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明細書 :高純度立方晶窒化ホウ素焼結体の製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4811853号 (P4811853)
公開番号 特開2007-070148 (P2007-070148A)
登録日 平成23年9月2日(2011.9.2)
発行日 平成23年11月9日(2011.11.9)
公開日 平成19年3月22日(2007.3.22)
発明の名称または考案の名称 高純度立方晶窒化ホウ素焼結体の製造法
国際特許分類 C04B  35/626       (2006.01)
C04B  35/583       (2006.01)
FI C04B 35/58 103R
C04B 35/58 103U
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2005-257739 (P2005-257739)
出願日 平成17年9月6日(2005.9.6)
審査請求日 平成20年8月28日(2008.8.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】赤石 實
【氏名】谷口 尚
審査官 【審査官】押見 幸雄
参考文献・文献 特開2006-021977(JP,A)
調査した分野 C04B 35/583
C04B 35/645
特許請求の範囲 【請求項1】
立方晶窒化ホウ素粉末表面を超臨界流体で清浄化し、焼結助剤を添加しないで立方晶窒化ホウ素を立方晶窒化ホウ素の熱力学安定条件下の5GPa,1400℃以上の高圧高温条件下で焼結する立方晶窒化ホウ素焼結体の製造法であって、
出発立方晶窒化ホウ素粉末の粒径幅が0.5~2μmであり、
前記超臨界流体が酸素を含有しない流体からなり、流体源として、固体のポリ塩化ビニリデン又はポリ塩化ビニルを使用することを特徴とするヴィカース硬さ45GPa以上の高純度立方晶窒化ホウ素焼結体の製造法。
【請求項2】
請求項1に記載の立方晶窒化ホウ素焼結体の製造法において、立方晶窒化ホウ素粉末表面を超臨界流体で清浄化する方法であって、前記超臨界流体が酸素を含有しない流体からなり、流体源として、固体のポリ塩化ビニリデン又はポリ塩化ビニルの1種類または2種類を使用することを特徴とする超臨界流体による立方晶窒化ホウ素粉末表面の清浄化法。
【請求項3】
請求項記載の立方晶窒化ホウ素の微粉末を請求項記載の流体源と積層し、金属カプセルに封入し、高温高圧下で焼結することを特徴とする請求項1に記載の立方晶窒化ホウ素焼結体の製造法。
【請求項4】
請求項1に記載の立方晶窒化ホウ素焼結体の製造法において、立方晶窒化ホウ素粉末表面を超臨界流体で清浄化する方法であって、前記超臨界流体が酸素を含有しない流体からなり、流体源として使用する固体のポリ塩化ビニリデンが食品包装用ラップフィルムを使用することを特徴とする立方晶窒化ホウ素粉末表面の清浄化法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐摩耗性と耐熱性を有し、例えば、焼結金属等の鉄族系金属系難削材
料の仕上げ切削工具、金属合金の超精密加工金型や異種複合材料の加工等に適用した場合
、優れた切削性能を発揮することが期待される高純度立方晶窒化ホウ素焼結体の製造法に
関する。
【背景技術】
【0002】
高純度立方晶窒化ホウ素(以下cBNと略記)焼結体の製造法は、六方晶窒化ホウ素(以
下hBNと略記)や熱分解窒化ホウ素(以下pBNと略記)を反応焼結することによる高純度立
方晶窒化ホウ素焼結体の超高圧装置を用いた製造法(特許文献1)、hBNに酸性水溶液を
添加し、高圧高温処理する高純度立方晶窒化ホウ素焼結体の製造法(特許文献2)等hBN
からcBNへの変換反応を利用した反応焼結による高純度立方晶窒化ホウ素焼結体の製造法
が良く知られている。
【0003】
これらの方法は大変優れた高純度焼結体の製造法であるが、製造条件が7GPa以上と非常
