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明細書 :ビスマス・エルビウム・モリブデン酸化物固溶体からなる酸化物イオン伝導材料及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4925034号 (P4925034)
公開番号 特開2007-197259 (P2007-197259A)
登録日 平成24年2月17日(2012.2.17)
発行日 平成24年4月25日(2012.4.25)
公開日 平成19年8月9日(2007.8.9)
発明の名称または考案の名称 ビスマス・エルビウム・モリブデン酸化物固溶体からなる酸化物イオン伝導材料及びその製造方法
国際特許分類 C01G  39/00        (2006.01)
H01B   1/06        (2006.01)
H01M   8/02        (2006.01)
H01M   8/12        (2006.01)
C04B  35/00        (2006.01)
FI C01G 39/00 Z
H01B 1/06 A
H01M 8/02 K
H01M 8/12
C04B 35/00 J
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2006-017785 (P2006-017785)
出願日 平成18年1月26日(2006.1.26)
審査請求日 平成21年1月23日(2009.1.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】渡辺 昭輝
【氏名】関田 正實
審査官 【審査官】横山 敏志
参考文献・文献 特開昭58-015067(JP,A)
特表平04-505603(JP,A)
特開平07-277735(JP,A)
特開平08-133740(JP,A)
特開平08-239217(JP,A)
特開2003-300708(JP,A)
特開2006-151716(JP,A)
米国特許第5478444(US,A)
国際公開第2005/102958(WO,A1)
Akiteru WATANABE,Phase relations of Bi2O3-rich Bi2O3-Er2O3 system: The appearance of a new stable orthorhombic phase・・・,Solid State Ionics,2005, Vol.176,pp.2423-2428
Akiteru WATANABE,New monoclinic compounds, Bi3.24Ln2W0.76O10.14・・・,Journal of Solid State Chemistry,2002, Vol.169,pp.60-65
Akiteru WATANABE,Synthesis and lattice parameters・・・,Mat. Res. Bull.,1980, Vol.15,pp.1473-1477
N.M. SAMMES, et al.,Bismuth based oxide electrolytes - structure and ionic conductivity,Journal of the European Ceramic Society,1999, Vol.19,pp.1801-1826
調査した分野 C01G1/00-47/00
C01G49/10-99/00
CAplus(STN)
JSTPlus(JDreamII)
Science Direct
WPI
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
面心立方晶系の構造を有する一般式(Bi)x(Er)y(MoO)z (0.61<x<0.74、0.19<y<0.34、0.02<z<0.08、但し、x+y+z=1)で示されるビスマス・エルビウム・モリブデン酸化物固溶体からなる酸化物イオン伝導材料。
【請求項2】
酸化ビスマス(Bi)又は加熱されることにより酸化ビスマスに分解される化合物と、酸化エルビウム(Er) 又は加熱されることにより酸化エルビウムに分解される化合物と、さらに、酸化モリブデン(MoO) 又は加熱されることにより酸化モリブデンに分解される化合物とを、その割合がモル比でBi:Er:MoOがx:y:z(ここで、0.61<x<0.74、0.19<y<0.34、0.02<z<0.08、但し、x+y+z=1)となるように秤量・混合した出発原料を空気中又は酸化雰囲気下で700℃以上の温度で加熱することにより固相反応させて、一般式(Bi)x(Er)y(MoO)z (0.61<x<0.74、0.19<y<0.34、0.02<z<0.08、但し、x+y+z=1)で示される面心立方晶系の構造を有する酸化物イオン伝導性ビスマス・エルビウム・モリブデン酸化物固溶体を製造する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物イオン伝導材料とその製造方法に関し、より詳しくは、低温領域でも分解や相転移することのない安定な酸化物イオン伝導材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化ビスマスの高温安定相(δ-Biと命名されている)は酸素が25at%欠損した蛍石型の面心立方晶系の構造をもち、高い酸化物イオン伝導を示す酸化物であることが知られているが、その安定温度領域が730~825℃と狭く、かつ還元され易い等の欠点を有するために、他の酸化物を添加することにより、安定温度領域を室温付近まで低下させる安定化の試みがなされた(例えば、非特許文献1)。
