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明細書 :ネコブセンチュウ防除剤および防除方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4528982号 (P4528982)
公開番号 特開2008-120749 (P2008-120749A)
登録日 平成22年6月18日(2010.6.18)
発行日 平成22年8月25日(2010.8.25)
公開日 平成20年5月29日(2008.5.29)
発明の名称または考案の名称 ネコブセンチュウ防除剤および防除方法
国際特許分類 A01N  65/00        (2009.01)
A01P   5/00        (2006.01)
FI A01N 65/00 A
A01P 5/00
請求項の数または発明の数 6
全頁数 16
出願番号 特願2006-308331 (P2006-308331)
出願日 平成18年11月14日(2006.11.14)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成18年5月15日 日本植物病理学会発行の「平成18年度 日本植物病理学会大会 プログラム・講演要旨予稿集」に発表
審査請求日 平成19年3月22日(2007.3.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
発明者または考案者 【氏名】田場 聡
【氏名】諸見里 善一
個別代理人の代理人 【識別番号】110000590、【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
【識別番号】100086324、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 信夫
審査官 【審査官】太田 千香子
参考文献・文献 特開平11-092320(JP,A)
特表2009-536937(JP,A)
平成18年度日本植物病理学会大会 プログラム・講演要旨予稿集,2006年 5月15日,第117頁
調査した分野 A01N 65/00
A01N 65/12
JST7580(JDreamII)
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
アワユキセンダングサ(Bidens pilosa .var.radiata Scherff)、タチアワユキセンダングサ(Bidens pilosa L. var. radiata Sch. Bip.)、ハイアワユキセンダングサ(Bidens pilosa L. var. radiata Scherff.f.decumbens Scherff.)、ヒメジョオン(Stenactis annuus (L.)Cass.)、オオアレチノギク(Erigeron sumatrensis Retz.)およびセイタカアワダチソウ(Solidago altissima L.)よりなる群から選ばれる1種または2種以上のキク科植物の抽出物を有効成分とすることを特徴とするネコブセンチュウ防除剤。
【請求項2】
アワユキセンダングサ(Bidens pilosa .var.radiata Scherff)、ヒメジョオン(Sten
actis annuus (L.) Cass.)、オオアレチノギク(Erigeron sumatrensis Retz.)およびセイタカアワダチソウ(Solidago altissima L.)よりなる群から選ばれる1種または2種以上のキク科植物の抽出物を有効成分とすることを特徴とするネコブセンチュウ防除剤
【請求項3】
アワユキセンダングサ(Bidens pilosa .var.radiata Scherff)、ヒメジョオン(Sten
actis annuus (L.) Cass.)およびオオアレチノギク(Erigeron sumatrensis Retz.)よりなる群から選ばれる1種または2種以上のキク科植物の抽出物を有効成分とすることを特徴とするネコブセンチュウ防除剤
【請求項4】
土壌中に、請求項1ないしの何れかの項記載の防除剤を灌注することを特徴とするネコブセンチュウ防除方法。
【請求項5】
植物の根を、請求項1ないしの何れかの項記載の防除剤に浸漬することを特徴とするネコブセンチュウ防除方法。
【請求項6】
植物の種子を、請求項1ないしの何れかの項記載の防除剤に浸漬することを特徴とするネコブセンチュウ防除方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はネコブセンチュウ防除剤およびこれを利用するネコブセンチュウ防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネコブセンチュウは700種を越える植物に寄生し、生育阻害や収量低下を引き起こすため世界的に問題となっている重要害虫である。これら有害センチュウの防除は一般的に化学合成農薬を用いて行われている。
【0003】
農薬は即効性があり高い防除効果を発揮することから有害センチュウの有効な防除法の1つであるが、地球環境や人畜、土壌生態系に与える影響、さらには食の安全に対する配慮から、可能な限り化学農薬の使用を低減するために環境保全型防除技術の研究がなされている。環境保全型防除技術には、植物の生物機能を活用した防除法があり、耕種的および生物的な方法が幾つか知られている。なかでも植物成分を用いた防除法としてセンダン科アザディラクタ属のニーム(学名:Azadirachta indica Juss.)の抽出液を利用する方法が知られている(非特許文献1、2)。この方法はニーム抽出液に植物の種子あるいは根を浸漬することで抽出液中に含まれる有効成分を浸透させ、ネコブセンチュウ被害を軽減するものである。
【0004】
しかし、ニーム抽出液については単に根こぶ形成の抑制と土壌中の幼虫数を調査したのみであり、効果的な防除を期待するのであれば、孵化に及ぼす影響、忌避作用、抵抗性誘導効果さらには、有益センチュウである自活性センチュウ類や作物の生長に及ぼす影響についても評価を行い総合的に高い効果を示す植物種を選抜する必要がある。
【0005】

【非特許文献1】Akhtar, M. and I. Mahmood. (1994). Controlof root-knot nematode by bare-root dip in undecomposed and decomposed extracts ofneem cake and leaf. Nematologia Mediterranea 22: 55-57.
