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明細書 :重力負荷運動装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4802336号 (P4802336)
公開番号 特開2008-237785 (P2008-237785A)
登録日 平成23年8月19日(2011.8.19)
発行日 平成23年10月26日(2011.10.26)
公開日 平成20年10月9日(2008.10.9)
発明の名称または考案の名称 重力負荷運動装置
国際特許分類 A61H   1/02        (2006.01)
A63B  23/04        (2006.01)
A63B  21/06        (2006.01)
FI A61H 1/02 R
A63B 23/04 Z
A63B 21/06
請求項の数または発明の数 6
全頁数 14
出願番号 特願2007-086143 (P2007-086143)
出願日 平成19年3月29日(2007.3.29)
審査請求日 平成21年2月6日(2009.2.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505425328
【氏名又は名称】国立大学法人鹿屋体育大学
発明者または考案者 【氏名】図子 浩二
個別代理人の代理人 【識別番号】100133271、【弁理士】、【氏名又は名称】東 和博
審査官 【審査官】永冨 宏之
参考文献・文献 特公昭61-008691(JP,B1)
米国特許第06932745(US,B1)
実開平06-057342(JP,U)
実公昭61-010684(JP,Y1)
米国特許第04915378(US,A)
米国特許第03572701(US,A)
特開2003-062020(JP,A)
米国特許出願公開第2003/0120186(US,A1)
実公昭44-26517(JP,Y2)
調査した分野 A61H 1/02
A63B 23/04
特許請求の範囲 【請求項1】
床面に対し傾斜姿勢で支持される傾斜ガイド部材と、
傾斜ガイド部材の長さ方向に沿ってスライド可能で、運動者の臀部が固定状態に載置される椅子部と、傾斜ガイド部材の長さ方向に沿ってスライド可能で、運動者の足部が固定される足部固定部と、足部固定部を傾斜ガイド部材に沿って往復直線運動させ、重力負荷状態下で運動者の下肢を屈伸動作させる動力部と、椅子部に重りを付加し、椅子部に固定状態の運動者の下肢に掛かる重力負荷を変更する重力負荷変更手段を備え、
運動者の体重と重りの全てがかかる足部固定部を動力部により往復直線運動させるとともに、運動者の臀部が固定状態に載置された椅子部を従動させながら、運動者の下肢を強制的に屈伸動作させることを特徴とする重力負荷運動装置。
【請求項2】
重力負荷変更手段は、床面に対する傾斜ガイド部材の傾斜角度を調整する手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1記載の重力負荷運動装置。
【請求項3】
椅子部は、車輪を介して傾斜ガイド部材の長さ方向に沿ってスライド可能なスライダーを有し、このスライダーの上面に臀部が載置される座椅子が固定される構成であることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の重力負荷運動装置。
【請求項4】
座椅子は、座部に対し背もたれ部が着脱可能とされ、背もたれ部を外して、座部に対し背中を表にしてうつ伏せ姿勢が可能とされ、うつ伏せ姿勢の状態で、下肢を屈伸動作させることを特徴とする、請求項3記載の重力負荷運動装置。
【請求項5】
足部固定部は、車輪を介して傾斜ガイド部材の長さ方向に沿ってスライド可能な足部固定板を有し、椅子部に臀部が載置された姿勢で、足部固定板に足部が固定される構成であることを特徴とする、請求項1ないし請求項4記載の重力負荷運動装置。
【請求項6】
