TOP > 国内特許検索 > レゾルシノール系ポリマーを前駆体とした高比表面積炭素とその製造方法及び用途 > 明細書

明細書 :レゾルシノール系ポリマーを前駆体とした高比表面積炭素とその製造方法及び用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5011535号 (P5011535)
公開番号 特開2008-222463 (P2008-222463A)
登録日 平成24年6月15日(2012.6.15)
発行日 平成24年8月29日(2012.8.29)
公開日 平成20年9月25日(2008.9.25)
発明の名称または考案の名称 レゾルシノール系ポリマーを前駆体とした高比表面積炭素とその製造方法及び用途
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
B01J  20/20        (2006.01)
B01J  20/30        (2006.01)
C09C   1/44        (2006.01)
C09D   7/12        (2006.01)
C09D  11/00        (2006.01)
C09J   9/02        (2006.01)
C09J  11/04        (2006.01)
H01G   9/058       (2006.01)
H01M   4/587       (2010.01)
FI C01B 31/02 101B
B01J 20/20 A
B01J 20/30
C09C 1/44
C09D 7/12
C09D 11/00
C09J 9/02
C09J 11/04
H01G 9/00 301A
H01M 4/58 103
請求項の数または発明の数 9
全頁数 12
出願番号 特願2007-059935 (P2007-059935)
出願日 平成19年3月9日(2007.3.9)
審査請求日 平成22年3月5日(2010.3.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
発明者または考案者 【氏名】木島 剛
【氏名】藤川 大輔
個別代理人の代理人 【識別番号】100127513、【弁理士】、【氏名又は名称】松本 悟
審査官 【審査官】岡田 隆介
参考文献・文献 特開平11-001315(JP,A)
特開2005-154268(JP,A)
調査した分野 C01B 31/00-31/36
特許請求の範囲 【請求項1】
香族環に2個以上のヒドロキシル基が置換した構造を持つフェノール類の中から選択された1種類以上のモノマーと、アルデヒド類の中から選択された1種以上のモノマーとの共重合体を骨格成分とする高分子化合物を不活性雰囲気下で焼成することにより得られる炭素において、直径100nm~2μmの粒子が連結した形態と2000/g以上のBET比表面積を有することを特徴とする炭素。
【請求項2】
前記芳香族環に2個以上のヒドロキシル基が置換した構造を持つフェノール類が、レゾルシノールであることを特徴とする請求項1に記載の炭素。
【請求項3】
前記共重合体を構成するモノマーのアルデヒド類が、ホルムアルデヒド及びフルフラールの中から選択された1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素。
【請求項4】
触媒としてのアルカリの存在下、アルキルアンモニウム塩及びアルキルアミンよりなる群から選択された1種以上の界面活性剤と水を1:120~1200のモル比で混合した溶液に、芳香族環に2個以上のヒドロキシル基が置換した構造を持つフェノール類の中から選択された1種類以上のモノマーと、アルデヒド類の中から選択された1種以上のモノマーとを加え、反応させて共重合体を生成させ、前記共重合体をアルコール類の中から選択された1種類以上の溶媒と酸の混合溶液で処理して得られた高分子化合物を不活性雰囲気下で焼成する炭素の製造方法において、前記混合溶液での処理を回以上行うことにより2000m/g以上のBET比表面積を有する炭素を製造することを特徴とする炭素の製造方法。
【請求項5】
前記界面活性剤が、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド及びブロミドヘキサデシルアミンよりなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項に記載の炭素の製造方法。
