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明細書 :アレルゲンの除去方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4867010号 (P4867010)
公開番号 特開2008-201859 (P2008-201859A)
登録日 平成23年11月25日(2011.11.25)
発行日 平成24年2月1日(2012.2.1)
公開日 平成20年9月4日(2008.9.4)
発明の名称または考案の名称 アレルゲンの除去方法
国際特許分類 C09K   3/00        (2006.01)
D06M  13/00        (2006.01)
D06M  13/152       (2006.01)
FI C09K 3/00 S
D06M 13/00
D06M 13/152
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願2007-037362 (P2007-037362)
出願日 平成19年2月19日(2007.2.19)
審査請求日 平成19年7月31日(2007.7.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
発明者または考案者 【氏名】金子 聡
【氏名】勝又 英之
【氏名】原田 拓也
【氏名】太田 清久
【氏名】鈴木 透
審査官 【審査官】木村 拓哉
参考文献・文献 特開2006-306733(JP,A)
特開2003-012448(JP,A)
有限会社BHS環境研究所静岡,自然界からの贈り物「フミン酸」の力とは?抗ウィルス力・抗菌力作用、保湿性能・・。環境と健康を考えるすべての人に朗報です。,[online],日本,株式会社バリュープレス,2006年11月27日,[2010年8月2日検索]、インターネット〈URL:http://www.value-press.com/pressrelease.php?article_id=10342〉
有限会社BHS環境研究所静岡,プールの水質浄化、温泉施設のレジオネラ菌対策の決定版。植物性天然成分「フミン酸」の働きで、塩素のないプール、ぬめりのない清潔で安全な温泉浴場に。,[online],日本,株式会社バリュープレス,2006年11月13日,[2010年8月2日検索]、インターネット〈URL:http://www.value-press.com/pressrelease.php?article_id=9886〉
有限会社BHS環境研究所静岡,市営、学校プーやスイミングスクール、温泉施設でも導入。塩素の被害から肌を守る「フミン酸」を主成分にした天然植物成分の家庭用入浴液「バスフミン」発売開始。アトピーなど皮膚疾患に高い効果。,[online],日本,株式会社バリュープレス,2006年11月 1日,[2010年8月2日検索]、インターネット〈URL:http://www.value-press.com/pressrelease.php?article_id=9732〉
調査した分野 C09K 3/00
D06M 13/00
D06M 13/152
特許請求の範囲 【請求項1】
アレルゲンを除去する方法において、100℃以上300℃未満の温度範囲で固化焼結する過程を経て海底泥から抽出されたフミン物質を用いることを特徴とするアレルゲンの除去方法。
【請求項2】
アレルゲンは屋内塵性ダニ類由来のアレルゲンであることを特徴とする請求項1に記載のアレルゲンの除去方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フミン物質を用いたアレルゲン除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハウスダスト中のダニアレルゲン(ダニの虫体、死骸、抜け殻、糞等)の増加により、アトピー性皮膚炎、気管支喘息などのアレルギー疾患を持つ小児及び若年者の患者が増加している。
従って、ダニアレルゲンの除去という観点から、例えば、オゾンガスを用いてダニアレルゲンを分解処理する技術(特許文献1)や、石油由来の物質を主成分とし、フェノール性水酸基を含む物質(特許文献2)が知られている。又、植物由来のダニアレルゲン低減化物質として、タンニン酸、リグノフェノール誘導体等が公知である(特許文献3、4)。
【0003】

【特許文献1】特開平8-310908
【特許文献2】特開2004-3040
【特許文献3】特開2006-206845
【特許文献4】特許第3803769号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1において、オゾンガスが人体に害を及ぼす欠点があった。特許文献2において、オゾンより人体に影響の少ないフェノール性水酸基を含む物質であるものの、石油由来のため、環境に負荷を及ぼす欠点があった。又、特許文献3及び4において、タンニン酸、リグノフェノール誘導体は、植物中の主成分ではないことから、1)その抽出・製造に大規模プラントを必要とする、2)抽出・製造後の残渣は、効果的な利用用途がなく産業廃棄物として処理される、などの大きな問題点があった。
【0005】
本発明は、未利用資源から、容易且つ安価に抽出でき、人体・環境への影響が懸念されることのない物質を用いたアレルゲンの除去方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
100℃以上300℃未満の温度範囲で固化焼結する過程を経て海底泥から抽出されたフミン物質を用いることを特徴とするアレルゲンの除去方法である。

【0007】
