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明細書 :銅酸化物高温超伝導体固有ジョセフソン接合を用いた量子ビット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5233039号 (P5233039)
公開番号 特開2007-081289 (P2007-081289A)
登録日 平成25年4月5日(2013.4.5)
発行日 平成25年7月10日(2013.7.10)
公開日 平成19年3月29日(2007.3.29)
発明の名称または考案の名称 銅酸化物高温超伝導体固有ジョセフソン接合を用いた量子ビット
国際特許分類 H01L  39/22        (2006.01)
FI H01L 39/22 ZAAA
請求項の数または発明の数 9
全頁数 6
出願番号 特願2005-270031 (P2005-270031)
出願日 平成17年9月16日(2005.9.16)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2005年3月29日 社団法人応用物理学会発行の「2005年(平成17年)春季 第52回 応用物理学関係連合講演会講演予稿集 第1分冊」第593頁に発表
特許法第30条第1項適用 2005年3月29日 埼玉大学において開催された第52回応用物理学関係連合講演会で発表
特許法第30条第1項適用 2005年9月2日 The American Physical Society発行の「Physical Review Letters」Vol.95 No.10 p.107005に発表
特許法第30条第2項適用 2005年8月19日 The American Physical Society発行の「Physical Review B」Vol.72 No.5 p.052506に発表
審査請求日 平成20年9月8日(2008.9.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】猪股 邦宏
【氏名】佐藤 茂雄
【氏名】中島 康治
【氏名】田中 秋広
【氏名】高野 義彦
【氏名】羽多野 毅
【氏名】王 華兵
審査官 【審査官】鈴木 聡一郎
参考文献・文献 特開2005-252277(JP,A)
Shiro KAWABATA et al.,"Effect of zero-energy bound states on macroscopic quantum tunneling in high-Tc superconductor junctions",Physical Review B,米国,The American Physical Society,2005年 8月19日,Vol.72, No.5,p.052506-1~052506-4
Joachim ANKERHOLD et al.,"Enhancement of Macroscopic Quantum Tunneling by Landau-Zener Transitions",Physical Review Letters,米国,The American Physical Society,2003年 7月 4日,Vol.91, No.1,p.016803-1~016803-4
John M. MARTINIS et al.,"Rabi Oscillations in a Large Josephson-Junction Qubit",Physical Review Letters,米国,The American Physical Society,2002年 9月 9日,Vol.89, No.11,p.117901-1~117901-4
S. KAWABATA et al.,"Macroscopic quantum tunneling and quasiparticle dissipation in d-wave superconductor Josephson junctions",Physical Review B,米国,The American Physical Society,2004年10月29日,Vol.70, No.13,p.132505-1~132505-4
Yoshihiko TAKANO et al.,"d-like symmetry of the order parameter and intrinsic Josephson effects in Bi2Sr2CaCu2O8+δ cross-whisker junctions",Physical Review B,米国,The American Physical Society,2002年 4月 4日,Vol.65, No.14,p.140513-1~140513-4
猪股 邦宏,「固有ジョセフソン接合におけるマクロスコピックカンタムトンネリングに関する研究,博士学位論文の要旨及び審査結果の要旨,日本,東北大学,2005年11月,第125-129頁,URL,http://hdl.handle.net/10097/13027
調査した分野 H01L 27/18
H01L 39/00- 39/24
JST7580(JDreamII)
JSTPlus(JDreamII)
WPI
IEEE Xplore
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特許請求の範囲 【請求項1】
