TOP > 国内特許検索 > 有機分子の注入方法とその装置 > 明細書

明細書 :有機分子の注入方法とその装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5445990号 (P5445990)
公開番号 特開2007-216085 (P2007-216085A)
登録日 平成26年1月10日(2014.1.10)
発行日 平成26年3月19日(2014.3.19)
公開日 平成19年8月30日(2007.8.30)
発明の名称または考案の名称 有機分子の注入方法とその装置
国際特許分類 B01J  19/12        (2006.01)
B01J   4/00        (2006.01)
FI B01J 19/12 B
B01J 19/12 C
B01J 4/00 105Z
請求項の数または発明の数 11
全頁数 10
出願番号 特願2006-035963 (P2006-035963)
出願日 平成18年2月14日(2006.2.14)
審査請求日 平成21年2月5日(2009.2.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】後藤 真宏
【氏名】ユーリー ピホッシュ
【氏名】笠原 章
【氏名】土佐 正弘
審査官 【審査官】増田 健司
参考文献・文献 特開2002-190386(JP,A)
特開2000-150158(JP,A)
特開平06-297457(JP,A)
特開昭61-078435(JP,A)
特開平10-309515(JP,A)
特開平10-309900(JP,A)
調査した分野 B01J 19/12
B01J 4/00
特許請求の範囲 【請求項1】
有機分子を含む有機分子注入源に対して集光された光を照射することで、光の進行方向あるいは進行反対方向に設置された基板の表面に、有機分子注入源に含まれる有機分子を注入する方法において、有機分子注入源の形状を、基板に対して凸となるような曲面形状として基板に接触させ、集光された光が0.1~3μmの範囲内に集光された光線であることにより、基板の表面の最大径3μm以下の領域に有機分子を注入することを特徴とする、有機分子の注入方法。
【請求項2】
有機分子注入源中の有機分子の濃度を0.01~10重量%の範囲内とすることを特徴とする、請求項1記載の有機分子の注入方法。
【請求項3】
基板が高分解能移動ステージに接続されており、有機分子の注入時に、高分解能移動ステージにより基板の位置を光源に対して変化させることにより、有機物質が注入される微小領域の位置を制御し、基板表面に有機分子を任意のパターン形状に配列させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機分子の注入方法。
【請求項4】
基板と有機分子注入源の距離を、90μm以下で制御することを特徴とする、請求項1から3のうちのいずれかに記載の有機分子の注入方法。
【請求項5】
有機分子注入源として、複数種類の有機分子注入源を用いることを特徴とする、請求項1から4のうちのいずれかに記載の有機分子の注入方法。
【請求項6】
有機分子注入源が、注入される有機分子を樹脂中に含有させたものであることを特徴とする、請求項1から5のうちのいずれかに記載の有機分子の注入方法。
【請求項7】
集光された光がパルスレーザー光であることを特徴とする、請求項1から6のうちのいずれかに記載の有機分子の注入方法。
【請求項8】
基板表面に有機分子を注入するための装置であって、有機分子を含む有機分子注入源を固定するホルダーと、注入源に集光した光を照射する光源と、光の進行方向あるいは進行反対方向に基板を固定するホルダーと共に、有機分子注入源と基板との間の距離を制御する機構とを備え、この距離を制御することで基板表面の最大径3μm以下の領域内に有機分子を注入可能としていることを特徴とする、有機分子の注入装置。
【請求項9】
注入源に照射する光を、基板表面の最大径3μm以下の微小領域中に有機分子が注入されるように集光する集光機構が光源に備えられていることを特徴とする、請求項8記載の有機分子の注入装置。
【請求項10】
基板を接続する高分解能移動ステージを備え、有機分子の注入時に、高分解能移動ステージにより基板の位置を変化させることにより、有機物質が注入される微小領域の位置が制御され、基板表面に有機分子が任意のパターン形状に配列されることを特徴とする、請求項8または9記載の有機分子の注入装置。
【請求項11】
