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明細書 :走査型プローブ顕微鏡

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4857157号 (P4857157)
公開番号 特開2008-224477 (P2008-224477A)
登録日 平成23年11月4日(2011.11.4)
発行日 平成24年1月18日(2012.1.18)
公開日 平成20年9月25日(2008.9.25)
発明の名称または考案の名称 走査型プローブ顕微鏡
国際特許分類 G01Q  60/10        (2010.01)
G01Q  90/00        (2010.01)
FI G01Q 60/10
G01Q 90/00
請求項の数または発明の数 6
全頁数 10
出願番号 特願2007-064584 (P2007-064584)
出願日 平成19年3月14日(2007.3.14)
審査請求日 平成21年11月26日(2009.11.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】前田 康二
【氏名】成瀬 延康
個別代理人の代理人 【識別番号】100083138、【弁理士】、【氏名又は名称】相田 伸二
審査官 【審査官】樋口 宗彦
参考文献・文献 国際公開第02/023159(WO,A1)
特開2002-318186(JP,A)
特開2000-277581(JP,A)
特開2002-286618(JP,A)
特開2002-243619(JP,A)
特開平06-137810(JP,A)
STM ナノスペクトロスコピー,表面科学,2002年,Vol.23, No.4,pp.224-232
調査した分野 G01Q10/00-90/00

JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
IEEE Xplore
CiNii
J-Global
特許請求の範囲 【請求項1】
試料に対峙するように配置される探針と、
該試料に光を照射する光照射手段と、
所定の変調周波数で該試料の電場を変調させるための電場変調手段と、
該変調周波数として、該試料に変位電流が発生するような周波数を設定する変調周波数設定手段と、
前記電場変調手段からの信号と同期を取りながら前記変位電流を検出して前記試料を測定する試料測定手段と、
を備えたことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
【請求項2】
前記変調周波数設定手段は、複数の変調周波数を設定可能に構成された、
ことを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項3】
前記探針と前記試料との離間距離を制御する離間距離制御手段、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項4】
前記電場変調手段は、前記探針と前記試料との間にバイアス電圧を印加するバイアス電源と、前記変調周波数設定手段により設定された周波数に基づき該バイアス電圧を変調する変調器と、
からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項5】
前記電場変調手段は、表面光起電力が発生するような光を断続的に発生させる断続光発生手段である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項6】
前記断続光変調手段は、測定分解能と変位電流発生量が適正になるように光の照射径を調整する照射径調整手段を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の走査型プローブ顕微鏡。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に発生する変位電流を利用して該試料の表面形状や構造等を測定する走査型プローブ顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料に対峙するように探針を配置し、それらの間に流れるトンネル電流を利用して試料表面を観察するようにした装置(Scanning Tunneling Microscopy:以下、“STM”とする)が知られている(例えば、特許文献1参照)。このSTMは、電子のトンネル現象を利用して試料表面の形状や電子状態に関する情報を原子オーダーの空間分解能にて検出でき、顕微鏡としての用途だけでなく、微細加工装置や情報記録再生装置等への応用も期待されている。
【0003】
そして、このSTMを利用し、ナノスケールの空間分解能で試料のバンド構造を測定できるようにした手法(STM-EFMS:STM-Electric Field Modulation Spectroscopy)が本発明者らにより提案されている(特許文献2及び特許文献3参照)。
