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明細書 :水素製造用触媒とその製造方法及び水素の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4701455号 (P4701455)
公開番号 特開2007-075799 (P2007-075799A)
登録日 平成23年3月18日(2011.3.18)
発行日 平成23年6月15日(2011.6.15)
公開日 平成19年3月29日(2007.3.29)
発明の名称または考案の名称 水素製造用触媒とその製造方法及び水素の製造方法
国際特許分類 B01J  23/755       (2006.01)
B01J  37/14        (2006.01)
B01J  37/18        (2006.01)
C01B   3/40        (2006.01)
C01B   3/22        (2006.01)
FI B01J 23/74 321M
B01J 37/14
B01J 37/18
C01B 3/40
C01B 3/22 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2005-270907 (P2005-270907)
出願日 平成17年9月16日(2005.9.16)
審査請求日 平成20年9月8日(2008.9.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】許 亜
【氏名】千 東 鉉
【氏名】出村 雅彦
【氏名】平野 敏幸
審査官 【審査官】岡田 隆介
参考文献・文献 特開2003-093879(JP,A)
国際公開第2005/072865(WO,A1)
調査した分野 B01J 21/00-38/74
C01B 3/00-6/34
WPI
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
金属間化合物NiAlとその表面でのNi微粒子とを具有することを特徴とする炭化水素からの水素製造用触媒。
【請求項2】
アルミナを具有する請求項1の水素製造用触媒。
【請求項3】
請求項1または2の触媒の製造方法であって、金属間化合物NiAlを酸化処理し、次いで還元処理することを特徴とする炭化水素からの水素製造用触媒の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2の触媒を用いて炭化水素の水蒸気改質反応を行うことを特徴とする水素の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素と水蒸気との反応による水素製造に有用な水素製造用触媒とその製造方法並びにこの触媒を用いる水素の製造方法に関するものである。

【背景技術】
【0002】
水素は燃料電池の燃料として注目されている。このような燃料としての水素の製造方法としてはこれまでに様々なものが知られている。そのうちの最も重要な方法として、メタノール、又はメタンなどの炭化水素(CnHm)から水素を製造する方法である。
【0003】
メタノールから水素を生成する反応は主にメタノールの水蒸気改質反応(1)とメタノ
ールの分解反応(2)がある。
【0004】
(1) CH3OH + H2O → 3H2 + CO2
(2) CH3OH → 2H2 + CO
炭化水素と水蒸気との反応は炭化水素の水蒸気改質とよばれる。その総括反応式は次の式(3)で示される。
【0005】
(3) CnHm+ nH2O → nCO +(n+m/2)H2
これらの反応の触媒としては、主にアルミナなどの担体にRh,Ru,Ni,Ir,Pd,Pt,Re,Cuなどの金属及びその酸化物を担持した触媒が使用されている。この中、貴金属が最も多く使用されているが、コストが高いという問題がある。Cuは低温活性は比較的高いが、耐熱性に乏しいという問題がある。Niは比較的安く、工業的によく使用されているが、活性が十分ではなく、また耐熱性も高くない。そのため、高活性、低コスト、良い耐熱性の新しい触媒の開発が必要である。
【0006】
また、従来の触媒調製法としては, 沈殿法、含浸法などがある。即ち、まず化合物としての触媒先駆体(例えば、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、或いはそれらの熱分解生成物である酸化物)を作り、それを一定の形状に成型後、焼成、還元などの活性化処理を行う。しかし、これらの方法では、調製操作が複雑である、成型した触媒の強度が十分に得られない、触媒と担体との結合が弱いなどの問題がある。
【0007】
一方、金属間化合物Ni3Alは、通常の材料と異なり、降伏強度が正の温度依存性を示し
(強度の逆温度依存性と呼ばれている)、優れた高温特性、耐摩耗性を持っている。従来Ni3Al系金属間化合物を触媒用成形体としての応用が提案されたが(特許文献1)、水素
製造用触媒としての応用について示されていなかった。また、最近、この出願の発明者らは、Ni3Al金属間化合物はメタノール改質反応に高い触媒活性を示すことを見出した(特
許文献2)。しかしながら、このNi3Al触媒の低温での活性において、なお改良の余地が
あった。