左右の各足部に対応して、足部固定部が左右独立して設けられ、動力部が各々の足部固定部を傾斜ガイド部材に沿って独立して往復直線運動させる構成であることを特徴とする、請求項1ないし請求項5記載の重力負荷運動装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、重力を利用した負荷を下肢に掛けながら、受動的に下肢の運動を行える、重力負荷運動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の筋力トレーニング機器、例えば下肢の筋力トレーニング機器は、機器使用者自らが下肢の筋力を発揮させて負荷重量物を動かすことで負荷が作られていた。また、努力度合いが比較的大きい運動でもあった。これに対し、実際の重力環境下に生きる人間の歩行運動では、下肢の筋力は重量に抗するように受動的に発揮させられている。従来の機器には、そのような実際の歩行における負荷に類似した負荷を下肢に掛けながら、筋力トレーニングを行うものはなかった。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、ベースと、ベースに回動可能に連結されたリンク体と、リンク体に回動可能に連結された下腿部保持部と、リンク体および下腿部保持部を屈伸させる駆動手段とを備える装置であって、ベース上に臀部を載せ、下腿保持部上に下腿部を載せた状態で、駆動手段の駆動により、股関節および膝関節を持続的に屈伸させるようにした運動装置が開示されている。
【0004】

【特許文献1】WO2006/040861A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の運動装置は、下肢に対し、単に、駆動手段により屈伸動作させる運動を与えるに過ぎず、実際の歩行中の筋力の発揮の仕方に類似する筋力を発揮させるような運動は行えず、したがって、より実際的な筋力トレーニング機器としては、不十分なものであった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、実際の歩行における負荷に類似した負荷、すなわち重力を利用した高い負荷を下肢に掛けながら、実際の歩行中の筋力の発揮の仕方に類似する筋力を受動的に下肢に発揮させて運動を行えるようにした、重力負荷運動装置を提供することを目的とする。
【0007】
また、上記した重力を利用した負荷を、少ない努力度合いで下肢に掛けながら、下肢の運動を行える、重力負荷運動装置を提供することを目的とする。
【0008】
さらには、座っているだけで、安全に、歩行と同様の負荷を下肢に掛けることができ、高齢者等が安全に下肢の運動を行える、重量負荷運動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載の重力負荷運動装置は、
床面に対し傾斜姿勢で支持される傾斜ガイド部材と、傾斜ガイド部材の長さ方向に沿ってスライド可能で、運動者の臀部が固定状態に載置される椅子部と、傾斜ガイド部材の長さ方向に沿ってスライド可能で、運動者の足部が固定される足部固定部と、足部固定部を傾斜ガイド部材に沿って往復直線運動させ、重力負荷状態下で運動者の下肢を屈伸動作させる動力部と、椅子部に重りを付加し、椅子部に固定状態の運動者の下肢に掛かる重力負荷を変更する重力負荷変更手段を備え、
運動者の体重と重りの全てがかかる足部固定部を動力部により往復直線運動させるとともに、運動者の臀部が固定状態に載置された椅子部を従動させながら、運動者の下肢を強制的に屈伸動作させることを特徴とする。
【0010】
請求項1記載の重力負荷運動装置によると、運動者が傾斜ガイド部材上のスライド自在で重りが付加された椅子部に固定状態に着座した姿勢で、足部を固定した足部固定部を傾斜ガイド部材に沿って往復直線運動させると、運動者の体重と重りの全てがかかった重力を利用した高い負荷が下肢に掛かった状態で、足部固定部の往復直線運動に合わせて下肢の股、膝、足首の各関節が受動的(強制的)に屈伸動作させられ、各関節の屈伸動作に対して下肢の筋・腱連合体の伸縮運動が受動的に行なわれる。
