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明細書 :物質担持フラーレンチューブとその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5093436号 (P5093436)
公開番号 特開2007-217248 (P2007-217248A)
登録日 平成24年9月28日(2012.9.28)
発行日 平成24年12月12日(2012.12.12)
公開日 平成19年8月30日(2007.8.30)
発明の名称または考案の名称 物質担持フラーレンチューブとその製造方法
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
B01J  23/42        (2006.01)
B01J  23/04        (2006.01)
B82B   1/00        (2006.01)
H01M   4/88        (2006.01)
H01M   8/10        (2006.01)
H01M   4/96        (2006.01)
FI C01B 31/02 101F
B01J 23/42 M
B01J 23/04 M
B82B 1/00
H01M 4/88 K
H01M 8/10
H01M 4/96 B
請求項の数または発明の数 12
全頁数 11
出願番号 特願2006-041634 (P2006-041634)
出願日 平成18年2月17日(2006.2.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 (1)2005年8月19日 社団法人日本物理学会発行の「日本物理学会講演概要集 第60巻第2号(2005年秋季大会)第4分冊」および講演(22aXAー3)にて発表(2)Materials Research SociertyのインターネットのWebサイトにて、Journal of Materials Reseach Vol.21、No.2(Feb 2006)のAbstract並びにP.529-534を電気通信回路を通じて発表
審査請求日 平成21年2月12日(2009.2.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】宮澤 薫一
【氏名】湊 淳一
【氏名】須賀 唯知
審査官 【審査官】廣野 知子
参考文献・文献 特開2005-112643(JP,A)
特開2006-083050(JP,A)
特開2005-306706(JP,A)
宮澤薫一 et al,フラーレンナノファイバー・ナノウイスカーの微構造,日本金属学会秋期大会講演概要,日本,2003年,第133回,p.565
宮澤薫一 et al,中空フラーレンナノウィスカー及びカプセル状フラーレン針状結晶の合成と構造,第65回応用物理学会学術講演会講演予稿集 ,日本,(社)応用物理学会,2004年 9月,P.44
Kun'ichi Miyazawa et al,Structre and electrical properties ofheat-treated fullerene nanowhiskers as potential energy device materals,Journal of the European Ceramic Society ,2006年,26,P.429-434
Sung-Ho Lee et al,C60 nanowhisker synthesis using a microchannel reactor ,Carbon 43,2005年,p.887-889
調査した分野 C01B 31/00-31/36
JSTPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
金属元素もしくは化合物物質がフラーレン分子もしくはフラーレン誘導体分子から形成されるチューブ状のフラーレンチューブの中空部内に内されているか、または前記フラーレンチューブの内表面もしくは外表面に付着されていることを特徴とする物質担持フラーレンチューブ。
【請求項2】
化合物物質が、金属化合物であることを特徴とする請求項1の物質担持フラーレンチューブ。
【請求項3】
金属元素もしくは化合物物質が、貴金属またはその化合物であることを特徴とする請求項1または2の物質担持フラーレンチューブ。
【請求項4】
貴金属またはその化合物は、白金または白金化合物であることを特徴とする請求項3の物質担持フラーレンチューブ。
【請求項5】
フラーレン分子もしくはフラーレン誘導体分子から形成されるチューブ状のフラーレンチューブに金属元素もしくは化合物物質内包または付着された物質担持フラーレンチューブの製造方法であって、