【0004】
図5は、このSTM-EFMSを実施する装置の従来構成の一例を示す模式図であって、符号100は試料を示し、符号101は、該試料100に対峙するように配置された探針を示す。また、符号102は、試料100と探針101との間に電圧を印加するバイアス電源を示し、符号103は、バイアス電圧を適当な振幅と周波数で変調させるための変調器を示す。さらに、符号105は、光源である白色ランプを示し、符号106は、レンズを示し、符号107は、該白色ランプ105の光から特定の狭い波長帯域の光を分離するためのモノクロメーターを示し、符号108は、光を導く光ファイバーを示し、符号109は、該光を試料100の表面に集光する集光レンズを示す。この装置では、探針101に印加するバイアス電圧を変調することにより、試料中の電場をナノスケールオーダーの狭領域にて変調して、Franz-Keldysh効果を誘起することができる。そして、このバイアス電圧の印加によって試料100と探針101との間にはトンネル電流Itが流れるが、そのトンネル電流Itをロックインアンプ104により取り込み、トンネル電流変化量を算出し、それに基づき吸収係数αの変化分を間接的に求めるようになっている。
【0005】
また、上述のようにバイアス電圧を直接変調するのではなく、光変調による方法も提案されている。その方法では、チョップした光(ギャップエネルギー以上の光)を試料に照射して表面光起電力(SPV)を周期的に発生させ、それに伴って、試料中の電場が変調されるようにしている。

【特許文献1】特開平06-137810号公報
【特許文献2】国際公開第02/023159号パンフレット
【特許文献3】飛田聡、目良裕、前田康二、「STMナノスペクトロスコピー」、表面科学、日本表面科学会、平成14年4月、第23巻、第4号、pp24-32
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の装置を使って得た測定結果(スペクトル形状やエネルギー位置)は試料100の表面や探針101の状態等の影響を極めて敏感に受けてしまうため、測定の再現性(言い換えれば、測定の信頼性)に欠けてしまうという問題があった。したがって、試料100のSTM-EFMS測定を上述のモノクロメーター107を用いて行なう際に、測定信頼性を担保するために波長掃引を何度も行なわなければならず、測定作業に極めて時間が掛かる上、上述の擾乱要因により得られた結果の解釈も容易でない等の様々な問題が生じていた。
【0007】
本発明は、上述の問題を解決する走査型プローブ顕微鏡を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、図1及び図2に例示するものであって、試料(A)に対峙するように配置される探針(2)と、
該試料(A)に光を照射する光照射手段(3)と、
所定の変調周波数で該試料(A)の電場を変調させるための電場変調手段(4,14)と、
該変調周波数として、該試料(A)に変位電流が発生するような周波数を設定する変調周波数設定手段(5,15)と、
前記電場変調手段(4,14)からの信号(f)と同期を取りながら前記変位電流(Id)を検出して前記試料(A)を測定する試料測定手段(6)と、を備えたことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡についてのものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記変調周波数設定手段(5,15)は、複数の変調周波数を設定可能に構成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記探針(2)と前記試料(A)との間の離間距離を制御する離間距離制御手段(7)、を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、前記電場変調手段(4)は、前記探針(2)と前記試料(A)との間にバイアス電圧を印加するバイアス電源(40)と、前記変調周波数設定手段(5)により設定された周波数に基づき該バイアス電圧を変調する変調器(41)と、からなることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、前記電場変調手段(14)は、表面光起電力が発生するような光を断続的に発生させる断続光発生手段であることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明において、前記断続光変調手段(14)は、測定分解能と変位電流発生量が適正になるように光の照射径を調整する照射径調整手段(8)を有することを特徴とする。
