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明細書 :電力供給設備の運用支援方法および装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4203602号 (P4203602)
公開番号 特開2008-067481 (P2008-067481A)
登録日 平成20年10月24日(2008.10.24)
発行日 平成21年1月7日(2009.1.7)
公開日 平成20年3月21日(2008.3.21)
発明の名称または考案の名称 電力供給設備の運用支援方法および装置
国際特許分類 H02J   3/32        (2006.01)
H02J   3/00        (2006.01)
FI H02J 3/32
H02J 3/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 18
出願番号 特願2006-242017 (P2006-242017)
出願日 平成18年9月6日(2006.9.6)
審査請求日 平成19年2月22日(2007.2.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
発明者または考案者 【氏名】千住 智信
【氏名】宮城 吏
個別代理人の代理人 【識別番号】100104341、【弁理士】、【氏名又は名称】関 正治
審査官 【審査官】赤穂 嘉紀
参考文献・文献 特開2005-102357(JP,A)
特開2005-130550(JP,A)
特開平10-056734(JP,A)
調査した分野 H02J 3/32
H02J 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
電力需要施設に対して電力系統線を介して電力を供給する複数の火力発電装置と該系統線にインバータを介して接続され系統線に対して充放電する電力貯蔵装置(ESS)で構成された電力供給設備に適用する運用支援方法であって、第1ステップで、所期の期間にわたるESSの充放電スケジュールを充電、停止、放電の3進法で表して遺伝子情報とした個体とみなして個体群を形成し、該個体群から個体を選択し、該選択した個体についてESSの充放電電力を一定と仮定して予測される電力需要を満たすように前記火力発電装置の起動停止スケジュールを決定し、前記火力発電装置の運用コストの総和を評価関数として該評価関数が最小になるように前記個体に遺伝的アルゴリズム(GA)を適用して、前記電力需要を満たす火力発電装置の起動停止スケジュールとESSの充放電スケジュールを決定して運用計画素案とし、第2ステップで該運用計画素案に対して所期の期間にわたるESSの充放電電力値を遺伝子情報とする個体とみなし、前記火力発電装置の運用コストを評価関数としてGAを適用することにより、前記電力需要を満たす火力発電装置の起動停止スケジュールとESSの充放電スケジュールを決定し、該スケジュールのうち予め決めた制約条件に違反するものを除去して、前記評価関数を最小化するスケジュールを運用計画案として提示する電力供給設備の運用支援方法。
【請求項2】
前記第2ステップにおいて、前記制約条件のうち運転予備力が不足するときは、前記スケジュールにおいて起動する火力発電装置を追加し、運転予備力が充足されるようになったときは再度GAを適用して火力発電装置の運用コストが最小になるように決定して運用計画最終案とすることを特徴とする請求項1記載の電力供給設備の運用支援方法。
【請求項3】
電力需要施設に対して電力系統線を介して電力を供給する複数の火力発電装置と該系統線にインバータを介して接続され系統線に対して充放電する電力貯蔵装置(ESS)で構成された電力供給設備に適用する運用支援装置であって、第1演算部と第2演算部からなる演算装置とデータ記憶装置と入出力装置を備え、該入出力装置が前記電力需要施設の電力需要予測を取り込み、前記データ記憶装置が前記電力供給装置の制約条件を格納していて、第1演算部がESSの充放電時の電力量を一定と仮定し、所期の期間にわたり前記電力需要予測に適合する火力発電装置の起動停止スケジュールを作成し、該所期の期間にわたるESSの充放電スケジュールを充電、停止、放電の3進法で表して遺伝子情報とした個体とみなし、前記火力発電装置の起動停止スケジュールにおける火力発電装置の運用コストの総和を最小にすることを評価関数とした遺伝的アルゴリズム(GA)の演算を実行して、前記電力需要予測に適合する火力発電装置の起動停止スケジュールとESSの充放電スケジュールを作成して運用計画素案として前記第2演算部に供給し、該第2演算部が該運用計画素案に対して前記所期の期間にわたるESSの充放電電力値を遺伝子情報とする個体とし、前記火力発電装置の運用コストの総和を評価関数として該評価関数が最小になるようにGAの演算を実行して、電力供給設備の運用計画案を生成して提示する電力供給設備の運用支援装置。
【請求項4】
前記第2演算部が、さらに、前記制約条件のうち運転予備力が不足するときは火力発電装置を追加起動し、運転予備力が充足されるときは再度GAを適用して火力発電機の運用コストが最小になるように前記スケジュールを修正して運用計画最終案とすることを特徴とする請求項3記載の電力供給設備の運用支援装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発電ユニットと電力貯蔵装置を備えた電力供給設備について、運用コストを最小化する最適運用支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力需要は毎年増加しているが、特に昼間電力需要の伸びが大きく夜間の需要の伸びは小さいため、昼夜間の電力需要のギャップが拡大している。電力設備はピーク電力需要を見越して準備されるので、昼夜間の電力需要の差が拡大すると、発電設備の負荷率低下を招く。そこで、近年、電力会社が主体となって推進することができる負荷率向上策に利用できる電力貯蔵装置(ESS)が注目を集めている。