金属元素もしくは化合物物質の溶液もしくは分散液をフラーレンチューブと接触させて、毛管現象を利用して、金属元素もしくは化合物物質をフラーレンチューブの中空部内に内包させるか、またはフラーレンチューブの内表面もしくは外表面に付着させることを特徴とする物質担持フラーレンチューブの製造方法。
【請求項6】
金属元素または化合物物質の溶液もしくは分散液中にフラーレンチューブを導入して接触させることを特徴とする請求項5の製造方法。
【請求項7】
金属元素または化合物物質の溶液もしくは分散液をフラーレンチューブに滴下または流下して接触させることを特徴とする請求項5の製造方法。
【請求項8】
接触時に超音波照射することを特徴とする請求項5から7のいずれかの製造方法。
【請求項9】
請求項5から8のいずれかの方法において、フラーレンチューブにあらかじめ電子線を照射しておくか、あるいは物質担持フラーレンチューブに電子線を照射することを特徴とする物質担持フラーレンチューブの製造方法。
【請求項10】
フラーレン分子またはフラーレン誘導体分子から形成されるチューブ状のフラーレンチューブに金属元素または化合物物質を内包もしくは付着させた物質担持フラーレンチューブからの内包もしくは付着された物質を放出もしくは回収する方法であって、
物質担持フラーレンチューブをフラーレンの良溶媒と接触させてフラーレンチューブを溶解させることを特徴とする物質担持フラーレンチューブからの担持物質の放出もしくは回収方法。
【請求項11】
フラーレンを回収していることを再利用可能とすることを特徴とする請求項10の方法。
【請求項12】
請求項1から4のいずれかの物質担持フラーレンチューブを有効成分としていることを特徴とするフラーレンチューブ触媒。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒、電極材料、吸着材、電子素子等として有用な、物質担持フラーレンチューブとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノ材料についての検討は急速に進展しており、近年では、その実際的応用に向けた機能性向上のための様々な工夫が試みられている。
【0003】
たとえば、カーボンナノチューブ(CNT)の内部に各種の物質を内包もしくは担持させて触媒や電子材料等にその応用を拡大する試みがなされている。
【0004】
しかしながら、化学的熱的に安定なグラフェンシートが円筒状に形成された構造のカーボンナノチューブの場合には、たとえば白金クラスターを担持させて燃料電池電極材料として用いることが検討されているものの、カーボンナノチューブの内径は1nm程度と小さいため、金属ナノ粒子を内包させることは容易ではなく、活性部位は主としてその外表面に限られる。このため、表面積には制約があり、高い触媒活性を得ることが難しく、白金の使用量の低減も容易ではない等のそのナノ構造の特徴による制約という問題点がある。
【0005】
このようなカーボンナノチューブの構造的制約を解消するものとして、カーボンナノホーン(CNH)が開発されるとともに、本発明者らによるC60、C70等のフラーレンからのチューブ状構造体としてのフラーレンチューブの形成法が提案され、カーボンナノ材料の新しい技術地平が拓かれつつある。
【0006】
発明者らにより開発されたフラーレンチューブの合成方法は、常温近辺の溶液を用いての液-液界面合成を特徴とするものであって、これまでに、たとえばC60ナノチューブや、C70ナノチューブ、C60-C702成分ナノチューブ(非特許文献1)が実現されている。
【0007】
これらのフラーレンチューブは、その内径が100nmオーダとより大きいため、機能性材料への応用展開が期待されているところである。

【非特許文献1】J.Mater.Res.,20(2005)688
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のとおりの背景から、発明者らによるフラーレンチューブのこれまでの検討を踏まえ、カーボンナノチューブ(CNT)に見られるナノ構造の制約を克服して、触媒、吸着材、電極材料、電子材料等の広範囲な分野での応用展開を可能とするため機能性の付与、向上が可能とされる、新しいフラーレンチューブ構造とその形成のための手段を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するものとして以下のことを特徴としている。
【0010】
第1:金属元素もしくは化合物物質がフラーレン分子もしくはフラーレン誘導体分子から形成されるチューブ状のフラーレンチューブの中空部内に内されているか、または前記フラーレンチューブの内表面もしくは外表面に付着されている物質担持フラーレンチューブ。

【0011】
