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明細書 :ナノワイヤー及び混合ナノワイヤー並びに混合ナノワイヤーの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4706078号 (P4706078)
公開番号 特開2007-126334 (P2007-126334A)
登録日 平成23年3月25日(2011.3.25)
発行日 平成23年6月22日(2011.6.22)
公開日 平成19年5月24日(2007.5.24)
発明の名称または考案の名称 ナノワイヤー及び混合ナノワイヤー並びに混合ナノワイヤーの製造方法
国際特許分類 C30B  29/66        (2006.01)
C30B  29/62        (2006.01)
FI C30B 29/66
C30B 29/62 D
C30B 29/62 U
請求項の数または発明の数 15
全頁数 12
出願番号 特願2005-321087 (P2005-321087)
出願日 平成17年11月4日(2005.11.4)
審査請求日 平成20年10月31日(2008.10.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】板東 義雄
【氏名】ウィン・ロンウェイ
【氏名】デミトリー・ゴルバーグ
審査官 【審査官】吉田 直裕
参考文献・文献 PAN Z W, DAI S, ROULEAU C M, LOWNDES D H ,Germanium-Catalyzed Growth of Zinc Oxide Nanowires: A Semiconductor Catalyst for Nanowire Synthesis ,Angew Chem Int Ed ,2004年12月27日,Vol.44, No.2 ,Page.274-278
調査した分野 C30B 29/66
C30B 29/62
JSTPlus(JDreamII)
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Science Citation Index Expanded(Web of Science)
特許請求の範囲 【請求項1】
酸化亜鉛ナノワイヤーとゲルマニウムナノワイヤーとが軸方向に接合した単結晶でなる二軸ナノワイヤー。
【請求項2】
ゲルマニウムからなる中心部と該中心部を囲む酸化亜鉛からなる円筒部とから構成された単結晶でなる同軸ナノワイヤー。
【請求項3】
酸化亜鉛からなる中心部と該中心部を囲むゲルマニウムからなる円筒部とから構成された単結晶でなる同軸ナノワイヤー。
【請求項4】
酸化亜鉛ナノワイヤーとゲルマニウムナノワイヤーとが軸方向に接合した単結晶でなる二軸ナノワイヤーと、
ゲルマニウムからなる中心部と該中心部を囲む酸化亜鉛からなる円筒部とから構成された単結晶でなる第一の同軸ナノワイヤーと、
酸化亜鉛からなる中心部と該中心部を囲むゲルマニウムからなる円筒部とから構成された単結晶でなる第二の同軸ナノワイヤーと、
が混合して成る混合ナノワイヤー。
【請求項5】
前記混合ナノワイヤーが、前記二軸ナノワイヤーを約45%、前記第一の同軸ナノワイヤーを約35%、前記第二の同軸ナノワイヤーを約20%の割合で含有していることを特徴とする、請求項4に記載の混合ナノワイヤー。
【請求項6】
酸化ゲルマニウム粉末とゲルマニウム粉末との混合物を、不活性ガス気流中で加熱することにより、ゲルマニウムナノワイヤーを生成する第一工程と、
上記第一工程で生成したゲルマニウムナノワイヤーと酸化亜鉛粉末とを不活性ガス気流中で加熱することにより、酸化亜鉛ナノワイヤーとゲルマニウムナノワイヤーとが軸方向に接合している二軸ナノワイヤーと、ゲルマニウムからなる中心部と該中心部を囲む酸化亜鉛からなる円筒部とから構成される第一の同軸ナノワイヤーと、酸化亜鉛からなる中心部と該中心部を囲むゲルマニウムからなる円筒部とから構成される第二の同軸ナノワイヤーと、からなる混合ナノワイヤーを合成する第二工程と、
を含むことを特徴とする、混合ナノワイヤーの製造方法。