【0003】
電力供給設備がESSを備えると、電力需要に応じて必要な数の発電ユニットを運転して系統に必要な電力を供給するが、電力需要が過大になったときにはESSから不足の電力量を補充することができるので、最大電力需要に対応する数の発電ユニットを準備しなくてもよくなり、設備経済上有利である。また、ESSは電力需要の小さいときに発電ユニットから充電するので、電力需要は平準化し、発電ユニットの運用をより経済的にすることが可能になる。
電力貯蔵装置(ESS)には、揚水発電装置、フライホイール、超伝導磁気エネルギー貯蔵装置(SMES)、NAS電池、レドックスフロー電池など、種々のものが利用できるようになってきている。
【0004】
電力供給設備では、予測された電力需要変動に対応する運用計画を立てて、発電装置の起動停止とESSの充放電を経済的に実行する必要がある。
従来、発電装置のみを対象とする運用計画法はいろいろ提案されているが、ESSが加わった設備に関する運用計画方法は少なかった。特にESSを多数の発電装置を補填するために利用するシステムについて有効な運用計画法は知られていなかった。
特許文献1には、複数の発電機とESSを含む電力系統について、はじめにESSを考慮せずに拡張優先リスト法(EPL)を用いて発電機起動停止計画を作成し、その後、ESSを考慮したアルゴリズムを適用して計画を修正するようにした発電機起動停止計画作成方法が開示されている。
【0005】
ESSを考慮するためのアルゴリズムは、負荷が低下する時間帯で運転している発電機の余剰電力を可能な限りESSに充電し、充電終了時にESSの下限電力量に達しないと予測される場合は、さらに停止している発電機をコストを基準とした優先リストの順に起動するように計画を修正するものである。また、負荷ピーク時間帯において積極的にESSから電力を供給し、ピーク時間帯で運転しているコスト高な発電機をできるだけ停止させて、総コストの削減をする。
しかし、特許文献1に開示された方法は、ESSの運用計画を作成するところに状況判断が必要とされ、全てを機械的に実行するわけにはいかない。
【0006】
なお、特許文献2には、揚水発電機について、予想電力需要、燃料使用量、貯水池の水量、発電機設備データの各情報を用いて、運用コストが最小になるような発電機起動停止の運用計画を作成する電力系統の需給計画作成装置が開示されている。
開示された需給計画作成装置は、需要の予測と実績の違いなど条件の変化に対応するため、定期的に上記各情報の実績値を取り込んで、その時点からの新たな目標値をもとに発電機の起動停止計画を作成する運用計画算出手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
開示装置は、週末負荷が小さくなる時期に余剰の火力発電機で揚水上池の水位を持ち上げて、負荷の重い平日に発電して系統電力を補充する揚水発電機に適用するもので、火力発電機と揚水発電機を1対1に対応させたものを対象とする。したがって、複数の発電機が接続されている系統において経済的運用を実現するためにいずれの発電機をいつ発停するのがよいかという問題の解決に利用できるものではない。

【特許文献1】特開2005-102357号公報
【特許文献2】特開2003-009391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、電力貯蔵装置(ESS)を含む電力系統を運用する場合の発電機起動停止およびESSの充放電の最適な計画を作成して提示する電力供給設備の運用支援方法および装置を提供することであり、特にESSの充放電計画についても機械的に生成することができる電力供給設備の運用支援方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、電力貯蔵装置(ESS)を含む電力供給設備に使用する本発明の運用支援方法は、電力需要施設に対して電力系統を介して電力を供給する複数の火力発電装置と電力系統にインバータを介して接続され電力系統に対して充放電するESSで構成された電力供給設備に適用するものである。
【0010】
本発明の運用支援方法は、第1ステップと第2ステップで構成される。
第1ステップでは、所期の期間にわたるESSの充放電スケジュールを充電(C)、停止(0)、放電(D)の3進法で表して遺伝子情報とした個体とみなし、選択した個体についてESSの出力を一定と仮定して電力需要を満たすように火力発電装置の起動停止スケジュールを決定して、火力発電装置の運用コストの総和を評価関数とし、これを最小にすることを目標として遺伝的アルゴリズム(GA)を適用し、適応度の高いESSの充放電スケジュールを生成し、対応する火力発電装置の起動停止スケジュールと合わせて電力供給設備の運用計画素案とする。
【0011】
所期の期間とは、運用計画の1単位となる期間で、たとえば1日(24時間)などが指定される。
また、ESSの充放電スケジュールが与えられた後に求める火力発電装置の起動停止スケジュールは、拡張優先リスト法などのヒューリスティックな手法を使って求めることができる。
【0012】
第2ステップでは、第1ステップで求めた運用計画素案に対して、所期の期間にわたるESSの充放電電力量を2進数などの数値で表して遺伝子情報とした個体とみなし、火力発電装置の総運用コストを最小にすることを評価関数としてGAを適用することにより、火力ユニットとESSから電力系統に供給される総電力が電力需要を満たすように決定して運用計画案とする。運用計画案は、火力発電装置の制約条件を満たさないものを除外して作成され、表示装置を介して提示される。また、配信部と送受信部を介して遠隔の発電所や中央管理室に送信することもできる。
