TOP > 国内特許検索 > 運転操作解析方法、及び、運転操作解析装置、並びに、運動操作解析プログラム > 明細書

明細書 :運転操作解析方法、及び、運転操作解析装置、並びに、運動操作解析プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5317464号 (P5317464)
公開番号 特開2008-152249 (P2008-152249A)
登録日 平成25年7月19日(2013.7.19)
発行日 平成25年10月16日(2013.10.16)
公開日 平成20年7月3日(2008.7.3)
発明の名称または考案の名称 運転操作解析方法、及び、運転操作解析装置、並びに、運動操作解析プログラム
国際特許分類 G09B   9/05        (2006.01)
G09B   9/04        (2006.01)
FI G09B 9/05 Z
G09B 9/04 B
請求項の数または発明の数 15
全頁数 24
出願番号 特願2007-303191 (P2007-303191)
出願日 平成19年11月22日(2007.11.22)
優先権出願番号 2006316064
優先日 平成18年11月22日(2006.11.22)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年11月18日(2010.11.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】綱島 均
【氏名】丸茂 喜高
【氏名】飯塚 秦行
【氏名】小島 崇
個別代理人の代理人 【識別番号】100070150、【弁理士】、【氏名又は名称】伊東 忠彦
審査官 【審査官】櫻井 茂樹
参考文献・文献 特開昭63-288390(JP,A)
特開2001-171388(JP,A)
特開平11-272158(JP,A)
特開昭63-292035(JP,A)
調査した分野 G09B1/00~9/56、17/00~19/26
特許請求の範囲 【請求項1】
運転者による車両の運転操作を、コンピュータにより解析する運転操作解析方法であって、
前記コンピュータは、
現在位置と目標位置までの距離と車両減速度とに基づいて目標速度を算出する目標速度算出手順と、
前記目標速度算出手順で算出された前記目標速度と現在の車両速度との速度偏差を算出する速度偏差算出手順と、
前記運転者による運転操作量を検出する運転操作量検出手順と、
前記速度偏差算出手順で算出された前記速度偏差と前記運転者による運転操作量とに基づいて前記運転者の運転操作を解析する運転操作解析手順とを実行することを特徴とする運転操作解析方法。
【請求項2】
前記目標速度算出手順は、
【数1】
JP0005317464B2_000010t.gif
により目標速度を算出することを特徴とする請求項1記載の運転操作解析方法。
【請求項3】
前記速度偏差算出手順は、
【数2】
JP0005317464B2_000011t.gif
により速度偏差を算出することを特徴とする請求項2記載の運転操作解析方法。
【請求項4】
前記運転操作解析手順は、前記運転操作量と前記速度偏差との関係を状態平面上にプロットし、
前記プロット点が規定領域外のときに、異常状態であると判断することを特徴とする請求項1記載の運転操作解析方法。
【請求項5】
前記運転操作量は、ブレーキノッチの段数であることを特徴とする請求項1記載の運転操作解析方法。
【請求項6】
運転者による車両の運転操作を解析する運転操作解析装置であって、
現在位置と目標位置までの距離と車両減速度とに基づいて目標速度を算出する目標速度算出手段と、
前記目標速度算出手段で算出された前記目標速度と現在の車両速度との速度偏差を算出する速度偏差算出手段と、
前記運転者による運転操作量を検出する運転操作量検出手段と、
前記速度偏差算出手段で算出された前記速度偏差と前記運転操作量検出手段で検出された前記運転操作量とに基づいて前記運転者の運転操作を解析する運転操作解析手段とを有することを特徴とする運転操作解析装置。
【請求項7】
前記目標速度算出手段は、
【数3】
JP0005317464B2_000012t.gif
により目標速度を算出することを特徴とする請求項6記載の運転操作解析装置。
【請求項8】
前記速度偏差算出手段は、
【数4】
JP0005317464B2_000013t.gif
により速度偏差を算出することを特徴とする請求項7記載の運転操作解析装置。
【請求項9】
前記運転操作解析手段は、前記運転操作量と前記速度偏差との関係を状態平面上にプロットし、前記プロット点が規定領域外のときに、異常状態であると判断することを特徴とする請求項6記載の運転操作解析装置。
【請求項10】
前記運転操作量検出手段は、ブレーキノッチの段数を検出することを特徴とする請求項記載の運転操作解析装置。
【請求項11】