また、椅子部に重りを付加することにより、重力負荷のレベルを高齢者等の運動者の歩行能力や筋力のレベルに合わせ、あるいは運動者の運動プログラムに合わせる、最適な筋力トレーニングを行うことができる。
さらに、椅子部に重りを付加し、椅子部に固定状態の運動者の下肢に掛かる重力負荷を変更する重力負荷変更手段を備えることにより、簡単な構成により、重力負荷のレベルを変更することができる。重りは、例えばダンベルの枚数を変更することにより、重力負荷のレベルを変更することができる。
【0011】
運動者は椅子部に着座した安定した姿勢で、重力を利用した負荷を下肢に掛けることができるから、少ない努力度合いで、重力を利用した高い負荷を下肢に掛けながら、実際の歩行中の筋力の発揮の仕方に類似する高い筋力を下肢に発揮させて運動を行える。しかも、運動を安全に行える。なお、上記した筋・腱連合体には、筋・腱の動作に関わる神経系統も含まれる。
【0012】
本発明に係る請求項2記載の重力負荷運動装置は、重力負荷変更手段が、面に対する傾斜ガイド部材の傾斜角度を調整する手段をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の重力負荷運動装置によると、簡単な構成により、重力負荷のレベルを変更することができる。
【0018】
本発明に係る請求項記載の重力負荷運動装置は、椅子部が、車輪を介して傾斜ガイド部材の長さ方向に沿ってスライド可能なスライダーを有し、このスライダーの上面に臀部が載置される座椅子が固定される構成であることを特徴とする。
【0019】
請求項記載の重力負荷運動装置によると、傾斜ガイド部材に対し、椅子部を安定支持しつつ、スムーズにスライドさせることができる。
【0020】
本発明に係る請求項記載の重力負荷運動装置は、座椅子が、座部に対し背もたれ部が着脱可能とされ、背もたれ部を外して、座部に対し背中を表にしてうつ伏せ姿勢が可能とされ、うつ伏せ姿勢の状態で、下肢を屈伸動作させることを特徴とする。
【0021】
請求項記載の重力負荷運動装置によると、座椅子に着座した姿勢だけでなく、座部に対し背中を表にしてうつ伏せした姿勢で、下肢の筋・腱連合体を受動的に伸縮運動させることができ、様々なバリエーションの筋力トレーニングを行うことができる。
【0022】
本発明に係る請求項記載の重力負荷運動装置は、足部固定部が、車輪を介して傾斜ガイド部材の長さ方向に沿ってスライド可能な足部固定板を有し、椅子部に臀部が載置された姿勢で、足部固定板に足部が固定される構成であることを特徴とする。
【0023】
請求項記載の重力負荷運動装置によると、傾斜ガイド部材に対し、足部固定部を安定支持しながら、スムーズに往復移動させることができる。これにより、下肢の運動、すなわち下肢の筋・腱連合体の伸縮運動をスムーズに行なわせることができる。
【0024】
本発明に係る請求項記載の重力負荷運動装置は、左右の各足部に対応して、足部固定部が左右独立して設けられ、動力部が各々の足部固定部を傾斜ガイド部材に沿って独立して往復直線運動させる構成であることを特徴とする。
【0025】
請求項記載の重力負荷運動装置によると、左右の各足部に対応して、足部固定部を左右独立して設け、動力部を各々の足部固定部を傾斜ガイド部材に沿って独立して往復直線運動させる構成とすることにより、下肢を左右交互に屈伸動作させて、下肢の左右の筋・腱連合体の伸縮運動を交互に独立して行なわせることができる。