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明細書 :可視光応答型複合酸化物光触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4660766号 (P4660766)
公開番号 特開2007-222761 (P2007-222761A)
登録日 平成23年1月14日(2011.1.14)
発行日 平成23年3月30日(2011.3.30)
公開日 平成19年9月6日(2007.9.6)
発明の名称または考案の名称 可視光応答型複合酸化物光触媒
国際特許分類 B01J  35/02        (2006.01)
B01D  53/86        (2006.01)
B01J  23/20        (2006.01)
C01B   3/04        (2006.01)
FI B01J 35/02 ZABJ
B01D 53/36 J
B01J 23/20 A
B01J 23/20 M
C01B 3/04 A
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願2006-045933 (P2006-045933)
出願日 平成18年2月22日(2006.2.22)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2005年12月6日 光機能材料研究会発行の「会報 光触媒 第18号」に発表
審査請求日 平成21年2月12日(2009.2.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】加古 哲也
【氏名】葉 金花
審査官 【審査官】後藤 政博
参考文献・文献 特開2003-171578(JP,A)
特開2001-232191(JP,A)
特開2001-286766(JP,A)
特開平02-172535(JP,A)
特開昭62-074452(JP,A)
特開平03-193626(JP,A)
特開平01-276506(JP,A)
調査した分野 B01J 21/00 - 38/74
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式;PbxMgyNbzw(0<x≦3、0<y≦2、0<z≦3、0<w≦10)で表される組成を有する複合酸化物半導体からなることを特徴とする、可視光応答性光触媒。
【請求項2】
前記可視光応答性光触媒が、有害物質分解用に供されることを特徴とする、請求項1に記載する可視光応答性光触媒。
【請求項3】
前記可視光応答性光触媒が、汚れを分解し、清浄化するのに供されることを特徴とする、請求項1に記載する可視光応答性光触媒。
【請求項4】
前記可視光応答性光触媒が、水または水素含有物質を分解して水素を製造するのに供されることを特徴とする、請求項1に記載する可視光応答性光触媒。
【請求項5】
一般式;PbxMgyNbzw(0<x≦3、0<y≦2、0<z≦3、0<w≦10)で表される組成を有する複合酸化物半導体からなる可視光応答性光触媒を用い、この光触媒の存在下で有害物質に紫外線および可視光線を含む光を照射し、有害物質を分解することを特徴とした、有害物質分解除去方法。
【請求項6】
一般式;PbxMgyNbzw(0<x≦3、0<y≦2、0<z≦3、0<w≦10)で表される組成を有する複合酸化物半導体からなる可視光応答性光触媒を用い、この光触媒の存在下で汚れ物質に紫外線および可視光線を含む光を照射し、汚れ物質を分解することを特徴とした、汚れ物質分解清浄化方法。
【請求項7】
一般式;PbxMgyNbzw(0<x≦3、0<y≦2、0<z≦3、0<w≦10)で表される組成を有する複合酸化物半導体からなる可視光応答性光触媒を用い、この光触媒の存在下で水または水素含有物質に紫外線および可視光線を含む光を照射し、水または水素含有物質を分解して水素を発生することを特徴とした、水素発生方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は光触媒材料とこの触媒の用途ならびにこの触媒を用いた有害物質の分解方法、汚れ物質分解清浄化方法、及び水素発生方法に関する。詳しくは、太陽光、室内照明などに含まれる紫外線は勿論、紫外線以外の可視光線に対しても高い光触媒活性を示す複合酸化物型光触媒材料とこの触媒の用途ならびにこの触媒を用いた有害物質の分解方法、汚れ物質分解清浄化方法、及び水素発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒は、そのバンドギャップ以上のエネルギーを有する光が照射されると価電子帯の電子が伝導帯に励起され、伝導帯、価電子帯にそれぞれ電子、ホールを生成する。特にホールは強い酸化力を持ち、さまざまな有機物質を酸化分解することができ、脱臭や抗菌などさまざまな分野に応用されている。
