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明細書 :超音波診断装置及び組織性状判別のプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4839446号 (P4839446)
公開番号 特開2008-206779 (P2008-206779A)
登録日 平成23年10月14日(2011.10.14)
発行日 平成23年12月21日(2011.12.21)
公開日 平成20年9月11日(2008.9.11)
発明の名称または考案の名称 超音波診断装置及び組織性状判別のプログラム
国際特許分類 A61B   8/00        (2006.01)
A61B   8/12        (2006.01)
FI A61B 8/00
A61B 8/12
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2007-047005 (P2007-047005)
出願日 平成19年2月27日(2007.2.27)
審査請求日 平成21年9月4日(2009.9.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】内野 英治
【氏名】末竹 規哲
【氏名】久保田 良輔
【氏名】松崎 益徳
【氏名】廣 高史
個別代理人の代理人 【識別番号】100093687、【弁理士】、【氏名又は名称】富崎 元成
【識別番号】100106770、【弁理士】、【氏名又は名称】円城寺 貞夫
【識別番号】100139789、【弁理士】、【氏名又は名称】町田 光信
審査官 【審査官】宮澤 浩
参考文献・文献 特開平 7-210681(JP,A)
特表2001-509043(JP,A)
特開2002-354486(JP,A)
特開2004- 81386(JP,A)
特開2004-329550(JP,A)
特開2006-212445(JP,A)
特開2006-320632(JP,A)
国際公開第2007/031818(WO,A1)
Heart View,2003年, vol.7, no.11,p.1355-1360
調査した分野 A61B 8/00
A61B 8/12
特許請求の範囲 【請求項1】
超音波の送信・受信を行う超音波探触子を取り付けた細い管状部材と、該細い管状部材の軸を中心とした回転及び軸方向の移動の制御を行う駆動部と、前記管状部材に取り付けられた超音波探触子で超音波を管状の被検体の内面に照射して得られた反射超音波信号を処理して被検体の断面を表す画像を生成する信号処理部と、該信号処理部により生成された画像を表示する表示部と、前記細い管状部材、超音波探触子及び信号処理部の動作の制御を行う制御部とを備えてなり、前記制御部は前記細い管状部材の軸を中心とした回転及び軸方向への移動を行って前記超音波探触子により送信した超音波の反射超音波信号を受信する制御を行い、前記信号処理部においては前記超音波探触子により得られた信号から管状の被検体についての一連の断面を表す画像を生成し、該生成された一連の断面を表す画像の位置合わせを行い、位置合わせのなされた前記一連の断面を表す画像について隣接する画像の差分により形成される差分画像を生成し、さらに該差分画像を累積した累積差分画像を生成し、該累積差分画像を二値化する処理を行うことにより組織性状を判別するための二値化累積差分画像を生成することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記一連の断面を表す画像の位置合わせを行う際に、管状の被検体断面を円で近似し、管状の被検体の中心位置を同定した後に前記一連の断面を表す画像のデータを前記管状の被検体の中心位置からの極座標による画像のデータに変換し、隣接する画像の間での相関係数が最大になるように回転角度の同定を行うようにしたことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
細い管状部材に装着された超音波探触子により超音波を管状の被検体の内面に照射して反射超音波信号を取得する操作を前記細い管状部材の軸を中心とした回転に応じて行って管状の被検体の1つの断面画像を得ることを前記細い管状の部材の軸方向への移動に応じて行うことにより得られた複数の一連の断面を表す画像について、該複数の一連の断面を表す画像の位置合わせを行い、位置合わせのなされた前記一連の断面を表す画像について隣接する画像の差分により形成される差分画像を生成し、さらに該差分画像を累積した累積差分画像を生成し、該累積差分画像を二値化する処理を行うことにより組織性状を判別するための二値化累積差分画像を生成することをコンピュータ上で実行するための組織性状判別のプログラム。