【請求項7】
前記不活性ガスがアルゴンガスであることを特徴とする、請求項6に記載の混合ナノワイヤーの製造方法。
【請求項8】
前記第一工程において、前記不活性ガスの流量が50~80sccmの範囲であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の混合ナノワイヤーの製造方法。
【請求項9】
前記第二工程において、前記不活性ガスの流量が30~50sccmの範囲であることを特徴とする、請求項6~8の何れかに記載の混合ナノワイヤーの製造方法。
【請求項10】
前記第一工程において、酸化ゲルマニウム粉末とゲルマニウム粉末との重量比が、ゲルマニウム粉末1重量部に対して酸化ゲルマニウム粉末2~3重量部の範囲であることを特徴とする、請求項6に記載の混合ナノワイヤーの製造方法。
【請求項11】
前記第一工程において、前記混合物の加熱温度が1100~1200℃の範囲であることを特徴とする、請求項6に記載の混合ナノワイヤーの製造方法。
【請求項12】
前記第一工程において、前記混合物の加熱時間が1~1.3時間の範囲であることを特
徴とする、請求項6に記載の混合ナノワイヤーの製造方法。
【請求項13】
前記第二工程において、ゲルマニウムナノワイヤーと酸化亜鉛粉末との重量比が、ゲルマニウムナノワイヤー1重量部に対して酸化亜鉛粉末10~12.5重量部の範囲であることを特徴とする、請求項6に記載の混合ナノワイヤーの製造方法。
【請求項14】
前記第二工程において、ゲルマニウムナノワイヤーと酸化亜鉛粉末との加熱温度が、1150~1250℃の範囲であることを特徴とする、請求項6に記載の混合ナノワイヤーの製造方法。
【請求項15】
前記第二工程の加熱時間が0.8~1.2時間の範囲であることを特徴とする、請求項6に記載の混合ナノワイヤーの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な微小半導体装置の部品に利用可能な、高度に結晶化したナノワイヤー、さらに詳しくは、酸化亜鉛ナノワイヤーとゲルマニウムナノワイヤーとが軸方向に接合している二軸ナノワイヤー、ゲルマニウムからなる中心部とこの中心部を囲む酸化亜鉛からなる円筒部とから構成される同軸ナノワイヤー、酸化亜鉛からなる中心部とこの中心部を囲むゲルマニウムからなる円筒部とから構成される同軸ナノワイヤーと、これらを混合してなる混合ナノワイヤー、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛は、紫外発光体、バリスター、透明な高電力エレクトロニクスデバイス、電界効果トランジスター、表面弾性波デバイス、圧電変換機、ガス検知素子、表示装置や太陽電池の窓材などとして広く注目されている。
酸化亜鉛-酸化亜鉛マグネシウムヘテロ接合体、酸化亜鉛-酸化インジウムコアシェルナノ構造体、酸化亜鉛-亜鉛ナノケーブルのような一次元の酸化亜鉛を含むヘテロ構造体に関して、幾つか知られている(例えば、非特許文献1~3参照)。最近、酸化亜鉛-窒化ガリウムヘテロ接合体、酸化亜鉛-珪酸亜鉛コアシェルヘテロ構造体なども知られるようになった(例えば、非特許文献4 ,5参照)。
一方、IV族半導体のゲルマニウムのナノワイヤーは、化学的気相成長法で製造されて
いる(例えば、非特許文献6~9参照)。
ゲルマニウムヘテロ構造体としては、珪素-ゲルマニウムナノワイヤー、ゲルマニウム-酸化ゲルマニウム、ゲルマニウム-酸化ケイ素、ゲルマニウム-炭素の同軸一次元体が知られている(例えば、非特許文献10~13参照)。
【0003】

【非特許文献1】W.I.Park他、Adv.Mater.、15巻 526頁、2003年
【非特許文献2】J.Y.Lao 他、Nano.Lett.、2 巻1287頁、2002年
【非特許文献3】X.Y.Kong他、J.Phys.Chem.B 、 108巻 570頁、2004年
【非特許文献4】S.J.An他、Appl.Phys.Lett. 、84巻3612頁、2004年
【非特許文献5】X.D.Wang他、Adv.Mater.、16巻1215頁、2004年
【非特許文献6】T.I.Kamins他、Nano Lett. 、 4巻 503頁、2004年