【0003】
このような光触媒として機能しえる典型的な実用材料としては、これまで主として酸化チタンが知られている(非特許文献1)。しかしながら、酸化チタンのバンドギャップは3.2eVと大きいため400nmより短い波長の紫外光に対しては極めて高い光触媒活性を示すことが知られているが、これより波長の長い波長領域、すなわち可視光領域の光に対して活性を示すことはなかった。
【0004】
光源となる太陽光や蛍光灯に含まれている紫外線の量は、可視光の約4~10%しかない。換言すれば、自然光の大部分は可視光で占められており、従来の酸化チタンを光触媒として使用する限りにおいては、自然光の光スペクトルの大部分を占める可視光領域の部分は、全く利用されることがないままに無駄になる。そのため、光の利用効率は極端に低く、特に光の絶対量が少ない、室内においては光触媒技術・材料がほとんど利用されるまでに至っていない。
【0005】
それゆえ、光の絶対量が少ない室内空間においても機能する可視光応答型の光触媒材料の開発が期待されている。このような状況から、近年、可視光領域の波長に対しても活性を示す各種光触媒が提案され、開発されている。
【0006】
たとえば、その一つに、酸化チタンにCrやVなどの金属イオンをドープすることによって、可視光に対しても触媒活性を発現しうる触媒が提案されている(非特許文献2)。この提案によるとCrやVなどの金属イオンがドープされることによって、酸化チタンの伝導帯と価電子帯の間にエネルギー準位が新たに作り出され、バンドギャップが狭窄し、確かに可視光を吸収することができるようになる。しかしながら、金属イオンのドープによって導入されたエネルギー準位は電子とホールの再結合サイトにもなりえ、活性の上昇がそれほどには期待することができなかった。
【0007】
これに対して、酸化チタンに窒素などのアニオンをドープすることによって可視光応答型光触媒材料を作製することが提案されている(特許文献1)。この提案による酸化チタン光触媒は、金属イオンドープ型光触媒よりも確かに可視光照射下における活性は上昇するが、窒素をドープすることによって酸化チタン内部に酸素欠陥が作製され、光触媒活性が低下してしまうという欠点があった。何れにしてもドープという手法を用いることによって作製されてなる可視光応答型光触媒材料は、現段階ではその活性はまだ不十分であり、更に一段と高いレベルの光触媒活性を発現しうる触媒が求められている。
【0008】
最近では、酸化チタン以外の酸化物によって可視光応答型光触媒を設計し、作製する試
みが提案されている。例えば、一般式In1-xxAO4(Mは遷移金属元素を、Aは周期
律表第5a元素を、xは0<x<1の数を表す。)で表されるインジウム(In)含有複合酸化物半導体によって可視光応答型光触媒を設計することが提案されている(特許文献2)。
【0009】
このような酸化チタン以外の複合酸化物によって光触媒を設計する試みは、本発明者等研究グループにおいて精力的、系統的に取り組んできた。すなわち、本発明者等において鋭意研究を重ねた結果、上記とは異なる複合酸化物によって紫外線は勿論、可視光領域の光に対しても活性を示す可視光応答型光触媒を設計することに成功し、その成果について一連の特許出願をした。
【0010】
これを要約して列挙すると、以下(1)から(9)に記載するとおりである。
すなわち、その第1番目に開発に成功した可視光応答型光触媒は、(1)一般式;BVO4で表されるバナジウム(V)含有複合酸化物半導体(ただし、Bは周期律表中3b族
元素或いは3価の遷移金属を表す。)によって設計した光触媒が挙げられる(特許文献3)。
【0011】
次いで、その次に開発に成功した可視光応答型光触媒は、(2)一般式;RVO4で表
されるバナジウム(V)含有複合酸化物半導体(ただし、RはY元素或いはランタノイド元素を表す。)によって設計されてなる触媒である(特許文献4)。
【0012】
さらに、第3番目に開発に成功した可視光応答型光触媒は、(3)一般式;(BaO)n(In23mで表される複合酸化物半導体(ただし、n=1から8、m=1から3)によって設計された(特許文献5)。
【0013】
続いて第4番目に開発に成功した可視光応答型光触媒は、(4)一般式:ABO3(た
だし、式中、AはCa、Sr、Ba元素、BはB1とB2の2種類の元素がチャージバランスを取りながら置換したもので、そのうち、B1は、In、Co、Ni、Cu、Zn元素、B2はV、Nb、Ta、Cr、Mo、W元素を含む)で表される、ペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物半導体によって設計されてなるものであり(特許文献6)、第5番目のものは、(5)一般式:MIn24で表されるインジウム系複合酸化物半導体(ただし、式中M=Ca,Sr,Baの中の少なくと1種の元素を表す)による可視光応答型光触媒であり(特許文献7)、さらに、第6番目は、(6)一般式:MBi24で表される複合酸化物半導体(ただし、M=Ca、Sr、Ba)からなる可視光応答型光触媒である(特許文献8)。
