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明細書 :窒化ホウ素ナノチューブの外壁寸法を制御する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4873690号 (P4873690)
公開番号 特開2007-254160 (P2007-254160A)
登録日 平成23年12月2日(2011.12.2)
発行日 平成24年2月8日(2012.2.8)
公開日 平成19年10月4日(2007.10.4)
発明の名称または考案の名称 窒化ホウ素ナノチューブの外壁寸法を制御する方法
国際特許分類 C01B  21/064       (2006.01)
FI C01B 21/064 M
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2006-076541 (P2006-076541)
出願日 平成18年3月20日(2006.3.20)
審査請求日 平成21年3月5日(2009.3.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】板東 義雄
【氏名】ホワン・チン
【氏名】デミトリー・ゴルバーグ
【氏名】倉嶋 敬次
審査官 【審査官】壺内 信吾
参考文献・文献 特開2002-097004(JP,A)
特開2004-231455(JP,A)
国際公開第2005/100466(WO,A1)
特開平07-061865(JP,A)
特開2004-035273(JP,A)
特開平05-310404(JP,A)
特開2002-255527(JP,A)
特表2007-533797(JP,A)
調査した分野 C01B15/00-23/00
C01B31/00-31/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
多層からなる窒化ホウ素ナノチューブを水及び有機溶媒からなる混合溶媒中に添加し、超音波処理して分散液とする工程と、
上記分散液を圧力容器中で加熱する工程と、を備え、
上記窒化ホウ素ナノチューブの外壁寸法を、上記分散液の加熱によるエッチングで制御する、窒化ホウ素ナノチューブの外壁寸法を制御する方法。
【請求項2】
前記有機溶媒は、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルスルホンの何れか又はこれらの混合有機溶媒である、請求項1に記載の窒化ホウ素ナノチューブの外壁寸法を制御する方法。
【請求項3】
前記分散液の加熱温度が170~200℃の範囲である、請求項1に記載の窒化ホウ素ナノチューブの外壁寸法を制御する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的性質、熱伝導率、高温における耐酸化性などに優れ、制御された外壁寸法を有する窒化ホウ素ナノチューブ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ホウ素ナノチューブは、高温における耐酸化性や優れた機械的性質を有している。例えば、非特許文献1に報告されているように、窒化ホウ素ナノチューブは、直径の違いによってバンドギャップエネルギーが変化することが知られている。
【0003】
一方、カーボンナノチューブのエッチング方法としては、薬品を用いたケミカルエッチング方法(例えば、非特許文献2参照)、電圧を印加し電流を流しながらエッチングすることにより多層カーボンナノチューブの外壁を剥ぎ取る方法(例えば、非特許文献3参照)が報告されている。エッチングの別の方法としては、超臨界水を用いて外壁を剥ぎ取る方法(例えば、非特許文献4,5参照)などが知られている。
【0004】

【非特許文献1】K.H.Khoo,他、Phys. Rev.B 69巻、201401頁、2004年
【非特許文献2】S.C.Tsang,他、Nature 372巻、159頁、1994年
【非特許文献3】J.Cumings,他、Nature 406巻、586頁、2000年
【非特許文献4】J.Y.Chang,他、Chem. Phys. Lett.363巻、583頁、2002年