【非特許文献7】Y.Wu他、Chem.Mater. 、12巻 605頁、2000年
【非特許文献8】Y.Wu他、J.Am.Chem.Soc.、 123巻3165頁、2001年
【非特許文献9】M.P.Halsall 他、Appl.Phys.Lett. 、81巻2448頁、2002年
【非特許文献10】L.J.Lauhon他、Nature、 420巻57頁、2002年
【非特許文献11】Y.F.Zhang 他、Phys.Rev. B61巻4518頁、2000年
【非特許文献12】X.M.Meng他、Appl.Phys.Lett. 、83巻2241頁、2003年
【非特許文献13】Y.Wu他、Appl.Phys.Lett. 、77巻43頁、2000年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の二軸あるいはコアシェルヘテロ接合体は、同族の半導体元素から構成されるものや、多結晶体、非晶質体であって、酸化亜鉛及びゲルマニウムナノワイヤーで構成される一次元ヘテロ構造体が得られていないという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、結晶性の優れた単結晶の酸化亜鉛及びゲルマニウムナノワイヤーで構成されている一次元ヘテロ構造体の各ナノワイヤーと、これらのナノワイヤーを混合した混合ナノワイヤー及び製造方法を提供することを目的としている。
具体的には、酸化亜鉛ナノワイヤーとゲルマニウムナノワイヤーとが軸方向に接合して
いる二軸ナノワイヤー、ゲルマニウムからなる中心部とこの中心部を囲む酸化亜鉛からなる円筒部とから構成される同軸ナノワイヤー、酸化亜鉛からなる中心部とこの中心部を囲むゲルマニウムからなる円筒部とから構成される同軸ナノワイヤーと、これらを混合してなる混合ナノワイヤーとその製造方法を提供することを目的としている。
さらに本発明は、酸化亜鉛ナノワイヤーとゲルマニウムナノワイヤーとが軸方向に接合している二軸ナノワイヤーと、ゲルマニウムからなる中心部とこの中心部を囲む酸化亜鉛からなる円筒部とから構成される同軸ナノワイヤーと、酸化亜鉛からなる中心部とこの中心部を囲むゲルマニウムからなる円筒部とから構成される同軸ナノワイヤーと、この二軸ナノワイアー及び各同軸ナノワイヤーを混合した混合ナノワイヤーとその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の二軸ナノワイヤーは、酸化亜鉛ナノワイヤーとゲルマニウムナノワイヤーとが軸方向に接合した、単結晶でなることを特徴とする。
本発明の同軸ナノワイヤーは、ゲルマニウムからなる中心部と該中心部を囲む酸化亜鉛からなる円筒部とから構成された、単結晶でなることを特徴とする。
本発明の同軸ナノワイヤーは、酸化亜鉛からなる中心部と該中心部を囲むゲルマニウムからなる円筒部とから構成された、単結晶でなることを特徴とする。
これらの構成によれば、酸化亜鉛及びゲルマニウムナノワイヤーで構成されるヘテロ構造を有する各ナノワイヤー、即ち一次元ヘテロ構造体が得られる。
【0007】
本発明の混合ナノワイヤーは、酸化亜鉛ナノワイヤーとゲルマニウムナノワイヤーとが軸方向に接合した、単結晶でなる二軸ナノワイヤーと、ゲルマニウムからなる中心部と中心部を囲む酸化亜鉛からなる円筒部とから構成された、単結晶でなる第一の同軸ナノワイヤーと、酸化亜鉛からなる中心部と中心部を囲むゲルマニウムからなる円筒部とから構成された、単結晶でなる第二の同軸ナノワイヤーと、を含むことを特徴とする。
上記構成において、混合ナノワイヤーは、好ましくは、二軸ナノワイヤーを約45%、第一の同軸ナノワイヤーを約35%、第二の同軸ナノワイヤーを約20%の割合で含有している。
この構成によれば、酸化亜鉛及びゲルマニウムナノワイヤーで構成される三種類のヘテロ構造を有するナノワイヤー、即ち一次元ヘテロ構造体が得られる。
【0008】