【0013】
GAは、データを遺伝子で表現した個体を複数用意して、適応度の高い個体を選択しては、個体相互に交叉や突然変異などの遺伝的操作を施して、より高い適応度の個体を生成することにより解を探索する手法である。したがって、GAを適用して有効な解を求めるためには、遺伝子表示をいかにするかが重要である。
【0014】
本発明の発明者らは、時間にしたがって変化するESSの充放電電力値に着目して、各時間帯毎に一定に設定する充放電電力値を2進化表示して個体群とすることによって、GA操作が可能になることを見いだした。
本発明では、第2ステップで、所期の期間にわたるESSの充放電電力値を個体群としてGAを適用し、淘汰の結果を解とする。
【0015】
本発明の電力供給設備の運用支援方法によれば、はじめにESSの充放電状態を3進数で表現した数列を遺伝子として遺伝的アルゴリズム(GA)を適用することにより発電装置の運用コストが最小になるような発電装置起動停止ESS充放電計画を作成し、その後、その計画に対してESSの充放電電力値を個体群としてGAを適用した解に基づいてESSの充放電計画を形成するので、全く機械的に同じ操作を繰り返すことによって発電機とESSの運用計画案を得ることができる。
【0016】
また、本発明の運用支援方法は、さらに、第2ステップにおいて、生成した運用計画案を改善する手順を追加してもよい。すなわち、一旦得られた運用計画案を用いたときに運転予備力が不足するときは、火力発電装置をさらに追加して起動するようにスケジュールを修正する。これにより運転予備力が充足されるようになったときは再度GAを適用して火力発電装置運用コストの総和が最小になるようにスケジュールを決定して、新しい運用計画最終案とする。運用計画最終案は表示装置から提示される。
運転予備力制約条件に整合させる修正を行うことにより、さらに運用コストの節約が可能になる。
【0017】
また、本発明の課題を解決するため、複数の火力発電装置と電力貯蔵装置(ESS)を含む電力供給設備に使用する本発明の運用支援装置は、第1演算部と第2演算部とデータ記憶装置からなる演算装置と入出力装置を備える。
入出力装置が電力需要施設の需要予測を取り込み、データ記憶装置が電力供給装置の制約条件を格納している。
【0018】
第1演算部は、ESSの放電時の出力を一定と仮定し所期の期間にわたる火力発電装置の起動停止情報を個体群として遺伝的アルゴリズム(GA)の演算を実行して、電力需要を満たす火力発電装置の起動停止スケジュールとESSの充放電スケジュールを火力発電装置の運用コストが最小になるようにした運用計画素案を生成する。
【0019】
第2演算部は、第1演算部で作成した運用計画素案に対して所期の期間にわたるESSの充放電電力値を個体群とし電力系統に電力供給する火力発電機の運用コストを最小化することを目標にしてGAの演算を実行することにより運用計画案を作成する。作成した運用計画案は電力供給設備について予め決められる制約条件に適合しないものを排除して作成され、入出力装置を介して提示され、また配信部、送受信部を介して遠隔の発電所や中央管理室で表示されるようにする。
【0020】
なお、第2演算部は、運用計画案を用いたときに運転予備力が不足するときは起動する火力発電装置を追加し、運転予備力が充足されるときは再度GAを適用して火力発電装置の運用コストが最小になるように決定した運用計画最終案を作成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の方法および装置は、遺伝的アルゴリズムを用いて運用コストを最小化する発電機と電力貯蔵装置(ESS)の運用計画を決定することができるので、これを導入することによって電力会社における運用合理化に大きく貢献することができる。
また、本発明の方法は、ESSを一般的に定式化して演算に取り込んでいるので、ESSの種類によらずに適用できる。
【0022】
シミュレーションによりこれらの手法を用いた効果を確認した結果、10基の火力ユニットと1基のESSを備えた火力発電施設において、ESSを無視した運用計画によれば運用コストが約561千ドルとなり、特許文献1における方法でESSを最適化した運用計画案にしたがうと運用コストが約556千ドルと約5千ドル減少するところ、本発明のESS最適化と火力ユニットの運用改善を盛り込んだ運用計画最終案によれば、運用コストは約548千ドルと約1万3千ドル(約2.3%)も減少し、本発明が明らかな効果を有することが証明された。
また、負荷の平準化効果は、本発明における第1ステップより第2ステップの方が大きいことが示された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
図1は本実施例に係る運用支援方法を適用する電力供給施設のブロック図である。
本実施例の電力供給設備の運用支援方法および装置は、図1に示すような電力供給施設に適用するものである。本実施例の運用支援方法を適用する電力供給施設は、電力貯蔵素子2とインバータ3を有する電力貯蔵装置(ESS)1と、適当な数N基の火力ユニット4を備え、電力系統6を介して負荷5に電力を供給する。なお、ESS1として、揚水発電機、フライホイール、超伝導磁気エネルギー貯蔵装置(SMES)、NAS電池、レドックスフロー電池など、種々のものが利用できる。
【0024】
N基の火力ユニット4はそれぞれ起動されると出力P,P,・・・,Pを発生し、電力系統6に供給される。ESS1は、電力系統6に接続されて、電力系統6における総出力Pthから充電電力Pc-invを充電し、また放電電力Pd-invを電力系統6に放電して補充する。したがって、負荷5に供給される電力DはESS1の充放電状態にしたがって変化する。
【0025】