【非特許文献5】J.Y.Chang,他、Appl. Phys. Lett.85巻、2613頁、2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、窒化ホウ素ナノチューブは、その直径の値によって特性が異なる。したがって、種々の直径を有する窒化ホウ素ナノチューブを自由に得ることができれば、必要な特性を持つ応用製品の開発が可能となるが、現状では、窒化ホウ素ナノチューブの外壁を制御してエッチングする有効な方法が実現されていないという課題がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み、薬品を用いることで、多層又は単層窒化ホウ素ナノチューブにおいて、制御された外壁寸法を有する窒化ホウ素ナノチューブ及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の制御された外壁寸法を有する窒化ホウ素ナノチューブは、多層又は単層からなる窒化ホウ素ナノチューブにおいて、窒化ホウ素ナノチューブの外壁の寸法が制御されて形成されていることを特徴とする。
本発明の制御された外壁寸法を有する窒化ホウ素ナノチューブの製造方法は、多層からなる窒化ホウ素ナノチューブを水及び有機溶媒からなる混合溶媒中に添加し、超音波処理して分散液とする工程と、分散液を圧力容器中で加熱する工程と、を備え、窒化ホウ素ナノチューブの外壁寸法を、分散液の加熱によるエッチングで制御することを特徴とする。
上記構成において、有機溶媒は、好ましくは、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルスルホンの何れか又はこれらの混合有機溶媒である。加熱温度は170~200℃の範囲であれば好ましい。
【0008】
上記構成によれば、多層窒化ホウ素ナノチューブの外壁を精度良く化学エッチングすることができる。したがって、この方法によれば、外壁の寸法が制御された多層又は単層窒化ホウ素ナノチューブを得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱的、化学的に安定な多層からなる窒化ホウ素ナノチューブにおいて、その外壁を、化学薬品によりエッチングすることができ、外壁の寸法を精度良く制御した窒化ホウ素ナノチューブを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に用いるエッチング前の窒化ホウ素ナノチューブは、窒化ホウ素からなるチューブ状構造を有しており、六角網目の面がチューブ軸に平行に管を形成し、多重管、すなわち、多層構造を呈している。この窒化ホウ素ナノチューブの平均直径は、0.4nm~1μmである。
【0011】
上記の多層窒化ホウ素ナノチューブは、アーク放電法、レーザー加熱法、化学的気相成長法を用いて製造することができる。別の方法としては、ホウ化ニッケルを触媒として使用し、ボラジンを原料とする製造方法も知られている。さらに、カーボンナノチューブを鋳型として利用して、酸化ホウ素と窒素を反応させて製造する方法も提案されている。本発明に使用する多層窒化ホウ素ナノチューブは、何れの製造方法で製造してもよく、特に上記の製造方法には限定されない。
【0012】
本発明の制御された外壁寸法を有する多層又は単層からなる窒化ホウ素ナノチューブは、窒化ホウ素ナノチューブを薬品で処理することによって、窒化ホウ素ナノチューブの外壁をはがしてエッチングする方法により製造することができる。本発明においては、上記外壁寸法は、窒化ホウ素ナノチューブの最外側の管の外径、つまり、窒化ホウ素ナノチューブの管断面における直径と定義する。
最初に、多層からなる窒化ホウ素ナノチューブを水及び有機溶媒からなる混合溶媒中に添加し、超音波処理して分散液とする工程と、分散液を圧力容器中で加熱する工程と、により、窒化ホウ素ナノチューブの外壁寸法を、分散液の加熱によるエッチングで制御することができる。
【0013】
上記の混合溶媒としては、少量の水を含有する有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、極性有機溶媒を用いることができる。このような極性有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルスルホンなどがある。上記有機溶媒は、その何れかの単体、又は、これらの有機溶媒を組み合わせた混合有機溶媒でもよい。
【0014】
上記の加熱工程は、圧力容器中で行なうことができる。この圧力容器の加熱温度は170~200℃が好ましい。加熱温度が170℃未満では、加水分解速度、すなわち、エッチング速度が遅くなり好ましくない。逆に、加熱温度が200℃以上では有機溶媒の分解等が起こり好ましくない。
