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明細書 :赤外分光法を用いた血液中のグルコース濃度を測定する方法及びそれを用いた装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4719891号 (P4719891)
登録日 平成23年4月15日(2011.4.15)
発行日 平成23年7月6日(2011.7.6)
発明の名称または考案の名称 赤外分光法を用いた血液中のグルコース濃度を測定する方法及びそれを用いた装置
国際特許分類 G01N  21/35        (2006.01)
A61B   5/1455      (2006.01)
G01N  33/483       (2006.01)
G01N  33/66        (2006.01)
FI G01N 21/35 Z
A61B 5/14 322
G01N 33/483 C
G01N 33/66 D
請求項の数または発明の数 5
全頁数 16
出願番号 特願2006-527803 (P2006-527803)
出願日 平成17年7月26日(2005.7.26)
国際出願番号 PCT/JP2005/013660
国際公開番号 WO2006/011487
国際公開日 平成18年2月2日(2006.2.2)
優先権出願番号 2004223934
優先日 平成16年7月30日(2004.7.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審判番号 不服 2010-000065(P2010-000065/J1)
審査請求日 平成19年3月12日(2007.3.12)
審判請求日 平成22年1月4日(2010.1.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】北村 彰英
【氏名】野村 文夫
【氏名】唐津 孝
参考文献・文献 特開2002-131228(JP,A)
国際公開第03/069308(WO,A1)
特開平11-258156(JP,A)
特開平01-285841(JP,A)
特開昭60-253952(JP,A)
特開平04-350519(JP,A)
特開平06-273319(JP,A)
C.Petibois他,“Determination of Glucose in Dried Serum Samples by Fourier-Transform Infrared Spectroscopy”,Clinical Chemistry,VOL.45,NO.9,1999,pp.1530-1535
調査した分野 G01N21/00-21/61
特許請求の範囲 【請求項1】
1010~1050cm-1の波長範囲を含む吸収スペクトルを測定し、
前記吸収スペクトルのうち1010~1050cm-1の波長範囲の吸収スペクトルを二次微分して二次微分スペクトルを求め、
前記二次微分スペクトルにおける1030cm-1近傍に現れる下向きの頂点を挟む上向きの頂点2点を積分範囲の基準となる2点として定め、
前記定めた2点に対応する波長範囲を用いて、前記吸収スペクトルにおける吸収の強度を積分して積分値を求め、
あらかじめ求めてある積分値とグルコース濃度との関係と、前記吸収スペクトルから求めた積分値と、に基づいて、採取した血液中のグルコース濃度を測定する方法。
【請求項2】
前記積分した値は2点ベース法により求めることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
血液中の総蛋白質濃度にも基づいて血液中のグルコース濃度を測定する請求項1記載の方法。
【請求項4】
1450~1750cm-1の波長範囲における吸収の強度にも基づいて血液中のグルコース濃度を測定する請求項1記載の方法。
【請求項5】
1010~1050cm-1の波長範囲を含んだ吸収スペクトルを測定する吸収スペクトル測定手段と、
1010~1050cm-1の波長範囲の吸収スペクトルを二次微分して二次微分スペクトルを算出する二次微分スペクトル算出手段と、
前記二次微分スペクトル算出手段が算出した二次微分スペクトルにおける1030cm-1近傍に現れる下向きの頂点を挟む上向きの頂点2点を積分範囲の基準となる2点として定める積分範囲算出手段と、
前記積分範囲算出手段が求めた前記二次微分スペクトルに基づき求められた2点を用いて、前記吸収スペクトルにおける吸収の強度を積分して積分値を求める積分手段と、
