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明細書 :エステル化合物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5167483号 (P5167483)
公開番号 特開2008-247873 (P2008-247873A)
登録日 平成25年1月11日(2013.1.11)
発行日 平成25年3月21日(2013.3.21)
公開日 平成20年10月16日(2008.10.16)
発明の名称または考案の名称 エステル化合物の製造方法
国際特許分類 C07C  67/03        (2006.01)
C07C  69/78        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 67/03
C07C 69/78
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 8
全頁数 18
出願番号 特願2007-094378 (P2007-094378)
出願日 平成19年3月30日(2007.3.30)
審査請求日 平成22年1月6日(2010.1.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】石原 一彰
【氏名】古家 吉朗
個別代理人の代理人 【識別番号】100094190、【弁理士】、【氏名又は名称】小島 清路
【識別番号】100151127、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 勝雅
【識別番号】100117134、【弁理士】、【氏名又は名称】萩野 義昇
審査官 【審査官】前田 憲彦
参考文献・文献 特開2000-239231(JP,A)
特表2002-506843(JP,A)
特開2000-178232(JP,A)
特開平09-110744(JP,A)
特開2003-192783(JP,A)
特開平08-081551(JP,A)
特開平11-005837(JP,A)
中国特許出願公開第1654451(CN,A)
特開平09-059209(JP,A)
特開平06-279396(JP,A)
特表2009-515914(JP,A)
特開2004-043217(JP,A)
特表2006-521337(JP,A)
特開2004-204305(JP,A)
特開平07-315847(JP,A)
国際公開第2005/105719(WO,A1)
特開昭62-281835(JP,A)
Journal of Applied Polymer Science,1995年,58(4),p.771-777
Synthesis,1994年,(10),p.1007-1017
Chemistry Letters,1998年,(7),p.697-698
Colloids and Surfaces,1990年,46(2-4),p.239-253
Bunseki Kagaku,1973年,22(12),p.1577-80
Tetrahedron: Asymmetry,2002年,13(10),p.1053-1058
Synthesis and Reactivity in Inorganic and Metal-Organic Chemistry,1980年,10(1),p.83-98
Journal of the Chemical Society, Dalton Transactions: Inorganic Chemistry,1982年,(10),p.1929-1932
Journal of the Chemical Society, Faraday Transactions,1996年,92(22),p.4391-4394
Journal of the Chemical Society, Chemical Communications,1994年,(6),p.705-706
調査した分野 C07C 67/00
C07C 69/00
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
(A)ランタンアルコキシドと、(B)下記一般式(1)、(11)、(12)又は(21)で表される化合物とを用いてエステル交換反応を行うことを特徴とするエステル化合物の製造方法。
【化1】
JP0005167483B2_000015t.gif
(式中、R~Rはそれぞれ独立に水素原子又は一価の炭素数1~3のアルキル基である。R及びRは互いに結合して五員環又は六員環を形成してい。Wは下記一般式(I)で表される構造である。Xは酸素原子である。Yは下記一般式(III)で表される構造である。Aは水酸基である。mは0~3の整数である。但し、Yを表す下記一般式(III)におけるAは水酸基である。)
【化2】
JP0005167483B2_000016t.gif
(式中、R~Rはそれぞれ独立に水素原子又は一価の炭素数1~3のアルキル基である。Wは下記一般式(I)で表される構造である。Xは酸素原子である。Yは下記一般式(III)で表される構造である。Aは炭素数1~4のアルコキシ基又はアミノ基である。mは0~3の整数である。但し、Yを表す下記一般式(III)におけるAは水酸基である。)
【化3】
JP0005167483B2_000017t.gif
