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明細書 :金属材料の結晶粒微細化方法、結晶粒微細化装置、及びこの方法によって製造された金属材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4487070号 (P4487070)
公開番号 特開2007-125587 (P2007-125587A)
登録日 平成22年4月9日(2010.4.9)
発行日 平成22年6月23日(2010.6.23)
公開日 平成19年5月24日(2007.5.24)
発明の名称または考案の名称 金属材料の結晶粒微細化方法、結晶粒微細化装置、及びこの方法によって製造された金属材料
国際特許分類 B21C  23/00        (2006.01)
FI B21C 23/00 Z
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願2005-321035 (P2005-321035)
出願日 平成17年11月4日(2005.11.4)
審査請求日 平成19年3月23日(2007.3.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
発明者または考案者 【氏名】真壁 朝敏
【氏名】山根 琢矢
【氏名】近藤 了嗣
【氏名】高良 一夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100098545、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 伸一
【識別番号】100087745、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 善廣
【識別番号】100106611、【弁理士】、【氏名又は名称】辻田 幸史
審査官 【審査官】福島 和幸
参考文献・文献 特開2005-000996(JP,A)
特許第2751984(JP,B2)
特開平08-066721(JP,A)
特開2005-000991(JP,A)
特許第3654466(JP,B2)
調査した分野 B21C 23/00
B21C 25/00
特許請求の範囲 【請求項1】
屈曲した通路を有する治具を用い、所定長さの金属材料をねじりながら前記通路の入口から押し込むことで、前記金属材料が前記通路の出口から押し出される金属材料の結晶粒微細化方法であって、前記金属材料を固定する固定手段が、前記入口から所定距離を有する第1の位置と、前記第1の位置よりも前記入口に近接した第2の位置とを往復動作し、前記第1の位置で前記金属材料を固定し、前記金属材料を押し込むことで前記第2の位置に到達した時に前記金属材料の固定を開放し、前記第1の位置に移動した後に再度前記金属材料を固定することを特徴とする金属材料の結晶粒微細化方法。
【請求項2】
前記金属材料を、前記出口から引き抜くことを特徴とする請求項1に記載の金属材料の結晶粒微細化方法。
【請求項3】
前記金属材料を、前記出口からねじりながら引き抜くことを特徴とする請求項1に記載の金属材料の結晶粒微細化方法。
【請求項4】
入口から出口までが屈曲した通路を有する治具を用いた金属材料の結晶粒微細化装置であって、金属材料を固定する固定手段と、前記金属材料を前記通路内に押し込む押し込み手段と、前記金属材料にねじりを与えるねじり手段とを有し、前記固定手段を前記通路の前記入口側に配置し、前記固定手段が、前記入口から所定距離を有する第1の位置と、前記第1の位置よりも前記入口に近接した第2の位置とを往復動作し、前記第1の位置で前記金属材料を固定し、前記第2の位置に到達した時に前記金属材料の固定を開放し、前記第1の位置に移動した後に再度前記金属材料を固定することを特徴とする金属材料の結晶粒微細化装置。
【請求項5】
前記押し込み手段によって前記固定手段を前記入口側に移動させ、前記ねじり手段によって前記固定手段を回転させることを特徴とする請求項4に記載の金属材料の結晶粒微細化装置。
【請求項6】
記出口側に、前記金属材料をねじりながら引き抜く手段を有することを特徴とする請求項4に記載の金属材料の結晶粒微細化装置。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の金属材料の結晶粒微細化方法を用いて製造したことを特徴とする金属材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲した通路を有する治具を用いた金属材料の結晶粒微細化方法、結晶粒微細化装置、及びこの方法によって製造された金属材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ECAP(Equal-Channel Angular Pressing)法は、変形前後で、材料の断面形状を殆ど変えることなく、強ひずみを与えることができるため、新しい集合組織抑制技術、及び結晶粒微細化処理技術として着目されている。