複数種類の有機分子注入源が備えられることを特徴とする、請求項8から10のうちのいずれかに記載の有機分子の注入装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本願発明は、有機分子の注入方法とその装置に関するものである。さらに詳しくは、本願発明は、基板表面の微小領域に有機分子を注入し、任意のパターン形状に配列させることをも可能とした有機分子の注入方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機合成技術や有機分子の機能設計技術の進歩により、電子特性、光学特性、磁気特性、生理活性機能などにおいて特有の機能を発現する様々な機能性有機分子の開発が進められている。このような高機能材料を有効利用するために、機能性有機分子を基材上に固定ないしは有効に配列する技術、すなわち機能性有機分子を用いて樹脂などの基材に高機能性を付与する技術の開発も盛んに行われており、実用性の高い機能性基板が開発されている。有機分子のレーザー誘導性分子埋め込み法(LIMIT)はその有力な手段の一つであり
、ポリマー薄膜の表面微細加工や分子素子の製造など、多数の重要な実践的応用にうまく採用されている。当該手法による光スイッチング装置の製造は、ポリマー固体中における2種類の化合物によるレーザー誘導性混合技術の実用化の一例であり、これにより空間選択的な方法で基質内部又は基質表面に機能性有機分子を配列することの出来る装置の開発に途を開いた。
【0003】
このレーザー誘導性分子埋め込み法を用いて樹脂などの基板上に有機分子を注入する技術は、機能性分子などによる、樹脂など基板表面の微細加工処理を可能にすることから、現在盛んに研究されている。本願出願の発明者も、これまで様々な観点からの検討を進めてきている(非特許文献1~7)。本願発明者の、ガラスピペットの先端に設けた有機分子のナノ結晶にパルスレーザーを照射して当該ピペットに対向して配置された高分子フィルムに当該有機分子を注入する技術(非特許文献6)によれば、非特許文献1~7の中で
はもっとも微小な注入領域を得ることが出来ることを確認している。また、他の当業者からは、色素を有機高分子に含有させたソースフィルムとターゲットフィルムとを重ねて、パルスレーザーを照射することによって、当該ソースフィルムから当該ターゲットフィルムへ当該色素を注入する技術(特許文献1)が提案されている。

【非特許文献1】Implantation of Organic Molecules into Biotissue using a Pulsed Laser M.Goto,N.Ichinose,S.Kawanisi and H.Fukumura Jpn.J.Appl.Phys.Lett,38.L87-L88,(1999)
【非特許文献2】Laser Implantation of Molecular Aggregates into Poly(Methyl Methacrylate) M.Goto,N.Ichinose,S.Kawanisi and H.Fukumura Applied Surface Science 138-139.471-476,(1999)
【非特許文献3】Laser-Induced Implantation of Organic Molecules into Sub-Micrometer Regions of Polymer Surfaces M.Goto,J.Hobley,S.Kawanisi and H.Fukumura Applied Physics A,69,S257-S261.(1999)
【非特許文献4】Laser Implantation of Dicyanoanthracene in Poly(Methyl Methacrylate) from a 100nm-Aperture Micropipette M.Goto,S.Kawanisi and H.Fukumura Applied Surface Science,154-155,701-705,(2000)
【非特許文献5】Generation and Manipulation of Organic Molecular Clusters on Solid Polymer Thin Films M.Goto,and H.Fukumura Molecular Electronics and Bioelectronics,M&BE,Vol.ll.No2.167-174(2000)
【非特許文献6】Laser Expulsion of an Organic Molecular Nanojet from a special Confined Domain M.Goto, L.Zhiegelei, J.Hobley, M.Kisimoto, B.Carison and H.Fukumura J.Applied Physics,90-4755-4760.(2001)
【非特許文献7】Micro and Nano Scale Organic Molecular Patterning by Laser Implantation Technique M.Goto,M.Kisimoto and H.Fukumura The Review of Laser Engineering.29(11).726-729(2001)