本電力供給設備の運用の目標は、与えられた期間における火力ユニットの燃料コストと起動コストの和である総コストTCを最小化することである。
したがって、本実施例の運用支援方法および装置は、負荷5の電力需要予測に対応して、運用目標に適合した各火力ユニット4の起動停止とESS1の充放電の最適な組み合わせとなる運用計画案を提示することである。
ただし、提示する運用計画案は、装置上の制約条件、すなわち、電力の予想需要や発電機の起動停止あるいは負荷配分などを決定する電力系統のデータ、発電機特性、運用制約条件、目的関数、電力貯蔵装置の特性や容量などの条件に適合していなければならない。
【0026】
(1)目的関数の定式化
本実施例の運用支援方法における評価関数は、ESS運用計画を考慮して火力ユニットの出力P(t)に依存する燃料費Fi(Pi(t))と起動費SCi(t)で表される(1)式の総コストTCを最小化することである。
TC=Σ(t=1~T)Σ(i=1~N)[Fi(Pi(t))+SCi(t)] (1)
ただし、
Fi(Pi(t))=ai+bi・Pi(t)+ci・(Pi(t)) (2)
SCi(t)=h-cost :Tioff≦Xioff≦Hioff または
c-cost :Xioff>Hioff (3)
Hioff=Tioff+c-h-cost (4)
【0027】
(2)制約条件の定式化
対象とする装置には、発電機やESSの特性や技術面などから下に記載する幾つかの制約条件があり、解はこれらの条件を満足しなければならない。
(i)電力需給バランス制約
時間tにおける各火力ユニットの出力Pi(t)の総和とインバータ入出力Pinv(t)を加えたものが電力需要と一致しなければならない。
D(t)=Σ(i=1~N)Pi(t)+Pinv(t) (5)
【0028】
(ii)運転予備力制約
ESSが充電あるいは放電動作するときは、火力ユニットが分担する電力D'(t)は、負荷に充当する電力D(t)に対してインバータの充電電力Pc-invや放電電力Pd-invだけ過不足が生じて下の式のようになる。
充電時:
D'(t)=D(t)+Pc-inv(t) (6)
放電時:
D'(t)=D(t)-Pd-inv(t) (7)
そこで、火力ユニットの分担電力D'(t)の変化にしたがって、運転予備力R も変化する。各火力ユニットの起動停止状態を1,0で表す関数Ii(t)を用いると、火力ユニット群の総出力は運転予備力を満たさなくてはならない。
Σ(i=1~N)Ii(t)・Pimax≧D'(t)+R (8)
運転予備力R は、たとえば、火力ユニットの分担電力D'(t)の10%などに選択するとよい。
【0029】
(iii)発電機出力上下限制約
各火力ユニットには、それぞれ容量の限界がある。
Pimin ≦Pi(t)≦Pimax (9)
(iv)発電機最小運転・停止時間制約
各火力ユニットは、それぞれ決められた最小時間の間は、運転状態あるいは停止状態を継続していなければならない。
Tion≦Xion
Tioff≦Xioff(t) (10)
【0030】
(v)初期貯蔵電力量
ESSは、ある初期電力量Csriniから充電動作を開始する。
srini=ω・Csrmax (11)
ここで、ω(0<ω<1)は放電係数、Csrmaxは貯蔵可能最大電力量である。
(vi)充放電制約
時刻tにおける充電電力量Csrc(t)と放電電力量Csrd(t)は、時刻tにおけるインバータからの出力Pinv(t)を用いて、それぞれ下式で表される。ここで、α(0<α≦1)は充電時の効率であるが、ここでは対象とするESSの全ての効率を集約した総合効率とする。
src(t)=∫αPinv(t)dt (12)
srd(t)=∫Pinv(t)dt (13)
電力貯蔵量は離散化式で表すと次の式のようになる。
sr(t)=Csr(t-1)+Csrc(t)-Csrd(t) (14)
【0031】
ESSの充放電に伴う制約は下の通りである。
全ての時刻において:
srmin≦Csr(t)≦Csrmax (15)
充電終了時において:
k・Csrmax≦Csr(tc)≦Csrmax (16)
放電終了時において:
srmin≦Csr(td)≦ω・Csrmax (17)
ここで、ωは放電係数、k(ω≦k≦1)は充電係数で、k・Csrmaxは充電終了時下限電力量、ω・Csrmaxは放電終了時上限電力量、Csrminは貯蔵可能な最低電力量である。
充電は電力貯蔵量が充電終了時下限電力量を上回ったときに終了し、放電は放電終了時上限電力量を下回ったときに終了する。
【0032】
インバータは理想的なものを想定する。インバータ出力は下式の制約を受ける。
0≦|Pinv(t)|≦Pinvmax (18)
【0033】
ここで、主要な変数の意味は、
N :発電ユニットの総数
T :スケジューリング期間
i :発電ユニットのインデックス(i=1,2,・・・N)
t :時間のインデックス(t=1,2,・・・T)
Ii(t) :時間tにおける発電ユニットiの起動停止状態
(0:停止、1:運転)
h-cost :発電ユニットiをホットスタートさせるときのコスト
c-cost :発電ユニットiをコールドスタートさせるときのコスト
c-h-cost :発電ユニットiのボイラ冷却時間
Pi(t) :時間tにおける発電ユニットiの出力
Pimax :発電ユニットiの最大出力
Pimin :発電ユニットiの最小出力
D(t) :時間tにおける需要電力
:時間tにおける運転予備力(たとえば、D(t)の10%)
Tion :発電ユニットiの最小運転時間
Tioff :発電ユニットiの最小停止時間
Xion :時間tにおける発電ユニットiの運転時間
Xioff :時間tにおける発電ユニットiの停止時間
Hioff :発電ユニットiが冷却しきるまでの時間
SCi(t) :発電ユニットiの起動コスト
Fi(Pi(t)) :発電ユニットiの燃料コスト