(式中、R~Rはそれぞれ独立に水素原子又は一価の炭素数1~3のアルキル基である。Wは下記一般式(I)で表される構造である。Xは下記一般式(II)で表される構造である。Yは下記一般式(III)若しくは(IV)で表される構造である。Aは水酸基又はアミノ基である。mは0~3の整数である。但し、Yを表す下記一般式(III)及び(IV)におけるAはAと同一の基である。)
【化4】
JP0005167483B2_000018t.gif
(式中、Wは下記一般式(I)で表される構造である。Bは酸素原子である。Aは水酸基である。m2及びm3は0~3の整数である。)
【化5】
JP0005167483B2_000019t.gif
(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は一価の炭素数1~3のアルキル基である。Rは水素原子、炭素数1~3のアルキル基である。Aは水酸基又はアミノ基である。Bは-NH-基である。m1は1~4の整数である。)
【請求項2】
基質であるエステル化合物は、テレフタル酸ジメチル、又は、一般式R10COOR11(R10はカルボン酸由来の一価の炭化水素基であり、R11はアルコール由来の一価の炭化水素基である。)で表される化合物であり、該R10は炭素数1~30のアルキル基及びアルケニル基、炭素数4~12のシクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基及びアリールアルキル基から選ばれ、11は炭素数1~10のアルキル基及びアルケニル基、アリールメチル基及びアルキニルメチル基から選ばれる請求項1に記載のエステル化合物の製造方法。
【請求項3】
基質であるアルコールは、一般式R12-OHで表され、該R12は炭素数1~12のアルキル基及びアルケニル基、炭素数4~12のシクロアルキル基、シクロアルケニル基及びアリールアルキル基から選ばれる請求項1又は2に記載のエステル化合物の製造方法。
【請求項4】
基質であるエステル化合物は、沸点が50~120℃のエステル化合物である請求項1乃至のいずれかに記載のエステル化合物の製造方法。
【請求項5】
基質であるエステル化合物とアルコールとのモル比が1:(0.5~2.5)である請求項1乃至のいずれかに記載のエステル化合物の製造方法。
【請求項6】
反応溶媒が非極性有機溶媒である請求項1乃至のいずれかに記載のエステル化合物の製造方法。
【請求項7】
反応溶媒が基質であるエステル化合物と同一のエステル化合物である請求項1乃至のいずれかに記載のエステル化合物の製造方法。
【請求項8】
反応溶媒が基質であるアルコールと同一のアルコールである請求項1乃至のいずれかに記載のエステル化合物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エステル化合物は、天然物として広く存在し、また、各種材料、並びに食品及び化粧品添加物等に広く利用されている。かかるエステル化合物の合成方法として、エステル交換反応が知られている。エステル交換反応は、アルコールの組み替えを利用して、原料のエステルから新たなエステルを合成する方法である。
【0003】
エステル交換反応は、エステル合成方法の一つとして実験室のみならず産業レベルでも用いられている。その汎用性は、単純なエステル化合物の合成だけでなく、天然物に多く見られるマクロラクトン骨格の構築、ラクトンの開環重合、及びラセミ化合物の光学分割等の多岐に渡る。よって、エステル交換反応は、有機合成において実用性の高い反応の一つである。そして、エステル交換反応の収率を高めるために、エステル交換反応用の触媒の開発が進められている。
【0004】
非特許文献1~5には、エステル交換反応用の触媒として、酵素、チタン(IV)アルコキシド、アルキルスズ、サマリウムヨージド、及びN-ヘテロサイクリックカルベンが記載されている。また、非特許文献6には、フルオロアルキルスズ触媒が高い活性を示すことが記載されている。
【0005】
更に、非特許文献7には、エステル交換反応用の触媒として、ランタン(III)トリイソプロポキシド([La(Oi-Pr)])が記載されている。非特許文献8には、エステル交換反応用の触媒として、ランタン(III)トリストリフルオロメチルスルホニウム塩([La(OTf)])が記載されている。特許文献1には、ランタントリスアセチルアセトネートを触媒として用いたエステル交換反応により、ビス(3-ヒドロキシプロピル)テレフタレート単量体を製造する方法が記載されている。
【0006】

【非特許文献1】Enzyme Microb. Technol. 1993, 15, 367.
【非特許文献2】Tetrahedron Lett. 1998, 39, 4223.
【非特許文献3】J. Org. Chem. 1991, 56, 5307.
【非特許文献4】J. Org. Chem. 1996, 61, 3088.
【非特許文献5】J. Org. Chem. 2003, 68, 2812.
【非特許文献6】Adv. Synth. Catal. 2002, 344, 84.
【非特許文献7】Chem. Lett. 1995, 246.
【非特許文献8】J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 1559.
