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明細書 :亀裂進展抑制方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4706024号 (P4706024)
公開番号 特開2007-216313 (P2007-216313A)
登録日 平成23年3月25日(2011.3.25)
発行日 平成23年6月22日(2011.6.22)
公開日 平成19年8月30日(2007.8.30)
発明の名称または考案の名称 亀裂進展抑制方法
国際特許分類 B23P   6/04        (2006.01)
B21J  15/00        (2006.01)
G01N   3/32        (2006.01)
FI B23P 6/04
B21J 15/00 Z
G01N 3/32 K
請求項の数または発明の数 5
全頁数 8
出願番号 特願2006-036586 (P2006-036586)
出願日 平成18年2月14日(2006.2.14)
審査請求日 平成19年3月23日(2007.3.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
発明者または考案者 【氏名】真壁 朝敏
【氏名】近藤 了嗣
個別代理人の代理人 【識別番号】100098545、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 伸一
【識別番号】100087745、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 善廣
【識別番号】100106611、【弁理士】、【氏名又は名称】辻田 幸史
審査官 【審査官】西村 泰英
参考文献・文献 特開2007-044795(JP,A)
実開昭55-160736(JP,U)
特開平03-213216(JP,A)
特開2005-069425(JP,A)
特開昭55-073480(JP,A)
特開昭55-065306(JP,A)
調査した分野 B23P 6/04
B21J 15/00
G01N 3/32
特許請求の範囲 【請求項1】
亀裂の端部にストッピングホールを施すことで疲労亀裂の伝播を抑制する亀裂進展抑制方法であって、
前記ストッピングホールの周辺に穴を設け、
前記亀裂方向を亀裂仮想線とし、
前記ストッピングホールの中心を通り前記亀裂仮想線に対する垂線をストッピングホール仮想中心線としたとき、
一対の前記穴を前記亀裂仮想線に対して対称に設け、
対称の位置に設けた一対の前記穴のそれぞれの中心を結ぶ穴位置仮想線を、前記ストッピングホール仮想中心線の位置、又は前記ストッピングホール仮想中心線よりも、前記亀裂から離れた位置とし、
前記穴に内圧を負荷することで、前記ストッピングホールの亀裂発生部位に圧縮応力を発生させることを特徴とする亀裂進展抑制方法。
【請求項2】
前記ストッピングホールの前記亀裂発生部位を通り前記亀裂仮想線に対する垂線をストッピングホール仮想外周線としたとき、対称の位置に設けた一対の前記穴の前記亀裂側の外周が、前記ストッピングホール仮想外周線の位置、又は前記ストッピングホール仮想外周線よりも前記亀裂側に位置することを特徴とする請求項1に記載の亀裂進展抑制方法。
【請求項3】
前記穴に、リベット加工を施したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の亀裂進展抑制方法。
【請求項4】
前記穴に、封止部材を圧入したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の亀裂進展抑制方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載の亀裂進展抑制方法を、航空機の機体に生じる前記亀裂に用いることを特徴とする亀裂進展抑制方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば航空機の機体に生じる疲労亀裂の進展を抑制する亀裂進展抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機において、運用中に機体の一部に疲労亀裂が発生した場合、その亀裂は航空機に破壊事故をもたらす恐れがあるので、亀裂長さが定められた長さに達し、しかも、航空機が運用の都合上、本格的な整備ができない場合には、その亀裂の先端に亀裂の進展を抑制するためにストッピングホールを加工することがある。このストッピングホールは、亀裂先端の応力集中を緩和し、亀裂の進展を抑制するために有効である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ストッピングホールによる亀裂進展の抑制については、新技術がほとんど開発されてなく、その手法の改良を試みた研究例は非常に少ない。そのため、航空機等の寿命の延命化を検討するに当たっては、ストッピングホールの加工に関連した技術の改良も1つの検討課題であると思われる。