これによって、実際の歩行運動により近付いた形での、より実際的な下肢の筋力トレーニングを行なわせることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明に係る重力負荷運動装置は、床面に対し傾斜姿勢で支持される傾斜ガイド部材と、傾斜ガイド部材の長さ方向に沿ってスライド可能で、運動者の臀部が固定状態に載置される椅子部と、傾斜ガイド部材の長さ方向に沿ってスライド可能で、運動者の足部が固定される足部固定部と、足部固定部を傾斜ガイド部材に沿って往復直線運動させ、重力負荷状態下で運動者の下肢を屈伸動作させる動力部と、椅子部に重りを付加し、椅子部に固定状態の運動者の下肢に掛かる重力負荷を変更する重力負荷変更手段を備え、運動者の体重と重りの全てがかかる足部固定部を動力部により往復直線運動させるとともに、運動者の臀部が固定状態に載置された椅子部を従動させながら、運動者の下肢を強制的に屈伸動作させる構成としたから、重りを付加した椅子に着座した楽な姿勢によって、少ない努力度合いで、重力を利用した高い負荷を下肢に掛けながら、実際の歩行中の筋力の発揮の仕方に類似する筋力を受動的に下肢に発揮させて運動を行えるという、優れた効果を奏する。これによって、実際の歩行運動に類似する形での下肢の筋力トレーニングを効率良く行えるという優れた効果を奏する。
【0027】
また、実際の歩行運動訓練では転倒のおそれのある高齢者や患者が、椅子部に座っているだけで、安全に、実際の歩行と同様の負荷を下肢に掛けることができ、高齢者や患者が安全に下肢の筋力トレーニングや運動プログラムを実施でき、それによって、高齢者等が安全に自立歩行できるレベルまで容易に到達させることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に本発明に係る重力負荷運動装置の最良の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は本発明に係る重力負荷運動装置を示す側面図である。
【0029】
本発明に係る重力負荷運動装置は、傾斜ガイド部材10、椅子部20、足部固定部30、動力部40から基本構成されている。
【0030】
傾斜ガイド部材10は、鋼管製の長尺な角パイプ材からなるもので、図1ないし図3に示すように、床面60上に対し前方が下向きとなるように傾斜した姿勢で支持されている。すなわち、床面60上には傾斜ガイド部材10の前端部10aを支持するための横長のベース11が設置されており、このベース11の上面に取付けられた軸受12に対し、傾斜ガイド部材10の前端部10aが、回動自在な回動軸13を介して、回動可能に連結支持されている。一方、床面上のベース11と反対側には、傾斜ガイド部材10の後端部10b側を支持するための横長のベース14が設置されている。ベース14の上面には支柱15が立設され、支柱15の内面上部には左右一対の固定板16,16が取付けられている。固定板16には、傾斜ガイド部材10の後端部10b側の下面に固定された垂下部材17が固定ボルト50によって固定されている。これにより、床面上のベース14上に立設された支柱15に対して、傾斜ガイド部材10の後端部10bが、垂下部材17を介して、連結支持されている。
【0031】
垂下部材17は、図1に示すように、回動軸13を半径中心として、傾斜ガイド部材10の下面から床面60に向かって円弧状に延びている。この垂下部材17には、円弧状の軸線に沿って、複数(図示例では5箇所)の貫通穴18A,18B,18C・・・が等間隔(間隔P)に設けられている。一方、支柱15側の固定板16にも、円弧状の軸線に沿って、複数(図示例では2箇所)の貫通穴(図示せず)が等間隔(間隔P)に設けられている。固定板16の貫通穴から垂下部材17のいずれかの貫通穴18A,18B・・・に固定ボルト50を挿通して締結することにより、垂下部材17を固定板16に対し固定するようになっている。
【0032】
傾斜ガイド部材10は、床面60に対する傾斜角度αを変更できるようになっている。図1の例は、傾斜ガイド部材10の傾斜角度が40度に設定されており、このときの垂下部材17に対しては下から1番目の貫通穴18Aと下から2番目の貫通穴18Bの1組に対し2本の固定ボルト50が挿通されている。これを、例えば、図1の一点鎖線で示す傾斜角度25度に変更するには、2本の固定ボルト50を外して、傾斜ガイド部材10を図1の時計回りに回動させ、垂下部材17の下から4番目の貫通穴18Dと下から5番目の貫通穴18Eの1組に対し固定ボルト50を挿通し締結する。