【特許文献1】特表2002-506843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献6には、該文献記載の触媒が高い活性を示し、該触媒を用いてエステル交換反応を行うと、エステル及びアルコールのモル比が1:1でも良好な収率で目的のエステルを得ることができる旨が記載されている。しかし、非特許文献6記載の方法は、有機スズを用いているため、安全性の観点から問題がある。また、非特許文献6記載の方法は、反応温度が高温(150℃)であるため、低沸点のエステル又はアルコールを用いるエステル交換反応には適用し難いという問題がある。
【0008】
非特許文献7では、触媒の活性種はランタンの二核錯体であり、二つのランタン(III)がエステル及びアルコールをそれぞれ活性化することにより、エステル交換反応が促進される旨が提唱されている。しかし、非特許文献7では、この二核錯体はアルコール溶媒中でなければ安定に存在できないことも示唆されている。よって、非特許文献7記載の方法は、高収率でエステルを得るという点では十分とは言い難い。
【0009】
本発明の目的は、高効率で、エステル交換反応により目的とするエステル化合物を合成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のエステル化合物の製造方法は、(A)ランタンアルコキシドと、(B)下記一般式(1)、(11)、(12)又は(21)で表される化合物とを用いてエステル交換反応を行うことを特徴とする。
【化1】
JP0005167483B2_000002t.gif
(式中、R~Rはそれぞれ独立に水素原子又は一価の炭素数1~3のアルキル基である。R及びRは互いに結合して五員環又は六員環を形成してい。Wは下記一般式(I)で表される構造である。Xは酸素原子である。Yは下記一般式(III)で表される構造である。Aは水酸基である。mは0~3の整数である。但し、Yを表す下記一般式(III)におけるAは水酸基である。)
【化2】
JP0005167483B2_000003t.gif
(式中、R~Rはそれぞれ独立に水素原子又は一価の炭素数1~3のアルキル基である。Wは下記一般式(I)で表される構造である。Xは酸素原子である。Yは下記一般式(III)で表される構造である。Aは炭素数1~4のアルコキシ基又はアミノ基である。mは0~3の整数である。但し、Yを表す下記一般式(III)におけるAは水酸基である。)
【化3】
JP0005167483B2_000004t.gif
(式中、R~Rはそれぞれ独立に水素原子又は一価の炭素数1~3のアルキル基である。Wは下記一般式(I)で表される構造である。Xは下記一般式(II)で表される構造である。Yは下記一般式(III)若しくは(IV)で表される構造である。Aは水酸基、又はアミノ基である。mは0~3の整数である。但し、Yを表す下記一般式(III)及び(IV)におけるAはAと同一の基である。)
【化4】
JP0005167483B2_000005t.gif
(式中、Wは下記一般式(I)で表される構造である。Bは酸素原子である。Aは水酸基である。m2及びm3は0~3の整数である。)
【化5】
JP0005167483B2_000006t.gif
(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は一価の炭素数1~3のアルキル基である。Rは水素原子、炭素数1~3のアルキル基である。Aは水酸基又はアミノ基である。Bは-NH-基である。m1は1~4の整数である。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高効率で、エステル交換反応により目的とするエステル化合物を合成することができる。特に、本発明によれば、基質であるエステル又はアルコールの一方を過剰に用いなくても、高効率で、エステル交換反応により目的とするエステル化合物を合成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のエステル化合物の製造方法は、(A)ランタンアルコキシド(以下、「(A)成分」という。)と、(B)上記一般式(1)、(11)、(12)又は(21)で表される化合物(以下、「(B)成分」という。)と、を用いてエステル交換反応を行うことを特徴とする。
【0015】
(A)成分
上記ランタンアルコキシドの種類及び構造には特に限定はない。例えば、上記アルコキシドは、炭素数1~10、好ましくは1~8、更に好ましくは1~6のアルコキシドとすることができる。上記アルコキシドとしては、例えば、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、n-プロポキシド、n-ブトキシド、sec-ブトキシド、tert-ブトキシドが挙げられる。上記(A)ランタンアルコキシドとして具体的には、例えば、ランタン(III)トリイソプロポキシド([La(Oi-Pr)])及びランタン(III)トリt-ブトキシドが挙げられる。
【0016】
(B)成分
上記一般式(1)、(11)及び(12)において、上記R~Rは、それぞれ独立して水素原子又は一価の炭化水素基である。該一価の炭化水素基としては、アルキル基である。
【0017】
上記アルキル基の炭素数は、1~3である。
【0018】
上記アルキル基等の構造には特に限定はない。上記アルキル基は、直鎖状でもよく、側鎖を有していてもよい。
【0019】
上記アルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基が挙げられる。
