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明細書 :温間制御圧延装置および温間・冷間連続制御圧延装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5007385号 (P5007385)
公開番号 特開2007-136546 (P2007-136546A)
登録日 平成24年6月8日(2012.6.8)
発行日 平成24年8月22日(2012.8.22)
公開日 平成19年6月7日(2007.6.7)
発明の名称または考案の名称 温間制御圧延装置および温間・冷間連続制御圧延装置
国際特許分類 B21B  13/12        (2006.01)
B21B  27/02        (2006.01)
B21B   1/16        (2006.01)
FI B21B 13/12 B
B21B 27/02 D
B21B 1/16 M
請求項の数または発明の数 11
全頁数 22
出願番号 特願2006-127382 (P2006-127382)
出願日 平成18年5月1日(2006.5.1)
優先権出願番号 2005307689
優先日 平成17年10月21日(2005.10.21)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年4月22日(2009.4.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】鳥塚 史郎
【氏名】村松 榮次郎
【氏名】長井 寿
審査官 【審査官】瀧澤 佳世
参考文献・文献 特開平09-182903(JP,A)
特開平06-272763(JP,A)
特開平09-308901(JP,A)
特開平06-134502(JP,A)
特開平08-047701(JP,A)
特開2001-321828(JP,A)
特開昭61-150703(JP,A)
特開平01-210102(JP,A)
特開平09-276901(JP,A)
調査した分野 B21B 13/12
B21B 1/16
B21B 27/02
特許請求の範囲 【請求項1】
被圧延金属材の圧延ライン方向に対して直角で、かつ軸心が平行な2本のカリバーロール対を備えた1番圧延機と、1番圧延機の圧延ライン下流側に隣接して配置され、圧下方向が1番圧延機による被圧延金属材の圧下方向に対して直角で、かつ軸心が1番圧延機のカリバーロールの軸心方向に対して直角であり、しかも平行である2本のカリバーロール対を備えた2番圧延機とが配設され、これら2機の圧延機が一体となった圧延機であり、ハウジングを持たない片持ち構造の独立駆動モーターを備える圧延機であって、1番圧延機のカリバーロールの軸心及び2番圧延機のカリバーロール軸心のそれぞれが、被圧延金属材の圧延ライン方向の中心線に対して垂直に投影されたそれぞれの交点の間の距離(L)が下記(1)式の範囲であり、2番圧延機の胴長Qが(5)式を満足することを特徴とする温間制御圧延装置。
L≦0.98(D1/2+D2/2) … … … … (1)
Q≦D1 … … … … (5)
但し、D1:1番圧延機のカリバーロールの直径
D2:2番圧延機のカリバーロールの直径
【請求項2】
1番圧延機のカリバー形状がオーバル形状で2番圧延機のカリバー形状がスクエア形状またはラウンド形状であることを特徴とする請求項1に記載の温間制御圧延装置。
【請求項3】
1番圧延機と2番圧延機との間の配設条件が満たされた2 機の圧延機で構成される圧延
機対からなる圧延基が圧延ラインの上流側から下流側に向かって複数基配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の温間制御圧延装置。
【請求項4】
2番圧延機または圧延ラインの上流側から偶数番目の圧延機による被圧延金属材の圧下方向に対して、2番圧延機または該偶数番目の圧延機の下流側に隣接する圧延機のカリバーロールは、その軸心が45°傾斜し、かつ該軸心は被圧延金属材の圧延ライン方向に対して直角に配設されていることを特徴とする請求項に記載の温間制御圧延装置。
【請求項5】
1番圧延機のカリバーロールの軸心方向が圧延ライン方向に対して直角で、かつ水平面に対して45°傾斜していることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の温間制御圧延装置。
【請求項6】
1番圧延機の入側には連続的に走行する被圧延金属線材の金属種または化学成分組成に応じて予め設定された温間圧延温度域まで連続的に急速加熱する能力を備えた連続急速温間加熱装置が配設されていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の温間制御圧延装置。
【請求項7】
複数の圧延基が配設された温間制御圧延装置において、該複数の圧延基の間に、連続的に走行する被圧延金属線材の金属種ないし化学成分組成に応じて予め設定された温間圧延温度域まで連続的に急速加熱する能力を備えた補助連続急速温間加熱装置が配設されていることを特徴とする請求項からのいずれかに記載の温間制御圧延装置。
【請求項8】
請求項1からのいずれかに記載の温間制御圧延装置の圧延ライン下流側に金属線ないし金属細線を冷間圧延、伸線、または冷間圧延及び伸線をするための冷間加工装置が配設されていることを特徴とする温間・冷間連続制御圧延装置。
【請求項9】
冷間加工装置は複数機の冷間圧延機、複数機の伸線機、または複数機の冷間圧延機と伸線機とからなることを特徴とする請求項に記載の温間・冷間連続制御圧延装置。
【請求項10】
温間制御圧延装置と冷間加工装置の間に金属線ないし金属細線の温度を制御冷却するための温度制御冷却装置が配設されていることを特徴とする請求項またはに記載の温間・冷間連続制御圧延装置。
【請求項11】
被圧延金属線材の金属種が鋼またはステンレス鋼であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の温間制御圧延装置または温間・冷間連続制御圧延装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、走行する金属材料に対して連続的に温間多方向の制御圧延を施すことにより、超微細粒組織を有する金属細線を製造し、冷間圧造性に優れ、しかも高寸法精度の金属細線を効率よく製造するための温間制御圧延装置および温間・冷間連続制御圧延装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2次加工メーカーや3次加工メーカーに供給される線径が5mm程度以下の金属細線の製造は通常、熱間加工された金属線材を目的とする線径にまで伸線または冷間圧延が施されて、所要の寸法・精度の金属細線が製造されている。しかしながら、このような方法で製造された金属細線は加工硬化により、熱間加工された金属線材よりも強度は向上するが延性が低下するため、所要の強度を確保するとともに冷間圧造性等の加工性をも具備させるためには適切な熱処理を施す必要がある。このような圧延方法に対して、最近では熱間加工材に対して適切な温間加工温度域において、多方向からの大塑性ひずみを導入して結晶粒の超微細化を図ることにより、従来のような熱処理を施すことなく強度と延性が共に優れ、両者のバランスが優れた金属細線の製造方法が提案されている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、これまで提供された圧延方法を用いて実際に操業するに際しては未だ効率的に十分な効果が得られていない。本発明者等は温間温度領域において、効率的な生産を可能とする金属線材の制御連続圧延の技術を開発して既に特許出願している(特許文献2)。本発明者が先に出願した方法とは、温間制御圧延設備として複数基の圧延機を直列に配置して、コイル巻戻し装置から巻き戻されて走行する被圧延金属材を複数基の圧延機で連続的に圧延するに際して、第1番目圧延機の入側の直前に大容量急速加熱装置を設けて、所要の温間圧延温度まで急速加熱し、圧延による所要の塑性ひずみを被圧延材に導入する温間制御圧延を行なうものであるが、この方法は線径が一定値以下に細線化されると圧延による加工発熱よりも放熱が勝るために、第2番目の圧延機の入側において被圧延材の温度が所望値を下回るという問題が発生する。その対策として、第2番目の圧延機の入側にも上記所望する温度まで昇温させるための補助急速加熱装置を設けなければならないが、補助急速加熱装置を設けることは設備費用の上昇とともに設備の保守費の上昇やエネルギー費用もかかりコスト高になる。