第2:化合物物質が、金属化合物である物質担持フラーレンチューブ。
【0012】
第3:金属元素もしくは化合物物質が、貴金属またはその化合物である物質担持フラーレンチューブ。
【0013】
第4:貴金属またはその化合物は、白金または白金化合物である物質担持フラーレンチューブ。
【0014】
第5:フラーレン分子もしくはフラーレン誘導体分子から形成されるチューブ状のフラーレンチューブに金属元素もしくは化合物物質内包または付着された物質担持フラーレンチューブの製造方法であって、金属元素もしくは化合物物質の溶液もしくは分散液をフラーレンチューブと接触させて、毛管現象を利用して、金属元素もしくは化合物物質をフラーレンチューブの中空部内に内包させるか、またはフラーレンチューブの内表面もしくは外表面に付着させることを特徴とする物質担持フラーレンチューブの製造方法。


【0015】
第6:金属元素または化合物物質の溶液もしくは分散液中にフラーレンチューブを導入して接触させる上記製造方法。
【0016】
第7:金属元素または化合物物質の溶液もしくは分散液をフラーレンチューブに滴下または流下して接触させる上記製造方法。
【0017】
第8:接触時に超音波照射する上記製造方法。
【0018】
第9:あらかじめフラーレンチューブに電子線を照射するか、あるいは物質担持フラーレンチューブに電子線を照射する上記いずれかの製造方法。
【0019】
第10:フラーレン分子またはフラーレン誘導体分子から形成されるチューブ状のフラーレンチューブに金属元素または化合物物質を内包もしくは付着させた物質担持フラーレンチューブからの内包もしくは付着された物質を放出もしくは回収する方法であって、物質担持フラーレンチューブをフラーレンの良溶媒と接触させてフラーレンチューブを溶解させることを特徴とする物質担持フラーレンチューブからの担持物質の放出もしくは回収方法。
【0020】
第11:フラーレンを回収していることを再利用可能とする上記の方法。
【0021】
第12:上記いずれかの物質担持フラーレンチューブを有効成分としていることを特徴とするフラーレンチューブ触媒。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、発明者らによるフラーレンチューブのこれまでの検討を踏まえ、カーボンナノチューブ(CNT)に見られるナノ構造の制約を克服して、触媒、吸着材、電極材料、電子材料等の広範囲な分野での応用展開を可能とするため機能性の付与、向上が可能とされる、新しいフラーレンチューブ構造とその形成のための手段が提供される。
【0023】
フラーレンチューブは、直径が100nmオーダーの大きさを持つ。これは、たとえば、金属ナノ粒子や金属化合物ナノ粒子の担持材料の内径として適当な大きさであるので、金属化合物を担持させたフラーレンチューブは各種の触媒として有用である。たとえば、白金粒子を内外面に担持したフラーレンチューブは、優れた燃料電池電極材料となる。グラフェンシートが円筒状に丸まってできたカーボンナノチューブ(CNT)に白金クラスターを担持して燃料電池電極材料として用いる試みは多くなされているが、CNTの内径は1nm程度であるので、金属ナノ粒子を導入することが容易ではないため、活性部位は
主としてCNTの外表面に限られる。しかし、フラーレンチューブは、内径が100nmのオーダーであるため、内部表面に金属等のナノ粒子が効率よく担持されるため、高い表面積が実現し、高い触媒活性を発揮することができる。白金担持フラーレンチューブは、固体高分子型燃料電池の高性能電極材料として有望である。高性能な燃料電池電極材料は、白金使用量を削減させることを可能とするため、燃料電池の製造コストを下げることに大きく貢献する。
【0024】
そしてフラーレンチューブあるいは物質担持フラーレンチューブに電子線を照射することにより、強度や耐熱性を向上させることが可能となる。
【0025】
また、フラーレンチューブが有機溶媒に溶解させてフラーレン分子を回収可能であることは、フラーレンのリサイクルや担持されていた物質の放出、回収を可能とするもので、限りある資源の有効利用につながるとともに、安全性評価が確立していないナノ物質の拡散を防止する効果も期待できる。そして、さらには活性物質の徐放性も実現される。このように、本発明は、技術的経済効果のみならず、社会的にも大きな効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0027】
本発明におけるフラーレンチューブは、フラーレン分子もしくはフラーレン誘導体分子より形成されるものであって、チューブ状のナノ構造物として、その内径は100nmオーダーであり、フラーレンの良溶媒であるトルエンやキシレン等に溶解してフラーレン分子あるいはフラーレン誘導体分子が回収されるという特徴を有している。
