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明細書 :ダイヤモンド紫外線センサー素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4677634号 (P4677634)
公開番号 特開2007-139424 (P2007-139424A)
登録日 平成23年2月10日(2011.2.10)
発行日 平成23年4月27日(2011.4.27)
公開日 平成19年6月7日(2007.6.7)
発明の名称または考案の名称 ダイヤモンド紫外線センサー素子
国際特許分類 G01J   1/02        (2006.01)
H01L  31/09        (2006.01)
FI G01J 1/02 G
H01L 31/00 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2005-329253 (P2005-329253)
出願日 平成17年11月14日(2005.11.14)
審査請求日 平成20年11月6日(2008.11.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】小出 康夫
【氏名】ホセ アントニオ アルバレッツ
【氏名】メイヨン リョウ
審査官 【審査官】▲高▼場 正光
参考文献・文献 特開2005-310963(JP,A)
国際公開第99/034646(WO,A1)
調査した分野 G01J1/00-11/00
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
受光部材料の光誘起電流の変化によって、受光部に照射される光を検出する2端子電極を持つ光伝導型センサー素子であって、水素化処理された表面を有し、主たるキャリアが正孔である表面伝導層を持つ高温高圧合成法によって作製された窒素原子を含むダイヤモンド単結晶を受光部に持つダイヤモンド紫外線センサー素子。
【請求項2】
受光部材料の光誘起電流の変化によって、受光部に照射される光を検出する2端子電極を持つ光伝導型センサー素子であって、結合水素原子および結合酸素原子によって覆われた表面を持つ高温高圧合成法によって作製された窒素原子を含むダイヤモンド単結晶を受光部に持つダイヤモンド紫外線センサー素子。
【請求項3】
受光部材料の光誘起電流の変化によって、受光部に照射される光を検出する2端子電極を持つ光伝導型センサー素子であって、水素を含む雰囲気内でプラズマ放電処理された表面を持つ高温高圧合成法によって作製された窒素原子を含むダイヤモンド単結晶を受光部に持つダイヤモンド紫外線センサー素子。
【請求項4】
受光部材料の光誘起電流の変化によって、受光部に照射される光を検出する2端子電極を持つ光伝導型センサー素子であって、高温高圧合成法によって作製されたボロン原子を含むダイヤモンド単結晶を受光部に持つ、請求項1、2、又は3に記載のダイヤモンド紫外線センサー素子。
【請求項5】
受光部材料の光誘起電流の変化によって、受光部に照射される光を検出する2端子電極を持つ光伝導型センサー素子であって、電子—正孔対が発生し、その生成キャリアの走行に起因する電流成分Bと光誘起電流成分Aのうち、電流成分Aのみが表面伝導層を流れる請求項1に記載のダイヤモンド紫外線センサー素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンド紫外線センサー素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンド半導体は、バンドギャップが室温で約5.5eV(光波長で約225nmに
対応)とかなり大きく、ドーパント(不純物)が添加されていない真性状態で絶縁体とし
ての電気的特性を示す。単結晶基板は、高温(約1500℃)と高圧(約5万気圧)で作
製する高温高圧(HTHP)法によって合成され、工業用として商品化されている。高温高圧
法によって作製されたダイヤモンド単結晶は0.0001から0.03%(Vol)程度の
窒素を含有し、黄色を呈している。
【0003】
単結晶薄膜を成長させる方法は、実質的に炭素及び水素を含む雰囲気、例えばCH4(メ
タン)とH2(水素)ガスを用いたマイクロ波励起プラズマ気相成長法が開発(特許文献1