【0014】
さらにまた、第7番目に開発された可視光応答型光触媒は、(7)一般式:MBiO3
・nH2Oで表される複合酸化物半導体(ただし、M=Li、Na、K、Ag、0≦n≦
2)によって設計されてなるものであり(特許文献9)、第8番目に開発されたものは、(8)一般式:AgxBiyzw(ただし、式中、MはV、Nb、Taの5A族金属元素から選ばれた1種または2種類以上の元素であり、0<x、y≦3、0<z≦9、0<w≦24の任意の数値)で表される複合酸化物半導体によって設計されてなるものであり(特許文献10)、続いて第9番目に開発された可視光応答型光触媒は、(9)一般式BaBixy(式中、0.5<x<2、2.5<y<4)で表される複合酸化物半導体によって設計されてなるものである(特許文献11)。
【0015】

【非特許文献1】A.Fujishima、K.Hashimoto、T.Watanabe、TiO2 photocatalysis:Fundamentals and Applications、BKC Inc、(1999.5)
【非特許文献2】E. Borgarello, J. Kiwi, M. Gratzel, E. Pelizzetti and M. Visca: J. Am. Chem. Soc. Vol 104 No.11 2996-3002. American Chemical Society Publications、(1982)
【特許文献1】特開2004-988号公報
【特許文献2】特開2003-19437号公報
【特許文献3】特開2003-33661号公報
【特許文献4】特開2003-251197号公報
【特許文献5】特開2004-66028号公報
【特許文献6】特開2004-275946号公報
【特許文献7】特開2004-275947号公報
【特許文献8】特開2004-358332号公報
【特許文献9】特開2005-34716号公報
【特許文献10】特開2005-199134号公報
【特許文献11】特開2005-254154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上述べたように、近年、太陽光や室内照明に含まれているエネルギーの高い紫外光以外にも、これよりエネルギーの低い、波長の長い可視光領域の光に対して触媒活性を有する、光スペクトルを効率よく利用し得る光触媒、すなわち、紫外線、可視光線の両方に対しても高い活性を示す可視光応答型光触媒を希求する研究が活発に行われている。これによって、多様な光触媒を求めることが可能となり、選択の自由度も確保され、一応の成果が得られるようになってきたが、光を利用する反応に対して十分高い活性を有しているとは云えず、多様な環境に対しても適応し、高い活性を示す光触媒が求められている。
【0017】
とりわけ、触媒材料の設計上、容易に入手しえる酸化物によって調製され、酸化チタンやドープ型酸化チタン、あるいは前記提案による複合酸化物とも異なる組成によって構成され、その性能としてこれらの触媒活性と比較して遜色のない、あるいはこれを上回る触媒活性を有する可視光応答性光触媒が求められている。
【0018】
本発明は、このような要請に応えようというものである。さらには、光を照射することによって有害物質を酸化、還元、分解する、有害物質の無害化処理、あるいは汚れの清浄化さらには水素発生に供する光触媒材料とこの触媒を用いた有害物質の無害化処理方法、あるいは汚れ物質分解清浄化方法さらには水素発生方法を提供しようと云うものである。特に、最近では光触媒を汚れが付着しやすい表面にコーティングし、付着した汚れが光の作用によって分解するセルフクリーニング技術が注目されている。このようなセルフクリーニング技術に用いられる光触媒材料としては、良好な成膜性と環境に曝されても変質しない耐久性が要求されているが、本発明の汚れの清浄化に供せられる態様には、このようなセルフクリーニング技術による態様も含むものであり、この要請に対しても応えようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
そのため本発明者等においては、前記した各種光触媒を前提従来技術として、これら従来技術の光触媒とは異なる組成の複合酸化物として、鉛、マグネシウム、ニオブを有する3元系酸化物について着目し鋭意研究を重ねた。その結果、これら3元系酸化物が特定の比率となったとき、可視光応答性の優れた光触媒能を発現しうることを見いだしたものである。その活性度は、酸化チタンよりも高く、また、ドープ型を利用した可視光応答型材料に見られるように、ドープによって再結合サイトが劇的に増え、これによって活性が十分に上昇しないということもなく、また成膜性にも優れ、表面に塗布され環境に曝されて