銅酸化物高温超伝導体を用いて形成した固有ジョセフソン接合により構成され、かつ、量子トンネル効果を示すことを特徴とする量子ビット。
【請求項2】
銅酸化物高温超伝導体として、Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体を用いることを特徴とする請求項1記載の量子ビット。
【請求項3】
Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体が、BiSrCaCu8+δであることを特徴とする請求項2記載の量子ビット。
【請求項4】
Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体が、BiSrCaCu10+δであることを特徴とする請求項2記載の量子ビット。
【請求項5】
Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体が、BiSrCuO6+δであることを特徴とする請求項2記載の量子ビット。
【請求項6】
銅酸化物高温超伝導体として、Tl(タリウム)系銅酸化物高温超伝導体を用いることを特徴とする請求項1記載の量子ビット。
【請求項7】
Tl(タリウム)系銅酸化物高温超伝導体が、TlBaCaCuであることを特徴とする請求項6記載の量子ビット。
【請求項8】
銅酸化物高温超伝導体として、Y(イットリウム)系銅酸化物高温超伝導体を用いることを特徴とする請求項1記載の量子ビット。
【請求項9】
Y(イットリウム)系銅酸化物高温超伝導体が、YBaCu7-δであることを特徴とする請求項8記載の量子ビット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、銅酸化物高温超伝導体固有ジョセフソン接合を用いた量子ビットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の計算原理とは異なり量子力学に由来する重ね合せの原理を用いる量子計算の提案がなされている。量子計算では超並列計算が可能であり、インターネットなどで利用されている暗号が解読できるなど驚異的な計算能力を示すことが証明されている。
【0003】
ところが、量子計算の実現には、最先端の加工技術を利用した極微細デバイス作成技術や、極低温環境下での微小信号測定技術などが必要であり、実現例はまだ数えるほどしかない。
【0004】
その中で超伝導体を用いた量子計算機は、超伝導という現象がマクロスコピックな現象であることから比較的製作が容易であり、また超伝導体が固体デバイスであることから、その実現が強く期待されている。
【0005】
このような状況のもとで、ジョセフソン接合の波動関数の位相差を量子数とする量子ビットの提案が非特許文献1になされている。しかしながら、量子ビットの動作温度は高いとはいえず、量子計算機の実現のためには、さらに高い動作温度の量子ビットが必要とされている。

【非特許文献1】J. M. Martinia, et al., Phys. Rev. Lett. 89. 117901 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この出願の発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、より高い動作温度で安定して動作し、量子計算機の実現に寄与できる量子ビットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この出願の発明は、上記課題を解決するため、第1には、銅酸化物高温超伝導体を用いて形成した固有ジョセフソン接合により構成され、かつ、量子トンネル効果を示すことを特徴とする量子ビットを提供する。
【0008】
また、第2には、上記第1の発明において、銅酸化物高温超伝導体として、Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体を用いることを特徴とする量子ビットを提供する。
【0009】
また、第3には、上記第2の発明において、Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体が、BiSrCaCu8+δであることを特徴とする量子ビットを提供する。
【0010】
また、第4には、上記第2の発明において、Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体が、BiSrCaCu10+δであることを特徴とする量子ビットを提供する。
【0011】
また、第5には、上記第2の発明において、Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体が、BiSrCuO6+δであることを特徴とする量子ビットを提供する。
【0012】
また、第6には、上記第1の発明において、銅酸化物高温超伝導体として、Tl(タリウム)系銅酸化物高温超伝導体を用いることを特徴とする量子ビットを提供する。
【0013】
また、第7には、上記第6の発明において、Tl(タリウム)系銅酸化物高温超伝導体が、TlBaCaCuであることを特徴とする量子ビットを提供する。
【0014】
また、第8には、上記第1の発明において、銅酸化物高温超伝導体として、Y(イットリウム)系銅酸化物高温超伝導体を用いることを特徴とする量子ビットを提供する。