運転者による車両の運転操作を解析する運転操作解析プログラムであって、
コンピュータに、
現在位置と目標位置までの距離と車両減速度とに基づいて目標速度を算出する目標速度算出手順と、
前記目標速度算出手順で算出された前記目標速度と現在の車両速度との速度偏差を算出する速度偏差算出手順と、
前記運転者による運転操作量を検出する運転操作量検出手順と、
前記速度偏差算出手順で算出された前記速度偏差と前記運転者による運転操作量とに基づいて前記運転者の運転操作を解析する運転操作解析手順とを実行させるコンピュータ読み取り可能な運転操作解析プログラム。
【請求項12】
前記目標速度算出手順は、
【数5】
JP0005317464B2_000014t.gif
により目標速度を算出することを特徴とする請求項11記載の運転操作解析プログラム。
【請求項13】
前記速度偏差算出手順は、
【数6】
JP0005317464B2_000015t.gif
により速度偏差を算出することを特徴とする請求項12記載の運転操作解析プログラム。
【請求項14】
前記運転操作解析手順は、前記運転操作量と前記速度偏差との関係を状態平面上にプロットし、
前記プロット点が規定領域外のときに、異常状態であると判断することを特徴とする請求項11記載の運転操作解析プログラム。
【請求項15】
前記運転操作量は、ブレーキノッチの段数であることを特徴とする請求項11記載の運転操作解析プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は運転操作解析方法、及び、運転操作解析装置、並びに、運動操作解析プログラムに係り、特に、運転者による車両の運転操作を解析する運転操作解析方法、及び、運転操作解析装置、並びに、運動操作解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道網の発展にともなって、鉄道への安全性の確保と向上が望まれている。そして、鉄道車両を含めた機械システムに今まで以上の安全性の確保と向上が求められている。
【0003】
こうした要請に対して、鉄道車両は、高度な滑走防止制御の研究開発によってブレーキシステムの安全性の向上の検討がなされている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
また、特に、人間がミスを起こしやすい状況下においても安全性を確保できる人間-機械系を鉄道車両側でも考慮し、構築する必要が生じている。いままで、鉄道の分野では、ヒューマンエラーの認知や運転時の人間の動作所要時間に関する報告は示されている(例えば、非特許文献2、3参照)。
【0005】
しかしながら、これまで、人間-機械系としての安全性に関する議論はなされていない。
【0006】
そこで、運転士の動特性を考慮した人間-機械系として制御系全体のモデルを構築し、ブレーキ操作を支援することによって、車両の安全性を確保する必要がある(例えば、非特許文献4参照)。

【非特許文献1】山崎大生,鎌田崇義,永井正夫:スライディングモード制御理論に基づいた鉄道車両の滑走制御,(社)日本フルードパワーシステム学会論文集,第37巻,第3号,(2006.5),pp.8-14
【非特許文献2】橋本邦衛:安全人間工学,中央労働災害防止協会,(1988.3),pp.3-21,pp.25-36,pp.51-59
【非特許文献3】林善男,井口雅一:人間・機械システムの設計,人間と技術社,(1970),pp.48-64
【非特許文献4】山崎大生:鉄道車両のブレーキシステムの現状と将来のあるべきシステム,(社)日本フルードパワーシステム学会ウィンターセミナー2005 機械システムの安全性,p.30-41
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両の安全性を確保するために、運転操作の特性を的確に解析できるシステムが求められている。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、容易、かつ、的確に運転操作の特性を解析できる運転操作解析方法、及び、運転操作解析装置、並びに、運転操作解析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、運転者による車両の運転操作を、コンピュータにより解析する運転操作解析方法であって、
前記コンピュータは、
現在位置と目標位置までの距離と車両減速度とに基づいて目標速度を算出する目標速度算出手順と、
前記目標速度算出手順で算出された前記目標速度と現在の車両速度との速度偏差を算出する速度偏差算出手順と、
前記運転者による運転操作量を検出する運転操作量検出手順と、
前記速度偏差算出手順で算出された前記速度偏差と前記運転者による運転操作量とに基づいて前記運転者の運転操作を解析する運転操作解析手順とを実行することを特徴とする。

【0010】
このとき、目標速度算出手順は、
