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明細書 :金属低ホウ化物がドープされた希土類多ホウ化物系熱電変換材料とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4840755号 (P4840755)
公開番号 特開2007-134541 (P2007-134541A)
登録日 平成23年10月14日(2011.10.14)
発行日 平成23年12月21日(2011.12.21)
公開日 平成19年5月31日(2007.5.31)
発明の名称または考案の名称 金属低ホウ化物がドープされた希土類多ホウ化物系熱電変換材料とその製造方法
国際特許分類 H01L  35/22        (2006.01)
H01L  35/34        (2006.01)
C04B  35/58        (2006.01)
C04B  35/50        (2006.01)
FI H01L 35/22
H01L 35/34
C04B 35/58 105A
C04B 35/50
請求項の数または発明の数 7
全頁数 15
出願番号 特願2005-326943 (P2005-326943)
出願日 平成17年11月11日(2005.11.11)
審査請求日 平成20年11月6日(2008.11.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】森 孝雄
審査官 【審査官】酒井 朋広
参考文献・文献 特開2001-220130(JP,A)
特開2002-068730(JP,A)
特開2005-159242(JP,A)
特開2002-068729(JP,A)
特開2000-143232(JP,A)
特開平11-011935(JP,A)
調査した分野 H01L 35/22
C04B 35/50
C04B 35/58
H01L 35/34
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式:REB26+X4+Y1+Z・t(REBS)で表される菱面体または三方晶に属する結晶構造を有する、低ホウ化物(REBS)がドープされてなる希土類多ホウ化物からなる熱電変換材料。
ただし、式中、X、Y、Z、tはそれぞれ、-10<X<10、-3<Y<3、-1<Z<1、0<t<0.15、を満たしてなる数値、また、Sは、2、4、6、12からなる整数、REは、Sc、Y、Ho、Er、Tm、Luから選ばれるいずれか1種の希土類金属元素である。
【請求項2】
前記希土類多ホウ化物からなる熱電変換材料が、一般式:REB26+X4+Y1+Zで表される、菱面体または三方晶に属する結晶構造を有する多ホウ化物から出発されるものであることを特徴とする、請求項1に記載する希土類多ホウ化物からなる熱電変換材料。
ただし、式中、X、Y、Z、tはそれぞれ、-10<X<10、-3<Y<3、-1<Z<1、0<t<0.15、を満たしてなる数値、REは、Sc、Y、Ho、Er、Tm、Luから選ばれるいずれか1種の希土類金属元素である。
【請求項3】
前記希土類多ホウ化物からなる熱電変換材料が、一般式:REB26+X4+Y1+Zで表される、菱面体または三方晶に属する結晶構造を有する多ホウ化物から出発し、これにREBSで表される低ホウ化物が均一に分散、焼結され、ドープさせることによって得られてなるものである、請求項1または2に記載する希土類多ホウ化物からなる熱電変換材料。
ただし、式中、X、Y、Z、tはそれぞれ、-10<X<10、-3<Y<3、-1<Z<1、0<t<0.15、を満たしてなる数値、また、Sは、2、4、6、12からなる整数、REは、Sc、Y、Ho、Er、Tm、Luから選ばれるいずれか1種の希土類金属元素である。
【請求項4】
一般式:REB26+X4+Y1+Zで表される、菱面体または三方晶に属する結晶構造を有する多ホウ化物を粉砕したものに、REBSで表される低ホウ化物の粉末を均一に混合し1300℃から1900℃の温度範囲で加熱することにより、前記結晶中に低ホウ化物を均一に分散、ドープさせることを特徴とした、一般式:REB26+X4+Y1+Z・t(REBS)で表される低ホウ化物(REBS)がドープされた菱面体または三方晶に属する結晶構造を有する希土類多ホウ化物からなる熱電変換材料の製造方法。