【特許文献1】特開昭55-88856号公報
【特許文献2】特願2004-245546 PCT/JP2005/001861
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上の通りの背景よりなされたものであって、従来の問題点を解消し、メタンの水蒸気改質反応用の触媒として有用であって、高い低温活性、低コスト、優れた耐熱性の新しい触媒を提供することを課題としている。

【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するものとして、以下のことを特徴としている。
【0010】
第1:金属間化合物NiAlとその表面でのNi微粒子とを具有する炭化水素からの水素製造用触媒。

【0011】
第2:アルミナを具有する上記の水素製造用触媒。
【0012】
第3:上記触媒の製造方法であって、金属間化合物NiAlを酸化処理し、次いで還元処理することからなる炭化水素からの水素製造用触媒の製造方法。

【0013】
第4:上記触媒を用いて炭化水素の水蒸気改質反応を行う水素の製造方法。

【発明の効果】
【0014】
上記のとおりの本発明によれば、高活性、特に低温での高い活性を有し、優れた耐熱性、高温強度を有してもいる、生産性にも優れた新しい水素製造用触媒が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の触媒の製造方法においては、まず、金属間化合物Ni3Alを触媒前駆体として、
酸化処理し、多くの場合、表面にNiとAlの酸化物を形成する。続いて、Ni酸化物を水素ガスで還元処理してNi微粒子とし、Ni微粒子とアルミナからなる表面を形成する。図1は、この触媒調製方法を例示したものである。
【0016】
上記Ni3Al金属間化合物の触媒前駆体は、溶製したインゴットから切屑と機械研磨で得
られた粉末もしくは回転ディスクアトマイズ法により作製された粉末、または一方向凝固法で作製したNi3Alの合金を用いて冷間圧延法により作製された冷間圧延箔等であってよ
い。
【0017】
本発明では、Ni3Al金属間化合物を触媒前駆体として、酸化及び還元処理を行うことに
より、表面に高活性のNi微粒子、さらにはこのNi微粒子とアルミナからなる触媒層を、内部には、優れた高温機械特性を有するNi3Al構造を保持する。この触媒層はNi3Alから形成されたものであるため、Ni3Alと密接に結合でき、全体的には優れた高温強度が得られる