【特許文献1】特開2004-346420号公報
【特許文献2】特開2006-043754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本願発明は上記の課題を解決するものとして、2次加工工程用素材あるいは3次加工工程用素材として所望する径を有する金属線または金属細線を孔型ロールによる圧延加工により製造する技術であって、製造された金属線または細線に特別な熱処理を施さなくても、その強度と延性のバランスに優れた水準を有し、冷間圧造性等の加工特性に優れた高強度金属線または細線をエネルギー費用を抑制しつつ連続的に加熱しながら、所要の温間圧延温度範囲内に制御圧延することにより、従来得られていない程度の大単重の金属細線を生産効率よく製造することを可能とする圧延装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、被圧延金属材の圧延ライン方向に対して直角で、かつ軸心が平行な2本のカリバーロール対を備えた1番圧延機と、1番圧延機の圧延ライン下流側に隣接して配置され、圧下方向が1番圧延機による被圧延金属材の圧下方向に対して直角で、かつ軸心が1番圧延機のカリバーロールの軸心方向に対して直角であり、しかも平行である2本のカリバーロール対を備えた2番圧延機とが配設され、これら2機の圧延機が一体となった圧延機であり、ハウジングを持たない片持ち構造の独立駆動モーターを備える圧延機であって、1番圧延機のカリバーロールの軸心及び2番圧延機のカリバーロール軸心のそれぞれが、被圧延金属材の圧延ライン方向の中心線に対して垂直に投影されたそれぞれの交点の間の距離(L)が下記(1)式の範囲であり、2番圧延機の胴長Qが(5)式を満足することを特徴とする温間制御圧延装置を提供する。


【0006】
L≦0.98(D1/2+D2/2) … … … … (1)
Q≦D1 … … … … (5)
但し、D1:1番圧延機のカリバーロールの直径
D2:2番圧延機のカリバーロールの直径

【0007】
には、1番圧延機のカリバー形状がオーバル形状で2番圧延機のカリバー形状がスクエア形状またはラウンド形状である上記第1に記載の温間制御圧延装置を提供する。

【0008】
には、1番圧延機と2番圧延機との間の配設条件が満たされた2機の圧延機で構成される圧延機対からなる圧延基が、圧延ラインの上流側から下流側に向かって複数基配設されている上記第1または2に記載の温間制御圧延装置を提供する。

【0009】
本願明細書における下記用語を次の通り定義する。
1番圧延機および2番圧延機とは、両圧延機で構成される圧延機の1対(圧延機対という)を構成するそれぞれの圧延機であって、圧延ラインの上流側に1番圧延機が配設され、これに隣接して下流側に2番圧延機が配設され、しかも、上記問題解決手段の第1に記載したとおりの相互間の配設された傾斜角度を満たしており、かつ上記距離(L)が上記(1)式又は(2)式を満たしているそれぞれの圧延機をいう。
また、圧延基とは、1番圧延機と2番圧延機とで構成された圧延機対又は1番圧延機と2番圧延機との間の上記配設条件が満たされた2機の圧延機(それぞれ奇数番目圧延機および偶数番目圧延機という)で構成された圧延機対をいう。
【0010】
には、上記第に記載の温間制御圧延装置において、2番圧延機または圧延ラインの上流側から偶数番目の圧延機による被圧延金属材の圧下方向に対して、2番圧延機または該偶数番目の圧延機の下流側に隣接する圧延機(奇数番目の圧延機)のカリバーロールは、その軸心が45°傾斜し、かつその軸心は被圧延金属材の圧延ライン方向に対して直角に配設されている上記の温間制御圧延装置を提供する。

