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明細書 :複合体粒子含有スラリー及び複合体粒子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4953224号 (P4953224)
公開番号 特開2007-063468 (P2007-063468A)
登録日 平成24年3月23日(2012.3.23)
発行日 平成24年6月13日(2012.6.13)
公開日 平成19年3月15日(2007.3.15)
発明の名称または考案の名称 複合体粒子含有スラリー及び複合体粒子の製造方法
国際特許分類 C08J   3/14        (2006.01)
FI C08J 3/14 CFH
請求項の数または発明の数 4
全頁数 7
出願番号 特願2005-253466 (P2005-253466)
出願日 平成17年9月1日(2005.9.1)
審査請求日 平成20年8月28日(2008.8.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】石原 知
【氏名】西村 聡之
【氏名】田中 英彦
審査官 【審査官】岩田 行剛
参考文献・文献 特開平01-268724(JP,A)
特開平04-359926(JP,A)
特開昭62-027444(JP,A)
特表平05-505643(JP,A)
特開2006-117779(JP,A)
調査した分野 C08J 3/00-3/28
特許請求の範囲 【請求項1】
以下のステップ(ア)及び(イ)を設けた複合体含有スラリーの製造方法。
(ア)ポリカルボシラン及びポリビニルシランからなる群から選択される高分子物質、前記高分子物質を溶解する溶媒及び第二相粒子を混合した溶液を形成する。
(イ)前記溶液と前記高分子物質を溶解しない溶媒とを混合することにより、前記第二相粒子を核として前記高分子物質が析出した複合体含有スラリーを得る。
【請求項2】
前記ステップ(イ)における前記溶液と前記高分子物質を溶解しない溶媒との混合は、前記高分子物質を溶解しない溶媒に前記溶液を滴下することにより行う、請求項1に記載の複合体含有スラリーの製造方法。
【請求項3】
前記第二相粒子は直径が1μm以下の繊維状物質である、請求項1または2に記載の複合体含有スラリーの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の方法で製造したスラリーから溶媒を除去するステップを設けた、複合体粒子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子物質に第二相粒子を含む複合体粒子、例えば、プラスチック材料、ゴ
ム材料などの複合添加粒子として利用できる粒子に関し、特に、複合体粒子を含有するス
ラリー及び該複合体粒子を簡便に製造する方法に関する
【背景技術】
【0002】
プラスチック材料やゴム材料などの高分子マトリックス中に第二相粒子を分散させた複
合材料が、優れた機械的性質や導電性など、マトリックス材料のみでは発現できない特性
を示すことが知られている。例えば、プラスチック材料に炭素繊維のような炭素系フィラ
ーや炭化チタンウイスカーのような導電性の第二相粒子を分散させることにより、強度特
性と導電性を併せて向上できることが知られている。
【0003】
また、カーボンナノチューブは直径1μm以下の中空繊維状材料であり、その導電性や
電子放出特性などを利用した機能的材料として期待されている。そして、高分子マトリッ
クス中に分散させた複合材料が、高い機械的性質や導電性などの有用な特性を示すと報告
されている。さらには、カーボンナノチューブ以外に、窒化物系や酸化物系のナノチュー
ブも合成されている。
【0004】
このような複合材料を作製するためには、溶融樹脂あるいは溶媒に所望の第二相粒子を
均一に分散させる必要があるが、粒子相互の凝集力及び溶媒等に対する低い親和性のため
に、均一に分散させることは必ずしも容易ではない。特に、カーボンナノチューブのよう
な微細な繊維状材料の場合、その傾向が強い。相互の凝集力及び溶媒等に対する低い親和
性のために、カーボンナノチューブを均一に分散したポリマー系ナノコンポジットなどを
製造することは容易ではない。
【0005】