【0028】
ここで、フラーレン分子とは、C60フラーレン、C70フラーレンあるいはさらに高次のフラーレンの1種または2種以上の分子であることを意味している。また、フラーレン誘導体分子は、以上のようなフラーレン分子骨格に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、エステル基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基その他置換基が結合されているものを意味している。
【0029】
そして本発明におけるフラーレンチューブは、これらの分子の1種または2種以上のものから形成されるものであって、本発明者らが開発、その報告がなされている液-液界面を利用しての液相合成の方法によって形成可能とされている。たとえばフラーレン分子もしくはフラーレン誘導体のピリジン溶液等の適宜な溶媒溶液とインプロピルアルコール(IPA)等の溶媒との界面を形成し、たとえば5~25℃程度の常温においてフラーレンチューブを析出させることで合成することができる。なお、この際には超音波を照射することも有効である。
【0030】
このようにして液相合成したフラーレンチューブに、金属元素もしくは各種化合物の溶液や分散液を接触させる。これらの金属元素や化合物の物質は、毛管現象を利用することにより内包させることができる。金属元素を内包させる場合には、金属のナノ粒子のコロイド溶液を溶媒に分散させて毛管現象により内包させることができる。
【0031】
本発明における金属元素は各種であってよく、アルカリ金属、アルカリ土類金属、貴金属等のうちから選択される1種または2種以上とすることができる。これらは、クラスター状として、あるいはイオンとして内包されてもよい。
【0032】
また、化合物としては、上記金属の無機化合物、有機金属化合物、錯体化合物、有機化
合物等の各種のものから選択される1種または2種以上であってよい。
【0033】
そして、上記の溶液や分散液のための溶媒としては、有機溶媒や水等であってよい。たとえば、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの各種アルコールの溶液や、水溶液を用いることができる。内包しようとする物質を含むアルコール容器や、水溶液中に、フラーレンチューブを入れて接触させてもよいし、これら溶液等を滴下、あるいは流下させてもよい。この接触に際しては、超音波照射することにより、各種の物質を導入することもできる。導入された物質は、内部で固まって線形な形状に変化するか、内表面に付着する。また、外表面にも付着させることもできる。
【0034】
本発明における「担持」の意味は、フラーレンチューブの中空部内への内包、内表面への付着、そして外表面への付着の少くともいずれかの状態として定義される。
【0035】
これらの担持の状態や担持量については、担持させる物質の性質や濃度などによって選択可能とされる。
【0036】
なお、本発明においては、担持に際して、あらかじめフラーレンチューブに超音波照射してその長さを短く破砕しておくこともできる。
【0037】
そして、本発明においては、フラーレンチューブは、トルエンやキシレンなどのフラーレンの良溶媒で溶解させることができるため、各種の物質を内包、あるいは付着により担持したフラーレンチューブは、常温で有機溶媒で溶解することにより、内部に充填あるいは付着させた物質を取り出すことができる。溶解させたフラーレンは回収して再び利用することができる。このように、本発明は、チューブ内部に各種の物質を導入させることや外部にも付着を可能とするのみならず、これらの物質の特性を損なうことなく、この物質を常温で回収することを可能とするものであり、さらに、使用したフラーレン分子をリサイクルすることも可能とするものである。
【0038】
カーボンナノチューブ内部に、各種物質を内包させる試みが多く行われているが、化学的熱的に安定なグラフェンシートからなるカーボンナノチューブを、常温で溶媒除去させて、内部物質のみを回収することは不可能である。しかし、本発明はこの難点を解決している。
【0039】
以上のような本発明は、C60、C70などのフラーレン分子や、C60〔C(COOC252〕などのフラーレン誘導体分子から構成されるチューブ=フラーレンチューブの内部
もしくは外表面に、金属や金属化合物などを担持することにより、各種触媒、ガス吸着材、燃料電池電極材料、発光素子、電界放射素子、新規半導体などとして広い用途を持つ中空炭素細線を提供する。また、テンプレートとして作用しているチューブを構成するフラーレン分子を溶解させることにより、線形な形状に整形された金属や金属化合物を、チューブ内部から取り出すことをも可能とする。
【0040】