【0011】
【数7】
JP0005317464B2_000002t.gif
により目標速度を算出することを特徴とする。
【0012】
また、速度偏差算出手順は、
【0013】
【数8】
JP0005317464B2_000003t.gif
により速度偏差を算出することを特徴とする。
【0014】
さらに、運転操作解析手順は、運転操作量と速度偏差との関係を状態平面上にプロットし、プロット点が規定領域外のときに、異常状態であると判断することを特徴とする。
【0015】
なお、運転操作量は、例えば、ブレーキノッチの段数であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、運転者による車両の運転操作を解析する運転操作解析方法であって、運転操作量を取得する運転操作量取得手順と、運転操作量取得手順で取得した運転操作量と運転操作の基準操作量とに基づいて運転操作量の誤差値を算出する誤差値算出手順と、誤差値算出手順で算出された誤差値に基づいて運転の質を判定する運転操作判定手順とを有することを特徴とする。
【0017】
なお、誤差値算出手順は、運転操作量と基準操作量との平均2乗誤差値を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、現在位置と目標位置までの距離と車両減速度とに基づいて目標速度を算出し、目標速度算出手順で算出された目標速度と現在の車両速度との速度偏差を算出し、速度偏差と運転操作量とに基づいて運転者の運転操作を解析することにより、容易、かつ、的確に運転操作の特性を解析できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔システム構成〕
図1は本発明の一実施例のシステム構成図を示す。
【0020】
本実施例の運転操作解析装置100は、例えば、鉄道などの車両の運転士による車両の運転操作を解析する装置であり、コンピュータシステムから構成されており、鉄道車両などに搭載する場合には、例えば、現在位置検出装置111、車両速度検出装置112、運転操作量検出装置113、警報装置114などが接続される。
【0021】
図2は運転操作解析装置100のブロック構成図を示す。
【0022】
運転操作解析装置100は、インタフェース回路121、CPU122、ファイル装置123、メモリ124などを含む構成とされている。
【0023】
インタフェース回路121には、現在位置検出装置111及び警報装置114などが接続されている。インタフェース回路121は、現在位置検出装置111及び警報装置114とのインタフェースをとる。
【0024】
CPU122は、ファイル装置123にインストールされた運転操作解析プログラムに基づいて処理を実行する。ファイル装置123は、例えば、ハードディスクドライブなどの記憶装置から構成されており、プログラムファイル部131、目標位置情報ファイル部132、解析結果ファイル部133などから構成されている。
【0025】
プログラムファイル部131には、運転操作解析プログラムが記憶されている。なお、運転操作解析プログラムは、例えば、フレキシブルディスク、CD、DVDなどの可換式記憶媒体、あるいは、ネットワークなどを介してサーバから提供され、プログラムファイル部131にインストールされる。
【0026】
目標位置情報ファイル部132は、目標位置情報、例えば、駅などの位置情報、及び、経路情報、例えば、線路に関する経路情報が記憶されている。目標位置情報ファイル部122に記憶された目標位置情報及び経路情報と現在位置情報に基づいて残距離が参照可能となる。
【0027】
解析結果ファイル部133は、運転操作解析プログラムによって解析された運転操作の解析結果の情報が記憶される。この解析結果ファイル部133に記憶された解析結果を分析することによって運転士の運転操作特性などを認識することが可能となる。
【0028】
メモリ124は、RAMなどから構成されており、CPU122の作業用記憶領域として用いられる。
【0029】
図3は現在位置検出装置111のブロック構成図を示す。
【0030】
現在位置検出装置111は、例えば、GPS装置などであり、アンテナ141、復調回路142、処理回路143、インタフェース回路144などから構成され、車両の現在位置を検出し、運転操作解析装置100に通知する。
【0031】
アンテナ141は、GPS衛星からの電波を受信する。アンテナ141で受信した高周波信号は、復調回路142に供給される。
【0032】
復調回路142は、アンテナ141から供給された高周波信号を復調する。復調回路142で復調された信号は、処理回路143に供給される。
【0033】
処理回路143は、復調回路142から供給された信号を処理することによって現在位置の経度、緯度、高度などの位置情報を取得する。処理回路143で取得した現在位置情報は、インタフェース144を介して運転操作解析装置100に通知される。