【0003】
特に、希土類酸化物(Ln)を添加したBi-Lnの二成分系が広く検討された。その結果、固相反応法により得られた一般式(Bi)1-p(Ln)p (0<p<1)で示される酸化物は酸素が25at%欠損した蛍石型構造をもつ面心立方晶の相であり、高い酸化物イオン伝導を示すことが認められた。しかしながら、これらの面心立方晶の相はLnの濃度に依存した臨界温度、すなわち600~700℃より低温領域に保持されると分解又は相転移が生じてしまい、そのイオン伝導性は急激に低下し、実用には供し得ない材料であった(例えば、非特許文献1)。既往の酸化物イオン伝導体として有名な安定化ジルコニアも酸素欠損した蛍石型の面心立方晶系構造を有しており、隙間の多い蛍石型の面心立方構造と酸化物イオン伝導の関連性もまた種々検討されてきた。
【0004】

【非特許文献1】N. Jiang and E. D. Wachsman, J. Am. Ceram. Soc., 82, 3057 (1999).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低温領域でも分解や相転移することなく安定であり、高い酸化物イオン伝導を呈する酸化物イオン伝導体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を達成するために、本第一発明の酸化物イオン伝導材料は、一般式(Bi)x(Er)y(MoO)z (0.61<x<0.74、0.19<y<0.34、0.02<z<0.08、但し、x+y+z=1)で示される面心立方晶系の構造を有するビスマス・エルビウム・モリブデン酸化物固溶体からなることを特徴とする構成を採用した。
【0007】
また、本第二発明は、前記第一発明の酸化物イオン伝導材料を製造する方法であって、酸化ビスマス(Bi)又は加熱されることにより酸化ビスマスに分解される化合物と、酸化エルビウム(Er) 又は加熱されることにより酸化エルビウムに分解される化合物と、さらに、酸化モリブデン(MoO) 又は加熱されることにより酸化モリブデンに分解される化合物とを、その割合がモル比でBi:Er:MoOがx:y:z(ここで、0.61<x<0.74、0.19<y<0.34、0.02<z<0.08、但し、x+y+z=1)となるように秤量・混合した出発原料を空気中又は酸化雰囲気下で700℃以上の温度で加熱することにより固相反応させる構成を採用した。
【発明の効果】
【0008】
本発明者は、酸化ビスマス(Bi)を基本とする酸化物イオン伝導体を探索する目的で、添加酸化物として酸化エルビウム(Er)と酸化モリブデン(MoO)を用いた三成分系について検討した。その結果、一般式(Bi)x(Er)y(MoO)z (0.61<x<0.74、0.19<y<0.34、0.02<z<0.08、但し、x+y+z=1)で示されるビスマス・エルビウム・モリブデン酸化物は面心立方晶系の構造を有する固溶体を形成するが、意外にも、従来の面心立方晶系に属するビスマス複酸化物と異なって、600℃以下550℃までの低温領域でも分解や相転移することなく安定であり、10-2 S cm-1以上の高い酸化物イオン伝導を呈することを発見し、本発明に至った。
本第一発明のビスマス・エルビウム・モリブデン酸化物固溶体からなる酸化物イオン伝導材料は、従来の面心立方晶系に属するビスマス複酸化物とは異なり、600℃以下550℃までの低温領域でも分解や相転移することなく安定であり、10-2 S cm-1以上の高い酸化物イオン伝導を呈する。例えば、図2に示されるように、x=0.725、y=0.210、z=0.065の組成では550℃における電気伝導度が10-1.45 S cm-1、活性化エネルギーは0.99 eVであり、また、図4に示されるように、同温度での酸化物イオンの輸率は0.94である。したがって、高酸化物イオン伝導体である。
【0009】
上記第二発明により、本第一発明の酸化物イオン伝導材料を確実に得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のビスマス・エルビウム・モリブデン酸化物固溶体からなる酸化物イオン伝導材料は、以下の手順で製造することができる。すなわち、酸化ビスマス(Bi) 又は加熱されることにより酸化ビスマスに分解される化合物と、酸化エルビウム(Er) 又は加熱されることにより酸化エルビウムに分解される化合物と、さらに、酸化モリブデン(MoO) 又は加熱されることにより酸化モリブデンに分解される化合物とを、その割合がモル比でBi:Er:MoOがx:y:z(ここで、0.61<x<0.74、0.19<y<0.34、0.02<z<0.08、但し、x+y+z=1)となるように秤量・混合した出発原料を空気中又は酸化雰囲気下で700℃以上1000℃未満の温度で加熱し、固相反応させることにより得られる。