本発明の混合ナノワイヤーの製造方法は、酸化ゲルマニウム粉末とゲルマニウム粉末との混合物を、不活性ガス気流中で加熱することにより、ゲルマニウムナノワイヤーを生成する第一工程と、第一工程で生成したゲルマニウムナノワイヤーと酸化亜鉛粉末とを不活性ガス気流中で加熱することにより、酸化亜鉛ナノワイヤーとゲルマニウムナノワイヤーとが軸方向に接合している二軸ナノワイヤーと、ゲルマニウムからなる中心部と中心部を囲む酸化亜鉛からなる円筒部とから構成される第一の同軸ナノワイヤーと、酸化亜鉛からなる中心部と中心部を囲むゲルマニウムからなる円筒部とから構成される第二の同軸ナノワイヤーとを含む混合ナノワイヤーを合成する第二工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
上記方法において、不活性ガスは、好ましくは、アルゴンガスである。その流量は、好ましくは、第一工程において50~80sccmの範囲であり、第二工程において30~50sccmの範囲である。
【0010】
第一工程において、好ましくは、酸化ゲルマニウム粉末とゲルマニウム粉末との重量比を、ゲルマニウム粉末1重量部に対して酸化ゲルマニウム粉末2~3重量部の範囲とする。この場合、好ましくは、混合物の加熱温度を1100~1200℃の範囲とし、加熱時間を1~1.3時間の範囲に設定する。
【0011】
また、第二工程において、好ましくは、ゲルマニウムナノワイヤーと酸化亜鉛粉末との重量比を、ゲルマニウムナノワイヤー1重量部に対して酸化亜鉛粉末10~12.5重量部の範囲とする。この場合、好ましくは、ゲルマニウムナノワイヤーと酸化亜鉛粉末との加熱温度を、1150~1250℃の範囲とし、加熱時間を0.8~1.2時間の範囲に設定する。
【0012】
上記構成によれば、酸化亜鉛ナノワイヤーとゲルマニウムナノワイヤーとが軸方向に接合している二軸ナノワイヤーを約45%、ゲルマニウムからなる中心部と該中心部を囲む酸化亜鉛からなる円筒部とから構成される第一の同軸ナノワイヤーを約35%、酸化亜鉛からなる中心部と該中心部を囲むゲルマニウムからなる円筒部とから構成される第二の同軸ナノワイヤーを約20%含む、混合ナノワイヤーを製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、結晶性の優れた酸化亜鉛とゲルマニウムのヘテロ接合からなるナノワイヤーを得ることができる。よって、新規な微小半導体装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
最初に、混合ナノワイヤーを製造する方法を説明する。
先ず、第一段階の工程として、酸化ゲルマニウム粉末とゲルマニウム粉末との混合物を、不活性ガス気流中で加熱することにより、ゲルマニウムナノワイヤーを生成する。具体的には、酸化ゲルマニウム粉末とゲルマニウム粉末との混合物を例えばグラファイトからなる坩堝に入れ、この坩堝を縦型高周波誘導加熱装置の反応管の中央部に設置する。さらに、反応管の坩堝の上方にサファイア基板を設置し、この反応管に不活性ガスを流しながら誘導加熱コイルにより混合物を加熱する。縦型高周波誘導加熱装置は、高周波誘導加熱法を利用した高周波誘導加熱炉を用いるのが好ましいが、この場合、縦型に限らず横型でもよい。また、加熱方法は、高周波誘導加熱に限らず、坩堝を所定の温度に加熱できるランプ加熱や抵抗加熱による加熱装置でも構わない。
【0015】
この際、不活性ガスとしてはアルゴンガスを用いることができ、その流量は50~80sccmの範囲が好ましい。80sccm(standard cubic centimeters per minute )より多い流量では、生成物が反応系外へ飛散するので好ましくない。逆に、50sccmよりも少ない流量では、不活性ガスとしての作用が不十分で生成物中に酸素が含まれる可能性があるので好ましくない。
【0016】
酸化ゲルマニウム粉末とゲルマニウム粉末との重量比は、ゲルマニウム粉末1重量部に対して酸化ゲルマニウム粉末2~3重量部の範囲が好ましい。酸化ゲルマニウム粉末の重量がこの範囲よりも多いと生成物であるゲルマニウムナノワイヤーの表面に非晶質の酸化ゲルマニウムが付着するので好ましくない。逆に、酸化ゲルマニウムの重量がこの範囲よりも少ないとゲルマニウムナノワイヤーの収量が低下する。
【0017】