TC :総コスト
である。
これら演算に必要な変数値は、入力装置を使って予め運用支援装置に入力して記憶装置に格納しておく。また、演算により生成したデータも、逐次、記憶装置に格納する。
【0034】
図2は、本実施例の運用支援装置の構成図である。
運用支援装置の主体となるデータ処理装置10は、キーボードやマウスなどでなる入力部30、液晶表示装置などの表示部40、外部記憶装置である記憶部50、各発電所あるいは集中制御室に設けられた送受信部70と伝送路を介して接続する配信部60と接続されている。
データ処理装置10は、コントロール部11、条件読込部12、条件設定部13、ユニット集約部14、遺伝的アルゴリズム部15、拡張優先リスト法部16、計画評価部17、表示データ作成部18、データ格納部19を備える。
【0035】
遺伝的アルゴリズム部15は、遺伝的アルゴリズム(GA)を実行するために必要なプログラムやデータ格納領域を有するもので、個体群生成部21、個体群格納部22、選択部23、交叉操作部24、突然変異操作部25、知的突然変異操作部26および適応度評価部27から構成される。
【0036】
入力部30は、キーボードなどから入力されたデータや、表示部40に表示された選択肢から選択された所定情報をコントロール部11に送る。記憶部50は、演算に必要なデータや演算結果を格納する。配信部60は、データ処理装置10で作成した運転計画案を各発電所あるいは集中制御室の送受信部70に伝送し、また各発電所の情報をデータ処理装置10に伝送する。
コントロール部11は、配信部60を含めたデータ処理装置10内外の各部のデータや処理プログラムなどの授受を円滑に行いながら、第1演算部101と第2演算部102の演算を実行する。
【0037】
条件読込部12は、記憶部50に保存されている装置上の制約条件、すなわち、電力の予想需要や発電機の起動停止あるいは負荷配分などを決定する電力系統のデータ、発電機特性、運用制約条件、目的関数、電力貯蔵装置の特性や容量などの条件、および処理プログラムなどを読み込み、主記憶装置あるいは一部を外部記憶装置に設定されるデータ格納部19に格納する。
条件設定部13は、入力部2、コントロール部11を介して入力される、運用計画の作成に必要な条件や関数を設定する。
【0038】
ユニット集約部14は、記憶部50に集約保存されている電力系統中の各ユニットに関するコスト係数などのパラメータを考慮し、演算に関連するデータを集約してデータ格納部19に格納させる。
表示データ作成部18は、データ処理装置10の各部で計算する計画条件、計画、評価関数などの推移、あるいはデータ格納部19や記憶部50に格納しているデータ等を表示できる形態に変成して表示部40に表示させる。また、作成された最終的な計画案は、コントロール部11、配信部60,伝送路、送受信機70の径路を通って各発電所や集中制御室に伝送される。
【0039】
本実施例の運用支援方法は、第1演算部101で第1ステップを実行して、遺伝的アルゴリズム(GA)により火力ユニットの起動停止とESSの充放電の準最適組合せを決定し、その後、第2演算部102で第2ステップを実行して、準最適組合せにおいて再びGAによりESSの充放電電力値を最適化するように修正することにより、火力ユニットとESSの最適組合せを決定するものである。
【0040】
図3は、本実施例の運用支援方法を説明するフローチャートである。
第1ステップでは、与えられた電力需要予測に対して、ESSの充電、放電、停止の準最適組合せを求めた上で、ESSの出力を所定の値に固定したと仮定し、残余の電力需要予測値を対象として準最適な火力ユニット起動停止スケジュールを求め、火力ユニットの起動費と燃料費を合わせた運用コストの総和を最小化することを評価関数として、たとえば24時間など所定の期間にわたるESSの充放電スケジュールを充電(C)、停止(0)、放電(D)の3進法で表して遺伝子情報とした個体としてGAを実行し、電力供給施設の運用計画素案を作成する(S1)。
【0041】
第2ステップでは、第1ステップで得られた運用計画素案に基づいて、各時間帯におけるESSの充放電電力値を2進法で表現した個体群とし、電力供給設備について予め決めた制約条件に違反しないことを前提とし、評価関数を火力発電機の運用コストを最小化することに対する適応度として、GAを実行することにより、運用計画案を作成する。生成したスケジュールが最小運転・停止時間制約を満たす場合は、経済負荷配分計算を行い運用コスト評価を行い、最良の計画案を提示する(S2)。
第2ステップで得られる運用計画案は、運用コストが最小であるもので、そのまま電力供給施設において運用の基礎として実際に利用することができる。
【0042】
しかし、さらに、たとえば10%程度要求される運転予備力など制約条件を考慮に入れると、火力ユニットの運転計画を修正することが好ましい場合がある。
特に運転予備力を問題とする場合は、第2演算部102はさらに改善ステップを実行して、運転予備力制約について検証して不足の場合は、制約条件に適合するまで火力ユニットを1基ずつ起動するように計画案を修正する。
【0043】
図4は、第1演算部101の実行する第1ステップにおける手順を表すフローチャートである。
第1ステップでは、ESSの初期運用スケジュールを作成する。
初めに、ESSの充放電スケジュールを作成する(S11)。
図5は、ESSの初期運用スケジュールの作成方法を説明した図面である。上段図は1日の電力需要予測パターンを例示したもので、点線はその平均電力需要である。下段図に描いた表示は、時間帯毎にESSの充電(C)放電(D)の状態を示したものである。
【0044】