【非特許文献2】Akhtar, M. and I. Mahmood. (1995).Control of root-knot nematodeMeloidogyne incognita in tomato plants by seed-coating with Achook and neemoil. International Pest Control 37: 86-87.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は有害センチュウであるネコブセンチュウに対して高い抗センチュウ作用を有し、かつ、有益センチュウである自活性センチュウの活動や作物の生長を抑制しないような植物抽出物を有効成分とするネコブセンチュウ防除剤およびこれを利用したネコブセンチュウ防除方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行ったところ、沖縄に自生する未利用植物のうち、特定の植物の抽出物が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明はキク科植物の抽出物を有効成分とすることを特徴とするネコブセンチュウ防除剤である。
【0009】
また、本発明は土壌中に上記防除剤を灌注することを特徴とするネコブセンチュウ防除方法である。
【0010】
更に、本発明は植物の根または種子を上記防除剤に浸漬することを特徴とするネコブセンチュウ防除方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のネコブセンチュウ防除剤は、その有効成分である植物抽出物自体が直接ネコブセンチュウに作用し、不動化等の運動阻害、致死、孵化阻害ならびに忌避等の抗センチュウ効果を発揮するものである。そしてこれと共に、植物の抵抗性を誘導することで間接的にネコブセンチュウに対する防除効果を発揮させることもできる。また、前記防除剤は有益センチュウである自活性センチュウの活動や作物の生長を抑制しない優れたものである。
【0012】
従って、本発明のネコブセンチュウ防除剤は、優れた抗センチュウ作用と安全性を有しているので、種々の作物に対する環境保全型防除技術として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のネコブセンチュウ防除剤(以下、「本発明防除剤」という)は、キク科植物の抽出物を有効成分とするものである。本発明防除剤において有効成分として用いられる抽出物は、キク科植物から得られるものである。抽出物を得るために用いられるキク科植物としては、特に制限はないが、例えば、センダングサ属、ヒメジョオン属およびムカシヨモギ属から選ばれるキク科植物の1種または2種以上が挙げられる。具体的にキク科センダングサ属の植物としては、コセンダングサ(Bidens pilosa L.)やその変種または品種が挙げられ、具体的に変種としてはアワユキセンダングサ(Bidens pilosa.var.radiata Scherff)、タチアワユキセンダングサ(Bidens pilosa L. var. radiata Sch. Bip.)等が挙げられ、品種としてはハイアワユキセンダングサ(Bidens pilosa L. var.radiata Scherff. f.decumbens Scherff.)等が挙げられる。また、キク科ヒメジョオン属の植物としてはヒメジョオン(Stenactis annuus (L.) Cass.)等が挙げられる。更に、キク科ムカシヨモギ属の植物としては、アレチノギク(Erigeron bonariensis L.)、オオアレチノギク(Erigeron sumatrensis Retz.)等が挙げられる。上記したキク科植物の中でもアワユキセンダングサ、ヒメジョオンおよびオオアレチノギクが好ましく、特にアワユキセンダングサが好ましい。
【0014】
上記したキク科植物から抽出物を得る方法としては、特に制限されるものではなく、通常植物から抽出物を得る方法のいずれもが利用できる。例えば、溶媒を用いた方法であれば、次の方法により抽出物を得ることができる。まず、採取直後の生のまたは乾燥機等により乾燥させたキク科植物の各種部位(花、葉、茎、根または全草、好ましくは根を除く全草部分、より好ましくは葉)をそのまま又は裁断、粉砕あるいは細紛した後、水や水と低級アルコールとの混合溶液等の水性溶媒をキク科植物の質量の5~250倍程度添加し、常温~溶媒の沸点付近で10分~数日程度抽出を行い、濾過して植物抽出物を得る。
【0015】
具体的に水性溶媒として水を用いる場合には、生または乾燥させたキク科植物の花、葉、茎、根または全草の10gを細かく裁断し、それを100mlのビーカーに入れた後、蒸留水50mlを入れ、30分間煮沸状態を維持し、抽出することが好ましい。