【0011】
には、1番圧延機のカリバーロールの軸心方向が圧延ライン方向に対して直角で、かつ水平面に対して45°傾斜している上記第1から第のいずれかに記載の温間制御圧延装置を提供する。

【0015】
には、1番圧延機の入側には連続的に走行する被圧延金属線材の金属種または化学成分組成に応じて予め設定された温間圧延温度域まで連続的に急速加熱する能力を備えた連続急速温間加熱装置が配設されている上記第1から第のいずれかに記載の温間制御圧延装置を提供する。

【0016】
には、複数の圧延基が配設された温間制御圧延装置において、この複数の圧延基の間に、連続的に走行する被圧延金属線材の金属種ないし化学成分組成に応じて予め設定された温間圧延温度域まで連続的に急速加熱する能力を備えた補助連続急速温間加熱装置が配設されている上記第から第のいずれかに記載の温間制御圧延装置を提供する。

【0017】
には、上記第1からのいずれかに記載の温間制御圧延装置の圧延ライン下流側に金属線ないし金属細線を冷間圧延、伸線、または冷間圧延および伸線をするための冷間加工装置が配設されている温間・冷間連続制御圧延装置を提供する。

【0018】
には、冷間加工装置は複数機の冷間圧延機、複数機の伸線機、または複数機の冷間圧延機と伸線機とからなっている上記の温間・冷間連続制御圧延装置を提供する。

【0019】
10には、温間制御圧延装置と冷間加工装置の間に金属線ないし金属細線の温度を制御冷却するための温度制御冷却装置が配設されている上記第または第に記載の温・冷間連続制御圧延装置を提供する。

【0020】
11には、上記第1から第10のいずれかに記載の温間制御圧延装置において、被圧延金属線材の金属種が鋼またはステンレス鋼である温間制御圧延装置、または上記第から第10のいずれかに記載の温間・冷間連続制御圧延装置において被圧延金属線材の金属種が鋼またはステンレス鋼である温間・冷間連続制御圧延装置を提供する。

【発明の効果】
【0021】
上記第1の温間制御圧延装置によれば、本発明は、圧延装置または圧延ラインに金属材料を走行させながら定常的・連続的に適切な温度領域に加熱しつつ、孔型ロールを有する2 機の圧延機が一体型となった装置で、適切な温間温度範囲内に制御しつつ適切な塑性ひずみを導入することにより、連続的に圧延することができる。その結果、従来技術の温間圧延装置により製造される、結晶粒径が極めて微細である超微細組織を有し、そのため高強度且つ高延性でそのバランスに優れた金属細線を極めてコンパクトな圧延装置により製造することができる。更に、カリバーロールの軸心の距離(L)を至近距離にできることに寄与するので、圧延温度の制御性の向上及び被圧延材の倒れ防止に寄与する。また、装置をコンパクトにできるので設備保全上も効果的である。

【0022】
また、金属線の圧延においては、通常、被圧延材の先端が、2本セットの平行なカリバーロールの両ロール軸心が共通に含まれる平面に対して直角に噛み込まれない時に、被圧延材に倒れ(正規の圧下方向に対して材料の断面が回転して、線が捻転する現象)が発生し易い。しかし、この温間制御圧延装置は(1)式に示した1番圧延機と2番圧延機の軸心間の上記距離(L)が通常の温間圧延装置の場合に比べて極めて小さいので、被圧延材の倒れは極めて発生しにくい。
【0023】
更に第1の温間制御圧延装置によれば、第1カリバーロールおよび第2カリバーロールの軸心を至近距離にすることにより、被圧延材の第2カリバーロールの噛み込み時の倒れが防止され、さらに圧延温度の制御性が向上し、また均質な超微細組織を有する金属線を製造できる。

【0024】
上記第の温間制御圧延装置によれば、カリバー形状を特定することにより、同一減面率Rであっても塑性ひずみを大きくすることができる。

【0025】
上記第の温間制御圧延装置によれば、圧延機対を複数基配設することにより上記特性を有する金属線を効率的に製造することができる。

【0026】
上記第の温間制御圧延装置によれば、下流側の圧延機に噛み込まれる被圧延材の断面形状が角形状の時にはオーバル形状の湾曲面で角形状の対辺面を圧下することができるので、噛み込み時の被圧延材の倒れ(線が捻転する現象)を防止でき、形状・寸法の向上及び表面疵防止に有効である。