)されており、広く普及している。この気相成長法によって、窒素をほとんど含まない単
結晶薄膜を成長させることができる。また、マイクロ波励起プラズマ気相成長法において
ドーパントとして少なくとも1立方センチメートル当たりに1016個以上のボロンを添
加することによって、p型の電気伝導性を制御することも広く使われている。
【0004】
マイクロ波励起プラズマ気相成長法は、水素を含む雰囲気を用いる気相成長法であるた
め、成長させたダイヤモンド単結晶膜表面は、実質的に水素で覆われた表面であることが
知られている。即ち、表面には炭素原子(C)の未結合手が水素原子(H)によって結合
終端(以後「水素化」と呼ぶ)されたC-H分子構造が存在し、この水素化に伴ってダイ
ヤモンド表面近傍のダイヤモンド内には主たるキャリアの正孔が表面近傍(2nm以内)
に局在した表面伝導層が発生していることが知られている。この表面電気伝導層は、アン
ドープ及びボロンドープの(100)、(111)面単結晶薄膜、及び多結晶薄膜におい
ても同様に存在することも知られている。
【0005】
このダイヤモンドの水素化された表面は、伝導体帯端エネルギーが真空準位に較べて高
く、負性電子親和力を持っていることも実験的に判明している。
【0006】
この表面伝導層の発生機構は世界的にも論争段階にあり、詳細は不明である。しかしな
がら、少なくとも実験的にはこの表面伝導層は、(1)200℃程度までは安定に存在し
、(2)水素化されたダイヤモンド表面にのみ発生していることがわかっている。表面の
結合水素を除去する溶液処理(以後「酸化処理」と呼ぶ)、例えば沸騰させた硫酸・硝酸
混合液中に浸す処理を施すことによって、この表面伝導層は消滅することも知られており
、本発明者自身も確認している。この酸化処理を施したダイヤモンド表面は、表面が実質
的に結合酸素原子(表面の被覆割合として少なくとも90%以上)によって覆われている
ことも判明している。
【0007】
窒素を含有するダイヤモンド単結晶基板を800℃以上の温度で水素を含む雰囲気中に
おいてプラズマ処理することによっても基板表面を水素化することが可能であり、このよ
うな水素化された表面には主たるキャリアが正孔である表面伝導層が形成されることもわ
かっている。
【0008】
受光部の光誘起電流量の変化によって受光部に照射される紫外線を検出する、いわゆる
光伝導型センサー素子としては、波長400nmから650nmの範囲の可視光等にも検
出感度を持つSi半導体、また上記可視光等や赤外域の雑音光には検出感度を全く持たな
いAlGa1-xN(0≦x≦1)半導体及びダイヤモンド半導体を受光部の固体材料
として用いたもの等が従来から考えられている。
【0009】
これらの光伝導型センサー素子の光検出原理は、受光部の半導体にバンドギャップ以上
のエネルギーを持つ光を照射することによって、半導体内に電子—正孔対を発生させ、こ
のキャリアによる光誘起電流量の変化を検出するものである。従って、半導体材料に2つ
の電極を接合させた2端子素子にて素子構造を構築でき、極めて単純化された紫外線セン
サーを製造することができる。
【0010】
ダイヤモンド半導体を紫外線センサー素子に応用した例として、例えば、非特許文献1
には、多結晶ダイヤモンド薄膜の表面伝導層を受光部に用いた光伝導型センサー素子にお
いて、200nmの紫外線照射に対して0.03A/Wの検出感度(受光感度とも呼ぶ)
を達成しているものが記載されている。マイクロ波励起プラズマ成長法によって成長させ
たダイヤモンド薄膜を利用した紫外線センサー素子であり、受光感度が小さく性能の改善
が必要である。また、非特許文献2には、酸化処理を施すことによって表面伝導層を除去
した多結晶ダイヤモンド膜を受光部に用いた光伝導センサー素子において、200nmの
紫外線照射に対して、0.02A/Wの検出感度を得ているが、実用化には不十分な受光
感度である。
【0011】
また、先行技術例として、特許文献2は、厚さ40μmのダイヤモンド多結晶薄膜又は
(100)及び(111)配向薄膜と表面の結合水素を除去した表面を受光部に利用した
ダイヤモンド紫外線センサー素子に関する技術であり、受光感度が実用化には不十分であ
る。特許文献3は、ダイヤモンドの表面伝導層を受光部に利用したダイヤモンド紫外線セ