【0018】
本発明においては、金属間化合物Ni3Alを主な成分とするものであるが、単独相として
の組成範囲はNi 85-88重量%、Al 12-15重量%である。このNi3Al金属間化合物を含有する
触媒では、他種のものを共存させていてもよく、例えばNiAl、Ni5Al3、Niなどが共存されていてもよい。これらの他種成分を共存させる場合には、全体としての組成範囲はNi 77-95重量%、Al 5-23重量%とすることが考慮される。その形状としては、回転ディスクアト
マイズ法又は機械研磨により作製した粉末でも、一方向凝固法で作製したNi3Al合金イン
ゴットを用いて、冷間圧延法により作製された冷間圧延箔でもよい。
【0019】
上記のNi3Alを用いて、酸化処理により、Ni3Alの表面にNiとAlの酸化物層を形成する。酸化処理は、一般的には、空気中、または制御した雰囲気(例えば、低い酸素分圧の状態)で加熱して、500℃から1200℃までの範囲で一定時間を保持する。これにより、表面にNiとAlの酸化物層の形成を制御する。
【0020】
上記の酸化処理の場合には、処理温度、時間、酸化雰囲気により、表面にNiO、Al2O3
NiAl2O4などの酸化物層が形成できる。例えば、空気中酸化処理の場合には、800℃以下の処理温度で主に薄いNiOとAl2O3層が形成される。900℃以上の温度でNiO, Al2O3以外、NiAl2O4も形成される。酸化処理温度が高くなると、表面NiO酸化物の減少と粗大化が起るため、処理温度は650℃から950℃までとすることが好ましい。
【0021】
酸化処理Ni3Alを水素雰囲気の中、400℃から800℃までの温度で還元処理を行う。500℃から600℃の温度範囲の還元処理が好ましい。水素雰囲気は純水素又は水素と窒素等の混
合ガスとすることができる。
【0022】
本発明の触媒を用いる水素製造においては、メタノールの分解反応、メタノールの水蒸気改質反応、または炭化水素(CnHm)の水蒸気改質反応が行われる。これら反応のための条件は従来の技術を踏まえて定めることができるが、本発明の触媒の場合にはより低い反応温度において高い反応活性を発現できるという大きな特徴がある。
【0023】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
【実施例】
【0024】
<実施例1>
本発明で以下の二種類Ni3Al金属間化合物試料を作製した。
1)回転ディスクアトマイズ法で組成86.91重量%Ni-13.09重量%AlのNi3Al粉末試料を作製した。BET法を用いて比表面積を測定した結果、粒子直径32μm以下の粉末の比表面積は1.3m2/g;粒子直径32-75μmの粉末の比表面積は0.4m2/g;粒子直径75-150μmの粉末の比表面積は0.1m2/gである。
2)一方向凝固法で作製した組成87.32重量%Ni-12.67重量%AlのNi3Al合金インゴットを用いて、冷間圧延法により作製された冷間圧延箔である。具体的には、この冷間圧延箔は、特許第3374173号に記載された方法で製造される。このようにして作製された箔は、優
れた高温特性を持つものであり、450℃以上の温度で高い触媒活性、高選択性を有するも
のである(特願2004-245546、PCT/JP2005/001861)。BET法を用いて比表面積を測定した
結果、比表面積は0.1m2/gである。
【0025】
上記のNi3Al試料を用いて、空気中700℃、900℃、1100℃で0.5又は1時間保持して酸化処理を行った。図2は700℃で0.5時間処理したNi3Al箔の表面組織観察結果およびXRD構造
分析結果である。表面に微細なNiO層が形成されていることが分かった。図3はオージェ
ン電子分光(AES)により700℃で0.5時間処理したNi3Al箔の表面から内部への深さ方向の組成測定結果である。表面最外層には、内部に比べてO、Niの量が多く、Alの含量が少な
い。NiOが形成されていると考えられる。最外層の下では、Alの含量が多くなり、逆にNi
の含量が少なくなることから、Al2O3とNiOが両方形成されていることが考えられる。図4は900℃で0.5時間処理したNi3Al箔の表面組織観察結果およびXRD構造分析結果である。表面にNiO層が形成されていることが分かった。図5はAESにより900℃で0.5時間処理したNi3Al箔の表面から内部への深さ方向の組成測定結果である。表面最外層には、内部に比べ
てO、Niの含量が多く、Alの含量が非常に少なく、主にNiOが形成されている。最外層の次の層には、Alの含量が多くなり、Niの含量が少なくなり、Al2O3が形成されている。図6
は上記の回転ディスクアトマイズ法で作製したNi3Al粉末を700℃、900℃、1100℃でそれ
ぞれ1時間処理した後の表面組織観察結果である。これらの結果から、酸化処理温度の上昇に伴い、NiO層が厚くなり、NiO粒径が大きくなるとともに、Al2O3の量も多くなること