【0034】
インタフェース回路144は、運転操作解析装置100のインタフェース回路121に接続され、運転操作解析装置100とのインタフェースをとる。
【0035】
図4は車両速度検出装置112のブロック構成図を示す。
【0036】
車両速度検出装置112は、速度センサ接続端子151、フィルタ152、アンプ153、アナログディジタル変換回路154、インタフェース回路155などから構成されている。
【0037】
速度センサ接続端子151には、車両の速度センサなどが接続される。速度センサ接続端子151に供給された信号は、フィルタ152に供給される。フィルタ152は、速度センサ接続端子151から供給された信号から不要成分を除去する。フィルタ152で不要成分を除去された信号は、アンプ153に供給される。アンプ153は、フィルタ152から供給された信号を増幅して、アナログディジタル変換回路154に供給する。
【0038】
アナログディジタル変換回路154は、アンプ153から供給された信号をディジタルデータに変換する。アナログディジタル変換回路154で変換されたディジタルデータは、インタフェース回路155に供給される。
【0039】
インタフェース回路155は、アナログディジタル変換回路154から供給されたディジタルデータから速度センサからの信号の周波数などを測定し、測定した周波数に基づいて車両速度データを生成する。インタフェース回路155は、運転操作解析装置100のインタフェース回路121とインタフェースをとっており、インタフェース回路121からの要求に応じて車両速度データを運転操作解析装置100に通知する。
【0040】
図5は運転操作量検出装置113のブロック構成図を示す。
【0041】
運転操作量検出装置113は、入力端子161、フィルタ162、アナログディジタル変換回路163、インタフェース回路164などから構成されており、車両のマスコンなどの操作情報を検出し、運転操作解析装置100に通知する。
【0042】
入力端子161は、マスコンなどに接続されており、マスコンから操作信号が供給される。入力端子161に供給された操作信号は、フィルタ162に供給される。
【0043】
フィルタ162は、操作信号からノイズなど高周波成分を除去する。フィルタ162を通った操作信号は、アナログディジタル変換回路163に供給される。
【0044】
アナログディジタル変換回路163は、フィルタ162からの操作信号をディジタルデータに変換した、インタフェース164に供給する。
【0045】
インタフェース回路164は、アナログディジタル変換回路163からの操作信号からブレーキノッチ段数などの操作情報を生成する。インタフェース回路164は、運転操作解析装置100のインタフェース回路121とインタフェースをとっており、インタフェース回路121からの要求に応じて操作情報を運転操作解析装置100に通知する。
【0046】
図6は警報装置114のブロック構成図を示す。
【0047】
警報装置114は、運転操作解析装置100からの指示に基づいて警報を発する装置であり、インタフェース回路171、ディジタルアナログ変換器172、アンプ173、スピーカ174などから構成されている。
【0048】
インタフェース回路171は、運転操作解析装置100のインタフェース回路121とのインタフェースをとっており、運転操作解析装置100から警報を発する旨の通知を受けると、ディジタルアナログ変換器172にオーディオデータを出力する。
【0049】
ディジタルアナログ変換器172は、インタフェース回路171からのオーディオデータをアナログオーディオ信号に変換して、アンプ173に供給する。アンプ173は、ディジタルアナログ変換器172からのアナログオーディオ信号を増幅して、スピーカ174に供給する。スピーカ174は、アンプ173からのアナログオーディオ信号によって駆動されて、警報音を出力する。
【0050】
次に運動操作解析部100の処理について説明する。
【0051】
図7は運動操作解析装置100の処理フローチャートを示す。
【0052】
運転操作解析装置100は、ステップS1-1で運転操作量検出装置113からの操作情報により走行あるいはブレーキなどの運転操作が開始されたことを検知すると、ステップS1-2で現在位置検出装置111から現在位置情報を取得し、目標位置情報ファイル部122を参照し、現在位置から目標位置までの残距離X(t)を取得するとともに、車両速度検出装置112からの車両速度情報に基づいて車両減速度a(t)を算出し、取得する。
【0053】
次に運転操作解析装置100は、ステップS1-3で取得した残距離X(t)と車両減速度a(t)とを式(1)に代入することにより目標速度vr(t)を算出する。
【0054】
【数9】
JP0005317464B2_000004t.gif