【特許文献1】特開平08-106006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなレーザー誘導性分子埋め込み法を用いて樹脂などの基板上の微細領域に有機分子を注入する技術には、従来からその注入領域の大きさの制御が難しいという問題、更には生産性の問題があった。例えば、特許文献1の方法では、基板の分子注入領域の大きさを数μm程度に制御するための方策が確立されておらず、また、非特許文献6の技術では、ガラスピペットに有機分子のナノ結晶を注入すること、および連続使用した場合にガラスピペット内の有機分子の量が変動することによる生産性に問題があった。
【0005】
そこで本願発明は、以上の通りの背景から、発明者によるこれまでの検討の結果を踏まえてさらにその結果を大きく発展させ、最大径数μm以下の微小注入領域に有機分子を注入する、簡便で生産性の良い方法を提供することを課題としている。
【0006】
また、本願発明は、有機分子を樹脂等の基板に注入する方法において、最大径数μm以下の微小注入領域に有機分子を高濃度に注入する方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、有機分子を含む有機分子注入源に対して集光された光を照射することで、光の進行方向あるいは進行反対方向に設置された基板表面の最大径数μm以下の領域に、有機分子注入源に含まれる有機分子を注入する方法において、注入領域を微小領域に絞り込むために有機分子注入源の形状を基板に対して凸になるようにして密に接触させること、集光された光を光波長回折限界の程度に集光された光線とすること、注入領域の径を制御する際に90μm以下の範囲で当該距離を制御することを特徴としている。
【0008】
また、本願発明は、有機分子注入源中の有機分子の濃度を最適に制御する方法を提供することを特徴としている。
【0009】
また、本願発明は、有機分子注入源中に有機分子を含有させること、一度の注入処理で複数種類の有機分子注入源を使用すること特徴としている。
【0010】
そして、本願発明は、最大径数μm以下の領域内に有機分子を注入するために、好ましくはパルスレーザーを光源とすることを特徴としている。
【0011】
さらに、本願発明は、有機分子の注入時に、基板の位置を光源に対して変化させることにより、任意の注入パターンを形成することを特徴としている。
【0012】
また、本願発明は、上記のいずれかの注入方法を実現するための注入装置を提供することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本願発明の光照射による微小領域への有機分子注入方法によれば、有機分子注入源を基板に対して凸となるような形状にし、それを基板に接触させることで基板との間の距離が
極力狭くなるように制御すること、集光された光のビーム径を、0.1~3μmの範囲に
まで絞り込むことにより、最大径3μm以下の微小領域に有機分子を注入することが可能となる。
【0015】
また、有機分子注入源中の有機分子の濃度を0.01~10重量%の範囲内とすることにより、十分な注入濃度の有機分子注入と、注入領域の最大径3μm以下の微小領域への絞込が確実になる。
【0016】
また、有機分子注入源と基板との間の距離を90μm以下で調整を行うことにより、基板上に有機分子が高濃度に注入された円形微小領域を形成することが出来る。
【0017】
そして、上記の有機分子注入源を複数種類使用し、これに対応して光源の条件を調整することにより、基板上に複数種類の有機分子が注入された領域を短時間かつ正確に、簡便な装置構成で形成することが出来る。
【0018】
本願発明により、従来よりも微小な領域への有機分子の注入が可能となり、電子デバイスの小型化や高集積化、高機能化、ディスプレイデバイスの小型化や高精細化、センサーの超高感度化、光スイッチングデバイスなどが可能となり、更なる技術の進歩への途を拓く。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本願発明は以上の通りの特徴を持つものであるが、以下にその実現の形態について説明する。
【0020】
本願発明にかかわる用語についてまず説明する。有機分子の注入領域の形状については特に限定されることはなく、円形、略円形などであって良い。なお、「最大径」とは、注入領域が円形であれば直径、あるいは最大長さ寸法として定義される。
【0021】
注入する「有機分子」は、吸光特性と熱安定性を持ち、光励起できるものであれば、各種の機能性有機分子からのものであってよく、たとえば好適には、光あるいは電子機能性の分子の1種以上のものが考慮される。具体的には、クマリン6、クマリン545、ZnTPP、アントラセン、ジシアノアントラセン、NileRed、フルオレッセイン、ピレン等が例示される。