【0027】
上記第の温間制御圧延装置によれば、圧延機の運転操作がやり易くロール組替え作業も楽になり、装置の保守・点検が効果的にできる。

【0031】
上記第および第の温間制御圧延装置によれば、被圧延金属材の種類に応じて圧延温度を好適な条件で制御できると共に金属細線の生産性向上に寄与する。

【0032】
上記第およびの温間・冷間連続制御圧延装置によれば、従来別々に独立した工程であった温間制御圧延工程と冷間加工工程とが一つのラインとなることにより、製造コストおよび設備費コストの低減、並びに工程管理の集約化できる。

【0033】
上記第10の温間・冷間連続制御圧延装置によれば、被圧延材のスタート線径から仕上げ線径までの減面率と圧延パススケジュールに依存して被圧延材の温度が上昇する場合でも良好に温度調整ができる。

【0034】
上記第11の温間制御圧延装置および温間・冷間連続制御圧延装置によれば、本願発明における好適な被圧延材を特定できる



【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本願発明の温間制御圧延装置および温間・冷間連続制御圧延装置の概要を図1~図4に従って説明する。図1~図3は本願発明の最も基本的な温間制御圧延装置の主要部を示すもので、1番圧延機と2番圧延機のカリバーロール対が配設された状態を示したものである。図1は温間制御圧延装置の1番圧延機と2番圧延機のカリバーロール対配設の斜視図である。また図2は、図1の1番圧延機(1)のカリバーロール(2a)(2b)の2本の軸心j、jが鉛直方向に上下で重なるように装置を仮想的に起こした姿勢の状態で当該軸心j、jに対する直角面を見た側面図であり、図3は同じく上記の仮想的姿勢における上方から見た平面図である。なお、図1~図3では説明を簡単にするためにカリ
バーロールの表面は平滑に示されているが、図1~図3におけるカリバーロールの表面はオーバル形状、スクエア形状、ラウンド形状、またはその変形した形状である菱形や角形等の様々なカリバー形状が施されたロールである。
【0036】
図1~図3に記載されているように本願発明の温間制御圧延装置は1番圧延機(1)は軸心が平行である2本のカリバーロール(2a)(2b)からなるカリバーロール対(2)を備えている。また、2番圧延機(3)も軸心が平行である2本のカリバーロール(4a)(4b)からなるカリバーロール対(4)を備えている。そして、1番圧延機(1)と2番圧延機(3)のカリバーロールの軸心方向は、被圧延鋼線材(5)の圧延ライン方向(6)に対して直角に配置されている。また、図1~図3に例示されているものは、1番圧延機(1)のカリバーロール(2a)(2b)の軸心方向と2番圧延機(3)のカリバーロール(4a)(4b)の軸心方向も直角になるように配設されている。
【0037】
図1~図3は本願発明の温間制御圧延装置における1番圧延機(1)のカリバーロールの軸心と2番圧延機(3)のカリバーロール軸心間の距離(L)の関係がL≦D/2+D/2を満たしている態様を説明している。例えば、1番圧延機(1)のカリバーロールの軸心と2番圧延機(3)のカリバーロール軸心間の距離(L)の関係が最も好適に示されている図2を用いてこの関係を具体的に説明すると、1番圧延機(1)のカリバーロール(2a)(2b)の直径(D)、および2番圧延機(3)のカリバーロール(4a)、(4b)の直径(D)は、例えば、いずれも100mmとする。すると、D/2=D/2=50mmであり、D/2+D/2=100mmとなる。1番圧延機1のカリバーロール(2a)(2b)の軸心から被圧延鋼線材(5)の圧延進行方向中心線上へ投影された交点位置と2番圧延機(3)のカリバーロール(4a)(4b)の軸心から被圧延鋼線材(5)の圧延進行方向中心線上へ投影された交点位置との間の距離(L)を、L=98mmとすると、1番圧延機のカリバーロールの軸心と2番圧延機のカリバーロール軸心間の距離(L)は、L≦D/2+D/2の関係が満たされていることになる。
【0038】
この具体的な例で示されるように、本願発明においては1番圧延機と2番圧延機との間隔(L)は、前記の式(1)のL≦1.5(D/2+D/2)で示される関係とするが、さらに好ましくは、式(2)のL≦D/2+D/2で示される関係とする。
【0039】
前記の式(1)および式(2)で示されるカリバーロール軸心間の距離(L)が至近距離であるようにするためには、2番圧延機(3)のカリバーロール(4a)、(4b)を1番圧延機(1)のカリバーロール(2a)(2b)の間にまで食い込んだ位置まで接近させればよく、2番圧延機(3)の胴長(Q)を、式:Q≦Dを満たすように設計すればよい。また、式:Q≦Dを満たすためには圧延機のハウジングをなくす設計にすべきである。本願発明において圧延機間距離を狭めて上記距離(L)を至近距離とするためには、2番圧延機(3)のカリバーロール(4a)(4b)の胴長(Q)を極めて短くできること(例えば、40mm程度)も大きな特徴である。以上のような本願発明の温間制御圧延装置では圧延中の線径が細いにもかかわらず被圧延材の温度低下を極力抑制することができ、圧延温度を目標とする温間圧延温度範囲内に制御することができる。
【0040】
なお、本願発明において、温間圧延温度範囲内において圧延加工を行なう理由は、これよりも高温における圧延パス間での被圧延材料における金相学上の回復、再結晶、粒成長の促進を抑制することにより、結晶粒の超微細化に寄与させるためである。
【0041】
本願発明の温間制御圧延装置の構造とその特徴については説明したが、本願発明における各装置の位置や形状を特定することにより、さらに優れた効果を得ることができるが、本願発明における好ましい態様を示すと下記のようになる。
【0042】
<カリバー形状>
圧延ロールのカリバー形状はオーバル形状の次にスクエア形状またはラウンド形状を配置することにより、同一減面率Rであっても、塑性ひずみを大きくすることができ、結晶粒の超微細化に重要である。
【0043】
<複数の圧延機対(圧延基)を用いる場合の下流側に隣接する圧延機対の中の上流側圧延機の適正な傾斜角度>
