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明細書 :高速高精度の海塩粒子発生装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4714832号 (P4714832)
公開番号 特開2007-218639 (P2007-218639A)
登録日 平成23年4月8日(2011.4.8)
発行日 平成23年6月29日(2011.6.29)
公開日 平成19年8月30日(2007.8.30)
発明の名称または考案の名称 高速高精度の海塩粒子発生装置
国際特許分類 G01N  17/00        (2006.01)
FI G01N 17/00
請求項の数または発明の数 1
全頁数 6
出願番号 特願2006-037139 (P2006-037139)
出願日 平成18年2月14日(2006.2.14)
審査請求日 平成21年2月5日(2009.2.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】升田 博之
審査官 【審査官】福田 裕司
参考文献・文献 特開2004-132752(JP,A)
特開2006-258506(JP,A)
特開昭59-193338(JP,A)
特開平06-265464(JP,A)
特開2007-212320(JP,A)
特開平10-318910(JP,A)
特開昭59-010832(JP,A)
特開昭61-155727(JP,A)
実開平01-165449(JP,U)
特開2000-346790(JP,A)
特開2003-300000(JP,A)
升田博之,片山英夫,”海塩粒子によるSCC発生試験法の開発”,材料と環境2005講演集,社団法人腐食防食協会,2005年 5月13日,171~174頁
調査した分野 G01N 17/00
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
蒸留水を貯留する加湿槽と、海水を貯留する海水槽と、海水槽の内部に配設され海水を霧化する超音波霧発生器と、当該加湿槽、海水槽のそれぞれにエアーを供給するエアーポンプと、エアーポンプを加湿槽、海水槽にそれぞれ連通させる第1のエアー供給路及び第2のエアー供給路と、第1のエアー供給路と第2のエアー供給路の末端に設けられ、加湿槽内部、海水槽内部に配置されるエアーストーンと、加湿槽、海水槽のそれぞれから流出するエアーを混合し、海塩粒子の通路となる海塩粒子供給路とを備えた海塩粒子発生装置であって、第1のエアー供給路、第2のエアー供給路に第1の流量調整器、第2の流量調整器がそれぞれ配設され、第1の流量調整器、第2の流量調整器が独立に制御され、エアーポンプから加湿槽、海水槽に供給されるエアーの流量を調整して、試料室へ送られる風量を一定に保ちつつ海塩粒子付着速度を可変とすることを特徴とする、高速高精度の海塩粒子発生装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本願発明は、海塩粒子による腐食性を加速評価する環境試験装置のための、高速高精度の海塩粒子発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼など金属材料は、屋外環境において自動車車体、橋梁、建築骨材など各種構造材料としてもっともよく使われている。金属材料は、一般には経年により腐食が進行し、特に屋外の風雨に曝されるような環境下に長年あったものは、腐食してその強度が著しく劣化することは周知の通りである。通常の環境における金属の腐食は、表面に付着する付着物の影響を大きく受ける。特に海浜地域では、海水からの海塩粒子が重要な腐食性因子となることが知られている。腐食を防止するために、塗装による表面保護、耐食性合金(ステンレスなど)の使用などが行われているが、海塩粒子が付着する環境でのこれらの耐食性の評価は、構造物等の安全性に関わるため非常に重要である。
【0003】
海塩粒子の付着による、金属等の腐食特性の試験方法としては、塩水噴霧試験(以下SST)で知られる5%のNaClを35℃で連続噴霧する方法が、自動車の車体用塗装鋼板の耐食性評価法として適用されている(非特許文献1)。日本自動車工業規格協会で規格化された車体外面腐食試験法の試験条件は、塩化物として5%の食塩水を2時間の塩水噴霧により付着させるものである(非特許文献2)。この試験法では濡れ時間(湿潤時間と塩水噴霧時間の合計時間)を全試験時間の50%の試験時間とすることを実環境との相関性と促進率の両立の重要条件としている。ISO-9227において規定されているCASS試験法においても、金属腐食の促進試験として塩水噴霧試験が規定されている。
【0004】
本願発明者も、現実の腐食プロセスを考慮した実環境シミュレート大気腐食試験装置を提案している(特許文献1)。

【非特許文献1】JIS Z 2371
【非特許文献2】JASO M610 自動車技術会:「自動車部品外観腐食試験法」, JASO M610-92(1992).
