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明細書 :カルボニル化合物の製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4925050号 (P4925050)
公開番号 特開2008-201755 (P2008-201755A)
登録日 平成24年2月17日(2012.2.17)
発行日 平成24年4月25日(2012.4.25)
公開日 平成20年9月4日(2008.9.4)
発明の名称または考案の名称 カルボニル化合物の製法
国際特許分類 C07C  45/38        (2006.01)
C07C  45/39        (2006.01)
C07C  47/542       (2006.01)
C07C  47/55        (2006.01)
C07C  47/546       (2006.01)
C07C  47/02        (2006.01)
C07C  47/228       (2006.01)
C07C  47/232       (2006.01)
C07C  49/453       (2006.01)
B01J  31/28        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 45/38
C07C 45/39
C07C 47/542
C07C 47/55
C07C 47/546
C07C 47/02
C07C 47/228
C07C 47/232
C07C 49/453
B01J 31/28 Z
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 6
全頁数 10
出願番号 特願2007-041957 (P2007-041957)
出願日 平成19年2月22日(2007.2.22)
審査請求日 平成20年8月1日(2008.8.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】松本 努
【氏名】上野 雅晴
【氏名】森 雄一朗
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
審査官 【審査官】井上 千弥子
参考文献・文献 特開2006-205124(JP,A)
特開2001-097914(JP,A)
国際公開第2005/082825(WO,A1)
調査した分野 C07C 45/00-49/92
特許請求の範囲 【請求項1】
酸素雰囲気下、かつ高分子固定化ルテニウム触媒及び再酸化剤の存在下で、アルコールを酸化することからなるカルボニル化合物の製法であって、該高分子固定化ルテニウム触媒を該アルコールに対してルテニウムとして0.1%~10%(mol/mol)使用し、該再酸化剤が、アミンオキシド類、ヨードシルベンゼンジアセテート、ヨードシルベンゼンオキシド、過ヨウ素酸ナトリウム、又はtert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)であり、該再酸化剤を該アルコールに対し0.01~1.0当量使用し、該高分子固定化ルテニウム触媒が、ルテニウムを架橋高分子に担持させてなり、該架橋高分子が、芳香族側鎖、親水性側鎖及び架橋基を有する架橋性高分子を架橋反応に付すことによって形成されたカルボニル化合物の製法。
【請求項2】
前記アミンオキシド類が、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン N-オキシル(TEMPO)、N-メチルモルホリン N-オキシド(NMO)、トリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)又はピリジン-N-オキシドである請求項1に記載の製法。
【請求項3】
前記架橋性高分子が更に芳香族側鎖以外の疎水性側鎖を有する請求項1又は2に記載の製法。
【請求項4】
前記高分子固定化ルテニウム触媒が、前記架橋性高分子と前記ルテニウムを含む溶液に、極性の異なる貧溶媒を加えることで相分離を生じさせ、相分離によりルテニウムが担持された該架橋性高分子を架橋反応に付すことによって形成された請求項1~3のいずれか一項に記載の製法。
【請求項5】
前記架橋性高分子がエポキシ基と水酸基をともに持ち、該高分子を加熱による架橋反応に付すことによって形成された請求項に記載の製法。
【請求項6】
前記架橋性高分子が、スチレンを含む重合性モノマーの共重合体である請求項1~に記載の製法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、ルテニウム触媒の存在下でアルコールを酸化してカルボニル化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルデヒドやケトンなどのカルボニル化合物は、有機合成化学上最も有用な化合物の一つとして位置付けられ、これまでに数多くの合成法が開発されてきた。中でもアルデヒドの合成では、生成物であるアルデヒドの酸化状態がアルコールとカルボン酸の中間に位置しているため、反応において過剰酸化、過剰還元の制御が難しく、これらをコントロールすることも重要な課題となってくる。