前記積分手段が求めた積分値に基づいて血液中のグルコース濃度を判定する濃度判定手段と、を有する血液中のグルコース濃度測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は赤外分光法を用いて血液中のグルコース濃度を測定する方法、さらにはそれを用いた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病の患者の血糖値即ち血液中のグルコース濃度を測定する方法及びそれを用いた装置として、従来、近赤外領域の吸収を用いた血糖値測定方法及びそれを用いた装置が知られている。しかしこれらは精度、測定方法の困難さなどからあまり普及していない。一方、赤外分光法を用いた血液中のグルコース濃度を測定する方法及びそれを用いた装置に関するものも提案されており、下記特許文献1に記載がある。

【特許文献1】特開2003-042948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においても、従来の近赤外領域の吸収を用いた血液中のグルコース濃度を測定する方法及びそれを用いた装置と同様、グルコース濃度に対応する波長範囲を十分に特定できておらず他の吸収による誤差を多く含んでしまうため測定の定量性において精度がまだ十分とはいえない。
【0004】
そこで本発明は、赤外分光法を用いてより精度の高い定量化を可能とする血糖値の測定方法、及び、それを用いた血糖値の測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、具体的に以下の手段をとる。
まず、第一の手段として、血液中のグルコース濃度を測定する方法において、1020~1040cm-1の波長範囲を含む吸収スペクトルを測定し、この吸収スペクトルのうち1020~1040cm-1の波長範囲の吸収の強度を積分して積分値を求め、この積分値に基づくことを特徴とする。本発明者らは、グルコースに起因する様々なピークのうち、1030cm-1近傍にあるピークが血液中のグルコース濃度を定量化するために非常に有用であると思い至り、この周辺に現れるピークの範囲として1020~1040cm-1を採用するに至った。これにより、血液中のグルコース濃度を十分に定量化することができる。また、この場合において、積分値は2点ベース法により求めることがより望ましい。
【0006】
またこの場合において、あらかじめ求めてある積分値とグルコース濃度との関係と、前記吸収スペクトルから求めた積分値と、に基づいて血液中のグルコース濃度を測定することも望ましい。なおここで「あらかじめ求めてある積分値とグルコース濃度との関係」とは、積分値が分かることでグルコース濃度が分かる関係をいい、例えば検量線のような関数の関係や、積分値にグルコース濃度を対応させたデータのテーブルのような関係が該当するが、積分値が分かることでグルコース濃度が分かる限りにおいてこれらの例に限定されるわけではない。
【0007】
また、第二の手段として、血液中のグルコース濃度を測定する方法において、1010~1050cm-1の波長範囲を含む吸収スペクトルを測定し、この吸収スペクトルのうち1010~1050cm-1の波長範囲を含む吸収スペクトルを二次微分して二次微分スペクトルを求め、この二次微分スペクトルに基づいて積分範囲を定め、この定めた積分範囲における吸収の強度を積分して積分値を求め、この積分値に基づいて血液中のグルコース濃度を測定することを特徴とする。この方法によると、1030cm-1近傍の吸収ピークが測定条件等により多少ずれたとしても、二次微分を行うことにより変曲点を十分に特定でき、積分範囲を正確に求めることができる。なおこの場合において、積分した値は直線を用いる2点ベース法により求めることもより望ましい。
【0008】
またこの場合において、あらかじめ求めてある積分値とグルコース濃度との関係と、前記吸収スペクトルから求めた積分値と、に基づいて血液中のグルコース濃度を求めることもより望ましい。
【0009】
またこの場合において、血液中の総蛋白質濃度にも基づいて血液中のグルコース濃度を測定することもより望ましい。
【0010】
またこの場合において、1450~1750cm-1の波長範囲における吸収の強度にも基づいて血液中のグルコース濃度を測定することも望ましい。
【0011】
なお、この手段において、測定毎におけるピークのずれが少ないと判断できる場合は1010~1050cm-1の波長範囲を1020~1040cm-1とすることで対応することも可能ではある。
【0012】
