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明細書 :モリブデン又はタングステンの吸着方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5165230号 (P5165230)
公開番号 特開2008-127651 (P2008-127651A)
登録日 平成24年12月28日(2012.12.28)
発行日 平成25年3月21日(2013.3.21)
公開日 平成20年6月5日(2008.6.5)
発明の名称または考案の名称 モリブデン又はタングステンの吸着方法
国際特許分類 C22B   3/24        (2006.01)
B01J  20/24        (2006.01)
C02F   1/28        (2006.01)
C22B   3/44        (2006.01)
C22B  34/34        (2006.01)
C22B  34/36        (2006.01)
C22B  41/00        (2006.01)
FI C22B 3/00 ZABK
B01J 20/24 B
C02F 1/28 B
C22B 3/00 Q
C22B 34/34
C22B 34/36
C22B 41/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2006-315839 (P2006-315839)
出願日 平成18年11月22日(2006.11.22)
審査請求日 平成21年8月11日(2009.8.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】松本 道明
個別代理人の代理人 【識別番号】100093997、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 秀佳
【識別番号】100101616、【弁理士】、【氏名又は名称】白石 吉之
【識別番号】100107423、【弁理士】、【氏名又は名称】城村 邦彦
【識別番号】100120949、【弁理士】、【氏名又は名称】熊野 剛
審査官 【審査官】河口 展明
参考文献・文献 特公昭49-030943(JP,B1)
特開昭54-004816(JP,A)
特開昭54-004813(JP,A)
特開昭62-266192(JP,A)
特開昭52-104357(JP,A)
調査した分野 C22B 1/00-61/00
B01J 20/00-20/34
C02F 1/28
特許請求の範囲 【請求項1】
pHが1.5以上3以下の値を示し、オキソ酸あるいはオキソ酸アニオンの形態で溶存するモリブデン又はタングステンの水溶液中に、天然木質系材として竹の表皮部を供給することで、水溶液中のモリブデン又はタングステンを吸着するモリブデン又はタングステンの吸着方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法で得られたモリブデン又はタングステンの吸着体から竹の表皮部を焼却することで、吸着体中のモリブデン又はタングステンを回収するモリブデン又はタングステンの回収方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の吸着方法に関し、特にモリブデン又はタングステンを吸着する溜めの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モリブデンやタングステンなどの、いわゆる希少金属と呼ばれる金属元素は、工業用資源としての有用性あるいは産業的処理に供する資源としての有用性を見出され、例えば種々の製造分野で利用されている。
【0003】
その一方で、これら金属に対しては、利用後の環境暴露による環境汚染が懸念されており、これら金属を含む廃液の適正な処理が望まれている。また、これら金属を回収することによる再利用(二次的利用)に対する社会的要望も高まっている。
【0004】
しかしながら、これらの金属は、水中(例えば廃液中など)においてはオキソ酸あるいはオキソ酸アニオンの形態で存在するものが多く、そのために当該金属の分離・回収が困難であるという問題を抱えていた。
【0005】
この問題を解決するための手段として、例えば特開平09-239266号公報(特許文献1)には、糖側鎖を導入したキトサン誘導体の架橋体からなるゲルマニウム分離材が提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の分離材(吸着剤)は、特定物質(ジメチルアミンボラン)の介在下で糖をキトサンと反応させ、糖側鎖を導入する工程や、キトサンの架橋化工程が必要となるため、どうしても分離材の製造コストが高くなる。そのため、大量の廃液処理が必要となる社会的要請に対して十分に応えることは現実的には難しい。