一方、本発明者らは、ルテニウムを芳香族系高分子上に固定化し、通常の溶媒に不溶の"高分子固定化ルテニウム触媒"を開発し、この触媒を用いてアルコールの酸化反応が有効に行えることを見出した(特許文献1)。この高分子固定化ルテニウム触媒は、ルテニウムクラスターのサイズが小さいことにより高活性であり、架橋していることから耐溶剤性に優れ、金属の漏出が無く、回収再使用が容易である。

【特許文献1】特開2006-205124
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記高分子固定化ルテニウム触媒を用いた場合であっても、酸化反応の効率をより改善し、再酸化剤などの使用量を減らしてより経済的な方法で酸化反応を行えることが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記酸化反応(特許文献1)において、酸素雰囲気下で酸化反応を行うと、再酸化剤の使用量が少なくてすみ、酸化反応の効率が改善されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、酸素雰囲気下、かつ高分子固定化ルテニウム触媒及び再酸化剤の存在下で、アルコールを酸化することからなるカルボニル化合物の製法であって、該再酸化剤が、アミンオキシド類、ヨードシルベンゼンジアセテート、ヨードシルベンゼンオキシド、過ヨウ素酸ナトリウム、又はtert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)であり、該再酸化剤を該アルコールに対し0.01~1.0当量使用し、該高分子固定化ルテニウム触媒が、ルテニウムを架橋高分子に担持させてなり、該架橋高分子が、芳香族側鎖、親水性側鎖及び架橋基を有する架橋性高分子を架橋反応に付すことによって形成されたカルボニル化合物の製法である。

【発明の効果】
【0005】
本発明の製法は、医薬品中間体などの製造プロセスに組み込むことが可能であり、標的化合物の探索・絞り込みが課題である。触媒を試薬として販売することで、需要開発を促進できると思われる。また、環境調和型の反応であることによる需要が見込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の高分子固定化ルテニウム触媒は、ルテニウムがこの高分子との相互作用によりこの高分子に超微粒子として担持された形態を有する。
ルテニウムを高分子に担持させる方法としては、このように担持出来る方法であれば特に限定されないが、例えば上記したごとき構造を有する高分子とルテニウム前駆体とを、a)適当な極性の良溶媒に溶解させた後適当な極性の貧溶媒で凝集させる、b)極性の良溶媒に溶解した後適当な非極性溶媒を加えてルテニウム担持ミセル様集合体を形成させ、更に極性の貧溶媒で凝集させる、c)適当な非極性の良溶媒に溶解させた後適当な非極性の貧溶媒で凝集させる、d)非極性の良溶媒に溶解した後適当な極性溶媒を加えてルテニウム担持ミセル様凝集体を形成させ、更に非極性の貧溶媒で凝集させる、ことにより行われる。この場合、a)及びb)の方法では、形成されたミセル様凝集体の内方向に疎水性側鎖が、外方向に親水性側鎖が位置することになり、c)及びd)の方法では、形成されたミセル様凝集体の外方向に疎水性側鎖が、内方向に親水性側鎖が位置することになる。
【0007】
尚、極性の良溶媒としてはTHF、ジオキサン、アセトン、DMF、NMPなどがあり、非極性の良溶媒としてはトルエン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルムなどが使用できる。極性の貧溶媒としてはメタノール、エタノール、ブタノール、アミルアルコールなどがあり、非極性の貧溶媒としてはヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが使用できる。良溶媒に溶解した架橋性高分子の濃度は用いる溶媒によっても異なるが、極性溶媒中で約0.1~100 mg/mLが好ましい。
【0008】
また、ここで、ルテニウム前駆体とは、ルテニウムを含む適当な化合物(例えば、酸化物、ハロゲン化物、配位子との錯体等)のことであるが、ハロゲン化物が好ましい。ハロゲン化物を使用する場合、Cl,Br,Iまたはその水和物等が挙げられる。ルテニウムを適当な配位子と錯体を形成させたものを使用する場合、前駆体中のルテニウムは上記したごとき構造を有する高分子が有する芳香環との配位子交換により高分子に担持される。
【0009】
