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明細書 :炭化水素の水蒸気改質用触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4654413号 (P4654413)
公開番号 特開2007-090137 (P2007-090137A)
登録日 平成23年1月7日(2011.1.7)
発行日 平成23年3月23日(2011.3.23)
公開日 平成19年4月12日(2007.4.12)
発明の名称または考案の名称 炭化水素の水蒸気改質用触媒
国際特許分類 B01J  23/755       (2006.01)
B01J  25/02        (2006.01)
B01J  37/00        (2006.01)
C01B   3/40        (2006.01)
FI B01J 23/74 321M
B01J 25/02 M
B01J 37/00 Z
C01B 3/40
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願2005-279436 (P2005-279436)
出願日 平成17年9月27日(2005.9.27)
審査請求日 平成20年9月19日(2008.9.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】許 亜
【氏名】馬 雁
【氏名】出村 雅彦
【氏名】平野 敏幸
審査官 【審査官】田澤 俊樹
参考文献・文献 国際公開第2005/072865(WO,A1)
特開2002-102715(JP,A)
特表2003-530207(JP,A)
特開昭55-088856(JP,A)
許亜 他,"メタノールから水素製造反応に対するNi3Al金属間化合物の触媒機能",第94回触媒討論会討論会A予稿集,2004年 9月27日,p.393
許亜 他,"メタンの水蒸気改質に対するNi3Al金属間化合物の触媒特性",第96回触媒討論会討論会A予稿集,2005年 9月20日,p.56
許亜 他,"メタノール分解反応に対するNi3Al金属間化合物箔の触媒特性",第95回触媒討論会討論会A予稿集,2005年 3月30日,p.76
調査した分野 B01J 21/00-38/74
C01B 3/00-3/58
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
酸処理後、アルカリ処理する二段階処理された金属間化合物NiAlを含有することを特徴とする炭化水素の水蒸気改質用触媒。
【請求項2】
共存成分とともにNiAl金属間化合物を含有し、共存成分を含む全体の元素組成(重量%)がNi 77-95%,Al 5-23%であることを特徴とする請求項1の炭化水素の水蒸気改質用触媒。
【請求項3】
触媒表面にNiナノ粒子が存在することを特徴とする請求項1または2の炭化水素の水蒸気改質用触媒。
【請求項4】
回転ディスクアトマイズ法もしくはインゴット溶製後の切削と機械研磨により作製された粉末形状を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれかの炭化水素の水蒸気改質用触媒。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの触媒の製造方法であって、金属間化合NiAlを酸処理後、アルカリ処理する二段階処理することを特徴とする炭化水素の水蒸気改質用触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかの触媒を用いる炭化水素の水蒸気改質方法であり、炭化水素と水蒸気との混合体を前記触媒と接触させて水素を製造することを特徴とする炭化水素の水蒸気改質方法。
【請求項7】
触媒をあらかじめ水素還元処理した後に炭化水素と水蒸気との混合体と接触させることを特徴とする請求項6の炭化水素の水蒸気改質方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素と水とを原料として水素を製造するための水蒸気改質用触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素を燃焼すると水しか発生しないことから、地球環境の保全という観点からは、水素は理想的な燃料といえる。最近では、特に燃料電池の燃料として水素が注目されている。このような燃料としての水素の製造方法としてはこれまでに様々なものが知られている。そのうちの最も重要な方法として、メタンなどの炭化水素(CnHm)と水蒸気との反応により水素及び合成ガスを製造する方法があり、水蒸気改質反応とよばれている。その総括反応式は次の式で示され、大きな吸熱を伴う反応である。
【0003】
CnHm + nH2O → nCO +(n+m/2)H2
