TOP > 国内特許検索 > 高効率レーザー発振装置 > 明細書

明細書 :高効率レーザー発振装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4894214号 (P4894214)
公開番号 特開2007-096070 (P2007-096070A)
登録日 平成24年1月6日(2012.1.6)
発行日 平成24年3月14日(2012.3.14)
公開日 平成19年4月12日(2007.4.12)
発明の名称または考案の名称 高効率レーザー発振装置
国際特許分類 H01S   3/20        (2006.01)
FI H01S 3/20 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 14
出願番号 特願2005-284722 (P2005-284722)
出願日 平成17年9月29日(2005.9.29)
審査請求日 平成20年9月19日(2008.9.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】古海 誓一
【氏名】目 義雄
審査官 【審査官】傍島 正朗
参考文献・文献 特開2005-101464(JP,A)
特開平08-297280(JP,A)
特開2005-136368(JP,A)
特開2005-136367(JP,A)
特開2004-107542(JP,A)
特表2005-536898(JP,A)
特開平04-284445(JP,A)
特開平03-036527(JP,A)
特表2002-517784(JP,A)
特開2002-107731(JP,A)
特表2002-532865(JP,A)
特開2002-344047(JP,A)
特開平02-202083(JP,A)
特開2007-019447(JP,A)
特開2007-049196(JP,A)
QI HONG, et al,Optical wave propagation in a cholesteric liquid crystal using the finite element method,LIQUID CRYSTALS,2003年,Vol.30, No.3,pp.367-375
調査した分野 H01S 3/00 - 5/50
IEEE Xplore
CiNii
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
励起光源と、前記励起光源からの光を円偏光に可能な偏光子と、前記円偏光が入射され、レーザー発振可能な光デバイスと、を有するレーザー発振装置であって、
前記光デバイスが、光学活性部位を有していない液晶材料と、光学活性部位を有している化合物との混合物であるキラル液晶に発光性材料を添加してなり、
前記発光性材料が発光性有機色素、高分子系発光材料、あるいは無機系発光半導体微粒子のいずれかであり、
前記キラル液晶の反射スペクトルが前記発光性材料の発光スペクトルに重なっており、
前記円偏光が、前記キラル液晶の分子掌性と逆方向であり、
基板法線方向である0度以上、基板法線方向に対して45度以下の入射角で入射された円偏光により光励起されることによって、前記光デバイスが高効率にレーザー発振可能であることを特徴とする、レーザー発振装置
【請求項2】
前記キラル液晶が、(化1)で表される光学活性部位を有していないネマチック液晶材料(ただし、式中n、mは、1ないし5))であり、また、前記キラル剤が(化2)で表される鏡像異性体化合物の(i)か(ii)の何れかの化合物であることを特徴としている、請求項1に記載するレーザー発振装置
【化1】
JP0004894214B2_000005t.gif




【化2】
JP0004894214B2_000006t.gif


【請求項3】
前記発光性有機色素が(化3)で表される化合物を含むことを特徴としている、請求項に記載するレーザー発振装置
【化3】
JP0004894214B2_000007t.gif


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は外部共振器を必要としないレーザー発生装置に関する。詳しくは、本発明は、キラル液晶を用いることにより、容易にレーザー発振を可能とした微小レーザー発生装置に関する。さらに詳しくは、蛍光材料を添加したキラル液晶を円偏光で光励起することによる、励起光エネルギーの極めて低いレーザー発振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代フォトニックデバイスとして電流注入型有機半導体レーザーが注目されており、これを達成するためには位相や伝搬方向をフィードバックさせる光共振器構造が必要不可欠である。電流注入型有機レーザーデバイスの構築に先立ち、π電子共役系高分子や色素を添加した高分子などの発光材料を用いた光励起型レーザー発振に関する研究例が報告されている(非特許文献1、2)。
【0003】
すなわち、DFB(Distributed Feedback)(非特許文献3)、DBR(Distributed Bragg Reflector)(非特許文献4、5)、マイクロディスク(非特許文献6)やマイクロリング(非特許文献7)といったさまざまな分布帰還型共振器構造がこれまでに提案され、光励起によるレーザー発振が確認されている。
【0004】
しかしながら、これらの光共振器構造体を作製するためにはフォトリソグラフィー法などの煩雑な工程が必要とされ、簡便に得ることはできない。
【0005】
これに対し、キラル液晶(コレステリック液晶)をラビング処理した基板の間に挟むと、自己組織的に分子らせん軸が基板に対して垂直に配向したプラーナー配向を形成し、液晶分子のらせん軸に沿って屈折率が周期的に変化しているため光の干渉が生じ、ブラックの反射条件を満たすある特定の光を反射し、一種の共振器を形成する。最近では、色素を添加したキラル液晶をパルス光で励起すると、液晶の反射バンド端でレーザー発振することが見出されている(非特許文献8、非特許文献9)。
【0006】

【非特許文献1】A. Dodabalapur, E. A. Chandross, M. Berggren, and R. E. Slusher, Science, 277, 1787 (1997).