【請求項4】
前記一連の断面を表す画像の位置合わせに関し、管状の被検体断面を円で近似し、管状の被検体の中心位置を同定した後に前記一連の断面を表す画像のデータを前記管状の被検体の中心位置からの極座標による画像のデータに変換し、隣接する画像の間での相関係数が最大になるように回転角度の同定を行うようにしたことを特徴とする請求項3に記載の組織性状判別のプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置及び組織性状判別のプログラムに関し、より詳細には、動脈血管等の管状器官内の組織性状を判別する超音波診断装置及び組織性状判別のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を血管等の管状器官の内面に照射し、受信した反射波の信号を処理して得られたデータに基づいて管状器官内の状態を検査するものとして、超音波診断装置が用いられている。例えば、動脈血を大動脈から心臓へ運ぶ冠動脈の疾患の検査を行う場合についてみると、冠動脈の疾患は、血管内膜に脂肪物質がプラークとして堆積し、血管内が狭くなって、心臓への血液供給が減少することによる疾患であり、プラークには、脂質コアが線維性組織にしっかりと囲まれた安定プラークと、脂質コアが薄い線維性皮膜に覆われている不安定プラークとがある。不安定プラークの場合に線維性皮膜が破裂すると、血栓が生じ、冠動脈疾患を引き起こす事態になる。冠動脈疾患の診断としては、冠動脈内面に堆積するプラークがどのような組織性状のものかを判別することが要せられる。
【0003】
血管内の組織性状の検査のために、超音波探触子を有する直径1mm程度の管状部材(カテーテル)を血管内に挿入し、超音波の送受信により反射波信号の強度分布をある断面内において取得する。異なる断面については、カテーテルを血管に沿って移動させることにより得られる。
【0004】
超音波探触子での超音波送受信により得られたデータを用いて組織性状の判別を行うことについて、以下のような文献に記載されている。
【0005】
特許文献1には、複数のトランスデューサから被検体に向けて超音波を送信し、反射した超音波を受信して得られた複数の受信信号のうちで、被検体内の領域に関する一群の受信信号間の相互的な関係に基づいて、その領域における組織性状に関する情報を生成するようにした超音波撮像装置について記載されている。受信信号間の相互的な関係としては、分散等の正反射度を表す統計量が用いられ、分散の程度により組織の輪郭の性状(明確な反射面か否か、硬さ、軟らかさ等)が求められる。
【0006】
特許文献2には、被検体の内部組織に探触子から超音波ビームを照射し、内部組織からの超音波エコーを探触子で受信する超音波診断装置について記載され、傾斜角算出部において内部組織または内部組織内の血流の傾斜角を検出し、この傾斜角に基づいて超音波ビームを内部組織または内部組織内の血流に垂直に入射させる偏向角を算出しその偏向角で超音波ビームの送受信を行い、受信信号に基づいてトラッキング、組織性状の検査を行う。組織性状としては、内部組織の歪み量、弾性率、運動速度、粘性率等がある。
【0007】
非特許文献1には、超音波探触子を備えるカテーテルを動脈内に挿入し、反射超音波の受信信号により得られた血管断面内における輝度分布(IVUS)画像において、線維性の組織と脂質性の組織とでは超音波の入射角依存性に差違があることから、IVUS画像において、この角度依存性の差違に基づく輝度分布の変化が生じることにより、血管内面の組織性状を判別し得ることが可能なことについて記載されている。
【0008】
超音波の反射の性質として、反射媒質の密度が高いときには反射強度が高く、媒質の密度が低ければ、反射強度が低くなり、このような性質から、特許文献1、2に示される超音波診断装置において、超音波反射波信号による超音波画像のデータをもとに血管内面の媒質の密度、硬さ、というような性状を判別することはできているが、媒質の質的な特徴を含む組織性状については判別できない。
【0009】
また、非特許文献1に示されるように、線維性の組織と脂質性の組織とで受信される反射超音波の強度が入射角度についての角度依存性を有することが知られており、このことにより組織性状を判別し得る可能性があることが推察されるものの、例えば前述したような冠動脈疾患の検査を行う場合に実際に組織性状を判別するための具体的な手法について示すものではなかった。