図4は本願発明を説明するための概念図であり(4a´)および(4b´)は、圧延機対(圧延基)が複数基配設されている場合の上流側の圧延基に含まれる下流側の圧延機の2本のスクエア形状のカリバーロールを示している。また、(7a)および(7b)は、この場合の下流側の圧延基に含まれる上流側の圧延機の2本のオーバル形状のカリバー
ロールを示し、圧延ラインの下流側から上流側に向かって見た模式図である。
【0044】
また、(8)および(8´)は、スクエア形状のカリバーロール(4a´)および(4
b´)を備えた圧延機(4´)による被圧延金属材(図示せず)に対する圧下方向を示し、オーバル形状のカリバーロール(7a)および(7b)を備えた圧延機(7´)は、このオーバル形状のカリバーロール(7a)および(7b)の軸心(7Ja)および(7Jb)が、上記圧延機(4´)による被圧延金属材の圧下方向(8)および(8´)に対して45°の傾きをなしている。このように、2番圧延機または圧延ライン上流側から偶数番目の圧延機(4´)と、2番圧延機またはこの偶数番目圧延機の下流側に隣接する圧延機(7´)とのなす角度を、この下流側に隣接する圧延機(7´)のカリバーロールの軸心(7Ja)、(7Jb)が、2番目圧延機または偶数番目圧延機(4´)で圧延される被圧延金属材の圧下方向(8)、(8´)に対して45°の傾きをなし、しかも被圧延金属材の圧延ライン方向に対して直角をなすように配設することにより、上記下流側の圧延機(7´)に噛み込まれる被圧延材の断面形状が角形状(B)の時には、オーバル形状(A)の湾曲面で角形状(B)の対辺面を圧下することができる。
【0045】
従って、被圧延材の断面形状が優れた成形品を得ることが可能となる。例えば、折れ込みによる表面疵の発生を防止することができる。これは、角形状被圧延材のコーナー部が圧下されると被圧延材に「倒れ」が発生し、断面の形状不良や折れ込み疵が発生し易いが、角形被圧延材の対辺面が噛みこまれて圧下される時はこのような「倒れ」や表面疵が発生しないためである。ここで、「倒れ」とは、前述したとおり、被圧延材である金属線が捻転することをいう。
【0046】
なお、本願明細書では主としてスクエア形状を有するカリバーロールとオーバル形状を有するカリバーロールを用いた場合について説明をしたが、スクエア形状以外の形状をしたカリバーロールを用いた場合には圧延される被圧延材の対辺面が次のオーバル形状の対向する曲面で圧延されるような角度に傾斜させることが必要である。
【0047】
<1番圧延機のカリバーロールの軸心方向を水平面に対して45°に傾斜する>
1番圧延機のカリバーロールの軸心方向を、水平面に対して45°の方向に傾斜させることにより圧延機の運転操作がやり易くロール組替え作業も楽になり、装置の保守・点検上も望ましい。
【0048】
<各圧延機のカリバーロールの駆動用モーターを圧延機毎に独立して設置する>
各圧延機のカリバーロール駆動用モーターはいずれの圧延機にあっても、各圧延機毎に配設することにより、各圧延機のロール回転速度を相互に独立に制御することができ、弛み調整装置の設置による、被圧延材の温度低下を加速させる必要がなく、また、ロール組換え毎における1番圧延機と2番圧延機、ないしは奇数番目の圧延機と偶数番目圧延機と
の適正なロール回転速度の調節により、被圧延材の断面形状の健全化、および圧延機の異常負荷を防止するのに役立つ。なお、上記モーターの独立駆動方式はモーターの所謂片持ち構造により効果が一層発揮される。
【0049】
<被圧延金属線の金属種に応じて適正な温間圧延温度に設定する>
圧延温度の設定は、被圧延金属線の金属種に応じて適正な温度を選定する。選定基準は、製造される金属細線の結晶粒の超微細化を基準とする。金属種がTi合金やMg合金等のように、変形抵抗が小さく、そのため加工発熱量が小さい場合には、圧延中の被圧延材の温度低下が大きい。従って、圧延機間隔が至近距離で接近していることは、温度制御上極めて効果的である。
【0050】
<各圧延機のカリバーロールの軸角度を任意に変更可能にする>
各圧延機のカリバーロールの軸角度を任意に設定変更することができるように設計することは、各圧延機のカリバーロールの駆動用モーターが圧延機毎に独立設置されていることにより可能となる。このように、各圧延機のカリバーロールの軸角度を任意に設定変更することができることにより、1番圧延機のカリバー形状・寸法諸元と2番圧延機のカリバー形状・寸法諸元との適切な組合せに対応した適切な圧延機間同士の傾き角度や、圧延機対(圧延基)間同士の適切な傾き角度の設定が可能となり、金属細線の断面形状・寸法の精度向上に極めて効果的である。
【0051】
<温間制御圧延装置と冷間加工装置とを連続一体化する>
同一製造ラインの温間制御圧延装置の下流側に冷間加工装置を連続して配設し、一体化された金属線乃至金属細線の製造ラインとシステムを構成している例は見当たらない。このような製造ラインおよびシステムにより、生産工程管理の一元化、生産効率の向上、製品納期の短縮化、製造コストおよび設備コスト等の低減上、多くの場合に有利となる。
【0052】
本願発明はこのような構造にすることにより、従来の圧延機におけるハウジングを設けず(ハウジングレス構造)、更に1番圧延機および2番圧延機ないしは奇数番圧延機および偶数番圧延機はいずれも、圧延機毎の単独駆動モーター方式としてロール回転速度を両圧延機で相互に独立に制御する速度比例制御をしている。従って、ハウジングレス構造とすることにより、上記2番圧延機ないし偶数番圧延機のカリバーロールの胴長を短くすることと相俟って、「両圧延機のロール軸心間距離(L)」を至近距離にすることに寄与している。さらに、本願発明は両圧延機とも、カリバーロールの組替えが容易に行なうことができる構造とするとともに、1番圧延機1の圧延ライン方向の上流側に高周波加熱式の連続急速温間加熱装置(図示省略)が設けられており、高周波電流による被圧延鋼線材の加熱温度を容易に制御することを可能としている。
【0053】
次に、この出願の発明を実施例により更に詳しく説明する。
【実施例】
【0054】
本願発明を実施するに際し、第1工程~第3工程の各工程の1番圧延機及び2番圧延機のロールカリバーは下記の表1に記載されている形状および寸法のものを使用した。
【0055】
【表1】
JP0005007385B2_000002t.gif

