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明細書 :バイオセンサー構成体とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4900690号 (P4900690)
公開番号 特開2007-171163 (P2007-171163A)
登録日 平成24年1月13日(2012.1.13)
発行日 平成24年3月21日(2012.3.21)
公開日 平成19年7月5日(2007.7.5)
発明の名称または考案の名称 バイオセンサー構成体とその製造方法
国際特許分類 G01N   5/02        (2006.01)
FI G01N 5/02 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 18
出願番号 特願2006-297700 (P2006-297700)
出願日 平成18年11月1日(2006.11.1)
優先権出願番号 2005341284
優先日 平成17年11月25日(2005.11.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年10月27日(2009.10.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】生駒 俊之
【氏名】紋川 亮
【氏名】柚木 俊二
【氏名】田中 順三
審査官 【審査官】黒田 浩一
参考文献・文献 特開2005-283550(JP,A)
特開2004-033589(JP,A)
特開平10-072666(JP,A)
特開平08-101146(JP,A)
特開平06-287008(JP,A)
Masanobu KUSUNORI et al.,Protein Adsorption on Patterned Hydroxyapatite Thin Films Fabricated by Pulsed Laser Deposition,Japanese Journal of Applied Phisics,日本,2005年 3月10日,Vol.44,pp.L326-L327
紋川亮ら,ハイドロキシアパタイト薄膜コーティング法のバイオセンサーへの応用,日本セラミック協会2006年年会講演予稿集,日本,2006年 3月14日,p.132-2H04
V.Nelea et al., Microstructure and mechanical properties of hydroxyapatite thin films grown by RF magnetron sputtering,Surface and Coating Technology,2003年,Vol.173,p.315-322
飯村修志ら,電気泳動電着法によるTiO2ナノシートを原料とした配向積層薄膜の作成,茨城県工業技術センター研究報告,日本,2005年 6月,第33号,p.72-75
調査した分野 G01N 5/02
G01N 27/00-27/49
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
導電性基板上にリン酸カルシウム化合物のナノ結晶によるナノ薄膜が形成されており、前記ナノ結晶の大きさが200nm以下であり、前記ナノ薄膜の膜厚が50nm以下であることを特徴とするバイオセンサー構成体。
【請求項2】
導電性基板が金またはチタンであることを特徴とする請求項1のバイオセンサー構成体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のバイオセンサーの製造方法であって、導電性基板上にリン酸カルシウム化合物の結晶を電気泳動堆積させた後、超音波照射して、リン酸カルシウム化合物のナノ結晶によるナノ薄膜を形成することを特徴とするバイオセンサー構成体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、生体セラミックスの生体内反応解析を迅速に行うことのできる等の特徴のある、新しいバイオセンサー構成体とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体セラミックスコーティングの既存の方法としては、レーザーアブレーション法やスパッタリング法等が挙げられる(特許文献1)。このような従来法は、つきまわり性の悪さから、複雑な材料への均一な薄膜の形成やバイオセンサー基板への均一なナノ薄膜の形成が困難であった。一方、電気泳動堆積法は、生体セラミックス結晶を複雑な形状のものでも均一にコーティングすることが可能であったが、10μm以上の厚い膜であるため、クラックの発生や基板からの剥離という問題を抱えていた(非特許文献1)。

【特許文献1】特開2005-283550号公報