【特許文献1】特開2006-122666号公報
【特許文献2】特開2006-115937号公報
【非特許文献1】廣高史他「Detection of Fibrous Cap in Atherosclerotic Plaque by Intravascular Ultrasound by Use of Color Mapping of Angle-dependent Echo-Intensity Variation」(Circulation,vol.103,pp.1206-1211,2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
管状の器官内に超音波探触子を備えるカテーテルを挿入し、超音波の送受信により得られた超音波画像を用いた従来の検査手法において、反射面となる組織が硬いか、軟らかいか、反射性はどの程度か等については判別されるが、さらに、管状器官内面の検査において重要となる組織の質的な性状については判別できないものである。また、線維性の組織と脂質性の組織とで超音波の反射波受信強度の角度依存性があることは知られているが、この性質を用いて実際に組織性状の判別を行うための具体的な手法は与えられておらず、管状器官内面の組織性状を判別できる超音波診断装置を提供することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前述した課題を解決すべくなしたものであり、本発明による超音波診断装置は、超音波の送信・受信を行う超音波探触子を取り付けた細い管状部材と、該細い管状部材の軸を中心とした回転及び軸方向の移動の制御を行う駆動部と、前記管状部材に取り付けられた超音波探触子で超音波を管状の被検体の内面に照射して得られた反射超音波信号を処理して被検体の断面を表す画像を生成する信号処理部と、該信号処理部により生成された画像を表示する表示部と、前記細い管状部材、超音波探触子及び信号処理部の動作の制御を行う制御部とを備えてなり、前記制御部は前記細い管状部材の軸を中心とした回転及び軸方向への移動を行って前記超音波探触子により送信した超音波の反射超音波信号を受信する制御を行い、前記信号処理部においては前記超音波探触子により得られた信号から管状の被検体についての一連の断面を表す画像を生成し、該生成された一連の断面を表す画像の位置合わせを行い、位置合わせのなされた前記一連の断面を表す画像について隣接する画像の差分により形成される差分画像を生成し、さらに該差分画像を累積した累積差分画像を生成し、該累積差分画像を二値化する処理を行うことにより組織性状を判別するための二値化累積差分画像を生成するようにしたものである。
【0012】
前記一連の断面を表す画像の位置合わせを行う際に、管状の被検体断面を円で近似し、管状の被検体の中心位置を同定した後に前記一連の断面を表す画像のデータを前記管状の被検体の中心位置からの極座標による画像のデータに変換し、隣接する画像の間での相関係数が最大になるように回転角度の同定を行うようにしてもよい。
【0013】
また、本発明による組織性状判別のプログラムは、細い管状部材に装着された超音波探触子により超音波を管状の被検体の内面に照射して反射超音波信号を取得する操作を前記細い管状部材の軸を中心とした回転に応じて行って管状の被検体の1つの断面画像を得ることを前記細い管状の部材の軸方向への移動に応じて行うことにより得られた複数の一連の断面を表す画像について、該複数の一連の断面を表す画像の位置合わせを行い、位置合わせのなされた前記一連の断面を表す画像について隣接する画像の差分により形成される差分画像を生成し、さらに該差分画像を累積した累積差分画像を生成し、該累積差分画像を二値化する処理を行うことにより組織性状を判別するための二値化累積差分画像を生成することをコンピュータ上で実行するためのものである。
【0014】
前記一連の断面を表す画像の位置合わせに関し、管状の被検体断面を円で近似し、管状の被検体の中心位置を同定した後に前記一連の断面を表す画像のデータを前記管状の被検体の中心位置からの極座標による画像のデータに変換し、隣接する画像の間での相関係数が最大になるように回転角度の同定を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、管状の被検体についての一連の断面を表す画像について累積差分画像を生成し、これを二値化処理した画像を生成することにより、被検体内面の組織が線維性か脂質性かを判別することができる。