ただし、式中、X、Y、Z、tはそれぞれ、-10<X<10、-3<Y<3、-1<Z<1、0<t<0.15、を満たしてなる数値、また、Sは、2、4、6、12からなる整数、REは、Sc、Y、Ho、Er、Tm、Luから選ばれるいずれか1種の希土類金属元素である。
【請求項5】
前記希土類多ホウ化物は、
希土類金属にホウ素と炭素と窒化ホウ素を混合し、
真空または不活性ガス雰囲気またはホットプレス条件で1500℃~1900℃の温度範囲で反応焼結させて生成する、
請求項4に記載の希土類多ホウ化物からなる熱電変換材料の製造方法。
【請求項6】
前記希土類多ホウ化物は、
希土類ホウ化物にホウ素と炭素と窒化ホウ素を混合し、
酸素を含まない真空または不活性雰囲気またはホットプレス条件で1500℃~1900℃の温度範囲で反応焼結させて生成する、
請求項4に記載の希土類多ホウ化物からなる熱電変換材料の製造方法。
【請求項7】
前記希土類多ホウ化物は、
希土類酸化物にホウ素を混合し、真空下で1200℃~2200℃で反応させてREBV-3/2(4<V<15)を生成させ、
前記生成されたREBV-3/2にホウ素と炭素と窒化ホウ素を混合し、
真空またはホットプレス条件で1500℃~1900℃で反応焼結させて生成する、
請求項4に記載の希土類多ホウ化物からなる熱電変換材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式:REB26+X4+Y1+Z・t(REBS)で表され、菱面体または三
方晶に属する結晶構造を有する、低ホウ化物(REBS)がドープされてなる希土類多ホ
ウ化物からなる熱電変換材料とその製造方法に関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、2000K以上の高融点を有し、高温ガスに曝されても安定であり、しかも、腐食性高温ガスに対して耐蝕性を有する、一般式:REB26+X4+Y
1+Z・t(REBS)で表され、菱面体または三方晶に属する結晶構造を有する、低ホウ化物(REBS)がドープされてなる希土類多ホウ化物からなる熱電変換材料とその製造
方法に関する。
ただし、前記式中、X、Y、Z、tはそれぞれ、-10<X<10、-3<Y<3、-1<Z<1、0<t<0.15、を満たす数値、また、Sは、2、4、6、12からなる整数、REは、Sc、Y、Ho、Er、Tm、Luから選ばれるいずれか1種の希土類金属元素である。
【背景技術】
【0003】
近年、いわゆる京都会議に象徴されるように化石燃料大量消費に伴う地球温暖化等の環境問題がクローズアップされ、二酸化炭素排出権を規定する議定書調印をめぐって各国間に利害の対立が生じている。そのため二酸化炭素の排出を抑制する代替エネルギーの開発が急がれ、その対策の一環として、大陽エネルギーや、風力発電等の各種自然エネルギーを電気エネルギーに変換するシステムの開発が求められている。
【0004】
特に、最近では水素を燃料とした燃料電池システムや、熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換できる熱電変換材料による熱電発電システムが注目され、とりわけ、高温源と低温源との温度差を電気エネルギーに変換する、いわゆるゼーベック効果を利用した熱電発電は、炭酸ガス等の排ガスを発生せず、地球温暖化等の環境に悪影響を与えない発電システムとして注目されている。
【0005】
熱電材料の性能は、物質の熱起電力(ゼーベック係数)、電気抵抗および熱伝導率の3つの特性の組み合わせによって決定され、一般に下記数式(1)で表わされる。
ZT=(α2 /ρ・κ)T・・・ (1)
ここに、ZTは熱電性能指数(K-1)、Tは温度差(絶対温度)、αはゼーベック係数、ρは電気抵抗率、κは熱伝導率である。
【0006】
熱電性能は無次元性能指数ZTで評価され、特に、(1)式中、α2ρ-1の項は、出力
因子(PF;Power Factor)と呼ばれ、熱電材料の特性評価の上では極めて重要な因子である。式(1)から、熱電材料は、高い性能を達成するためには、ゼーベック係数αが高いほど、また、電気抵抗率ρが低いほど(逆に電気伝導度σが高いほど)、さらにまた、熱伝導率κが低いほど熱電性能は高い、ということになり、温度差Tは大きいほど性能が高くなり有利である。