【0004】
従って本発明は、上記従来の問題点に鑑み、亀裂先端に加工したストッピングホールの先端に圧縮応力を作用させることによって、さらに効果的にストッピングホールからの亀裂進展を抑制する新手法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の亀裂進展抑制方法は、亀裂の端部にストッピングホールを施すことで疲労亀裂の伝播を抑制する亀裂進展抑制方法であって、前記ストッピングホールの周辺に穴を設け、前記亀裂方向を亀裂仮想線とし、前記ストッピングホールの中心を通り前記亀裂仮想線に対する垂線をストッピングホール仮想中心線としたとき、一対の前記穴を前記亀裂仮想線に対して対称に設け、対称の位置に設けた一対の前記穴のそれぞれの中心を結ぶ穴位置仮想線を、前記ストッピングホール仮想中心線の位置、又は前記ストッピングホール仮想中心線よりも、前記亀裂から離れた位置とし、前記穴に内圧を負荷することで、前記ストッピングホールの亀裂発生部位に圧縮応力を発生させることを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の亀裂進展抑制方法において、前記ストッピングホールの前記亀裂発生部位を通り前記亀裂仮想線に対する垂線をストッピングホール仮想外周線としたとき、対称の位置に設けた一対の前記穴の前記亀裂側の外周が、前記ストッピングホール仮想外周線の位置、又は前記ストッピングホール仮想外周線よりも前記亀裂側に位置することを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の亀裂進展抑制方法において、前記穴に、リベット加工を施したことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の亀裂進展抑制方法において、前記穴に、封止部材を圧入したことを特徴とする。
請求項5記載の本発明の亀裂進展抑制方法は、請求項1から請求項4に記載の亀裂進展抑制方法を、航空機の機体に生じる前記亀裂に用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ストッピングホールの近くに加工した穴に内圧を負荷することによって、亀裂先端に加工したストッピングホールの周辺に圧力応力を生じさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の第1の実施の形態による亀裂進展抑制方法は、ストッピングホールの周辺に穴を設け、亀裂方向を亀裂仮想線とし、ストッピングホールの中心を通り亀裂仮想線に対する垂線をストッピングホール仮想中心線としたとき、一対の穴を亀裂仮想線に対して対称に設け、対称の位置に設けた一対の穴のそれぞれの中心を結ぶ穴位置仮想線を、ストッピングホール仮想中心線の位置、又はストッピングホール仮想中心線よりも、亀裂から離れた位置とし、穴に内圧を負荷することで、ストッピングホールの亀裂発生部位に圧縮応力を発生させるものである。本実施の形態によれば、ストッピングホールの近くに加工した穴に内圧を負荷することによって、亀裂先端に加工したストッピングホールの亀裂発生部位に対して効果的に圧力応力を生じさせることができ、亀裂進展寿命を延ばすことができる。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による亀裂進展抑制方法において、ストッピングホールの亀裂発生部位を通り亀裂仮想線に対する垂線をストッピングホール仮想外周線としたとき、対称の位置に設けた一対の穴の亀裂側の外周が、ストッピングホール仮想外周線の位置、又はストッピングホール仮想外周線よりも亀裂側に位置するものである。本実施の形態によれば、ストッピングホールの亀裂発生部位に対して圧力応力を生じさせることができ、亀裂進展寿命を延ばすことができる。