に高いことや変換反応に伴う体積変化が大きく試料の変形が大きい等製造上に問題点があ
る。試料の変形が少ない点を重視すれば、cBN粉末を出発物質に用いることにより、この
問題点は解決される。本発明者らは、このような観点から微粒cBN粉末を反応焼結よりも
低い圧力条件で超高圧焼結することにより、高純度cBN焼結体の製造法を開発した(特許
文献3)。
【0004】

【特許文献1】特開平03-159964号公報
【特許文献2】特開平05-221730号公報
【特許文献3】特開2004-196567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが、最近開発した微粒cBN焼結体はcBNのみからなる高純度焼結体であるもの
の、焼結体の粒子径が限定されていることや高温条件下での耐熱性が十分でない等問題点
がある。耐熱性に優れた平均粒子径数μmの高純度cBN焼結体を5GPa領域で製造することが
可能な技術の開発を目的とする。
【0006】
立方晶窒化ホウ素焼結体の耐熱性を向上させるためには、立方晶窒化ホウ素粒子間の直
接結合の割合を増加させることが必要である。立方晶窒化ホウ素粒子の異常粒成長を抑制
し、それに加えて結合の割合を増加させるためには、単に焼結温度を高くすれば良いとは
言いがたい。
【0007】
微細な粒子からなる高純度立方晶窒化ホウ素焼結体の耐熱性を向上させるためには、立
方晶窒化ホウ素粒子の異常粒成長を抑制して、焼結体の硬度を高くすることが必要である
。このためには、適切な焼結助剤を探索しなければならない。焼結助剤の構成要件として
、助剤として機能した後、殆ど焼結体内に残らない物質が望ましい。
【0008】
本発明者らは、cBNの合成触媒として機能し、高圧高温条件下では、超臨界流体を生成
する物質を中心に助剤探索を行った。助剤候補物質は、具体的には、メラミン、塩化アン
モニウム、水、及び塩化アンモニウムの水溶液である。詳細は省略するが、前記物質中に
cBNの高圧焼結に有効な焼結助剤を見出すことは出来なかった。その理由として、アンモ
ニア流体を生成する物質はcBNと反応して、高圧高温下で化合物を生成してしまい、灰色
の塊状体は合成できるものの、高硬度焼結体は合成できない。水の場合は白色から薄い乳
白色の塊状物は合成できるものの、塊状物に数多くのクラックが認められ、高硬度焼結体
は得られなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、助剤候補物質の選択基準を再考した。cBNの合
成触媒の中から焼結助剤を探索するとの方針を転換し、cBN粒子表面を清浄化するために
超臨界流体を利用することによって上記課題を解決した。cBN粒子表面には、粉末X線回折
法等の分析手段では検出不可能な酸素等不純物が存在していると仮定し、これらの不純物
をcBN表面から除去する方法を考えることとした。このような観点からすれば、酸素を含
む物質を焼結助剤とする考えは全く当て外れである。
【0010】
ホウ素酸化物を溶解除去するために、塩酸が良く用いられている。しかしながら、塩酸
は塩化水素の水溶液で酸素を大量に含んでいる。酸素を含有しない系において、cBN結晶
の表面処理の既存の報告を調べた。その結果、塩化水素中でcBNの結晶を3時間処理すると
cBN結晶表面がエッチングされる(H. Sachdev and M. Strauss, Selective etching of b
oron nitride phases, Diamond and Related Materials, vol9 (2000) 614-619)。酸素
を含まない系で酸素を除去するためには、純粋の塩化水素や水素でcBN表面を清浄化すれ
ばよい。処理後のcBN粉末を高圧焼結するためには、カプセル等に充填しなければならな
い。この際に空気と粉末を遮断しなければ、再び粉末表面が酸素で汚染されてしまう。
【0011】
cBN粉末表面を理想的に清浄化するためには、高圧高温焼結過程の1プロセスとして清
浄化処理を行うことが望ましい。本発明者は、ダイヤモンド焼結体の製造法を開発した時
に、固体からの分解生成物を用いて、CO2-H2Oの超臨界流体を焼結原料を充填したカプセ