これまでに、カーボンナノチューブの溶媒に対する分散性を改善するために様々な試み
がなされている。まず、超音波をかけながらカーボンナノチューブを溶媒中に分散させる
方法(特許文献1)が提案されている。しかし、超音波を照射している間は分散していて
も照射が終了するとカーボンナノチューブが凝集してしまうという問題がある。また、カ
ーボンナノチューブと比較的親和性の高い溶媒を用いることが提案されており、そのよう
な溶媒として、種々の溶媒(特許文献2)、界面活性剤(非特許文献1)、アミド系極性
有機溶媒(特許文献3)などが開示されている。さらには、導電性ポリマーを混合する(
特許文献4)方法や、複数のアミノ基を有する高分子系化合物を混合する(特許文献5)
方法も開示されている。しかしながら、親和性の高い溶媒を用いる方法では、溶媒の種類
が限定されるという問題があり、また、用途によっては、他の高分子物質を混合すること
が好ましくない場合もある。
【0006】
一方、SiOガスなどを利用した気相反応により、カーボンナノチューブ表面にSiCを析出
させる手法が報告されている(非特許文献2及び特許文献6)。しかしながら、この手法
では、カーボンナノチューブ表面にSiCを薄く析出させる目的としては適しているが、SiC
の析出膜を厚くする場合には工業的生産性としては問題がある。また、ポリジベンゾジシ
ラアゼピンなどのポリマーでカーボンナノチューブ表面を被覆することにより、カーボン
ナノチューブ表面に絶縁性、反応性、光学的可視性、溶媒分散性を付与すること(特許文
献7)も報告されている。しかしながら、この報告においては、カーボンナノチューブ表
面に光学的可視性を付与することを主目的としており、溶媒分散性については具体的に開
示されていない。また、ポリマーを第二相粒子に吸着被覆する方法では、マトリックスと
なる溶融樹脂あるいは分散のための溶媒と混合した際に、吸着被覆したポリマーが再溶解
する可能性もある。
【0007】

【特許文献1】特開2000-86219号公報
【特許文献2】特開2000-72422号公報
【特許文献3】特開2005-162877号公報
【特許文献4】特開2005-97499号公報
【特許文献5】特開2004-276232号公報
【特許文献6】特開2005-75720号公報
【特許文献7】特開2004-2119号公報
【非特許文献1】M. J. O’Connel 他:SCIENCE, 297, 26 July (2002), 593-596.
【非特許文献2】J. W. Liu他:Chem. Phys. Lett., 348 (2001), 357-360.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題点を解決し、マトリックス材料に対する分散性のよい粒子、すなわ
ち、高分子物質に第二相粒子を含む複合体粒子及び該複合体粒子を含有するスラリーを簡
便に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、ポリカルボシランのような高分子前駆体物質の各種溶媒に対する溶解度を
詳細に検討した結果、高分子物質を溶媒に溶解し、この溶液、及び、該高分子物質を溶解
しない溶媒を混合して混合溶媒溶液を形成すると、該高分子物質粒子を混合溶媒溶液中に
均一微細に析出させ、該高分子物質粒子を含有するスラリーを容易に作製できることを見
い出した。さらに、混合溶媒溶液の溶媒を除去することにより、該高分子物質粒子を容易
に作製できることを見い出した。ここで、該高分子物質粒子を混合溶媒溶液中に析出させ
る際に、予め第二相粒子を溶液中に分散させておくことにより、第二相粒子を含有して該
高分子物質粒子を析出させることができることを見い出した。
【0010】
すなわち、本発明による高分子物質に第二相粒子を含む複合体の製造方法は、溶媒可溶
な高分子物質、該高分子物質を溶解する溶媒及び第二相粒子を混合し、さらに、この混合
液と該高分子物質を溶解しない溶媒を混合することにより混合溶媒溶液を形成し、溶解さ
れた該高分子物質の粒子を第二相粒子を核とする複合体として混合溶媒溶液中に析出させ
ることを特徴とするものである。さらに、混合溶媒溶液の溶媒を除去して複合体粒子を製
造することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法では、高分子物質の溶媒への溶解度を利用しているため、2種の溶媒