【特許文献1】特開2004-132752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の試験方法では、塩水を簡便な方法で霧状にし、それを試験材料に吹きかけているので、現実の腐食プロセスを十分に再現できないという課題があった。海塩粒子には沿岸近くで波が砕けて飛沫となって大気中に舞い上がり風によって運ばれてくるものと、遠く海洋から気流に乗って来るものがあり、その生成プロセスにより粒子の大きさは変わってくる。海浜などにおける実環境では、直径数μmから数十μmの海塩粒子が飛来する。そのため、実環境における腐食特性を評価するためには、海塩粒子の生成プロセスに対応する様々な粒径の海塩粒子に関して評価する必要がある。また、上記のような海浜粒子生成プロセスから、海塩粒子によって引き起こされる腐食には海からの距離に相関があることが知られている。従って、海からの距離に対応する海塩粒子付着速度を変えて、材料の腐食速度を評価する必要がある。また、海塩粒子が金属などの表面に付着蓄積し、朝方の結露によりその付着塩が溶解して塩化物イオンが発生し、これにより腐食が進行するという腐食進行プロセスを考慮すると、実環境においては金属表面で高濃度の塩化物イオン溶液が生成し、金属はそれによる侵食を受けていることになり、これに対応する試験方法が必要である。
【0006】
特許文献1の発明は、このような事情を鑑みて本発明者によりなされたものであるが、その後の詳細な実験的検証により、海塩粒子付着速度の制御が難しい場合があること、数mdd以上の海塩粒子付着速度を実現することが困難であるため加速性能として限界があることが把握されている。
【0007】
そこで、本願発明は、以上の通りの背景から、本発明者によるこれまでの検討とその過程で得られた知見を踏まえて、海塩粒子による腐食性を加速評価するための、高速高精度の海塩粒子発生装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、上記の課題を解決するために、海水より海塩粒子を発生させて材料の腐食特性を評価する環境試験装置のための高速高精度の海塩粒子発生装置において、蒸留水を貯留する加湿槽と、海水を貯留する海水槽と、海水槽の内部に配設され海水を霧化する超音波霧発生器と、当該加湿槽、海水槽のそれぞれにエアーを供給するエアーポンプと、エアーポンプを加湿槽、海水槽にそれぞれ連通させる第1のエアー供給路及び第2のエアー供給路と、第1のエアー供給路と第2のエアー供給路の末端に設けられ、加湿槽内部、海水槽内部に配置されるエアーストーンと、加湿槽、海水槽のそれぞれから流出するエアーを混合し、海塩粒子の通路となる海塩粒子供給路とを備えた海塩粒子発生装置により、第1のエアー供給路、第2のエアー供給路に第1の流量調整器、第2の流量調整器がそれぞれ配設され、第1の流量調整器、第2の流量調整器が独立に制御され、エアーポンプから加湿槽、海水槽に供給されるエアーの流量を調整して、試料室へ送られる風量を一定に保ちつつ海塩粒子付着速度を可変とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上記の通りの本願の発明によれば、海塩粒子発生速度を広範囲で制御することができるようになり、それにより様々な実環境に近い条件で大気腐食試験を行うことが可能になる。これにより、耐食性材料や塗装材料の腐食性を高い精度で評価することが可能になり、その開発が促進される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、本発明の概略を説明する。
【0011】