ル内に封入する技術を既に開発した(特願2002-332781、特開2004-168555号公報)。この技
術を利用すれば、超臨界流体を封入することは容易である。塩化水素や水素の超臨界流体
を得るためには、炭素、水素、及び塩素からなる物質を高圧高温条件下で分解すれば、塩
化水素や水素の超臨界流体を得ることが可能である。
【0012】
塩化水素や水素の超臨界流体を得るために、炭素、水素、塩素からなる容易に入手可能
な物質である高分子物質を流体相源に使用し、高圧高温条件下で高分子物質を分解すれば
、これらの超臨界流体を得ることが可能である。流体相源となる候補物質として、容易に
入手可能なポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン等が挙げられる。
【0013】
前記塩化水素等の超臨界流体をcBN粉末と共存させて、高圧高温処理した時に、粉末表
面が清浄化できたかどうかの判断をどのようにするかを種々考えてみた。その結果、超臨
界流体を共存させなければ、全く粒成長の起らないような低温条件下で、粒成長がみとめ
られるかどうかを判断基準とすることとした。即ち、粉末表面に異物質が存在すれば、粒
子間の結合は阻害されて粒子間の結合の形成とそれに続く粒成長は極めて難しい。
【0014】
一方、粒子表面が清浄化されれば、明白な粒成長が起るはずである。即ち、cBN粒子表
面が清浄化されれば、異物質は除去されて、cBN粒子間に結合が形成されてcBNの異常粒成
長が観察されると考えた。
【0015】
市販の粒径幅0~1μmのcBN粉末(昭和電工社製品)とポリ塩化ビニル粉末を積層後Taカ
プセルに封入して、cBNの熱力学的安定条件下の5.2GPa,1250℃の条件下、30分間高圧高温
処理した。その結果、回収カプセルからは塩酸臭がし、cBN表面のTaを研削除去してから
、表面及び破面を光学顕微鏡、レーザー顕微鏡及び走査型電子顕微鏡を用いて観察した。
図1に示すように、数μmから20μmを超える異常粒成長粒子が認められた。
【0016】
図1から明らかなように、低温条件下での処理にも拘わらず、cBN粒子の粒成長が顕著
に起ることが明らかとなった。異常粒成長粒子が存在する不均質焼結体であるため、焼結
体としては望ましいものではないが、ポリ塩化ビニルの分解によって生成したと考えられ
る超臨界流体の塩化水素と水素の混合流体がcBN粒子表面の清浄化に有効であることは明
らかである。超臨界流体源を添加しない系において、当該高圧高温処理条件下では、全く
異常粒成長は認められない。
【0017】
ポリ塩化ビニルの代りに、ポリ塩化ビニリデンやポリエチレンを用いても、これらの物
質とcBN粉末を高圧高温処理した場合、処理条件は異なるもののcBN粒子の異常粒成長を確
認した。出発cBNの粒子径、超臨界流体相の原料と量、焼結温度、焼結圧力及び焼結時間
を最適化し、高純度cBN焼結体の製造法を確立することとした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
出発物質の粒子径が小さいと異常粒成長してしまうことから、出発物質の粒子径を最適
化することにより、異常粒成長の全く認められない高硬度cBN焼結体の合成が可能である
と考えられる。このような観点から、粒径幅0.5~2μmのcBN粉末及び粒径幅2-4μmのcBN
粉末を超臨界流体の塩化水素共存下で高温高圧処理することにした。この処理を行うため
に、ダイヤモンド焼結体の製造法(特開2003-226578)と同様なTaカプセルを使用するこ
ととした。なお、cBN超微粒子については規格化された測定方法に基づく粒度規格は存在
しないが、粒径幅 を0~1/10、0~1/4、0~1/2、0~1、0~2、1~3、2~4、4~8のように
区分して標準粒度規格(中心粒径は粒径幅 の中間値)としたものに基づいて市販されてお
り、本明細書において、cBN超微粒子の粒径幅 はこのような区分に基づくものである。
【0019】
図2は、cBN粉末を焼結するための焼結体合成用カプセルの一例を示す断面図である。