【0016】
また、水性溶媒として水を30質量%(以下、単に「%」という)およびエタノールを70%からなる混合溶液を用いる場合には、生または乾燥させたキク科植物の花、葉、茎、根または全草の2gを細かく裁断し、それを50mlの三角フラスコに入れ、前記混合溶液を30ml入れ、25℃で10日間静置して抽出することが好ましい。
【0017】
上記のようにしてキク科植物から抽出された抽出物は、そのままの状態で使用することもできるが、必要に応じ、その効力に影響のない範囲で更に濾過等の精製処理を加えても良い。このような精製処理としては、通常の手段を任意に選択して行えば良く、例えば濾紙等を用いた濾過等が挙げられる。
【0018】
本発明防除剤は、上記のようにして得られた抽出物を有効成分とし、そのまま、あるいは希釈したり、公知の防除剤に用いられる担体と組合せることなどにより製剤化することができる。
【0019】
斯くして得られる本発明防除剤は、ネコブセンチュウ、例えば、ティレンクス(Tylenchida)目メロイドギネ(Meloidogynidae)科の、アレナリアネコブセンチュウ(Meloidogyne arenaria(Neal)Chitwood)、サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita Cofoid et White)、キタネコブセンチュウ(Meloidogynehapla Chitwood)、ジャワネコブセンチュウ(Meloidogyne java(Treub)Chitwood)等のネコブセンチュウ、好ましくはアレナリアネコブセンチュウおよびサツマイモネコブセンチュウに不動化等の運動阻害、致死、孵化阻害ならびに忌避等の抗センチュウ作用を有する。また、この防除剤はプレクタス エスピー(Plectus sp.)、ケファロブス エスピー(Cephalobus sp.)、ラブディティス エスピー(Rhabditis sp.)、パナグロライムス エスピー(Panagrolaimus sp.)等の自活性センチュウには抗センチュウ作用を示さない。更に、この防除剤は作物の生長を抑制しない。
【0020】
従って、本発明防除剤は、上記したネコブセンチュウが寄生する種々の植物、例えば、ツルレイシ、キュウリ、メロン、スイカ、カボチャ等のウリ科、ナス、トマト、トウガラシ、ピーマン、ジャガイモ等ナス科、インゲンマメ等のマメ科等の植物への被害を抑制することができる。
【0021】
具体的に本発明防除剤を用いた上記植物へのネコブセンチュウの防除は、例えば、本発明防除剤を、土壌中に灌注したり、前記防除剤に植物の根や種子を浸漬すること等により行うことができる。
【0022】
具体的に、本発明防除剤を土壌中に灌注するには、ジョロや灌水装置を用いて本発明防除剤を植物1株あたり栽培期間中に40ml/1回を生育状況等を考慮しながら1~9回程度灌注すればよい。本発明防除剤を土壌中に灌注する場合、本発明防除剤には乾燥したキク科植物の質量の5倍~250倍の溶媒で抽出された抽出物が含有されていることが好ましい。
【0023】
また、本発明防除剤に植物の根や種子を浸漬するには、本発明防除剤を容器に入れ、それに根や種子全体を30~60分程度浸漬すればよい。本発明防除剤に植物の根や種子を浸漬する場合、本発明防除剤には、乾燥したキク科植物の質量の50倍~100倍の溶媒で抽出された抽出物が含有されていることが好ましい。
【0024】
上記のような方法により、上記したネコブセンチュウが寄生する種々の植物への被害を抑制することができる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0026】
本明細書の実施例において供試されたセンチュウは以下のようにして得られたものを用いた。
<植物寄生性センチュウ>
・サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita Cofoid et White)
滅菌水を入れたシャーレにキムワイプを入れ、沖縄県中頭郡うるま市与那城西原の原寄
生ナスから採取した卵のうを置き、25℃のインキュベーターで孵化させ、孵化した2
期幼虫をパスツールピペットで回収し、ミニトマト「ちびっこ」(Lycopersicum esculentum Mill.)に接種し、増殖させたサツマイモネコブセンチュウの2期幼虫を用いた。
・アレナリアネコブセンチュウ(Meloidogyne arenaria (Neal) Chitwood)
九州沖縄農業研究センター(〒861-1192 熊本県合志市須屋2421)の岩堀英晶氏から分譲して頂いたセンチュウ汚染土壌にミニトマトを植え、寄生させた後、上記と同様に卵のうを採取し、孵化させた2期幼虫をパスツールピペットで回収し、トマト「ちびっこ」に接種し、増殖させたアレナリアネコブセンチュウの2期幼虫を用いた。