運用支援装置の遺伝的アルゴリズム部15は、個体群生成部21に格納されたプログラムにより、運用予定日の時間帯毎の電力需要予測値を入力し、この電力需要予測値が平均電力需要値以下であればESSは充電(C)、平均以上の場合は放電(D)するものとして、電力供給施設の運用計画の基となるESS運用予定表を作成する。図5の下段図は、与えられた需要予測に対するESS初期運用スケジュール案を示したものである。
【0045】
次に、ESSの初期運用スケジュールの内容を取り替えて複数のESS運用スケジュールを生成する。
図6は、ESS運用スケジュールである個体群の生成状況を説明する図面である。図5の下段図に示したESSの初期運用スケジュールに対して、個体群生成部21のプログラムにしたがって、図6に示すように、ランダムに位置を指定しその内容を取り替えて複数のESS運用スケジュールを生成する。ESS運用スケジュールは、充電(C)放電(D)に停止(0)を加えた3進数の数列として表されたデータを遺伝子として有する個体とみなすことができる。これらは、遺伝的アルゴリズムを作用させるための個体群となる(S12)。個体群は個体群格納部22のプログラムにしたがって記憶部50に画定された記憶領域に格納される。
【0046】
選択部23のプログラムにしたがって、個体群から適応度の高い個体を1個または適当数選択する(S13)。
選択された個体は拡張優先リスト法部16のプログラムにしたがって処理される。このプログラムは、インバータの充放電電力をたとえば40MWなど一定値に仮定して、選択した個体におけるESS運用スケジュールにしたがって、火力ユニット側に配分されるべき電力需要を算定して、この電力需要に適合するような火力ユニットの起動停止計画を作成する。
火力ユニットの起動停止計画は、特許文献1に開示されたと同じように、拡張優先リスト法(EPL法)を用いて決定することができる(S14)。
【0047】
EPL法は、発電機データを事前解析して得た優先リストを使う初期解生成部分と、得られた初期解について制約条件を満足させ経済負荷配分を行いコストの低減化を図るように修正する後処理部分から構成される。
初期解生成部分では、ユニット集約部14において発電機データを事前に解析し、各発電機毎に発電単価と起動停止の頻度を考慮して稼働優先度を決定した優先リストを利用することにより初期解の探索領域を削減したので、改善見込みある解のみを効率的に探索することができる。改善見込みある解とは、簡単な修正を施すことにより、最適解により近づいた近似解に変化するような解をいう。
後処理部分では、改善見込みある解に対して発電機起動停止計画(UC)問題の求解に適したヒューリスティック手法を適用して、各火力ユニットの起動停止タイミングに関係する種々の制約を満たすような修正解を求める。
【0048】
計画評価部17は、修正解にしたがい、起動停止コストを含めた火力ユニット群の総コストTCを算定する(S15)。
演算を終了すべき条件が整ったときは、得られた結果をデータ格納部19に納めて、第1ステップの演算を終了する(S16)。
第1ステップにおける終了条件は、GAの世代交代数が規定の回数に達すること、あるいは、修正解がコスト評価を満足させること、である。
演算が終了していないときは、遺伝的アルゴリズム部15により、ESSの充放電情報に遺伝的操作を施し新しい個体を生成して(S17)、これを火力ユニットの起動停止計画作成のための個体として供給する(S13)。
【0049】
遺伝的操作は、遺伝的アルゴリズム(GA)に基づいて施される。
N個の個体が入る集合を2つ準備し、現世代と次世代とする。現世代にN個の個体を生成して収納する。現世代の各個体の適応度をそれぞれ計算する。
現世代の個体を適応度に応じて選択し、遺伝的操作を加えて、その結果生成する個体を次世代に収納する。選択と遺伝的操作を繰り返して次世代の個体数がN個になると、次世代の内容をそのまま現世代に移す。
これらの動作を設定した世代交代数Gまで繰り返し、最終的に形成された現世代の中で最も適応度の高い個体を解として出力する。
【0050】
第1ステップでESSの充放電スケジュールを調整するために用いられるGAのオペレータは、交叉操作と突然変異操作と知的突然変異操作である。
交叉は、ESSの24時間にわたる充放電スケジュールの個体群から2個の個体を選択し、ある時間帯nをランダムに指定し、それ以降(n~24)のスケジュールを相互に入れ換えて新しい個体とするものである。
突然変異は、ESSの充放電スケジュール個体群から1個の個体を選択し、ある時間帯nをランダムに指定し、これ以降、たとえば3個など所定数の座位について、C,D,0から選ばれた所定の記号に置き換えることにより、新しい個体を生成するものである。
また、知的突然変異は、ESS充放電スケジュールの個体群から1個の個体を選択し、負荷がある値より大きい時間帯で放電(D)、負荷がある値より小さい時間帯で充電(C)に置き換えて、新しい個体にするものである。
【0051】
これら操作を実行するプログラムはそれぞれ交叉操作部24、突然変異操作部25、知的突然変異部26に格納されていて、コントロール部11の第1演算部101にしたがって予め操作毎に決められた確率で読み出され、選択された個体に対して作用する。
【0052】
選択は、自然淘汰をモデル化したもので、適応度に基づいて個体を増やしたり減らしたりする操作である。準備された個体群の中から個体を選択する方法は幾つか知られているが、たとえばルーレット選択など、高い適応度を持つ個体ほど選択される確率が高くなるように選択してもよい。
選択手順は選択部23に格納されたプログラムにより決められる。
【0053】
図7は、第2演算部102の実行する第2ステップの手順を表すフローチャートである。
第1ステップでは40MW一定として、火力ユニットとESSのスケジュール素案を制作したが、ESSのインバータ出力は連続的に変化させることができるので、ESSの充放電電力量まで最適化したスケジュールを作成することが好ましい。
【0054】