Taカプセル1の内部にcBN粉末2、Ta箔3、ポリ塩化ビニリデン4を交互に重ね、上下に
黒鉛円盤5を配置している。具体例では、試料容器にTaカプセルを使用し、カプセルの下
部に黒鉛円盤を配置した。黒鉛円盤上にTa箔を3枚を配置後、粒径幅0.5~2μmのcBN粉末
を250mgを秤量し、このcBN粉末上に6mgのポリ塩化ビニリデンを積層し、このポリ塩化ビ
ニリデン上に同じ粒径幅のcBN粉末を250mgを充填してcBN粉末上にTa箔の円板を3枚のせ
た。さらに、粒径幅0~1μmのcBN粉末を250mgを二つ秤量し、cBN粉末の間に9mgのポリ塩
化ビニリデンをサンドイッチ状に配置し、cBN粉末上をTa箔で覆った。
【0020】
同様な方法で粒径幅2~4μmのcBN粉末とポリ塩化ビニリデンを6mgを挟んで同量のcBN粉
末をサンドイッチ状に充填して、その上にTa箔を覆った。その後、上部に黒鉛円盤を加圧
充填した。Taカプセルからはみ出た黒鉛円盤を削り落として試料カプセルを完成した。こ
のTaカプセルを圧力媒体中に組みこんで、圧力5.2GPa, 1550℃の条件で20分間焼結した
。ポリ塩化ビニリデン原料として、食品包装用のラップフィルムを円盤状に加工して使用
した。
【0021】
Taカプセルから試料を回収した。試料一部に層状割れが認められるものの、粒径幅0.5
~2μm及び粒径幅2~4μmのcBN粉末には異常粒成長は認められなかった。一方、粒径幅0
~1μmのcBN粉末試料には、異常粒成長が認められた。異常粒成長がcBN粉末の粒子径に依
存することは明らかである。層状割れは認められるが、異常粒成長の認められなかった粒
径幅0.5~2μm及び粒径幅2~4μmのcBN粉末を中心に流体相源となるポリ塩化ビニリデン
の添加量の最適化を図り、層状割れのない高硬度焼結体を作製することにした。
【0022】
層状割れの原因をポリ塩化ビニリデンの添加量が多過ぎるためと考えて、この量を少な
くして、実験を行うこととした。粒径幅0.5~2μmのcBN量は同様に250mgとし、250mgのcB
N粉末の間に3mgのポリ塩化ビニリデンを配置し、この上に同量のcBN粉末を充填した。500
mgのcBN粉末に対し、3mgのポリ塩化ビニリデンを配置した。この試料2組と粒径の異な
る粒径幅2~4μmのcBN粉末500mgの間に1.5mgのポリ塩化ビニリデンを配置した試料1組の
合計6枚のcBN試料を合成可能なTa製試料カプセル作製した。このカプセル上下には前項
記載のように、黒鉛円盤を配置した。少量のポリ塩化ビニリデンをcBN粉末間に均質に配
置するため、ポリ塩化ビニリデン製のフォイルを円盤状に加工して使用した。
【0023】
6個の回収試料は何れも層状割れなく回収された。回収試料の上下面をダイヤモンドホィ
ール研削し、研削後の試料を光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡及びレーザー顕微鏡を用いて
組織観察を行った。粒径幅0.5~2μmのcBN粉末から得られた試料は、研削抵抗も高く、層
状割れも無い、異常粒成長の全く認められない均質組織の焼結体であった。均質組織であ
る焼結体の二次電子像を図3に示す。この図から明らかなように、cBN粒子の粒界がはっ
きりしない、緻密な組織であることが容易に理解できる。一方、粒径幅2~4μmの試料の
研削抵抗は低く、良焼結体とは言いがたい。
【0024】
粒径幅0.5~2μmのcBN粉末から得られたcBN焼結体のX線回折図形を測定した結果、実質
的にcBNの回折線から構成される回折図形が得られた。焼結体の押し込み硬さを測定、耐
熱性評価、粒子の融合状態観察等の目的に、ダイヤモンドホィール研削した焼結体を研摩
するか細かいダイヤモンド粒子からなるダイヤモンドホィールで再研削した。研摩したcB
N焼結体のヴィカース硬さ(荷重:49N、以下の硬さ測定は記載がない場合、同一荷重条件
での結果である。)を測定した結果、その硬さは、45GPa以上であった。焼結体の粒子径
を明らかにすべく研摩面の走査型電子顕微鏡を観察した。粒内破壊を主体とした組織であ