も、変質せず安定して優れた触媒効果を発現しうる材料であることを見いだしたものである。
本発明は、この知見に基づいてなされたものである。その構成は、以下、(1)~(7)に記載するとおりである。
【0020】
(1)一般式;PbxMgyNbzw(0<x≦3、0<y≦2、0<z≦3、0<w≦10)で表される組成を有する複合酸化物半導体からなることを特徴とする、可視光応答性光触媒。
(2)前記可視光応答性光触媒が、有害物質分解用に供されることを特徴とする、前項(1)に記載する可視光応答性光触媒。
(3)前記可視光応答性光触媒が、汚れを分解し、清浄化するのに供されることを特徴とする、前項(1)に記載する可視光応答性光触媒。
(4)前記可視光応答性光触媒が、水または水素含有物質を分解して水素を製造するのに供されることを特徴とする、前項(1)に記載する可視光応答性光触媒。
(5)一般式;PbxMgyNbzw(0<x≦3、0<y≦2、0<z≦3、0<w≦10)で表される組成を有する複合酸化物半導体からなる可視光応答性光触媒を用い、この光触媒の存在下で有害物質に紫外線および可視光線を含む光を照射し、有害物質を分解することを特徴とした、有害物質分解除去方法。
(6)一般式;PbxMgyNbzw(0<x≦3、0<y≦2、0<z≦3、0<w≦10)で表される組成を有する複合酸化物半導体からなる可視光応答性光触媒を用い、この光触媒の存在下で汚れ物質に紫外線および可視光線を含む光を照射し、汚れ物質を分解することを特徴とした、汚れ物質分解清浄化方法。
(7)一般式;PbxMgyNbzw(0<x≦3、0<y≦2、0<z≦3、0<w≦10)で表される組成を有する複合酸化物半導体からなる可視光応答性光触媒を用い、この光触媒の存在下で水または水素含有物質に紫外線および可視光線を含む光を照射し、水または水素含有物質を分解して水素を発生することを特徴とした、水素発生方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、鉛とニオブとマグネシウムからなり、これらの比率が極めて広範な領域に亘る複合酸化物半導体からなる光触媒であって、光を照射すると可視光領域の波長のスペクトルを十分に吸収することができ、これまで実用化されてきた酸化チタンをベースとした紫外光応答型光触媒に比して、極めて優位性を持つ材料である。また、CrやNをドープした材料に比べても、欠陥量が少なく、電子とホールの再結合も起こりづらく、光触媒活性も高い。本発明によれば、紫外光のみならず、可視光を利用して工場などで最もよく利用されているVOCの1種、2-プロピルアルコール(IPA)を効率よく分解できる格別の効果を有してなるものである。この光触媒の特性はこれだけにとどまらず、光を照射することによってその他の有害ガス、たとえば、シックハウス症候群の原因ガスの1つであるアルデヒドガスや環境ホルモンなどの様々な有害物質を分解、除去することができる能力を有している。本発明の複合酸化物半導体光触媒は、可視光、紫外光領域に対して活性を有することは上記の通りであり、その特性の故、前示した使用例以外にも多様な用途に利用できることが期待され、今後その果たす役割は、非常に大きいものと考えられる。さらにまた、その触媒性能は、前述した複合酸化物による可視光応答性光触媒に比しても、本発明の光触媒能は優るとも劣ることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の光触媒としての複合酸化物半導体を得るためには、通常の固相反応法、すなわち原料となる各金属成分の酸化物あるいは金属炭酸塩あるいは金属硝酸塩あるいは金属硫酸塩、あるいは金属塩化物を目的組成の比率で混合し、常圧下空気中で焼成することによって合成することができる。
【0023】
この触媒を構成するPb、Mg、Nbの各成分の比率x、y、zは、x:y:z=0を超え3以下:0を超え2以下:0を超え3以下、であればよく、各成分のモル比は極めて広い範囲において有効である。焼成の際、原料成分によっては、昇華し、触媒の材料設計に、計画された設計とはズレが生ずることもあるが、この場合、昇華に見合う量を最初から多めに加えておくことによって対処することができる。
【0024】
また、上記原料以外に金属アルコキシドや金属塩を原料とし、これをいわゆるゾルゲル法、共沈法、錯体重合法、スパッタリング法、化学蒸着法、水熱合成法などといった様々な方法によって調製することができ、何れの調製プロセスによっても実施可能である。調整された配合原料を焼成する際の焼成温度は、原料物質が分解して酸化物に転換され、酸化物からなる焼結体が得られる温度であればよい。具体的には、700℃以上1500℃以下の温度範囲でよく、好ましくは、850℃以上、1050℃以下である。