【0022】
「有機分子注入源」は、上記の有機分子を樹脂中に含有させたものが好適なものとして例示される。この注入源は、有機分子を樹脂やそのモノマーの溶液に混合してスピンコートやキャスト法などの手法で成膜させること等によって容易に作製することができる。有機分子が溶剤に溶解しないような場合には、樹脂と有機分子の混合物を既存の混練機で混練し成形することも可能である。また、樹脂としては、レーザー照射に対して安定であり、注入する有機分子との相溶性が高く、光透過性の高いものが好ましく使用される。樹脂の光透過性は、膜厚170μmの時のクマリンダイレーザー光の透過率が60~100%の範囲内であるものが好ましい。樹脂の光透過率は、カバーガラス上にスピンコーターで当該膜厚にコーティングし、リファレンスを同じ材質、厚さのカバーガラスとして光透過率を測定することにより確認することが出来る。樹脂の具体例は、例えばアクリレート系樹脂、メタクリレート系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、尿素樹脂、ポリアミド系樹脂、シリコーン系樹脂等が示される。なかでも、メタクリレート系等の透明性の樹脂がより好ましい。有機分子を含有させるに当たって、当該有機分子の溶液は予め濾過処理などにより、有機分子の凝集体を除去しておくのが、有機分子注入源と基板との間の密着性を向上させ、微小注入領域を得ることが出来るという点で好ましい。また、有機分子注入源を作製する一連の工程は、クリーンブース中で、ダスト
が極力混入しないような条件で作製するのが、有機分子注入源と基板との間の密着性を向上させ、微小注入領域を得ることが出来るという点で好ましい。有機分子注入源中の有機分子の濃度は、0.01~10重量%の範囲内であることが好ましく、0.1~6重量%の範
囲内であることが更に好ましく、3~5重量%であることが更に好ましい。0.01重量%未満では、十分な注入濃度を得ることができない。10重量%を超えると、注入領域の最大径の制御が困難になる場合がある。有機分子の濃度の制御は、成膜時の配合調整により容易に行うことができる。有機分子は、樹脂表面上にコーティングして使用することも可能であるが、有機分子の濃度制御の点で、有機分子を樹脂中に含有させる方が好ましい。注入領域の大きさを小さくするために、有機分子注入源は、基板に対して凸の形状になるように圧力をかけるなどして変形させ、それを基板に接触させるのが、有機分子注入源と基板との間の距離を狭めることができる点で好ましい。これは例えば、円筒状のドラムなどに有機分子注入源を巻き付け、それを基板に押し付けるなどの方式で行うことができる。この場合のドラムの半径は、有機分子注入領域の最大径の10~10倍の範囲内とするのが好ましい。この場合、基板は柔軟性のあるシリコンゴム等の、有機分子注入源の形状に合致するように変形できる基材上に配置するのが好ましい。有機分子注入源と基板との間の距離は、注入領域の径の設定を大きくする場合には好適に制御することが可能であるが、この場合は基板と有機分子注入源との間に既知の厚さの高分子フィルムなどのスペーサーを挿入することにより制御することができる。この距離は、90μm以下の範囲で制御することが好ましい。90μmを越えると、注入領域の有機分子の濃度が低くなってしまい好ましくない。この低濃度化の原因は、おそらく空気分子と有機分子の衝突による散逸と推測される。
【0023】
本願発明の方法においては、複数の種類の「有機分子注入源」を同時に用いることが出来る。光源に波長や強度の詳細な調整機構を設けることで、複数枚重ねた有機分子注入源から選択的に有機分子を放射させることが可能となる。これにより注入源を交換することなく、1枚の基板上に複数種類の有機分子を用いた任意パターンの注入領域を形成することができ、同一材料上に対して位置選択的に規則配列することが可能となる。
【0024】
「集光された光」は、光波長回折限界の程度にまで絞り込まれた光線を使用するのが好ましい。光を光波長回折限界の程度にまで絞り込むのは、既知の技術で達成することが可能である。集光された光のビーム径は、0.1~3μmの範囲内であることが好ましく、0.3~1μmであることが更に好ましい。3μmを超えると目的の微小領域を超えて注入されてしまう。0.1μm未満では、注入に加えられるエネルギーが不足するため、安定したプルームを形成することが出来ない。またこれは、パルスレーザーであることが、有機分子による注入の形態を制御しやすいため好ましい。レーザー光源は、色素レーザー、He-Neレーザー、YAGレーザーなど公知のものを使用することができる。
【0025】