【0033】
傾斜ガイド部材10は、図示例の場合、25度から40度の間で5度ずつ傾斜角度を段階的に変更することができるが、0度から90度まで変更できることはいうまでもない。なお、貫通穴を円弧状の軸線に沿って延在させ、所定の角度範囲内で無段階的に変更することもできる。このようにして、傾斜ガイド部材10の傾斜角度を段階的又は無段階的に変更することにより、椅子部20に着座した運動者の下肢に掛かる重力負荷を段階的又は無段階的に変更することができる。
【0034】
前方のベース11および後方のベース14には、それぞれ取付部材51を介して、左右一対の自由車輪52,52が装備されている。各自由車輪52はねじ込み式の軸部53により取付部材51から吊り下げられており、各ベース11、14を床面60上に設置する時は、軸部53を一方向に回して、図1に示すように、床面60から各自由車輪52を離間させるようにしている。軸部53を他方向に回し、床面60に対し各自由車輪52を接地させると、装置を移動させることができる。2本の固定ボルト50を外すことで、装置を傾斜ガイド部材10側の本体部分と、支柱15部分に分割し、それぞれ、床面60上を手軽に移動させることができる。
【0035】
なお、後方の支柱15の背面には移動の際に手を添える取っ手57が装備されている。
【0036】
椅子部20は、図1ないし図3に示すように、傾斜ガイド部材10の長さ方向に沿ってスライド可能なスライダー21を有する。このスライダー21の上面には座椅子22が固定されている。この座椅子22は、臀部が後述のベルト28により固定状態に載置される座部23と、着脱可能な背もたれ部24を有し、座部23に対し背もたれ部24の角度が調整可能とされている。スライダー21の底面には、傾斜ガイド部材10の幅方向両側に配置される計一対の垂直部材25,25が固定されている。
【0037】
図4に示すように、それぞれの垂直部材25の内面には、傾斜ガイド部材10上面に接触する前後2個、下面に接触する前後2個、計4個の自由車輪26が回転自在に軸支されている。また、垂直部材25の前後に位置するアタッチメント27の下面には、傾斜ガイド部材10の側面に接触する前後2個の自由車輪26が回転自在に軸支されている。これにより、椅子部20のスライダー21は、前後左右上下の合計12個の自由車輪26を介して傾斜ガイド部材10の上に安定支持されるとともに、自由車輪26を介して傾斜ガイド部材10の長さ方向に円滑にスライド可能とされている。スライダー21には、座部23に臀部を載せた状態で身体の姿勢を安定させるべく着脱式のベルト28が装備されるとともに、着座姿勢で左右の手を掴まらせるための取っ手29,29が側面に取り付けられている。
【0038】
足部固定部30は、図1ないし図3に示すように、椅子部20の前方に位置し、傾斜ガイド部材10の長さ方向に沿ってスライド可能な足部固定板31を有する。この足部固定板31は、椅子部20に臀部が固定状態に載置された姿勢で、足部が固定されるもので、足部固定板31には、足裏を載せる足踏み板32が直角に設けられている。足踏み板32は、足首の関節をよりスムーズに屈曲可能とするために、足部固定板31に対しヒンジを介して角度を変更するようにしてよい。例えば、足部固定板31に対し120度まで開くようにしてよい。足踏み板32には、足部を固定するためのベルト33が装備されている。
【0039】
足部固定板31の底面には、傾斜ガイド部材10の幅方向両側に配置される計一対の垂直部材34,34が固定されている。それぞれの垂直部材34の内側には、前記垂直部材25と同様に、傾斜ガイド部材10上面に接触する前後2個、下面に接触する前後2個、計4個の自由車輪35が回転自在に軸支されている。また、垂直部材34の前後に位置するアタッチメント36の下面には、傾斜ガイド部材10側面に接触する前後2個の自由車輪35が回転自在に軸支されている。これにより、足部固定部30の足部固定板31は、前後左右上下の合計12個の自由車輪35を介して傾斜ガイド部材10上に安定支持されるとともに、自由車輪35を介して傾斜ガイド部材10の長さ方向に沿って円滑にスライド可能とされている。
