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明細書 :パック・セメンテーション法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4943687号 (P4943687)
公開番号 特開2007-113081 (P2007-113081A)
登録日 平成24年3月9日(2012.3.9)
発行日 平成24年5月30日(2012.5.30)
公開日 平成19年5月10日(2007.5.10)
発明の名称または考案の名称 パック・セメンテーション法
国際特許分類 C23C  10/52        (2006.01)
FI C23C 10/52
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2005-306932 (P2005-306932)
出願日 平成17年10月21日(2005.10.21)
審査請求日 平成20年10月6日(2008.10.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】木村 隆
【氏名】橋本 健紀
【氏名】ガオ・コウウェイ
【氏名】チャオ・リジイエ
審査官 【審査官】祢屋 健太郎
参考文献・文献 特開平05-093258(JP,A)
特開2003-314970(JP,A)
特開平11-016671(JP,A)
特開昭63-288939(JP,A)
特開平05-125519(JP,A)
特開昭59-013063(JP,A)
特開平04-157106(JP,A)
調査した分野 C23C 8/00-12/02
特許請求の範囲 【請求項1】
パックセメンテーション法による表面改質で、被覆材としてL1型AlTi粉末を使用し、γ-TiAl基合金表面が被膜されていることを特徴とするTiAl基合金。
【請求項2】
請求項1に記載の被覆されたTiAl基合金の製造方法であって、
基材にγ-TiAl基合金を用い、
前記基材表面周囲に、被覆材の75-107μmの粒径範囲のL1型AlTi、反応制御材及び焼結防止材の45-75μmの粒径範囲のAlの混合粉を配し、
更に、前記混合粉の周囲に45μm以下の粒径のL1型AlTi微細粉末を配し
真空中で、1000~1200℃の温度範囲で、5時間以上保持することを特徴とする被覆されたTiAl基合金の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の被覆されたTiAl基合金の製造方法であって、熱処理を2×10-4~5×10-4Paの真空中で行うことを特徴とする被覆されたTiAl基合金の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、金属系材料の耐酸化性や耐摩耗性の向上に不可欠な耐熱材料の表面を化学的蒸気堆積法で被覆するパック・セメンテーション法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属系基材の表面を改質してさらに高機能な用途に利用することは一般的に行われているが、このような金属系材料の表面を改質して耐酸化性や耐摩耗性を向上させる方法としては用途や材料の特質に応じて、適合元素添加法、電着法、サンドブラスト法、物理的蒸着法および化学的蒸着法等の種々の方法が知られている(たとえば、特許文献1~4)。
【0003】
このうち化学的蒸気堆積法(Chemical Vaporization Deposition)の一種であるパ
ック・セメンテーション法は湾曲曲面を有するタービンブレードや各種部材を一体成型されたタービン用コンプレッサー・ロータなど複雑形状を有する金属系材料の表面改質法として広く応用されている。しかしながら、従来から行われているパック・セメンテーション法はパック・セメンテーション処理用の容器内に閉じ込められた雰囲気ガスが拡散して基材やパック・セメンテーション処理用粉末内部と絶えず反応してパック・セメンテーション処理を妨げる原因となる。このためパック・セメンテーション処理を行う雰囲気ガスの圧力を減少して高真空状態を保持する必要があり常時10-4Pa以上の真空状態を保持することが要求されるため、パック・セメンテーション法における蒸着室は加熱可能な金属製の大容量・高真空の排気装置が必要となり高額な設備費用が不可欠であるとされていた。また、容器内から発生する蒸発気体が基材やパック・セメンテーション処理用粉末内部を汚染するため蒸発気体を発生する容器を使用することができずパック・セメンテーション処理に使用する器具も制限されていた。

【特許文献1】: 特開2005-082828号公報
【特許文献2】: 特開2005-082824号公報
【特許文献3】: 特開2004-337908号公報
【特許文献4】: 特開平11-092822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この出願の発明は従来の課題を解決するものとして、通常の低価格の電気炉や排気装置を用いることが可能であり蒸着室や排気装置や設備が安価で再現性と効率性が良好な新しいパック・セメンテーション法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この出願の発明は上記の課題を解決するものとして、第1には、パック・セメンテーション法による表面改質で、γ-TiAl基合金表面が被膜されていることを特徴とするTiAl基合金を提供する。