【請求項6】
前記混合溶液が、エタノールと塩酸の混合溶液であることを特徴とする請求項4又は5に記載の炭素の製造方法。
【請求項7】
前記芳香族環に2個以上のヒドロキシル基が置換した構造を持つフェノール類が、レゾルシノールであることを特徴とする請求項4~6のいずれか1項に記載の炭素の製造方法。
【請求項8】
前記のモノマーのアルデヒド類が、ホルムアルデヒド及びフルフラールの中から選択された1種以上であることを特徴とする請求項4~7のいずれか1項に記載の炭素の製造方法。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載の炭素を含み、(a)各種物質の分離剤、吸着剤若しくは貯蔵剤、(b)繊維、ゴム、フィルムあるいはプラスチック製品の添加剤、(c)塗料、インキ、接着剤あるいは紙塗工剤への添加剤、(d)電池材料、又は、(e)電気二重層キャパシタ材料、の用途に使用されることを特徴とする汎用性機能性材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高性能分離剤、吸着剤、物質貯蔵剤、繊維・ゴム・フィルム・プラスチック製品・インキ・塗料・接着剤などへの添加剤、各種電極材、断熱材などとして使用される高比表面積炭素とその製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノールのメタ位にヒドロキシル基が置換したレゾルシノールとホルムアルデヒド等のアルデヒド類を酸またはアルカリで縮合させて得られる油状または固体状の無定形ポリマーであるレゾルシノール樹脂は、フェノール樹脂と同様に、その熱硬化性を利用して、樹脂単独で、あるいはアルコールに溶かしたワニス、または木粉、染料などとともに硬化剤を加えて処理することにより、接着剤、絶縁積層板、化粧板等に用いられてきた。これらはいずれも専ら液状または固体ポリマーとしての流動性、接着性、熱硬化性、成形性を応用したものである。
【0003】
これに対して近年、レゾルシノール樹脂を多孔質化あるいは微粒子化する技術の開発が進んでいる。Pekalaらは、レゾルシノール(R)-ホルムアルデヒド(F)の加水分解・縮合反応機構と無機酸化物のゾル-ゲル反応との類似性を指摘するとともに、RF縮合体の超臨界乾燥により比表面積約700m/gのエアロゲルが得られることが見出されたとの報告がされている(非特許文献1)。
【0004】
そして、この多孔性のRFゲルを炭化することにより、多孔質カーボンが得られることを報告した(非特許文献2)。さらに、関連技術として、シリカ微粒子(非特許文献3)、ポリスチレンラテックス(非特許文献4)あるいはブロックコポリマー(非特許文献5、6)とレゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂との複合体を調製後、これを炭化することにより細孔構造を制御した炭素材料を合成した事例も報告されている。
【0005】
レゾルシノール/ホルムアルデヒド系樹脂の微粒子の合成法には、疎水媒体中で水溶性モノマーを重合する方法があり、直径数μmの球状粒子が得られる。これを不活性ガス中で焼成すると直径数μmの球状炭素粒子得られることが報告されている(非特許文献7)
【0006】
本発明者らも、界面活性剤のアルキルトリメチルアンモニウムブロミドと水酸化ナトリウム、1,3,5-トリメチルベンゼンおよびtert-ブタノールなどの添加剤の存在下でレゾルシノールとホルムアルデヒドを共重合してすることにより、レゾルシノール/ホルムアルデヒド共重合体のマイクロワイヤー、ナノワイヤー、ナノスフィア、ナノチューブを合成した(特許文献1、2、3)。これらの粒子を炭化することにより形状を保持した炭素が得られた(特許文献4、5、6)(非特許文献8、9)。
【0007】
このように、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂を炭素源として、樹脂の構造・形態それ自体、あるいは各種多孔体の細孔構造に樹脂を導入してできる骨格構造を炭素構造体として写し取ることにより、特異な形状や細孔構造を有する炭素材料ならびにこれを創製する技術が開発されてきた。
【0008】
ガス吸蔵材や電気二重層キャパシタの電極材料などの工業材料に有用とされるポーラスカーボンの高比表面積化法として、二酸化炭素あるいは水蒸気などのガスを高温で炭素と反応させるガス賦活法、ZnCl、KOHなどの薬品を加えた炭素前駆体を炭化する薬品賦活法およびゼオライト・シリカ多孔体の細孔に有機物を導入して、これを不活性雰囲気下で焼成する固体鋳型法(非特許文献10)が開発されている。