【非特許文献1】Journal of Materials Science 16, 319-324(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上のとおりの背景から、従来の問題点を解消、生体セラミックス結晶を電気泳動堆積法によって形成する方法の特徴を生かし、これを改善することで、クラックの発生や基板の剥離という不都合の発生を抑えることができる、薄膜のセラミック結晶膜を形成することを可能とし、生体内で生じる様々な反応の解析等に有用な、リン酸カルシウム化合物のバイオセンサー構成体と、その製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するものとして、以下のことを特徴としている。
【0005】
第1:導電性基板上にリン酸カルシウム化合物のナノ結晶によるナノ薄膜が形成されており、前記ナノ結晶の大きさが200nm以下であり、前記ナノ薄膜の膜厚が50nm以下であることを特徴とするバイオセンサー構成体。

【0006】
第2:導電性基板が金またはチタンであることを特徴とする上記のバイオセンサー構成体。
【0009】
第5:上記いずれかのバイオセンサーの製造方法であって、導電性基板上にリン酸カルシウム化合物の結晶を電気泳動堆積させた後、超音波照射して、リン酸カルシウム化合物のナノ結晶によるナノ薄膜を形成することを特徴とするバイオセンサー構成体の製造方法。


【発明の効果】
【0010】
上記のとおりの本発明によれば、生体セラミックスの生体内反応解析を迅速に行うため、バイオセンサーとして金属基板表面に生体セラミックスナノ結晶のナノ薄膜が提供される。特に電気泳動堆積法と超音波処理を組み合わせることで、水晶振動子(QCM)などの様々な表面反応解析に応用できるバイオセンサーの製造が可能となる。
【0011】
本発明のバイオセンサー構成体によれば、水晶振動子(QCM)、表面プラズモン、エリプソメーターなどの分析に応用できる。生体内で生じる様々な反応の解析・環境保全・触媒材料の設計に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0013】
本発明では、従来技術の問題点を克服するために生体セラミックスナノ結晶を用い、電気泳動堆積法と超音波処理の組み合わせにより、100nm以下の厚さを持つ均一なナノ薄膜を有したバイオセンサーの作製に初めて成功した。従来技術では、このようなナノ薄膜・ナノ結晶で構成されるバイオセンサーの作製法・利用方法に関する報告はない。生体内に存在するセラミックスは、ナノ結晶が複雑に細胞外マトリックスと相互作用する形で存在する。そのため、従来技術で作製したセンサー材料は結晶が大きくなり、生体内の詳細な反応を検出・比較することが困難であった。本方法では、生体骨類似ナノ結晶を用いてナノ薄膜を作製し、生体内で生じる生体分子とナノ結晶との反応解析を可能とする。
【0014】
本発明における「ナノ結晶」「ナノ薄膜」の用語については、そのサイズスケール(寸法)が100μm未満であって、いわゆるナノメートル(nm)の領域に属する技術概念として用いられている。本発明における「ナノ結晶」はより好適には、その大きさが通常の観測手段によって確認されるものとして200nm以下である。また「ナノ薄膜」は、好適には厚さが50nm以下である。そして、本発明におけるナノ結晶の薄膜とは、ナノスケールの結晶状態のリン酸カルシウム化合物が連続結合した状態で膜形成していることを意味している。
【0015】
堆積されるナノ結晶はリン酸カルシウム化合物の結晶であるが、このものは、各種のものであってよく、たとえば代表的には水酸アパタイト(HA:Ca10(PO(OH))が例示される。この水酸アパタイトは生体親和性の高い生体材料として用いられているものである。
【0016】
本発明の製造方法における電気泳動堆積法や超音波照射の方法については公知の手段であって、所定のバイオセンサー構成体を製造するための条件が適宜に定められることになる。たとえば、水酸アパタイトを代表例として、電気泳動堆積においては、溶液、溶媒濃度等によっても相違するが、一般的には、1mVから200Vの電圧が、また溶媒が液体を保持できる温度において実施される。
【0017】
超音波の印加は、この堆積後に、たとえば周波数2万Hz以上のものとして処理することができる。もちろん、これらに限定されることはない。
【0018】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0019】