【0015】
上記の操作を施すことにより、多層窒化ホウ素ナノチューブは、その最外層から加水分解を受けて、多層窒化ホウ素ナノチューブの外壁がエッチングされることによりその直径が加熱時間とともに細くなっていく。したがって、この加熱時間を制御することにより、多層窒化ホウ素ナノチューブを、所望の直径にエッチングすることができる。
これにより、本発明のエッチング方法によれば、外壁の寸法として、その厚さが制御されて形成された多層又は単層窒化ホウ素ナノチューブを得ることができる。
【実施例1】
【0016】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
最初に、既知の製造方法により、多層窒化ホウ素ナノチューブを製造した。具体的には、ホウ素粉末2g、酸化鉄(II)(FeO)粉末1g及び酸化マグネシウム粉末1gの
混合物を窒化ホウ素製の坩堝に入れ、この坩堝を縦型高周波誘導加熱炉の中に設置し、1500℃に加熱した。この温度に保ったまま、アンモニアガスを流しつつ、2時間加熱を続けて、多層窒化ホウ素ナノチューブを製造した。生成した多層窒化ホウ素ナノチューブの直径は、20~100nmであった。
【0017】
次に、上記のようにした製造した多層窒化ホウ素ナノチューブ10mgを水1cm、ジメチルスルホキシド40cmの混合溶媒中に入れて、30分間超音波処理を施し、分散液とした。その後、この分散液をテフロン(登録商標)で内張りした容量60cmのステンレススチール製のオートクレーブに入れ、180℃で6時間加熱した。加熱後の生成物を、アセトンと脱イオン水で5回洗浄した。
【実施例2】
【0018】
加熱時間を24時間とした以外は、実施例1と同様にして、多層窒化ホウ素ナノチューブをエッチングし、加熱後の生成物をアセトンと脱イオン水で5回洗浄した。
【0019】
図1は、実施例1の180℃で6時間エッチング処理した多層窒化ホウ素ナノチューブの透過型電子顕微鏡像を示す図である。図1の矢印で示すように、多層窒化ホウ素ナノチューブの外側のチューブ壁がエッチングにより剥がされていることが観察された。さらに、この多層窒化ホウ素ナノチューブの直径は56nmであり、チューブ壁の厚さは20nmであることが判明した。
【0020】
図2は、実施例2の180℃で24時間エッチング処理した多層窒化ホウ素ナノチューブの透過型電子顕微鏡像を示す図である。図2から明らかなように、実施例2では実施例1の6時間よりも長い24時間のエッチングを行ったので、実施例1の場合と比較すると、細い突き出した部分のチューブ壁の厚さが2nmと薄くなったことを確認できた。
【0021】
図3は、エッチング前後の多層窒化ホウ素ナノチューブの赤外線吸収スペクトルを示す図である。図において、横軸は波数(cm-1)を、縦軸は吸光度(任意目盛)を示している。「点線」で示すデータがエッチング前の多層窒化ホウ素ナノチューブの赤外線吸収スペクトルであり、「実線」で示すデータはエッチング後、即ち、実施例の多層窒化ホウ素ナノチューブの赤外線吸収スペクトルである。
図3から明らかなように、多層窒化ホウ素ナノチューブの赤外線吸収スペクトルにおいては、水及びジメチルスルホキシド中で加水分解反応が生じたので、図中の矢印(↓)で示す波数において、S=O(1060cm-1)、S-C(619cm-1)、C-H(3184cm-1)、N-H(3428cm-1)、B-OH(1132cm-1)の吸収が新たに出現した。これは、実施例の多層窒化ホウ素ナノチューブの外壁が加水分解を受けると同時に、ジメチルスルホキシドが窒化ホウ素ナノチューブの壁と化学結合したことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明により、多層からなる窒化ホウ素ナノチューブのエッチングが可能となったので、所望の直径を持つ窒化ホウ素ナノチューブが形成できるようになった。その結果、今後、所望の特性を有する材料への展開が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の180℃で6時間エッチング処理した多層窒化ホウ素ナノチューブの透過型電子顕微鏡像を示す図である。
【図2】実施例2の180℃で24時間エッチング処理した多層窒化ホウ素ナノチューブの透過型電子顕微鏡像を示す図である。
【図3】エッチング前後の多層窒化ホウ素ナノチューブの赤外線吸収スペクトルを示す図である。
図面
【図3】
0
【図1】
1
【図2】
2