このような配位子として、例えば、ジメチルフェニルホスフィン(P(CH3)2Ph)、ジフェニルホスフィノフェロセン(dPPf)、トリメチルホスフィン(P(CH3)3)、トリエチルホスフィン(P(Et)3)、トリtert-ブチルホスフィン(P(tBu)3)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)、トリメトキシホスフィン(P(OCH3)3)、トリエトキシホスフィン(P(OEt)3)、トリtert-ブトキシホスフィン(P(OtBu)3)、トリフェニルホスフィン(PPh3)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、トリフェノキシホスフィン(P(OPh)3)、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン等の有機ホスフィン配位子、1,5-シクロオクタジエン(COD)、ジベンジリデンアセトン(DBA)、ビピリジン(BPY)、フェナントロリン(PHE)、ベンゾニトリル(PhCN)、イソシアニド(RNC)、トリエチルアルシン(As(Et)3)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、アセチルアセトナト、シクロオクタジエン、シクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン、エチレン、カルボニル、アセテート、トリフルオロアセテート、ビフェニルホスフィン、エチレンジアミン、1,2-ジフェニルエチレンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、アセトニトリル、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、スルホネート、カーボネート、ハイドロオキサイド、ナイトレート、パークロレート、サルフェート等が挙げられる。これらの中で、有機ホスフィン配位子、1,5-シクロオクタジエン(COD)、ジベンジリデンアセトン(DBA)、ビピリジン(BPY)、フェナントロリン(PHE)、ベンゾニトリル(PhCN)、イソシアニド(RNC)、及びトリエチルアルシン(As(Et)3)が好ましく、トリフェニルホスフィン、トリtert-ブチルホスフィン、及びトリ-o-トリルホスフィンがより好ましく、トリフェニルホスフィンが特に好ましい。
配位子の数は、調製の際に使用する高分子の種類や架橋反応条件等にもよるが、通常1~4個である。
【0010】
本発明の高分子は芳香族側鎖と親水性側鎖を有することを要し(両親媒性高分子)、更に架橋基を有することを要する。この高分子は更に芳香族側鎖以外の疎水性側鎖を有してもよい。これらの側鎖は高分子の主鎖に直接結合する。これら側鎖を複数種有していてもよい。また架橋基はこれらの側鎖のいずれに結合していてもよく、また高分子主鎖に直接結合してもよいが、好ましくは芳香族側鎖を含む疎水性側鎖若しくは親水性側鎖又は両者に、より好ましくは芳香族側鎖に結合する。
【0011】
芳香族側鎖として、アリール基及びアラルキル基が挙げられる。
アリール基としては、通常炭素数6~10、好ましくは6のものが挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
尚、本明細書に於いて定義されている炭素数はその基が有する置換基の炭素数を含まないものとする。
アラルキル基としては、通常炭素数7~12、好ましくは7~9のものが挙げられ、具体的には、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
アリール基及びアラルキル基に於ける芳香環はアルキル基、アリール基、アラルキル基などの疎水性置換基を有していてもよい。
【0012】
芳香環が有していてもよいアルキル基としては、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、環状の場合には単環でも多環でもよく、通常炭素数1~20、好ましくは1~12のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0013】
芳香環が有していてもよいアリール基及びアラルキル基としては、上記した如き芳香族基としてのアリール基及びアラルキル基と同様なものが挙げられる。
これら芳香環が有していてもよい置換基は、アリール基及びアラルキル基に於ける芳香環に通常1~5個、好ましくは1~2個置換していてもよい。
疎水性側鎖としてのアルキル基としては、上記した如き芳香環が有していてもよいアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0014】
芳香族側鎖以外の疎水性側鎖としては、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基が挙げられる。
【0015】
