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明細書 :鋳物用アルミニウム合金

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4551995号 (P4551995)
公開番号 特開2007-239102 (P2007-239102A)
登録日 平成22年7月23日(2010.7.23)
発行日 平成22年9月29日(2010.9.29)
公開日 平成19年9月20日(2007.9.20)
発明の名称または考案の名称 鋳物用アルミニウム合金
国際特許分類 B22D  27/08        (2006.01)
B22D  21/04        (2006.01)
C22C  21/00        (2006.01)
C22F   1/04        (2006.01)
C22F   1/00        (2006.01)
FI B22D 27/08
B22D 21/04 A
C22C 21/00 M
C22F 1/04 F
C22F 1/00 611
C22F 1/00 630D
C22F 1/00 631A
C22F 1/00 650A
C22F 1/00 651B
C22F 1/00 681
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願2007-058303 (P2007-058303)
分割の表示 特願2002-379104 (P2002-379104)の分割、【原出願日】平成14年12月27日(2002.12.27)
出願日 平成19年3月8日(2007.3.8)
審査請求日 平成19年3月22日(2007.3.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】大澤 嘉昭
【氏名】高森 晋
【氏名】皆川 和己
【氏名】垣澤 英樹
【氏名】梅澤 修
【氏名】原田 幸明
審査官 【審査官】池ノ谷 秀行
参考文献・文献 特開平06-212320(JP,A)
特開2000-246415(JP,A)
特開平07-278692(JP,A)
特開平11-246953(JP,A)
調査した分野 B22D 27/08
B22D 21/04
特許請求の範囲 【請求項1】
アルミニウム合金スクラップを原料とし、Feを2mass%以上20mass%以下、又はFeを2mass%以上20mass%以下、Siを4mass%以上30mass%以下を含む鋳物用アルミニウム合金であって、その初晶のFe-Al系金属間化合物の粒径が10~80μmの多角形の微細粒状であることを特徴とする鋳物用アルミニウム合金
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、鉄を含む鋳物用アルミニウム合金とその凝固結晶組織を制御して行う製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳物用アルミニウム合金に少量の鉄を添加することによって、鋳物用アルミニウム合金の高温強度性が改善されることはよく知られている。そして、この方法を利用して鋳物用アルミニウム合金から高温での強度性を必要とする、シリンダブロックやアルミニウム系ダイキャスト等を成形することも知られている。
【0003】
しかしながら、鉄が鋳物用アルミニウム合金に不純物として混入されている場合には、その鉄を除去することが難しいだけでなく鋳物用アルミニウム合金が凝固する場合に、針状の金属間化合物(
主にAl3Fe)が初晶として生成される。
【0004】
また、鋳物用Al-Si-Fe合金の製造方法においても、凝固時に針状の金属間化合物(主にAl3Fe)の初晶が発生することは不可避であるとされている。
【0005】
そして、このように生成される針状の金属間化合物の初晶は、硬度が高く切り欠き効果があるため、圧延成形や押し出し成形等の二次加工をする場合に大きな障害になるとされている。
【0006】
このような成形不良を防ぐために、従来はアルミニウム材の中に鉄(Fe)が1wt%を超えるような場合には、そのアルミニウム材を廃棄するか大量の純アルミニウムインゴットで薄めて再生する等の方法が主に採用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような方法は貴重な資源を無駄にすることになるため、成形時に粗大な初晶が破壊されても鋭利な劈開面のエッジが生じないように、リン(P)やジルコニウム(Zr)あるいはバナジウム(V)等の微細化剤を添加して初晶を約40μm程度にしたり、これにクロム(Cr)を添加して初晶のケイ素(Si)を均質分散する等の改良法が提案されている。ところが、鋳物用アルミニウム合金に、このような第3元素を混入することは鋳物用アルミニウム合金を再利用(リサイクル化)する場合に不純物として残るという問題が生じる。