【0027】
実 施 例 1
サツマイモネコブセンチュウ2期幼虫に対する植物抽出物の効果(1):
(1)植物抽出物の製造
採取直後の、表1に示す各植物の全草2gをそれぞれ容器に入れ、そこに30%の水および70%のエタノールの混合液(以下、「70%エタノール」という)を15ml添加し、25℃で10日間静置してアルコール抽出物(生)を製造した。また、表1に示す各植物の全草を採取後、乾燥機を用い、90℃で1時間乾燥させたものについてもアルコール抽出物(乾燥)を製造した。これらのアルコール抽出物の0.1mlを以下の実験に用いた。
【0028】
(2)サツマイモネコブセンチュウの不動化率の測定
上記(1)で製造した各植物から得られたアルコール抽出物(生および乾燥)を、1ml容量のメスピペットを使って、5ml容量の滅菌済小型試験管に0.1ml添加し、完全に乾燥するまでクリーンベンチ内で1~2日間風乾させた。その試験管に1mlピペットでサツマイモネコブセンチュウ2期幼虫懸濁液(100頭/0.1ml)を添加し、7日後に不動化した2期幼虫を計数した。実験は5反復行った。不動化率は試験に使用したサツマイモネコブセンチュウのうち、不動化(動かなくなった)したサツマイモネコブセンチュウの割合である。各植物から得られたアルコール抽出物のサツマイモネコブセンチュウの不動化率を表1に示した。
【0029】
【表1】
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【0030】
(3)結果
表1より、キク科植物のアワユキセンダングサ、ヒメジョオン、オオアレチノギクのアルコール抽出物(生および乾燥のいずれも)は、サツマイモネコブセンチュウを高い割合で不動化することがわかった。
【0031】
実 施 例 2
サツマイモネコブセンチュウ2期幼虫に対する植物抽出物の効果(2):
採取直後の、表2に示す各植物の根を除く全草部分10gをビーカーに入れ、それに蒸留水を50ml添加した。次いで、これを30分間煮沸して煮沸抽出物(生)を製造した。また、採取後の表2に示す各植物の根を除く全草部分を乾燥機で90℃で1時間乾燥させたものについても上記と同様に煮沸抽出物(乾燥)を製造した。これらの煮沸抽出物をそれぞれ蒸留水で1/10または1/20に希釈したものを用いて、実施例1の(2)と同様にしてサツマイモネコブセンチュウの不動化率を測定した。
【0032】
【表2】
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【0033】
表2より、アワユキセンダングサおよびヒメジョオンの煮沸抽出物(生および乾燥のいずれも)は、1/10や1/20に希釈した後のものであってもサツマイモネコブセンチュウを高い割合で不動化することがわかった。
【0034】
実 施 例 3
サツマイモネコブセンチュウ2期幼虫に対するアワユキセンダングサの部位別抽出
物の効果:
表3に示すアワユキセンダングサの各部位の煮沸抽出物(乾燥)を実施例2と同様に製造した。この煮沸抽出物(乾燥)を原液のままの状態および1/10または1/50に蒸留水で希釈した。これらを、1ml容量のメスピペットを使って、5ml容量の滅菌済小型試験管に0.1ml添加し、完全に乾燥するまでクリーンベンチ内で1~2日間風乾させた。その試験管にマイクロピペットでサツマイモネコブセンチュウ2期幼虫懸濁液(100頭/0.1ml)を添加し、放置した。7日経過後に、各試験間からセンチュウを含む液をパスツールピペットで採取し、滅菌水に入れ別の試験管に移した。試験管ミキサーで撹拌後、25℃条件下に置き、不動化したセンチュウを致死と見なし、致死した2期幼虫を計数した。致死率は試験に使用したサツマイモネコブセンチュウのうち、致死したサツマイモネコブセンチュウの割合で示した。アワユキセンダングサの各部位の煮沸抽出物(乾燥)のサツマイモネコブセンチュウの致死率も表3に示した。
【0035】
【表3】
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【0036】
表3より、アワユキセンダングサの葉の煮沸抽出物(乾燥)に最も致死作用があることがわかった。また、アワユキセンダングサの煮沸抽出物(乾燥)中のサツマイモネコブセンチュウは、多くの場合、体内に液胞を形成して致死していた(図1)。従って、アワユキセンダングサの煮沸抽出物(乾燥)中にはサツマイモネコブセンチュウの致死効果があることがわかった。
【0037】
実 施 例 4
サツマイモネコブセンチュウの孵化に対するアワユキセンダングサ煮沸抽出物
(乾燥)の効果:
アワユキセンダングサの根を除く全草の煮沸抽出物(乾燥)を実施例2と同様に製造した。これを蒸留水で1/2、1/3、1/10、1/20、1/100または1/200に希釈した。各希釈液に、サツマイモネコブセンチュウの卵のうを解剖用メスを用いて1個入れ、25℃に維持した。卵のう浸漬後3日、6日および9日後に、パスツールピペットを用いて抽出液に含まれるサツマイモネコブセンチュウ2期幼虫を計数し、孵化率を調べた。実験は5反復行い、孵化率は百分率で算出した。その結果を図2に示した。また、対照としては滅菌蒸留水を用いた。
【0038】
葉および花の煮沸抽出液(乾燥)では3日から9日目において滅菌水と比較して全ての処理区で孵化を抑制した。
【0039】
実 施 例 5
サツマイモネコブセンチュウ2期幼虫の忌避行動に対するアワユキセンダングサ煮沸抽出物(乾燥)の効果:
アワユキセンダングサの根を除く全草の煮沸抽出物(乾燥)は実施例2と同様に製造した。この煮沸抽出物(乾燥)の原液のままのものおよびこれを蒸留水で1/10に希釈したものを試料とした。次に、滅菌済シャーレに素寒天培地(寒天:20g、蒸留水:1,000ml)を10ml分注後、凝固させた。凝固後の平板培地裏面の中心に黒マジックで直径2cmの円を描き,その円内に植物体抽出物(乾燥)の原液および1/10希釈液をマイクロピペットで異なるシャーレに3.5μl滴下し、クリーンベンチ内で10分間風乾させた。対照区として滅菌水(3.5μl)を滴下した。その後、それぞれの円内にマイクロピペットを用いてサツマイモネコブセンチュウ懸濁液(100頭/3.5μl)を添加した後、25℃条件下に静置し、30、60、120、180、240、300および360分間後に円内の2期幼虫を計数した。実験は5反復行った。その結果を図3に示した。また、対照としては滅菌蒸留水を用いた。
【0040】
アワユキセンダングサの根を除く全草の煮沸抽出物(乾燥)の原液および1/10希釈液のいずれにも、サツマイモネコブセンチュウが有意に忌避している様子が認められた。最も効果が認められたのはアワユキセンダングサの根を除く全草の煮沸抽出物(乾燥)の原液であった。
【0041】
実 施 例 6
トマトの生育および根こぶ形成に及ぼすアワユキセンダングサ煮沸抽出物(乾燥)
の灌注処理の効果:
1/5,000aワグネルポットに滅菌した供試土壌(市販の島尻マージ(商品名:島尻赤土、緑土産業株式会社製)とバーミキュライトを4:1の割合で混和し、これを元肥として有機肥料を10aあたり3t換算で混和したもの)を重鎮し、これに約10cmに生育したトマト(「ちびっこ」(Lycopersicum esculentum Mill.))の苗を定植した。薬剤区としてホスチアゼート粒剤(20kg/10a)を設置した。定植から2日後、10mlメスピペットを用いてポット当たりサツマイモネコブセンチュウ懸濁液(1,000頭/10ml)を接種し、実施例3では、根を除く全部位のアワユキセンダングサ煮沸抽出液(乾燥)の1/10~1/50希釈液で高い殺虫効果が認められたことから、1/10および1/20希釈液の40mlを複数回灌注した。各処理区は以下の通りである。
【0042】
<処理区> <内容>
1/10(3):1/10に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物の灌注を3回行
ったもの。
1/10(6):1/10に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物の灌注を6回行
ったもの。
1/10(9):1/10に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物の灌注を9回行
ったもの。
1/20(6):1/20に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物の灌注を6回行
ったもの。
1/20(9):1/20に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物の灌注を9回行
ったもの。
薬剤:ホスチアゼート粒剤(20kg/10a)を土壌混和したもの。
無処理:アワユキセンダングサ煮沸抽出物の灌注および薬剤の散布のいずれもしていな
いもの
【0043】
トマトの栽培はサツマイモネコブセンチュウ懸濁液を接種後45日間(2005年9月16日~10月31日)行った後、植物体を掘り起こし、植物体の生長量(草丈、地上部重および根重)および根こぶ指数調査、土壌センチュウ数の計数を行った。実験は5反復行った。植物体の生長量は常法に従い測定した。根こぶ指数と土壌センチュウ数の計数は以下の方法に従って行った。それらの結果を表4に示した。
【0044】