ンサー素子であり、その受光感度波長は可視光域全体にわたる特性を持っており、ダイヤ
モンドのバンドギャップ内の欠陥準位を利用した光伝導型センサー素子であり、230n
m以下の紫外線を選択的に検出することはできない。
【0012】

【非特許文献1】H. J. Looi, M. D. Whitfield, and R. B. Jackman, Appl. Phys. Letts. 74, 3332 (1999)
【非特許文献2】R. D. McKeag and R. B. Jackman, Diamond Relat. Mater. 7, 513 (1998)
【特許文献1】特公昭59-27754(特許第272929)号公報
【特許文献2】特開平11-248531号公報
【特許文献3】特開平11-097721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来のSi、AlGa1-xN(0≦x≦1)、及びダイヤモンド半導体を受光部に
用いた光伝導型センサー素子は、照射された紫外線が上記受光部の半導体内部に吸収され
ることによって生成されるキャリア(電子又は正孔)に起因する光電流を検出する素子で
あるため、照射された紫外線のパワーに対する光電流の大きさの割合、即ち量子効率が1
00%の理想的な素子であっても、例えば、波長220nmや230nmの紫外線に対し
て受光感度の限界値が、それぞれ0.18A/W及び0.19A/Wであり、極微弱光に
対する光誘起電流量の変化は極めて小さいものであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、単結晶又は多結晶ダイヤモンド薄膜を成長させる必要が無く、工業化されて
いる窒素を含有するダイヤモンド単結晶基板のみを使うことを特徴とし、ダイヤモンド単
結晶基板表面に水素化処理を施すことによって、波長260nm以下の紫外線に対する受
光感度を上記限界値の少なくとも1000倍程度高めたダイヤモンド紫外線センサー素子
を提供するものである。
【0015】
具体的には、受光部の光誘起電流量の変化によって、受光部に照射される波長260n
m以下の紫外線を検出し、波長400nm以上の可視光には受光感度を持たない光伝導型
センサー、その光伝導型センサーを用いた火炎センサー及び紫外線センサーである。光セ
ンサー素子の構造は、光伝導型、pn型、pin型、及びショットキーダイオード型が既
に工業化されている。本発明は、この中でも2端子電極を持つ光伝導型センサー素子に関
するものである。
【0016】
本発明は、(1)受光部材料の光誘起電流の変化によって、受光部に照射される光を検出する2端子電極を持つ光伝導型センサー素子であって、水素化処理された表面を有し、主たるキャリアが正孔である表面伝導層を持つ高温高圧合成法によって作製された窒素原子を含むダイヤモンド単結晶を受光部に持つダイヤモンド紫外線センサー素子、である。

【0017】
また、本発明は、(2)受光部材料の光誘起電流の変化によって、受光部に照射される
光を検出する2端子電極を持つ光伝導型センサー素子であって、結合水素原子および結合
酸素原子によって覆われた表面を持つ高温高圧合成法によって作製された窒素原子を含む
ダイヤモンド単結晶を受光部に持つダイヤモンド紫外線センサー素子、である。
【0018】
また、本発明は、(3)受光部材料の光誘起電流の変化によって、受光部に照射される
光を検出する2端子電極を持つ光伝導型センサー素子であって、水素を含む雰囲気内でプ
ラズマ放電処理された表面を持つ高温高圧合成法によって作製された窒素原子を含むダイ
ヤモンド単結晶を受光部に持つダイヤモンド紫外線センサー素子、である。
【0019】
また、本発明は、(4)受光部材料の光誘起電流の変化によって、受光部に照射され
る光を検出する2端子電極を持つ光伝導型センサー素子であって、高温高圧合成法によっ
て作製されたボロン原子を含むダイヤモンド単結晶を受光部に持つ、前項(1)、(2)
、又は(3)に記載のダイヤモンド紫外線センサー素子、である。
【0020】
また、本発明は、(5)受光部材料の光誘起電流の変化によって、受光部に照射され
る光を検出する2端子電極を持つ光伝導型センサー素子であって、電子—正孔対が発生し
、その生成キャリアの走行に起因する電流成分Bと光誘起電流成分Aのうち、電流成分Aの