【非特許文献2】M. D. McGehee and A. J. Heeger, Adv. Mater., 12, 1655 (2000).
【非特許文献3】H. Kogelnik and C. V. Shank, Appl. Phys. Lett., 18, 152 (1971).
【非特許文献4】I. P. Kaminov, H. P. Weber, and E. A. Chandross, Appl. Phys. Lett., 18, 497 (1971).
【非特許文献5】N. Tessler, G. J. Denton, and R. H. Friend, Nature, 382, 695 (1996.
【非特許文献6】M. Kuwata-Gonokami, R. H. Jordan, A. Dodabalapur, H. E. Katz, M. Schilling, R. E. Slusher, and S. Ozawa, Opt. Lett., 20, 2093 (1995).
【非特許文献7】S. V. Frolov, Z. V. Vardeny, and K. Yoshino, Appl. Phys. Lett., 72, 1802 (1998).
【非特許文献8】V. I. Kopp, B. Fan, H. K. M. Vithana, A. Z. Genack, Opt. Lett., 23, 1707 (1998).
【非特許文献9】古海 誓一ほか3名、オプトニューズ vol.138、No.6(光の話題;キラル液晶分子によるレーザー発振の電場制御)、(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これまでのキラル液晶を用いたレーザー発振に関する研究は、そのレーザー発振挙動と励起光の偏光特性との関係は十分に解明されていたとはいえず、その関係は必ずしも明らかではなかった。非特許文献8及び本発明者等研究グループの研究報告による非特許文献9も含め、これまでに提案された研究は、キラル液晶分子に対する励起光とレーザー発振挙動は、直線偏光による励起光に基づいて行われていた。
【0008】
そこで、本発明者らにおいては、レーザー発振挙動と励起光の偏光特性との関係を基本的にさらに明らかにすべく鋭意研究した。その結果、発光性材料を添加したキラル液晶(コレステリック液晶)を円偏光で光励起すると、ある一定のしきい値以上で1nm以下の半値幅を持った発光、つまりは単一波長を有するレーザー発光に変化すること、その光励起エネルギーのしきい値は、励起光の円偏光性に強く依存すること、キラル液晶の分子掌性と逆方向の円偏光で励起すると極めて低い値であること、といった一連の重要な知見を得た。本発明は、これらの知見に基づいてなされたものであり、発明の構成は、以下の通りである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 励起光源と、前記励起光源からの光を円偏光に可能な偏光子と、前記円偏光が入射され、レーザー発振可能な光デバイスと、を有するレーザー発振装置であって、前記光デバイスが、光学活性部位を有していない液晶材料と、光学活性部位を有している化合物との混合物であるキラル液晶に発光性材料を添加してなり、前記発光性材料が発光性有機色素、高分子系発光材料、あるいは無機系発光半導体微粒子のいずれかであり、前記キラル液晶の反射スペクトルが前記発光性材料の発光スペクトルに重なっており、前記円偏光が、前記キラル液晶の分子掌性と逆方向であり、基板法線方向である0度以上、基板法線方向に対して45度以下の入射角で入射された円偏光により光励起されることによって、前記光デバイスが高効率にレーザー発振可能であることを特徴とする、レーザー発振装置
(2) 前記キラル液晶が、(化4)で表される光学活性部位を有していないネマチック液晶材料(ただし、式中n、mは、1ないし5)であり、また、前記キラル剤が(化5)で表される鏡像異性体化合物の(i)か(ii)の何れかの化合物であることを特徴としている、(1)に記載するレーザー発振装置
【化4】
JP0004894214B2_000002t.gif


【化5】
JP0004894214B2_000003t.gif


