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明細書 :超伝導MgB2膜の電気メッキによる作製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4811998号 (P4811998)
公開番号 特開2007-141793 (P2007-141793A)
登録日 平成23年9月2日(2011.9.2)
発行日 平成23年11月9日(2011.11.9)
公開日 平成19年6月7日(2007.6.7)
発明の名称または考案の名称 超伝導MgB2膜の電気メッキによる作製法
国際特許分類 H01B  13/00        (2006.01)
H01B  12/06        (2006.01)
C01B  35/04        (2006.01)
C01G   1/00        (2006.01)
C25B   1/00        (2006.01)
C25D   3/66        (2006.01)
FI H01B 13/00 565Z
H01B 12/06 ZAA
C01B 35/04 C
C01G 1/00 S
C25B 1/00 Z
C25D 3/66
請求項の数または発明の数 2
全頁数 5
出願番号 特願2005-337721 (P2005-337721)
出願日 平成17年11月22日(2005.11.22)
審査請求日 平成20年11月14日(2008.11.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】阿部 英樹
【氏名】今井 基晴
【氏名】銭谷 勇磁
【氏名】柴山 功
【氏名】秋光 純
審査官 【審査官】長谷山 健
参考文献・文献 特開2005-001903(JP,A)
特開2004-010388(JP,A)
特開2004-010390(JP,A)
特開2004-010389(JP,A)
特開2002-321911(JP,A)
調査した分野 H01B 13/00
H01B 12/06
C01B 35/04
C01G 1/00
C25B 1/00
C25D 3/66
特許請求の範囲 【請求項1】
MgCl(塩化マグネシウム)、KCl(塩化カリウム)、NaCl(塩化ナトリウム)、MgB(ホウ酸マグネシウム)を混合し、加熱溶融したメッキ浴に、Mg(OH)(水酸化マグネシウム)が、メッキ浴に含まれるMgのモル比を1とした時、0.015~0.020のモル比で添加され、メッキ浴に導電体基板を陰極として挿入し、陽極との間に直流電圧をかけ、導電体基板上にMgB(二ホウ化マグネシウム)膜を形成させることを特徴とする超伝導MgB膜の電気メッキによる作製法。
【請求項2】
導電性基板の素材が鉄またはステンレスである請求項1記載の超伝導MgB膜の電気メッキによる作製法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本願発明は、高臨界電流密度を示す超伝導MgB膜の電気メッキによる作製法に関する。
【背景技術】
【0002】
MgB(二ホウ化マグネシウム)は、金属間化合物では最高の超伝導遷移温度T=39Kを示すことから、従来超伝導材料として広く実用化されてきたA15型金属間化合物(T=15K程度)に換わる新たな超伝導材料として電力への応用が期待されている。
【0003】
これまでに超伝導MgBの作製技術として、電気メッキにより導電体表面へMgB膜を常圧合成する「MgB電気メッキ法」が確立されている(特許文献1-4)。

【特許文献1】特開2002-321911号公報
【特許文献2】特開2003-238144号公報
【特許文献3】特開2004-10389号公報
【特許文献4】特開2004-10390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は、確立された「MgB電気メッキ法」をさらに発展させ、臨界電流密度(J)を従来製品に比べ飛躍的に向上させることのできる超伝導MgB膜の電気メッキによる作製法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、上記の課題を解決するものとして、第1に、MgCl(塩化マグネシウム)、KCl(塩化カリウム)、NaCl(塩化ナトリウム)、MgB(ホウ酸マグネシウム)を混合し、加熱溶融したメッキ浴に、Mg(OH)(水酸化マグネシウム)が、メッキ浴に含まれるMgのモル比を1とした時、0.015~0.020のモル比で添加され、メッキ浴に導電体基板を陰極として挿入し、陽極との間に直流電圧をかけ、導電体基板上にMgB(二ホウ化マグネシウム)膜を形成させることを特徴としている。

【0006】