なお、トマトの栽培期間中には、ハモグリバエ対策としてエマメクチン安息香酸塩乳剤、殺菌剤としてTPT水和剤1,000倍(商品名:ダコニール1,000、成分:TPN40.0%、エス・ディー・エス株式会社製)、斑点細菌病としてカスガマイシン・銅水和剤、殺菌剤としてアゾキシストロビン水和剤2,000倍(商品名:アミスター20フロアブル、成分:アゾキシストロビン20.0%、シンジェンタ株式会社製)を用い肩掛け敷き式噴霧器で散布した。
【0045】
<根こぶ指数の算出方法>
根こぶの程度を以下の評価基準に従って判定し、更に以下の式により根こぶ指数を算出した。
(評価) (内容)
0: 根こぶ無し。
1: 根こぶが僅かに認められるが、被害は目立たない。
2: 一見して根こぶが認められる。大きな根こぶや連続した根こぶは少ない。
3: 大小の根こぶが多数認められる。根こぶに覆われて太くなった根も見られるが 、根域全体の50%以下。
4: 多くの根が根こぶだらけで太くなっている。
【0046】
【数1】
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【0047】
<土壌センチュウ数の計数方法>
土壌中のセンチュウ数はベルマン法によって計数した。方法の手順としては、まず、網皿に和紙フィルターを1枚敷き、ガラス漏斗(直径9cm)にゴム管(直径11mm)を取り付け、ピンチコックで止めた。その後、十分混合したサンプル土壌を20gずつ網皿に入れ、底を床に軽く打ちつけて土壌を均等に広げた。さらに、その網皿を漏斗にセットし、網皿の下部が浸るように水を補給した。水の補給の際に空気が入ってないか確認した後、上側をポリフィルムで覆い、48時間分離を継続した。その間不足した水は適宜補給した。分離を行う際の温度はセンチュウが活動しやすい25℃前後とした。48時間後にピンチコックをはずし、水を試験管に10ml測り取り、センチュウが沈殿した後に計数した。実験は3反復行った。
【0048】
【表4】
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【0049】
表4より、アワユキセンダングサ煮沸抽出物(乾燥)を用いて土壌に灌注を行ったところ、処理回数および処理濃度にかかわらず、トマトの草丈、地上部重に有意な差は認められないことがわかった。また、薬剤区と比較してすべての処理区および無処理区で根重が増加していた。また、サツマイモネコブセンチュウ数および細菌食性センチュウ数においては有意な差は認められなかったが、根こぶ指数は無処理区が75に対し、処理区では30~45であった。以上のことからアワユキセンダングサ煮沸抽出物(乾燥)を土壌灌注した場合、トマトの生育や自活性センチュウの生存に対して悪影響を及ぼすことなく、ネコブセンチュウ被害を軽減できることが明らかとなった。
【0050】
実 施 例 7
トマトの生育および根こぶ形成に及ぼすアワユキセンダングサ煮沸抽出物(乾燥)
の根浸漬処理の効果:
アワユキセンダングサの根を除く全草の煮沸抽出物(乾燥)を実施例2と同様に製造した。この煮沸抽出物(乾燥)を原液のまままたはこの原液を滅菌蒸留水で1/2、1/10に希釈した希釈液および滅菌蒸留水をそれぞれ30mlずつ滅菌済シャーレ(直径6cm)に入れた。次にそれらのシャーレに草丈約10cmのトマト(「ちびっこ」)の根を30分間浸漬した後、1/5,000aワグネルポットに滅菌した供試土壌(市販の島尻マージとバーミキュライトを4:1の割合で混和し、これを元肥として有機肥料を10aあたり3t換算で混和したもの)を重鎮し、定植した。また、無処理区には滅菌水を設置し、薬剤区にはホスチアゼート粒剤(20kg/10a換算)を設置した。各処理区は以下の通りである。
【0051】
<処理区> <内容>
原液:アワユキセンダングサ煮沸抽出物にトマトの根を浸漬したもの。
1/2:1/2に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物にトマトの根を浸漬した
もの。
1/10:1/10に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物にトマトの根を浸漬し
たもの。
薬剤:ホスチアゼート粒剤(20kg/10a)を土壌混和したもの。
無処理:滅菌蒸留水にトマトの根を浸漬したもの。
【0052】
定植2日後、メスピペットを用い、ポット当たり10mlのサツマイモネコブセンチュウ懸濁液(1,000頭/10ml)を接種した。接種後45日間(2005年9月16日~10月31日)栽培を行った後に植物体を掘り起こし、植物体の生長量(草丈、地上部重および根重)および根こぶ指数調査、土壌センチュウ数の計数を実施例6と同様に行った。実験は5反復行った。それらの結果を表5に示した。なお、栽培期間中には実施例6と同様に植物体の地上部病の防除を行った。