【0023】
上記一般式(1)において、上記R及びRは、互いに結合して環を形成してい。また、該環の環員数は、5員環又は6員環である。
【0024】
上記R~Rの具体的な構造としては、例えば、上記で例示した各構造を、必要に応じて適宜組み合わせて採用することができる。上記R~Rは、全て同じ基でもよく、一部又は全て異なる基でもよい。例えば、上記R及びRを水素原子とし、上記Rを一価の炭化水素基とすることができる。
【0025】
一般式(1)において、上記Aは水酸基である。また、一般式(11)において、上記Aアルコキシ基又はアミノ基である。また、一般式(12)において、上記Aは水酸基又はアミノ基である。
【0026】
上記アルコキシ基は、直鎖状でもよく、側鎖を有していてもよい。上記アルコキシ基の炭素数は、1~4である。上記アルコキシ基として具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、及びi-プロポキシ基が挙げられる。
【0027】
一般式(1)、(11)、(12)及び(21)において、上記Wは上記一般式(I)で表される構造である。上記一般式(I)において、上記R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は一価の炭化水素基を表す。該一価の炭化水素基としては、アルキル基である。上記一価の炭化水素基の種類及び構造は、上記R~Rの説明が妥当する。上記R及びRは、炭素数1~3のアルキル基(メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基)である。上記R及びRは同じ基でもよく、異なる基でもよい。上記一般式(I)で表される構造としては、例えば、上記R及びRの両方が水素原子である構造(メチレン基)、上記R及びRの一方が水素原子で他方が一価の炭化水素基である構造、並びに上記R及びRの両方が一価の炭化水素基である構造が挙げられる。尚、上記一般式(1)、(11)、(12)及び(21)において、上記Wが2以上存在する場合、各Wは同一構造でもよく、異なる構造でもよい。
【0028】
一般式(1)及び(11)において、上記Xは酸素原子ある。また、一般式(12)において、上記Xは上記一般式(II)で表される構造である。上記一般式(II)において、上記Rは水素原子、又はアルキル基である。該アルキル基については、上記R~Rの説明が妥当する。上記Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基(メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基)である。
【0029】
一般式(1)及び(11)において、上記Yは、上記一般式(III)で表される構造である。また、一般式(12)において、上記Yは、上記一般式(III)若しくは(IV)で表される構造である。上記一般式(III)及び(IV)において、上記Wは上述の通りである。また、一般式(1)及び(11)において、上記Aは水酸基である。また、一般式(12)において、上記Aは水酸基又はアミノ基であり、Aと同一の基である。該アミノ基は第一級アミノ基、第二級アミノ基、及び第三級アミノ基のいずれでもよい。通常、上記アミノ基は第一級アミノ基である。一般式(12)における一般式(IV)の上記Bは-NH-基である。また、一般式(21)において、上記Bは酸素原子である。上記m1は1~4の整数である。
【0030】
上記一般式(III)又は(IV)で表される構造としては、例えば、以下の構造が挙げられる。
【化6】
JP0005167483B2_000007t.gif
【化7】
JP0005167483B2_000008t.gif

【0031】
上記一般式(1)、(11)及び(12)において、上記mは0~3の整数である。上記mとして好ましくは0又は1である。
【0037】
上記一般式(21)中、m2及びm3はそれぞれ独立に0~3の整数である。上記m2及びm3として好ましくは、それぞれ独立に0又は1である。上記m2及びm3は同一の値でもよく、異なる値でもよい。
【0039】
上記一般式(21)におけるA’は水酸基である。
【0040】
上記(A)成分と上記(B)成分とを反応させて、錯体とすることができその錯体の構造には特に限定はない。上記錯体は、上記(B)成分を配位子として、上記(A)成分に含まれるランタンに配位することにより、錯体が形成されていると考えられる。上記(A)成分と上記(B)成分とが反応して錯体を形成しているか否かは、例えば、上記(A)成分は単独で粉末状であるが、上記(B)成分を加えることにより、より大きな粒状に変化することを観察して確認することができる。尚、当該説明は、上記(A)成分と上記(B)成分との錯形成又は会合の有無を示す一例であり、本発明を定義又は限定する説明ではない。
【0041】
上記錯体において、上記(A)成分と上記(B)成分との割合にも特に限定はない。上記(A)成分と上記(B)成分とのモル比は、通常1:(0.5~5)、好ましくは1:(0.7~4)、更に好ましくは1:(0.7~3)、より好ましくは1:(0.8~2)、特に好ましくは1:(0.8~1.5)である。上記(B)成分の割合が上記範囲内であると、高収率で目的のエステル化合物が得られるので好ましい。特に、上記一般式(1)で表される化合物の上記Aが水酸基又はアミノ基の場合、上記(B)成分の割合が上記範囲内であると、高収率で目的のエステル化合物が得られるので好ましい。
【0042】