【0015】
さらに、第9には、上記第8の発明において、Y(イットリウム)系銅酸化物高温超伝導体が、YBaCu7-δであることを特徴とする量子ビットを提供する。
【発明の効果】
【0016】
この出願の発明によれば、上記構成を採用したので、従来の量子ビットに比べ動作温度が一桁以上高く、安定して動作する量子ビットが提供可能となる。したがって、量子計算機の実現への寄与が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0018】
この出願の発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、超伝導体としては金属である低温超伝導体と酸化物である高温超伝導体があるが、そのうちの酸化物である高温超伝導体において特定の銅酸化物高温超電導体を用いて形成された固有ジョセフソン接合を利用して量子ビットを構成すると、動作温度が従来の金属超伝導体に比べ1桁以上大きくなり、動作のばらつきも抑制できることを確認し、この出願の発明に至った。
【0019】
すなわち、この出願の発明の量子ビットは、銅酸化物高温超伝導体を用いて形成した固有ジョセフソン接合により構成されることを特徴とする。
【0020】
銅酸化物高温超伝導体としては、Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体、Tl(タリウム)系銅酸化物高温超伝導体、Y(イットリウム)系銅酸化物高温超伝導体のいずれかを用いることができる。
【0021】
Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体としては、種々の材料を使用することができるが、たとえばBiSrCaCu8+δ、BiSrCaCu10+δ、BiSrCuO6+δ使用が好ましい。
【0022】
Tl(タリウム)系銅酸化物高温超伝導体としても、種々の材料を使用することができるが、たとえばTlBaCaCuの使用が好ましい。
【0023】
Y(イットリウム)系銅酸化物高温超伝導体としても、種々の材料を使用することができるが、たとえばYBaCu7-δの使用が好ましい。
【0024】
この出願の発明において、上記の銅酸化物高温超伝導体を用いて固有ジョセフソン接合を形成する場合、ウィスカー結晶やバルク結晶の上に、公知の収束イオンビーム(FIB)法や両面加工法を用いて接合形成を行うことができる。
【0025】
以下、BiSrCaCu8+δ(Bi-2212と記す)を用いた場合を例に具体例に説明を行うが、もちろんこの出願の発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
図1にこの出願の発明によるBi-2212を用いた固有ジョセフソン接合の走査型イオン顕微鏡写真像を示す。図中IJJsとして示されている部分が固有ジョセフソン接合部分であり、FIB法を用いて形成したものである。Bi-2212ではc軸方向に超伝導CuO層と絶縁BiO層又はSrO層が交互に積層されていることが知られている。
【0027】
このサンプルを希釈冷凍機(He/He Oxford dilution refrigator)のチャンバー内に配置し、固有ジョセフソン接合の電流-電圧特性上におけるスイッチング電流分布P(Isw)の温度依存性を測定した。測定は四端子法により行った。このP(Isw)は固有ジョセフソン接合の第一電流ブランチ上において測定した。P(Isw)の分布幅σは、ジョセフソン接合の位相モデルにおいて接合間位相差のトンネル確立に相当し、σの温度依存性σ(T)はクロスオーバー温度とよばれる温度を境に、温度に対して独立に振る舞う。この振る舞いが量子トンネル効果(MQT)を裏付ける実験データであり、クロスオーバー温度は量子トンネル効果(MQT)が発現する温度である。
【0028】
図2に、4.2Kにおける固有ジョセフソン接合の電流-電圧特性とスイッチング電流分布を示す。また、図3(a)に、スイッチング電流分布の温度依存性を示し、図3(b)にスイッチング電流分布幅σの温度依存性を示す。
【0029】
この実験結果から、この出願の発明の実施例では、金属系の超伝導体を用いたジョセフソン接合の場合に比べて10倍程度高温である約1Kで量子トンネル効果(MQT)が発現することが確認された。量子トンネル効果(MQT)は量子ビットの量子状態を読み出すときに利用できる物理現象である。したがって、この接合を用いた構成される量子ビットの動作温度も約1Kとなる。
【0030】
また、固有ジョセフソン接合は一般に多数のジョセフソン接合が直列に連なった構造となっているが、上記実施例により、このような接合においてもごく零バイアス近傍ではその特性が単一のジョセフソン接合と等価になることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この出願の発明によるBi-2212を用いた固有ジョセフソン接合の走査型イオン顕微鏡写真像を示す図である。
【図2】4.2Kにおける固有ジョセフソン接合の電流-電圧特性とスイッチング電流分布を示す図である。
【図3】(a)はスイッチング電流分布の温度依存性を示す図、(b)はスイッチング電流分布幅σの温度依存性を示す図である。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図1】
2