【0053】
【表5】
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【0054】
表5より、アワユキセンダングサ煮沸抽出物(乾燥)の原液に根を浸漬させたトマトを用いて実験を行った結果、無処理と比較して草丈また地上部重が増加したが、根重では有意な差は認められなかった。更に、根こぶ指数は無処理が69に対し、アワユキセンダングサ煮沸抽出物(乾燥)の原液、1/2、1/10で55~65とやや減少した。サツマイモネコブセンチュウ数は、アワユキセンダングサ煮沸抽出物(乾燥)の濃度が高くなるにつれて増加した。以上のことから、本処理を行う場合は1/2、1/10に希釈した抽出物でトマトの根を処理した方が好ましいことが明らかとなった。
【0055】
実 施 例 8
トマトの生育および根こぶ形成に及ぼすアワユキセンダングサ煮沸抽出物(乾燥)
の種子浸漬処理の効果:
アワユキセンダングサの根を除く全草の煮沸抽出物(乾燥)を実施例2と同様に製造した。この煮沸抽出物(乾燥)の原液のままのものおよびこの原液を滅菌蒸留水で1/2、1/10に希釈した希釈液を試料とした。これらにトマト(「ちびっこ」)の種子を30分間または60分間浸漬した後、キムワイプ上で乾燥させた。比較としては、滅菌蒸留水を用いた。滅菌した供試土壌(市販の島尻マージとバーミキュライトを4:1の割合で混和し、これを元肥として有機肥料を10aあたり3t換算で混和したもの)に浸漬処理された種子を植え、人工気象器内で約2ヶ月栽培後、ビニールポットに定植した。各処理区は以下の通りである。
【0056】
<処理区> <内容>
原液(30):アワユキセンダングサ煮沸抽出物にトマトの種子を30分間浸漬した
もの。
原液(60):アワユキセンダングサ煮沸抽出物にトマトの種子を60分間浸漬した
もの。
1/2(30):1/2に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物にトマトの種子を
30分間浸漬したもの。
1/2(60):1/2に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物にトマトの種子を
60分間浸漬したもの。
1/10(30):1/10に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物にトマトの種
子を30分間浸漬したもの。
1/10(60):1/10に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物にトマトの種
子を60分間浸漬したもの。
滅菌蒸留水(30):滅菌蒸留水にトマトの種子を30分間浸漬したもの。
滅菌蒸留水(60):滅菌蒸留水にトマトの種子を60分間浸漬したもの。
【0057】
定植2日後、メスピペットを用い、ポット当たり10mlのサツマイモネコブセンチュウ懸濁液(1,000頭/10ml)を接種し、45日間(2005年9月11日~10月21日)栽培を行った後に植物体を掘り起こし、植物体の生長量(草丈、地上部重および根重)および根こぶ指数調査、土壌センチュウ数の計数を実施例6と同様に行った。実験は5反復行った。それらの結果を表6に示した。なお、栽培期間中には実施例6と同様に植物体の地上部病の防除を行った。
【0058】
【表6】
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【0059】
表6より、アワユキセンダングサ煮沸抽出物(乾燥)にトマトの種子を浸漬した場合、原液に30分および60分浸漬した時、1/2希釈液に30分浸漬した時に草丈および地上部の重量は滅菌蒸留水区と同等であった。また、根こぶ指数において滅菌蒸留水区が60に対し、原液処理区で45~50、1/2希釈液30分浸漬処理区で20、60分浸漬処理区で0、1/10希釈液処理区で10と減少した。更に、サツマイモネコブセンチュウ数は全処理同等であり、細菌食性センチュウ数では滅菌蒸留水区と比較して1/2希釈液30、60分浸漬処理区で増加した。以上のことから、本処理を行った場合は、トマトの生育に対して悪影響が無く、ネコブセンチュウのみを防除できる1/2希釈液30分処理を行うことが好ましい。
【0060】
実 施 例 9
アレナリアネコブセンチュウの運動に及ぼすアワユキセンダングサ煮沸抽出物
(乾燥)の効果:
アワユキセンダングサの根を除く全草の煮沸抽出物(乾燥)を実施例2と同様に製造した。この煮沸抽出物(乾燥)の原液のままのものおよびこの原液を1/2、1/10、1/20および1/100に希釈した希釈液を試料とした。この試料1mlにマイクロピペット(20~200μl)を用いてアレナリアネコブセンチュウ懸濁液(100頭/0.1ml)を接種し、光学顕微鏡下で観察し、致死率を実施例3と同様にして算出した。それらの結果を表7に示した。実験は5反復行い、致死率は百分率で算出した。