図8はECAP法における加工の説明図である。図8(a)は金属材料Aを治具100にセットする工程、同図(b)は押出し加工工程、同図(c)は押出し加工の繰り返し工程を示している。
ECAP法では、通路101に交差部分を設けた治具100を用いるのが特徴である。そして、この通路101に金属材料Aを挿入し、プランジャー120を用いて金属材料Aに圧力を加えることで加工を行っている。治具100中で交差する同じ断面寸法の通路101に金属材料Aを押し込み、通路101の曲がり角で金属材料Aにせん断変形を与えるという手法を用いているので、原理的に押し出し回数には制限がなく、バルク状態のままで大きな加工ひずみを加えることができる塑性加工法である。ECAP法は、単純な加工によって、微細な結晶構造を有する金属材料Aを得る手法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のECAP法では、通路101内の金属材料Aを単純にプランジャー120で加圧するという手法上、座屈等のため、治具100に設けた通路101の長さ寸法に依存して金属材料Aの長さが制限されるため、短い金属材料Aにしかこの手法は適応できない。また、強ひずみを得るためには、何度も繰り返して加工を施さないと結晶組織のバラツキが少ない金属材料Aを得られないために、数回に分けて金属材料Aの挿入方向を変えて加工を行う必要がある。
【0004】
従って本発明は、上記従来の問題点に鑑み、一回の加工でバラツキが少なく、しかも長い金属材料の加工にも適応できることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の金属材料の結晶粒微細化方法は、屈曲した通路を有する治具を用い、所定長さの金属材料をねじりながら前記通路の入口から押し込むことで、前記金属材料が前記通路の出口から押し出される金属材料の結晶粒微細化方法であって、前記金属材料を固定する固定手段が、前記入口から所定距離を有する第1の位置と、前記第1の位置よりも前記入口に近接した第2の位置とを往復動作し、前記第1の位置で前記金属材料を固定し、前記金属材料を押し込むことで前記第2の位置に到達した時に前記金属材料の固定を開放し、前記第1の位置に移動した後に再度前記金属材料を固定することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の金属材料の結晶粒微細化方法において、前記金属材料を、前記出口から引き抜くことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の金属材料の結晶粒微細化方法において、前記金属材料を、前記出口からねじりながら引き抜くことを特徴とする。
請求項4記載の本発明の金属材料の結晶粒微細化装置は、入口から出口までが屈曲した通路を有する治具を用いた金属材料の結晶粒微細化装置であって、金属材料を固定する固定手段と、前記金属材料を前記通路内に押し込む押し込み手段と、前記金属材料にねじりを与えるねじり手段とを有し、前記固定手段を前記通路の入口側に配置し、前記固定手段が、前記入口から所定距離を有する第1の位置と、前記第1の位置よりも前記入口に近接した第2の位置とを往復動作し、前記第1の位置で前記金属材料を固定し、前記第2の位置に到達した時に前記金属材料の固定を開放し、前記第1の位置に移動した後に再度前記金属材料を固定することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の金属材料の結晶粒微細化装置において、前記押し込み手段によって前記固定手段を前記入口側に移動させ、前記ねじり手段によって前記固定手段を回転させることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項4に記載の金属材料の結晶粒微細化装置において、前記出口側に、前記金属材料をねじりながら引き抜く手段を有することを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の金属材料の結晶粒微細化方法を用いて製造したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、長い材料でも座屈させることなく連続的に加工が可能であり、材料の組織を微細化できる。また、ねじる速度と押し込む速度を変化させることによって用途に応じた機能傾斜材料が作製できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の第1の実施の形態による金属材料の結晶粒微細化方法は、金属材料を固定する固定手段が、入口から所定距離を有する第1の位置と、第1の位置よりも入口に近接した第2の位置とを往復動作し、第1の位置で金属材料を固定し、金属材料を押し込むことで第2の位置に到達した時に金属材料の固定を開放し、第1の位置に移動した後に再度金属材料を固定するものである。