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明細書 :窒化ガリウムからなる中空の球状粒子及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4756239号 (P4756239)
公開番号 特開2007-039277 (P2007-039277A)
登録日 平成23年6月10日(2011.6.10)
発行日 平成23年8月24日(2011.8.24)
公開日 平成19年2月15日(2007.2.15)
発明の名称または考案の名称 窒化ガリウムからなる中空の球状粒子及びその製造方法
国際特許分類 C01B  21/06        (2006.01)
FI C01B 21/06 ZNMA
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2005-225075 (P2005-225075)
出願日 平成17年8月3日(2005.8.3)
審査請求日 平成20年8月1日(2008.8.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】板東 義雄
【氏名】ウィン・ロンウェイ
審査官 【審査官】壺内 信吾
参考文献・文献 特開平07-247106(JP,A)
特開2001-206708(JP,A)
特開2004-339020(JP,A)
特開2004-224674(JP,A)
X.Sun et al.,Ga2O3 and GaN Semiconductor Hollow Spheres,Angewandte Chemie International Edition,2004年 7月19日,Vol.43, No.29,pp.3827-3831
S.C.HUNG et al.,Self-formation of GaN hollow nanocolumns by inductively coupled plasma etching,Applied Physics A,2005年 5月,Vol.A80, No.8,pp.1607-1610
調査した分野 C01B15/00-23/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
直径が15~20nmであり、肉厚が3.5~4.5nmであることを特徴とする、窒化ガリウムからなる中空の球状粒子。
【請求項2】
アンモニアガスと不活性ガスとの混合気流中で、塩化ガリウム粉末を1000~1200℃で1~1.5時間加熱し、前記混合気流中であって前記塩化ガリウム粉末の下流に設置された基板上で窒化ガリウムからなる中空の球状粒子を前記加熱時間の間成長させることを特徴とする、窒化ガリウムからなる中空の球状粒子の製造方法。
【請求項3】
前記アンモニアガスと前記不活性ガスとの流量比が、40:60~60:40の範囲であることを特徴とする、請求項2に記載の窒化ガリウムからなる中空の球状粒子の製造方法。
【請求項4】
前記アンモニアガスと前記不活性ガスとの流量の和が、400~500sccmの範囲であることを特徴とする、請求項2に記載の窒化ガリウムからなる中空の球状粒子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、青色から紫外領域の発光材料や高温高電力の電子デバイス用材料として有用な窒化ガリウムからなる中空の球状粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空粒子を有する半導体のうち、硫化亜鉛の中空粒子はシリカを鋳型として用いることにより製造されている(例えば、非特許文献1参照)。また、硫化カドミウムの中空粒子は酢酸カドミウムとチオアセトアミドから製造されている(例えば、非特許文献2参照)。さらに、セレン化カドミウムの中空粒子は、水酸化カドミウムとセレノ硫酸ナトリウムから製造されている(例えば、非特許文献3参照)。
一方、窒化ガリウムのナノワイヤー、ナノベルト、ナノチューブなどの一次元ナノ構造物については、既によく知られている(例えば、非特許文献4~9参照)。
【0003】

【非特許文献1】K.P.Velikov,他、Langmuir, 17巻、4779頁、2001年
【非特許文献2】Y.Ma, 他、Langmuir, 19巻、9079頁、2003年
【非特許文献3】J.J.Zhu,他、Adv.Mater.15巻、 156頁、2003年
【非特許文献4】W.Q.Han,他、Appl.Phys.Lett. 80巻、 303頁、2002年
【非特許文献5】C.C.Tang, 他、Appl.Phys.Lett. 83巻、3177頁、2003年
【非特許文献6】C.C.Chen, 他、Adv.Mater.12巻、 738頁、2000年
【非特許文献7】C.C.Chen, 他、J.Am.Chem.Soc. 123巻、2791頁、2001年
【非特許文献8】J.Goldberger, 他、Nature,422巻、 599頁、2003年