【0056】
また、各圧延機の各カリバーロールの主要緒元は下記の表2のものを使用した。
【0057】
【表2】
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【0058】
なお、表1に記載されているWおよびHはオーバルカリバーの大径および小径を、Cはスクエアカリバーの対辺間距離を、そしてDはラウンドカリバーの直径を示す。
【0059】
熱間圧延により製造された表3に示される化学成分組成を有する線径6mmφで、単重が0.5トンのコイル状線材を、本願発明に係る鋼細線製造用の試験用温間制御圧延装置を用いて、線径3.0mmφの鋼細線まで温間制御圧延した。
【0060】
【表3】
JP0005007385B2_000004t.gif

【0061】
上記の通りの鋼線材から鋼線を製造する温間制御圧延装置を使用し、次の運転条件で鋼線を製造した。圧延工程は1番圧延機と2番圧延機とにより鋼線材を圧延する作業工程を2パスで1工程とし、先ず線径6mmφの熱間圧延コイル状鋼線材(C方向断面の平均結晶粒径は22μm)を巻き戻しながら連続急速温間加熱装置で所定の温間圧延温度に加熱し、加熱装置から排出走行する被圧延鋼線材を上記両圧延機により順次温間温度域で圧延する2パスで1工程の圧延作業を行ない、コイル巻取機により線速度を10m/分で巻き取った(第1工程)。上記第1工程を終了後、圧延ロールを所要の形状・寸法のカリバーロールに組替えた後、第1工程に準じて第2回目の圧延作業を行った(第2工程)。そして、第2工程を終了後、第1工程乃至第2工程に準じて更に圧延作業を行った(第3工程)。
【0062】
表4に、これら各工程における温間制御圧延における装置の運転条件、および被圧延鋼線の結晶粒微細化を大きく支配する圧延加工による材料への塑性ひずみへの影響因子条件を示す。そして、表4にはその試験結果、即ち、圧延温度測定結果および得られた線径が3.0mmφの鋼細線の各種材質試験結果を併記する。
【0063】
なお、材料に導入される真ひずみeは、下記(3)式:
e=ln(S/S)…………(3)
但し、S:圧延前の被圧延材のC方向断面の面積
S :圧延後の被圧延材のC方向断面の面積
で表わされ、減面率R(%)={(S-S)/S}×100との関係は、
下記(4)式:
e=-ln(1-R/100)…………(4)
で表わされる。
【0064】
【表4】
JP0005007385B2_000005t.gif