本実施の形態によれば、押し込む方向への負荷として、軸力のみではなくねじり力を加えることで、スムーズな挿入を行えるとともに二方向の強ひずみを同時に与えることができるため、一度の工程で強ひずみを与えることができ、ECAP法に比べて加工工程を少なくできる。また、治具に金属材料を連続的に押し込むことができ、金属材料の長さに制限されない加工が可能となる。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による金属材料の結晶粒微細化方法において、金属材料を、出口から引き抜くものである。本実施の形態によれば、座屈を起こすことなく強ひずみを与えることができる。
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態による金属材料の結晶粒微細化方法において、金属材料を、出口からねじりながら引き抜くものである。本実施の形態によれば、更に効率的なひずみを与えることができる。
本発明の第4の実施の形態の金属材料の結晶粒微細化装置は、金属材料を固定する固定手段と、金属材料を通路内に押し込む押し込み手段と、金属材料にねじりを与えるねじり手段とを有し、固定手段を通路の入口側に配置し、固定手段が、入口から所定距離を有する第1の位置と、第1の位置よりも入口に近接した第2の位置とを往復動作し、第1の位置で金属材料を固定し、第2の位置に到達した時に金属材料の固定を開放し、第1の位置に移動した後に再度金属材料を固定するものである。本実施の形態によれば、軸力のみではなくねじり力を加えることで、スムーズな挿入を行えるとともに二方向の強ひずみを同時に与えることができるため、一度の工程で強ひずみを与えることができる。また、治具に金属材料を連続的に押し込むことができ、金属材料の長さに制限されない加工が可能となる。
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態による金属材料の結晶粒微細化装置において、押し込み手段によって固定手段を入口側に移動させ、ねじり手段によって固定手段を回転させるものである。本実施の形態によれば、押し込む方向への負荷として、軸力のみではなくねじり力を加えることができる。
本発明の第6の実施の形態は、第4の実施の形態による金属材料の結晶粒微細化装置において、出口側に、金属材料をねじりながら引き抜く手段を有するものである。本実施の形態によれば、更に効率的なひずみを与えることができる。
本発明の第7の実施の形態は、第1から第3の実施の形態による金属材料の結晶粒微細化装置によって製造された金属材料である。本実施の形態によれば、組織を微細化した金属材料を得ることができる。
【実施例1】
【0008】
以下、本発明による金属材料の結晶粒微細化装置の実施例について、図面を参照して説明する。
図1は本実施例の結晶粒微細化装置の概略構成図である。
本実施例による結晶粒微細化装置は、治具10と駆動装置20から構成される。治具10には、屈曲した通路11を有する。すなわち、通路11は、入口12から出口13までの間に所定の角度を持った経路が構成されている。本実施例では、通路11を直径10mmの円形断面とした。駆動装置20は、金属材料1を固定する固定手段21と、金属材料1を治具10に押し込む押し込み手段22と、金属材料1にねじりを与えるねじり手段23とから構成される。金属材料1の押し込み、ねじり、固定を行える駆動装置20には、例えば電気油圧制御方式の軸力ねじり試験機を用いることができる。固定手段21は、金属材料1を挿入可能な貫通穴を備え、金属材料1の外周部から均一に圧接できるチャッキングを備えている。固定手段21は、通路11の入口12側に配置され、押し込み手段22は固定手段21を入口12側に移動させ、ねじり手段23は固定手段21を回転させる。
本実施例では金属材料1として、押し込み方向の長さが200mm、断面直径Dが9mmの丸棒で、純アルミニウム(A1070BD-H14)材を用いた。なお、その他の金属材料を用いることもでき、押し込み方向の長さ寸法は通路11よりも大きい寸法とすることができる。
【0009】
図2に本実施例の加工に用いる治具の形状を示す。図2は図1におけるX-X線断面図である。
図2(a)は、通路11Aが90度で屈曲したものである。なお、通路11Aの屈曲角度は、90度よりも小さい角度でも良い。同図(b)は屈曲部の外径側内面を曲率半径Rに加工したものである。ここで曲率半径Rは、例えば10mmから20mmとする。同図(c)は屈曲部の外径側内面を曲率半径を20mm、屈曲部の内径側内面の曲率半径を10mmに加工したものである。通路11A、11B、11Cの断面形状は円形断面としている。
また、治具11は、半割りの2分割形として加工途中の材料の変形状態が検査できるようにしたが、一体形でもよい。
【0010】