親水性側鎖としては、比較的短いアルキル基、例えば、炭素数が1~6程度のアルキレン基に-R(Rは-OH又はアルコキシ基、好ましくは-OHを表す。)が結合したものであってもよいが、-R(OR、-R(COOR又は-R(COOR(OR(式中、Rは上記と同様であり、Rは共有結合又は炭素数1~6、好ましくは共有結合又は1~2のアルキレン基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数2~4、好ましくは2のアルキレン基を表し、m、n及びpは1~10の整数、oは1又は2を表す。)で表されるものが好ましい。より好ましい親水性側鎖として、-CH(OCOHや-CO(OCOH等が挙げられる。
【0016】
架橋基としては、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、水酸基、1級若しくは2級のアミノ基、及びチオール基、好ましくはエポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、及びチオイソシアネート基が挙げられ、これらの架橋基は必要に応じて単独又は組み合わせて用いてもよい。
【0017】
高分子に含まれる架橋基の好ましい組み合わせとしては、エポキシ基のみ、エポキシ基と水酸基、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とカルボキシル基、イソシアネート基又はチオイソシアネート基のみ、イソシアネート基と水酸基、イソシアネート基とアミノ基、イソシアネート基とカルボキシル基等が挙げられる。このなかで、エポキシ基のみ、及びエポキシ基と水酸基の組み合わせが好ましい。
高分子が架橋基を複数種有する場合、架橋基の結合位置に制限はないが、異なる位置の側鎖に含まれていることが好ましい。
【0018】
一方、架橋性高分子はこれら側鎖を有するものであればいかなるものであってもよいが、これら側鎖を有するモノマーを重合させたものが好ましい。またこのようなモノマーとして、付加重合のための二重結合や三重結合,例えば、ビニル基、アセチレン基など、好ましくはビニル基を持つものが好ましい。
【0019】
本発明の架橋性高分子の例として、下記の架橋性高分子が挙げられる。
(A)1)芳香族側鎖、親水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマー、2)芳香族側鎖及び重合性二重結合を有するモノマー、及び3)架橋基を有する芳香族側鎖及び重合性二重結合を有するモノマーを共重合することにより得られる架橋性高分子、
(B)1)疎水性側鎖、架橋基を有する親水性側鎖又は疎水性側鎖及び重合性二重結合を有する少なくとも1種のモノマーを重合又は共重合することにより得られる架橋性高分子、又は
(C)1)疎水性側鎖、架橋基を有する親水性側鎖又は疎水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマー、2)疎水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマー、及び3)架橋基を有する親水性側鎖又は疎水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマーから成る群から選択される少なくとも2種のモノマーを共重合することにより得られる架橋性高分子であり、好ましくは(A)の架橋性高分子である。
ここで、同種のモノマーは2以上の異なるモノマーを含むものであってもよい。
【0020】
芳香族側鎖及び重合性二重結合を有するモノマーとしてスチレン系モノマーが好ましい。スチレン系モノマーとして、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、α-エチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン等が挙げられ、中でもスチレン及びα-メチルスチレンが好ましく、特にスチレンが好ましい。
【0021】
このようなポリマーと上記のルテニウム前駆体を良溶媒に溶解した後、適当な貧溶媒を加えて相分離を起こすことにより、ルテニウムをポリマー凝集物又はミセル様集合体に取り込むことができる。ルテニウムを適当な配位子と錯体を形成させたものを使用した場合には、ルテニウム前駆体の配位子の一部もしくは全てが脱離する現象が認められる。
ここで、良溶媒中のポリマーの濃度は約1~100 mg/ml、ルテニウム前駆体の量はポリマーに対して0.01~0.5(w/w)、貧溶媒の量は良溶媒に対して0.2~10(v/v)用いられ、貧溶媒の添加時間は通常10分~2時間かけて行われる。相分離の際の温度は特に制限はないが、通常室温で行われる。
【0022】
架橋反応は、架橋性官能基の種類により、加熱や紫外線照射により反応させることができる。架橋反応は、これらの方法以外にも、使用する直鎖型有機高分子化合物を架橋するための従来公知の方法である、例えば架橋剤を用いる方法、縮合剤を用いる方法、過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合触媒を用いる方法、酸又は塩基を添加して加熱する方法、例えばカルボジイミド類のような脱水縮合剤と適当な架橋剤を組み合わせて反応させる方法等に準じても行うことができる。
