TOP > 国内特許検索 > Fe-Mn系合金の制振特性向上方法 > 明細書

明細書 :Fe-Mn系合金の制振特性向上方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5200243号 (P5200243)
公開番号 特開2008-196022 (P2008-196022A)
登録日 平成25年2月22日(2013.2.22)
発行日 平成25年6月5日(2013.6.5)
公開日 平成20年8月28日(2008.8.28)
発明の名称または考案の名称 Fe-Mn系合金の制振特性向上方法
国際特許分類 C21D   6/00        (2006.01)
C21D   8/02        (2006.01)
C21D   1/18        (2006.01)
FI C21D 6/00 101B
C21D 8/02 D
C21D 1/18 Y
請求項の数または発明の数 2
全頁数 10
出願番号 特願2007-033827 (P2007-033827)
出願日 平成19年2月14日(2007.2.14)
審査請求日 平成22年1月29日(2010.1.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】渡辺 義見
【氏名】佐藤 尚
【氏名】古谷 祐二
審査官 【審査官】田中 永一
参考文献・文献 特開2002-121651(JP,A)
特開2004-323880(JP,A)
特開平07-150300(JP,A)
特開平05-255730(JP,A)
調査した分野 C21D 6/00
C21D 1/18
C21D 8/00 - 8/06
C22C 38/00
特許請求の範囲 【請求項1】
Fe-Mn系合金をオーステナイト領域温度で熱処理した後、水冷する工程(工程1)、その後、600℃に加熱し、水冷し、液体窒素やドライアイスを用いたサブゼロ処理にてより低い温度まで急冷する工程(工程2)、さらに前記工程2を繰り返すことによって、前記合金の制振特性を向上させる方法。
【請求項2】
Fe-Mn系合金をオーステナイト領域温度で熱処理した後、水冷する工程(工程1)、その後、600℃に加熱し、水冷し、液体窒素やドライアイスを用いたサブゼロ処理にてより低い温度まで急冷する工程(工程2)、前記工程2の後に圧延や鍛造により材料に加工を加える工程(工程3)、さらに前記工程2と前記工程3を繰り返すことによって、前記合金の制振特性を向上させる方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、Fe-Mn系合金における制振特性向上方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
制振特性を有する代表的な材料としてFe-Mn系合金がある。この材料は、制振性能を向上させるために合金成分としてCrやNiを含有している場合が多い。また、制振特性のコントロールは、これらの合金元素の組成を変化させる事と材料に対する冷間加工を施す事のみによって行われている。しかし,冷間加工が制振特性に及ぼす影響は小さい。そのため、従来技術では材料組成を変えて制振特性をコントロールする事が多い。以上の点から、従来技術の欠点は、材料組成を変えずに制振特性を向上させる事ができない点である。

【特許文献1】特開平7-150300
【特許文献2】特開2002-121651
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
Fe-Mn系合金における制振特性を高めるための従来技術は、材料の組成を変化させる事と材料に冷間加工を施す事であった。本発明で解決しようとする問題点は、従来技術において材料組成を変化させずに制振特性を向上させることが出来ない点である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1発明のFe-Mn系合金の制振特性を向上させる方法は、Fe-Mn系合金をオーステナイト領域温度で熱処理した後、水冷し、その後、液体窒素やドライアイスなどを用いたサブゼロ処理にて、より低い温度まで急冷し、この熱処理を繰り返すこと(以下、トレーニング処理という)によって行う方法である。本発明では、Fe-Mn系合金に対し、材料組成を変化させずに制振特性を最大限に引き出すことができる。
第2発明のFe-Mn系合金の制振特性を向上させる方法は、Fe-Mn系合金をオーステナイト領域温度で熱処理した後、水冷し、その後、液体窒素やドライアイスなどを用いたサブゼロ処理にて、より低い温度まで急冷する。また、制振特性をさらに向上させるために、この熱処理プロセスの間に圧延や鍛造などにより材料へ加工を加える。この熱処理と加工を繰り返すことによって、前記合金の制振特性を向上させる方法である。この方法は、前記トレーニング処理に加工プロセスを加えた処理に相当する(以下、加工トレーニング処理という)。この加工トレーニング処理によって、Fe-Mn系合金の制振特性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0005】
(1) 図7は,Fe-Mn系合金のεマルテンサイト相の体積分率変化に伴う内部摩擦値Q-1の変化を示している。Q-1は制振特性をあらわす指標であり,Q-1が大きいほど制振特性は良い。グラフより,トレーニング処理あるいは加工トレーニング処理を施すことによってεマルテンサイト相の体積分率が増加するにつれて,制振特性はよくなっている。つまり,従来材にトレーニング処理を施すことは,従来の問題である材料組成を変化させずに制振特性を向上させる事を解決している。
