部
106 ワークステーション
106a 統合制御部
106b 試料立体画像構築部
106b1 領域断面画像抽出部
106b2 領域立体画像構築部
106c 遺伝子発現画像構築部
106c1 発現量補正部
106c2 補正発現画像構築部
106d 画像表示部
108 遺伝子発現画像データベース
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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