従って、熱力学的には高温ほど有利であり、炭化水素の種類にもよるが、通常は700℃
以上の反応温度が必要であるとされている。このことから、炭化水素の水蒸気改質用触媒には、高い活性と共に、優れた耐熱性、高温安定性及び一定の高温強度が求められている。従来、このような炭化水素の水蒸気改質用の触媒としては、担体上に担持された遷移金属が一般的に用いられている。例えば、メタン(CH4)の水蒸気改質に対する最も高い触
媒活性を示す金属としてはRh,Ru,Ni,Ir,Pd,Pt,Reが知られている。なかでも、貴金属が最も多く使用されている。ただ、貴金属の場合には、コストが高いという問題がある。他方で、Niは比較的に安く、工業的によく使用されているが、活性が十分ではなく、耐熱性が低いという問題がある。そのため、貴金属やNiに代わる炭化水素改質用の触媒として、高活性、低コストで、耐熱性の良好な新しい触媒の開発が必要とされていた。
【0004】
一方、金属間化合物Ni3Alは、通常の材料と異なり、降伏強度が正の温度依存性を示し
(強度の逆温度依存性と呼ばれている)、優れた高温特性、耐摩耗性を持っていることから、このような高温特性等を利用してNi3Al系金属間化合物を触媒用成形体として応用す
ることが提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、最近、本出願の発明者らは、Ni3Al金属間化合物はメタノール改質反応に高い触
媒活性を示すことを見出してもいる(特許文献2)。

【特許文献1】特開昭55-88856号公報
【特許文献2】PCT/JP2005/001861
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の通りの背景よりなされたものであって、従来の問題点を解消し、しかも、メタノール改質反応におけるNi3Al金属間化合物についての高い触媒活性として発明者
らによって得られている知見を踏まえて、高活性、低コスト、優れた耐熱性を有する、炭化水素の水蒸気改質用の新しい触媒と、これを用いた水蒸気改質方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するものとして、以下のことを特徴としている。
【0008】
1、耐熱性、活性に優れ、かつ貴金属を含まない、酸処理後、アルカリ処理する二段階処理された金属間化合物NiAlを含有する炭化水素の水蒸気改質用触媒。

【0009】
2、共存成分とともにNi3Al金属間化合物を含有し、共存成分を含めた全体の元素組成
(重量%)がNi 77-95%、Al 5-23%である炭化水素の水蒸気改質用触媒。
【0010】
3、触媒表面にNiナノ粒子が存在する炭化水素の水蒸気改質用触媒。
【0011】
4、溶製したインゴットの切屑と機械研磨で得られた粉末もしくは回転ディスクアトマイズ法により作製された粉末形状を有している炭化水素の水蒸気改質用触媒。
【0012】
5、金属間化合物NiAlを酸処理後、アルカリ処理する二段階処理する炭化水素の水蒸気改質用触媒の製造方法。

【0013】
6、上記いずれかの触媒を用いる炭化水素の水蒸気改質方法。
【0014】
7、触媒をあらかじめ水素還元処理した後に、炭化水素と水蒸気と混合ガスを前記触媒と接触させて水素を製造する炭化水素の水蒸気改質方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、炭化水素の水蒸気改質反応において、広い温度範囲で高活性、優れた耐熱性を持つNi3Al金属間化合物からなる触媒が提供され、高効率、低コストの水素製造
プロセスに活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明においては、金属間化合物Ni3Alを主な成分とするものであるが、単独相として
の組成範囲はNi 85-88重量%、Al 12-15重量%である。このNi3Al金属間化合物を含有する
触媒では、他種のものを共存させていてもよく、例えばNiAl、Ni5Al3、Niなどが共存されていてもよい。これらの他種成分を共存する場合には、全体としての組成範囲はNi 77-95重量%、Al 5-23重量%となる。
【0017】
以上のNi3Al金属間化合物を含有する触媒は、各種の形状のものとして使用してよいか
、触媒の活性、その調製方法、取扱い性等の観点からは粒状物とすることが好ましく考慮される。この場合、たとえば、回転ディスクアトマイズ法やインゴット溶製後の切削と機械的研磨等により作製することができる。
【0018】
また、本発明では、Ni3Alの表面形状、組成を制御することによって、触媒活性を高め
るために、あらかじめアルカリや酸で表面処理することが有効でもある。アルカリ処理は、一般的には、無機又は有機の塩基の水溶液もしくは有機溶媒の溶液を用いることができる。処理温度については、通常は、室温-100℃の範囲とすることができる。酸処理には