次に運転操作解析装置100は、ステップS1-4で車両速度検出装置112から現在の車両速度v(t)を取得する。運転操作解析装置100は、ステップS1-5で式(2)で求めた目標速度vr(t)と車両速度検出装置112から取得した現在の車両速度v(t)とを式(2)に代入して速度偏差Δv(t)を算出する。
【0055】
【数10】
JP0005317464B2_000005t.gif
次に運転操作解析装置100は、ステップS1-6で運転操作量検出装置113からブレーキノッチなどの運転操作情報を取得する。運転操作解析装置100は、ステップS1-7で速度偏差に対するブレーキノッチの状態を示す状態平面上に、算出した速度偏差Δv(t)及び検出したブレーキノッチN(t)によって状態を示す点をプロットする。状態平面は、解析結果ファイル部133に記憶される。
【0056】
次に運転操作解析装置100は、ステップS1-8で状態平面を参照状態平面と比較し、ステップS1-9でプロット点が規定領域外に逸脱しているときには、ステップS1-10で警報装置114に警報情報を通知し、警報装置114から警報音などを出力させる。
【0057】
警報音によって、運転士は走行状態、自分の運転操作に異常があることを認識できる。また、このとき、警報音と同時に車両のブレーキを制御して、車両に非常ブレーキをかけるようにしてもよい。
【0058】
なお、本実施例では、説明を簡単にするために、運転操作解析結果としてブレーキノッチの段数を記録する点について説明したが、記録すべき情報としては経過時間、走行距離、車両速度、車両減速度、ハンドルノッチ、知らせ灯、知らせ信号など車両に関する他の運転操作に関する情報を同時に記録しておくようにしてもよい。
【0059】
〔実験・検証〕
次に本出願人が本実施例の運転操作解析装置100を列車運転シミュレータに実装して、検証した運転操作解析結果について説明する。
【0060】
まず、列車シミュレータについて説明する。
【0061】
図8は列車運転シミュレータの外観図、図9は列車システムシミュレータのシステム構成図を示す。
【0062】
列車運転シミュレータ200は、視界模擬装置211、模擬車両装置212、制御装置213から構成されている。
【0063】
視界模擬装置211は、視界生成用コンピュータ221、プロジェクタ222、スクリーン223から構成されている。
【0064】
視界生成用コンピュータ221は、前方視界情報を生成し、プロジェクタ222に供給する。プロジェクタ222は、視界生成用コンピュータ221から供給された前方視界情報に基づいてスクリーン223に前方視界画像を映写する。なお、図9では視界生成用コンピュータ221及びプロジェクタ222を右用と左用とで別々に設け、偏向板224を通してスクリーン223に映写することによって前方視界画像を立体視可能な構成とされている。
【0065】
模擬車両装置212は、車両制御用コンピュータ231、車両コントローラ232、計器表示部233、スピーカ234から構成されている。
【0066】
制御装置213は、コンピュータから構成されており、視界生成用コンピュータ221及び車両制御用コンピュータ231と通信を行い、視界生成処理及び車両制御処理が同期して行われるように制御を行うとともに、運転操作解析プログラムがインストールされており、運転操作解析を行い、その結果を取得する。
【0067】
〔条件〕
実験で使用した仮想路線は、1回の運転時間が18分間で、停車駅、A・B・C・D駅の4区間である。なお、ダイヤは、余裕のある時間設定とした。
【0068】
A・B駅は車両速度75~90km/hからブレーキをかけ始める設定とし、C駅は車両速度100~115km/hからブレーキをかけ始める設定とし、D駅は車両速度45~50km/hからブレーキをかけ始める設定とした。
【0069】
被験者はシミュレータ運転歴3ヶ月、本実験線路での運転経験がある男性とした。
【0070】
実験では、主タスクである運転操作に加えて心的な負荷を想定した課題を副次タスクとして与えた。
【0071】
副次タスクの課題として暗算計算を与える。副次タスクの内容は、5秒おきに一桁の数字を音声で提示し、その和の1の位を発話させるものである。
【0072】
このとき、主タスクである運転操作を第一優先とし、副次タスクである暗算は、運転操作に支障をきたさないようになるべく回答する程度に緩い規則とした。
【0073】
また、所定の停車位置に停車させることを条件とし、ダイヤ通りの運行を行うこととした。
【0074】
実験は、4駅に対して負荷有り・負荷無し、それぞれ運転行動に変化が見られなくなるまで行った。
【0075】
〔実験結果〕
図10は時間に対する車両速度と目標速度との特性を示す図である。図10(A)は暗算負荷無しの場合、図10(B)は暗算負荷有りの場合を示している。
【0076】
図10(A)に示すように暗算負荷がない場合には、目標速度と車両速度との差がないのに対し、図10(B)に示すように暗算負荷がある場合には、目標速度と車両速度との差が大きくなることがわかる。