るため、平均粒子径は正確に決定出来なかったが、異常粒成長は全く認められなかった。
高硬度、高純度cBN焼結体が、cBN砥粒やcBNの複合焼結体の工業的生産と同等な圧力条件
下で製造可能であることが明らかとなった。
【0025】
前記cBN焼結体の高温下の機械的特性を評価するため、焼結体を真空条件下で高温処理
し、処理前後の結晶相、押し込み硬さ及びクラックの導入の有無を調べて評価することに
した。焼結体をhBNの坩堝に入れて、高周波炉を用いて、真空条件下、1000℃, 30分の条
件で熱処理を行った。処理後の焼結体の硬さは、45GPa以上で、処理前後で硬さに違いは
認められなかった。
【0026】
結晶相については、処理後の試料は実質的にcBN相から構成されていたが、hBNの(002)
の回折線の位置を拡大して調べるとバックグランドレベルよりも僅か高い強度のピークが
認められた。処理前のX線回折図形を部分的に拡大すると、コンプレッスドhBNの回折線に
相当する位置に僅かな膨らみが認められた。クラックに関しては、一面には全く認められ
なかったが、反対面には、マイクロクラックが幾つか認められた。
【0027】
焼結体の処理前後の重量変化は、処理前;0.1517gr, 処理後;0.1510grと0.7mg減少し
ていた。1000℃, 30分の真空中熱処理により、焼結体のヴィカース硬度の変化は認められ
なかったこと等から、5.2GPa, 1550℃, 20minの条件で得られたcBN焼結体は耐熱性に優れ
た高硬度焼結体である。
【0028】
本発明者らは、本発明を実施するために、ベルト型超高圧装置を用いた。ベルト型超高
圧装置のみならず、本発明と同等の圧力を発生可能な多面体アンビル装置等他の形式の超
高圧装置を使用して、本発明を実施することは可能である。本発明を実施するためには、
超臨界流体によるcBN粉末の清浄化プロセスとともに、圧力・温度条件が大変重要である
。以下の圧力・温度条件の決定法を記載する。
【0029】
圧力の値に大きな影響を及ぼす要因として、圧力伝達媒体の材質や試料構成が挙げられ
る。例えば、cBNと添加物の混合粉末を超硬合金上に積層し、圧力定点物質をこの超硬合
金積層試料の間に配置して、圧力を測定した場合と全く超硬合金積層試料を配置しない場
合では、一定荷重下における発生圧力は異なる。
【0030】
本発明における圧力決定は、圧力定点物質をNaCl-10wt%ZrO2混合粉末の成型体上に配置
し、定点物質の相転移を検出して、油圧と発生圧力の関係を室温条件下で求めた。定点物
質として、BiI-II(2.54GPa), TlII-IIIi(3.67GPa)及びBaI-II II(5.5GPa)を用いた。通常
実験では、予め決定した油圧と発生圧力の関係から、所望の圧力に相当する油圧を求めて
、油圧制御により圧力を制御した。温度は圧力条件に依存して、投入電力を同じにしても
、発生温度は異なる。
【0031】
本発明の高圧高温実験では、可能な限り通常実験に近い試料構成を用い、試料内部に配
置・固定した熱電対の熱起電力から種々の投入電力下で温度を測定した。この関係を幾つ
かの圧力条件下で求め、中間の圧力下の温度はこれらの電力対温度の関係から推定した。
本発明では、温度測定にW5%Re-W26%Re熱電対を用い、熱起電力の圧力補正をせずに、熱起
電力から求めた温度を温度として使用した。
【0032】
即ち、本発明は、下記のとおりである。
立方晶窒化ホウ素粉末表面を超臨界流体で清浄化し、焼結助剤を添加しないで立方晶窒化ホウ素を立方晶窒化ホウ素の熱力学安定条件下の5GPa,1400℃以上の高圧高温条件下で焼結する立方晶窒化ホウ素焼結体の製造法であって、出発立方晶窒化ホウ素粉末の粒径幅が0.5~2μmであり、前記超臨界流体が酸素を含有しない流体からなり、流体源として、固体のポリ塩化ビニリデン又はポリ塩化ビニルを使用することを特徴とするヴィカース硬さ45GPa以上の高純度立方晶窒化ホウ素焼結体の製造法。

【0034】