【0008】
このような微細化剤を使用しないで初晶を微細粒状化する方法として超音波を利用する方法が開発されている(たとえば、引用文献1および2を参照)。
【0009】
<patcit num="1"><text>特公昭60-48575号公報</text></patcit><patcit num="2"><text>特開平07-278692号公報 しかしながら、引用文献1 に記載の方法は合金を製造するために超音波を利用するものであり本願発明のように初晶を微細粒状化するために使用されているわけではない。また、引用文献2に記載の発明は粗大なケイ素(Si)からなる針状初晶を微細に粉砕して分散するために超音波振動を利用する方法が記載されている。</text></patcit>
【0010】
しかしながら、引用文献2に記載の方法は、Si量が20~40%と高いAl-Si合金において針状にのびるSiを700~800℃
の溶融状態で超音波振動を付加して微細塊状にした。しかし、ホーン材質の記述はなく、当時一般的には金属ホーンを使用している。金属ホーンは溶融金属からの侵食が激しく、アルミニウム合金にTiのホーンではTiそのものが微細化効果を持つ金属のため超音波振動の効果が疑問である。またTiが添加されることでリサイクルを阻害する。
【0011】
超音波振動は溶融域で温度を保持して付加した場合微細化効果は少ない。凝固時の付加が重要となる。そして、凝固時の初晶の金属間化合物が硬く脆いため加工性を阻害するので微細化が重要となる。この文献では微細粒状化したSiは100~300μmと粗大であり、凝固時の付加では30μmと微細化が可能となる。
【0012】
この出願の発明は、以上のとおりの従来技術の限界と問題点を解消して、高濃度のFeを含有した鋳物用アルミニウム合金を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この出願の発明は、上記の課題を解決するためのものとして、発明1の鋳物用アルミニウム合金は、Feを2mass%以上20mass%以下、又はFeを2mass%以上20mass%以下、Siを4mass%以上30mass%以下含まれている鋳物用アルミニウム合金であって、その初晶のFe-Al系金属間化合物の粒径が10~80μmの多角形の微細粒状であることを特徴とする
【発明の効果】
【0014】
発明1は、従来は使用不能とされていた高濃度のFeを含む鋳物用アルミニウム合金の高温強度性、耐磨耗性および摺動特性等の機能性をダイキャスト(die casting)、シリンダブロック、コンロッド(連結棒)や蒸気タービンブレードへの適応を可能とした
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつ鋳物用アルミニウム合金の凝固結晶組織を制御する方法およびその装置を提供するものであるが、以下にその実施の形態について詳しく説明する。
【0016】
この出願の発明は、主として二次加工を伴う成型品に割れを生じさせる金属間化合物(A
l3Fe)の初晶を生成する鋳物用アルミニウム合金に超音波振動を付与することによって初晶を微細粒状化することにある。
【0017】
このように初晶を微細粒状化することは、加工時に初晶が破壊されることによって生ずる鋭利な劈開面を有するエッジの発生が抑制されて加工性を向上するだけでなく、エッジへの応力集中が抑制されるので成型品の高温強度性、耐磨耗性および摺動特性等が改良されて鋳物用アルミニウム合金の用途を拡大するものである。
【0018】
この出願の発明は加熱溶解した鉄などの不純物を含む鋳物用アルミニウム合金の溶湯へ超音波振動を直接付与することによって、金属間化合物(主にAl3Fe)初晶を微細粒状化する点に特徴を有するものである。
【0019】
この出願の発明は鋳物用アルミニウム合金に超音波振動を与えるための超音波振動ホーン(
horn)を溶融金属中に挿入して超音波振動を直接付加することが重要である。このため超音波振動ホーン(horn)が金属製の場合には、溶融金属に侵食されるため超音波振動ホーンの表面をセラミックコーティングすることが必要になる。また、超音波振動ホーン(horn)自体をセラミックで作製する場合には金属溶湯、すなわち鋳物用アルミニウム合金の溶湯と反応せず、高温強度に優れ、しかも耐熱衝撃性の高い、サイアロンセラミック(Si3N4+Al2O3)や窒化珪素セラミック(Si3N4)等を使用することが好ましい。