【0077】
図11は時間に対する速度偏差とブレーキノッチの特性を示す図である。図11(A)は暗算負荷無しの場合、図11(B)は暗算負荷有りの場合を示している。
【0078】
図11(A)に示すように暗算負荷がない場合には、ほぼ一定のブレーキノッチを維持して停車しており、速度偏差もほぼ一定となっているのに対し、図11(B)に示すように暗算負荷がある場合には、最初ブレーキノッチの段数を高く、すなわち、ブレーキを強めており、これによって、速度偏差がマイナスになっている。速度偏差がマイナスになることによって、今度はブレーキノッチの段数を小さく、すなわち、ブレーキを弱めている。さらに、ブレーキを弱めることによって、速度偏差がプラスになり、また、ブレーキを強めるという操作を繰り返すことによって、速度偏差が減少している。
【0079】
図12は速度偏差とブレーキノッチの段数との状態遷移図を示している。図12(A)は暗算負荷無しの場合、図12(B)は暗算負荷有りの場合を示している。
【0080】
図12は、最初にブレーキ操作を行ってから車両が完全に停止するまでの速度偏差とブレーキノッチ段数との状態をプロットしたものである。また、◇印、□印、△印、×印、○印の順にプロットしている。Xは残距離を示しており、例えば、「150<=X<200」は停止位置の手前150m以上、200m未満の範囲のデータであることを示している。
【0081】
暗算負荷がない場合には、図12(A)に示すように状態平面における軌跡が小さい領域で遷移しており、図12(B)に示す暗算負荷がある場合に比べて小さい速度偏差及びブレーキ操作で車両が停止していることがわかる。一方、暗算負荷がある場合には、図12(B)に示すように状態平面における軌跡が大きな領域で遷移しており、図12(A)に示す暗算負荷がある場合に比べて大きい速度偏差及びブレーキ操作で車両が停止していることがわかる。このような傾向は、実験中のすべての停車時で観測された。
【0082】
したがって、図12に示すような速度偏差とブレーキノッチの段数、すなわち、運転操作量との状態遷移を状態平面にプロットすることによって、運転の特性を一目で解析することができる。
【0083】
なお、図13は理想的な運転操作が行われた場合の速度偏差とブレーキノッチの段数との状態遷移図であり、図14は良くない運転操作が行われた場合の速度偏差とブレーキノッチの段数との状態遷移図を示す。
【0084】
理想的な運転操作では、図13に示す状態平面を参照することにより、徐々にブレーキを強め、徐々にブレーキを弱めて,最終的に弱いブレーキで停車しており、再度ブレーキを強くしたり、弱くしたりという不要な操作が行われておらず、また、速度偏差の幅も小さい。
【0085】
一方、良くない運転操作では、図14に示す状態平面を参照するとことにより、大きなプラスの速度偏差が生じた後に一気にブレーキを強くし、大きなマイナスの速度偏差が生じた後に一気にブレーキを弱めるような操作が繰り返しを行われ、最終的に強いブレーキで停車していることがわかる。
【0086】
今回の実験から,運転士のブレーキ操作を受けた車両の安全性を判断する指標として,速度偏差とブレーキノッチの状態遷移を用いることができることがわかる。
【0087】
よって、普段の運転によるブレーキノッチと速度偏差の状態遷移の領域から逸脱するような傾向が検知されたとき、あるいは逸脱を検知したときを異常状態と判断し、警報などを与えることによって車両の安全性を確保するシステムを構築することができる。
【0088】
本実施例によれば、運転時に、速度偏差とブレーキノッチの段数、すなわち、運転操作量との状態遷移を状態平面にプロットし、解析結果として提示することにより、運転士の運転操作を容易に解析できる。この解析結果に基づいて運転操作に関する指導、運転時の警報などを発することによって、鉄道などの車両運行の安全性を向上させることができる。また、設備が簡易であるため、ATC、ATSなどの大がかりな設備を設置できないような交通機関などにも容易に設置でき、安全な運行を実施できる。
【0089】
なお、上記実施例では、鉄道車両の運転操作の解析を行うことについて説明したが、本発明は自動車の運転操作の解析にも適用できる。
【0090】
図15、図16は本発明の一実施例の変形例の動作説明図を示す。
【0091】
図15に示すように先行車312が停止しているときには、自車311の走行速度をv、減速度をα、先行車312までの距離d、停車時の余裕距離をd0とすると、目標速度vは、式(1)と同様な考え方から式(3)で表せる。
【0092】
【数11】
JP0005317464B2_000006t.gif
で表せる。
【0093】
また、図16(A)に示すように先行車312が速度vpで走行しているときには、自車311の走行速度をv、減速度をα、先行車312の速度をvp、減速度をαp、距離をdとし、先行車312との余裕距離をd0、時間をtとすると、目標速度vは式(4)で表せる。