【0061】
【表7】
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【0062】
表7よりアワユキセンダングサの根を除く全草の煮沸抽出液(乾燥)はサツマイモネコブセンチュウだけでなく、種の異なるアレナリアネコブセンチュウに対しても原液から1/50希釈液で高い殺虫効果を示すことが明らかとなった。
【0063】
実 施 例 10
主要作物に対するアワユキセンダングサ煮沸抽出物(乾燥)の効果:
1/5,000aワグネルポットに滅菌した供試土壌(市販の島尻マージ(商品名:島尻赤土、緑土産業株式会社製)とバーミキュライトを4:1の割合で混和し、これを元肥として有機肥料を10aあたり3t換算で混和したもの)を重鎮した。これに、播種後10日目の供試作物(ナス(品種名:くろすけ(Solanum melongena L.))、インゲン(品種名:丸莢プロバイダー(Phaseolus vulgaris L.))およびツルレイシ(品種名:あばしゴーヤー(Momordica charantia L.)))を定植した。この定植した作物に、実施例2と同様に製造したアワユキセンダングサの根を除く全草の煮沸抽出物(乾燥)の原液、1/10および1/20希釈液の10mlを複数回灌注した。各処理区は以下の通りである。
【0064】
<処理区> <内容>
1/10(12):1/10に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物の灌注を12
回行ったもの。
1/20(12):1/20に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物の灌注を12
回行ったもの。
滅菌蒸留水:滅菌蒸留水の灌注を12回行ったもの。
【0065】
各作物の栽培を35日間(2005年11月26日~12月31日)行った後、生育量(草丈、地上部重、根長および根重)を調査した。実験は5反復行った。それらの結果を表8(ナス)、表9(インゲン)および表10(ツルレイシ)に示した。
【0066】
なお、各作物の栽培期間中には、うどんこ病対策としてチオファネートメチル水和剤1,500倍(商品名:トップジンM水和剤、成分:チオファネートメチル70.0 %、日曹達株式会社製)、ハモグリバエ対策としてエマメクチン安息香酸塩乳剤、殺菌剤としてTPT水和剤1,000倍(商品名:ダコニール1,000、成分:TPN40.0%、エス・ディー・エス株式会社製)、斑点細菌病としてカスガマイシン・銅水和剤、殺菌剤としてアゾキシストロビン水和剤2,000倍(商品名:アミスター20フロアブル、成分:アゾキシストロビン20.0%、シンジェンタ株式会社製)を用い肩掛け敷き式噴霧器 で散布した。
【0067】
【表8】
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【表9】
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【表10】
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【0068】
アワユキセンダングサ煮沸抽出物(乾燥)の1/10希釈液(12回)、1/20希釈液(12回)で草丈、地上部重、根長および根重の全てにおいてインゲン、ツルレイシでおよびナスでほとんど影響は認められなかった。以上のことからネコブセンチュウが寄生可能な主要作物に対してアワユキセンダングサ煮沸抽出物(乾燥)は無害であり、ネコブセンチュウに対してのみ駆除効果を発揮することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のネコブセンチュウ防除剤は、優れた抗センチュウ作用と安全性を有しているので、種々の作物に対する環境保全型防除技術として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】アワユキセンダングサ煮沸抽出物中のサツマイモネコブセンチュウの状態を示す図面である。
【図2】サツマイモネコブセンチュウの孵化に対するアワユキセンダングサ煮沸抽出物の効果を示す図面である(図中のバー標準偏差を示す。異なるアルファベットは有意差を示す(Tukey’s HSD multiple comparison test, p <0.05)。)。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2