【特許文献1】特開09-239266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の事情に鑑み、本発明では、吸着・分離が困難な金属に対しても容易かつ低コストに吸着可能とすることで、産業的利用後の回収効率あるいは二次的利用効率を高めた金属の吸着方法を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、pHが1.5以上でかつ3以下の値を示し、オキソ酸あるいはオキソ酸アニオンの形態で溶存するモリブデン又はタングステンの水溶液中に、天然木質系材として竹の表皮部を供給することで、水溶液中のモリブデン又はタングステンを吸着するモリブデン又はタングステンの吸着方法を提供する。
【0009】
このように、本発明は、水中でオキソ酸あるいはオキソ酸アニオンの形態で溶存する金属に対して、天然木質系材、例えばスギや竹などから採取した天然木質成分が優れた吸着作用を生じる、との本発明者の知見に基づきなされたものである。すなわち、これら木質成分を主とする植物の一部(例えば樹木における辺材や樹皮など)を吸着剤として、オキソ酸イオンの形態をなす金属の水溶液中に供給することで、目的とする金属を容易に吸着・分離することができる。このように、天然木質系材をそのまま吸着剤として使用することができれば、従来の吸着剤に比べて非常に安価に入手可能となる。そのため、大規模な吸着・分離処理が可能であり、例えば製造の過程で生じる、大量の廃液に対しても対応することが可能となる。
【0010】
天然木質系材は、例えば微細化した状態で上記金属水溶液中に供給するのが好ましい。当該水溶液中における金属(オキソ酸金属)との接触面積が増加するためである。なお、微細化した天然木質系材の具体的形態は問わない。もちろん、当該天然木質系材の入手方法(削り出し、破砕、篩掛け等)に起因して生じる形態全てを含む。
【0011】
また、吸着したモリブデン又はタングステンの二次的利用を図る目的で、上述の方法で目的の金属としてモリブデン又はタングステンを吸着した後、得られたモリブデン又はタングステンの吸着体から竹の表皮部を焼却することで、吸着体中のモリブデン又はタングステンを回収することもできる。本発明は天然木質系材としての竹の表皮部を実質的に吸着剤として使用するものであるから、目的金属の吸着後、その吸着体を例えば燃焼させることで、天然木質成分を除去して容易に目的の金属を回収することができる。また、天然木質系材であれば環境に対する還元性も高いため、環境負荷も非常に小さく、資源の処理・再利用を図るには最適である。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、吸着・分離が困難な金属に対しても容易かつ低コストに吸着可能とすることで、産業的利用後の回収効率あるいは二次的利用効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る吸着方法による吸着の対象となる金属は、水に溶け、かつ水中でオキソ酸あるいはオキソ酸アニオンの形態を採る得るものであり、例えば希少金属と呼ばれる金属に多く含まれる。具体的には、モリブデンやタングステン、ゲルマニウムなどの希少金属を挙げることができる。
【0014】
これに対して、吸着剤として使用可能な天然木質系材には、例えばスギ、マツ、サクラなどの木本系植物(樹木)の他、竹やサトウキビなどの草本系植物から採取されたものを挙げることができる。採取箇所は特に問わないが、木本系であれば、辺材や樹皮、特に樹皮が高い吸着作用を示すため、好適である。これら天然木質系材は採取したそのままの状態で使用可能であるが、その種類あるいは採取状況によっては、採取物中から水溶性の成分が溶出し、二次的な汚染を引き起こす可能性があるため、予め水洗浄等の処理を施しておき、不要な成分を除去しておくのが好ましい。
【0015】
以下、本発明の有用性を立証するため本発明者らが行った実験の結果について記す。
【0016】
ここで、各実験(実施例1~4)に用いる木質系材(スギ、サクラ、マツ、竹)として、何れも乾燥後、粉砕したものを50mesh~70meshに篩掛けして得られたものを使用した。また、吸着対象となる金属(ゲルマニウム、モリブデン、タングステン)の水溶液として、粉末状の各種金属化合物(GeO、MoO、HWO)を所定pHの緩衝液に溶かしたものを使用した。また、pHの調整は、各pH領域ごとに以下の緩衝液を使用することで行った。
pH1~6 : 0.1M HCl‐CHCOOH‐CHCOONa緩衝液
pH7~9 : 0.1M NH‐NHCl緩衝液
pH10~11: 0.1M NaCO‐NaHCO緩衝液
pHの測定はpH計で、水溶液の濃度はICP発光分析装置を用いて行った。
【0017】