【0009】
1992年、Mobil社により、界面活性剤ミセルを鋳型として、直径2~8nmのハニカム状のメソ細孔を有するメソボーラスシリカが創製された(非特許文献11)。その後、同様の手法により、立方格子状等各種の細孔構造をもつメソ多孔質シリカに加えて、金属酸化物や硫化物を骨格成分とする数多くのメソ多孔体が相次いで合成された(非特許文献12)。
【0010】
本発明者らも、ドデシル硫酸イオンを鋳型として、尿素を用いる均一沈澱法により生成した複合体を作製し、ついで鋳型イオンを酢酸イオンで交換することにより六方構造型希土類酸化物メソ多孔体を得ている(非特許文献13、14)。さらに、二種類のノニオン性界面活性剤からなる液晶中で塩化白金酸を還元することにより、白金ナノチューブの合成にも成功した(非特許文献15)。
【0011】
界面活性剤とモノマーあるいはポリマーをクーロン的に結合させながら重合あるいは複合化させる方法も開発されている。ポリマー電解質に界面活性剤を添加することによって生成する複合化ポリアクリル酸/ドデシルトリメチルアンモニウムイオン複合体(非特許文献16)はその代表例である。同様な反応法により、ハニカム構造をもつフェノール/ホルムアルヒド高分子複合体も得られている(非特許文献17)。
【0012】
本発明者らも界面活性剤のアルキルトリメチルアンモニウムブロミド存在下でフェノールとフルフラールを共重合することにより、チューブ状ナノ構造体を合成した(非特許文献18)。
【0013】
また、最近、セチルトリメチルアンモニウムブロミド存在下で、レゾルシノール、ホルムアルデヒド、炭酸ナトリウム、溶媒から成る混合溶液を加熱反応させると、100nm以下の不定形のクラスター集合体を生じ、さらに、デシルトリメチルアンモニウムブロミドあるいはテトラプロピルアンモニウムブロミド存在下での同様な反応では直径1~3μmの球状のレゾルシノール-ホルムアルデヒド重合体粒子が生成し、これを不活性ガス中で焼成すると同様サイズの球状炭素粒子が得られることが報告されている(非特許文献19)。
【0014】
そしてさらに、水相に分散された油相を含んでなり、その油小球が150nm未満の数平均サイズを有する水中油型ナノエマルジョンにおいて、少なくとも一種の油、少なくとも一種の両親媒性脂質、及び少なくとも1つの疎水性ブロックと少なくとも1つの親水性ブロックとを含む少なくとも一種の非イオン性ポリマーを含み、前記両親媒性脂質に対する油の量の比率を1から10とすることによってナノエマルションを得ること(特許文献10)が提案されている。
【0015】

【非特許文献1】Pekala、J.Mater.Sci.、24、3221~3227(1989)
【非特許文献2】R.W.Pekala,J.Non-Cryst.Solids,145,90(1992)
【非特許文献3】S.Hanほか2名、Chem.Mater.、12、3337~3341(2000)
【非特許文献4】T.F.Baumannほか1名、J.Non-Cryst.Solids、350、120~125(2004)
【非特許文献5】C.Liangほか4名、Angew.Chem.Int.Ed.、43、5785~5789(2004)
【非特許文献6】T.Tanakaほか3名、Chem.Comm.、2125~2127(2005)
【非特許文献7】S.Yamamotoほか4名、Carbon、40、1345~1351(2002)
【非特許文献8】D.Fujikawaほか4名、Chem.Lett.、35、 432~433(2006)
【非特許文献9】D.Fujikawaほか3名、Carbon、In Press(2007)
【非特許文献10】Z.Maほか2名、Chem.Comm.、2365~2366(2006).
【非特許文献11】C.T.Kresgaほか4名、Nature、359、710~712(1992)
【非特許文献12】木島剛ほか1名、J.Soc.Inorg.Mater.、8、3~16(2001)
【非特許文献13】M.Yadaほか3名、Inorg.Chem.、37、6470~6475(1998)、
【非特許文献14】M.Yadaほか3名、Angew.Chem.Int. Ed.、38、3506~3509(1999)
【非特許文献15】T.Kijimaほか5名,Angew.Chem.Intern.Ed.,43,228-232(2004).