【0020】
この出願の発明は溶融している鋳物用アルミニウム合金が凝固する時に超音波振動を直接付与することによって、金属間化合物(主にAl3Fe)の初晶を粒径数10μm程度の多角形の塊状にするものであるが、超音波振動は結晶が凝固し始める凝固初期の核生成時に液相線を中心に付与することによって初晶は充分に微細粒状化される。このため、結晶が完全凝固終了する固相線まで超音波振動を付与する必要はない。
【0021】
この出願の発明において対象となる鋳物用アルミニウム合金としては、スクラップ材(リサイクル用成形材)のように不純物の鉄(Fe)が多量に含有される鋳物用アルミニウム合金になる。たとえば、鋳物用Al-Fe系合金(Fe量が2~20mass
含有)または鋳物用Al-Si-Fe系合金(Si量が4~30mass%、Fe量が2~20mass%含有)等のアルミニウム系鋳造合金等である。もちろん、鋳物用アルミニウム合金のスクラップ材(リサイクル用成形材)は、鉄(Fe)以外にも銅(Cu),マグネシウム(Mg),ニッケル(N
i)等の不純物が混入されており、このような不純物を含有した鋳物用アルミニウム合金の凝固結晶組織を制御する方法に適用できることはいうまでもない。
【実施例】
【0022】
鋳物用Al-Si-Fe系合金(Siを6mass%、Feを2~5mass%含有した合金)を作製した。
【0023】
工業用純アルミニウム、Al-25mass%Si合金、Al-50mass%Fe合金を使用して電気炉中で400gを内径40mm、高さ90mmのアルミナるつぼ(3)内で750℃
で溶解した。このアルミナるつぼ(3)を超音波発振器、振動子、2段の水冷ブースタ(1)、超音波振動ホーン(2)、振幅測定器、温度測定用熱電対(4)を持つ温度計測器および水冷銅板から構成されている超音波凝固組織制御装置にセットして超音波振動を付加した。
【0024】
この装置の超音波振動は、電歪型振動子が高周波電流で振動するものであり、この振動を拡大器で増幅した後、ブースタ(1)および超音波振動ホーン(2)へ伝達するため超音波振動ホーン(2)は縦振動する構造になっている。
【0025】
超音波振動ホーン(2)は高温溶湯へ直接挿入するためファインセラミックのサイアロンを選定した。このサイアロンからなる超音波振動ホーン(2)はストレート形で直径20m
mのものを使用した。
【0026】
図1に超音波振動ホーンと鋳型の位置関係を示す。超音波振動ホーン(2)をアルミナるつぼ(3)内の溶融金属の表面から10mmの深さに挿入し、振動が付加されている溶融金属の温度を温度測定用熱電対(4)で測定しながら、所定の温度に達した時に超音波振動ホーン(2)を引き抜いた。
【0027】
振動を付加する時の温度は液相線温度を中心として完全凝固までが望ましく、本実施例では700℃から完全凝固の直前である600℃の範囲で行った。
【0028】
図2および図3は鋳物用Al-6mass%Si-5mass%Fe合金の超音波振動処理の有無による組織の変化を示した拡大写真である。
【0029】
一般に、鋳物用Al-Si系合金に鉄が1.5mass% 以上混入されると初晶の粗大な針状Al3Feが発生するとされているが、図2は超音波振動処理をしない時の写真であり、図3は超音波振動を付与した時の写真である。図3の写真から明らかなように初晶のAl3F
eは微細粒状になっており、10~100μmに微細化されたAl3Feが均一に分散されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明による、高温強度、耐磨耗性および摺動特性等の高機能性が要求されるシリンダブロック、コンロッド(連結棒)や蒸気タービンブレード等の成形材料に改質する方法およびその装置等に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】凝固時の組織制御のための超音波振動付加装置である。
【図2】鋳物用Al-6mass%Si-5mass%Fe合金の凝固時に組織制御のため超音波振動付与しない場合の粗大な初晶針状Al3Feが晶出している組織を示す。
【図3】鋳物用Al-6mass%Si-5mass%Fe合金の凝固時に組織制御のため超音波振動付加した場合の初晶のAl3Feが微細粒状化している組織を示す。
【符号の説明】
【0032】
1 ブースタ
2 超音波振動ホーン
3 アルミナるつぼ
4 温度測定用熱電対
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2