吸着実験は実施例1~4共に、上記金属水溶液に微細化した木質系材を供給したものを100rpmで振盪しながら30℃で24h保持することで行った。以下、各実施例の詳細について説明する。
【実施例1】
【0018】
複数種の天然木質系材を用いた場合の、ゲルマニウムに対する吸着作用の違いについて検証を行った。吸着剤として、三種類の樹木(スギ、サクラ、マツ)から採取した天然木質系材を例えば粉状に微細化したものを使用した。このうち、スギとマツ(ここではクロマツ)については、それぞれ樹皮の部分と、それ以外(辺材や芯材を含む肉質部)の部分とを吸着剤として使用した。また、サクラ(ここではPrunus jamasakura)については、樹皮を使用し、水で洗浄したものと、予めアルカリ処理を施したものとをそれぞれ吸着剤として使用した。
【0019】
これら木質系材を、異なるpHを示す複数のゲルマニウム水溶液に濃度0.05g/10mlとなるよう供給して、各木質系材によりゲルマニウムを吸着させ、そのときの吸着量を測定した。
【0020】
図1にその結果を示す。ここで、横軸はゲルマニウム水溶液の平衡時におけるpHを示し、縦軸はゲルマニウムの吸着量qe[mmol/g]を示す。同図より、木質系材の種類によらず、pHが高くなるにつれてゲルマニウムの吸着量が増加する傾向が見られた。また、この中でもスギ、特にスギの樹皮を吸着剤として使用した場合に、非常に高い吸着作用が得られた。具体的には、pH=9のとき、吸着量は約0.30mmol/gであった。
【実施例2】
【0021】
次に、竹から採取した天然木質系材を吸着剤として用いた場合の、モリブデンに対する吸着作用について検証を行った。具体的には、竹(ここでは孟宗竹)の表皮部を粉状に微細化したものを、異なるpHを示す複数のモリブデン水溶液に濃度0.05g/10mlとなるよう供給して、当該天然木質系材によりモリブデンを吸着させ、そのときの吸着量を測定した。
【0022】
図2にその結果を示す。ここで、横軸はモリブデン水溶液の平衡時におけるpHを示し、縦軸はモリブデンの吸着量qe[mmol/g]を示す。同図より、竹から採取した天然木質系材を吸着剤として使用した場合、比較的低pH領域において優れた吸着性能を示す傾向が見られた。具体的には、pH=1.5~3のとき、吸着量は約0.09mmol/gであった。
【実施例3】
【0023】
次に、同じく竹から採取した天然木質系材を吸着剤として用いた場合のモリブデンおよびタングステンに対する吸着作用と、平衡濃度との関係について検証を行った。具体的には、竹の表皮を粉状に微細化したものを、溶解量を調整することで濃度(平衡時)を異ならせたモリブデンの水溶液に供給し、そのときのモリブデンの吸着量を測定した。タングステンの吸着量についても同様の方法で測定した。
【0024】
図3にその結果を示す。横軸は各金属(オキソ酸)水溶液の平衡濃度Ce[ppm]を示し、縦軸は各金属(モリブデン、タングステン)の吸着量qe[mg/g]を示す。同図においても、平衡濃度Ceの増加に伴い、吸着量qeが増加する傾向が見られた。また、この結果を、同図中実線(モリブデン)および1点鎖線(タングステン)で示すLangmuirの吸着等温線と重ね合わせて見ると、今回の平衡濃度Ceと吸着量qeとの関係が当該吸着等温線に適合していることが分かる。
【実施例4】
【0025】
次に、2種類の樹木(スギ、サクラ)から採取した天然木質系材を吸着剤として用いた場合のゲルマニウムに対する吸着作用と、平衡濃度との関係について検証を行った。具体的には、スギあるいはサクラの樹皮を粉状に微細化したものを、溶解量を調整することで濃度(平衡時)を異ならせたゲルマニウム水溶液に供給し、そのときのゲルマニウムの吸着量を測定した。
【0026】
図4にその結果を示す。横軸は各金属(オキソ酸)水溶液の平衡濃度Ce[mmol/L]を示し、縦軸は各金属(ゲルマニウム)の吸着量qe[mmol/g]を示す。同図より、所定値以上の平衡濃度Ceであれば、その際の吸着量qeは安定した値を示す傾向が見られた。この傾向は、樹木(天然木質系材)の種類に依ることなく見られた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】各種天然木質系材を吸着剤として用いた場合のゲルマニウムの吸着量と、その際のpHとの関係を示す図である。
【図2】竹から採取した天然木質系材を吸着剤として用いた場合のモリブデンの吸着量と、その際のpHとの関係を示す図である。
【図3】竹から採取した天然木質系材を吸着剤として用いた場合のモリブデンおよびタングステンの吸着量と、その際の平衡濃度との関係を示す図である。
【図4】各種天然木質系材を吸着剤として用いた場合のゲルマニウムの吸着量と、その際の平衡濃度との関係を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3