また、本発明の物質フラーレンチューブにおいては、物質を担持する前に、あるいは担持した後に電子線を照射して、フラーレンチューブの強度や耐熱性を向上させることが可能である。物質担持フラーレンチューブの用途等に対応してこのような電子照射が適宜に行なわれてもよい。
【0041】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって説明が限定されることはない。
【実施例】
【0042】
<実施例1>
60を飽和させたピリジン溶液を、透明ガラスビン中に入れて、波長302nmの紫外線で12時間照射した。不溶部分をろ過後、紫外線照射したC60飽和ピリジン溶液を透明ガラスビンに入れ、イソプロピルアルコール(IPA)を重層して、液-液界面を作り、超音波を1分間照射し、手で攪拌して、さらに1分間超音波照射した(井内盛栄堂 VS-150 超音波洗浄器を使用)。この工程は全て5℃~10℃の液温で行った(超音波液-液法)。C60ピリジン飽和溶液とIPAの割合は、容量比で1:1から1:15までの任意の値を用いることができるが、1:9が最も好ましい。このガラスビンを、透明窓を有する低温恒温器に入れて、10℃で1週間~3週間静置することにより、C60チューブを育成した(低温恒温器、サンヨーMIR153を使用)。超音波の照射は、ガラスビンに予め分取してあるIPA中に、超音波を照射しつつ、C60飽和ピリジン溶液を滴下させて行うこともできる。
【0043】
60チューブが入っている溶液をガラス小瓶に分取して、上記超音波装置を用いて、超音波を1分間照射して、短く破砕した。この破砕されたC60チューブを駒込ピペットを用いて透過電子顕微鏡(TEM)用マイクログリッドに載せ、室温で12時間真空乾燥した。室温真空乾燥したC60チューブに、四塩化白金(PtCl4)を飽和させたエチルアル
コール溶液を滴下して、四塩化白金を担持したC60チューブを得た。この四塩化白金を担持したC60チューブをTEM観察した。四塩化白金溶液として、イソプロピルアルコールなどエチルアルコール以外のアルコールに溶解したものを用いることもできる。
【0044】
図1に、四塩化白金を内包させたC60チューブのTEM写真を示す。矢印で示した黒い棒状の部分が、エチルアルコールに溶解していた四塩化白金が、チューブ内部に取り込まれ、乾燥により固化した様子を示している。
【0045】
図2に、図1の棒状部分のTEM-EDS分析を示す。四塩化白金の存在を示すPtとClのピークが現れている。
【0046】
また、図3(a)には、四塩化白金を担持したC60チューブの高分解能TEM写真を示す。白金粒子の存在を示す0.23nmの(111)格子面が観察されている。図3(b)は、写真(a)の高速フーリエ変換像であり、白金粒子の(111)面が解像されていることを示している。
【0047】
図3(a)を解析して得られた白金粒子径の平均値は3.9±1.5nmであり、燃料電池の白金触媒粒径として良好な値が得られている。
【0048】
なお、TEM観察時には200keVの電子線を照射しており、TEM観察後の四塩化白金を内包させたC60チューブは耐熱性が向上していることも確認された。
<実施例2>
さらにまた、上記実施例1と同様にしてフラーレンチューブを合成した。
【0049】
合成したてのフラーレンチューブは溶媒和しており、X線回折により、C60フラーレンチューブは六方晶系(a=1.541nm,c=1.00nm)、C70フラーレンチューブも六方晶系(a=1.606nm,c=1.09nm)と求められた。大気中で自然乾燥させると、C60フラーレンチューブとC70フラーレンチューブは面心立方構造となり、C60フラーレンチューブはa=1.424nm、C70フラーレンチューブはa=1.495nmの格子定数を得た。これらの透過電顕(TEM)の視野範囲において、チューブ内部に介在物は認められず、貫通構造が実現していることが確認された。
【0050】
ついで、合成されたC60フラーレンチューブを、メタノールにKBrを溶解させた溶液
と混合し、上記と同様にしてチューブ内にKBr結晶を析出させた。
【0051】
図4のTEM写真の黒色棒状部がC60フラーレンチューブ内のKBr結晶を示している。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】四塩化白金を内包させたC60フラーレンチューブのTEM写真である。
【図2】図1の棒状部のTEM-EDS分析の結果を示した図である。
【図3】(a)は、四塩化白金を担持したC60チューブの高分解能TEM写真であり、(b)は、その高速フーリエ変換像である。
【図4】KBr結晶を内包させたC60フラーレンチューブのTEM写真である。
図面
【図2】
0
【図1】
1
【図3】
2
【図4】
3