【0025】
触媒を調製する際の原料調整は、一般式:PbxMgyNbzw(0<x≦3、0<y≦2、0<z≦3、0<w≦10)に基づいて決定される。この一般式を満足するよう原料配合し、焼成することによって調製される。この一般式の意味、意義は、鉛、マグネシウム、ニオブがそれぞれ規定量を満足して限り光触媒として機能するものが得られるものであるが、その一部を他の元素によって置換し含んでいても可視光応答性を示すことができ、本発明は、このような態様も含み得、排除するものでない。
【0026】
具体的にはPbやMgの一部をその他の2価の金属元素で置き換えてもよいし、Nbの一部をその他の5価の金属元素で置き換えても可視光応答型光触媒として用いることができる。これら他の成分の混入・置換については、一義的に規定することができない。すなわち、これら他の成分の混入・置換によって光触媒が向上する場合、これら他の成分の混入・置換はむしろ好ましいといえ、特に排除する必要はない。しかしながら、その成分が、混入、置換されたことによって、光触媒効果が希釈されるような場合、触媒効果の低下を防ぐため極力混入しないよう配慮することが好ましい。
【0027】
本発明の光触媒の形状、粒径は、光を有効に利用するためにできるだけ表面積が大きくなるように設計されることが望ましい。固相反応法によって作製した複合酸化物光触媒は、大きな成型物あるいは塊状物として得られるため、これをボールミルなどで粉砕するか、あるいは酸などでエッチングすることによってさらに表面積を大きくすることができる。また、メソポーラス構造になるように合成して、表面積を大きくしてもよい。さらに、粉末粒子を適宜大きさの形状、形態に成形して使用することもできる。本発明の光触媒は、焼結法以外にも、前述記載した様々な調整手段が利用でき、たとえば、触媒成分を含む水溶液等の反応原料溶液を用意し、反応溶液から共析反応、あるいは共沈反応によって、触媒成分を含む物質を共析、共沈させ、それらをさらに乾燥脱水あるいは焼成することによっても作製することができる。
【0028】
本発明の光触媒材料の光触媒反応により分解あるいは酸化あるいは還元反応により除去できる有害物質としては環境ホルモン、農薬、殺虫剤、カビ、細菌、ウィルス、藻類、環境汚染物質、フロンガス、炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、一酸化炭素、アミン、油、芳香族化合物、有機ハロゲン化合物、窒素化合物、硫黄化合物、有機リン化合物、蛋白質などが挙げられる。さらに身の回りの汚れの原因となっている石鹸や油、手垢、茶渋、台所のシンクなどのぬめりなどもこの光触媒材料の光触媒反応により分解できる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を具体的な実施例と図面に基づいて詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。以下に記載する実施例においては、一般式:PbxMgyNbzw
(0<x≦3、0<y≦2、0<z≦3、0<w≦10)で示される複合酸化物半導体光触媒として、x、y、z、wの値が特定の値である、Pb1.83Mg0.29Nb1.716.39を実施例として開示し、これを固相反応法によって合成した場合の実施例である。ただし、繰り返すがこの実施例は、あくまでも本発明を具体的に説明するための一つの実施例であって、本発明は、この実施例によって限定されるものでない。
【0030】
実施例1;
鉛、ニオブ、マグネシウムからなる複合酸化物半導体の1つであるPb1.83Mg0.29Nb1.716.39を以下に述べるように固相反応法によって合成した。
先ず、酸化鉛を3.0gと水酸化炭酸マグネシウムを0.21g、酸化ニオブを1.8gそれぞれ秤量した。これらをボールミルや乳鉢などの粉砕混合器具を利用して十分に粉砕混合したあと、アルミナるつぼに入れて、大気圧空気雰囲気下で950℃にて5時間焼結し、粉末を得た。この粉末をX線回折装置を用いて、測定したところ、目的のPb1.83Mg0.29Nb1.716.39の単相のパイロクロア構造をとる物質が得られていることがわかった(図1)。
紫外-可視吸収スペクトル測定の結果、本実施例の光触媒は紫外線領域から約450nm程度までの可視光領域まで吸収を示し、バンドキャップは2.8eV程度と見積もることができた(図2)。
【0031】
実施例2;
実施例1で得られた0.4gのPb1.83Mg0.29Nb1.716.39で約250ppmの2-プロピルアルコールの分解試験を行った。光源には300W Xeランプを用い、カットオフフィルターを利用して、420nmから520nmの可視光(光量:0.9mWcm-2)を反応容器に照射した。2-プロピルアルコールとその分解物質のアセトン、二酸化炭素の検出及び定量はメタナイザー付ガスクロマトグラフィー(検出器はFID)で行い、2-プロピルアルコールを分解したときに生成する中間体アセトンの発生量の時間変化について調べた(図3)。その結果、1時間で約80ppmものアセトンが生成し、この材料は可視光応答型の光触媒であることが明らかになった。また、さらに長時間光照射すると、二酸化炭素にまで完全に酸化分解することも明らかになった。