(3) 前記発光性有機色素が(化6)で表される化合物を含むことを特徴としている、(1)に記載するレーザー発振装置
【化6】
JP0004894214B2_000004t.gif


【0010】
ここに、本発明において使用し得るキラル液晶は、分子の螺旋構造を有するコレステリック(キラルネマチック)液晶、強誘電性、反強誘電性(キラルスメクチック)液晶、ブルーフェーズ液晶、ツイストグレインバウンダリー液晶である。例えば、ラビング処理した基板の間にコレステリック液晶を挟み込むと、自己組織的に分子螺旋軸が基板に対して垂直に配向し、平行な層が螺旋のピッチ間隔で平行に配向してプラーナ配向(グランジェン組織)を形成する。液晶分子の螺旋軸に沿って屈折率が周期的に変動しているため、螺旋ピッチが波長程度の場合、光の干渉が起こり、ブラッグの反射条件を満たすある特定の光を選択反射する。つまり、一種の共振器として働く螺旋構造をキラル液晶が形成し、単一波長のレーザー光を発振する。このようなキラル液晶はそれ自体公知であり、例示するとコレステロール誘導体、光学活性部位を有する化合物、およびそれら複数の混合物が挙げられる技術文献に記載されている(非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12)。キラル液晶と発光材料の選択条件としては、キラル液晶の選択反射バンドが、発光材料の発光バンドと重なり合っていることが必要される。キラル液晶の反射バンドと発光材料の発光バンドとが重なって光励起することで発光の共振状態が誘起され、単一波長のレ
ーザーを発振し得る作用効果を奏し得るものである。
【0011】
<nplcit num="10"><text>C. J. Booth, “Handbook of Liquid Crystals, Vol. 2A”, D. Demus, J. Goodby, G. W. Gray, H.-W. Spiess, V. Vill, eds., Wiley-VCH, Wienheim, (1998), pp. 303 - 334.</text></nplcit><nplcit num="11"><text>液晶便覧,液晶便覧編集委員会編,丸善株式会社,東京,(2000),pp.280-312.</text></nplcit><nplcit num="12"><text>液晶の基礎と応用,松本正一,角田市良共著,工業調査会,東京,(1996),pp.149-312.</text></nplcit>
【0012】
また、本発明で使用するキラル剤は、コレステリック液晶を誘起する化合物であり、例えばアキラル(光学活性部位を有していない)ネマチック液晶にキラル剤を添加することで、コレステリック液晶を調整することができる。キラル剤は、特開2002-180051号公報、特開2002-179682号公報、特開2002-179670号公報などに開示されているものを用いてもよい。キラル剤としては、光反応性キラル剤も挙げられる。光反応性キラル剤は、キラル部位と光照射によって構造変化する光反応部位を有し、例えば、照射光量(照射時間)に応じてキラル液晶の螺旋構造の捩れ力(HTP:Helical Twisting Power)を大きく変化させる化合物である。光照射による螺旋構造誘起力を大きくするためには、光照射による構造変化の度合いの大きい材料が好ましい。また、光反応性キラル剤の分子中に、重合性の結合残基を1つ以上導入した構造とすると、キラル液晶相の耐熱性が向上する。
【0013】
本発明において使用しうる発光材料としては、発光性有機色素、高分子系発光材料、あるいは無機系発光性半導体材料等が挙げられ、何れも使用することができ、特に制限はない。特に、好ましい材料としては、紫外・可視・近赤外の波長帯域に発光バンドを示し、キラル液晶の反射バンドと重なり合っていることが好ましいことは上記したとおりである。
【0014】
その中、発光性有機色素としては、色素レーザーに用いられる公知の蛍光色素を用いることができる。このような色素としては、例えば、DCM(4-ジシアノメチレン-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン)、パイロメタン、クマリン、ローダミン、オキサジン、ピリジン、フロオレセイン、キトン赤、およびこれら誘導体などが挙げられる。尚、これらの色素は広く市販されている材料を用いることができる。