みが表面伝導層を流れる前項(1)に記載のダイヤモンド紫外線センサー素子、である。
【0021】
本発明の紫外線センサーは、ダイヤモンド半導体の水素化された表面の特殊性と表面近
傍のダイヤモンド内にある窒素、ボロン、又はボロン-窒素複合体の不純物準位を介した
光励起生成キャリアの電気伝導に基づくセンシング機構を持っている。即ち、水素化され
たダイヤモンド表面に波長260nm以下の紫外線が照射されることによって、表面準位
の電荷状態が変化することによって表面のバンド構造が変調される結果、少なくとも1平
方センチメートル当たり1014個以上の高濃度の正孔が発生する現象を利用しているた
め、従来の検出感度の限界値を覆して限界値の3桁程度検出感度を向上させている。
【0022】
ダイヤモンド表面のバンド構造が変調される具体的なメカニズムとしては、以下の通り
考えられる。深紫外線照射により水素化されたダイヤモンド表面準位又は表面近傍の不純
物準位の電荷中性条件が変化するため、表面のフェルミ準位が変化し、表面ポテンシャル
が増加する結果、表面での正孔濃度が少なくとも1平方センチメートル当たり1014
以上に著しく増加する。
【0023】
本発明は、この水素化された表面伝導層に、図1及び図2に示す2端子電極を形成した
光伝導型センサー素子において、例えば、波長220nmの紫外線をこの表面伝導層に照
射することによって、受光感度が従来の半導体内部の光励起キャリアの光伝導に基づく理
論限界値である0.18A/Wの少なくとも1000倍である180A/Wを実現する。
【0024】
また、紫外線(220nm)に対する可視光線(600nm)の相対受光感度比10
を達成しており、波長260nm以下の紫外線のみを選択的に検出することができる。上
記素子構造において酸化処理を施した高圧合成ダイヤモンド基板表面(酸素原子の表面被
覆割合として少なくとも90%以上)を受光部にした場合には、このような高い受光感度
が実現されないことも確認している。
【0025】
ダイヤモンド半導体のエネルギーギャップ5.5eVより大きなエネルギーを持つ波長
220nmの紫外線(エネルギー5.6eV)が、ダイヤモンド半導体内部において吸収
されることによって生成するキャリア(電子又は正孔)がキャリアとなって伝導する従来
の電気伝導機構では、高々0.2A/W程度の受光感度が限界であった。更に、高温高圧
法によって合成された窒素を含有するダイヤモンド単結晶基板の表面を利用したダイヤモ
ンド紫外線センサーでは、この受光感度0.2A/Wを達成することは不可能であった。
【0026】
高温高圧合成法によって作製された実質的に窒素を含有するダイヤモンド単結晶基板で
あっても水素化処理を施すことによって、水素化されたダイヤモンド表面を作り、更に段
落0021及び0022に説明した紫外線照射時における表面のバンド構造の変調効果を
利用すれば、表面伝導層内の正孔濃度を少なくとも100倍に増大させることが可能であ
ると考えられ、本発明においても180A/Wの受光感度が達成されている。
【発明の効果】
【0027】
従来、ダイヤモンド紫外線センサーとしては、マイクロ波励起プラズマ気相成長法等に
よって成長させた電気的・光学的に高品質なダイヤモンド半導体薄膜が必要であったが、
本発明によれば、工業化されている高温高圧合成法によって作製された窒素を含むダイヤ
モンド半導体基板のみを使うことによってダイヤモンド紫外線センサーを製造することが
できるため、飛躍的なコストの低下につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、本発明のダイヤモンド紫外線センサー素子の断面図である。図2は、本発明の
ダイヤモンド紫外線センサー素子の電極パターンを示す平面図である。本発明の受光部材
料の光誘起電流の変化によって、受光部に照射される光を検出する2端子電極を持つ光伝
導型センサー素子は、ダイヤモンド単結晶基板3の表面に水素化処理された表面2を持つ
。フォトリソグラフィー法によって、図1の1及び図2に示す電極1の作製のためのレジ
ストのパターニングを行ない、その後、電子ビーム蒸着法によって、電極金属を堆積させ
、リフトオフ法により、図1及び図2に示すようなくしの刃型の2端子電極1のパターン
を形成する。ダイヤモンド単結晶基板としては高温高圧合成法によって作製された窒素原