【0011】
700℃未満の温度では固相反応が進まず、1000℃を越えると試料の溶融が始まり蒸発が生じる恐れがある。望ましくは800~900℃の温度である。加熱されることにより酸化ビスマスに分解される化合物としては、例えば、硝酸ビスマス(Bi(NO)が挙げられる。加熱されることにより酸化エルビウムに分解される化合物としては、例えば、硝酸エルビウム(Er(NO)が挙げられる。加熱されることにより酸化モリブデンに分解される化合物としては、例えば、へプタモリブデン酸アンモニウム((NHMo24・4HO)が挙げられる。
【実施例1】
【0012】
次に本発明の実施例を示す。純度がいずれも、99.9%以上の酸化ビスマス(Bi)、酸化エルビウム(Er)、酸化モリブデン(MoO)の粉末を、Bi:Er:MoOがモル比で72.5:21.0:6.5(試料1)、72.0:23.0:5.0(試料2)、69.5:26.5:4.0(試料3)並びに68.5:28.0:3.5(試料4)となるように秤量し、組成の異なる4個の試料を準備した。精秤した各試料をメノウ乳鉢中で十分に混合した。この混合物を白金ルツボに充填し、電気炉を用い空気中で室温から加熱し始め、試料1~4のいずれも825℃で15時間熱処理後、ルツボを電気炉から取り出した。
【0013】
生成物の粉末X線回折の結果は、試料1~4のいずれも、面心立方晶系の回折パターンを与えた。図1に、試料1の場合についての回折パターンを示すが、この結果から概略の格子定数が5.51Åと算出される。試料1~4のいずれも、面心立方晶系の固溶体に属することが認められる。
【0014】
電気伝導度測定用試料として、合成された試料1~4の各粉末を直径4.5 mmの金型を使用して長さ7 mmの圧粉円柱体を作製し、その圧粉体をさらに200MPaの静水圧で等方的に圧縮した後、電気炉中において850℃で50時間加熱焼結した。この焼結体の両面に金ペーストを塗布して電極とし、交流インピーダンス法の電気伝導度測定用試料とした。電気炉中に設置した試料の電気抵抗を150℃から710℃まで20℃の温度間隔で昇温と降温過程で測定した。その結果は、図2に示すように高い電気伝導を示した。
【0015】
次に、円柱体の試料2に関して、600℃に保持された状態で450時間までの、測定開始時の電気伝導度に対する相対電気伝導度の変化を調べた結果を図3に示す。450時間後でも相対電気伝導度は100.70%と、初期値よりも高くなり、材料としての劣化は全く認められない。換言すれば、本発明の固溶体は酸化ビスマスの高温安定相(δ-Bi)を低温領域まで真に安定化したものである。
【0016】
酸化物イオンの輸率測定用試料として、試料1の粉末を直径18 mmの金型を使用して厚さ3 mmの圧粉円盤体を作製し、その圧粉体をさらに200MPaの静水圧で等方的に圧縮した後、電気炉中において825℃で50時間加熱焼結した。この燒結体を介して純酸素と空気から成る酸素濃淡電池を構成して、昇温・降温過程で起電力を測定することにより、輸率を見積もった。図4に示された結果から、輸率は550~800℃で0.94以上であった。したがって、本固溶体は高酸化物イオン伝導体である。
【0017】
試料1の粉末の熱的特性を検討する目的で、示差熱分析を行った。図5に室温から1180℃までの昇温・降温過程の結果を示す。1040℃に溶融による吸熱の幅広なピークのみが認められ、相転移や分解は認められなかった。したがって、本固溶体は室温から1040℃まで安定な面心立方晶を保っていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明のビスマス・エルビウム・モリブデン酸化物固溶体からなる酸化物イオン伝導材料は、550℃以上で高いイオン伝導性を示すことから、酸素ポンプ、燃料電池、電極、センサー、触媒等の材料としての用途を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の酸化物イオン伝導材料としてのビスマス・エルビウム・モリブデン酸化物固溶体の一組成である72.5Bi・21.0Er・6.5MoOの粉末X線回折結果を示すグラフ。入射X線はCuKα線である。
【図2】本発明の酸化物イオン伝導材料としてのビスマス・エルビウム・モリブデン酸化物固溶体の一組成である72.5Bi・21.0Er・6.5MoO、72.0Bi・23.0Er・5.0MoO、69.5Bi・26.5Er・4.0MoO並びに68.5Bi・28.0Er・3.5MoOの電気伝導度の温度変化を示すグラフ。
【図3】本発明の酸化物イオン伝導材料としてのビスマス・エルビウム・モリブデン酸化物固溶体の一組成である72.0Bi・23.0Er・5.0MoOの600℃での相対電気伝導度の時間変化を示すグラフ。
【図4】本発明の酸化物イオン伝導材料としてのビスマス・エルビウム・モリブデン酸化物固溶体の一組成である72.5Bi・21.0Er・6.5MoOの酸化物イオン輸率の温度変化を示すグラフ。
【図5】本発明の酸化物イオン伝導材料としてのビスマス・エルビウム・モリブデン酸化物固溶体の一組成である72.5Bi・21.0Er・6.5MoOの示差熱分析曲線を示すグラフ。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4