先に記載の立方晶窒化ホウ素焼結体の製造法において、立方晶窒化ホウ素粉末表面を超臨界流体で清浄化する方法であって、前記超臨界流体が酸素を含有しない流体からなり、流体源として、固体のポリ塩化ビニリデン又はポリ塩化ビニルの1種類または2種類を使用することを特徴とする超臨界流体による立方晶窒化ホウ素粉末表面の清浄化法。

【0036】
立方晶窒化ホウ素の微粉末を流体源と積層し、金属カプセルに封入し、高温高圧下で焼結することを特徴とする先に記載の立方晶窒化ホウ素焼結体の製造法。

【0037】
先に記載の立方晶窒化ホウ素焼結体の製造法において、立方晶窒化ホウ素粉末表面を超臨界流体で清浄化する方法であって、前記超臨界流体が酸素を含有しない流体からなり、流体源として使用する固体のポリ塩化ビニリデンが食品包装用ラップフィルムを使用することを特徴とする立方晶窒化ホウ素粉末表面の清浄化法。


【0038】
以下に本発明の立方晶窒化ホウ素焼結体の製造法を実施例に基づいて具体的に説明する

【実施例1】
【0039】
粒径幅0.5~2μmのcBN粉末(昭和電工社製品)250mgを直径11.2mmの層状にならした上
に1.5mgのポリ塩化ビニリデンフィルムの円盤を配置し、その上に同量のcBN粉末を加圧充
填した。このcBN粉末試料を他のcBN試料とともに、Taカプセル充填した。前記カプセル作
製の際記載したように、Taカプセル上下には、黒鉛円盤を配置した。このカプセルを圧力
媒体とともに、5.5 GPa, 1550℃, 20分間の条件で高圧高温処理した。処理試料は層状割
れも無く、回収された。回収試料の上下面を研削後、試料をダイヤモンドペーストを研摩
剤に用いて研摩した。研摩試料のヴィカース硬さを測定した所、45GPa以上であった。異
常粒成長の全く認められない高硬度cBN焼結体が得られた。
【0040】
比較例1
製造条件の下限を明らかにするため、試料構成は実施例1と同じにし、合成条件を低い
圧力条件下の3.8GPa, 1350℃, 30分間の条件で高圧高温処理した。この合成条件は、cBN
の熱力学的安定条件である。処理試料を研削後、焼結体のヴィカース硬さを測定した。そ
の硬さは10GPa程度で、高硬度焼結体は得られなかった。
【0041】
比較例2
製造条件の下限を明らかにするため、実施例1と同じように試料を作製し、4.6GPa, 13
50℃, 30分間の条件で高圧高温処理した。処理試料を研削したが、研削抵抗の低い試料で
あった。光学顕微鏡観察後、ヴィカース硬さを測定したが、明瞭な圧痕を得られなかった
。高硬度焼結体を製造するためには、この合成条件よりも高い圧力、温度条件が必要であ
る。
【実施例2】
【0042】
1.5mgのポリ塩化ビニリデンフィルムに代えて、2.5mgのポリエチレンフィルムを用い、
5.2 GPa, 1550℃, 30分間の条件とした以外は、実施例と全く同じ条件で高圧高温処理
した。回収試料を上下面研削後、光学顕微鏡観察した。異常粒成長の認められない、均質
組織の焼結体であった。この焼結体の微細組織を明らかにするため、焼結体破面の走査型
電子顕微鏡観察を行った。二次電子像を図4に示す。この図から明らかなように、焼結体
はcBN粒子の粒内破壊を中心とした組織である。この試料のヴィカース硬さを測定した所
、40GPa以上であった。
【0043】
比較例3
9mgのポリエチレンフィルムを用いた以外は、実施例2と全く同じ条件で高圧高温処理
した。回収試料は層状割れをしていた。ポリエチレンの添加量が多いためと思われる。
【実施例3】
【0044】
5.2 GPa, 1680℃, 20分間の条件とした以外は実施例1と同じ条件で高圧高温処理した
。回収試料を研削後光学顕微鏡観察した。異常粒成長の全く認められない、均質な組織の
焼結体であった。研削後、焼結体のヴィカース硬さを測定した。その硬さは、50GPa±5GP
aであった。この焼結体のX線回折図形を測定した。この焼結体のX線回折図形を図5に示
す。この図から明らかなように、実質的にcBNの回折線のみからなる焼結体であった。こ
の回折図形を部分的に拡大すると、コンプレッスドhBNの回折線に相当する所に、非常に
小さいブロードな回折線が認められた。
【0045】
焼結体の耐熱性を評価するため、真空中、1000℃, 30分間加熱処理した。加熱処理前0.