【非特許文献9】L.W.Yin,他、Appl.Phys.Lett. 84巻、3912頁,2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、窒化ガリウムの中空球状粒子は、未だに知られていない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、新規な、窒化ガリウムの中空球状粒子及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の窒化ガリウムからなる中空の球状粒子は、直径が15~20nmであり、肉厚が3.5~4.5nmであることを特徴とする。
本発明の窒化ガリウムからなる中空の球状粒子によれば、窒化ガリウムからなるナノメートルサイズの中空の球状粒子を得ることができる。このナノ構造物は、青色~紫外領域の発光材料、高温高電力の電子デバイス用材料として用いることができる。
【0007】
本発明の窒化ガリウムからなる中空の球状粒子の製造方法によれば、アンモニアガスと不活性ガスとの混合気流中で、塩化ガリウム粉末を1000~1200℃で1~1.5時間加熱し、窒化ガリウムからなる中空の球状粒子を合成することを特徴とする。
上記構成において、好ましくはアンモニアガスと不活性ガスとの流量比は、40:60~60:40の範囲である。
また、アンモニアガスと不活性ガスとの流量の和は、好ましくは、400~500sccmの範囲である。
上記構成によれば、塩化ガリウム粉末を、アンモニアガスと不活性ガスとの混合気流中で加熱することにより、ナノメートルサイズの寸法を有する窒化ガリウムからなるナノメートルサイズの中空の球状粒子を製造することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、直径が15~20nmであり、肉厚が3.5~4.5nmである窒化ガリウムからなる中空の球状粒子が得られると共に、その製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、本発明の窒化ガリウムからなる中空の球状粒子を製造する装置の一例を示す模式図である。この装置を例に製造方法を説明する。
図において、縦型高周波誘導加熱装置1は、反応管2の周囲に誘導加熱コイル3を有している。そして、塩化ガリウム粉末4を入れた坩堝5を反応管2の中央部に配置し、さらに、坩堝5の上方には基板6を配設している。矢印7は、反応管2に供給される、アルゴンなどの不活性ガス又はアルゴンと反応ガスとの混合ガスを表わしている。ここで、加熱装置には、高周波誘導加熱法を利用した高周波誘導加熱炉を用いることが好ましいが、この場合、縦型に限らず横型でもよい。また、加熱装置は高周波誘導加熱に限らず、ランプ加熱や抵抗加熱による加熱装置でもよい。
【0010】
図1の装置を用い、窒化ガリウムからなる中空の球状粒子を製造する方法を説明する。図において、塩化ガリウムの粉末4を窒化ホウ素製の坩堝5に入れ、この坩堝5を縦型高周波誘導加熱炉1の中央部に配置する。さらに、坩堝5の上方にシリコンやサファイアなどの基板6を設置する。
反応管2内を減圧した後、アルゴンガス7を流しながら、坩堝5及び塩化ガリウム粉末4を予備加熱する。このとき、坩堝5は、塩化ガリウム粉末4が1000~1200℃の範囲で加熱される。
【0011】
次に、アンモニアガスと不活性ガスとしてのアルゴンガスとの混合ガスを流しながら、上記温度で加熱する。この坩堝5および塩化ガリウム粉末4の加熱温度は1000~1200℃の範囲が好ましい。加熱温度が1000℃よりも低いと、基板6上に生成物が堆積しないので好ましくない。逆に、加熱温度が1200℃よりも高いと、中空の窒化ガリウム球状粒子が得られず、ナノワイヤーやナノ結晶体になってしまうので好ましくない。
【0012】
このときの加熱時間は、1~1.5時間の範囲が好ましい。1.5時間で球状粒子の成長が終了するので、これ以上の時間をかける必要はない。逆に、1時間未満の加熱時間では球状粒子の成長が終了しないので、好ましくない。
【0013】
アンモニアガスとアルゴンガスとの流量の比は40:60~60:40の範囲が好ましい。アンモニアガスの流量がこの範囲よりも多いと、結晶成長の速度が早すぎて生成物中に結晶欠陥を含むので好ましくない。逆に、アンモニアガスの流量が上記の好ましい範囲よりも少ないと、ガリウムと反応するアンモニアの量が十分でないので窒化ガリウムの生成量が減少し好ましくない。
【0014】
アンモニアガスとアルゴンガスとの混合ガスの流量の和は、400~500sccmの範囲が好ましい。sccm(standard cubic cm per minute )は、cm3 /分で、0℃において、1013hPaに換算した場合の流量を表す単位である。上記流量和が500sccmよりも多いと生成物が反応系から散逸するので好ましくない。逆に、流量和が400sccmよりも少ないと中空球状粒子の収量が低下するので好ましくない。
【0015】
このような操作を施すことにより、基板6上に黄色の粉末が堆積する。この堆積物は、後述するように、直径が15~20nmであり、壁の厚さが3.5~4.5nmである、窒化ガリウム中空球状粒子である。
【実施例】
【0016】
次に実施例を示して、さらに本発明を詳細に説明する。