【非特許文献16】M.Antoniettiほか1名、Angew.Chem.Int.Ed.Eng.、33、1869(1994)
【非特許文献17】I.Moriguchiほか5名、Chem.Lett.、1171~1172(1999)
【非特許文献18】M.Uotaほか7名、MRS.Symp.Proc, 775,29-34(2003)
【非特許文献19】Nishiyama et al.、Carbon,43,269-274,(2005)
【特許文献1】特開2007-39506号公報
【特許文献2】特開2007-39507号公報
【特許文献3】特願2006-84312号
【特許文献4】特開2007-39263号公報
【特許文献5】特開2007-39264号公報
【特許文献6】特願2006-84311号
【特許文献7】特許第3468776号
【特許文献8】特許第3530527号
【特許文献9】特許第3645910号
【特許文献10】特開2001-226221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、以上、従来技術について紹介、炭素生成物その調製法に関する多岐にわたる研究報告、先行技術を念頭に置きつつ、新規な合成プロセスで調製された、新規な物性、形態を有する炭素材料を提供しようというものである。
【0017】
すなわち、炭素に高比表面積を賦与することにより、電気的、化学的、熱的、物理的に優れた機能を特異的に発現させることができる炭素を提供しようというものである。また、これによって、化学、電子、情報、環境の技術革新に寄与する新規素材を提供しようとするものである。
【0018】
炭素の一般的な高比表面積化法の賦活法は、炭素を化学的に酸化消耗することにより細孔を作り出しているため、炭素の消耗率が大きく、また、メソ孔、ミクロ孔のサイズの精密制御が困難である。
【0019】
ゼオライトの細孔を鋳型とする鋳型法では、炭素が鋳型の形状を写しとることにより、2000~4000m/gの高比表面積炭素が生成するが、工程が多段階であるなど実用面に難点がある。
【0020】
特許文献4や特許文献5に示されているような、界面活性剤存在下で重合して生成したレゾルシノール(R)-ホルムアルデヒド(F)共重合体を前駆体とした炭素は、BET比表面積が1500m/gより低いものであった。
【0021】
炭素の比表面積、細孔径の制御を簡単・低コストでできれば、電極、発熱体、強化剤、吸着材、断熱材、導電材、集電体、抵抗、磁気遮蔽材、耐食性材料、多孔性吸着剤等の工業材料として使用される炭素材料の高性能化・機能化・精密化を図ることができる。しかし、賦活法、固体鋳型法以外の炭素の高比表面積化法は開発されていない。
【課題を解決するための手段】
【0022】
そこで、発明者は、レゾルシノール(R)とホルムアルデヒド(F)の共重合場を界面活性剤の会合体とすることにより、生成するRF共重合体の構造と形態が制御され、炭化後の炭素の比表面積を大きくすることが可能ではないかと考え、反応に用いる原料、触媒及び界面活性剤の種類ならびに反応条件、炭化前処理条件、炭化条件についてさらに鋭意研究を進めた。
【0023】
その結果、鋳型ミセルにカチオン性界面活性剤、触媒にアルカリを使用した条件で調製したレゾルシノール/ホルムアルデヒド系ポリマー粒子を、所定回数酸処理した後、これを不活性雰囲気下で焼成することにより、直径100nm~2μmの粒子が連結した形態を持つ1500m/g以上のBET比表面積を有する高比表面積炭素が生成することを見出した。
【0024】
すなわち、本発明者等は、鋭意研究をした結果、前示課題を以下に記載する技術的構成が講じられた発明によって解決、達成することに成功したものである。
すなわち、第1の発明は、
(1)芳香族環に2個以上のヒドロキシル基が置換した構造を持つフェノール類の中から選択された1種類以上のモノマーと、アルデヒド類の中から選択された1種以上のモノマーとの共重合体を骨格成分とする高分子化合物を不活性雰囲気下で焼成することにより得られる炭素において、直径100nm~2μmの粒子が連結した形態と2000/g以上のBET比表面積を有することを特徴とする炭素である。
また、第1の発明の高比表面積炭素に関する実施態様として、以下の(2)又は(3)が提示される。
(2)前記芳香族環に2個以上のヒドロキシル基が置換した構造を持つフェノール類としては、レゾルシノールを使用することができる。
(3)前記共重合体を構成するモノマーのアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、フルフラール等の中から選択された1種以上のアルデヒド類を使用することができる。
【0025】
以下、第2の発明は、第1の発明の高比表面積炭素の製造方法を提示するものである。