本願発明は、第2に、導電性基板の素材が鉄またはステンレスであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、MgとBを含むメッキ浴に、メッキ浴に含まれるMgのモル比を1とした時、0.015~0.020のモル比でMg(OH)を添加することにより、得られるMgBの臨界電流密度(J)を飛躍的に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下実施例を示し、本願発明の超伝導MgB膜の電気メッキによる作製法を詳述する。
【0009】
臨界電流密度(J)は、実用超伝導材料のパフォーマンスを示す最も重要な指標である。臨界電流密度(J)の高いMgB膜は、電力へ応用するのにさらに有利になる。本願発明の超伝導MgB膜の電気メッキによる作製法は、MgとBを含む電気メッキ浴にMg(OH)(水酸化マグネシウム)を添加するだけのシンプルな構成であり、臨界電流密度(J)の向上が簡便に実現される。「MgB電気メッキ法」は、現在主流で
ある真空蒸着法と異なり、電気メッキ用の簡単な装置を利用するため、単純廉価な装置により超伝導MgB線材が得られる。しかも、真空蒸着では不可能な基板裏面への成膜も可能であり、コイル状に成形した金属棒に超伝導MgB膜を付着させ、超伝導マグネットを作製することができる。このような「MgB電気メッキ法」の利点に加え、本願発明の超伝導MgB膜の電気メッキによる作製法は、メッキ浴に含まれるMgのモル比を1とした時、0.015~0.020のモル比でMg(OH)を添加することにより臨界電流密度(J)を飛躍的に向上させる。
【実施例】
【0010】
MgCl(塩化マグネシウム)、KCl(塩化カリウム)、NaCl(塩化ナトリウム)、MgB(ホウ酸マグネシウム)をモル比10:5:5:0.1に調整し、モル比0.000≦x≦0.030で水酸化マグネシウム(Mg(OH))を添加し、混合した。次いで混合塩を乾燥アルゴンガス中で600℃以上に加熱し、溶融させてメッキ浴とした。
【0011】
メッキ浴中に径1mmの炭素棒を陽極、厚さ0.25mm、幅10mmの鉄基板を陽極として5mm間隔で平行に挿入した後、陰陽両極間に4Vの直流電圧を印加した。10分後、陰極の鉄基板をメッキ浴から抜き出し、乾燥メタノール中で超音波洗浄を行い、表面に付着したメッキ浴成分を除去した。鉄基板に電気メッキされたMgB膜が得られた。
【0012】
図1は、得られたMgB膜の外見と導電特性を対応させて示したものである。図1から理解されるように、Mg(OH)(水酸化マグネシウム)の添加量xが0.015≦x≦0.020の場合に限り、MgBの超伝導転移にともなう39K付近での電気抵抗の減少が観測された。特にx=0.015の場合、MgB膜は39K以下でゼロ抵抗を示す。
【0013】
図2は、x=0.015の場合に得られたMgB膜の臨界電流密度(J)を磁場の関数として示したグラフである。
【0014】
外挿により得られるゼロ磁場での臨界電流密度は、J(5K)=230,000A/
cm、J(20K)=140,000A/cmであった。
【0015】
比較のために、Mg(OH)を添加しないでステンレス基板に電気メッキしたMgB膜の臨界電流密度(J)の磁場依存性を図3に示した。ゼロ磁場での臨界電流密度は、J(5K)=25,000A/cm、J(20K)=7,000A/cmであった。これは、Mg(OH)を添加しない従来のメッキ浴を用いて得られたMgB膜の臨界電流密度(J)の最高値であった。
【0016】
図2、図3の比較から、Mg(OH)をモル比0.015でメッキ浴に添加して電気メッキしたMgB膜の臨界電流密度(J)は、従来のMg(OH)の添加していないMgBメッキ膜の最高値より1桁向上していることが分かる。
【0017】
もちろん、本願発明は、以上の実施例によって限定されるものではない。加熱温度、電極の大きさ、メッキ電圧、時間等の細部については様々な態様が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】MgCl:KCl:NaCl:MgB:Mg(OH)=10:5:5:0.1:xの組成を持つメッキ浴において、Mg(OH)のモル比xを0.000≦x≦0.030で変化させた時のMgBメッキ膜の外見と超伝導特性を対応させて示した図である。
【図2】x=0.015でMg(OH)を添加して得られたMgB膜の臨界電流密度(J)を磁場の関数として示したグラフである。
【図3】Mg(OH)を添加しないでステンレス基板に電気メッキしたMgB膜の臨界電流密度(J)の磁場依存性を示したグラフである。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図1】
2