を使用した液体の混合方式により室温でも短時間の反応で容易に複合体粒子の析出が可能
であるため、複雑な装置や多大なエネルギーを必要とせず、溶媒への分散性のよい粒子の
量産に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明では、原料として、溶媒に可溶な高分子物質を用いる。本発明に適した高分子物
質の例としては、ポリカルボシラン、ポリビニルシランなどのポリシリレン類が挙げられ
る。なお、ポリシリレン類は、ポリシラン類とも称されている。また、このような高分子
物質を基本として、酸素、窒素、燐、ホウ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウムなど
の元素を含むものであっても構わない。さらには、複数の高分子物質を混合したもの、重
縮合したものであっても構わない。本発明では、溶媒に可溶な高分子物質を用いるが、加
熱などによる不融化処理の可能な高分子物質を用いることが好ましい。この不融化処理を
施すことにより、該高分子物質を該溶媒に不溶なものに変化させることができる。
【0013】
本発明における複合体の製造方法として、溶媒可溶な高分子物質、該高分子物質を溶解
する溶媒及び第二相粒子を混合し、さらに、この混合液と該高分子物質を溶解しない溶媒
を混合することにより混合溶媒溶液を形成し、混合溶媒溶液全体における該高分子物質の
溶解度が低下することにより、第二相粒子を核として高分子物質粒子を混合溶媒溶液中に
析出させてスラリーを形成することを特徴とする。さらに、混合溶媒溶液の溶媒を除去し
て複合体粒子を製造することを特徴とする。
【0014】
含有する第二相粒子は、高分子物質の溶解及び析出に用いる両種の溶媒に溶解しないも
のであれば、種類を問わない。用途に応じて、セラミックス粉末、金属粉末、金属間化合
物粉末、炭素粉末、フラーレン物質粒子などを選択することができる。相互の凝集力及び
溶媒等に対する低い親和性のために分散が容易ではない、繊維状やウィスカー状のもので
も、本発明では容易に複合化することが可能である。すなわち、第二相粒子の形状アスペ
クト比が2以上であっても適用可能である。例えば、セラミックスウィスカーやカーボン
繊維ウィスカーなどが選択できる。さらには、第二相粒子として、カーボンナノチューブ
などの直径が1μm以下の繊維状物質は特に有用である。カーボンナノチューブのみなら
ず、窒化物系や酸化物系などのナノチューブも有用である。これらの繊維状物質は、化学
組成による種類、化学結合状態の種類、また、単層又は多層の構造による種類を問わない

【0015】
ここで、該高分子物質を溶解する溶媒として、ノルマルヘキサンやキシレンなどの有機
溶媒が好適である。該高分子物質を溶解するものであれば、複数の溶媒を混合したもので
あってもよい。特に粘性の低いノルマルヘキサンが好ましい。溶解する方法は問わないが
、迅速な溶解のため、撹拌することが望ましい。一方、該高分子物質を溶解しない溶媒の
例としては、エタノール、メタノール、アセトン、水などが挙げられる。該高分子物質を
溶解しないものであれば、複数の溶媒を混合したものであってもよい。混合の容易さから
、粘性の低い溶媒が好ましい。さらには、該高分子物質を溶解する溶媒、及び、該高分子
物質を溶解しない溶媒は、互いに溶解し合うものを選択することが、均一な析出のために
好ましい。ここで、該高分子物質を溶解しない溶媒の量は析出の均一性のために多い方が
好ましく、溶解に用いた溶媒の量に対し、体積比で2倍以上が好ましい。
【0016】
混合方法は問わないが、まず該高分子物質を溶媒に溶解して溶液を形成し、次に第二相
粒子をこの溶液に混合し、該高分子物質を溶解しない溶媒を撹拌しながら、該粒子分散溶
液を該溶媒に滴下して混合溶媒溶液を形成することが好ましい。この順序で混合すること
により、該粒子分散溶液が該溶媒中に短時間で拡散し、希釈され、該高分子物質の溶解度
が低下するにつれて溶解された該高分子物質が第二相粒子を核として混合溶媒溶液中に析
出し、第二相粒子を内部に含有する複合体粒子を含有するスラリーとなる。第二相粒子の
溶媒分散が容易である場合には、該高分子物質を溶解する溶媒に第二相粒子を分散させ、