以下、本発明による金属材料の結晶粒微細化方法について説明する。
図3(a)は金属材料をセットする工程、同図(b)はねじり押出し加工工程、同図(c)は準備工程、同図(d)は再度のねじり押出し加工工程を示している。
まず、同図(a)に示すように、金属材料1を固定手段21に固定する。この際、座屈を起こすことなく押し込みが行えるように金属材料1の挿入位置と治具10の通路11の入口12までの距離を第1の位置L1として約50mmに設定する。
次に、同図(b)に示すように、押し込み手段22によって軸力を加えるとともにねじり手段23によってねじり力を加え、第2の位置L2まで、金属材料1を治具10の通路11に押し込む。駆動装置20と治具10とが干渉しない位置を第2の位置L2として設定する。
次に同図(c)に示すように、固定手段21による金属材料1の固定を解除し、押し込み装置20を第1の位置L1に移動した後、固定手段21によって金属材料1を再度固定する。
そして同図(d)に示すように、ねじり押し込みを繰り返す。従って、必要とする所定長さの金属素材1を得るためには、上記工程を繰り返すことになる。なお、この加工工程をプログラム化して自動化することもできる。
本実施例では、第1の位置L1を約50mmとすることで座屈は生じなかった。また、治具10の通路11の直径10mmに対して、金属材料1の直径を9mmとした場合には、座屈せず、折れ曲がらずに加工されており、良好な結果が得られた。従って、通路径と金属材料の直径の条件を適切に選べば、良好な加工ができる。
なお、本実施例では、駆動装置20の駆動と停止、金属材料1の固定と解除、金属材料1の加工区間の調整を繰り返しながら、断続的に加工を行ったが、金属材料1を連続したねじり押し出し加工してもよい。
【0011】
本実施例によれば治具10に押し込まれていく際には、ねじり変形、曲げ変形そして圧縮変形が同時に金属材料1に与えられることになる。そして、固定手段21で固定された部分と、治具10に挿入される金属材料1の長さを調整しながら、上述のようにして金属材料1を連続的に治具10の内部に押し込んでいくことによって、長い金属材料1の加工を座屈させることなく行うことができる。
本実施例では、加工時のねじり速度を0.25度/秒、押し込み速度を0.1mm/秒としたが、それらの速度は自由に変化させることができ、目的の材料加工度に対応させた加工が可能である。なお、押し込みだけを行った場合の金属材料1に加わる圧縮抵抗よりも、ねじりながら押し込んだ場合の金属材料1に加わる抵抗の方が少なく、加工性の上からも好都合である。また、押し込み時の金属材料1と治具10間の摩擦抵抗を減らし、スムーズな加工を施すには潤滑剤を治具10の通路11や金属材料1に塗布した方が好ましく、本実験では潤滑剤を用いて実験を行った。潤滑剤には二酸化モリブデンを用いた。さらに、治具10と金属材料1を加熱しながら、金属材料1を加工するのが効果的である場合もある。
【0012】
以下に本実施例による結晶粒微細化装置を用いた実験例を示す。
本実験では、金属材料1の治具10への押し込み速度を0.1mm/秒で押し込んだ場合と、押し込み速度0.1mm/秒の押し込みに加えて、同時にねじり速度4.5×10-3rad/秒でねじ込んだ場合を行った。そして、各条件における金属材料1の形状変化と、結晶粒の変化に関して検討した。結晶粒度は、金属材料1断面を粒界腐食させ、光学顕微鏡を用いて観察及び撮影した。また、平均結晶粒径は、求積法(Jeffries method)と切断法(Heyn method)により算出した。
ここで、求積法では、既知の面積の円又は長方形を写真又はピントガラスの上に描き、その面積内に完全に含まれる結晶粒の数と、円又は長方形の周辺で切断されている結晶粒の半分との和を全結晶粒数とする。結晶粒度は、結晶粒を正方形と考えて、次の式で表す。
【0013】
【数1】
JP0004487070B2_000002t.gif

【0014】
【数2】
JP0004487070B2_000003t.gif

【0015】
ここで、dは結晶粒度、Wは周辺部の結晶粒数、Mは使用倍率、nは全結晶粒数、Aは測定面積、Zは測定面積A内に完全に含まれる結晶粒数を表す。
一方、切断法では、結晶粒度は、顕微鏡の映像又は写真上で既知の長さの線分によって完全に切られる結晶粒数を数え、その切断長さの平均値をもって表示する。必要に応じて加工方向に平行及び垂直な3軸に沿って測定する.切断法で測定した値は、求積法で測定した値より小さいことがある。
【0016】
図4に求積法及び切断法を用いて平均結晶粒径を算出した結果を示す。
それぞれの測定範囲内における結晶粒数は、未加工材が101.5個、押出し加工のみが108個、ねじり押出し加工が148.5個であった。なお、測定面積はすべて0.6mm×0.6mm=0.36mm2である。
求積法の結果では、未加工材に比べて、押出しのみで得られた材料は平均結晶粒径が約3%程度減少しており、ねじり押出しで得られた材料は平均結晶粒径が約17%程度減少した。