【0007】
一般に、半導体もしくは金属に温度勾配を加えるとゼーベック効果と呼ばれる現象によって起電力が発生し、熱エネルギーから電気エネルギーを取り出すことができる。このような熱伝変換材料としては、従来、BiTe系をはじめとしてSi、Ge、In、Sb、Te、およびBi等の元素からなる半導体材料が知られている。
【0008】
一般に、半導体系熱電変換材料は、中低温域における熱エネルギーを電気エネルギーに変換してエネルギー回収するのに役立ってきた。ところが、最近では、より高温の温度域から電気エネルギーを回収することが検討されるようになってきた。とりわけ、各種プロセスから排出される高温廃熱ガスからの電気エネルギーの回収が検討され、そのため使用される熱電変換材料としては、より高温の廃熱ガスによる腐食に耐えられ、熱的化学的に安定したものが求められ、この要件を満たす熱電材料の開発が強く求められるようになってきた。
【0009】
典型的には、近年ゴミ焼却炉の操業は、ダイオキシンの発生を抑えるため、高温焼成炉に転換され、そのため該炉から排出される廃ガスは極めて高温となり、このガスの熱エネルギーを電気エネルギーに変換するのに使用される熱電変換材料は、高温焼成ガスに曝されても長期間にわたり安定に機能し、しかも高温の排ガス中に含まれる酸性腐食性ガスによって侵されることなく、高温域において高い出力因子を有する熱電材料が求められている。
【0010】
従来の化合物半導体や金属系半導体による熱電変換材料では、前述したように室温から中低温の領域において機能するにすぎず、高温、腐食性ガスを含んだ廃熱ガス環境下での使用には到底耐えることが出来ず、前記要望に対して応えることができなかった。そのため、高温域においても長期間に亘り機能しえる耐蝕性と高い出力因子を有する新たな熱電材料が盛んに探索されており、上記特許文献等によって例示される酸化物系熱電変換材料も、その一環で開発されたものといえる(特許文献1ないし8)。
【0011】
一方、本発明者においても、より高温域のレベルで高い出力因子を有する熱電材料を開発すべく各種材料を探索し、ホウ化物について着目した。とりわけ、ホウ化物の中でも金属元素1モルに対し、ホウ素元素数十モルが含まれる多ホウ化物領域のホウ化物(多ホウ化金属)が2000Kを超える高い融点を有し、しかも耐食性に富んでいることに着目し、この化合物を熱電材料として使用することを想到するに至った。すなわち、多ホウ化物を用いて高温において長時間に亘り、優れた熱電特性を発現しうる材料を開発すべく鋭意研究した。その結果、希土類に対してホウ素のモル比を調整し、これに珪素、あるいは炭素さらに窒素をドープせしめることによって高い出力因子を有する多ホウ化物が得られることを知見し、先に特許出願した(特許文献9ないし11)。
【0012】
しかしながら、これまで開発された熱電変換材料は、酸化物系熱電変換材料も含め、より高温域(およそ1000K近傍ないしそれ以上の高温)の各種排ガス等も含めたプロセスガスに長時間さらされても、性能が鈍化せず、安定に機能し、高い熱電変換性能を実現しうる熱電変換材料を設計し、確保することは極めて困難な状況であった。また、本発明者ら研究グループによって開発された先の特許出願による多ホウ化物系熱電材料は、高温安定性を有し、酸化物を超える性能を備えた熱電材料を提供することが出来ようになった点で、一応、所期の目標を達成し得た意義は大きいといえる。しかしながら、この種系統の材料は、組成領域と結晶、そして物性との関係等は十分に解明されているとはいえず、研究は緒についたばかりで今後の研究に待つところ大であり、先の提案を超える性能を備えたものを創出することが大いに期待されている。
【0013】

【特許文献1】特開平8-231223号公報
【特許文献2】特開平8-236818号公報
【特許文献3】特開平8-242021号公報
【特許文献4】特開2000-156529号公報
【特許文献5】特開2002-26407号公報
【特許文献6】特開2004-214244号公報
【特許文献7】特開2004-363576号公報
【特許文献8】特開2005-93450号公報