架橋基を加熱により架橋させる際の温度は、通常50~200℃、好ましくは70~180℃、より好ましくは100~160℃である。
加熱架橋反応させる際の反応時間は、通常0.1~100時間、好ましくは1~50時間、より好ましくは2~10時間である。
このようにして得られた高分子固定化ルテニウム触媒中のルテニウムは、超微小粒子としてこの高分子との弱い相互作用で結合していると考えられ、アルコールの酸化反応に対して高い触媒活性を示す。
【0023】
基質であるアルコールに特に限定はない。アルコールの水酸基の数に特に限定はなく、それらは1、2級のいずれのアルコールであってもよい。アルコールをRCHOHで表した場合、Rは水素原子、脂肪族基、脂環式脂肪族基、又は芳香族基であってもよく、ヘテロ原子が含まれていてもよい。Rは脂肪族基、脂環式脂肪族基、又は芳香族基であってもよく、ヘテロ原子が含まれていてもよい。
【0024】
酸化反応は液相で行われ、高分子固定化ルテニウム触媒は基質(アルコール)に対してルテニウムとして0.1%~10%(mol/mol)使用する。
またこの酸化反応は、再酸化剤の存在下で行われ、再酸化剤としては、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン N-オキシル(TEMPO)、N-メチルモルホリン N-オキシド(NMO)トリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)、ピリジン-N-オキシドなどのアミンオキシド類、ヨードシルベンゼンジアセテート、ヨードシルベンゼンオキシド、過ヨウ素酸ナトリウム、tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)等、好ましくは2,2,6,6-テトラメチルピペリジン N-オキシル(TEMPO)が挙げられる。この再酸化剤を基質(アルコール)に対して0.01~1.0当量用いる
溶媒は特に制限されず無溶媒でも反応は進行するが、好ましくは触媒を膨潤させることができる溶媒、より好ましくはジクロロメタン等のハロゲン化溶媒が用いられる。
反応条件は、酸素雰囲気下、高分子固定化ルテニウム触媒と再酸化剤存在下、室温から還流条件下で1~48時間攪拌する。
アルコールの酸化反応の結果、アルコールに対応するアルデヒドやケトンが生成する。
反応後は濾過により容易に触媒の回収が可能であり、回収された溶媒は洗浄乾燥するだけで再利用可能である。反応中及び回収時に触媒からの金属の漏出は認められる場合もあるが僅かであり、繰り返し使用しても化学収率の低下は認められない。



【実施例】
【0025】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。なお1H NMR及び13C NMRは、溶媒としてCDCl3を内部標準としてテトラメチルシランを用い、日本電子株式会社製 JNM-ECX400又は600MHzの装置により測定した。
【0026】
製造例1
スチレン(12.44 g, 119.58 mmol)、4-vinylbenzyl glycidyl ether(2.83 g, 14.9 mmol)、tetraethyleneglycol mono-2-phenyl-2-propenyl ether(4.6 g, 14.9 mmol)、AIBN(175 mg, 1.06 mmol)をクロロホルム(18 mL)に溶解しアルゴン雰囲気下で48時間、還流条件下で加熱攪拌した。冷却後反応混合物をメタノール(600 mL)中に注いでポリマーを固化させた。デカントして上澄みを取り除いた後、少量のテトラヒドロフランに溶解し再びメタノールに注いだ。沈殿したポリマーを濾過し室温減圧下で乾燥した。10.18 gのポリマーを得た(収率51%)。
【0027】
1H-NMRの測定により、得られたポリマーの比は(スチレン/4-ビニルベンジルグリシジルエーテル/テトラエチレングリコール モノ-2-フェニル-2-プロペニルエーテル)の各モノマー単位の比(x/y/z)=84/12/4であった。また、重量平均分子量(Mw)は41,000であった。得られたポリマーの構造は下式で表される。
【化1】
JP0004925050B2_000002t.gif

【0028】
製造例2
製造例1で得たコポリマー(3.00 g)をTHF(60 mL)に溶かし、さらにルテニウムクロリド・n水和物(RuCl3・nH2O)(Strem Chemicals, Inc.)を加えて約30分間攪拌した。この溶液に、空気雰囲気下でシクロヘキサン(60 mL)をゆっくりと滴下し、24時間放置した。さらにこの溶液に、空気雰囲気下でヘキサン(420 mL)をゆっくりと滴下し、7時間放置した。溶媒留去後、析出した固体を濾過により集め、ヘキサンにて十分洗浄を行った後、室温下減圧乾燥した。その後、この固体に水酸化ナトリウム水溶液(0.5 N,300 mL)を加え、この懸濁液を室温下19時間攪拌した。その後濾過により固体を集め、水及びヘキサンで洗浄した後、この固体を無溶媒下120℃で4時間加熱した。得られた固体をTHF,メタノール,水,アセトン,ジクロロメタンで十分洗浄を行った後、減圧下乾燥して高分子固定化ルテニウム(以下「PI Ru」という。)(3.26 g)を得た。