【0094】
【数12】
JP0005317464B2_000007t.gif
これらの目標速度vを式(2)に代入することによって鉄道車両と同様に自動車の速度偏差を求めることができ、この速度偏差とブレーキ操作量とを状態平面にプロットすることによって、運転操作の特性を解析することが可能となる。
【0095】
図17は速度偏差とブレーキ操作量とを状態平面図を示す。図17(A)は先行車両の挙動がほぼ予測通りの場合、図17(B)は脇見などをした際の先行車両の急減速など、予測とは異なる事態が発生した場合、図17(C)は携帯電話通話などのディストラクションがある場合の状態平面図を示す。
【0096】
図17(A)に示すように予測通りの操作が行われた場合には、ブレーキ量、速度偏差ともに小さくなる。また、図17(B)に示すように予測とは異なる事態が発生した場合には、脇見をしたときに速度偏差が急激に大きくなる。さらに、図17(C)はディストラクションがある場合には、ブレーキ操作量の変動が大きく、領域が大きくなる。
【0097】
このように、自動車に対しても鉄道車両と同様に速度偏差とブレーキ操作量とを状態平面を用いることによって、運転操作特性を解析することが可能となる。
【0098】
次に、上記運転操作解析装置100による解析結果を用いた運転評価方法について説明する。
【0099】
図18は、時間に対するブレーキノッチの補正の一例を示す図である。
【0100】
ブレーキ操作量は、1回のブレーキハンドルの操作で、変化したノッチの量を表す。例えば、ブレーキハンドルを第5ノッチから第3ノッチに操作すれば、ブレーキ操作量は-2ノッチである。
【0101】
実際は、ブレーキハンドルを操作した間のノッチが得られるので、例えば、図18に示すような補正を行う。
【0102】
実線が実際に得られるノッチN(t)で、波線が補正されるノッチN'(t)である。あるノッチ変化があってからτ秒経過する前に再びノッチ変化があれば、ブレーキハンドルの動きは連続していると見なして、N'(t)は元のノッチを維持する。ノッチ変化がないままτ秒経過すれば、ブレーキハンドルの動きを止めたと見なして、N'(t)をN(t)に更新する。
【0103】
また、車両が停止した際にはブレーキによる減速度が0になるので、仮想的にブレーキノッチを0にしたと扱うことにし、速度が0になったときN'(t)=0にする。これは、停止する瞬間のジャークを評価に含めるためである。
ブレーキ操作量は、N'(t)が変化するごとに得られ、N'(t)がn回変化したとき、ブレーキ操作量u1、u2、・・・unが得られる。
【0104】
図19は、ブレーキ操作量の頻度分布の一例を示す図である。なお、図19は列車運転シミュレータを用いた模擬実験により得た、駅停車時のブレーキ操作量ukの頻度分布を示している。
【0105】
暗算課題を負荷した方が、大きなブレーキ操作量の頻度が高くなっている。この傾向は、負荷がある場合、ブレーキ操作量のばらつきが大きいと考えることができる。そこで、ukのばらつきによって運転士の異常運転を評価できる可能性がある。一般に、ブレーキ操作量が大きいほど、減速度に大きな変化が生じるので乗り心地が悪くなる。ばらつきが大きいことは、乗り心地が悪く、ブレーキ時の運転操作の質が悪いと判断できる。
【0106】
ブレーキ操作量ukのデータを蓄積することによって、通常よく用いられるブレーキの操作量、すなわち平均ブレーキ操作量/uが求まる。平均ブレーキ操作量/uに対するukの平均2乗誤差ε2でブレーキ操作量のばらつきを評価する。
【0107】
列車が停止位置目標へ停車すると、ブレーキ操作量ukを得る。/uに対する平均2乗誤差ε2は、下記の式(1.1)で得られる。
【0108】
【数13】
JP0005317464B2_000008t.gif
/uを求めるためには、ある程度ブレーキ操作量のデータを蓄積する必要がある。実験により、/uは、-1に近い値になることがわかった。そこで、データが蓄積されていない場合には、/u=-1として、簡易的に下記の式(1.2)により評価できる。
【0109】
【数14】
JP0005317464B2_000009t.gif
図20は、ブレーキ操作量のばらつきの一例を示す図である。なお、図20はそれぞれの駅停車ごとに求めたブレーキ操作量のばらつきを示しており、縦軸は各駅停車の試行回数、横軸は式(1.2)により求めた平均2乗誤差ε2の平方根である。また、図20において黒色帯は負荷無し、灰色帯は負荷有りのものである。
【0110】
全体の傾向として、負荷有の値の方が負荷無の値より高い値となっている。よって、例えば、あるしきい値を設定し、式(1.2)により求めた平均2乗誤差ε2の平方根が設定したしきい値より大きいか、小さいかを判定することにより、運転士の運転の質を判別できる。
【0111】