図1は、本願発明の一実施形態を示した図である。エアーポンプ(1)から送風された空気は二股に分かれた第1のエアー供給路(5)と第2のエアー供給路(6)により二分され、それぞれ第1の流量調整器(10)、第2の流量調整器(11)を通って2つの水槽中に導入される。2つの水槽の一方(海水槽(3))には海水、他方(加湿槽(2))には蒸留水が充填されている。2つの流量調整器の流量値は、予め設定の全風量と海塩粒子付着速度によって適宜定められる。流量調整器により風量を調整された空気は、それぞれ液内部まで導かれた第1のエアー供給路(5)、第2のエアー供給路(6)を通り、その出口に設置されたエアーストーン(7)、(8)からそれぞれの液中に噴出される。海水槽の海水中には、超音波霧発生器(4)を導入し、微小噴霧を発生させる。海水槽からの当該微小噴霧を含む空気流と、加湿槽からの水蒸気を含む空気流が海塩粒子供給路(9)を通って合流して、腐食槽(12)に導入される。腐食槽中には試料を設置する。腐食槽から排気された空気流は、海塩分離装置(13)を通って排気される。
【0012】
次に、本願発明の詳細を説明する。
【0013】
「エアーポンプ」、「流量調整器」は市販のものを使用することができる。エアーポンプからの風量は、0.1~10L/minの範囲であると本装置に好適である。海水槽側
の流量調整は、海塩粒子付着速度が設定速度になるように調整することが出来る。海塩粒
子付着速度は、試験試料に設置された水晶振動子の共振周波数の変化から、水晶マイクロバランス法により評価することができる。水晶振動子からの出力により、流量調整器(11)の設定値を制御するようにフィードバック回路を組んでも良い。この海水槽側の流量値と、設定の全風量値から、加湿槽側の流量値が決定される。これも自動的に設定されるようにフィードバック回路を組んでも良い。流量調整は、試料が完全乾燥と結露を繰り返すようにON/OFFすることにより、実環境における腐食プロセスを再現することが出来る。
【0014】
「エアーストーン」は、市販のものを使用することができるが、例えば直径5cmの#180の仕様のものが好ましく使用できる。
【0015】
「超音波霧発生器」は、市販のものを使用することができる。発生させる霧は、粒子径1~50μmの範囲で、超音波の出力を調整することにより適宜設定することができる。この出力値により、発生する霧量も変わってくるが、流量調整器(10)及び(11)により流量値を適宜調整することで、腐食槽における海塩粒子付着速度、及び全風量は設定値に調整することができる。
【0016】
「エアーストーン」に空気を通すだけで、数mdd以下の海塩粒子付着速度を得ることが出来る。これに超音波霧発生器を組み合わせると、数百mddの海塩粒子付着速度を得ることが出来る。本願発明の構成により、0.1~500mddの範囲内の海塩粒子付着
速度を得ることが出来る。
【0017】
海水槽(3)中の海水は、試験中の塩濃度を随時モニターするのが好ましい。これは、例えば電気伝導度を測定することにより簡易に調べることができる。海水中の塩濃度が変動すると海塩粒子付着速度に影響するため、塩濃度の変化にあわせて、流量調整器(10)及び(11)の流量を調整し、海塩粒子付着速度を設定値に調整する。
【0018】
空気や蒸気を通す連通管は、腐食性が無く、水分を透過しない材料が好ましい。
【0019】
次に、本願発明の具体的態様を実施例にて説明する。もちろん、本発明がこれらの例示に限定されることはない。
【実施例】
【0020】
図1の構成を有する装置において、2つの流量調整器の合計流量は、約2L/min.になるように制御した。加湿槽のエアーストーンは負荷を低くするために目の粗いものを用い、海水槽のエアーストーンは目の細かいものを用いた。設定の海塩粒子付着速度に応じて超音波霧発生器を稼動させた。送風流量を変えたときの海塩粒子付着速度の測定値を図2に示した。
【0021】
この結果から、本発明のシステムを用いれば、送風量の設定により、広範囲の海塩付着速度を設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】高速高精度海塩粒子発生システムの概略図である。
【図2】超音波海塩粒子発生装置へのエアーポンプからの送風量と、海塩粒子付着速度との相関図である。
【符号の説明】
【0023】
1 エアーポンプ
2 加湿槽
3 海水槽
4 超音波霧発生器
5 第1のエアー供給路
6 第2のエアー供給路
7 エアーストーン
8 エアーストーン
9 海塩粒子供給路
10 第1の流量調整器
11 第2の流量調整器
12 腐食槽
13 海塩分離装置
図面
【図1】
0
【図2】
1