子を含むダイヤモンド単結晶を用いる。
【0029】
このようなダイヤモンド単結晶基板は、高温(約1500℃)と高圧(約5万気圧)で
作製する高温高圧(HTHP)法によって合成され、工業用として商品化されている。高温高
圧法によって作製されたダイヤモンド単結晶は0.0001から0.03%(Vol)程度
の窒素を含有し、黄色を呈している。
【0030】
窒素を含有するダイヤモンド単結晶基板を800℃以上の温度で水素を含む雰囲気中に
おいてプラズマ処理することによって、基板表面を水素化することが可能である。本実施
例では1000℃の水素プラズマ処理を行っており、表面の水素濃度は被覆率として少な
くとも80%である。このような水素化された表面は、表面の炭素原子は水素によって結
合終端されており、その結果、表面近傍に表面密度1011個/cm-3以上の正孔が表
面から深さ2nm以内に局在して発生している。電子やイオンではない、主たるキャリア
(電流担体)が正孔であり、電気抵抗率が少なくとも5kΩ程度の表面伝導層が形成され
ている。その発生機構は段落0006に記すとおり不明である。ダイヤモンド基板内の窒
素原子の濃度は、0.0001から0.03%(Vol)程度である。
【0031】
結合水素原子および結合酸素原子によって覆われた表面とは、水素化処理によって少な
くとも表面被覆率として80%以上が水素原子によって結合され、少なくとも表面被覆率
20%以下が酸素原子によって結合された表面状態を指している。段落0030に説明す
るように、本実施例においては、1000℃での水素雰囲気中プラズマ処理によって作製
される。
【0032】
水素含む雰囲気内でプラズマ放電処理された表面とは、水素ガス濃度が1%(Vol)~
100%(Vol)の、水素ガスと不活性ガス(酸素、窒素、アルゴン等)との混合ガス又
は水素単独ガスよって発生させられたプラズマ雰囲気中にダイヤモンド単結晶基板を置く
ことによって水素化処理された表面のことを指している。この結果、ダイヤモンド表面の
水素原子の表面被覆率80%以上が達成されることが条件となる。
【0033】
高温高圧合成法によって作製された窒素原子を含むダイヤモンド単結晶はさらに少なくと
も濃度が0.01%(Vol)多くとも1%(Vol)のボロン原子を含んでもよい。高温高圧
合成法によって作製されたダイヤモンド単結晶基板中には、様々な不純物元素が含有され
ており、ボロンを意図的に添加した結晶であっても、ボロンが水素、窒素、又は他の不純
物元素と化学結合した複合体が形成される。ここでのボロン原子は、ダイヤモンド内炭素
の原子位置に置換して固溶しており、室温においてマイナス一価のイオンとなった荷電状
態を想定している。
【0034】
本発明のダイヤモンド紫外線センサー素子のセンシング機構は、水素化されたダイヤモ
ンド表面に波長260nm以下の紫外線が照射されることによって、表面準位の電荷状態
が変化することによって表面のバンド構造が変調される結果、表面近傍に高濃度の正孔が
発生する現象を利用している。この電流成分Aの他に、従来理解されている光センシング
機構と同様に、紫外線を吸収することによってダイヤモンド結晶内に電子—正孔対が発生
し、その生成キャリアの走行に起因する電流成分Bも存在する。ここでは、主たる光誘起
電流成分が電流成分Aである紫外線センサー素子を意味している。
【実施例1】
【0035】
図1及び図2に示す光伝導型センサー素子を以下に記すプロセスで作製し、その後紫外
線に対する受光感度特性を測定した。
【0036】
図1に示すように、高温高圧合成法によって作製された長さ2.5×幅2.5×厚さ0
.5mmのIb型ダイヤモンド(100)面単結晶基板(エレメントシックス社製、MTL2
52505Q型、窒素濃度0.001%(Vol)以上)3を以下の条件において、水素化処理を
行い、表面に水素終端層(水素化された表面)2を形成した。メタルチャンバー内にH
(水素)をキャリアガスとして流し、圧力10.7kPaに保ちながら、チャンバー内のモ
リブデンホルダー上に置かれた上記ダイヤモンド単結晶基板に2.45ギガヘルツのマイ
クロ波を照射することによって、水素プラズマを発生させ、同時に基板温度を上昇させた
。この時、基板温度900℃、マイクロ波パワー400W、及びH2流量500sccm