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による亀裂進展抑制方法において、穴に、リベット加工を施したものである。本実施の形態によれば、リベット加工によって穴に内圧を負荷することができる。
本発明の第4の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による亀裂進展抑制方法において、穴に、封止部材を圧入したものである。本実施の形態のように封止部材の圧入によっても穴に内圧を負荷することができる。
本発明の第5の実施の形態による亀裂進展抑制方法は、請求項1から請求項4に記載の亀裂進展抑制方法を、航空機の機体に生じる亀裂に用いるものである。本実施の形態によれば、航空機の機体に生じる亀裂進展寿命延ばすことができる。
【実施例1】
【0008】
以下、本発明による亀裂進展抑制方法の実施例について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施例による亀裂進展抑制方法を示す平面構成図である。
亀裂1の端部にはストッピングホール2を設け、このストッピングホール2の周辺に穴3を設けている。そして、この穴3に内圧を負荷することで、ストッピングホール2の亀裂発生部位2Bに圧縮応力を発生させている。
図において、亀裂1に沿い、亀裂が生じる方向を亀裂仮想線11とし、ストッピングホール2の中心2Aを通り亀裂仮想線11に対する垂線をストッピングホール仮想中心線12とし、ストッピングホール2の亀裂発生部位2Bを通り亀裂仮想線11に対する垂線をストッピングホール仮想外周線13とし、対称の位置に設けた一対の穴3のそれぞれの中心3Aを結ぶ線を穴位置仮想線14とする。
穴3は、亀裂仮想線11に対して対称な位置に対にして設けることが効果的である。
また、穴3のストッピングホール2に対する位置は、穴位置仮想線14がストッピングホール仮想中心線12と一致する位置(図1(a))からストッピングホール仮想外周線13と一致する位置(図1(b))までの間に位置することが好ましく、図に示すように、穴位置仮想線14をストッピングホール仮想中心線12と一致するように設けることが最も好ましい。
また、ストッピングホール2に対する穴3の位置は、リベット加工用工具の大きさ(直径5mm程度)を考慮して加工するが、ストッピングホール2に対して穴3の位置が離れると効果は低下する。従って、ストッピングホール2に対する穴3の位置は、ストッピングホール2の外周と穴3の外周との最短距離が穴3の直径以下となるように設けることが好ましい。
【実施例2】
【0009】
図2は本発明の他の実施例による亀裂進展抑制方法を示す平面構成図、図3は同側面構成図である。
本実施例による構成は、図1に示す構成において、穴3に内圧を負荷する手段として、穴3にリベット4加工を施し、強制的に穴3を押し広げるものである。
本実施例のように、リベット4を施すことで穴3に内圧を負荷することができ、ストッピングホール2の亀裂発生部位2Bに圧縮応力を発生させることができる。
なお、穴3に内圧を負荷する他の方法として、穴3に封止部材を圧入する方法でもよい。
次に、図4から図7を用いて実験結果を説明する。
【0010】
図4は、本実験に用いた試験片の平面図である。
試験片には航空機に使用されているアルミニウム合金2024と2017を用いた。
試験片は表面を研磨して鏡面仕上げとした。試験片中央部に軸に対して垂直方向に長さ10mm、幅2.5mmの亀裂加工を行い、その先端にストッピングホールにみたてた直径3,3mmの穴あけ加工を施し、その先端から亀裂を進展させた。
なお、予備試験により、実際に疲労亀裂を発生させ、ストッピングホールを加工した場合も、本実験のように亀裂にみたてた亀裂の先端にストッピングホールを加工した場合も、それらのストッピングホールから発生、進展する亀裂の挙動は同じであった。従って、亀裂にみたてて亀裂を加工した本実験手法は有効な手段である。
実験は油圧サーボ式試験機を用いて、引張圧縮方式で行った。その際には、亀裂が発生しているかどうかを確認しながら実験を進め、亀裂発生後は決まった回数ごとに亀裂長さを測定した。試験片に繰返す応力は最大引張り応力と、圧縮応力の絶対値が同じ値になるような両振りの応力とした。周期は10Hzである。
【0011】
図5に実験に用いたリベットの加工構成図を示す。