本願発明に使用される「高分解能移動ステージ」は、市販の3次元高分解能移動台を用いることが出来る。高分解能移動ステージにおける移動分解能は特に限定されるものではないが、本願発明である有機分子の注入方法においては、数μm以下のオーダーでの有機分子の注入が可能となることから、数十nmのオーダーとすることが好ましい。駆動は例えばピエゾ素子などを用いて駆動させることが出来る。固定される基板は、有機分子注入源に対して、光の進行方向とその反対のどちらに設置されていても、制御された間隔で平行に設置されていれば、有機分子の注入が可能である。
【0026】
本願発明に用いる「基板」の材質は特に限定されることはなく、高分子マトリックス、金属、セラミックスなどの各種の材料が使用可能である。但し、高分子以外の基板では、有機分子の配置は可能であるが、注入はできない。基板を有機分子注入源に対して光の進行逆方向に設置する場合には、60%以上の高い光透過率の基板を使用するのが望ましい。
【0027】
本願発明により、様々な材料に有機分子の複数種類の機能を付加させることが可能となり、例えばこれまで不可能であったRGB極微小発光特性をはじめとする光学的、電子的、あるいは、磁気的に優れた機能を有する有機分子材料の開発が実現し、極微小ディスプレー装置、非線型光学素子等の新規の機能性材料の開発への道が拓かれる。
【0028】
たとえば、非線型光学素子については透明な媒質中(この場合は高分子固体)に微小な有機分子のクラスターを分散させたものは良い非線型光学特性を持つことが予想されている。本願発明の方法によれば、高分子中の任意の微小領域に有機分子を注入できるため、このような材料を実現できる可能性がある。またフォトニック結晶についても上記と全く同様で、透明な媒質中に規則正しく異なる光学特性を持つ物質を周期的に配置すればよい。
【0029】
そして、光制御デバイスとしても、光の波長以下の領域に分子を配列し、その配列パターンを変えることで光の伝播の方向を制御することができる。
【0030】
電子材料については、一例を挙げると、従来用いられてきたシリコン等の無機材料を用いた微小な電子回路中の部分にジャンクションを設け、そこに有機分子を配置しデバイスを作製することが考えられる。また、これまでの無機材料で作られてきたトランジスターやダイオードを有機分子を配置することで代替することも考えられる。
【0031】
磁気材料については、有機分子の中にはそれ自身が特殊な磁気的性質を持つものがあり、それらを一つの要素として、位置選択的に配列させることで磁場を制御したり、また、磁気的な高密度の記憶素子として使用することが考えられる。
【0032】
さらには、高分子中に複数の光導波路が作製された例があるが、それらの途中の微小領域に本願発明の方法でそれぞれ異なる有機分子を注入することができる。それぞれ分子毎に外場からの反応が異なり、その外場の変化を導波路中を伝播してくる光の波長変化として検出する。本願発明の方法は、非常に微小な有機分子を位置選択的に注入できることから、極小の高分子基板上でさまざまな外場の影響を検出する高性能な微小センサーを作製できる。
【実施例】
【0033】
この本願発明は、以上の特徴を持つものであるが、以下に実施例を示し、さらに具体的に説明する。もちろん本願発明の内容は下記例示に限定されるものではない。

有機分子注入装置は図1のような構成である。レーザーパルス周波数と波長、レーザー強度は以下の条件とした。
光源: LSI-VSL-337ND-S窒素レーザーによりポンピングされるクマリンダイレーザー
パルス幅4ns、波長440nm、レーザー強度300μJ/パルス以下
パルス周波数20Hz以下
基板と有機分子注入源は以下のものをモノクロロベンゼン(Wako製)に溶解し、スピンコーターを使ってカバーガラス上に約170μm厚にスピンコーティングした。
基板:ポリエチルメタクリレート(PEMA) (重量平均分子量Mw 340,000g/mol)
有機分子注入源:ZnTPP(テトラフェニルポルフィリンのZn金属錯体)とPEMAの
混合品(混合重量比 4:96)
ZnTPP含有ポリエチルメタクリレート(PEMA)膜をカバーガラスから剥離させ、直径10cm、幅3cmのステンレスの円筒ドラムに巻き付けた。これを有機分子注入源とし、同様にカバーガラスから剥離したPEMA膜の基板をシリコンゴムに貼り付けて対向配置した。基板上に有機分子注入源を巻き付けたドラムの側面を接触させ、100gの
荷重をかけて基板上に押し付けた。X-Y移動ステージを使用して、有機分子注入操作を行い、基板上に“NIMS”の文字列を分子注入により作製した。得られた分子埋め込み薄膜の観察は、汎用の蛍光顕微鏡(オリンパス社製 IX70)を用いて行った。各ドットの
サイズ評価は、強度プロファイルをガウシアン分布関数に適合させて行った。関数の半値全幅に基づいて算出したドット径は2.9μmだった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】有機分子注入装置の概略図である。
【図2】本実施例にて、有機分子注入により作製された、“NIMS”の文字列の顕微鏡観察像である。
図面
【図1】
0
【図2】
1