すなわち、第2の発明は、
(4)触媒としてのアルカリの存在下、アルキルアンモニウム塩及びアルキルアミンよりなる群から選択された1種以上の界面活性剤と水を1:120~1200のモル比で混合した溶液に、芳香族環に2個以上のヒドロキシル基が置換した構造を持つフェノール類の中から選択された1種類以上のモノマーと、アルデヒド類の中から選択された1種以上のモノマーとを加え、反応させて共重合体を生成させ、前記共重合体をアルコールの中から選択された1種類以上の溶媒と酸の混合溶液で処理して得られた高分子化合物を不活性雰囲気下で焼成する炭素の製造方法において、前記混合溶液での処理を回以上行うことにより2000m/g以上のBET比表面積を有する炭素を製造することを特徴とする炭素の製造方法である。
また、第2の発明の高比表面積炭素の製造方法に関する実施態様として、以下の(5)(8)が提示される。
(5)前記界面活性剤としては、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド等のアルキルアンモニウム塩、ブロミドヘキサデシルアミン等のアルキルアミンよりなる群から選択された1種以上の界面活性剤を使用することができる。
(6)前記混合溶液としては、エタノール等のアルコール類の中から選択された1種類以上の溶媒と塩酸等の酸の混合溶液を使用することができる。
(7)前記芳香族環に2個以上のヒドロキシル基が置換した構造を持つフェノール類としては、レゾルシノールを使用することができる。
(8)前記モノマーのアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、フルフラール等の中から選択された1種以上のアルデヒド類を使用することができる。
【0026】
また、以下、第3の発明は、第1の発明の高比表面積炭素の用途発明を提示するものである。
すなわち、第3の発明は、
(9)前記(1)~(3)のいずれか1項に記載の炭素を含み、請求項1に記載の炭素を含み、(a)各種物質の分離剤、吸着剤若しくは貯蔵剤、(b)繊維、ゴム、フィルムあるいはプラスチック製品の添加剤、(c)塗料、インキ、接着剤あるいは紙塗工剤への添加剤、(d)電池材料、又は、(e)電気二重層キャパシタ材料、の用途に使用されることを特徴とする汎用性機能性材料である。
【発明の効果】
【0027】
以上の構成によって、本発明は以下に列記するように多岐にわたる優れた作用効果が奏せられ、これにより各種分野において使用されることが期待される。
1)これを物質分離材として用いた場合、酸・アルカリ領域において化学的に安定でかつ粒子形態・サイズが制御されたクロマトグラフィーの担体、イオン交換樹脂等への応用が期待できる。
2)これを物質貯蔵材として用いた場合、その特異な形状により、水素等の小分子やイオンの貯蔵に効果的に働くことが期待される。
3)これを繊維、ゴム、フィルムあるいはプラスチック製品などの添加剤として用いた場合、化学的熱的に安定でその特異な形状より、製品の改質、補強に大きく貢献できる。
4)これを塗料、インキ、接着剤あるいは紙塗工剤などの液体製品への添加剤として用いた場合、化学的熱的に安定でその特異な形状より、製品の改質に大きく貢献できる。
5)これを電池材料として用いた場合、粒子の特異な形状・組成より、電極材料として高性能化が期待できる。
6)これを電気二重層キャパシタ材料として用いた場合、粒子の特異な形状・組成より、高性能化が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明のねらいとするところは、直径100nm~2μmの粒子が連結した形態を持つ1500m/g以上のBET比表面積を有する高比表面積炭素を提供するところにあることは、前述したとおりである。
【0029】
本発明によって得られる炭素は、その合成方法において先に紹介した先行文献(非特許文献19)に記載されたクラスター粒子に類似しているが、炭素の細孔特性が異なる。以下に述べる実施例1の窒素吸脱着等温曲線の結果から明らかなように、BET比表面積値が3400m/g超に達することが証拠付けられており、先行文献の報告例とは構造的に大きな違いがある。
【0030】
また、本発明の炭素の製造方法は、先行特許文献5とほぼ同じである。これらの先行文献の手法は界面活性剤水溶液中で調製したレゾルシノールとホルムアルデヒドの共重合体をHCl等の酸で処理した後、炭化する手法であるが、本発明では先行文献と同じ工程により炭素調製に至るも、HCl等の酸による処理回数を複数回とすることにより、炭素の高比表面積化に導くことに成功したものである。すなわち、酸処理という同じ合成プロセスであっても、酸処理回数が違うだけで得られる炭素の比表面積が異なり、この処理回数が、炭素の高比表面積化にとって重要である。
【0031】