さらに、当該アレルゲンは、屋内塵性ダニ類由来のアレルゲンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、未利用資源で、容易且つ安価に抽出でき、人体・環境への影響が懸念されることのないフミン物質を用いて、アレルゲンの除去を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
1.フミン物質の分離・抽出
フミン物質は、抽出溶液のpHによって、フミン酸、フルボ酸、ヒューミンの3成分に分類できるが、何れの成分も、アレルゲンタンパク質を不活性化、吸着・低減化するフェノール性水酸基を有しているため、当該成分の種類によらずフミン物質全体を利用できる。又、フミン物質は、河川、湖沼、土壌、泥炭、底泥のあらゆる所に存在しており、何れから分離・抽出したものも利用できるが、特に、フェノール性水酸基が豊富に存在する海洋性由来のフミン物質が,高いアレルゲン不活性化、吸着・低減化効果を有する。
【0010】
例えば、海底泥中のフミン物質の分離抽出法は、以下の1)から7)の操作手順により行う。1)海洋の底部から浚渫した底泥90gを水中で懸濁させた後、底泥が上澄みと二層に分離するまで静置する。2)二層に分離した後、上澄みを捨て、底泥を洗浄する。この操作を塩が抜けるまで、数回繰り返す。3)次に、この底泥と水ガラス(10g)を混合し、ボール状容器に入れ、攪拌機によって十分に混合する。4)続いて、底泥と水ガラスを混合した物を、空気雰囲気下において昇温速度4℃毎分で温度を上げ、100℃から300℃の目的温度に到達した後、3時間固化焼成を行う。5)次に、得られた焼結体(直径3~5cmの塊状物)の表面を一度洗浄し、100mLの水に浸漬させて、1時間、撹拌振とう機で振とうする。不純物を含む初液は廃棄する。6)続いて、該焼結体を別の100mLの水に室温で24時間浸漬させることにより、フミン物質が水に移行し、黒褐色の海底泥中フミン物質水溶液を得る。7)この海底泥中フミン物質水溶液を乾燥させて、海底泥中フミン物質を得る。
【0011】
2.フミン物質の利用の形態
フミン物質は、液体状、固体状、粉体状、ペースト状等で用いることができる他、織布、不織布、活性炭素繊維、フィルター等の固体基剤に塗布し、又は担持させて用いることができる。
液体状の場合、フミン物質抽出液をそのまま用いる、若しくはフミン物質の溶液又は分散液(濃度分布を有する液体、コロイド、エマルション等の状態の液体、河川、湖沼、土壌、泥炭、底泥の成分の一部が残存した状態の液体等)として用いる。その濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.0001~50重量%であり、より好ましくは0.001~10重量%である。又、溶剤としては、水、有機溶剤、アルカリ等が挙げられるが、人体、環境への影響が懸念されなければ、その種類は特に限定されず、当該溶剤を1種類又は混合して用いる。
【0012】
対象アレルゲンに対して、上記液体状のフミン物質をスプレー等で噴霧する、又は、液体状、固体状、粉体状、ペースト状等のフミン物質を織布、不織布、活性炭素繊維、フィルター等に塗布し、担持させて対象アレルゲンに供することにより、アレルゲンを除去・低減化することができる。
【0013】
3.ダニアレルゲンの種類
フミン物質により除去・低減化されるアレルゲンは、フミン物質中のフェノール性水酸基により不活性となるタンパク質を有していれば、いかなる種類であってもよい。例えば、屋内塵性ダニ、室内に生息するダニ、小児喘息やアトピー性皮膚炎の主原因とされているコナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニの虫体、死骸、抜け殻、糞等が挙げられる。
【実施例】
【0014】
以下に本発明の好適な一実施の形態を実施例によって具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の実施形態によって限定されるものでなく、本発明の範囲で様々に改変して実施することができる。
【0015】
アレルゲン除去・低減化試験に供されたフミン物質として、三重県の英虞湾の海底から浚渫により得られた海洋底泥から抽出したフミン物質、及び市販の試薬(フミン酸、和光純薬株式会社製、082-04625、中国の土壌由来)を採用した。以下、当該海洋底泥を100℃、200℃、300℃で固化焼結する過程を経て得られたフミン物質を順に海洋性フミン物質(100℃焼成)、海洋性フミン物質(200℃焼成)、海洋性フミン物質(300℃焼成)と称する。又、市販の試薬をフミン物質(土壌由来)と称する。
【0016】
[実施例1]パネル試験によるダニアレルゲン量の測定
1.ダニアレルゲンの調製方法
精製ダニ抗原(生化学工業製、Derf1)50μgに500μLの蒸留水を加えてよく溶解し、その溶液をマイクロチューブに25μLずつ分取し、-80℃で凍結保存した。実験に使用する際には、凍結した希釈精製ダニ抗原(25μL)を、2.975mLのリン酸バッファー(pH7.4)で希釈し、3mLとした。この溶液を希釈ダニ抗原(以下、抗原Aと称する)とした。
【0017】
2.ダニアレルゲン量の測定
ダニアレルゲン量の測定には、アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製アサヒダニスキャン(以下、アサヒダニスキャンと称する)を使用した。ダニアレルゲン測定面(10cm×15cm)を約1分間、縦横に塵採取部で擦り、アレルゲンを捕捉した。採取後、塵採取部を上にして水平にダニスキャンを置き、塵採取部に現像液をゆっくり5滴しみ込ませた。10~15分経過後、表示部にあるC(コントロール)及びT(テストライン)の位置に現れる赤線の濃さ(発色)を比較し、アサヒフードアンドヘルスケア株式会社の基準に基づいて以下の通り判定を行った。
判定1 Tなし:ダニアレルゲンの汚染はありません.
判定2 T<C:ダニアレルゲンの汚染はありません.