PI Ruのルテニウム含有量は次のようにして決定した。PI Ru(11.4 mg)に濃硫酸(1.0 ml)を加え180℃で2時間加熱した。これに室温で硝酸(0.5 ml)を加え、再び180℃で1時間加熱することにより高分子を分解した。この溶液を用いて、高周波誘導結合プラズマ発光分析法(以下「ICP分析」という)によりルテニウム含有量(0.427 mmol/g)を得た。
【0029】
実施例1
本実施例では、4-メトキシベンジルアルコールを酸化した。
4-メトキシベンジルアルコール(28 mg, 0.20 mmol)(東京化成工業株式会社),PI Ru(0.427 mmol/g, 23 mg, 0.01 mmol),2,2,6,6-テトラメチルピペリジン N-オキシル(5 mg, 0.03 mmol),1,2-ジクロロエタン(0.8 mL)を20 mLナスフラスコに入れ、フラスコ内を酸素で置換した後80℃で3時間攪拌した。室温に冷却後ヘキサン約5 mLを加えて反応を停止し、触媒を濾過してジクロロメタンで洗浄した。生成物である4-メトキシベンズアルデヒドの同定は市販の試薬と比較することにより確認し、化学収率は濾過後の溶液にナフタレンを標準物質として投入して、ガスクロマトグラフィから96%と決定した。
PI Ruから反応溶液中へのルテニウムの漏出については次の手順により決定した。化学収率決定後、濾過後の溶液を減圧下濃縮した。さらに常圧下で180℃に加熱した後、濃硫酸0.5 mLを加えて同温度で2時間放置した。その後、残存する固体を均一な液体となるまで硝酸をゆっくりと滴下し、同温度で1時間放置した。この溶液を用いて、ICP分析によりルテニウムの漏出量を測定し、分析装置の定量限界以下であると決定した。
【0030】
実施例2~11
本実施例では、種々アルコールをアルデヒド又はケトンへ酸化した。
実施例1と同様の手順により各種アルコールの酸素酸化反応を実施した。結果を表1に示す。生成物の同定は市販の試薬と比較して確認し、化学収率はナフタレン又はアニソールを標準物質としてガスクロマトグラフィにより決定した。ルテニウムの漏出については実施例1と同様の方法により決定した。
【表1】
JP0004925050B2_000003t.gif
(注、a: 他に注釈がなければ、反応は基質となるアルコール0.2 mmolスケールで一気圧の酸素雰囲気下実施した。括弧内の数値は炭酸カリウムを基質に対して等モル量添加して行った実験結果である。b: ガスクロマトグラフィにより決定した。c: ICP分析により決定した。d: 10 mol%のPI Ru及び30 mol%のTEMPO存在下反応を実施した。e: 反応溶媒にクロロベンゼンを用いて100℃で実施した。)
【0031】
実施例12
本実施例では、4-メトキシベンズアルデヒドを単離した。
4-メトキシベンジルアルコール(137 mg, 1.0 mmol),PI Ru(0.376 mmol/g, 133 mg, 0.05 mmol),2,2,6,6-テトラメチルピペリジン N-オキシル(24 mg,0.15 mmol),1,2-ジクロロエタン(4.0 mL)を30 mLナスフラスコに入れ、フラスコ内を酸素で置換した後80℃で4時間攪拌した。室温に冷却後ヘキサン約15 mLを加えて反応を停止し、触媒を濾過してジクロロメタンで洗浄した。濾過後の溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン-酢酸エチル)により精製し、4-メトキシベンズアルデヒド(129 mg, 95%)を得た。
【0032】
実施例13
本実施例では、触媒を回収再使用した。
4-メトキシベンジルアルコール(111 mg, 0.8 mmol)、PI Ru(0.376 mmol/g, 106 mg, 0.04 mmol)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン N-オキシル(19 mg, 0.12 mmol),1,2-ジクロロエタン(3.2 mL)を20 mLナスフラスコに入れ、フラスコ内を酸素で置換した後80℃で4時間攪拌した。室温に冷却後ヘキサン約15 mLを加えて反応を停止し、触媒を濾過してジクロロメタンで洗浄した。生成物である4-メトキシベンズアルデヒドの同定は市販の試薬と比較することにより確認し、化学収率は、濾過後の溶液にナフタレンを標準物質として投入してガスクロマトグラフィから98%と決定した。濾過後の触媒(PI Ru)は減圧下室温で乾燥し、2回目以降の実験に用いた。ルテニウムの漏出については実施例1と同様の方法により決定した。10回の繰り返し実験の結果を表2に示す。
【表2】
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(注、a: ガスクロマトグラフィにより決定した。b: ICP分析により決定した。)