【0065】
表4の試験結果より明らかなように、この温間制御圧延装置によれば、線径6mmφの鋼線材から、第1工程においてオーバルカリバーに次ぐスクエアカリバーによる連続2パ
ス圧延で減面率R=47%の圧延、第2工程においてオーバルカリバーに次ぐスクエアカリバーによる連続2パス圧延で減面率R=38%の圧延、そして第3工程においてオーバルカリバーに次ぐラウンドカリバーによる連続2パス圧延で減面率R=26%の圧延を行ない、全減面率(ΣRで表記する)=75%の圧延加工により、線径3.0mmφの鋼細線を製造した結果、被圧延鋼線材の各工程における1番圧延機への入側温度と2番圧延機からの出側温度との差は、順に37℃、50℃、60℃の低下量であった。
【0066】
これらの温度低下量は工程の順に線径が細くなることによる放熱速度の上昇と共に、減面率Rの低下による加工発熱量の低下に伴うものと考えられるが、小さく抑えることができた。これに伴い線径3.0mmφの鋼細線のミクロ組織は、フェライト結晶粒径がC方向断面中心部で0.5μmという超微細組織が得られ、その機械的性質は、降伏強さYSが650MPa、引張強さTSが708MPa、伸びElが20.5%、そして絞りRAが78.1%という、強度と延性バランスに優れた高強度鋼細線が得られた。
【0067】
このように、本願発明の温間制御圧延装置を用いることにより、圧延温度を適切な温間圧延温度範囲内に制御することができ、そして適切な被圧延材に適切な加工ひずみを導入することにより、優れた高強度且つ高延性の鋼細線を安定して製造することが可能であることが確認された。
【比較例】
【0068】
本願発明の効果を確認するために比較例として、次の試験を行った。
【符号の説明】
【0069】
熱間圧延により製造された表5に示す化学成分組成を有する線径12mmφで、単重が1.0トンのコイル状線材を、本願発明の範囲外である下記の鋼細線製造用の圧延加工装置により、線径6.0mmφ鋼細線まで連続圧延により加工した。
【0070】
【表5】
JP0005007385B2_000006t.gif
【0071】
比較例で用いた圧延加工装置は、前段圧延機と後段圧延機とが直列に配置されている。前段圧延機の2本のカリバーロールはその軸心が平行であって、被圧延鋼線材のライン方向に対して直角で且つ水平方向を向き、そして後段圧延機の2本のカリバーロールも亦その軸心は並行であって、被圧延鋼線材のライン方向に対して直角で且つ水平方向を向いて配設されている。前段圧延機及び後段圧延機のそれぞれの入側及び出側には、入側案内装置及び出側案内装置が設けられ、前段圧延機と後段圧延機の間には、弛み調整装置が設けられている。即ち、コイル巻き戻し装置から巻き戻されて走行する被圧延鋼線材を大容量急速加熱装置に連続的に装入し、所定の温間温度範囲内に加熱し、当該加熱装置から排出された被圧延鋼線材を入側案内装置を通して直ちに前段圧延機に装入し、カリバーロール圧延機で所定の圧延加工を施された後、被圧延鋼線材は出側案内装置で誘導されて排出され、弛み調整装置により被圧延鋼線材に特別な張力がかからないように圧延機のロール回転数を調整しつつ、後段の入側案内装置で所定の方向に捻転させて、後段圧延機に装入し、所定の圧延加工を施した後、出側案内装置で誘導排出し、コイル巻取り装置で巻き取った。
【0072】
上述した前段圧延機と後段圧延機による2パスからなる第1工程が終了後、圧延ロールを所要の形状・寸法のカリバーロールに組み換えた後、第1工程の圧延作業に準じて、第2工程及び第3工程による圧延を行った。これら各工程においても、被圧延鋼線の結晶粒微細化を達成させるように、所要の温間圧延温度条件、及び圧延加工による材料への塑性ひずみを導入すべくパススケジュールその他、適切な装置の運転条件を選定した。
【0073】
この温間圧延装置では、前段圧延機のカリバーロールの軸心と後段圧延機のカリバーロールの軸心との距離であって、実施例における1番圧延機のカリバーロールの軸心と2番圧延機のカリバーロールの軸心との距離(第1工程~第3工程まで同一である)であるLに相当する長さ(L´)は、第1工程~第3工程のいずれの工程においても、
L’=1900mmである。下記表6に、第1工程~第3工程の各工程における前段圧延機及び後段圧延機のそれぞれのカリバーロールの径DおよびDを示す。
【0074】
=D=300mmであるから、
L’=α’(D/2+D/2)におけるα’を算出すると、
α’=L’/(D/2+D/2)
=1900/(300/2+300/2)
=6.3
となる。
【0075】
表7は第1工程~第3工程の各工程の前段圧延機および後段圧延機において使用したロールカリバーの形状および寸法を示したものである。そして、表8には上記各工程の温間圧延における装置の運転条件、および被圧延鋼線の結晶粒微細化を大きく支配する圧延加工による材料への塑性ひずみへの影響因子条件を示す。また、表8には試験結果、即ち、圧延温度および得られた線径が6.0mmφの鋼細線の各種試験結果も併記した。
【0076】
【表6】
JP0005007385B2_000007t.gif
【0077】
【表7】
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【0078】
【表8】
JP0005007385B2_000009t.gif
【0079】
表8の試験結果より明らかなように、この温間圧延装置によれば、線径12mmφの鋼線材から、第1工程の前段及び後段圧延機におけるオーバルカリバーに次ぐスクエアカリ