【特許文献9】特開2005-159242号公報
【特許文献10】特願2005-237800
【特許文献11】特願2005-237801
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
熱電材料の研究開発の現状は、概略前述したとおりであるが、従来技術を超える性能を有する新規な熱電変換材料の出現が待たれている。具体的には、腐食性ガスを含む高温ガスから直接電気エネルギーを効率的に回収するのに使用し得るように、高温域において高いゼーベック係数、出力因子を有する、安定した熱電材料の出現が待たれている。本発明はこれに応えようというものであり、高温腐食性廃熱ガスから直接効率よく熱エネルギーを電気エネルギーに変換することが出来る熱電材料を提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そのため本発明者は、先に開発したと同種の元素系である希土類多ホウ化物についてさらに研究を進めた結果、ホウ素を含み、さらに炭素、窒素を含んだ特定の結晶構造を有した希土類多ホウ化物結晶を原料として、この原料結晶にあとから金属低ホウ化物を均一に分散、一体化焼結し、これによって得られる、すなわち低ホウ化物(REBS)をドープ
させて得られる、一般式REB26+X4+Y1+Z・t(REBS)(-10<X<10、-
3<Y<3、-1<Z<1、 RE=Sc、Y、Ho、Er、Tm、Lu、0<t<0.15、S=2、4、6、12)で表される希土類多ホウ化物が、前記金属低ホウ化物がドープされていない元の希土類多ホウ化物(炭素窒素を含む多ホウ化物)に比して、電気的、熱的特性が大きく改質、改善され、高温における熱電変換性能ZTが大となり、また、抵抗が著しく小さくなることを知見した。
【0016】
以後、本発明において低ホウ化物をドープとは、前記した意味、すなわち、特定の結晶構造を有した希土類多ホウ化物結晶に、金属低ホウ化物(REBS)が均一に分散、焼結
され、これによって、熱電特性が向上すること、を意味するものと定義する。
【0017】
本発明は、この知見に基づいてなされたものであり、その構成は以下に記載する通りである。
(1) 一般式:REB26+X4+Y1+Z・t(REBS)で表される菱面体または三方晶
に属する結晶構造を有する、低ホウ化物(REBS)がドープされてなる希土類多ホウ化
物からなる熱電変換材料。
ただし、式中、X、Y、Z、tはそれぞれ、-10<X<10、-3<Y<3、-1<Z<1、0<t<0.15、を満たしてなる数値、また、Sは、2、4、6、12からなる整数、REは、Sc、Y、Ho、Er、Tm、Luから選ばれるいずれか1種の希土類金属元素である。
(2) 前記希土類多ホウ化物からなる熱電変換材料が、一般式:REB26+X4+Y1+Zで表される、菱面体または三方晶に属する結晶構造を有する多ホウ化物から出発されるものであることを特徴とする、(1)に記載する希土類多ホウ化物からなる熱電変換材料。
ただし、式中、X、Y、Z、tはそれぞれ、-10<X<10、-3<Y<3、-1<Z<1、0<t<0.15、を満たしてなる数値、REは、Sc、Y、Ho、Er、Tm、Luから選ばれるいずれか1種の希土類金属元素である。
(3) 前記希土類多ホウ化物からなる熱電変換材料が、一般式:REB26+X4+Y1+Zで表される、菱面体または三方晶に属する結晶構造を有する多ホウ化物から出発し、これにREBSで表される低ホウ化物が均一に分散、焼結され、ドープさせることによって得
られてなるものである、(1)または(2)に記載する希土類多ホウ化物からなる熱電変換材料。
ただし、式中、X、Y、Z、tはそれぞれ、-10<X<10、-3<Y<3、-1<Z<1、0<t<0.15、を満たしてなる数値、また、Sは、2、4、6、12からなる整数、REは、Sc、Y、Ho、Er、Tm、Luから選ばれるいずれか1種の希土類金属元素である。
(4) 一般式:REB26+X4+Y1+Zで表される、菱面体または三方晶に属する結晶構造を有する多ホウ化物に、REBSで表される低ホウ化物を添加し、加熱し、前記結晶中
に低ホウ化物を均一に分散、ドープさせることを特徴とした、一般式:REB26+X4+Y
1+Z・t(REBS)で表される低ホウ化物(REBS)がドープされた菱面体または三