そこで、第2ステップでは、第1ステップで得られた運用計画素案に基づいて、さらにGAを実行することにより各時間帯毎に充放電電力量を最適化したESS充放電スケジュールを得て、実行可能な運用計画案を作成する。
第2ステップのGAは、ESSの充放電電力量を2進数で表現した情報を遺伝子として持つ個体について、火力ユニットの起動停止をヒューリスティックに決定したスケジュールにおける火力ユニット運用コストの総和を評価関数として、実行する。
【0055】
第2ステップのプログラムでは、個体群生成部21により、第1ステップで得られた運用計画素案で規定されたESSのたとえば24時間など規定の時間にわたる充放電状態にしたがって、ESSのインバータを通した電力量を2進数で表現した遺伝子を持つ個体を生成する。
第1ステップでESSの充放電電力量を40MWと仮定した場合は、初めのデータは充放電した時間帯については40となる。なお、数値はたとえば”0101000”などと2進数で表現することがGA処理上便利である。
【0056】
さらに、運用計画素案に基づき生成した準最適な個体に対して、各時間帯における数値にランダムな変成を施してN個の個体を形成して、現世代の個体群とする(S21)。現世代の個体群は、個体群格納部22により記憶部50に格納される。
図8は、ESSインバータ出力の初期個体群の生成例を示す図面である。個体1は運用計画素案に基づいて形成された個体で、24時間に対応して遺伝子が24個形成される。充放電時間帯に対応する遺伝子はいずれも”0101000”、停止中の時間帯に対応する遺伝子は”0000000”になっている。
個体2以降は個体1や生成された別の個体を基礎としてランダムに2進数を置き換えた遺伝子から構成される。
【0057】
電力需要曲線を実情に合わせて修正する(S22)。
現世代の個体群から選択した個体に対応して決まる火力ユニットとESSの運用スケジュールが制約条件を満足しているか否かを検査する(S23)。
なお、たとえば、この第2ステップでGAによってESSのインバータ出力を調整した結果を第1ステップで決定した火力ユニット起動停止スケジュールと組み合わせると、運転予備力制約を満たさなくなることがある。
【0058】
運転予備力制約に適合せず、運転予備力が不足する場合には(S24)、火力ユニット起動停止スケジュールに対して、火力ユニットを1基起動追加することにより補填することが可能である。なお、1基追加しただけでは補填しきれない場合は、運転予備力が足りるようになるまで火力ユニットを1基ずつ追加すればよい(S25)。
運転予備力制約に反する時間帯で火力ユニットの運用計画が変更になった場合には、改めてヒューリスティックな方法で最適運用スケジュールを修正する(S26)。
【0059】
次に、ESSインバータ出力のスケジュールと火力ユニットの運用スケジュールを合わせた運用計画案について適応度の評価を行う。
運転予備力が充足する個体や(S24)、制約条件を全て満たす個体について、経済負荷配分計算を行い、適応度の評価として火力ユニットの出力に依存する燃料費と起動費を合わせた運用コストの総額に基づいて評価を行う(S27)。なお、ESSの充放電電力量が変更され各時刻における電力需要が変化した場合などには、火力ユニットの出力配分を再度行う必要がある。
また、最小運転・停止時間制約に違反するケースは実行不可能なので、棄却する。このように、制約条件を満たさない個体は対象から除外し、運用コストの評価は行わない。
【0060】
GAの世代交代数が規定の回数に達した場合や、適応度評価の結果が所定の水準を超えて最適解に十分近い近似解が得られた場合は、得られた結果をデータ格納部19に納めて、第2ステップの演算を終了する(S28)。
終了条件を満たさないときは、遺伝的アルゴリズム部15により、ESSの充放電電力量情報に遺伝的操作を施し新しい個体を生成する(S29)。
【0061】
第2ステップにおける遺伝的操作は、交叉操作と突然変異操作と知的突然変異操作である。
第2ステップの交叉は、ESSの24時間にわたる充放電電力量を遺伝子とする個体群で現世代として格納された個体群からランダムに2個の個体を選択し、時間毎の数列についてそれぞれあるビット位置bをランダムに選択し、そこから7ビットの数列の最後までを相互に入れ換えて新しい個体とするものである。
【0062】
突然変異は、現世代の個体群からランダムに1個の個体を選択し、ある時間帯tをランダムに指定して、1と0を置き換えることにより、新しい個体を生成するものである。
知的突然変異は2種類あって、知的突然変異1は、個体群からランダムに1個の個体を選択し、その中で充電時間帯と放電時間帯を1時間分ずつ選択して、その位置の数値データにそれぞれランダムな2進数を加算して、新しい個体を生成するものである。
また、知的突然変異2は、個体群からランダムに1個の個体を選択し、その中で負荷がある値より大きい時間帯と負荷がある値より小さい時間帯で、数値データにそれぞれランダムな2進数を加算して、新しい個体を生成するものである。
【0063】
これら操作を実行するプログラムはそれぞれ交叉操作部24、突然変異操作部25、知的突然変異部26に格納されていて、コントロール部11の第2演算部102にしたがって予め操作毎に決められた確率で読み出され作用する。
GAによって生成された新しい個体は、再び制約適合性検査(S22)、適応度評価(S23)の対象として供給される。
【0064】
(シミュレーション)
本実施例の技術的効果を確認するため、具体的な条件を設定してシミュレーションを行った。
シミュレーションの対象は、火力ユニット10基とESS1基を備えた電力系統であって、本実施例の運用支援方法を適用して運用計画を作成した。火力ユニット8~10は発電効率が悪いため通常は予備機とされている。
図9に示した表1は、シミュレーションで使用したESSのパラメータのリストである。
【0065】