判定3 T=C:汚染が進んでいます.
判定4 T>C:非常に汚染されています.
【0018】
アサヒダニスキャンの判定方法を充分に理解した8人を測定者(判定者)とし、各サンプルについて、互いに他人の判定結果及びサンプル名が分からない環境下で判定させ、その総和平均を判定結果とした。又、標準誤差(SE)を算出した。当該方法により、テストライン、発色等の微妙な差異を区別させ、測定精度を向上させた。
【0019】
まず、上記1で調製した抗原A、3mLのうち0.75mLを、不織布(呉羽テック製、8056、10cm×15cm)になるべく均一に滴下塗布した。30℃で2時間乾燥させた後、アサヒダニスキャンを用いて上記方法にてダニアレルゲン量を測定した。8人の測定者が、アサヒダニスキャンにて測定したサンプルを判定したところ、何れも判定結果は3であった。
【0020】
次に、海洋性フミン物質(100℃焼成)80mgを約4mLの水に溶解し、その水溶液を上記不織布(10cm×15cm)になるべく均一に滴下塗布した。30℃で2時間乾燥させた後、上記1で調製した抗原A、3mLのうち0.75mLを、再度その不織布になるべく均一に滴下塗布した。30℃で2時間乾燥させた後、アサヒダニスキャンを用いて上記方法にてダニアレルゲン量を測定した。8人の測定者が、アサヒダニスキャンにて測定したサンプルを判定したところ、何れも判定結果は1であり、フミン物質がアレルゲンを吸着・低減化することが示された。
【0021】
[実施例2]酵素免疫定量法(Enzyme-linked immunosorbent assay: ELISA法)によるダニアレルゲン量の測定
1.ダニアレルゲンの調製方法
精製ダニ抗原(生化学工業製、Derf1)50μgに500μLの蒸留水を加えてよく溶解し、その溶液をマイクロチューブに25μLずつ分取し、-80℃で凍結保存した。実験に使用する際には、凍結した希釈精製ダニ抗原(25μL)を、0.05重量%の界面活性剤(Tween20)を含むリン酸バッファー(pH7.4)で希釈し、3.84mLとした。この溶液に50μLにリン酸バッファー(pH7.4)1mLを加えた。この溶液を希釈ダニ抗原(以下、抗原Bと称する)とした。
【0022】
2.ダニアレルゲン量の測定
海洋性フミン物質(100℃焼成)、海洋性フミン物質(200℃焼成)、海洋性フミン物質(300℃焼成)、フミン物質(土壌由来)の4種類のフミン物質に関して、それぞれアレルゲン除去・低減化試験を行った。フミン物質20mgを1mLの水に溶解し、その水溶液をアドバンテック東洋株式会社製定量濾紙(5C2cm×2cm)になるべく均一に滴下塗布した。30℃で2時間乾燥させた後、上記の抗原B約5mL中に、当該濾紙を浸漬させた。浸漬させてから2時間経過した後、上澄み液(以下、測定用試料Pと称する)を採取した。又、対照として、濾紙のみを上記の抗原B約5mL中に同様の条件で浸漬させた上澄み液(以下、測定用試料Qと称する)も用いた。測定用試料P及びQについて、酵素免疫定量法によりダニアレルゲン量の測定を行った。
【0023】
酵素免疫定量法の計測キットとして、株式会社エル・シー・ディー社製ダニ抗原量測定キットを使用し、以下の1)から11)の操作手順により測定を行った。1)0.05重量%のTween20を含むリン酸緩衝溶液(pH7.4、以下、洗浄液と称する)により96ウェルコーティングプレートを1回洗浄した。2)検量線用試料(キットに付属)、キット間誤差補正用試料(キットに付属)、測定用試料P及びQを、それぞれ50μLずつ別々のウェルに分注し(各試料について2ウェルずつ使用)、ビオチン結合抗Derf1試薬を50μLずつ添加した。3)37℃で2時間、インキュベーターにより培養した。4)続いて、洗浄液によりウェルコーティングプレートを1回洗浄した。5)ストレプトアジピン結合ガラクトシダーゼ試薬100μLをそれぞれに添加した。6)37℃で1時間、インキュベーターにより培養した。7)次に、洗浄液によりウェルコーティングプレートを4回洗浄した。8)30分前に調製した呈色液(o-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド溶液)を100μLずつ分注した。9)37℃で正確に10分間、インキュベーターにより培養した。10)反応停止試薬(炭酸ナトリウム溶液)を100μLずつ分注し、続いて速やかに振とうし、反応を停止させた。11)可視・紫外吸光光度計により測定波長415nmの吸光度を測定した。
【0024】
ダニアレルゲンの低減化率は、試料に関係なく生じる吸光度のオフセットを考慮した後、(測定用試料Pの吸光度)/(測定用試料Qの吸光度)から求めた(図1)。図1から明らかなように、フミン物質は高いアレルゲン吸着・低減化能力を有する。又、フェノール性水酸基が豊富に存在する海洋性フミン物質において、顕著なアレルゲン吸着・低減化能力が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】フミン物質の吸着・変性によるアレルゲン低減化率
図面
【図1】
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