一方、上記一般式(1)で表される化合物の上記Aがアルコキシ基の場合、上記(A)成分と上記(B)成分とのモル比として好ましくは1:(1~5)、更に好ましくは1:(1~4)である。上記(B)成分の割合が上記範囲内であると、高収率で目的のエステル化合物が得られるので好ましい。
【0043】
上記錯体は、溶媒中に上記(A)成分及び上記(B)成分を添加することにより得ることができる。上記(A)成分及び上記(B)成分の配合割合は、上記の割合の範囲とすることができる。上記溶媒としては、極性有機溶媒を用いてもよく、非極性有機溶媒を用いてもよい。上記溶媒は1種でもよく、2種以上の混合溶媒でもよい。上記極性有機溶媒としては、例えば、THF、アニソール、1,4-ジオキサン、エステル交換反応における基質アルコールと同じアルコール(例えば、メタノール、エタノール、及びアリルアルコール)、及び基質エステル化合物と同じエステル化合物(例えば、酢酸エチル)が挙げられる。上記非極性溶媒は、脂肪族有機溶媒でもよく、芳香族有機溶媒でもよい。該脂肪族有機溶媒としては、例えば、アルカン及びシクロアルカン(例えば、炭素数4以上、好ましくは5以上)が挙げられる。上記脂肪族有機溶媒として具体的には、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、及びオクタンが挙げられる。更に、上記芳香族有機溶媒としては、例えば、ベンゼン及びトルエンが挙げられる。
【0044】
上記錯体の形態には特に限定はない。上記錯体は、溶媒中に存在していてもよい。また、該溶媒を留去して残渣として存在していてもよい。更に、本発明の錯体は、調製した状態でそのまま用いてもよい。また、上記錯体は、錯体として単離することなく、例えば、反応溶媒中で形成させ、そのまま引き続き反応に用いてもよい。上記錯体は、溶媒中で溶解せずに分散していることが好ましい。
【0045】
本発明において、上記(A)成分及び上記(B)成分は、上記錯体を含むエステル合成用触媒とすることができる
【0046】
上記エステル合成用触媒は、上記錯体を含む限り、その組成には特に限定はない。上記エステル合成用触媒は、上記錯体以外の他の成分を含んでいてもよい。上記エステル合成用触媒の形態には特に限定はない。上記エステル合成用触媒は、溶媒中に存在していてもよく、該溶媒を留去して残渣として存在していてもよい。更に、上記エステル合成用触媒は、調製した状態でそのまま用いてもよい。また、上記エステル合成用触媒は、触媒として単離することなく、例えば、反応溶媒中で形成させ、そのまま引き続き反応に用いてもよい。
【0047】
上記エステル合成用触媒は、エステル化合物の合成、特に原料であるエステル化合物とアルコールとを反応させ、目的とするエステル化合物を得るエステル交換反応を触媒することができる。よって、上記触媒は、エステル交換反応用触媒として利用することができる。
【0048】
本発明のエステル化合物の製造方法は、(A)ランタンアルコキシドと、(B)上記一般式(1)又は(2)で表される化合物とを用いてエステル交換反応を行うことを特徴とする。尚、本明細書では、エステル交換反応において基質となるエステル化合物及びアルコールを「基質エステル化合物」及び「基質アルコール」という。
【0049】
上記基質エステル化合物の種類及び構造には特に限定はない。上記基質エステル化合物はモノカルボン酸エステル化合物でもよく、ジカルボン酸エステル化合物等の多価カルボン酸エステル化合物でもよい。また、上記基質エステル化合物は、飽和カルボン酸エステル化合物でもよく、不飽和カルボン酸エステル化合物でもよい。更に、上記基質エステル化合物は、塩基性のエステル化合物(ピコリン酸エステル、ニコチン酸エステル、及びイソニコチン酸エステル等)でもよい。触媒として酸性化合物を用いた場合、塩基性のエステル化合物を用いてエステル交換反応を行うと、触媒が失活し易い。これに対して、本発明の製造方法では、かかる塩基性のエステル化合物でも効率的にエステル交換反応を行うことができる。
【0050】
上記基質エステル化合物として、沸点が50℃以上、好ましくは65℃以上、更に好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上のエステル化合物を用いることができる。従来のエステル交換反応は比較的高温で行われていた。よって、従来のエステル交換反応では、沸点が低いエステル化合物(例えば、沸点が50~110℃のエステル化合物)を基質とすることは困難であった。しかし、本発明の製造方法では後述のように、溶媒として沸点の低いヘキサンを用いることも可能である。その結果、沸点が低いエステル化合物を基質エステル化合物として用いても、エステル交換反応を行うことができる。沸点が上記範囲のエステル化合物としては、例えば、炭素数1~4のアルコールとギ酸又は酢酸とのエステル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルが挙げられる。
【0051】
上記基質エステル化合物をRCOOR’で表した場合(R;カルボン酸由来の一価の炭化水素基、R’;アルコール由来の一価の炭化水素基)、該R及びR’の種類及び構造には特に限定はない。上記Rとしては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、及びアリールアルケニル基が挙げられる。上記R’としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリールアルキル基、及びアリールアルケニル基が挙げられる。上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、及びアリールアルケニル基の種類及び構造は、本発明の錯体の上記R~Rの説明が妥当する。尚、上記R及びR’が不飽和結合を有する場合、該不飽和結合の数にも特に限定はない。