が分かった。
<実施例2>
上記の実施例1で700℃、900℃で酸化処理したNi3Al箔を用いて、昇温還元法(TPR)により表面のNiOの還元性を検討した。図7はTPRの測定結果を示す。700℃で0.5時間処理し
た箔表面のNiOは約340℃から還元される。これに対して、900℃で0.5時間処理した箔のNiOは約390℃から還元される。これらの結果から、900℃で0.5時間処理した箔と比べて、700℃で0.5時間処理した箔は比較的容易に還元されることが分かった。
<実施例3>
上記の実施例1で700℃、900℃で0.5時間酸化処理したNi3Al箔を用いて、240℃から520℃までの各温度でメタノールの分解反応を行った。比較のため、未酸化処理箔を用いて、同じ触媒反応を行った。図8はこれらの箔触媒を用いてメタノールの分解反応させる際、測定した水素発生速度を反応温度の関数として示した結果である。いずれの箔も反応温度の上昇に伴い、ある温度から活性が急速に増加する。700℃酸化処理した箔は340℃付近から活性が出始め、900℃酸化処理した箔は390℃付近から活性が出始め、未酸化処理箔は450℃付近から活性を出始める。これらの結果から、酸化処理したNi3Al箔は未酸化処理Ni3Al箔より優れた低温活性を示すことが分かった。
<実施例4>
上記の実施例1で回転ディスクアトマイズ法により作製したNi3Al粉末試料を用いて、700℃で1時間酸化処理した後、600℃1時間水素還元処理してからメタンの水蒸気改質反応(S/C=3.5)を行った。比較のため、未酸化処理試料を用いて、同じ反応を行った。図9はこれらの粉末触媒を用いてメタンの水蒸気改質反応させる際、測定した水素発生速度を反応温度の関数として示した結果である。未酸化処理試料の場合、900℃以下の温度では
水素発生速度は非常に小さく、900℃以上の高温度になってようやく増大する。これに対
して、酸化処理した試料は600℃から高い水素発生速度がえられることが分かった。
<実施例5>
上記の実施例1で回転ディスクアトマイズ法により作製したNi3Al粉末試料を用いて、700℃、900℃、1100℃でそれぞれ1時間酸化処理した後、600℃1時間水素還元処理してから600℃で5時間メタンの水蒸気改質反応を続け、Ni3Alの触媒活性の経時変化を調べた。図10は測定した水素の生成速度を反応時間の関数として示した結果である。700℃、1100℃で酸化処理した試料の場合、反応時間の経過とともに触媒活性の低下は大きいが、900℃で1時間酸化処理した試料の場合、その触媒活性の劣化が比較的に少ないことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】金属間化合物Ni3Alを触媒前駆体として、酸化、還元処理により水素製造触媒の調製プロセスを例示した図である。
【図2】700℃で0.5時間処理したNi3Al箔の表面組織観察結果(a)およびXRD構造分析結果(b)を例示した図である。
【図3】オージェン電子分光(AES)により700℃で0.5時間処理したNi3Al箔の表面から内部への深さ方向の組成測定結果を例示した図である。
【図4】900℃で0.5時間処理したNi3Al箔の表面組織観察結果(a)およびXRD構造分析結果(b)を例示した図である。
【図5】AES分析により700℃で0.5時間処理したNi3Al箔の表面から内部への深さ方向の組成測定結果を例示した図である。
【図6】回転ディスクアトマイズ法で作製したNi3Al粉末を700℃ (a)、900℃ (b)、1100℃ (c)でそれぞれ1時間処理した後の表面組織観察結果を例示した図である。
【図7】700℃、900℃で酸化処理したNi3Al箔を用いて、昇温還元法(TPR)により表面のNiOの還元性を測定した結果を例示した図である。
【図8】700℃、900℃で0.5時間酸化処理したNi3Al箔を用いて、240℃から520℃までの各温度でメタノールの分解反応させる際、測定した水素発生速度を反応温度の関数として示した結果を例示した図である。
【図9】回転ディスクアトマイズ法により作製したNi3Al粉末試料を用いて、700℃で1時間酸化処理した後、600℃1時間水素還元処理してからメタンの水蒸気改質反応(S/C=3.5)させる際、測定した水素発生速度を反応温度の関数として示した結果を例示した図である。
【図10】回転ディスクアトマイズ法により作製したNi3Al粉末試料を用いて、700℃、900℃、1100℃でそれぞれ1時間酸化処理した後、600℃1時間水素還元処理してから600℃で5時間メタンの水蒸気改質反応させる際、測定した水素の生成速度を反応時間の関数として示した結果を例示した図である。
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図5】
2
【図7】
3
【図8】
4
【図9】
5
【図10】
6
【図2】
7
【図4】
8
【図6】
9