加熱する際の温度は1100~1200℃の範囲が好ましい。酸化ゲルマニウムの融点が1116℃であるので、1200℃で十分に蒸気が発生するため、1200℃以上に上げる必要はない。逆に、1100℃未満では、蒸気の発生が不十分で収量が低下するので好ましくない。
【0018】
加熱時間は1~1.3時間の範囲が好ましい。上記の加熱温度でナノワイヤーの成長速度が十分早いので1.3時間の加熱で十分である。逆に、1時間未満では反応ならびに結晶成長が完結しないので好ましくない。
【0019】
このような第一段階の操作を施すことにより、サファイア基板上に、灰色の繊維状物質
のゲルマニウムナノワイヤーが堆積する。
【0020】
次に、第二段階の工程として、酸化亜鉛粉末と第一工程で生成したゲルマニウムナノワイヤーとを不活性ガス気流中で加熱する。具体的には、抵抗加熱法による横型の加熱炉を使用し、酸化亜鉛粉末をアルミナなどからなる坩堝に入れ、この坩堝を横型加熱炉の石英管の中央部に設置する。
次に、第一段階で生成したゲルマニウムナノワイヤーの付いたサファイア基板を上記坩堝に隣接して配置し、反応管に不活性ガスを流しながら、加熱を行なう。
ここで、加熱炉には、抵抗加熱法による横型の加熱炉を用いたが、この場合、加熱炉は横型に限らず縦型でもよい。また、加熱装置は、抵抗加熱に限らず、坩堝を加熱することができるランプ加熱や高周波誘導加熱による加熱装置でもよい。
【0021】
不活性ガスとしてはアルゴンガスを用いることができ、その流量は30~50sccmの範囲が好ましい。アルゴンガスは移送用ガスとして用いられるので、50sccmの流量で十分であり、これ以上の流量を流す必要はない。逆に、30sccm未満の流量の場合は、結晶成長する領域への移送ガスとしての作用が十分でないので好ましくない。
【0022】
酸化亜鉛粉末とゲルマニウムナノワイヤーとの重量比は、ゲルマニウムナノワイヤー1重量部に対して、酸化亜鉛粉末は10~12.5重量部の範囲が好ましい。酸化亜鉛粉末の重量がこの範囲よりも多いと生成物の性状が変動するので好ましくない。逆に、酸化亜鉛粉末の重量がこの範囲よりも少ないと、他領域にも酸化亜鉛が堆積するため生成物中の酸化亜鉛の量が非常に少なくなるので、好ましくない。
【0023】
加熱温度は1150~1250℃の範囲が好ましい。1250℃で酸化亜鉛は十分に昇華するので、これ以上の温度にする必要はない。逆に、1150℃よりも低いと蒸気の発生が不十分でナノワイヤーの成長が遅いので好ましくない。
【0024】
加熱時間は0.8~1.2時間の範囲が好ましい。1.2時間で反応が完了するので、これ以上の時間をかける必要はない。逆に0.8時間未満の加熱時間では結晶成長が完結しないので、好ましくない。
【0025】
上記工程により、酸化亜鉛(ZnO)ナノワイヤーとゲルマニウム(Ge)ナノワイヤーとが軸方向に接合している二軸ナノワイヤーと、ゲルマニウムからなる中心部とこの中心部を囲む酸化亜鉛からなる円筒部とから構成される第一の同軸ナノワイヤーと、酸化亜鉛からなる中心部とこの中心部を囲むゲルマニウムからなる円筒部とから構成される第二の同軸ナノワイヤーと、を含む混合ナノワイヤーを合成することができる。この混合ナノワイヤー中には、二軸ナノワイヤーが約45%、第一の同軸ナノワイヤーが約35%、第二の同軸ナノワイヤーが約20%含まれている。
この混合ナノワイヤーを構成する各ナノワイヤーを分離することにより、二軸ナノワイヤー及び各同軸ナノワイヤーを得ることができる。
【実施例】
【0026】
次に、実施例を示してさらに具体的に説明する。
先ず、酸化ゲルマニウム粉末(和光純薬工業(株)製、純度99.99%)1.5gとゲルマニウム粉末(和光純薬工業(株)製、純度99.9%)0.5gとの混合物をグラファイト製の坩堝に入れ、この坩堝を縦型高周波誘導加熱炉の反応管の中央部に設置すると共に、上記坩堝の上方25cmのところにサファイア基板を配置した。
次に、反応管を2.7~3.3×10-1Pa(2~2.5×10-3Torr)まで減圧した後、移送ガスとしてアルゴンガスを60sccmの流量で流しながら、坩堝内の混合物を1200℃で1時間加熱した。
これにより、加熱中に約700℃に維持されていたサファイア基板上に、灰色の繊維状物質が0.3g堆積した。