酸処理を2回行うことにより、1回の場合と比べて、炭素の比表面積が顕著に増大するが、後述する実施例に示されるように、酸処理回数が多くなる程、比表面積が増大し、BET比表面積1500m/g以上の炭素が得られるから、4回~10回とすることが好ましい。酸処理回数が5回以上になると、炭素のBET比表面積が2000m/g以上になるので、より好ましい。
【0032】
本発明の炭素の前駆体となる高分子の含有成分と構造は、1種類以上のフェノール類の中から選択された1種類以上のモノマーと1種以上のアルデヒド類との共重合体を骨格成分とする特定寸法・形態のポリマー粒子であり、その構成成分であるフェノール類とアルデヒド類に関しても、組成的に多様な組み合わせを許容するものであることに加え、前駆体の合成条件、前駆体の前処理、焼成温度など炭化条件など実に多様な組み合わせを含むものである。
【0033】
レゾルシノール類の芳香族環に2個以上のヒドロキシル基が置換した構造を持つフェノール類の中から選択された1種類以上のモノマーと、アルデヒド類の中から選択された1種以上のモノマーとの共重合体を骨格成分とする高分子化合物の一例としては、特許文献5に記載されたようなワイヤー状化合物があり、ワイヤー状化合物を前駆体として、特許文献5に記載された発明においては、ワイヤー状炭素粒子が得られるが、本発明においては、直径100nm~2μmの粒子が連結した形態を持つ高比表面積炭素が得られる。
【0034】
また、製造方法の骨子は、界面活性剤溶液中でフェノール類とアルデヒド類各1種類以上を混合し塩基性縮合剤のもとで反応させ、生成物を酸処理して炭化することで高比表面積の炭素に誘導するというものであり、構造体を構築するための各段階での最適反応温度や反応混合物組成も対象とするモノマー種や用いる界面活性剤の特性あるいは炭素前駆体の前処理条件、炭化条件によって多様に変化し、その結果、前駆体の焼成によって得られる炭素の構造・形態にも違いが現れる。
【0035】
この出願の発明は、以上の特徴を持つものであるが、以下、実施例を添付した図面に基づき、具体的に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明に対して、あくまでもその一態様例を示すものにすぎず、本発明を構成するモノマー種や製造方法もこの実施例によって限定されるべきではない。
【実施例】
【0036】
実施例1;
レゾルシノール、水酸化ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド)および水1:1:1:480のモル比の溶液を調製した。この溶液にホルムアルデヒド(モル比2)の溶液を加え25℃で3日間静置し、続いて90℃で24時間静置した。得られた固相をろ過により水分を除去した。その後、この生成物を20倍容のエタノールに分散させ、ついで、この分散液にNaOHの仕込み物質量の10倍量のHClを加え、これを室温で8時間攪拌した後、ろ過した。この酸処理操作を計6回行なった。得られた酸処理試料を炭素前駆体とし、これを窒素雰囲気下1000℃で焼成することにより、炭素を得た。
走査型電子顕微鏡(SEM)像より、この炭素は数百nmの粒子が連結した形態を持っていることが分かった(図1(a))。また、窒素吸脱着等温評価を行ったところ、炭素はミクロ孔と4nm以下のメソ孔から成る多孔体であり、BET比表面積は3430m/gと高い値を示すことが分かった(図1(b、c))。
【0037】
実施例2;
レゾルシノール、水酸化ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミドおよび水1:1:1:240のモル比の溶液を調製した。この溶液にホルムアルデヒド(モル比2)の溶液を加え25℃で3日間静置し、続いて90℃で24時間静置した。得られた固相をろ過により水分を除去した。その後、この試料を20倍容のエタノールに分散させ、ついで、この分散液にNaOHの仕込み物質量の10倍量のHClを加え、これを室温で8時間攪拌した後、ろ過した。この酸処理操作を計5回行なった。得られた酸処理試料を炭素前駆体とし、これを窒素雰囲気下1000℃で焼成することにより、BET比表面積2236m/gの炭素が得られた。
【0038】
本発明は、以上の実施例に加え、多岐にわたる実験例を積み重ね、得られたデータを整理した結果、前記(1)項に記載した炭素であることが確認されたものである。
【0039】
そして、その結果、本発明においては、レゾルシノール系樹脂を主要成分として組織された高分子を前駆体とすることで直径100nm~2μmの粒子が連結した形態を持つ1500m/g以上の高比表面積炭素を得ることに成功したものであり、その意義は極めて大であると確信する。その詳細な物性や、諸特性及び各種技術分野における作用効果に関する具体的データ等の開示、及びこれに関連して誘導される新たな技術的可能性、発展性等の研究開発は、今後の研究に待つところ大であり、委ねられているものであるが、その組成と特徴的な構造からして、諸分野において優れた作用効果を奏しうることの可能性は極めて大である。