、無機酸または有機酸、それらの水溶液や有機溶液を用いることができる。処理温度としては、室温-50℃程度までとすることが一般的に考慮される。
【0019】
上記のアルカリ処理の場合には、Alだけが溶出し、Niが殆んど溶出しない。たとえばNaOH水溶液を用いる場合には、その濃度は10%以上、望ましくは20-30%であり、また処理温度60-100℃、処理時間1時間以上が望ましい。酸処理の場合、AlとNiとも溶出するので、
高濃度、長時間処理すると、金属間化合物Ni3Alの損失が増えることに注意する必要があ
る。例えば、HCl水溶液の場合には、濃度20%以下、処理温度20℃付近、処理時間2時間以
下が望ましい。HNO3水溶液の場合には、濃度5%以下、処理温度20℃付近、処理時間2時間
以下が望ましい。
【0020】
また、表面処理の効果を高めるため、酸とアルカリ処理を組み合わせ、二段階の表面処理を行うことも有効である。特に、まず、酸処理し、次いでアルカリ処理することが好適
に考慮される。酸処理により表面のAlとNiを溶出することにより、表面積を増やす。続いて、アルカリ処理により表面のAlを溶出することにより、表面積をさらに増加するとともに、表面のNi活性点を増加する。これにより触媒活性を著しく改善することが可能となる。
【0021】
以上のとおりの本発明の触媒は、炭化水素の水蒸気改質反応による水素の製造に用いられる。この場合の炭化水素は、メタンをはじめとする各種の炭化水素:CnHmであってよく、たとえば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン等々であってよい。炭化水素と水蒸気の割合は、炭化水素の種類によっても相違するが、一般的にはモル比として、H2O:炭化水素が、50~0.5:1の範囲とし、反応温度は、400℃~950℃程度が考慮される。500℃~750℃程度の比較的低い反応温度においても触媒の作用は高活性なものとなる。
【0022】
反応は、バッチ式あるいは流通式のいずれでもよく、流通式の場合には、固定床、流動床等の各種の方式であってよい。
【0023】
なお、反応に際しては、触媒をあらかじめ水素還元処理しておくことも有効である。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の例を具体的に記述する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
<実施例1>
まず、回転ディスクアトマイズ法で組成86.91重量%Ni-13.09重量%AlのNi3Al粉末試料を作製した。BET法を用いて比表面積を測定した結果、粒子直径32μm以下の粉末の比
表面積は1.3m/g;粒子直径32-75μmの粉末の比表面積は0.4m/g;粒子直径75-150μmの粉末の比表面積は0.1m/gであった。
【0025】
次に、作製したNi3Al粉末に対して以下の各種のアルカリ処理と酸処理を行った。
(1)アルカリ処理:上記粒子直径75-150μmのNi3Al粉末3gを120gの20%NaOH水溶液に加え、93℃の温度で攪拌しながら5時間放置した。その後アルカリ水溶液をデカンテーションにより除去した。沈殿物を適量な蒸留水で洗浄し、洗液をデカンテーションにより除去した。この操作を洗液が中性になるまで繰返した。得られた沈殿生成物を脱水した。脱水後50℃で5時間乾燥して、Ni3Al触媒を調製した。ICP発光分光分析の結果、このNaOH水溶液により、当初のNi3Al中のAl量の約2.2%(重量比)が溶出されて除去されたこ
とがわかった。一方、Niは溶出していなかった。
(2)HNO3水溶液処理:回転ディスクアトマイズ法で作製した粒子直径75-150μmのNi3Al粉末3gを120gの2%のHNO3水溶液に加え、室温で攪拌しながら15分放置した。その後NHO3水溶液をデカンテーションにより除去した。さらに、沈殿物を適量な蒸留水で洗浄し、洗液をデカンテーションにより除去した。この操作を洗液が中性になるまで繰返した。得られた沈殿生成物を脱水した。脱水後50℃で5時間乾燥して、Ni3Al触媒を調製した。
ICP発光分光分析の結果、このHNO3水溶液により、当初のNi3Al中のNi量の約6.6%、Al量の約7.1%(重量比)を溶出し除去されたことがわかった。
(3)酸処理とアルカリ処理との二段階表面処理:まず、Ni3Al粉末試料を上記(2)のHNO3水溶液処理により処理し、続いて、酸処理した粉末を上記(1)によってアルカリ処
理した。
【0026】
図1はSEMにより回転ディスクアトマイズ法で作製したNi3Al粉末及び上記の3種類