【0014】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、4及び5に係る発明によれば、変位電流を利用した測定を行なうので、トンネル電流を利用したときのように試料表面や探針の状態等の影響をその測定結果が敏感に受けてしまうことはほとんど無く、その面において、測定の再現性(信頼性)を確保できる。また、トンネル電流利用の測定の場合には、前記探針と前記試料との離間距離の変動に伴って測定結果も鋭敏に変動することとなるが、変位電流利用の本発明によれば、そのような測定結果の変動はほとんど無く、その面においても、測定の信頼性を確保することができる。そして、このように測定の信頼性が高いことから、トンネル電流のときのように波長掃引を何度も行なう必要はなく、その分、測定時間を短縮できる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、変調周波数を適正に設定することにより、変位電流の発生量を適正にコントロールすることができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、離間距離を適正範囲になるように制御でき、それに伴って、探針電流中の変位電流の割合(変位電流の発生量)を適正に制御することができる。また、前記電場変調手段を請求項4に記載の方式(バイアス変調方式)にした場合には、前記離間距離制御手段により前記離間距離を小さく制御することにより、電場変調領域を狭くして、測定の空間分解能を高くすることができる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、測定の分解能及び変位電流の発生量を適正にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図1及び図2に沿って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。ここで、図1は、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡の全体構成の一例を示すブロック図であり、図2は、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡の全体構成の他の例を示すブロック図である。
【0020】
本発明に係る走査型プローブ顕微鏡は、図1に符号1で例示するものであって、試料Aに対峙するように配置される探針(プローブ)2と、前記試料Aに光を照射する光照射手段3と、所定の変調周波数で該試料Aの電場を変調させるための電場変調手段4と、該試料Aに変位電流が発生するような周波数(一般的には、トンネル電流が発生する際の周波数よりも高い周波数)を前記変調周波数として設定する変調周波数設定手段5と、前記電場変調手段4からの信号(変調信号)fと同期を取りながら前記変位電流Idを検出して前記試料Aを測定する試料測定手段6と、を備えている。本発明によれば、変位電流Idを利用した測定を行なうので、トンネル電流を利用したときのように試料表面や探針の状態等の影響をその測定結果が敏感に受けてしまうことはほとんど無く、その面において、測定の再現性(信頼性)を確保できる。そして、このように測定の信頼性が高いことから、トンネル電流のときのように波長掃引を何度も行なう必要はなく、その分、測定時間を短縮できる。
【0021】
上述の変調周波数設定手段5(及び図2に符号15で示す変調周波数設定手段)は、複数の変調周波数を設定できるように構成しておき、必要に応じて変調周波数を切り換えるようにしても良い。そのようにした場合には、変調周波数を適正に設定することにより、変位電流の発生量を適正にコントロールすることができる。
【0022】
また、上述の走査型プローブ顕微鏡1に離間距離制御手段7を設けておいて、前記探針2と前記試料Aとの間の離間距離が適正になるように制御すると良い。この離間距離制御手段7としては様々な態様のものを使用できる。例えば、0.1~1.0nm程度の離間距離でトンネル電流が発生することが分っているならば、2.0nm程度の離間距離となるように前記離間距離制御手段7で制御を行なうようにしても良い。この離間距離制御手段7は、前記探針2を移動させるアクチュエータ70と、探針-試料間に流れるトンネル電流Itを検知すると共に該検知したトンネル電流Itに基づき前記アクチュエータ70を制御する離間距離制御部71と、により構成すると良い。一般に、トンネル電流を発生させる場合には、探針2と試料Aとの離間距離は、大体0.1nm~1.0nmという非常に狭い範囲に維持しなければならないが、変位電流を発生させる場合には、0.1nm~数千nm(又はそれ以上)と範囲が格段に広くなる。したがって、本発明の場合、トンネル電流を発生させる場合に比べると離間距離の制御はラフなもので良く(つまり、所定の範囲内であれば離間距離が多少変動してしまっても良く)、その結果、離間距離制御部71を安価な素子や部品で構成することができ、装置全体のコスト削減を図ることができる。