上記運転操作評価処理は、運転操作解析装置100のプログラムファイル131に予めインストールされた運転操作評価処理プログラムを、運転操作解析装置100により実行させることにより行われる。
【0112】
図21は運転操作評価処理の処理フローチャートを示す。
【0113】
CPU122は、ステップS2-1で、運転時に運転操作量検出装置113で検出され、解析結果ファイル部133に記憶されたブレーキノッチなどの運転操作情報、ここでは、ブレーキ操作量u1~unを収集する。
【0114】
次にCPU122は、ステップS2-2で収集したブレーキ操作量u1~unを式(1-.2)に代入して平均2乗誤差ε2を算出する。
【0115】
CPU122は、ステップS2-3で算出した平均2乗誤差ε2を閾値と比較し、算出した平均2乗誤差ε2が閾値より大きければ、ステップS2-4で運転の質が悪いと判断し、算出した平均2乗誤差ε2が閾値より小さければ、ステップS2-5で運転の質は良好であると判断する。
【0116】
以上によって、ブレーキノッチなどの運転操作情報、例えば、ブレーキ操作量から運転の質を判定できる。なお、閾値を複数設定し、運転の質を複数段階で判断するようにしてもよい。
【0117】
なお、本運転操作評価処理では、ブレーキ操作量から運転の質を判定する例について説明したが、スロットル操作量やアクセス操作量など他の運転操作量に基づいて同様な計算式から運転の質を判定するようにしてもよい。
また、上記運転操作評価処理によって判定される運転の質が所定の閾値より大きい場合には、異常運転として判断するようにしてもよい。
【0118】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形例が考えられることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の一実施例のシステム構成図である。
【図2】運転操作解析装置100のブロック構成図である。
【図3】現在位置検出装置111のブロック構成図である。
【図4】車両速度検出装置112のブロック構成図である。
【図5】運転操作量検出装置113のブロック構成図である。
【図6】警報装置114のブロック構成図である。
【図7】運動操作解析装置100の処理フローチャートである。
【図8】列車運転シミュレータの外観図である。
【図9】列車システムシミュレータのシステム構成図である。
【図10】時間に対する車両速度と目標速度との特性を示す図である。
【図11】時間に対する速度偏差とブレーキノッチの特性を示す図である。
【図12】速度偏差とブレーキノッチの段数との状態遷移図である。
【図13】理想的な運転操作が行われた場合の速度偏差とブレーキノッチの段数との状態遷移図である。
【図14】良くない運転操作が行われた場合の速度偏差とブレーキノッチの段数との状態遷移図である。
【図15】本発明の一実施例の変形例の動作説明図である。
【図16】本発明の一実施例の変形例の動作説明図である。
【図17】速度偏差とブレーキ操作量とを状態平面図である。
【図18】時間に対するブレーキノッチの補正の一例を示す図である。
【図19】ブレーキ操作量の頻度分布の一例を示す図である。
【図20】ブレーキ操作量のばらつきの一例を示す図である。
【図21】運転操作評価処理の処理フローチャートである。
【符号の説明】
【0120】
100 運転操作解析装置、111 現在位置検出装置、112 車両速度検出装置
113 運転操作量検出装置、114 警報装置
121 インタフェース回路、122 CPU、123 ファイル装置
124 メモリ
131 プログラムファイル部、132 目標位置情報ファイル部
133 解析結果ファイル部
141 アンテナ、142 復調回路、143 処理回路、144インタフェース回路
151 速度センサ接続端子、152 フィルタ、153 アンプ
154 アナログディジタル変換回路、155 インタフェース回路
161 入力端子、162 フィルタ、163 アナログディジタル変換回路
164 インタフェース回路
171 インタフェース回路、172 ディジタルアナログ変換器、173 アンプ
174 スピーカ
200 列車運転シミュレータ
211 視界模擬装置、212 模擬車両装置、213 制御装置
221 視界生成用コンピュータ、222 プロジェクタ、223 スクリーン
224 偏向板
231 車両制御用コンピュータ、232 車両コントローラ、233 計器表示部
234 スピーカ
311 自車、312 先行車
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図9】
7
【図10】
8
【図11】
9
【図12】
10
【図13】
11
【図14】
12
【図15】
13
【図16】
14
【図17】
15
【図18】
16
【図19】
17
【図20】
18
【図21】
19
【図8】
20