バーによる2パス圧延で減面率R=40%の圧延、第2工程においてオーバルカリバーに次ぐスクエアカリバーによる2パス圧延で減面率R=40%の圧延、そして第3工程においてオーバルカリバーに次ぐラウンドカリバーによる連続2パス圧延で減面率R=30%の圧延を行い、全減面率(ΣRで表記する)=75%の圧延加工により、線径6.0mmφの鋼細線を製造した。その結果、被圧延鋼線材の各工程における前段圧延機への入側温度と後段圧延機からの出側温度との差は、順に50℃、91℃、149℃の低下量であった。これらの温度低下は工程の順に線径が細くなることによる放熱速度の上昇と共に、第3工程では減面率Rの低下による加工発熱量の低下に伴うものが加わって、その低下量が大きくなったと考えられる。なお、第1工程及び第2工程における後段圧延機の入側から出側への温度が上昇しているが、これは加工発熱量が放熱速度を上回ったためである。
【0080】
しかしながら、実施例における温度低下量と比較すると、比較例における温度低下量の方がかなり大きい。この最大の要因は、実施例における1番圧延機のカリバーロールの軸心と2番圧延機のカリバーロールの軸心との距離である(L)は、
L=0.98(D/2+D/2)=0.98(50+50)=98mm
であるのに対して、比較例における前段圧延機のカリバーロールの軸心と後段圧延機のカリバーロールの軸心との距離(L’)は L’=1900mmであり、LはL’よりも極めて小さいことにある。その他に、実施例と比較例との間の試験条件の相違点は、
1)被圧延鋼線材の化学成分組成、2)被圧延鋼線材からの鋼線までのパススケジュール((a)被圧延材料の形状、寸法、(b)1パス当たりの減面率、及び全減面率)が異なることである。しかし、1)化学成分組成の差異による被加工材の変形抵抗の差は無視できる範囲であり、しかも、2)-(a)被圧延材料の形状、2)-(b)1パス当たりの減面率、及び全減面率もほとんど同一である。よって、実施例と比較例とにおける被加工材に対するひずみ量は実質的に同じであるとみなすことができるから、単位体積当たりの加工発熱量は同じであると評価できる。一方、圧延後のコイル巻き取り時の線速度は、実施例では10m/分、比較例では8.5~10m/分でほぼ同じである。
【0081】
そこで、被圧延材の単位表面積当たりの加工発熱の放散量(熱放散速度)を考察すると、実施例の線径は比較例の線径の1/2であるから、単位長さ当たりの表面積比は、
実施例:比較例=2:1となる。従って、実施例の方が温度低下速度は明らかに大きくなる。それにもかかわらず、実施例の温度低下量の方が明らかに小さかったのは、比較例の方が、カリバーロールの軸心間距離が長かったために放熱時間が長かったことにより、圧延開始から終了までの放熱量が大きかったことに起因することは明らかである。
【0082】
以上より、本願発明における実施例の方が比較例より、被加工材の温度制御の観点から優れていることがわかる。なお、比較例で得られた線径6.0mmφの鋼細線のミクロ組織は、フェライト結晶粒径がC方向断面中心部で0.5μmという超微細組織が得られ、その機械的性質は、引張強さTSが702MPa、そして絞りRAが76.9%という、強度と延性のバランスに優れた高強度鋼細線が得られている。
【0083】
以上、本願発明の実施例と比較例を比較すると、上記の通り、本願発明の実施例における温間制御圧延装置の優れた特徴が、比較例における温間圧延装置では得られない下記の有利性を発揮することが確認された。即ち、被圧延鋼線材に同一ひずみ量を導入するカリバー圧延を行う場合、本願発明の実施例によれば、極めてコンパクトな圧延装置により、比較例と同一水準以上の高強度で且つ高延性でそのバランスに優れた鋼細線を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本願発明に係わる温間制御圧延装置の1番圧延機と2番圧延機のカリバーロール対が配設された状態を示した斜視図である。
【図2】図1で示される温間制御圧延装置の側面図である。
【図3】図1で示される温間制御圧延装置の平面図である。
【図4】圧延機対(圧延基)が複数機対配設された温間制御圧延装置において、オーバルカリバーの下流側にスクエアカリバーが45°の傾きで配設されたときに圧延方向の下流側から見た模式図である。
【0085】
1 1番圧延機
2 1番圧延機のカリバーロール対
2a 1番圧延機のカリバーロール
2b 1番圧延機のカリバーロール
3 2番圧延機
4 2番圧延機のカリバーロール対
4a 2番圧延機のカリバーロール
4b 2番圧延機のカリバーロール
4´ カリバーロール4a´および4b´を備えた圧延機
4a´上流側の圧延機対(圧延基)に含まれる下流側圧延機のカリバーロール
4b´上流側の圧延機対(圧延基)に含まれる下流側圧延機のカリバーロール
5 被圧延鋼線材
6 圧延ライン方向
7a 下流側圧延機対(圧延基)に含まれる上流側圧延機のカリバーロール
7b 下流側圧延機対(圧延基)に含まれる上流側圧延機のカリバーロール
7´オーバル形状のカリバーロール7aおよび7bを備えた圧延機
7Ja オーバル形状のカリバーロール7aの軸心
7Jb オーバル形状のカリバーロール7bの軸心
8 圧延機4´により被圧延金属材に対して加える圧下方向
8´圧延機4´により被圧延金属材に対して加える圧下方向
A オーバル形状
B スクエア形状(角形状)
L カリバーロール軸心間の距離
1番圧延機のカリバーロールの直径
2番圧延機のカリバーロールの直径
上方カリバーロールの軸心
下方カリバーロールの軸心
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3