【0006】
第2には、発明1の被覆されたTiAl基合金の製造方法であって、
基材にγ-TiAl基合金を用い、前記基材表面周囲に、被覆材の75-107μmの粒径範囲のL1型AlTi、反応制御材及び焼結防止材の45-75μmの粒径範囲のAlの混合粉を配し、更に、前記混合粉の周囲に45μm以下の粒径のL1型AlTi微細粉末を配し真空中で、1000~1200℃の温度範囲で、5時間以上保持することを特徴とする被覆されたTiAl基合金の製造方法を提供する。
【0007】
第3には、発明1の被覆されたTiAl基合金の製造方法であって、熱処理を2×10-4~5×10-4Paの真空中で行うことを特徴とするAlTi層被覆TiAl基合金の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
上記第2又は3のパック・セメンテーション法によれば、基材上に剥離や割れのない安定した被膜が成膜できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1はこの出願の発明のパック・セメンテーション処理法の態様を模式的に示したものであるが、図1に示されているように基材(1)はパック・セメンテーション処理用粉末(2)によって被覆されているが、このパック・セメンテーション処理用粉末(2)は、パック・セメンテーション用粉末作成過程において副次的に生成される微細粉末(3)によりさらに被覆された状態となっている。このパック・セメンテーション法の発明は基材を被覆したパック・セメンテーション用粉末の周囲をさらに微細粉末で被覆するように配置して加熱することにより該微細粉末をパック・セメンテーション用粉末の蒸着開始温度以下の温度で焼結させて、パック・セメンテーション用粉末の蒸着領域と周囲領域を隔離して雰囲気の流れを遮断した状態でパック・セメンテーションを行うものである。
【0017】
したがって、この出願の発明のパック・セメンテーション法は加熱処理進行中における雰囲気の影響は焼結された微細粉末で周囲が密閉された非常に狭い領域に限定されるという優れた特徴を有している。なお、この出願の発明において使用する微細粉末は主としてパック・セメンテーション用粉末の作成過程において副次的に生成されるものを利用するものであるが、この微細粉末とはパック・セメンテーション用粉末より小さい径の粒子を意味する。すなわち、微細粉末の組成がパック・セメンテーション用粉末と同じ組成であっても微細化することにより熱吸収効率が向上するためにパック・セメンテーション用粉末が蒸着を開始する温度以下の温度で焼結することになる。なお、この微細粉末は径を小さくしてパック・セメンテーション用粉末が蒸着する温度より低い温度で焼結すればよく必ずしもパック・セメンテーション用粉末と同じ組成である必要はない。
【0018】
この発明のパック・セメンテーションの処理時間としては5~20時間程度が好ましいが処理温度が低温であればあるほど被膜内部を均一にするために長時間の処理が必要である。また、被膜の安定性は被覆後の被覆材の使用温度と関係するので被覆処理温度は使用温度より僅かに高い温度で行うのが好ましく通常は蒸着処理よりも僅かに高い温度でパッ
ク・セメンテーション処理を行うことが好ましい。この出願の発明における好ましい基板としては、Ni基合金、Co基合金、ODS(酸化物分散強化)合金、DSE(方向凝固)合金等が例示される。また、基材とパック・セメンテーション用粉末の好ましい組合わせとしては下記の組合わせが典型例として考慮されるが、もちろんこの組み合わせに限定されないことはいうまでもない。
【0019】
基材;IN738LC、パック・セメンテーション用粉末;Cr-15%Al合金
+NHCl+Al
(NHClは反応促進剤、Alは反応抑制剤)

基材;CMSX-2、パック・セメンテーション用粉末;Cr-30Al合金
基材;MAR-M509、パック・セメンテーション用粉末;Cr-20%Al合金、
基材;MA6000、パック・セメンテーション用粉末;Al化合物
また、この出願の発明では主として金属系基板が用いられるが、金属系基板以外のたとえばガラス基板や半導体の基板に化合物や純金属を全面被覆することやその蒸着膜の上に別の方法で模様を付けることなども態様の1つとして考慮されてよい。
【0020】
そこでこの出願の発明を以下に実施例を示し、さらに詳しく例示説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
【実施例】
【0021】
基材(地金)として金属間化合物γ-TiAl基合金、被覆材としてL12型Al3Tiを用いた。具体的にはパック・セメンテーション処理に用いる主要粉末は篩により選定された75-107μmのL12型Al3Tiの粉末とパック・セメンテーション用粉末の反応抑制剤および焼結防止剤として45-75μmのα-Al(10wt%)を混合した。そして、パック・セメンテーション用粉末の周囲を被覆する微細粉末として45μm以下のL12型Al3Tiの粉末を用いて溶解法により被覆材合金を作成した。なお、被
覆合金は均質化処理を経て粉砕化後の乳鉢により微粉化したが微粉化されたものは粉径が75-107μmのものが20数重量%、45μm以下のものが70数重量%であった。
【0022】
パック・セメンテーション用粉末を高純度アルミナ坩堝(φ30mm・高さ30mm)に充填後、その中に短冊状基材(幅5mm、厚さ2.5mm、長さ50mm)を埋め込み、その上に微粉末を約2mm程度被せた。更にその上にφ1mmの穴を9本穿孔したステンレス製蓋(重量14g)を乗せた。最良条件としてアルミナ坩堝に微粉末を塗布した後