次に該高分子物質をこの混合液に溶解させ、この粒子分散溶液を該溶媒に滴下して混合溶
媒溶液を形成してもよい。
【0017】
このように、本発明の方法により、複合体粒子を溶媒中に含有するスラリーを容易に作
製することができる。このスラリーから後述するように複合体粒子を作製することができ
るが、このスラリーは、基板上に塗布して乾燥することによる複合皮膜の作製などの用途
にも用いることができる。なお、必要に応じてスラリーの溶媒を置換することもできる。
例えば、得られたスラリーから静置や遠心分離などの方法で上澄液を分離し、所望の溶媒
を加えて撹拌することにより、スラリーの溶媒を置換できる。
【0018】
本発明の方法により得られたスラリーから溶媒を除去することによって、微細な複合体
粒子を得ることができる。ここで、溶媒を除去する方法は問わない。加熱乾燥、真空乾燥
、凍結乾燥などが選択できる。とくに噴霧乾燥法は量産に適している。
【0019】
得られた複合体粒子は、その高分子物質の性質に基づき、任意の処理を施すことができ
る。例えば、高分子物質の種類によっては、該高分子物質の融点以下の温度で酸化性雰囲
気中において加熱する酸化不融化処理を施すことが可能であり、該高分子物質の分子量が
高くなるため、当初に溶解に用いた溶媒に対しても溶解を抑制することができる。また、
酸化不融化処理の代わりに電子線照射などの方法でも不融化処理をすることができる。
【実施例1】
【0020】
0.2gのポリカルボシラン高分子固体を、70mLのノルマルヘキサンに加えてマグ
ネチックスターラーで撹拌し、溶解した。これに1gの多層カーボンナノチューブ(和光
純薬製、40~70nm径)を混合し、超音波を照射して均一に分散させて黒色の粒子分散溶液
を形成した。一方、500mLのエタノールをマグネチックスターラーで撹拌し、その上
から前述の粒子分散溶液を滴下し混合溶媒溶液を形成した。その結果、第二相粒子である
多層カーボンナノチューブを含有する高分子物質粒子が析出し、混合溶媒溶液に多層カー
ボンナノチューブを含有する高分子物質粒子が分散した黒色のスラリーとなった。この黒
色のスラリーを6時間静置したが、50%以上のカーボンナノチューブは沈殿することな
く、混合溶媒溶液中に分散した状態であった。
[比較例1]
【0021】
70mLのノルマルヘキサンに実施例1と同じ多層カーボンナノチューブを1g加え、
超音波を照射して均一に分散させて黒色の混合液を形成した。一方、500mLのエタノ
ールをマグネチックスターラーで撹拌し、その上から前述の混合液を滴下し混合溶媒溶液
を形成した。その結果、混合溶媒溶液に多層カーボンナノチューブが分散した黒色のスラ
リーとなった。このスラリーを静置したところ、6時間後にはカーボンナノチューブの9
0%以上が沈殿するか、又は、1mm程度径の凝集体として液中に分散していた。
【0022】
実施例1と比較例1の結果は、カーボンナノチューブを本発明の方法を用いてポリカル
ボシラン高分子で複合化することにより、スラリー中の分散性を大幅に改善することがで
きることを示している。
【実施例2】
【0023】
実施例1で形成したスラリーの一部を取り出してガラス板上に滴下して自然乾燥させた
。図1に、得られた粒子の走査型電子顕微鏡写真を示す。この複合体粒子は、繊維状のカ
ーボンナノチューブの表面がポリカルボシランで被覆されていることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明による高分子物質に第二相粒子を含有する複合体粒子は、プラスチック材料、ゴ
ム材料などの複合添加粒子として利用できる。特に、カーボンナノチューブは一般に凝集
しやすく、溶媒への均一分散が容易ではない。しかし、該高分子物質で被覆することによ
り、溶媒に均一分散することが可能となる。すなわち、カーボンナノチューブのようにプ
ラスチック、ゴムに対する分散性が低い粒子を該高分子物質で複合化することにより、溶
媒中への分散性を大幅に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例2において、カーボンナノチューブとポリカルボシランより作製した複合体粒子の図面代用走査型電子顕微鏡写真。
図面
【図1】
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