また、一連の断面を表す画像について位置合わせを行う際に、中心位置を同定してから極座標変換した画像を用いて回転角度の同定を行うことにより、位置合わせが容易、正確になされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明による超音波診断装置、組織性状判別のプログラムの実施形態として、反射超音波信号の処理により冠動脈血管内面に堆積するプラークにおける線維性組織と、脂質性組織とを判別する例について説明する。この組織性状の判別は、超音波を被検体に照射したときに、被検体面への超音波入射角に応じた反射波の強度特性として、被検体が線維性組織の場合には角度依存性が大きく、被検体が脂質性組織の場合に角度依存性が小さいというように、組織材質による超音波の反射特性に角度依存性があるという性質を用いてなされる。
【0017】
超音波が物体に入射し反射する際に反射面となる構造体の材質、面の状況により反射波が影響を受ける。構造物の媒質密度が高いものあるいは硬質のものでは反射波の強度が高いのに対し、構造物の密度が低いものあるいは軟質のものでは反射波の強度は低くなる。この性質を用いて、反射超音波の強度を測定することにより、反射面となる構造物の密度や硬さが検出される。
【0018】
一方で、反射面となる構造物が線維性の組織であるか、脂質性の組織であるかというような、反射面をなす構造物の組織性状により、超音波の反射波に角度依存性における差違が生じる。超音波が線維性の組織に入射した時に、角度依存性が大きいため、組織面の法線に対し角度をもって入射した超音波はその方向に戻らないので、超音波探触子により超音波が検出されないが、組織面の法線方向に入射した場合にはその方向に高い強度で反射して超音波探触子に検出される。超音波が脂質性の組織に入射した時に、反射超音波の角度依存性が小さく、より広い角度範囲にわたって超音波が散乱的に反射するため、反射超音波は組織面への入射角度によらず低い強度で検出される。
【0019】
動脈血管の内面における組織性状を判別する場合について説明すると、図1(a)に示すように、血管V内に細い管状のカテーテルCを血管の軸方向に挿入する。血管の断面で見ると、図1(b)のようになっており、血管内面にはプラークPが堆積し、プラークにより狭められた血管内の内腔Lに沿ってカテーテルCが挿入されている。カテーテルCは直径1mm程度であり、先端側に超音波探触子Tが装着されており、その軸を中心として回転させる駆動装置を備えている。超音波探触子TはカテーテルCの軸に垂直な方向に指向性の強い超音波Uを送信するとともに、反射波を受信して電気信号に変換する。
【0020】
カテーテルCに装着された超音波探触子Tが血管の軸方向のある位置にある時に、カテーテルを軸を中心として回転させつつ超音波の送信・受信を行うことにより、血管の1つの断面についての信号が得られる。1つの角度方向については、図2(a)のように、その方向における超音波の反射地点までの距離(到達時間)に応じた反射波の強度分布が得られる。これは、ある断面における1つの角度方向における反射波の強度分布を表すものであるが、この強度分布を輝度の分布として、その断面内での全角度方向における輝度分布を表示したものはBモード画像と呼ばれ、図2(b)に示すように、概略的に血管断面に対応した円環状の輝度分布の表示画像になる。このように超音波探触子を取り付けたカテーテルを血管内に挿入し血管内面を表す画像データを取得するための装置としては、例えば非特許文献1において用いられているような血管内超音波イメージングシステム(ボストン・サイエンティフィック・ジャパンから市販されているギャラクシー2IVUSイメージングシステム)を用いることができる。
【0021】
組織性状の判別を行うためには、カテーテルCを血管内で軸方向に移動させつつ、各位置での血管の断面についての輝度分布を取得し、そのデータを蓄積していく。その際、カテーテルCは図1(b)に示されるような血管V内の内腔Lのいずれかの位置を通るものであり、カテーテルCに装着された超音波探触子Tの位置は特に血管Vの中心位置にあるわけではなく、カテーテルCの移動とともに血管内腔L中のさまざまな位置をとり、また、血管自体にも時間とともに移動・変形の動作が伴うことにより、カテーテルCの先端側部分についてみても、血管の軸方向に対しての角度が変化していく。このため、超音波探触子Tから送信される超音波が血管内面に対して照射される角度も変動していく。このように、血管内面に対する超音波の入射角が変動するため、反射面をなす組織によって反射波の角度依存性があり、それが検出された反射波データに現れることを用いて組織、性状の判別がなされる。
【0022】