【0040】
すなわち、特有なプロセスによって構造制御された炭素粒子の特異な形状とその細孔の微細性、あるいは分子ふるい、物質分離、小分子の貯蔵、電気伝導あるいは電気絶縁性、特定分子に対する選択的吸着特性等の各種有用な機能を有し、これら有用機能の発現によって高性能分離剤、吸着剤、物質貯蔵剤、繊維・フィルム・プラスチック製品・インキ・塗料・接着剤・紙塗工剤などへの添加剤、電池材料、キャパシタ材料など工業的に極めて重要な各種用途に供することのできる炭素を得ることに成功したものである。
【0041】
芳香族環に2個以上のヒドロキシル基が置換した構造を持つフェノール類とアルデヒドの共重合体を主要成分として組織された高分子を前駆体として得られた直径100nm~2μmの粒子が連結した2000/g以上の高比表面積炭素(請求項1)の製造方法は、前記実施例で具体的に開示したところであるが、これを、反応混合物の調製から実施する場合の製造方法における反応条件について言及、要約すると、以下のとおりである。
【0042】
レゾルシノール1モルに対し、セチルトリメチルアンモニウムブロミドを0.1~2モル好ましくは0.5~1モル、水酸化ナトリウムを0.01~3モル好ましくは0.5~1モルおよび水を120~1200モル好ましくは240~480モルを加えた溶液に、ホルムアルデヒドを1~6モル好ましくは2~3モルを加え、10~80℃好ましくは20~40℃で0~100時間好ましくは48~72時間反応させ、続いて、40~100℃好ましくは80~90℃で0~100時間好ましくは12~24時間反応させる。得られた固相をろ過により水分を除去する。このポリマー試料を5~100倍容好ましくは20~50倍容のエタノールに分散させ、ついで、この分散液にNaOHの仕込み物質量の2~20倍量好ましくは5~10倍量のHClを加え、これを10~60℃好ましくは室温で0.5~24時間好ましくは4~10時間攪拌した後、ろ過する。この酸処理操作を計2~10回好ましくは4~6回行う。得られた試料を不活性雰囲気下で600~3000℃好ましくは800~1000℃で、0.5~12時間好ましくは2~4時間焼成し、炭素を得る。
その反応条件は、例示的に要約すると以下のとおりである。
【0043】
以上、レゾルシノール-ホルムアルデヒド系ポリマーを前駆体とする炭素生成物を得る際の反応操作と反応条件を説明したが、それ以外のレゾルシノール-アルデヒド系ポリマー粒子においても前示した反応操作、反応条件、炭化前処理条件と同様の手順ないしはこれに準じた操作条件によって実施される。
【0044】
すなわち、このポリマー粒子の反応混合物の調製から、最終生成物の炭素を得るまでの過程は、次のように構成される。まず、原料の選択の際には、アルキルトリメチルアンモニウムイオンと結合するフェノキシドを与えるフェノール系の中でも水に易溶であるレゾルシノールとホルムアルデヒドのように、モノマーが3次元的に重合し、界面活性剤と結合し、水(水系溶媒)に溶けやすいものを選択し、均一組成溶液から構造化を促すことが望ましい。
【0045】
セチルトリメチルアンモニウムブロミド存在下でレゾルシノール/ホルムアルデヒド共重合反応を行うと、レゾルシノールとホルムアルデヒド共重合体とセチルトリメチルアンモニウム分子が複合化したポリマー粒子が生成する。この後行う塩酸/エタノール処理はこの複合体からセチルトリメチルアンモニウム分子を除去することを目的としており、同分子が複合体から完全に除去されることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、炭素生成物が前述のような構造になっているため、クロマトグラフィーの担体、イオン交換樹脂などへの応用、水素等の小分子やイオンの貯蔵、繊維、ゴム、フィルムあるいはプラスチック製品などの添加剤、塗料、インキ、接着剤あるいは紙塗工剤などの液体製品への添加剤、電池の電極材料、電気二重層キャパシタ材料のような各種分野において今後大いに利用され、産業の発展に寄与するものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1(a)】実施例1で得られた高比表面積炭素の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察写真である。
【図1(b)】実施例1で得られた高比表面積炭素の窒素吸脱着等温曲線である。
【図1(c)】実施例1で得られた高比表面積炭素のBJH曲線である。
図面
【図1(b)】
0
【図1(c)】
1
【図1(a)】
2