方晶に属する結晶構造を有する希土類多ホウ化物からなる熱電変換材料の製造方法。
ただし、式中、X、Y、Z、tはそれぞれ、-10<X<10、-3<Y<3、-1<Z<1、0<t<0.15、を満たしてなる数値、また、Sは、2、4、6、12からなる整数、REは、Sc、Y、Ho、Er、Tm、Luから選ばれるいずれか1種の希土類金属元素である。
(5) 一般式:REB26+X4+Y1+Zで表される、菱面体または三方晶に属する結晶構造を有する多ホウ化物を準備、生成させる第1の工程、前記第1の工程の後、その準備、得られてなる生成物にREBSで表される低ホウ化物をドープさせる第2の工程、とから
なる工程を含むことを特徴とする、一般式:REB26+X4+Y1+Z・t(REBS)で表
される低ホウ化物(REBS)がドープされた菱面体または三方晶に属する結晶構造を有
する希土類多ホウ化物からなる熱電変換材料の製造方法。
ただし、各式中、X、Y、Z、tはそれぞれ、-10<X<10、-3<Y<3、-1<Z<1、0<t<0.15、を満たしてなる数値、また、Sは、2、4、6、12からなる整数、REは、Sc、Y、Ho、Er、Tm、Luから選ばれるいずれか1種の希土類金属元素である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の熱電変換材料は、希土類多ホウ化物に金属低ホウ化物がドープされてなるものであり、2000K以上という高い融点を有し、高温に曝されても安定であり、また、極めて高い耐酸性を有し、硝酸や硫酸環境下でも安定であるという性質と、高温や酸性の腐食性ガス雰囲気の下でも高い熱電変換性能ZTを有し、低抵抗、低熱伝導率を示す特異な性質を有する優れた熱電変換材料とその製造方法を提供するものである。したがって、本発明の熱電変換材料によって、高温や酸性雰囲気の劣悪な高温廃ガスに長期間直接曝されても、安定して作動し、高い出力因子を有する優れた熱電素子を提供することが出来、これによって効率のよい高温安定性熱電変換素子として機能しうる優れた作用効果が奏せられるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の熱電変換材料は、一般式:REB26+X4+Y1+Z・t(REBS)で表される
特定の組成比と結晶構造とを有してなるものであるが、高い出力因子や低熱伝導率といった熱電変換材料としての優れた特性を発現するためには、この熱電変換材料は、特定の組成と結晶構造を有するものから出発するプロセスによって作製されることが望ましい。すなわち、一般式:REB26+X4+Y1+Zで表され、菱面体または三方晶に属する結晶構造を有する希土類多ホウ化物、あるいは、その疑似結晶から出発し、この出発物質に、REBS(Sは、2、4、6、12からなる整数)で表される低ホウ化物を均一に分散、焼結
し、元の希土類ホウ化物結晶の特性を改質させること、すなわち、ドープさせることが好ましい。このプロセスによって、元の結晶は改質され、優れた熱電特性が付与される。
【0020】
これを、単にREB26+X4+Y1+Z・t(REBS)と同じ組成を満足する単純混合物
を調整し、反応焼結等によって前記特定結晶を析出させるプロセスを試みても、熱電性能において優れたものを得ることは困難である。その理由は現段階では必ずしも明らかではないが、実験の結果からは、再現性よく優れた熱電特性を有するものを得るためには、一
般式がREB26+X4+Y1+Zで表される菱面体または三方晶に属する結晶構造(ないしはその疑似結晶)を有してなるものを準備、作製し、該結晶中に低ホウ化物を浸入、ドープさせることが重要である。結晶化していない原料混合物から出発して、反応焼結によって結晶化とドープとを一度に行おうとしても、その処理温度において安定な結晶が生成するだけで、熱電特性において優れたものを得ることは困難である。前記一般式で示され、特定の結晶構造を有する希土類多ホウ化物を準備、作製し、この化合物に低ホウ化物を添加し、ドープさせる工程を経ることが好ましい。
【0021】