また、第三の手段として、血液中のグルコース濃度測定装置において、1020~1040cm-1の波長範囲を含む吸収スペクトルを測定する吸収スペクトル測定手段と、吸収スペクトル測定手段が測定した吸収スペクトルのうち1020~1040cm-1の波長範囲における吸収の強度を積分して積分値を出力する積分手段と、この積分手段の出力に基づいて血液中のグルコース濃度を判定する濃度判定手段と、を有することを特徴とする。ここで吸収スペクトル測定手段としては、赤外吸収スペクトルを測定する装置が該当し、これには赤外領域の光を発生させる手段、液体のサンプルに光を導入する手段、サンプルにより吸収を受けた後の光を受ける受光手段、受光手段が受けた光量に基づいて吸収スペクトルを算出する手段が含まれる。また積分手段には、例えば算出された吸収スペクトルに基づいてピーク処理を行うプログラム等が該当し、また濃度判定手段には、積分値に対応してグルコース濃度を求めるためのプログラムやデータのテーブルなどが含まれる。
【0013】
また、第四の手段として、血液中のグルコース濃度測定装置において、1010~1050cm-1の波長範囲を含んだ吸収スペクトルを測定する吸収スペクトル測定手段と、1010~1050cm-1の波長範囲を含んだ吸収スペクトルを二次微分して二次微分スペクトルを算出する二次微分スペクトル算出手段と、この二次微分スペクトル算出手段が算出した二次微分スペクトルに基づいて積分範囲を定める積分範囲算出手段と、この積分範囲算出手段の出力に基づいて吸収スペクトルにおける吸収の強度を積分して積分値を求める積分手段と、この積分手段が求めた積分値に基づいて血液中のグルコース濃度を判定する濃度判定手段と、を有することを特徴とする。なおここで、二次微分スペクトル算出手段は、測定された吸収スペクトルのデータに基づいて、二次微分を行うプログラム等が該当し、積分範囲算出手段とは、二次微分スペクトルにおける強度データを参照して積分範囲として好適な強度を持つ吸収の波長を定める機能を有するプログラム等が該当する。
【発明の効果】
【0014】
以上により、きわめて精度の高い定量化を可能とする血液中のグルコース濃度を測定する方法、及び、それを用いた測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態では、まず採取した血液を赤外分光法により測定し、その吸収スペクトルを得る。その際の波長範囲としては1020~1040cm-1の波長範囲が含まれていることが必要であり、1030±20cm-1の波長範囲が含まれることが正確な測定を期す上でより望ましい。そして次にその吸収スペクトルの1020~1040cm-1を含む範囲(望ましくは1030±20cm-1の範囲)に対し二次微分を行い、二次吸収スペクトルを得る。その後この二次吸収スペクトルのうち1020~1040cm-1の範囲(望ましくは1030±20cm-1の範囲)のうちの2点を定める。そしてその2点に対応する波長範囲で元の吸収スペクトルに対し2点ベース法を用いた積分を行い、ピーク面積とし、その積分値に基づいて血液中のグルコース濃度を評価する。
【0016】
本実施形態では、1030cm-1近傍の吸収ピークが血液中のグルコース濃度を定量化するために非常に有用であることに思い至り、更に吸収スペクトルに対して二次微分を行い積分の範囲の基準となる2点を求めるため、各測定における種々の要因によって数cm-1着目するピークがずれた場合であってもこのずれを排除してピーク面積を正確に求めることができる。なお積分範囲を定める2点の求め方としては、1030cm-1近傍に現れる頂点の両側にある頂点2つを2点とすることが望ましいが、スペクトル形状に応じ多少のずれは許容範囲である。
【0017】
また本形態は、二次微分を求めて積分範囲を定めるため極めて正確に測定できる点において極めて有用であるが、測定によるピークのずれを無視することができる程度の測定でよいならば、1020cm-1~1040cm-1の波長範囲を一律に求めることでも測定可能である。この場合は測定誤差を犠牲にしても測定が省略でき高速な測定が可能となる。
【0018】
また吸収スペクトルの測定は、1020~1040cm-1の波長範囲(望ましくは1030±20cm-1の範囲)が含まれていればそれ以外の範囲における赤外吸収スペクトルを測定することについてはなんら差し支えない。しかし一方で、積分値を求める場合は、二次微分で求めたベースとなる波長範囲(若しくは1020cm-1~1040cm-1の波長範囲)で評価するため、それ以外の範囲を含めて積分値を定めることは妥当ではない(もちろんこれらの範囲に対しても多少の誤差は生じるものであるし、誤差と認められる範囲は許容されうるべきである)。
【0019】
また、1020~1040cm-1の波長範囲(望ましくは1030±20cm-1の範囲)以外の範囲の吸収スペクトルを測定することは、血液中のグルコース濃度の絶対値の定量化をする上でより望ましい場合がある。例えば1450cm-1から1750cm-1の範囲では血液中の総蛋白質に起因する吸収ピークが現れているため、この吸収ピークと総蛋白質の濃度とを考慮に入れることで、グルコース濃度を絶対的に測定することができるようになる。なお具体的な考慮の仕方は後述する。