図2(b)のようなBモード画像は、反射波を検出する超音波探触子を中心として表されるものであり、画像の中心は血管の中心とは一致しない。組織性状の判別においては、超音波探触子の軸方向への移動に応じた複数の画像を用いて判別がなされるので、複数の画像の位置合わせを行う必要があるが、この点については後述する。
【0023】
超音波の発振・受信により組織性状判別を行う超音波診断装置の構成は図3のようになる。図3において、1は超音波探触子のついたカテーテルCをその軸を中心として回転させ、また軸方向に進退させる駆動部であり、2は駆動部1によるカテーテルCの動作を行うカテーテル動作制御部である。カテーテル動作制御部2では、カテーテルCの動作の指令信号を駆動部1に供給するとともに、駆動部1からカテーテルCに装着された超音波探触子Tの角度・位置についての信号を受け取る。超音波探触子Tの角度・位置についての信号は信号処理部5に給送される。
【0024】
3は超音波探触子Tの動作を制御する超音波探触子制御部であり、超音波探触子Tは超音波探触子制御部3による制御を受けて超音波を発信し、被検体からの反射波を検出し出力信号を生成する。超音波探触子Tからの信号は、A/D変換部4においてA/D変換されて信号処理部5に給送される。信号処理部5においては、超音波探触子TからのA/D変換された信号と、超音波探触子Tの角度・位置についての超音波探触子制御部3からの信号とにより血管の断面内における信号強度分布を表す画像データを生成し、生成された画像データを逐次画像データ記憶部6に給送する。7は画像データにより画像の表示を行う表示部であり、また、10はカテーテルC、超音波探触子T、信号処理部5の動作を全体として制御するための制御部である。
【0025】
図3に示される超音波診断装置により血管内面のプラークが線維性か脂質性であるかという組織性状判別を行うには、基本的には図4に示すフローに従った画像データの生成を行う。まず、カテーテルCを血管内に挿入し、検査を開始する位置において先端側の超音波探触子TからカテーテルCに垂直な面内に超音波を送信し反射波を受信する。これにより図2(a)に示すような1つの角度方向の反射信号が得られ、カテーテルCをその軸を中心として360°回転しつつ反射波を受信していくことにより1つの断面についての反射波信号が得られる。
【0026】
1つの断面について反射波強度信号を輝度信号に変換したものは図2(b)のようなBモード画像を表す画像データとなる。この反射信号を取得する操作を逐次カテーテルを血管内腔Lに沿って移動させながら行って複数の断面に対する画像データを取得していき、一連の断面を表す画像データとして逐次記憶部6に蓄積していく。表示部7では、画像データを表示する。
【0027】
次に、一連の断面を表す画像の位置合わせを行う。この位置合わせについて説明すると、一般的には2つの画像の位置合わせの手法としては、x,y座標で表された2つの画像について相関係数が最大になるようにしてなされるが、血管の断面画像の場合、x,y座標表示の画像では血管形状の変化や回転を伴うため、この手法では位置合わせが困難になることが考えられる。そこで、血管内の圧力が一様であることから血管断面が円筒形状であるものとして円形近似を行い、血管の中心位置と回転角度とを分けて位置を合わせるのがよい。
【0028】
初めにx,y座標表示の2つの血管断面の画像を二値化し、血管壁を円で近似する。この円近似は、二値化された画像においてハフ変換により円周上の点集合からその半径と中心座標を決定することによりなされる。ここでの二値化は中心位置、半径を決定し血管断面の位置を合わせるためにのみ行うものである。次に、2つの画像データをこの中心位置をもとにした極座標表示に変換し、極座標表示に変換された2つの画像データについて相関係数が最大になるようにして回転角度の同定を行う。
【0029】
この状況を図5に例示する。図5において、例えばt番目のフレームの画像をa1、(t+1)番目のフレームの画像を(b1)であるとする。画像(a1),(b1)における血管の中心座標を個別に求め、画像(b1)における血管の中心座標が画像(a1)における血管の中心座標に一致するように画像(b1)を平行移動する。これまでの処理が血管中心位置の同定であり、x,y座標系で行う。次に、各画像をこの処理で求めた血管中心座標(画像(b1)では平行移動後の中心座標)を原点とする極座標系に変換し、すなわち画像(a1)を(a2)に、画像(b1)を(b2)に変換して、回転角度の同定を行う。x,y座標表示での円が極座標表示では直線になり、b1の画像とb2の画像との回転角度の同定は平行移動により容易になされる。また、位置合わせの際に、血管形状の変化、歪みなどの影響のため、相関係数の最大となるのが一意的に決まらず、複数の候補となる場合が生じ得る。このような場合、連続した複数の画像は短い時間間隔で取得されることから、短時間で大きく変化する可能性は少ないとして、変化量が少なくなる方に決定する。