【0032】
実施例3;
実施例1で得られた0.5gのPb1.83Mg0.29Nb1.716.39を用いて、メタノール水溶液からの水素生成実験を行った。カットオフフィルターとキセノンランプを利用して、400nm以上の可視光を光源として、利用した。その結果、約5時間で約40μmolの
水素の生成が確認された。
【0033】
比較例1;
代表的な光触媒であるTiO2を利用して2-プロピルアルコール分解の可視光分解活
性を調べた。測定に使用した機器は実施例2と同じであった。その結果、
1時間経過してもアセトン、二酸化炭素の生成量はなく、気相中の2-プロピルアルコールの量に変化もないことから2-プロピルアルコールは、全く分解されないことが確認された(図3)。紫外光において優れた活性を示すTiO2も可視光照射においては活性を
示さず、可視光領域における光触媒活性は鉛とニオブとマグネシウムからなる複合酸化物半導体よりも著しく劣っていた。以上のことから、このTiO2光触媒は、可視光照射下
においては2-プロピルアルコールをはじめとする有機物を分解する能力がないことが再確認された。
【0034】
比較例2;
代表的な可視光応答型光触媒である窒素ドープ型TiO2を利用して2-プロピルアル
コールの可視光分解活性を調べた。試料の作製方法は後述する非特許文献3に記載の要領
に基づいて合成した。測定に使用した機器は実施例2と同じであった。その結果、1時間でアセトンが約20ppm生成することが確認され、実施例2と比較した場合、光触媒活性は約4倍劣っていることがわかった(図3)。また、比表面積を比較したところ、比較例2、実施例2の比表面積はそれぞれ、約43m2-1、約1.7m2-1と約20倍以上、比較例2のほうが大きかった。そのほかの性質が同じならば、一般的に比表面積が大きな材料ほど活性が高くなることが知られており、もし、実施例2と比較例2が同じ比表面積ならば、その活性の差は数十倍実施例2のほうが高くなることが予想される。このように鉛、ニオブ、マグネシウムからなる複合酸化物半導体は既存の可視光応答型材料よりも高い活性を持っており、非常に有効な可視光応答型の光触媒材料であることがわかる。
【0035】
以上の結果について、図1-3に示していることは、前述したとおりである。また、上記実施例以外にもぺロブスカイト構造を持つPb3MgNb29などは可視光に吸収を示
し、可視光照射下で有機物を効率よく分解する。
すなわち、鉛、ニオブ、マグネシウムからなる複合酸化物半導体は高活性な可視光応答型光触媒材料であり、前述の目的に沿う材料の開発に成功したことを示している。これによって、照射される光の波長に対して、利用効率が高まり、光触媒反応に一層有効に利用され、寄与するものと期待される。
【0036】
<nplcit num="3"> <text>R.Asahi,T.Morikawa,T.Ohwaki, K.Aoki and Y.Taga:Science Vol 293,No 5528,pp269—271 AMER ASSOC ADVANCEMENT SCIENCE,(2001.7.13).</text></nplcit>
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上説明してきたように、本発明は、PbxMgyNbzw(0<x≦3、0<y≦2、0<z≦3、0<w≦10)複合酸化物半導体光触媒は、紫外光のみならず、十分に可視光まで吸収できる。本発明によって、これまでの実用光触媒、TiO2が、紫外光領域で
のみ機能していたことを考えると、有効利用できる波長領域を大きく広げることができたという意義は極めて大きい。また、可視光領域においても既存の窒素ドープ型酸化チタンよりもはるかに活性が高い。本発明によれば、可視光を利用して各種有害な化合物、例えば、環境ホルモンや細菌等いわゆる有害物質に作用し、これらを殺菌、分解、除去等無害化するのに使用される環境対策技術を始めとして各種化学反応に大いに利用され、産業の発展に寄与するものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】作製したPb1.83Mg0.29Nb1.716.39のX線回折パターン
【図2】作製した光触媒の吸収スペクトルを示す図
【図3】実施例2、比較例1、2の各光触媒活性を示す図
図面
【図1】
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【図2】
1
【図3】
2