、主要粉末のパック・セメンテーション用粉末を充填した。なお、微粉末の塗布および堆積を施さない状態におけるパック・セメンテーション処理も同じ条件で行った。
【0023】
いずれの場合も、厚さ1mmのTa箔でアルミナ坩堝を包んだ。加熱炉として内径φ60mmの炉心管、均熱部長さ40mm、全長50cmの横型電気炉を用いた。この炉心管内部に内径φ56mm、全長150cmの透明石英管内部にTa箔で包んだアルミナ坩堝を挿入し加熱する。坩堝の温度検出用として石英管内部に熱電対を装着した。同石英管は拡散ポンプと真空ゴム管(長さ1m、内径9mm)により連結されており、同ポンプの低圧側に設置された真空計が2-5×10-4Paを指示した後、加熱を開始する。加熱後250℃において30分保持する。その後、一定速度(3℃/min.)でパック・セメンテーション処理温度まで昇温させて所定時間加熱処理後、石英管を炉外に移動させて冷却する。
100℃程度に冷却後、石英管より取り出す。加熱温度は1000~1200℃の範囲で行った。加熱保持時間は5時間、10時間、20時間とした。被膜厚さは12-35μmであった。保持時間は高温では5時間、低温では20時間が必要であった。被膜と基材の
密着性は曲げ試験により行い、被膜と基材の界面における剥離は表面伸び2%以下では検出されない。また、回転刃による切断においても剥離は形成されなかった。大気中で室温の被覆材を1000℃の炉内に移動させ15分加熱後取り出す繰り返し酸化を12回行った結果、剥離は全く無く、その酸化増量は被覆材の特性と同一であることを示した。
【0024】
図2~図5は微粉末の塗布や堆積を施した状態と微粉末の塗布や堆積を施さない状態において、1100℃、20時間パック・セメンテーション処理をした後の被膜形状のX線像とBEI像である。図2は試料断面の金相顕微鏡組織を示したものであるが、図2からも試料の辺や角に拠らず、ほぼ等しい厚さの被膜が形成されていることが示されている。また、基材と被膜の界面において切断による剥離や被膜自身の割れ等も認められない。
【0025】
なお、同組織は被膜表面から7-8μmの深さにアルミナ粒が一列に配列してしている状態が観察されているがこのアルミナ粒の形成は微細粉末(3)をパック・セメンテーション処理用粉末(2)の上部に堆積させた場合には観察されるが、パック・セメンテーション処理用粉末(2)全体を微細粉末(3)で被覆した場合には観察されない。
【0026】
パック・セメンテーション処理後の横断面を観察するためには被観察材(パック・セメンテーション処理材)の表面構造が破れないように純Niを被覆してから切断機にかけられるが図2において最外表面に剥がれたように観察される薄片はこのNiの膜である。
【0027】
図3~図5は同一視野のEPMA像であり、Al-Kα像、V-Kα像、Mn-Kα像、
O-Kα像、Ti-Kα像等の特性X線像とBEI像(反射電子像)を示したものである。
【0028】
図3は微細粉末(3)を用いない場合に形成される被膜形状であるが膜の厚さが著しく不規則であり被膜が形成されていない部分も見られる。また、図4は微細粉末(3)を坩堝上部にのみ堆積させ、坩堝の内壁に塗布しなかった場合の組織の状態であるが均一な被膜が形成されている。さらに、図5はパック・セメンテーション処理用粉末(2)全体を微細粉末(3)で包んだ場合の組織であるがアルミナ粒の形成は認められず健全な被膜が形成されていることがわかる。なお、この出願のパック・セメンテーション処理法の発明における種々の実験では加熱保持時間による被膜の厚さは飽和漸近放物線型の成長を示すことも確認できている。すなわち、従来のパック・セメンテーション処理法の場合は高温時における雰囲気ガスの放出量が少なく熱安定性に優れた金属製炉壁を有する電気炉や排気速度が大きく到達真空度が10-4Pa以上の排気装置が必要とされていたが、この出願
の発明ではパック・セメンテーション処理温度が1200℃以下では通常の炉心管付帯を、またパック・セメンテーション処理温度が1200℃~1400℃では高純度アルミナ炉心管付帯の管状電気炉を用いることが可能となる。また、この出願のパック・セメンテーション法の発明は蒸着領域と周囲部における雰囲気を焼結により隔離されているために蒸着過程における雰囲気の変化に影響を受けないので、到達真空度が10-4Pa程度で充
分である。しかも、たとえ蒸着過程中に雰囲気の変化が生じたとしても真空装置の速やかな応答を必要としないため通常使用されている排気装置で適応できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この出願の発明のパック・セメンテーション処理を模式的に示したものである。
【図2】1100℃において20時間のパック・セメンテーション処理を施した試料断 面の金相顕微鏡組織である。
【図3】微細粉末を用いない場合に形成される被膜形状をX線像およびBEI像である。
【図4】微粉末を坩堝上部に堆積させた時の組織のX線像およびBEI像である。
【図5】主要粉末全体を包んだ場合の組織のX線像およびBEI像である。
【符号の説明】
【0030】
1: 基材
2: パック・セメンテーション処理用粉末
3: 微細粉末
4: 容器(坩堝)


図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4