切断法の結果では、未加工材に比べて、押出しのみで得られた材料は平均結晶粒径が約9%程度減少しており、ねじり押出しで得られた材料は平均結晶粒径が約19%程度減少した。
以上のように、本発明のようにねじり押出し加工によれば、押出しのみにより得られた材料よりも、明らかに平均結晶粒径が小さくなっており、微細化が進行していることがわかる。
【0017】
図5に組織写真及び結晶粒線を示す。図5(a)、(b)、(c)はそれぞれ、未加工材、押し込み加工のみの場合、ねじりながら押し込み加工を施した場合の組織写真、図5(d)、(e)、(f)はそれぞれ、未加工材、押し込み加工のみの場合、ねじりながら押し込み加工を施した場合の結晶粒線を示している。
図5に示す結果からも、材料の結晶組織は、ねじりながら押し込む加工によって微細化され、また表面と内部で機能傾斜化できることがわかる。また、押し込む速度とねじる速度を種々の条件で変化させることによって、目的に応じた材料の組織分布を得ることが可能である。
【0018】
金属材料1を治具10にねじ込んだ場合における変形状態の概略図を図6に示す。
曲経路を通過することにより、曲げとねじりに伴うひずみの空間勾配が生じ、GN転位が発生する。この場合、特に金属材料1表層付近のひずみ勾配が大きく、GN転位の発生が顕著となる。GN転位の発生は隣接結晶粒間における粒界を通した変形拘束の相互作用が主要な原因であるが、これだけではなく、結晶粒の形状変化の相互拘束により、結晶粒内部方向に発達した帯状の領域に、高密度に堆積するGN転位組織を形成することがわかっている。変形の進行と共にGN転位組織が発達し、新しい結晶粒界(GN粒界)として大傾角化することで、結晶粒の微細化が生じる。従って、本発明の方法により、更に強ひずみを与えれば、変形前後で断面形状を、ほぼ一定に保持したまま、結晶粒微細化と共に、材料を硬化させることができる。この場合、通路11の曲率半径を小さくすれば、一度の工程で、より効率的に結晶粒の微細化、ひずみ硬化を発展させることが期待できる。
【実施例2】
【0019】
次に本発明の他の実施例による金属材料の結晶粒微細化装置について説明する。
図7は本実施例による結晶粒微細化装置の概略構成図である。なお、上記実施例と同一機能を有する部材には同一符号を付して説明を省略する。
本実施例では、駆動装置20とともに、通路11の出口13側には、金属材料1をねじりながら引き抜く駆動手段30を備えている。
駆動装置30は、金属材料1を固定する固定手段31と、金属材料1を治具10から引き抜く引き抜き手段32と、金属材料1にねじりを与えるねじり手段33とから構成される。金属材料1の引き抜き、ねじり、及び固定を行える駆動装置30には、駆動手段20と同様に、例えば電気油圧制御方式の軸力ねじり試験機を用いることができる。固定手段31は、金属材料1を挿入可能な貫通穴を備え、金属材料1の外周部から均一に圧接できるチャッキングを備えている。固定手段31は、通路11の出口13側に配置され、引き抜き手段32は固定手段31を出口13から引き離す方向に移動させ、ねじり手段33は固定手段31を回転させる。
なお、本実施例では、駆動手段30として、引き抜き手段32とねじり手段33とから構成されるものを示したが、ねじり手段33を持たない場合であってもよい。
本実施例のように、駆動手段20に加えて駆動手段30を用い、治具10の一方からのねじり押し出しとともに他方からの引き抜き、または、ねじりながらの引き抜きを行うと、さらに効果的な加工ができ、治具10の通路11径に対する金属材料1の直径の適用範囲を広げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明にかかる金属材料の結晶粒微細化方法及び結晶粒微細化装置は、微細結晶組織を有する機能性材料(微細結晶金属材料)、リベット等の機械要素などに用いる場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1による金属材料の結晶粒微細化装置の概略構成図
【図2】本実施例の加工に用いる治具の形状を表す断面図
【図3】本実施例の工程を説明する概略構成図
【図4】本発明と比較例の平均結晶粒径を算出した結果を示す表
【図5】本発明と比較例の金属材料断面の組織写真及び結晶粒線
【図6】金属材料1を治具10にねじ込んだ場合における変形状態の概略図
【図7】本発明の実施例2による金属材料の結晶粒微細化装置の概略構成図
【図8】従来のECAP法による加工法の概略図
【符号の説明】
【0022】
1 金属材料
10 治具
11 通路
12 入口
13 出口
20 駆動装置
21 固定手段
22 押し込み手段
23 ねじり手段
30 駆動装置
31 固定手段
32 引き抜き手段
33 ねじり手段
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図5】
7