そして、トンネル電流利用の測定の場合には、前記探針2と前記試料Aとの離間距離の変動に伴って測定結果も変動することとなるが、変位電流利用の本発明によれば、そのような測定結果の変動はほとんど無く、その面においても測定の信頼性を確保することができる。なお、前記離間距離を小さくし過ぎると、探針電流中のトンネル電流の割合が増えて変位電流の割合が減少し、また、前記離間距離を大きくすると(上述のように変位電流が発生はするものの)その量が少なくなって信号強度も弱くなってしまう。したがって、前記離間距離制御手段7は、適正範囲内(つまり、適正量の変位電流が発生し得るような離間距離範囲)になるように前記離間距離を制御すると良い。さらに、次に述べるバイアス変調方式を用いる場合には、離間距離を小さく制御することにより、電場変調領域を狭くして、測定の空間分解能を高くすることができる。
【0023】
ところで、図1に示す電場変調手段4は、バイアス変調を行なうものであって、
・ 前記探針2と前記試料Aとの間にバイアス電圧を印加するバイアス電源40と、
・ 前記変調周波数設定手段5により設定された周波数に基づき該バイアス電圧を変調する変調器41と、
により構成されているが、図2に符号14で示すように(光変調方式)、
・ 表面光起電力が発生するような光(禁制帯幅以上のエネルギーを有する単色光であって、例えば、レーザー光)を断続的に発生させる断続光発生手段
により構成しても良い。なお、図2の光変調方式の場合には、測定分解能や変位電流発生量は光の照射径(照射面積)に応じて変化し、照射径を小さくするほど、測定分解能は高くなる反面、変位電流発生量は少なくなる。そこで、前記断続光発生手段14に照射径調整手段8を設けておいて、測定分解能と変位電流発生量が共に適正になるような照射径で光を照射するようにすると良い。
【実施例1】
【0024】
本実施例においては、図1に示したバイアス変調方式の顕微鏡1と、図2に示した光変調方式の顕微鏡10とで、n-Si(111)基板にβ-FeSiナノドットをエピタキシャル成長させた試料を測定した。以下、それぞれの顕微鏡1,10の具体的構成及び測定方法について説明する。なお、既に記載している内容と重複する部分の説明は省略する。
【0025】
〈バイアス変調方式の顕微鏡1:図1〉
この顕微鏡1では、光照射手段3を、ハロゲンランプ30と、レンズ31と、ハロゲンランプ30の光から特定の波長帯域の光を分離するためのモノクロメーター32と、光ファイバー33と、該光ファイバー33の出射光を試料A上に集光するための集光レンズ34と、から構成した。
【0026】
なお、測定条件は、UHV、98K、変調周波数設定手段5で設定するバイアス変調周波数を5kHzとし、フォトンエネルギーは0.7eV~1.3eVとした。その測定結果は、図3(a) (b) に示す(詳細は後述する)。
【0027】
ここで、本顕微鏡を用いた測定原理について説明する(前記特許文献3参照)。
【0028】
何らかの原因でバンドベンディング(BB)を生じている結晶表面にバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光を照射すると、生成した光キャリアはBBに起因する電場によってドリフトし、BBを低下させるような電荷分離が起こる。このBBの低下量は表面光起電力(Surface Photo Voltage=SPV)と呼ばれている。いま、このSPVが前記試料Aに発生すると、探針—試料間のバイアス電圧が実効的にSPV分だけ変化し、探針電流が変化する。一方、上述の電場変調手段4で試料Aの電場を変調するとこれによってバンド構造が変調される。このときバンド間遷移を起こす光を連続的に照射すると、連続光照射に伴い発生するSPVは電場変調に同期して変化する。従って、連続光の波長の関数として探針電流変調信号の振幅を測定すると、従来使われてきたマクロ測定手法のERと同様のスペクトル(Electric Field Modulation Spectroscopy=EFMSスペクトル)が得られる。ところで、図4の下側の点群(白い丸の集合)は、探針試料間がトンネル電流が観測されるほどに近付けたときの測定結果(従来行なっていた方法によるEFMSの測定結果)を示し、上側の点群(黒い丸の集合)は、探針を試料から遠ざけて変位電流のみを発生させたときの測定結果を示す。変位電流を利用して測定しても上記従来のEFMS測定結果(トンネル電流が観測されるほどに探針を試料に近付けて測定したときの結果)と同等の結果が得られることに加え、これらの結果は、過去のERの結果と同等であることを本発明者らは確かめている。
【0029】
以下、上記顕微鏡1を用いた測定手順について、簡単に説明する。
(1) 探針2と試料Aとの間に適当なバイアス電圧を印加し、試料Aにバンドベンディングを誘起する。
(2) 前記電場変調手段4でバイアス電圧を変調する。これにより、試料表面電場がバイアスに同期し、従ってバンド構造がバイアスに同期して変化する。
(3) 光照射手段3により、バンド間遷移を起こす光を連続的に照射する。これにより発生するSPVがバイアス変調に同期して変化する。