第1ステップでは、ESSの各時間帯における充放電電力を40MWに固定してGAとEPLを適用し、火力ユニットの起動停止とESSの充放電の準最適な計画素案を作成した。第2ステップでESSの電力量を遺伝子としてGAを適用して計画案を作成した。
図10の表2は、第1ステップと第2ステップに使用したGAのパラメータである。これらのパラメータの値は、試行錯誤により結果が良好だったもの選択したものである。
【0066】
図11は、比較のため、ESSを導入する前における火力ユニットの最適起動停止スケジュールを示したものである。表は0時から24時までの各火力ユニットの運転状態が、運転時に1、停止時に0で表記されている。なお、火力ユニットは優先リストにしたがって発電コストの小さい順に記載した。
図12は本実施例の第1ステップで得られる準最適な運用計画素案を示すもの、図13は第2ステップで得られた運用計画案によるスケジュールを示すものである。ESSの充放電状態を上の欄に充電をC、放電をD、停止を0により示している。
【0067】
図11のESSを持たない電力系統における火力ユニット起動停止スケジュールでは、10~13時の間、発電コストの高いユニット8~10が運転状態になっている。また、20~22時において、ユニット8に加えて、比較的効率の悪いユニット7が運転状態にある。
【0068】
図12は、第1ステップの準最適な計画を示すが、ESSを導入した効果として昼間の時間帯にユニット8~10を停止して効率を向上させていることが分かる。
図13に示した本実施例における最適運用計画案では、最適案に対してESSのインバータ出力を調整する結果、12時におけるユニット8、21時におけるユニット3の稼働を停止して効率向上を図ることができた。
【0069】
図14の表3にヒューリスティック法を用いた従来法と本実施例の方法における運用コストを比較した結果を示す。本実施例の方法はGAを用いるためバラツキが生じるのでシミュレーションで得られた運用コストの最低値、最高値、平均値を記載した。
本実施例の方法では、ESSを導入した電力系統に従来法を適用したものと比べて運用コストを約8,500ドル(約1.6%)、ESSを導入する前のものと比較すると約13,500ドル(約2.5%)削減できることになる。
【0070】
図15に、本実施例の方法を適用したときの負荷曲線の変化を示す。図は実線が1日の電力需要を示し、破線が第1ステップ後の運用計画に従ったときの負荷曲線、点線が第2ステップ後の負荷曲線を表す。第1ステップで得られた運用計画によって電力需要のピークやボトムにおいて大きな平準化が見られ、さらに第2ステップで平準化が進んでいることが分かる。
【0071】
図16は、ESSの充放電電力量の推移、図17はESSにおける電力貯蔵量の推移を示す図面である。4時に電力需要が最小になるので、充電量も大きくなって最大充電量に達して飽和している。この例では、ESSは、朝のうちに電力貯蔵量が最大値になって、昼頃から放電して火力ユニットの不足を充填し、15時前後に極小値になって、夕刻の需要減退期に再び充電して電力貯蔵量を増加させている。
【0072】
本発明において対象とするESSについては、全てのESSに共通するモデルを使って定式化して求解するので、ESSにどの様なものを選択しても本発明の運用支援方法と装置によって対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の1実施例に係る運用支援方法を適用する電力供給施設のブロック図である。
【図2】本実施例の運用支援装置の構成図である。
【図3】本実施例の運用支援方法を説明するフローチャートである。
【図4】本実施例の第1ステップにおける手順を表すフローチャートである。
【図5】本実施例における電力貯蔵装置初期運用スケジュールの作成方法を説明した図面である。
【図6】本実施例におけるESS運用スケジュール群の生成状況を説明する図面である。
【図7】本実施例の第2ステップにおける手順を表すフローチャートである。
【図8】本実施例の第2ステップで使用するESS充放電電力量の初期個体群の生成状況を説明する図面である。
【図9】本実施例のシミュレーションに使用したESSに関するパラメータを示す表1である。
【図10】本実施例のシミュレーションに適用したGAパラメータを示す表2である。
【図11】ESSを持たない電力系統における最適運用スケジュールを示す図である。
【図12】本実施例のシミュレーションにおける第1ステップの結果を示す図である。
【図13】本実施例のシミュレーションにおける第2ステップの結果を示す図である。
【図14】本実施例の方法と従来法の運用コストで比較して示す表3である。
【図15】本実施例の方法により得られた運用スケジュールにしたがったときの負荷曲線を示す図表である。
【図16】本実施例の方法により得られた運用スケジュールによるESSの充放電電力値を示す図表である。
【図17】本実施例の方法により得られた運用スケジュールによるESSの電力貯蔵量を示す図表である。
【符号の説明】
【0074】
1 電力貯蔵装置(ESS)
2 電力貯蔵素子
3 インバータ
4 火力ユニット
5 負荷
6 電力系統
10 データ処理装置
11 コントロール部
12 条件読込部
13 条件設定部
14 ユニット集約部
15 遺伝的アルゴリズム部
16 拡張優先リスト法部
17 計画評価部
18 表示データ作成部
19 データ格納部
21 個体群生成部
22 個体群格納部
23 選択部
24 交叉操作部
25 突然変異操作部
26 知的突然変異操作部
27 適応度評価部
30 入力部
40 表示部
50 記憶部
60 配信部
70 送受信部
101 第1演算部
102 第2演算部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16