すなわち、もし単純混合物から出発する場合、結晶化とドープとはそれぞれ分離し、結晶化後にドープすることが好ましい。したがって、本発明の熱電変換材料を得るための工程は、一般式:REB26+X4+Y1+Zで表される組成を有し、菱面体または三方晶に属する結晶構造を有する希土類多ホウ化物を準備、生成させる第1の工程後、一般式:REBSで表される低ホウ化物をドープさせる第2の工程を実施することが好ましい。
【0022】
このような第1の工程を経るプロセスによる実施態様としては、さらにいくつかの態様を例示することが出来る。すなわち、出発原料物質に基づいてさらに具体的に例示すると以下に記載するプロセスによって得ることが出来る。しかしながら、本発明はこれらの例によって限定されないことに留意されたい。
【0023】
〈1〉〔希土類金属から出発するプロセスによる場合〕
希土類金属から出発する場合、さらに、ホウ素、グラファイト、窒化ホウ素、さらには低ホウ化物等を用意し、希土類元素に対するホウ素の原子比が26+X(-10<X<10)、希土類に対する炭素の原子比が4+Y(-3<Y<3)、希土類元素に対する窒素の原子比が1+Z(-1<Z<1)となるように、希土類金属にホウ素と炭素と窒化ホウ素を混合し、その混合物を真空または不活性ガス雰囲気またはホットプレス条件で1500℃~1900℃の温度範囲で反応焼結させて、一般式:REB26+X4+Y1+Zで示される組成を有し、菱面体または三方晶に属する結晶を生成させる。
次いで、得られた結晶REB26+X4+Y1+Zを粉砕し、これに希土類の比が1:t(0<t<0.15)の割合になるように金属低ホウ化物REBS(S=2、4、6、12か
らなるいずれかの数値)を混合し、1300℃~1900℃の温度範囲で加熱して、前記結晶に該低ホウ化物粉末を均一に混合し、焼結し、固相間で反応させ、均一に分散、ドープさせる。これによって、腐食性高温ガス雰囲気に耐えられ、優れた熱電特性を有する熱電変換材料を得ることが出来る。
【0024】
〈2〉〔希土類ホウ化物から出発するプロセスによる場合〕
市販の希土類ホウ化物から出発する場合、前記〈1〉と同様、さらにホウ素、炭素、窒化ホウ素を用意し、希土類元素に対するホウ素の原子比が26+X(-10<X<10)、希土類に対する炭素の原子比が4+Y(-3<Y<3)、希土類元素に対する窒素の原子比が1+Z(-1<Z<1)、となるように既知の希土類ホウ化物にホウ素と炭素と窒化ホウ素を混合し、その混合物を酸素を含まない真空または不活性雰囲気またはホットプレス条件で1500℃~1900℃の温度範囲で反応焼結させて、一般式:REB26+X4+Y1+Zで示される組成を有し、菱面体または三方晶に属する結晶を生成させる。
次いで、得られた化合物結晶REB26+X4+Y1+Zを粉砕し、これに希土類の比が1:t(0<t<0.15)となる割合に金属低ホウ化物REBS(S=2、4、6、12か
らなるいずれかの数値)粉末を均一に混合し、1300℃~1900℃の温度範囲で加熱して焼結し、前記結晶に該低ホウ化物を均一に浸入、ドープさせる。
これによって、腐食性高温ガス雰囲気に耐えられ、優れた熱電特性を有する熱電変換材料を得ることが出来る。
【0025】
〈3〉〔希土類酸化物から出発するプロセスによる場合〕
希土類酸化物から出発する場合、これをホウ素によって還元し、ホウ化物を生成することが必要である。すなわち、希土類元素に対するホウ素の比がV(4<V<15)となるように、希土類酸化物(RE23)にホウ素を混合し、その混合物を真空下で1200℃~2200℃で反応させ、酸素がホウ素によって還元し、REBV-3/2を生成させる。次
いで、このホウ化物を用いて、希土類元素に対するホウ素の比が26+X(-10<X<10)、希土類元素に対する炭素の比が4+Y(-3<Y<3)、希土類元素に対する窒素の比が1+Z(-1<Z<1)、となるように、REBV-3/2にホウ素と炭素と窒化ホ
ウ素を混合し、その混合物を真空またはホットプレス条件で1500℃~1900℃で反応焼結させる。
次いで、得られた結晶REB26+X4+Y1+Zを粉砕し、これに希土類の比が1:t(0<t<0.15)となるように金属低ホウ化物REBS(S=2、4、6、12からなる
いずれかの数値)粉末を均一に混合し、1300℃~1900℃以下で加熱して、固相間で焼結、反応させ、前記REB26+X4+Y1+Z結晶に該低ホウ化物結晶を微量、均一に分散させ、且つ加熱して焼結することによって一体化させる。これによって、腐食性高温ガス雰囲気に耐えられ、優れた熱電特性を有する熱電変換材料を得ることが出来る。