(4) 連続光の波長の関数として変位電流変調信号の振幅を測定する。具体的には、変調された変位電流波形をバイアス電圧の変調周波数でロックイン検波して得た電流振幅ΔIを求める。
(5) バンド構造の特異点に対応して鋭いスペクトル構造が現れるER(Electro-Reflectance)と同様のスペクトルを得る。
【0030】
〈光変調方式の顕微鏡10:図2〉
図1に示す顕微鏡1では、バンド構造を変調するために探針のバイアス電圧を変調したが、図2に示す顕微鏡10では、光変調方式を採用している点で異なる。
【0031】
図示の電場変調手段(断続光発生手段)14は、表面光起電力が発生するような光(禁制帯幅以上のエネルギーを有する単色光であって、例えば、レーザー光)を断続的に発生させるものであって、
・ ハロゲンランプ140
・ レンズ141
・ 光線を一定間隔で断続するチョッパー142
・ 特定の波長帯域の光を分離するためのモノクロメーター143
・ 光ファイバー144
・ 該光ファイバー144の出射光を試料A上に集光するための集光レンズ145
から構成した。そして、変調周波数設定手段15の光変調周波数は1.5kHzとした。他の測定条件は、UHV、98K、フォトンエネルギーは0.7eV~1.3eVとした。その測定結果は、図3(a) (b) に示す(詳細は後述する)。
【0032】
以下、上記顕微鏡10を用いた測定手順について、簡単に説明する。
(1) 試料にレーザー光を照射してSPVを発生させ、このレーザー光をチョップして表面電場変調を起こさせる。
(2) 光照射手段3により、バンド間遷移を起こす光を連続的に照射する。これにより照射波長に依存して付加的に発生するSPVが電場変調に同期して変化する。
(3) 連続光の波長の関数として変位電流変調信号の振幅を測定する。具体的には、変調された変位電流波形をレーザー光のチョッピング周波数でロックイン検波して得た電流振幅ΔIを求める。
(4) バンド構造の特異点に対応して鋭いスペクトル構造が現れるER(Electro-Reflectance)と同様のスペクトルを得る。
【0033】
〈バイアス変調方式及び光変調方式による測定結果についての考察〉
図3(a) は、光変調方式及びバイアス変調方式により0.70~0.85eVで観測されたSTM-EFMSスペクトルを示す図であり、(b) は、光変調方式及びバイアス変調方式により1.00~1.30eVで観測されたSTM-EFMSスペクトルを示す図であるが、両方式でピーク位置はほぼ一致していることが分る。また、バイアス変調方式でより明瞭に観測される0.74eV、0.82eV付近のシグナルの位置は、他の文献“H.Udono,et al,Thin Solid Films 461 (2004) 182”で報告されている値とほぼ一致しており、測定の信頼性も確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、量子井戸、量子ドットのバンド間遷移に伴う吸収特性を、エネルギー位置に対して正確に測定するために利用できる。また、本発明は、半導体上もしくは半導体中の生体分子、化学分子、不純物原子などに関して、光吸収波長による同定に利用可能である。さらに、本発明は、吸収スペクトルの微細構造から原子分子の結合状態、電子状態を原子スケールでの測定に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡の全体構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡の全体構成の他の例を示すブロック図である。
【図3(a)】図3(a) は、光変調方式及びバイアス変調方式により0.70~0.85eVで観測されたSTM-EFMSスペクトルを示す図である。
【図3(b)】図3(b)は、光変調方式及びバイアス変調方式により1.00~1.30eVで観測されたSTM-EFMSスペクトルを示す図である。
【図4】図4は、探針を試料に近付けてトンネル電流を発生させたときの測定結果(白い丸の集合)と、探針を試料から遠ざけて変位電流を発生させたときの測定結果(黒い丸の集合)とを示す図である。
【図5】図5は、このSTM-EFMSを実施する装置の従来構成の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0036】
1 走査型プローブ顕微鏡
2 探針
3 光照射手段
4 電場変調手段
5 変調周波数設定手段
6 試料測定手段
7 離間距離制御手段
8 照射径調整手段
10 走査型プローブ顕微鏡
14 電場変調手段(断続光発生手段)
15 変調周波数設定手段
40 バイアス電源
41 変調器
A 試料
Id 変位電流
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3(a)】
2
【図3(b)】
3
【図4】
4
【図5】
5