【0040】
動力部40は、足部固定部30を傾斜ガイド部材10に沿って往復直線運動させて、重力を利用した負荷が下肢の筋・腱連合体に掛かる状態下で、下肢の股、膝、足首の各関節をそれぞれ屈伸動作させて、下肢の筋・腱連合体を受動的に伸縮運動させるためのものである。図1および図4に示すように、傾斜ガイド部材10の底面に動力部40を構成するエアシリンダー41のシリンダー本体42が固定されている。シリンダー本体42内には傾斜ガイド部材10の長さ方向に沿ってロッド43が出没するようになっている。ロッド43の先端43aには連結アタッチメント44が取付けられ、連結アタッチメント44は足部固定部30の垂直部材3,3に連結されている。かかるエアシリンダー41は、ロッド43の伸長・縮小の各動作により、傾斜ガイド部材10に沿って足部固定部30を往復直線運動させることができるようになっている。
【0041】
椅子部20のスライダー21の後方延長部21aの上面後端部(背もたれ部24の後方)には、一対の軸受54,54が取付けられており、この軸受54,54に対して、両端に重り55,55を備えた鉄棒56を着脱可能に支持させることができるようになっている(図9および図10参照)。鉄棒56を着脱可能とするべく、各軸受54には、鉄棒56を軸受54内の収容部54aに出し入れするための開口部54bが後方に向けて設けられている。両端の重り55,55は、ダンベル(図示例では5Kg)の枚数を変更することにより、重量を適宜変更することができるようになっている。かかる重り55,55は、椅子部20に着座した運動者の下肢に掛かる重力負荷を変更する重力負荷変更手段としての機能を有する。
【0042】
スライダー21の後方延長部21aの下面後端部には、図1および図3に示すように、傾斜ガイド部材10の上面に接触する一対の自由車輪57を備える軸受58,58が取付けられている。これにより、重り55,55の負荷をスライダー21に付加した状態でも、スライダー21を傾斜ガイド部材10に沿って円滑にスライドさせることができるようになっている。
【0043】
スライダー21の側面には、着座姿勢で運動者が運動プログラムを設定変更するための、制御板5が取付けられている。制御板5上には、各種操作ボタン59(足部固定部30の往路速度の設定変更用、復路速度の設定変更用、緊急停止用を含む)が設けられている(図10参照)
【0044】
以上のように構成された重力負荷運動装置を用いて、高齢者等の運動者が筋力トレーニングを行う方法について、図5ないし図7を参照して説明する。
【0045】
最初に、運動者の歩行能力や下肢の筋力のレベルに合わせて、傾斜ガイド部材10の傾斜角度を設定する。傾斜ガイド部材10を前端部の回動軸13回りに回動可能として垂下部材17の貫通穴18A~18Eのいずれか隣り合う1組を選択し、2本の固定ボルト50によって垂下部材17を支柱15側の固定板16に固定する。図5の例では、傾斜角度αを40度に設定するべく一番下に位置する貫通穴18A,18Bの1組を選択する。なお、ここでは、重り55,55は事前に外して降ろしておく。
【0046】
次に、傾斜ガイド部材10上の座椅子22の上に着座して座部23上に臀部1を載置し、ベルト28を装着して、座部23上に臀部1を固定状態に載置し、足部固定板31上に足部2を載せてベルト33により足部2を固定する。傾斜角度αに合わせて、背もたれ部24の角度を適宜調整する。図5の状態では、足部固定板31が前方位置にあり、座椅子22上に着座した運動者は自己の下肢の筋力でもって、傾斜ガイド部材10に沿ってスライダー21を後方へ押し上げ、膝関節を多少屈曲させた姿勢を取っている。
【0047】
図7に示すように、運動者の身体には、床面60の鉛直方向に重力Gが掛かるが、この重力Gの分力G1、が負荷として下肢の屈伸方向Aに掛かる(下肢の屈伸方向Aは傾斜ガイド部材10の傾斜方向と一致している)。