【0026】
以上、本発明の熱電変換材料を入手するプロセスを原料の違いに基づいていくつか例示したが、原料によってこれらプロセスの混合比率は適宜変更して実施することが出来ることは言うまでもない。反応工程を単純化するためには、第1工程は極力希土類のホウ化物を使用することが好ましい。
【0027】
ここで、X、Y、Z、t、Sの値を、それぞれ規定した理由は、次の理由による。X、Y、Zは単相のREB26+X4+Y1+Zを合成する過程で規定され、Sは混ぜる金属低ホウ化物の種類で規定される。すなわち、本発明は、単層のREB26+X4+Y1+Zにおいてなされたものであり、X、Y、Zが規定外の場合単層とならず、作用効果が奏せられない。また、tは、低ホウ化物がドープされないと熱電特性が改質されず、多く添加されても効果はない。したがって、ドープ量は規定した関係に適量ドープされることが好ましい。(なお、これらX、Y、Z、t、Sの値は、X線回折分析によっても同定することが出来る。すなわち、X線回折分析によってt、Sを求めることが出来、そして、化学分析により、RE、B、C、Nの総量が求まるので、これらの値からX、Y、Zの値を決定することが出来る。)
【0028】
以下に実施例を示し、さらにこの発明について詳しく説明する。
【実施例1】
【0029】
希土類ホウ化物REB6と、アモルファスホウ素、グラファイト、窒化ホウ素粉末を準
備し、REB6粉末にアモルファスホウ素、グラファイト、窒化ホウ素を混合し、混合物
全体の組成が、希土類元素に対するホウ素の原子比が26+X(-10<X<10)、希土類に対する炭素の原子比が4+Y(-3<Y<3)、希土類元素に対する窒素の原子比が1+Z(-1<Z<1)となるように調整した。本実施例においては、希土類REとしてエルビウムErを用いた。その混合物を不活性ガス雰囲気下で1600℃で10時間固相間で反応させた。その結果、得られた生成物は、菱面体構造を有している結晶が生成していることが確認された。
【0030】
次いで、この生成物に希土類の比が1:t(0<t<0.15)となるように金属低ホウ化物REB4(S=4)を混合し、1600℃、加圧下で反応させた。ここに使用した
低ホウ化物は、エルビウムErの低ホウ化物を使用した。その結果、低ホウ化物は元の試料に浸入し、ドープされた。得られた生成物の主たる相の結晶構造は、ドープ前とは変化がなく、菱面体構造を有していた。すなわち、得られた生成物をX線分析によって同定した結果、図4に示すとおり主たる相は菱面体構造を有し、さらにこの生成物の中に低ホウ
化物が浸入していることが明らかにされた(図4中、※印)。
【0031】
図4によると、低ホウ化物のX線回折強度は800、REB26+X4+Y1+Zの1番大きな回折強度ピークは4150である。X線の強度は非常に重い金属対軽いホウ素の組成比に比例するので、tを見積もることが出来る。本実施例の場合、回折強度の比は800/4150であり、希土類対ホウ素の相対比率はs/26+X(s=4、X=0)であるの
で、t=(800/4150)×(4/26)によって、計算すると0.03となる。
【0032】
ドープ後の生成物を試料として高温に至るまで熱電的性質の測定を行い、ドープ前の試料と比較した。その結果、金属低ホウ化物をドープした一般式REB26+X4+Y1+Z・t(REBS)(-10<X<10、-3<Y<3、-1<Z<1、0<t<0.15、S
=2、4、6、12)で表されてなる希土類多ホウ化物は、金属低ホウ化物のドープされていない試料REB26+X4+Y1+Z(-10<X<10、-3<Y<3、-1<Z<1)に比較して、電気抵抗が実に20倍以上小さく(図1)、しかも、出力因子(パワーファクター)が約70倍以上向上していること(図2)が明らかにされた。
【0033】
さらに図2によれば、y軸が対数プロットであり、高温に向かって性能指数が急上昇しているので、高温700℃以上で使用する熱電材料としての応用を可能にしていることを示していた。図3で熱伝導率を比較しているけれども、金属低ホウ化物をドープしたことによる熱伝導率の上昇は高々1.5倍以内に抑えられており、その結果、金属低ホウ化物をドープした化合物が金属低ホウ化物をドープしていない化合物に比べて性能で40倍以上優れていることを示している。