【0052】
上記基質エステル化合物の上記Rとして好ましくは、炭素数1~30、好ましくは3~15のアルキル基及びアルケニル基、炭素数3~20、好ましくは3~12のシクロアルキル基及びシクロアルケニル基、アリール基、並びにアリールアルキル基である。また、上記基質エステル化合物の上記R’として好ましくは、炭素数1~10、好ましくは1~7、更に好ましくは1~3のアルキル基及びアルケニル基、アリールメチル基、アルキニルメチル基である。上記基質エステル化合物として具体的には、例えば、CH(CHCOOR’で表されるカルボン酸エステル(n;0~3の整数)、(メタ)アクリル酸エステル、安息香酸エステル、フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステル、フェニル酢酸エステル(PhCHCOOR’)、ピコリン酸エステル、ニコチン酸エステル、及びイソニコチン酸エステルが挙げられる。
【0053】
本発明の製造方法において、上記基質アルコールの種類及び構造には特に限定はない。上記基質アルコールは一価アルコールでもよく、二価以上の多価アルコールでもよい。また、上記基質アルコールは、第一級アルコール、第二級アルコール、及び第三級アルコールのいずれでもよい。上記基質アルコールとして好ましくは第一級アルコール又は第二級アルコールであり、より好ましくは第一級アルコールである。
【0054】
上記基質アルコールをR-OHで表した場合(R;一価の炭化水素基)、該Rの種類及び構造には特に限定はない。上記Rとしては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリールアルキル基、及びアリールアルケニル基が挙げられる。上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、及びアリールアルケニル基の種類及び構造は、本発明の錯体の上記R~Rの説明が妥当する。尚、上記Rが不飽和結合を有する場合、該不飽和結合の数にも特に限定はない。
【0055】
上記基質アルコールの上記Rとして好ましくは、炭素数1~12、好ましくは1~10のアルキル基及びアルケニル基、炭素数4~12、好ましくは炭素数4~10のシクロアルキル基及びシクロアルケニル基、並びにアリールアルキル基である。上記基質アルコールとしてより具体的には、例えば、メタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、シクロヘキサノール、及びベンジルアルコールが挙げられる。
【0056】
本発明の製造方法において、目的のエステル化合物の種類及び構造には特に限定はない。上記目的のエステル化合物は、上記基質エステル化合物及び上記基質アルコールの組み合わせにより適宜選択することができる。
【0057】
本発明の製造方法において、上記基質エステル化合物及び上記基質アルコールの割合にも特に限定はない。アトムエコノミーの観点から、本発明の製造方法において、上記基質エステル化合物と上記基質アルコールとのモル比は、1:(0.5~20)、好ましくは1:(1~2)、更に好ましくは1:(1~1.5)、更に好ましくは1:(1~1.2)、特に好ましくは1:1とすることができる。エステル交換反応は可逆反応である。よって、エステル交換反応では、生成物側に平衡を偏らせるために、通常、原料のエステル又はアルコールの一方を化学量論以上用いる必要がある。しかし、原料を過剰に用いた場合、反応後に原料が残り、非経済的である共に、余剰の原料の処理が問題となる。しかし、本発明の製造方法では、上記モル比が上記範囲内でも、高効率でエステル交換反応により、目的のエステルを得ることができる。その結果、余剰の基質の発生を抑制できるので好ましい。
【0058】
本発明の製造方法において、エステル交換反応を行う溶媒の種類には特に限定はない。該溶媒としては極性有機溶媒を用いてもよく、非極性有機溶媒を用いてもよい。また、上記溶媒は1種でもよく、2種以上の混合溶媒でもよい。上記極性有機溶媒としては、例えば、THF、アニソール、1,4-ジオキサン、エステル交換反応における基質アルコールと同じアルコール(例えば、メタノール、エタノール、及びアリルアルコール)、及び基質エステル化合物と同じエステル化合物(例えば、酢酸エチル)が挙げられる。また、上記非極性溶媒は、脂肪族有機溶媒でもよく、芳香族有機溶媒でもよい。該脂肪族有機溶媒としては、例えば、アルカン及びシクロアルカン(例えば、炭素数4以上、好ましくは5以上)が挙げられる。上記脂肪族有機溶媒として具体的には、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、及びオクタンが挙げられる。更に、上記芳香族有機溶媒としては、例えば、ベンゼン及びトルエンが挙げられる。上記溶媒として上記脂肪族有機溶媒を用いると、基質エステル化合物及び基質アルコールの割合(モル比)が1:1に近い場合でも、高収率で目的のエステル化合物が得られるので好ましい。また、上記溶媒としてペンタン又はヘキサンを用いると、低沸点のエステルを基質エステル化合物として用いることができるので好ましい。更に、上記溶媒としてヘプタンを用いると、かさ高いエステル又はアルコールを基質として用いても、高収率で目的のエステル化合物が得られるので好ましい。