【0048】
図5の状態から、図示しない電源を入れて、エアシリンダー41を駆動させ、ロッド43を縮小させると、足部固定板31が傾斜ガイド部材10に沿って後方へ引上げられ、足部固定板31の引上げに伴い、運動者の下肢の股、膝、足首の各関節がそれぞれ受動的(強制的)に屈曲させられる。このとき、下肢の股、膝、足首の各関節回りの筋・腱連合体には、股、膝、足首の各関節の屈曲動作に対して伸長方向への筋力が発揮させられ、図6の状態、すなわち、重力に抗してスライダー21を押し上げて下肢の筋・腱連合体を伸長させる運動(ストレッチング運動)が受動的に行なわれる。
【0049】
次いで、図6の状態から、エアシリンダー41がロッド43を伸長させると、足部固定板31が傾斜ガイド部材10に沿って前方へ移動し、足部固定板31の前方移動に伴い、一時的に運動者の下肢の股、膝、足首の各関節がそれぞれ受動的(強制的)に伸長させられる。このとき、下肢の股、膝、足首の各関節回りの筋・腱連合体には、股、膝、足首の各関節の伸長動作に対して収縮方向への筋力が発揮させられ、下肢の筋・腱連合体を収縮させる運動(ショートニング運動)が受動的に行なわれる。
【0050】
足部固定板31の前方移動に伴い、スライダー21も前方へ移動するが、足部固定板31の停止後はスライダー21に慣性力が働いて、スライダー21がさらに前方へ移動しようとして、運動者の下肢の股、膝、足首の各関節がそれぞれ受動的(強制的)に屈曲させられ、図5に示す姿勢となる。このとき、下肢の股、膝、足首の各関節回りの筋・腱連合体には、股、膝、足首の各関節の屈曲動作に対して伸長方向への強い筋力が発揮させられ、重力負荷に対してスライダー21を停止させて下肢の筋・腱連合体を伸長させる運動(ストレッチング運動)が再び受動的に行なわれる。
【0051】
このように、本重力負荷運動装置を用いると、座椅子22に着座した楽な姿勢によって、少ない努力度合いで重力を利用した高い負荷を下肢に掛けながら、足部固定板31の往復直線運動による下肢の屈伸動作に合わせて、下肢の筋・腱連合体の伸縮運動が受動的に行なわれるようになり、これによって、実際の歩行運動中の筋力の発揮の仕方(重力負荷が歩行中の身体方向に掛かることで、下肢の屈曲時には伸長方向への筋力が働き、下肢の伸長時には収縮方向への筋力が働く)に類似する高い筋力を下肢に発揮させて、少ない度合いで運動を行うことができる。
【0052】
また、本重力負荷運動装置によれば、運動者は座椅子22に座っているだけで、安全に、実際の歩行と同様の負荷を下肢に掛けることができ、高齢者や患者が安心して、下肢の筋力トレーニングや運動プログラムを実施することができ、本装置を用いて、高齢者等が安全に自立歩行できるレベルまで容易に到達させることができる。また、本装置を用いて、高齢者等の自立歩行能力を維持すること、あるいは再建することの助けとなる運動プログラムを実施することができる。
【0053】
図8は、傾斜ガイド部材10の傾斜角度を25度に低く設定した例を示している。傾斜ガイド部材10の傾斜角度を25度から40度まで段階的に大きくしていくことにより、
運動者の下肢に掛かる負荷を徐々に増加させていき、運動者の歩行能力の進展に合わせて、徐々に実際の歩行運動に近付けていくような運動プログラムを実施できる。
【0054】
エアシリンダー41は、その速度、すなわち、ロッド43の縮小速度・伸長速度を低速度から高速度まで段階的に変更して、足部2の往路、復路の直線速度を適宜設定変更することができるし、往路から復路へのリターン時間もゼロから数秒間の間で変更することができる。また、エアシリンダー41の代わりに、動力部40として、油圧シリンダー、電動モーター等を用いることができる。
【0055】