【0015】
さらに発光材料としては、高分子系のものを使用することもできる。高分子系発光材料としては、蛍光色素を添加した高分子やπ電子共役系高分子などが挙げられ、各種文献等において多数知られておりその何れも使用することが出来る。例えば、蛍光色素添加高分子として前記蛍光色素を添加したポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリシリコン、セルロース、DNAおよびこれら誘導体であり、π電子共役系高分子としてポリピロール、ポリチオフェン、ポリ-p-フェニレン、ポリ-p-フェニレンビニレン、ポリジアルキルフルオレン、およびこれら誘導体である。
【0016】
また、無機系発光材料についても、各種文献等において周知であり、本発明で使用することが出来る。無機系発光材料は、一般的に耐久性があり、長時間の使用によっても変質せず本発明において使用する発光材料としては特に好ましい。例えば、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、硫化鉛、セレン化鉛、窒化ガ
リウム、シリコン、金、銀などが挙げられ、数ナノメートルから数十マイクロメートル程度の球状やロッド状の物質である。
【0017】
これらの発光性材料は、適宜の量を配合して使用されるが、有機色素の場合は、通常液晶材料中に0.3~1.0重量%程度混合され得る。
【0018】
本発明のレーザー発振光デバイスは、上記のキラル液晶材料、キラル剤、発光性有機色素のほかに、必要に応じて、重合性モノマー、重合開始剤やバインダ樹脂、溶媒、界面活性剤、重合禁止剤、増粘剤、色素、顔料、紫外線吸収剤、ゲル化剤などの他の成分を含ませることができる。本発明の液晶組成物は、特に、界面活性剤を併用することが好ましい。例えば、液状の塗布型液晶組成物を塗布して液晶を層状に形成する場合など、界面活性の作用によって液晶層表面の空気界面における配向状態を立体的に制御でき、純度の高い選択反射波長を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
これまで、キラル液晶を用いたレーザー発振は、直線偏光で励起した報告例がほとんどで、本発明のような円偏光励起で実験を行った研究は少ない。本発明によれば、励起光の円偏光状態を制御することより、従来のレーザー発振に要する光励起エネルギーの閾値に比し極めて低いことが明らかにされたものであり、その意義は極めて大きい。
【0020】
すなわち、本発明によれば、有機キラル液晶に対して、連続光励起により、レーザー発振を誘起することを可能とするもので、励起光の円偏光状態を適切に選択することにより、発光性キラル液晶から効率的にレーザー発振を誘起することを可能とする。
【0021】
さらに、本発明によれば、本発明レーザー発振デバイスは、熱などの外的環境の影響を受けにくいので、劣悪な環境下でもレーザー発振作動が可能となる。なによりも特別な外部共振器を必要としないため、微小化が容易であり、他の光学素子と集積化や複合化を可能とする。当然ながら、レーザー発振のために外部共振器ミラーの微調整等保守点検から解放されことに加え、制作プロセスも単純で、省電力、省スペース設計を可能とする等、数々の作用効果が期待され、利点を有してなるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施例、図面に基づいて詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明を限定する趣旨ではない。
【0023】
図1は、本発明の実施例で用いた、レーザー発振光デバイスを設計するに用いたキラル液晶を始めとする各材料の化学構造式を示し、そのうち(a)は、キラル液晶(大日本インキ社製商品名DON-103)の構造式を示し、文中(化1)、(化4)で表されている。(b)は、キラル剤(大日本インキ社製商品名R-811、またはS-811)の構造式を示し、文中(化2)、(化5)で表されている。また、(c)は、有機蛍光材料(ナイルレッド:東京化成工業株式会社))の化学構造式を示し、文中(化3)、(化6)で表されている。