【0034】
そして、得られた金属低ホウ化物がドープされた一般式REB26+X4+Y1+Z・t(REBS)(-10<X<10、-3<Y<3、-1<Z<1、0<t<0.15、S
=2、4、6、12)で表され、菱面体構造に属してなる生成物は、硝酸、硫酸に対しても非常に安定であることが確認された。
【0035】
実施例1では、希土類としてエルビウムErを用いた例をしめしたが、エルビウムEr以外に他の希土類についても同様の実験を行った。その結果、本発明で使用し得る有効な希土類としては、Sc、Y、Ho、Er、Tm、Luが使用され、同様の作用効果が奏せられることが分かった。また、2種類以上の希土類が混合されたものでも使用され、同様の機能、作用効果が奏されることが分かった。生成する結晶構造は、菱面体構造以外に三方晶に属する結晶が得られ、さらには両結晶が生成されることも観察された。熱電特性および耐酸性は、その何れの状態の結晶についても、実施例1に示された菱面体構造と同様の熱電特性、耐酸性を示し、いずれも有効であることが確認された。
【0036】
本発明の熱電材料は、これらの実験を総合した結果帰結されたものであり、その構成は、一般式:REB26+X4+Y1+Z・t(REBS)で表され、菱面体または三方晶に属す
る結晶構造を有していることを特徴としている、低ホウ化物(REBS)がドープされて
なる希土類多ホウ化物からなる熱電変換材料であると特定される。
【0037】
以上示した多岐にわたる各種実験等からなる一連の実験による実施例の結果、本発明の多ホウ化物は、使用条件の非常に過酷で厳しい酸性雰囲気の高温ガスの下で長時間に曝されても安定に存在し、使用することができる極めて魅力的な熱電変換材料を提供したものであるということが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上詳しく説明した通り、この発明によって、金属低ホウ化物をドープしてな
る希土類多ホウ化物を創出することによって、高温の熱電素子が提供される。融点も高く
、高温2000Kに至るまで安定であり、温度上昇に伴い熱電素子としての性能が高くなるので、700K以上の広い高温温度域で使用しうる熱電素子、また、酸性雰囲気下でも使用できる熱電素子として有望視される。これによって、今後高温域の各種プロセスガスからでも直接熱エネルギーを電気エネルギーとして効率よく回収するのに使用され得、温暖化等今後ますます重要となる温暖化対策として、また、地球環境を守るエネルギー源として広く社会全般に使用され、普及し産業の発展のみならず、人類の福祉と地球全体の環境保全に大いに寄与するものと期待される。
【0039】
また、この熱電素子は、劣悪な環境、例えば、他惑星無人探索等においての使用において緊急に開発が求められている。近い将来探査が計画されている木星の月、Europaには、硫酸が充満している環境とされており、発電を司る熱電システムとしては、このような環境下でも作動しうる熱電材料、熱電素子が求められている。本発明の多ホウ化物はそのような環境下でも安定であり、熱電材料として魅力的な特性が備わった化合物である。勿論、これは地球上にいても例外ではなく、そのような環境では多数存在するだけでなく、このような場所においても作動しうる能力を備えてなる熱電システムは、耐久性があり、長期にわたって作動しうることを意味するものであり得るので極めて、特異性があり、理想的な素子として大いに利用されることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1で得られた金属低ホウ化物をドープしてなる希土類多ホウ化物熱電材料の電気抵抗の温度依存性を示す図。
【図2】実施例1で得られた金属低ホウ化物をドープしてなる希土類多ホウ化物熱電材料の熱電出力因子(パワーファクター)を示す図。
【図3】実施例1で得られた金属低ホウ化物をドープしてなる希土類多ホウ化物熱電材料の熱伝導率κの温度依存性を示す図。
【図4】実施例1で得られた金属低ホウ化物をドープしてなる生成物のX線回折像を示す図。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3