1861grの重量が、処理後0.1857grと0.4mgの重量減少が認められた。処理後の焼結体にク
ラックは全く認められなかった。処理後のX線回折図形を測定した結果、非常に小さい回
折線がhBNの(002)の回折線の位置に認められるものの、実質的にcBNの回折線のみからな
る焼結体であった。焼結体の押し込み硬さを測定した結果、熱処理前と変っていなかった
。耐熱性に優れた高純度cBNの焼結体が5.2 GPa, 1680℃の条件でも合成できることが明ら
かとなった。
【0046】
比較例4
粒径幅2~4μmのcBN粉末(GE社製品)を用いた以外は実施例3と同じ条件で高圧高温処
理した。回収試料を研削後、焼結体のヴィカース硬さを測定した。その結果、明瞭な圧痕
が観測不可能な部分と比較的明瞭な圧痕が観察される部分が存在する不均質焼結体であっ
た。
【実施例4】
【0047】
粒径幅0.5~2μmのcBN粉末(昭和電工社製品)250mg上に1.5mgのポリ塩化ビニリデンフ
ィルムの円盤を配置し、その上に同量のcBN粉末を加圧充填した。このcBN粉末試料を比較
試料とともに、Taカプセル充填した。前記カプセル作製の際記載したように、Taカプセル
上下には、黒鉛円盤を配置した。このカプセルを圧力媒体とともに、5.2 GPa, 1450℃, 2
0分間の条件で高圧高温処理した。処理試料は層状割れも無く、回収された。X線回折図形
を測定した結果、実質的にcBN回折線のみからなる高純度焼結体得られた。研削後、試料
をダイヤモンドペーストを研摩剤に用いて研摩した。研摩試料のヴィカース硬さを測定し
た所、50GPa±5GPaであった。高純度cBN焼結体が1450℃の条件できることが明らかとなっ
た。
【0048】
比較例5
粒径幅0.5~2μmのcBN粉末(昭和電工社製品)に10重量%の粒径幅0~1μmのcBN粉末を
アセトン存在下、超音波混合し、混合粉末を調製した。この混合粉末を用いて実施例4と
同一条件で高圧高温処理した。回収試料に層状割れは全く認められなかった。試料の上下
面を研削後、光学顕微鏡観察した。試料には、異常粒成長が認められた。異常粒成長の原
因は添加した粒径幅0~1μmのcBN粒子に起因するものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の高純度cBN焼結体とその製造法で得られる高純度焼結体は従来と全く異なるcBN
粉末表面の清浄化処理プロセスを導入することにより、高硬度、高純度cBN焼結体を実現
した物で、cBN粒子間に直接結合が形成されていると考えられる微細組織を示している。
機械加工工具として、優れた切削性能が期待できる。さらには、本発明で開示した超臨界
流体によるcBN粉末表面の清浄化法は、円筒状のcBN焼結体にも容易に応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】高温高圧処理cBNの破面の二次電子像を示す図面代用写真。異常粒成長したcBN粒子の一例。
【図2】cBN粉末を焼結するための焼結体合成用カプセルの一例を示す断面図である。
【図3】高純度cBN焼結体破面の二次電子像を示す図面代用写真。異常粒成長の認められない均質組織の焼結体。
【図4】高純度cBN焼結体破面の二次電子像を示す図面代用写真。異常粒成長の全く認められない均質組織の焼結体。
【図5】実施形態に係る、実質的にcBNの回折線からなる高純度cBN焼結体のX線回折図形。
【符号の説明】
【0051】
1:Taカプセル
2:cBN粉末
3:Ta箔
4:ポリ塩化ビニリデン
5:黒鉛円盤
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4