傾斜ガイド部材10は、油圧シリンダー等の動力手段によって、傾斜角度を段階的または無段階的に変更させることができる。例えば、傾斜ガイド部材10と床面60との間に油圧シリンダーを介在させて、同油圧シリンダーで傾斜ガイド部材10を回動軸13回りに所定角度だけ回動させるようにすることができる。あるいは、傾斜ガイド部材10の垂下部材17側にラックレールを取付け、固定板16側にラックレールに噛合うピニオンギアを取り付けて、電動モータでピニオンギアを駆動して、傾斜ガイド部材10を所定角度回動させるようにしてもよい。
【0056】
図9および図10は、重り55を付加した状態下で、下肢の筋力トレーニングをする例を示している。両端に重り55を備えた鉄棒56をスライダー21の後端部の両軸受54,54に支持させることにより、運動者の下肢に掛かる重力負荷をさらに増加させることができる。これにより、高齢者、患者だけでなく、運動競技者の筋力トレーニング機器としても好適である。
【0057】
以上説明した実施形態では、椅子部20に着座した姿勢で、足部固定部30の往復直線運動による下肢の屈伸動作により、下肢の筋・腱連合体の伸縮運動を受動的に行わせる例を説明したが、使用例はこれに限られない。例えば、椅子部20の背もたれ部24を外して、座部23にショルダー保持部を装着し、座部23に対し背中を表にしてうつ伏せした姿勢で、足部を足部固定部30に固定し、かかる姿勢で、下肢を屈伸動作させて、下肢の筋・腱連合体の伸縮運動を受動的に行わせるようにすることもできる。
【0058】
本発明に掛かる重力負荷運動装置は、応用例として、病院や自宅の介護用ベッドへ組み込むことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る重力負荷運動装置は、高齢者等の運動プログラムや介護予防のためのトレーニング機器として利用することが可能である。また、リハビリテーション分野においても利用することが可能である。さらには、運動選手のトレーニング機器としても利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の重力負荷運動装置の側面図である。
【図2】図1に示す重力負荷運動装置を、図1のX方向から見た状態を示す図である。
【図3】図1に示す重力負荷運動装置の背面図である。
【図4】図1に示す重力負荷運動装置のY-Y線矢視断面図である。
【図5】同重力負荷運動装置を用いて筋力トレーニングを実施している様子を示すもので、重力負荷状態下で、下肢の屈曲状態を示す側面図である。
【図6】同重力負荷運動装置を用いて筋力トレーニングを実施している様子を示すもので、重力負荷状態下で、下肢の伸長状態を示す側面図である。
【図7】重力の分力が傾斜ガイド部材に沿って下肢の屈伸方向に掛かる様子を示す説明図である。
【図8】傾斜ガイド部材の傾斜角度を変更する例を示す側面図である。
【図9】スライダーの後部両側に重りを装着した例を示す側面図である。
【図10】スライダーの後部両側に装着した重りを、図9のX方向から見た状態を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 臀部
2 足部
3 大腿部
4 下腿部
10 傾斜ガイド部材
10a 前端部
10b 後端部
11,14 ベース
12,54 軸受
13 回動軸
15 支柱
16 固定板
17 垂下部材
18A,18B,18C,18D,18E 貫通穴
20 椅子部
21 スライダー
21a 後方延長部
22 座椅子
23 座部
24 背もたれ部
25,34 垂直部材
26,35,52,57 自由車輪
27,36 アタッチメント
28,33 ベルト
29,57 取っ手
30 足部固定部
31 足部固定板
32 足踏み板
40 動力部
41 エアシリンダー
42 シリンダー本体
43 ロッド
43a ロッドの先端
44 連結アタッチメント
50 固定ボルト
51 取付部材
53 軸部
54a 軸受の収容部
54b 軸受の開口部
55 重り
56 鉄棒
58 軸受
制御板
59 操作ボタン
60 床面
G 重力
G1 重力の分力
P 隣接する貫通穴の間隔

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9