Baseはリベット加工を施さず、ストッピングホールのみを加工した構成である。TypeAは、穴位置仮想線をストッピングホール仮想中心線と一致するように設け、この穴にリベット加工を施した構成である。TypeBは、TypeAと同じ位置に穴を設けるとともに、更に一対の穴を穴位置仮想線がストッピングホール仮想外周線よりも外方向となるように追加し、複数列の穴に対してリベット加工を施した構成である。TypeCは、ストッピングホール仮想外周線に外周が接する位置に穴を設け、この穴にリベット加工を施した構成である。TypeDは、ストッピングホールにリベット加工を施した構成である。
リベット加工を施した穴の直径は3.3mmであり、直径が3.2mmのリベットを押し込み、穴を膨らませてある。その結果、ストッピングホールには圧縮応力が作用するようになる。
なお、亀裂長さaは、Baseで示すように、亀裂長さと亀裂両端に設けたストッピングホール直径に、両端に発生した亀裂長さを加えた長さの半長である。
(実験例1)
【0012】
図6は繰返し応力振幅を84MPaとし、試験片としてアルミニウム合金2024-T3を用いて一定応力振幅の疲労亀裂試験をした場合の亀裂進展曲線図であり、縦軸は亀裂長さa、横軸は応力の繰返し数Nである。
Base、TypeA、TypeB、TypeCを対象として試験を行った。
図に示すように、TypeA、TypeB、及びTypeCは、いずれもストッピングホールのみを加工したBaseに対して優位性を示した。このようにリベット加工によって亀裂の発生および、破断寿命が改善された。その理由としては、リベット加工によって穴部が膨張し、その影響でストッピングホールの先端に圧縮の応力が発生したことが考えられる。
従って、少なくともTypeAからTypeCの間、すなわち、穴位置仮想線がストッピングホール仮想中心線と一致する位置から、ストッピングホール仮想外周線に穴の外周が接する位置までの間では、破断寿命が改善されることが分かる。
一方、TypeAに対してTypeCの効果が低いことから、穴のストッピングホールに対する位置は、穴位置仮想線がストッピングホール仮想中心線とストッピングホール仮想外周線との間に位置することが好ましく、穴位置仮想線をストッピングホール仮想中心線と一致するように設けることが最も好ましいことが分かる。
(実験例2)
【0013】
図7は繰返し応力振幅を84MPaとし、試験片としてアルミニウム合金2017-T4を用いた場合の亀裂進展曲線図である。
Base、TypeA、TypeDを対象として試験を行った。
図に示すように、TypeDの場合も延命していることがわかるが、その場合の延命メカニズムとしては、直接、ストッピングホールにリベットを打ち込み、ストッピングホールを広げるので、塑性変形がストッピングホールの周りで発生し、その結果、圧縮の残留応力の効果によって寿命が延命したことが考えられる。しかし、この実験結果からも、TypeAは、TypeDよりも効果が高いことがわかる。
【0014】
以上のように、ストッピングホール2の近くに加工した穴3に内圧を負荷することによって、亀裂1先端に加工したストッピングホール2の周辺に圧力応力を生じさせることができる。その圧縮応力は、亀裂先端を閉じさせる効果をもたらすので、亀裂進展速度は単にストッピングホール2を加工した場合よりも遅くなり、亀裂進展寿命が延びる。その結果として、航空機等の機器の寿命がより延命する。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明にかかる亀裂進展抑制方法は、航空機の機体に生じる疲労亀裂に対して有効であるが、その他基材の切り欠き部から発生する亀裂の進展の抑制などに用いる場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例による亀裂進展抑制方法を示す平面構成図
【図2】本発明の他の実施例による亀裂進展抑制方法を示す平面構成図
【図3】同側面構成図
【図4】本実験に用いた試験片の平面図
【図5】実験に用いたリベットの加工構成図
【図6】実験例1による亀裂進展曲線図
【図7】実験例2による亀裂進展曲線図
【符号の説明】
【0017】
1 亀裂
2 ストッピングホール
3 穴
4 リベット
11 亀裂仮想線
12 ストッピングホール仮想中心線
13 ストッピングホール仮想外周線
14 穴位置仮想線
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6