【0027】
次に、酸化亜鉛粉末(和光純薬工業(株)製、純度99.9%)2gをアルミナ製の坩堝に入れ、この坩堝を横型加熱炉の石英管の中央部に設置した。
また、坩堝の下流側に、第一工程で製造した灰色繊維状物質であるゲルマニウムナノワイヤーの付いたサファイア基板を20cm離して配置した。
そして、反応管を3.9×10-1Pa(3×10-3 Torr)まで減圧した後、アル
ゴンガスを50sccmの流量で流しながら、坩堝内の酸化亜鉛粉末を1250℃で1時間加熱した。
これにより、加熱中に約650℃に維持されたサファイア基板上に、灰色の綿状物質が0.6g堆積した。
【0028】
図1は実施例で合成した灰色の綿状物質のX線回折による測定結果を示した図である。図1において、縦軸は反射強度(任意目盛り)を示し、横軸は角度(°)、すなわちX線の原子面への入射角θの2倍に相当する角度を示している。図1から明らかなように、灰色の綿状物質は、格子定数a=3.249Å、c=5.206Åを有する六方晶系の酸化亜鉛と、格子定数a=5.657Åを持つ立方晶系のゲルマニウムと、からなることが分かった。
【0029】
図2は実施例で合成した灰色の綿状物質の走査型電子顕微鏡像を示す図である。この走査型電子顕微鏡像から、堆積物は、直径80~120nm(ナノメートル)であり、長さが数十μmのナノワイヤー構造を有することが分かった。
【0030】
さらに、製造されたこのナノワイヤーの化学組成などを調べるために、透過型電子顕微鏡像、電子線回折、エネルギー分散型X線分析などを行った。
図3は実施例で合成したナノワイヤーの一部分の透過型電子顕微鏡像を示す図である。図3から明らかなように、合成したナノワイヤーは、明るく写っている部分と暗く写っている部分とが軸方向に接合した二軸ナノワイヤーであることが分かった。この場合には、明るく写っている部分の直径は約45nmであり、暗く写っている部分の直径は約40nmであることが判明した。
【0031】
図4は、図3に示した部分のエネルギー分散型X線分析(EDX:Energy-Dispersive X-ray analysis)による測定結果を示す図である。図の縦軸はX線強度(任意目盛り)を示し、横軸はX線のエネルギー(keV)を示している。
図4の上側のEDXスペクトルからは、図3で暗く写っているナノワイヤーがゲルマニウムで構成されていることが分かった。そして、図4の下側のEDXスペクトルからは、図3で明るく写っているナノワイヤーがほぼ化学量論的組成の酸化亜鉛であることが分かった。なお、図4において、銅(Cu)の信号が観察されるが、これは試料を取り付ける治具として用いた銅グリッドに由来している。
【0032】
したがって、図3及び図4に示す測定結果から、実施例で得られた灰色の綿状物質の一部は、直径約45nmの酸化亜鉛ナノワイヤーと直径40nmのゲルマニウムナノワイヤーとが、軸方向に接合した二軸ナノワイヤーであることが分かった。そして、この二軸ナノワイヤーは、灰色の綿状物質、即ち混合ナノワイヤー全体の約45%を占めていた。さらに、この二軸ナノワイヤーを構成する酸化亜鉛ナノワイヤー及びゲルマニウムナノワイヤーは、何れも、単結晶構造であることを確認した。
【0033】
図5は、実施例で合成した灰色の綿状物質の他の構成部分を示す透過型電子顕微鏡像を示す図である。
図5から明らかなように、灰色の綿状物質の一部は、暗く写っている中心部とこの中心部を囲む明るく写っている円筒部とからなる同軸ナノワイヤーであることが分かった。この同軸ナノワイヤーを第一の同軸ナノワイヤーと呼ぶことにする。そして、エネルギー分散型X線分析により、図5の第一の同軸ナノワイヤーにおいて、暗く写っている中心部がゲルマニウムで構成され、明るく写っている円筒部分が酸化亜鉛で構成されていることが分かった。
これにより、灰色の綿状物質の一部は、ゲルマニウムからなる中心部とこの中心部を囲む酸化亜鉛からなる円筒部とから構成される第一の同軸ナノワイヤーであることが判明した。そして、第一の同軸ナノワイヤーは、灰色の綿状物質、即ち混合ナノワイヤー全体の約35%を占めていることが分かった。さらに、この第1の同軸ナノワイヤーを構成するゲルマニウム及び酸化亜鉛は、何れも、単結晶構造であることを確認した。