の表面処理(1)(2)(3)した試料の表面形態の観察結果である。酸処理及びアルカリ処理により表面組織、形態が大きく変化したことがわかる。図2は酸処理とアルカリ処理との二段階表面処理した試料の表面微細組織を詳しく観察した結果である。数10nm以下
の微細粒子が形成されていることがわかる。図3はTEM-EDSによりこれらのナノ粒子の組成は主にNiである分析結果を示す。図4は回転ディスクアトマイズ法で作製したNi3Al粉
末及び上記の3種類の表面処理(1)(2)(3)した試料のXRD分析結果である。すべての試料においては、Ni3Alのピークだけが検出された。これにより、これらの表面処
理の結果、Ni3Alの表面層のごく一部のAlとNiが溶出されるだけで、全体的にはNi3Al構造が保持されていることがわかる。
<実施例2>
回転ディスクアトマイズ法で作製した粉末試料(未処理試料)及び上記実施例1での(1)、(2)、(3)の方法で処理した3種類の粉末試料を触媒として、触媒反応装置(固定床流通式反応装置)で600℃1時間水素還元処理を行った後、常圧、600℃から950℃
までの各温度でメタンの水蒸気改質反応(H2O:CH4=3.5mol:1mol)を行った。その結
果を図5で示す。水素発生速度(ml min-1 g-cat-1)は酸処理とアルカリ処理との二段階処理した試料の場合、600℃から高い水素発生速度が得られることが確認された。
<実施例3>
実施例1の(3)の方法で二段階処理した試料を用いて、600℃、700℃、900℃でそれ
ぞれ10時間、メタンの水蒸気改質反応を続け、Ni3Alの触媒活性の経時変化を調べた。図
6-8は測定した各生成ガスの生成速度を反応時間の関数として示した結果である。600
℃、700℃では、10時間反応しても、触媒活性の劣化が少ないことがわかった。また、900℃では、触媒活性が劣化するが、10時間反応しても、100ml min-1g-cat-1以上の水素発生速度が得られることがわかった。また、各温度で、主にH2,CO,CO2,CH4,H2Oが生成し
ていることが確認された。これにより、Ni3Alは主に以下のメタンの水蒸気改質反応、一
酸化炭素シフト反応に活性を示すことが分かる。
【0027】
(1)メタンの水蒸気改質反応: CH4+ H2O → 3H2 + CO
(2)一酸化炭素シフト反応: CO + H2O → CO2 + H2
また、図9は、600℃、700℃、900℃での定温反応中のメタンの転化率の結果を示して
いる。この結果から、700℃の場合、メタン転化率が最も良好であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】SEMにより回転ディスクアトマイズ法で作製したNiAl粉末及び種々の表面処理した試料の表面形態の観察結果であって、(a)アトマイズ法で作製した未処理NiAl粉末試料;(b)20%NaOH水溶液により93℃5時間処理した試料;(c)2%HNO水溶液により室温15分処理した試料;(d)二段階処理(上記(b)+(c)処理)した試料について示したものである。
【図2】図1の(d)二段階処理した試料の微細組織の高倍率観察結果であって、数10nm以下の微細粒子が密に生成していることを示している。
【図3】図1の(d)二段階処理した試料の(a)TEMによる微細組織の解析結果であって、(a)表面に生成した微細粒子と;(b)EDS分析によりその微細粒子の組成分析結果であって、主にNiであることを示している。
【図4】回転ディスクアトマイズ法で作製したNiAl粉末及び種々の表面処理した試料のXRD分析結果であって、すべての試料に対して、NiAlのピークだけが検出されていることを示している。
【図5】メタンの水蒸気改質反応させる際、測定した水素発生速度を反応温度の関数として示した図であって、(1)アトマイズ法で作製した未処理NiAl粉末試料;(2)20%NaOH水溶液により93℃5時間処理した試料;(3)2%HNO水溶液により室温15分処理した試料;(4)二段階処理(上記(2)+(3)処理)した試料について示している。
【図6】二段階処理したNiAl粉末試料を用いて600℃でメタンの水蒸気改質反応させた時、測定したH、CO,COの発生速度を反応時間の関数として示した図である。
【図7】二段階処理したNiAl粉末試料を用いて700℃でメタンの水蒸気改質反応させた時、測定したH、CO,COの発生速度を反応時間の関数として示した図である。
【図8】二段階処理したNiAl粉末試料を用いて900℃でメタンの水蒸気改質反応させた時、測定したH、CO,COの発生速度を反応時間の関数として示した図である。
【図9】600℃、700℃、900℃での定温反応中のメタンの転化率の結果を示した図である。
図面
【図4】
0
【図5】
1
【図6】
2
【図7】
3
【図8】
4
【図9】
5
【図1】
6
【図2】
7
【図3】
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