【0024】
図2は、本発明の実施例において使用した、各種光学機器からなる光学測定実験装置を示しており、本発明の実施例で作製したレーザー発振光デバイス(以下、光デバイスという)は、図2中、9で示されている。また、図3は、本発明の実施例で設計した光デバイス9の円偏光透過スペクトル(a)と円二色性スペクトル(b)とを示している。さらに、図4は、上記光デバイス9の反射スペクトル(a)と円偏光レーザー発光スペクトル(b)を示している。図4(b)中の挿入図は、602から608nmまでの波長範囲を拡大したレーザー発光スペクトルを示している。さらにまた、図5は、(a)励起光の楕円角(FEx)が-45°(●:左円偏光に相当)、0°(▲:直線偏光に相当)、+45°(黒四角■(以下、黒四角という):右円偏光に相当)とした時のNd:YAGレーザー光のエネルギーに対する光デバイスの発光の各強度変化と、(b)レーザー発振に必要とする光励起エネルギーの励起光の楕円角(FEx)の依存性、それぞれ示している。
【実施例】
【0025】
〔液晶セル=光デバイスの作製〕
液晶材料として、本実施例では図1(a)で示した構造式を有する化合物(大日本インキ社製DON-103:商品名)を用いた。また、キラル剤として、図1(b)で示した構造式を有する化合物(大日本インキ社製のR-811:商品名)を用いた。本実施例では、DON-103に23重量パーセントのR-811を添加することで、可視域に選択反射を示し、かつ右分子らせんを有するキラル液晶相を調整した。DON-103に対するR-811のらせんねじれ力(Helical twisting power;β)は11.0(μm wt%)-1であった。蛍光材料としては公知の蛍光材料を使用することができるが、本実施例では図1(c)に示す構造式を有するナイルレッド(Nile
Red)を用い、先に調整したキラル液晶に対して0.4重量パーセントの割合で混合し、蛍光色素含有キラル液晶とした。ただし、上記液晶、キラル剤、蛍光材料は一例であり、本発明はこれらの材料に限定されることはない。
液晶セルは、2枚のガラス基板を用いて作製した。ガラス基板上に1重量パーセントのポリビニルアルコール(PVA)水溶液をスピン塗布し、一軸方向にラビング処理を促した。2枚のラビング処理を施したガラス基板を7.5μmのポリイミドスペーサーで挟み込み、空セルを作製し、先に調整したキラル液晶混合物を封入した。このようにして得られた蛍光色素添加キラル液晶セルを光デバイスとした。
【0026】
〔光デバイスから得られる発光の測定手法〕
上記のようにして作製された光デバイスから得られる発光の測定を、図2に示す光学測定装置1によって精査した。すなわち、図2に示すように、光励起用レーザーとして、上記Nd:YAGレーザー2の第二高調波を使用し、この光励起用レーザーから、出力2000nJ以下にて、パルス幅3nsec、パルス周波数5Hz、波長532nmのレーザー光を出射した。次いで、ダイクロイックミラー3、光強度調整用素子(ソールラボ社製、NDフィルター4、λ/2波長板5、グランレーザー直線偏光子6)にて、光励起用レーザーから出射したレーザー光の強度を調整し、λ/4波長板7と凸レンズ8を介して、上記作製した光デバイス9の中に導入した。λ/4波長板の進相軸(もくしは遅相軸)と直線偏光子の偏光軸のなす角度を調整することで、励起光の円偏光状態を制御した。光励起用レーザーからのレーザー光は凸レンズ8(f=80mm)で光デバイス9に約200μmで集光し、光デバイスの基板法線に対して45度にて入射させた。そして、光デバイス9の法線方向の発光を二枚の凸レンズを介して分光器10(Ocean Optics社製、USB2000またはHR4000)に集光し、発光スペクトルを測定した。この測定実験に際して設定した光学測定装置を配列した構造に基づいて図2に示す。この光学測定装置によって測定した結果は、図3(a)、(b)、図4(a)、(b)にそれぞれ示す。その結果、実施例で設定した光デバイス9は、図3(a)に示す円偏光透過スペクトル、図3(b)に示す円二色性スペクトルを示すことが明らかにされた。また、光デバイス9は、図4(a)に示す反射スペクトル、図4(b)に示す円偏光レーザー発光スペクトルを示すことが明らかにされた。図4(b)中の挿入図は、602から608nmまでの波長範囲を拡大したレーザー発光スペクトルである。これによれば、実施例で設定した光デバイスは605nmに単一波長特性有するレーザー光を発振していることが明らかとなった。