(2) 図8は,Fe-Mn系合金のεマルテンサイト相の寸法に伴う内部摩擦値Q-1の変化を示している。εマルテンサイト相が微細化するにつれて制振特性は向上している。つまり,従来材にトレーニング処理あるいは加工トレーニング処理を施すことによって,従来の問題である材料組成を変化させずに制振特性を向上させる事を解決している。また,加工トレーニング処理を施した材料のQ-1は,トレーニング処理を施した材料に比べて高い。ゆえに,加工トレーニング処理は,トレーニング処理に比べて制振特性をより効果的に向上させる。
(3) 図9は,トレーニング処理回数および加工トレーニング処理回数に伴う材料の硬さ変化を示す。トレーニング処理および加工トレーニング処理は,制振特性のみでなく,材料強度も同時に向上させる。その点が,従来技術にくらべて優れている点である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下,本発明を具体化した実施例について図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0007】
Fe-Mn系合金の制振特性は,材料内部のεマルテンサイト相が動くことによって生じる。本発明では,Fe-Mn系合金の制振特性を向上させるため,以下の手段にてεマルテンサイト相を微細化し,材料中のεマルテンサイト相の数密度(単位体積あたりのεマルテンサイト相の個数)を増加させた。
(1) Fe-Mn系合金をオーステナイト領域温度で熱処理した後,水冷する。その後,液体窒素やドライアイスなどを用いたサブゼロ処理にて,より低い温度まで急冷する。この熱処理を繰り返すこと(トレーニング処理)によって,εマルテンサイト相の微細化を試みる。
(2) Fe-Mn系合金をオーステナイト領域温度で熱処理した後,水冷する。その後,液体窒素やドライアイスなどを用いたサブゼロ処理にて,より低い温度まで急冷する。また,制振特性をさらに向上させるために,この熱処理プロセスの間に,圧延や鍛造などにより材料へ加工を加える。この熱処理と加工を繰り返すこと (加工トレーニング処理)によって,εマルテンサイト相の微細化を試みる。
上記トレーニング処理あるいは加工トレーニング処理によって,εマルテンサイト相は微細化する。また,このいずれかの処理を施した材料と処理を施していない材料(従来材料)を比較すると,いずれかの処理を施した試料におけるεマルテンサイト相の体積分率は,従来材料に比べて大きくなる。 εマルテンサイト相は板状として生成する。加工トレーニング処理を施すことによって,εマルテンサイト相の方位が揃う。
図1から9により具体化して説明する。
(1) 図1は,トレーニング処理のプロセスを示す図である。Fe-Mn系合金をオーステナイト領域温度で熱処理した後,水冷する。その後,液体窒素やドライアイスなどを用いたサブゼロ処理にて,より低い温度で急冷する。この熱処理を繰り返すことをトレーニング処理とする。
(2) 図2は,加工トレーニング処理のプロセスを示す図である。Fe-Mn系合金をオーステナイト領域温度で熱処理した後,水冷する。その後,液体窒素やドライアイスなどを用いたサブゼロ処理にて,より低い温度まで急冷する。この熱処理プロセスの途中に圧延にて材料へ加工を加える。この熱処理と加工を繰り返すことを加工トレーニング処理とする。
(3) 図3は,Fe-Mn系合金のトレーニング処理および加工トレーニング処理に伴うεマルテンサイト相の寸法変化を示す図である。処理の回数が増加するにつれて,εマルテンサイト相の寸法は小さくなる。また,εマルテンサイト相の微細化は,加工トレーニング処理の方が顕著である。
(4) 図4は,Fe-Mn系合金のトレーニング処理に伴うεマルテンサイト相の体積分率変化を示す図である。また,図5は加工トレーニング処理に伴うεマルテンサイト相の体積分率変化を示す図である。トレーニング処理を施した試料のεマルテンサイト相の体積分率は,トレーニング処理を1回施すことにより,従来材(処理回数が0回)に比べて増加する。一方,加工トレーニング処理を施した試料のεマルテンサイト相の体積分率は,処理回数が増加するにつれて大きくなる。
(5) 図6は,Fe-Mn系合金の加工トレーニング処理に伴う組織変化を示す写真である。加工トレーニング処理に伴い,εマルテンサイト相の方位は加工方向へ揃っている。
【産業上の利用可能性】
【0008】
本発明は、高制振材料の製造等の分野に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】トレーニング処理のプロセスを示す説明図である。
【図2】加工トレーニング処理のプロセスを示す説明図である。
【図3】トレーニング処理および加工トレーニング処理に伴うεマルテンサイト相の寸法変化を示す説明図である。
【図4】トレーニング処理に伴うεマルテンサイト相の体積分率変化を示す説明図である。
【図5】加工トレーニング処理に伴うεマルテンサイト相の体積分率変化を示す説明図である。
【図6】加工トレーニング処理に伴うFe-Mn系合金の組織変化を示す説明図である。処理回数は,図中に表記している。
【図7】Fe-Mn系合金のεマルテンサイト相の体積分率変化に伴う内部摩擦値Q-1の変化を示す説明図である。h1~h5,t1~t5は,それぞれトレーニング処理および加工トレーニング処理によって得られた試料のデータ。アルファベット隣の番号は処理回数を示す。
【図8】Fe-Mn系合金のεマルテンサイト相の寸法に伴う内部摩擦値Q-1の変化を示す説明図である。h1~h5,t1~t5は,それぞれトレーニング処理および加工トレーニング処理によって得られた試料のデータ。アルファベット隣の番号は処理回数を示す。
【図9】トレーニング処理回数および加工トレーニング処理回数に伴うFe-Mn系合金の硬さ変化を示す説明図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8