、処理時間は30分であった。
【0037】
水素化処理された表面2を持つダイヤモンド(100)面単結晶基板3は、アセトン及
びイソプロピルアルコールそれぞれの溶液中で超音波洗浄され、フォトリソグラフィー法
によって図1の1及び図2に示す電極1の作製のためのレジストのパターニングが行なわ
れた。その後、電子ビーム蒸着法によって、Ti(厚さ15nm)及びAu(厚さ150
nm)を積層堆積させ、リフトオフ法により、図1及び図2に示すようなくしの刃型の2
端子TiAu電極1のパターンを形成した。TiAu電極1の電極幅(図1及び図2の1
Lに相当する)は10μmであり、電極間隔(図1及び図2の2Lに相当する)は10μ
mであった。2端子電極の内、1つの電極の面積は8.1×10-4cmであり、光の
受光面積は5.3×10-4cmであった。
【0038】
このように作製された光伝導型センサー素子は2探針プローバを装備した真空チャンバ
ー内にセットされ、チャンバー内はターボ分子ポンプによって0.05Paの真空度に維
持された。キセノンランプからの放射光が、分光器を通して210から420nmの範囲
で単色化され、その光量10μW/cmが一定となる条件で石英窓を通して上記ダイヤ
モンド紫外線センサー素子に照射された。
【0039】
図3aに、光照射されない暗室下で測定された電流—電圧(I-V)特性を示し、図3
bに、波長220nmの紫外線が照射されている間に測定されたI-V特性を示す。ここ
で、I-V特性は2端子法によって測定された。図3aに示すように、本素子の紫外線照
射されない暗電流は±10Vにおいて0.1pA以下であり、極めて微弱な暗電流を実現
していることがわかる。
【0040】
一方、図3bに示すように、波長220nmの紫外線を照射することによって、暗電流
に比べて10~10倍もの光誘起電流が得られ、±10Vにおいて1μAもの高レベ
ルに達している。このような巨大光誘起電流は波長260nmを超える光を照射しても得
られなかった。紫外線の入射光パワーに対する光電流値で定義される検出感度を計算する
と180A/Wに達している。この検出感度の値は、従来の半導体内部の光励起キャリア
に起因する光電流の限界値0.18A/Wの1000倍に達している。
【0041】
図4に、印加電圧10Vにおける受光感度の波長依存性(光応答特性)を示す。波長2
20nmの紫外線に対する受光感度は180A/Wである。紫外線(220nm)に対す
る可視光線(600nm)の相対受光感度比10を達成しており、波長260nm以下
の紫外線のみを選択的に検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
従来の紫外線センサーでは光パワー10-15Wの極微弱紫外線で且つ波長260nm
以下のみを選択的に検出可能な半導体センサー素子はこれまで存在しなかったが、本発明
によりフェムトワットクラスの微弱紫外線であっても、十分検出可能であり、しかも工業
化されている窒素を含むダイヤモンド単結晶基板のみを使うことによって紫外線センサー
素子を製造することができるようになった。本発明の光センサー素子は、工業用燃焼炉、
ガスタービンエンジン、並びにジェットエンジン等の燃焼制御モニター、及び火災報知器
と連動した炎探知機用の火炎センサー、更にシリコン大規模集積回路作製プロセスに使わ
れるステッパー露光装置や紫外線照射装置内の紫外線センサーに応用され、新たな半導体
センサー素子の市場が切り開かれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のダイヤモンド紫外線センサーの断面図である。
【図2】本発明のダイヤモンド紫外線センサーの電極パターンを示す平面図である。
【図3】本発明のダイヤモンド紫外線センサーの(a)暗電流I-V特性、及び(b)波長220nmの紫外線を照射中に測定されたI-V特性を示すグラフである。
【図4】本発明のダイヤモンド紫外線センサーの受光感度の波長依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0044】
1:TiAu電極
2:水素化終端表面層
3:窒素を含有するダイヤモンド(100)単結晶基板
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3