生体セラミックスの一種である水酸アパタイト薄膜を有したバイオセンサーの作製法の例を以下に示す。水酸アパタイトナノ結晶は、水酸化カルシウム(0.6mol/l)懸濁液にリン酸(0.5mol/l)を一定速度で滴下し、終点のpHを8.0に調節することで合成した。その際、合成温度条件を80℃に設定し、結晶性の良い水酸アパタイトナノ結晶を得た。図1に水酸アパタイトナノ結晶のX線回折パターンを示す。同定の結果から、水酸アパタイト単相であることを確認した。回折ピークがシャープであり非常に結晶性が良い。
【0020】
次いで、得られた水酸アパタイト懸濁液をエタノールで完全に置換し、エタノールに対する水酸アパタイトの重量比を1%に調節した。その懸濁液を超音波処理により正の電荷を持った分散性の良い水酸アパタイト結晶の懸濁液を得た。これを用いて、図2に示した電気泳動堆積法により水酸アパタイト膜をQCM測定用の金基板上に成膜した。超音波処理により正の電荷を帯びた水酸アパタイトナノ結晶は、負電極側の金表面に引き寄せられ水酸アパタイト層を形成する。そして、水酸アパタイト膜作製後、エタノール中で超音波処理により基板表面の大部分の水酸アパタイト層を剥離させ、水酸アパタイトナノ薄膜を作製した。図3および表1に示す原子間力顕微鏡(AFM)観察の結果からコーティング条件(電圧、電着時間)を、表2に示す接触角測定から超音波処理時間の最適化を行った。図3では、電圧(10、50、100V)および電着時間(2、5、10分)を変化させ、水酸アパタイトナノ結晶をコーティングした金基板表面をAFMにより観察した結果を示している。水酸アパタイト結晶は、100Vの高電圧条件下で均一なコーティングの形成が観察できる。10Vでのコーティングでは、水酸アパタイト結晶がまばらに存在し、均一なコーティングの形成は観察できない。
【0021】
また、表1では、電圧(10、50、100V)、電着時間(2、5、10分)を変化させ、水酸アパタイト結晶の存在率を百分率で表した。100Vでコーティングしたものは、電着時間にかかわらず高い被覆率を示した。
【0022】
表2では、超音波処理時間に対する接触角測定の結果を表した。3分以上処理を続けた場合、接触角は増加し、金基板の接触角に近づく。これは、超音波処理に伴い、水酸アパタイト結晶が脱着したことを示している。
【0023】
【表1】
JP0004900690B2_000002t.gif

【0024】
【表2】
JP0004900690B2_000003t.gif

【0025】
そして、水酸アパタイト層の存在は、図4に示す高感度フーリエ変換赤外分光光度計により確認した。また、水酸アパタイト薄膜の膜厚は、AFMにより図5に示す水酸アパタイト層と金表面との高低差測定により得た。図4では、900-1200cm-1の位置にリン酸の吸収が観察される。これは、金表面における水酸アパタイト層の存在を示している。
【0026】
図5において、最適な条件で作製された水酸アパタイト薄膜の膜厚は、金基板上に水酸アパタイトパターンを作製し、AFMにより水酸アパタイト層と金表面との高低差測定により得た。
【0027】
AFM像は、パターニング処理を施した金センサー表面での水酸アパタイトコーティングの結果を示している。
【0028】
断面解析の結果、水酸アパタイト層の厚さが15-20nmであることがわかる。
【実施例2】
【0029】
実施例1の水酸アパタイトナノ結晶合成の際、合成温度条件を4℃および21℃に設定することでより結晶サイズの小さい結晶を合成した。図6(追加図;図番号の変更)にXRD測定の結果を示す。低温で合成した結晶は明らかに回折腺がブロードであり、結晶の大きさが小さいことが明らかであった。
得られた結晶を実施例1と同様の作製法により水酸アパタイトナノ薄膜を有したバイオセンサー作製した。図7に4℃および21℃で合成された結晶を用いて作製した基板表面のAFM像を示す。
【実施例3】
【0030】
実施例1および2で作製された水酸アパタイトナノ薄膜の膜厚をエリプソメーターで測定した。表3に測定結果を示す。いずれの結晶で作製された薄膜層の膜厚も10~20nmを示し、ナノ薄膜層であることを確認した。
【0031】
【表3】
JP0004900690B2_000004t.gif

【実施例4】
【0032】
図8に実施例1で作製した水酸アパタイト薄膜を有す金基板をバイオセンサーとして用いた場合のタンパク質吸着挙動を示す。22℃に保持した温度条件下で、基板表面を1mg/mlのヒト血清アルブミン溶液(pI4.7、MW69kDa、10mMのリン酸緩衝溶液)で満たした場合の振動数を測定した。アルブミン溶液浸漬後、振動数が急激に減少した。この曲線は、アルブミン分子の水酸アパタイト表面に対する吸着挙動を示しており、実施例1の水酸アパタイト薄膜を有す金基板が、タンパク質吸着挙動測定として利用できることが確認された。
【実施例5】
【0033】