【0059】
本発明の製造方法では、上記(A)成分と上記(B)成分とを用いてエステル交換反応を行う。本発明の製造方法では、上記(A)成分と上記(B)成分とを用いている限り、その具体的な用法には特に限定はない。例えば、上記(A)成分と上記(B)成分の添加順序には特に限定はない。例えば、上記(A)成分及び上記(B)成分を同時に溶媒に添加してもよく、いずれか一方を添加した後で他方を添加してもよい。本発明の製造方法では、上記(A)成分と上記(B)成分とを用いることにより、溶媒中で上記(A)成分と上記(B)成分との錯体が形成されていると考えられる。そして、上記のように、該錯体が形成されることにより、上記(A)成分の触媒活性が高められ、エステル交換反応が促進されると考えられる(尚、当該説明は発明者の推測である。この説明は、本発明を何ら限定する趣旨の説明ではない。)。
【0060】
本発明の製造方法において、上記(A)成分及び上記(B)成分については、上述の上記(A)成分及び上記(B)成分の説明が妥当する。また、本発明の製造方法において、上記(A)成分と上記(B)成分の割合にも特に限定はない。該割合については上記錯体における説明が妥当する。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、実施例に示す形態に限られない。本発明の実施形態は、目的及び用途等に応じて、本発明の範囲内で種々変更することができる。
【0062】
(1)金属錯体触媒を用いたエステル交換反応(参考例)
スターラーチップを入れた10mlナスフラスコに、ソックスレー管及びコールドフィンガーを取り付けて、反応装置とした。次いで、ソックスレー管にモレキュラーシーブス4A(MS4A)(2.50g)を入れた。該MS4Aは、予め電子レンジで乾燥処理(700Wで1分間加熱後、減圧下で室温に冷えるまで乾燥する操作を3回行う)をした。
【0063】
上記反応装置内を減圧下で加熱乾燥した後、窒素充填した。窒素気流下、La(Oi-Pr)(6.32mg、0.02mmol)及びTHF(4ml)を上記反応装置内に加えた。室温で1時間撹拌後、それぞれ蒸留した無水ベンジルアルコール(216.3mg、0.206ml、2mmol)及びフェニル酢酸メチル(272.3mg、0.257ml、2mmol)を加え、90℃に熱した油浴を用いて1時間加熱還流し、エステル交換反応を行った。室温に戻した後、反応溶液をTHF(2ml)で希釈し、少量の水(約0.5ml)を加え、1分間撹拌した。その後、無水硫酸マグネシウムを加え、ろ過して固体を取り除いた。ろ液をエバポレーターを用いて濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いてヘキサン-酢酸エチル混合溶媒で分離・精製した。その結果、目的のベンジルエステルが無色透明の油状物質として得られた。収率は40%であった。
【0064】
金属錯体触媒毎のエステル化合物の収率を表1に示す。また、金属錯体触媒としてLa(Oi-Pr)を用い、MS4Aの代わりにモレキュラーシーブス5A(MS5A)を用いて、同様にエステル交換反応を行った。その結果を表1に併記する。
【0065】
【表1】
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【0066】
表1より、La(Oi-Pr)を用いた場合、基質エステル化合物と基質アルコールとの比が1:1でもエステル交換反応が進み、目的のエステル化合物が得られた。一方、一般にエステル交換反応に活性のあるTi(Oi-Pr)及び他のランタノイド金属であるyb(Oi-Pr)では、エステル交換反応により、目的のエステル化合物が得られなかった。また、La(Oi-Pr)と同様のルイス酸としてLa(OTf)を用いたところ、触媒活性は認められなかった。
【0067】
(2)配位子と金属錯体触媒を用いたエステル交換反応(I)
上記(1)のエステル交換反応で用いた反応装置(MS5Aを使用)内を減圧下で加熱乾燥した後、窒素充填した。窒素気流下、La(Oi-Pr)(6.32mg、0.02mmol)及びTHF、ヘキサン、又はベンゼン(4ml)を上記反応装置内に加えた。その混合液に蒸留した以下の構造の各配位子を激しく攪拌しながら室温で加えた。室温で1時間撹拌後、それぞれ蒸留した無水ベンジルアルコール(216.3mg、0.206ml、2mmol)及びフェニル酢酸メチル(272.3mg、0.257ml、2mmol)を加え、90℃に熱した油浴を用いて1時間加熱還流し、エステル交換反応を行った(その他の手順は上記(1)のエステル交換反応と同じである。)。各配位子を用いた場合のエステル化合物の収率を表2に示す。尚、表2におけるアルコール(2)、(7a)及び(7b)が実施例であり、アルコール(1a)、(1b)、(3)、(4)、(5a)、(5b)、(6)及び(7c)は参考例である。
【0068】
【表2】
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【0069】
アルコール(1a)、(1b)、(2)、(3)、(6)、(7a)、及び(7b)を用いることにより、エステル化合物の収率が向上した。特に、ジエチレングリコール(1a)が最もエステル化合物の収率が高かった。また、一般式(2)で表される化合物であるアルコール(3)より、一般式(1)で表されるアルコール(1a)、(1b)、(2)、(6)、(7a)、及び(7b)の方が、触媒活性が高いことが分かる。
【0070】