【0027】
〔光デバイスのレーザー発振に要する光励起エネルギーの円偏光依存性〕
次いで、この光デバイス9の円偏光依存性を精査した。すなわち、励起光の楕円角(Φ
EX)が-45°、0°、+45°の時のNd:YAGレーザー光のエネルギーに対する光デバイスの発光の強度変化を詳細に検討した。その結果は図5(a)に示す通りの結果が得られた。いずれの場合も光励起エネルギーを増加させると、発光強度は数千倍に増加するとともに、そのスペクトル線幅は70nmから0.8nmに急減したが、ここで注目すべき点として、レーザー発振に要する光励起エネルギー(しきい値)は励起光の円偏光状態に強く依存していることが分かった。そのしきい値は、楕円角(ΦEX)が-45°(●:左円偏光に相当)の時に35nJ/pulse、0°(▲:直線偏光に相当)の時に125nJ/pulse、+45°(黒四角:右円偏光に相当)の時に700nJ/pulseであった。図5(b)は、レーザー発振に必要とする光励起エネルギーの励起光の楕円角(ΦEX)の依存性である。FExを+45°から-45°に変化すると、レーザー発振に要する光励起エネルギーを制御できることがわかった。楕円角(ΦEX)が-45°の時、つまり左円偏光で光励起した際のしきい値(35nJ/pulse)は、ピークパワーに変換すると50kW/cm2に相当し、これまでのキラル液晶を使ったレーザー発振に関する報告と比較すると、約一桁低い値であった。以上、示した結果は、右螺旋のキラル液晶を用いた場合であり、図1に示すR-811の鏡像異性体であるS-811の添加によって調整された左螺旋キラル液晶を用いれば右円偏光励起で効率的なレーザー発振を示す。したがって、キラル液晶の分子螺旋方向と励起光の円偏光方向を考慮し、適切な円偏光で光励起をすれば、高効率で分布帰還(DFB)効果が発現し、キラル液晶から反射バンド端でレーザー発振することが可能であることが明らかにされた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、キラル液晶に発光性材料を添加し、分子掌性と逆方向の円偏光で光励起することによって、高効率にレーザー発振する光デバイスであり、その光励起エネルギーのしきい値は励起光の円偏光性に依存し、液晶の分子螺旋と逆方向の円偏光励起のとき、励起エネルギーが最小を示すことが明らかにされた。本発明によって高効率なレーザー発振を実現することができ、光集積回路における新規な単一微小光源、光増幅器、低閾値レーザー発振装置、さらには高輝度ディスプレイなどへ応用することができ、今後、各種分野において大いに利用されることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例で用いたキラル液晶材料(a)、キラル剤(b)及び有機発光材料の各構造式を示す図。
【図2】実施例で用いた光学測定実験装置を示す図。
【図3】光デバイス1の円偏光透過スペクトル(a)と円二色性スペクトル(b)。
【図4】光デバイス1の反射スペクトル(a)と円偏光レーザー発光スペクトル(b)を示す図。(b)中の挿入図は、602から608nmまでの波長範囲を拡大したレーザー発光スペクトルを示す図。
【図5】(a)励起光の楕円角(FEx)が-45°(●:左円偏光に相当)、0°(▲:直線偏光に相当)、+45°(黒四角:右円偏光に相当)の時のNd:YAGレーザー光のエネルギーに対する光デバイスの発光の強度変化と、(b)レーザー発振に必要とする光励起エネルギーの励起光の楕円角(FEx)の依存性、それぞれ示した図。
【符号の説明】
【0030】
1 液晶セルのレーザー発振を評価する際用いた光学測定装置
2 励起光源
3 ダイクロニックミラー
4 NDフィルター
5 λ/2波長板
6 直線偏光子
7 λ/4波長板
8 凸レンズ
9 光デバイス
10ファイバー分光器
図面
【図3】
0
【図4】
1
【図5】
2
【図1】
3
【図2】
4