【0034】
図6は、実施例で得られた灰色の綿状物質のさらに別の構成部分を示す透過型電子顕微鏡像を示す図である。
図6から明らかなように、灰色の綿状物質のさらに別の構成部分であるナノワイヤーは、明るく写っている中心部と、この中心部を囲む暗く写っている円筒部とからなる同軸ナノワイヤーであることが分かった。この同軸ナノワイヤーを第二の同軸ナノワイヤーと呼ぶことにする。
【0035】
図7は、図6に示した第二の同軸ナノワイヤーのエネルギー分散型X線分析による測定結果を示す図である。図の縦軸はX線強度(任意目盛り)を示し、横軸はX線のエネルギー(keV)を示している。
図7の上側のEDXスペクトルからは、図6で暗く写っている円筒部がゲルマニウムで構成されていることが分かった。そして、図7の下側のEDXスペクトルからは、図6で明るく写っている中心部がほぼ化学量論的組成の酸化亜鉛であることが分かった。
なお、図7における銅の信号は、図4の場合と同様に、試料を取り付ける治具に用いた銅グリッドに由来している。
【0036】
これにより、灰色の綿状物質の他の一部は、酸化亜鉛からなる中心部とこの中心部を囲むゲルマニウムからなる円筒部とから構成される第二の同軸ナノワイヤーであることが判明した。そして、第二の同軸ナノワイヤーは、灰色の綿状物質、即ち混合ナノワイヤー全体の約20%を占めていることが分かった。さらに、この第二の同軸ナノワイヤーを構成するゲルマニウム及び酸化亜鉛は、何れも、単結晶構造であることを確認した。
【0037】
以上の結果から、実施例で合成した灰色の綿状物質は、三種類のヘテロ構造を有するナノワイヤーからなり、それぞれ、酸化亜鉛とゲルマニウムとを軸方向に接合した二軸構造からなるものと、ゲルマニウムからなる中心部とこの中心部を囲む酸化亜鉛からなる円筒部とから構成される第一の同軸構造と、酸化亜鉛からなる中心部とこの中心部を囲むゲルマニウムからなる円筒部とから構成される第二の同軸構造との三種類から構成されていることがわかった。そして、その割合は、それぞれ、約45%、約35%、約20%であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、酸化亜鉛ナノワイヤーとゲルマニウムナノワイヤーとが軸方向に接合している二軸ナノワイヤー、ゲルマニウムからなる中心部とこの中心部を囲む酸化亜鉛からなる円筒部とから構成される同軸ナノワイヤー、酸化亜鉛からなる中心部とこの中心部を囲むゲルマニウムからなる円筒部とから構成される同軸ナノワイヤー、および、この二軸ナノワイヤーとこれらの同軸ナノワイヤーを混合した混合ナノワイヤーが提供可能となったので、半導体製造における微小化に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例で合成した灰色の綿状物質のX線回折による測定結果を示した図である。
【図2】実施例で合成した灰色の綿状物質の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
【図3】実施例で合成したナノワイヤーの一部分の透過型電子顕微鏡像を示す図である。
【図4】図3に示した部分のエネルギー分散型X線分析(EDX:Energy-Dispersive X-ray Analysis)による測定結果を示す図である。
【図5】実施例で合成した灰色の綿状物質の他の構成部分を示す透過型電子顕微鏡像を示す図である。
【図6】実施例で得られた灰色の綿状物質のさらに別の構成部分を示す透過型電子顕微鏡像を示す図である。
【図7】図6に示した第二の同軸ナノワイヤーのエネルギー分散型X線分析による測定結果を示す図である。
図面
【図1】
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【図4】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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