塩化ガリウム粉末4(和光純薬工業(株)製、純度99.9%)3.0gを窒化ホウ素製の坩堝5に入れ、この坩堝5を縦型高周波誘導加熱炉1の中央部に設置した。さらに、坩堝5の上方20cmの位置にシリコン基板6を配置した。反応管2内を266~399Pa(2~3Torr)に減圧にした後、アルゴンガス7を250sccmの流量で流しながら、1100℃で30分間加熱した。
その後、アンモニアガス50%及びアルゴンガス50%の混合ガス7を、450sccmの流量で流しながら、引き続き、1100℃で1.5時間加熱した。加熱後、縦型高周波誘導加熱装置1を室温に冷却すると、加熱中に約650℃に保持されていたシリコン基板6上に黄色の粉末が0.6g堆積した。
【0017】
(比較例)
次に、比較例について説明する。
実施例で得た黄色粉末試料の一部を、アンモニアとアルゴンとの気流中で、さらに1150℃まで温度を上昇し、1時間の加熱処理を施した。
【0018】
図2は、実施例で合成した黄色粉末のX線回折パターンを示す図である。図の縦軸は回折X線強度(任意目盛り)であり、横軸は角度(°)、即ち、X線の原子面への入射角θの2倍に相当する角度である。図2から、黄色粉末が、格子定数a=3.186Å、c=5. 178Åを有する六方晶系の窒化ガリウムであることが分かった。
【0019】
図3は、実施例で合成した黄色粉末の低倍率透過型電子顕微鏡像を示す図である。この場合、黄色粉末をエタノール中で超音波処理を行って分散液を試料とし、その分散液を非晶質炭素膜でコートされた銅グリッドに滴下して透過電子顕微鏡像を観察した。図3から、黄色粉末が中空の球状粒子の集合であることが分かった。
【0020】
図4は、実施例で合成した黄色粉末の高倍率透過電子顕微鏡像を示す図である。図4から、実施例で合成した黄色粉末一個の粒子の直径が15~20nmであり、その壁の厚さが3.5~4.5nmであることが分かった。
【0021】
図5は、実施例で合成した黄色粉末のエネルギー分散型X線分析(EDX:Energy-Dispersive X-ray Analysis)による測定結果を示す図である。図の縦軸は、X線強度(任意目盛り)を示し、横軸はX線のエネルギーを示している。
図5から、黄色粉末は、ガリウム(Ga)と窒素(N)とからなり、その原子比が1:0.99であり、化学量論的組成を有する窒化ガリウムであることが分かった。なお、銅の信号が観察されるが、これは試料を取り付ける治具として用いた銅グリッドに由来している。
【0022】
図6は、実施例で得られた黄色粉末試料をアンモニアとアルゴンとの気流中で、さらに、1150℃に温度を上昇させて加熱処理した比較例試料の低倍率透過型電子顕微鏡像を示す図である。図6から、比較例では、加熱処理によって球状粒子が合着して、球状粒子からナノチューブに変化することが分かった。また、このナノチューブの外径は20nmで、壁の厚さは3.5~5.0nmであることが分かった。
【0023】
図7は、実施例で合成した黄色粉末のフォトルミネッセンスのスペクトルを示す図である。フォトルミネッセンスは、励起光として325nmのHe-Cdレーザー光を用い、室温で測定した。図において、実線が実施例で合成した窒化ガリウムからなる中空の球状粒子のフォトルミネッセンススペクトルを示し、点線がバルクの窒化ガリウムのフォトル
ミネッセンススペクトルを示している。
図7から明らかなように、実施例で合成した窒化ガリウムからなる中空の球状粒子のフォトルミネッセンススペクトルは、バルクの窒化ガリウム結晶のフォトルミネッセンスと比較すると、0.12eV(13nm)だけ短波長側、即ちブルーシフトしていることが分かった。これは、本発明の球状粒子の直径、壁の厚さなどのサイズが小さくなったために、量子閉じ込め効果が発現したことに起因すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、窒化ガリウムからなるナノメートルサイズの中空の球状粒子を得ることができるので、青色領域から紫外領域の発光材料、高温高電力電子デバイス用材料への応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の窒化ガリウムからなる中空の球状粒子を製造する装置の一例を示す模式図である。
【図2】実施例で合成した黄色粉末のX線回折パターンを示す図である。
【図3】実施例で合成した黄色粉末の低倍率透過型電子顕微鏡像を示す図である。
【図4】実施例で合成した黄色粉末の高倍率透過型電子顕微鏡像を示す図である。
【図5】実施例で合成した黄色粉末のエネルギー分散型X線分析(EDX:Energy-Dispersive X-ray Analysis)による測定結果を示す図である。
【図6】実施例で得られた黄色粉末試料をアンモニアとアルゴンとの気流中で、さらに、1150℃に温度を上昇させて加熱処理した比較例試料の低倍率透過型電子顕微鏡像を示す図である。
【図7】実施例で合成した黄色粉末のフォトルミネッセンスのスペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1:縦型高周波誘導加熱装置
2:反応管
3:誘導加熱コイル
4:塩化ガリウム粉末
5: 坩堝
6:基板
7:不活性ガス又は混合ガス
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6