【0030】
画像の位置合わせがなされた上で、隣接フレームの画像データの差分をとる演算を行って隣接画像ごとに差分画像データを生成し、逐次記憶部に蓄積していく。図6において、1番目、2番目、3番目、・・・N番目の画像に対し、それぞれの隣接する2つの画像の差分をとり、差分画像データを逐次生成し記憶部に蓄積していく。これらの差分画像を累積して累積差分画像データを生成する。生成された累積差分画像はグレースケール画像であり、これにより組織性状の判別がなされるが、画像からプラークの組織性状が線維性か脂質性であるかをより容易に判別できるようにするには、しきい値により累積差分画像を二値化画像とする。図7(a)が血管断面の注目する部分を表すグレースケール画像であるとして、二値化により図7(b)のような形になる。この二値化された累積差分画像においては、血管内面のプラークの組織性状が線維性か脂質性かを判別することができるものである。累積差分画像を生成することにより個々の差分画像の有する特徴がさらに強調され、組織性状が判別し易くなるものであるが、そのために累積する画像のフレーム数を十分なものとすることが必要である、本実施例において10枚のフレームで組織性状の判別が良好にできる累積差分画像が得られている。ただし、このフレーム数は、カテーテルの進行の速度や各画像を取得する時間間隔に依存したものとなり、それらに応じて必要なフレーム数も増減し得る。
【0031】
本発明においては、被検体面における組織性状が線維性か、脂質性かにより超音波反射波強度の角度依存性に相違があることを用いて組織性状の判別を行っており、この反射波強度の角度依存性を踏まえると、脂質性組織については血管内で超音波探触子の位置・角度をどのようにして画像を取得しても超音波が乱反射するために、得られる反射波信号は常に小さい値となり、画像上での輝度値が小さく、差分を累積しても小さい値となる。
【0032】
一方、線維性組織や血管壁については、超音波探触子の位置を変えながら画像を取得すると、超音波が組織に垂直に入射する時には受ける反射波強度は強く、画像上での輝度は大きな値となり、垂直方向から角度をなして入射すると受ける反射波強度は弱く、画像上での輝度は小さくなる。したがって、超音波探触子の位置・角度を変えながら画像を取得すると、線維性組織や血管壁部分では輝度が大きくなったり、小さくなったりし、輝度の時間的差分をとると、差分値が大きくなり、その累積値はさらに大きくなる。
【0033】
本発明においては、このように一連の断面を表す画像について輝度値の差分をとった差分画像を生成し、さらにそれを累積した累積差分画像を生成するので、組織性状が線維性か脂質性かに応じた超音波反射波強度の角度依存性の差違が画像上で強調して表され、容易かつ正確に組織性状の判別がなされるものである。
【0034】
本発明について、組織性状判別を行う超音波診断装置としての実施形態を中心に説明したが、取得された一連の被検体の断面を表す画像について累積差分画像を生成する画像処理はコンピュータを用いて実行され、本発明はこのような組織性状判別のための画像を生成することをコンピュータ上で実行するためのプログラムとしても特定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)は血管内にカテーテルを挿入する状況を示す図であり、(b)は断面で見た図である。
【図2】(a)は超音波探触子により受信された1つの角度方向についての信号を表すグラフであり、(b)は(a)の強度を表す信号を輝度信号に変換し360°にわたるBモード画像としたものを概略的に示す図である。
【図3】本発明による超音波診断装置の構成を示す図である。
【図4】画像データの処理過程を示すフローの図である。
【図5】一連の断面を表す画像のうち2つの画像の位置合わせをする際に極座標表示に変換する状況を示す図である。
【図6】一連の断面を表す画像について累積差分画像を生成する状況を示す図である。
【図7】(a)はグレースケールでの累積差分画像の例を示し、(b)は(a)の画像を二値化した画像として示す図である。
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図2】
5
【図7】
6