La(Oi-Pr)に対する配位子の添加量の割合を変更した場合、両者の割合が1:1の場合に、エステルの収率が高かった(No.2~4)。また、極性有機溶媒(THF)を用いた実験例(No.2)より、非極性有機溶媒(ヘキサン及びベンゼン)を用いた実験例(No.5及び6)の方が、エステルの収率が高かった。更に、芳香族の非極性有機溶媒(ベンゼン)を用いた実験例(No.6)より、脂肪族の非極性有機溶媒(ヘキサン)を用いた実験例(No.5)の方が、エステル化合物の収率が高かった。
【0071】
(3)配位子と金属錯体触媒を用いたエステル交換反応(II)
配位子として、下記記載の配位子を用いる他は、上記(2)と同様の方法により、エステル交換反応を行った。各配位子を用いた場合のエステル化合物の収率を以下に示す。尚、表3における配位子「L-A1-b」、「L-A1-d」、「L-A1-f」、「L-A5」、「L-G3」及び「L-H1-b」が実施例であり、その他は参考例である。
【0072】
【表3】
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【0073】
本発明の上記(B)成分に該当する「L-A1-b」、「L-A1-d」、「L-A1-f」、「L-A3」、「L-A5」、「L-B1-a」、「L-H1-a」、「L-H1-b」、及び「L-K1」は、いずれも、配位子を含まない場合(収率58%)よりも高い収率で目的のエステル化合物が得られた。
【0074】
(4)配位子と金属錯体触媒を用いたエステル交換反応(III)
配位子として、下記記載の配位子を用いる他は、上記(2)と同様の方法により、エステル交換反応を行った。各配位子を用いた場合のエステル化合物の収率を以下に示す。尚、表4におけるジエチレングリコールメチルエーテルが実施例であり、ジエチレングリコール及びジエチレングリコールジメチルエーテルは参考例である。
【0075】
【表4】
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【0076】
本実施例では、基質として、比較的反応性の低い安息香酸メチルとシクロヘキサノールとを用いてエステル交換反応によりエステル化合物を合成している。表4より、ジエチレングリコールメチルエーテル及びジエチレングリコールは、反応性の低い基質でも、ジエチレングリコールジメチルエーテルよりも高い収率で目的のエステル化合物が得られた。特に、ジエチレングリコールメチルエーテルは、ジエチレングリコールよりも高い収率で目的のエステル化合物が得られた。また、ジエチレングリコールメチルエーテルはLa(III)に対して等モル量以上用いても、高い収率で目的のエステル化合物が得られ、4倍モル量でも同様の結果であった。
【0077】
(5)他の基質を用いたエステル交換反応
配位子として、蒸留した無水ジエチレングリコール(2.12mg、1.87ml、0.02mmol)を用いた。また、溶媒として、表3記載の各溶媒を用いた。そして、基質として表3記載のエステル及びアルコールを用いて、上記(2)と同様の方法により、エステル交換反応を行った。各基質に対するエステルの収率を表3に示す。
【0078】
【化7】
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【0079】
【表5】
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【0080】
表3より、基質として様々なエステル化合物を用いた場合、基質エステル化合物と基質アルコールとのモル比が1:1でも、高い収率で目的のエステル化合物が得られた。特に、芳香族エステルを基質エステル化合物として用いた場合、高い収率で目的のエステル化合物が得られた(No.1~3、6)。また、基質エステル化合物として、金属に対して配位し易いピリジン環を持つエステル及びテレフタル酸メチルエステルを用いた場合も、極めて高い収率で目的のエステル化合物が得られた(No.7及び8)。更に、メタクリル酸アリルエステルを基質として用いた場合、メチルエステル及びビニルエステルに比べて高い収率で目的のエステル化合物が得られた(No.25~27)。
【0081】
かさ高いエステル又はアルコールを基質として用いた場合、ヘキサン中では反応性が低いが、溶媒をヘプタンに替え、反応温度を上げたり、反応時間を長くすることにより、高収率で目的のエステル化合物が得られた(No.4~5、15~18)。
【0082】
メチルフェニル酢酸及びベンジルアルコールのエステル交換反応では100%の収率で目的のエステル化合物が得られた(No.10)。一方、従来のエステル交換反応、即ち、エステルに対し過剰のベンジルアルコールを用いた場合(La(Oi-Pr)(2mol%)、メチルフェニル酢酸(5mmol)、ベンジルアルコール(5mml)、100℃で2時間反応)の収率は89%であった。よって、本実施例のエステル交換反応は、従来のエステル交換反応よりも反応性が高いことが分かる。
【0083】
溶媒として低沸点のヘキサン(69℃)を使用し、低沸点の酢酸エチル(76℃)を用いてエステル交換反応を行ったところ、比較的高い収率で目的のエステル化合物を得ることができた(No.9)。同様に、低沸点のアクリル酸のメチルエステル(約80℃)及びメタクリル酸のメチルエステル(約100℃)を基質としてエステル交換反応を行ったところ、比較的高い収率で目的のエステル化合物を得ることができた(No.19~22)。この結果より、本実施例によれば、低沸点のエステル化合物を基質として使用してエステル交換反応を行っても、高収率で目的のエステル化合物が得られることが分かる。