図9に実施例1で作製した水酸アパタイト薄膜を有す金基板をバイオセンサーとして用いた場合のイオン強度変化に対するタンパク質の吸着挙動を示す。22℃に保持した温度条件下で、基板表面を濃度の異なるリン酸緩衝液(10~200mM)を用いて調整された1mg/mlのフィブリノーゲン溶液に浸漬させ、フィブリノーゲンの吸着に伴って発生する振動数の減少を測定した。その結果、リン酸イオンの増加と伴に水酸アパタイトに対するフィブリノーゲンの吸着量が減少していることがわかった。これは、水酸アパタイトのタンパク質吸着量がリン酸イオン濃度に依存していることを示している。
[比較例1]
【0034】
図10に実施例4の比較例として、イオン強度変化に対する金表面へのフィブリノーゲン吸着量の測定結果を示す。実施例4の結果と比較すると、水酸アパタイト薄膜を有する基板がリン酸イオン濃度に強く依存していることがわかる。この現象は、水酸アパタイトのタンパク質吸着における顕著な特徴であり他の基板では観察されないため、実施例1で作製された基板が、水酸アパタイト薄膜を有すことを示している。上述したように本方法により作製したバイオセンサー構成体は生体内を模倣した環境下におけるタンパク質吸着挙動解析に有用であることが示された。さらに以下に各種タンパク質に対する有効性を示す。用いたタンパク質は酸性タンパク質(人血清アルブミン、カタラーゼ)、中性タンパク質(ヘモグロビン、免疫グロブリン)、塩基性タンパク質(シトクロームc、リゾチーム)に分類される。測定には、Q-Sense D300(Q-Sense AB,イエテボリ、スウェーデン)を用いた。
【実施例6】
【0035】
実施例2で作製した水酸アパタイト薄膜(21℃で合成した結晶)を有する金基盤をバイオセンサー(100Vで電気泳動体積させたセンター)として用いた場合のタンパク質の吸着挙動を示す。22℃で保持した温度条件で、基盤表面を0.1、0.5と1.0mg/mlのヒト血清アルブミン溶液(pI4.7、10mMのリン酸緩衝溶液)で満たした場合の振動数と消散値(D値)を測定した。その結果を図11に示す。初期タンパク質濃度により周波数の減少が増大し、それと共に消散値の増加が生じた。このことは、ヒト血清アルブミン分子が水酸アパタイト薄膜に吸着し、吸着層の粘弾性特性を変化させたことを示している。
【実施例7】
【0036】
実施例2で作製した水酸アパタイト薄膜(21℃で合成した結晶)を有する金基盤をバイオセンサー(100Vで電気泳動体積させたセンター)として用いた場合のタンパク質の吸着挙動を示す。22℃で保持した温度条件で、基盤表面を0.1,0.5,1.0mg/mlのカタラーゼ溶液(pI5.5、MW240kDa、10mMのリン酸緩衝溶液)で満たした場合の振動数と消散値(D値)を測定した。その結果を図12に示す。初期タンパク質濃度により周波数の減少が増大し、それと共に消散値の増加が生じた。このことは、カタラーゼ分子が水酸アパタイト薄膜に吸着し、吸着層の粘弾性特性を変化させたことを示している。
【実施例8】
【0037】
実施例2で作製した水酸アパタイト薄膜(21℃で合成した結晶)を有する金基盤をバイオセンサー(100Vで電気泳動体積させたセンター)として用いた場合のタンパク質の吸着挙動を示す。22℃で保持した温度条件で、基盤表面を0.1,0.5,1.0mg/mlの免疫グロブリン溶液(pI5.8—7.4、10mMのリン酸緩衝溶液)で満たした場合の振動数と消散値(D値)を測定した。その結果を図13に示す。初期タンパク質濃度により周波数の減少が増大し、それと共に消散値の増加が生じた。このことは、免疫グロブリン分子が水酸アパタイト薄膜に吸着し、吸着層の粘弾性特性を変化させたことを示している。
【実施例9】
【0038】
実施例2で作製した水酸アパタイト薄膜(21℃で合成した結晶)を有する金基盤をバイオセンサー(100Vで電気泳動体積させたセンター)として用いた場合のタンパク質の吸着挙動を示す。22℃で保持した温度条件で、基盤表面を0.1,0.5,1.0mg/mlのヘモグロビン溶液(pI6.9、10mMのリン酸緩衝溶液)で満たした場合の振動数と消散値(D値)を測定した。その結果を図14に示す。初期タンパク質濃度により周波数の減少が増大し、それと共に消散値の増加が生じた。このことは、ヘモグロビン分子が水酸アパタイト薄膜に吸着し、吸着層の粘弾性特性を変化させたことを示している。
【実施例10】
【0039】
実施例2で作製した水酸アパタイト薄膜(21℃で合成した結晶)を有する金基盤をバイオセンサー(100Vで電気泳動体積させたセンター)として用いた場合のタンパク質の吸着挙動を示す。22℃で保持した温度条件で、基盤表面を0.1,0.5,1.0mg/mlのシトクロームc溶液(pI9.8、10mMのリン酸緩衝溶液)で満たした場合の振動数と消散値(D値)を測定した。その結果を図15に示す。初期タンパク質濃度により周波数の減少が増大し、それと共に消散値の増加が生じた。このことは、シトクロームc分子が水酸アパタイト薄膜に吸着し、吸着層の粘弾性特性を変化させたことを示している。
【実施例11】
【0040】
実施例2で作製した水酸アパタイト薄膜(21℃で合成した結晶)を有する金基盤をバイオセンサー(100Vで電気泳動体積させたセンター)として用いた場合のタンパク質の吸着挙動を示す。22℃で保持した温度条件で、基盤表面を0.1,0.5,1.0mg/mlのリゾチーム溶液(pI11.1、10mMのリン酸緩衝溶液)で満たした場合の振動数と消散値(D値)を測定した。その結果を図16に示す。初期タンパク質濃度により周波数の減少が増大し、それと共に消散値の増加が生じた。このことは、リゾチーム分子が水酸アパタイト薄膜に吸着し、吸着層の粘弾性特性を変化させたことを示している。
【実施例12】
【0041】
実施例6から11にて行った各種タンパク質の周波数変化(Δf値)及び消散値変化(ΔD値)をそれぞれでプロットした図を17に示す。酸性タンパク質では周波数変化(重量増加)に伴って消散値が直線的に変化することが明らかであった。一方、中性・塩基性タンパク質では図に示すように周波数の増加に伴い傾きの異なる直線が描けることが分かった。この傾きの違いは、タンパク質が吸着する過程で明確に吸着層の粘弾性特性が変化していることを意味している。傾きが大きいほど柔らかい吸着層が形成されていることが分かる。この原因としては、タンパク質の密度変化に伴う、吸着形態の変化などが考えられる。また、中性タンパク質と塩基性タンパク質では明らかに消散値の大きさが異なることが分かるが、これは吸着タンパク質の量にも依存している。
【実施例13】
【0042】
実施例2で作製した水酸アパタイト薄膜(4℃、21℃、80℃で合成した結晶)を有する金基盤をバイオセンサー(100Vで電気泳動体積させたセンター)として用いた場合のタンパク質の吸着挙動を示す。22℃で保持した温度条件で、それぞれの基盤表面を1.0mg/mlのヒト血清アルブミン溶液(pI4.7、分子量69,000、10mMのリン酸緩衝溶液)及び1.0mg/mlのフィブリノーゲン(pi5.8、分子量340,000、10mMのリン酸緩衝溶液)で満たした場合の振動数と消散値(D値)を測定した。その結果を図18、19に示す。初期タンパク質濃度により周波数の減少が増大し、それと共に消散値の増加が生じた。ヒト血清アルブミン分子では合成温度により吸着量(周波数変化に違いが観測されたが、フィブリノーゲンでは吸着量に違いが観測されなかった。これは、蛋白質の分子量(大きさ)による依存すると考えられる。また、ヒト血清アルブミンでは、周波数変化(Δf値)と消散値変化(ΔD値)から算出される傾きには違いが見られなかった。このことは結晶性の異なる粒子表面に対して同じ粘弾性層が形成されていることを示す。

【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】水酸アパタイトナノ結晶のX線回折パターン図
【図2】電気泳動堆積法の模式図
【図3】最適なコーティング条件の決定に係わるAFM像
【図4】高感度フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR-RAS)分析スペクトル図
【図5】水酸アパタイト薄膜のAFM像と厚さ測定図
【図6】各温度で合成した水酸アパタイトナノ結晶のX線回折パターン図
【図7】結晶サイズの異なる水酸アパタイトナノ結晶を用いた薄膜コーティングのAFM像
【図8】アルブミンの水酸アパタイトに対する吸着挙動図
【図9】リン酸濃度変化に伴う、水酸アパタイトに対する吸着挙動の変化図
【図10】リン酸濃度変化に伴う、金表面に対する吸着挙動の変化図
【図11】血清アルブミン分子の吸着挙動:周波数変化(Δf値)と消散値変化(ΔD値)の時間プロット
【図12】カタラーゼ分子の吸着挙動:周波数変化(Δf値)と消散値変化(ΔD値)の時間プロット
【図13】免疫グロブリン分子の吸着挙動:周波数変化(Δf値)と消散値変化(ΔD値)の時間プロット
【図14】ヘモグロビン分子の吸着挙動:周波数変化(Δf値)と消散値変化(ΔD値)の時間プロット
【図15】シトクロームc分子の吸着挙動:周波数変化(Δf値)と消散値変化(ΔD値)の時間プロット
【図16】リゾチーム分子の吸着挙動:周波数変化(Δf値)と消散値変化(ΔD値)の時間プロット
【図17】各種タンパク質の周波数変化(Δf値)と消散値変化(ΔD値)のプロット
【図18】結晶性の異なるアパタイト粒子を用いたヒト血清アルブミンの吸着挙動を示すグラフ(周波数変化(Δf値)と消散値変化(ΔD値)の時間プロット)
【図19】結晶性の異なるアパタイト粒子を用いたフィブリノーゲンの吸着挙動を示すグラフ(周波数変化(Δf値)と消散値変化(ΔD値)の時間プロット)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18