【0020】
また一方で、本実施の形態を実現するためには、より正確に測れるための溶液ホルダーを作成することが望ましい。図1にその構造を示す。
本実施形態における溶液ホルダー1は、図1に示すとおり、サンプリングプレート2上にATRプリズム3を囲って配置されるものであって、サンプリングプレート2の上面と溶液ホルダー1とにより凹部を形成し、液体のサンプルを保持する。図2に溶液ホルダー1周辺の断面及び液体のサンプルを塗布した場合の経過について示す。溶液ホルダー1の内側面は基盤に対してほぼ垂直な角度を有して配置されており、これにより液体のサンプルが乾燥した場合であってもATRプリズムを十分覆った状態に保つことができる。これに対し、図3で示すように、側壁における内側面が傾いている場合は、ATRプリズム上に十分な量の乾燥したサンプルを確保することができないが、図2で示すものは側壁の側面が基板に対してほぼ垂直に立っているため、ATRプリズム上に十分な量の乾燥したサンプルが確保でき、十分に強い強度を有する赤外吸収スペクトルを得ることができる。なおここで「ほぼ垂直」とは、上記の観点よりサンプリングプレートの面に対して概ね±10度以内程度の範囲であることが望ましい。
【0021】
なお、本溶液ホルダーを用いて血液を赤外分光法で測定する際には削除減圧して乾燥させるが、減圧の度合いが強すぎると血液から気泡が発生してATRプリズムから血液がはがれ、極端に低い吸光度の低い赤外吸収スペクトルとなってしまうため、注意することが必要である。
【実施例】
【0022】
本実施例では実際の血清を対象として、血糖値の計測を行った。以下に詳細に説明する。
まずグルコース濃度0.71g/lの血清(以下、説明のため簡単に「第一の血清」という。)をもとに4つのサンプルを作成した。具体的には、第一の血清を180μlと蒸留水20μlを加えたサンプル(以下単に「No.1」とする)、第一の血清180μlとグルコース濃度4.55g/lのグルコース溶液20μlとを加えたサンプル(以下単に「No.1」とする)、第一の血清180μlとグルコース濃度9.11g/lのグルコース溶液20μlを加えたサンプル(以下単に「No.3」とする)、第一の血清180μlとグルコース濃度18.21g/lのグルコース溶液20μlとを加えたサンプル(以下単に「No.4」とする)をそれぞれ作成した。
【0023】
そして以上と同様にグルコース濃度0.83g/lの血清(以下「第二の血清」という)に対しても、同様のグルコース溶液を同様に加え、4つのサンプルを作成し、さらにグルコース濃度0.71g/lの血清(上記第一の血清とは別の血清である。以下「第三の血清」という。)に対しても同様に4つのサンプルを作成した。表1に作成した12種類のサンプルについて示す。
【表1】
JP0004719891B2_000002t.gif

【0024】
このサンプルを作成した後、それぞれのサンプルについてATR型赤外吸収測定を行い、赤外吸収スペクトルを得た。なおこの測定は、それぞれのサンプルを図1及び図2で示す溶液ホルダー1(外径:3.6mm、内径:5.5mm、高さ1.7mm、材質:表面に金属めっきを施した銅)に入れて乾燥させてから行った。なおサンプルの乾燥は溶液状態のサンプルをサンプリングプレート上に配置した溶液ホルダーに入れ、更にこのサンプリングプレートと溶液ホルダーとをデシケータに入れ、5mmHg以下に減圧して20分おくことにより行った。またこのATR型赤外吸収測定は、一つのサンプルあたり5分毎に3回測定を行い、得られた赤外吸収スペクトルのうち1000cm-1付近の吸収がもっとも大きい赤外吸収スペクトルを完全に乾燥した状態の吸収スペクトルとして採用した。
【0025】
次に、上記の赤外吸収測定により求めた吸収スペクトルそれぞれに対し、二次微分を行い、二次微分スペクトルを得た。図4(a)に赤外吸収スペクトルを、図4(b)にその二次微分スペクトルをそれぞれ示す。そして図4(b)をもとに、1030cm-1付近の下向きの頂点をグルコースに特徴的なピークの頂点として確認し、その下向きの頂点を挟む上向きの頂点近傍2点の幅をピークの幅とし、1019~1039cm-1と定めた。そして上記範囲について図4(a)の吸収スペクトルについて2点ベース法により積分し、その積分値をピーク面積とした。なおこの操作は各サンプル毎に行い、サンプル毎のピーク面積を求めた。
【0026】
次に、このピーク面積と溶液におけるグルコース濃度との相関を調べた。図5(a)にサンプルNo.1~4の結果を、図5(b)にサンプルNo.5~8の結果を、図5(c)にサンプルNo.9~12の結果をそれぞれ示す。なおこれら各図中の各直線は最小二乗法により得られたものである。
【0027】
この結果、図5(a)における直線ではR=0.991、図5(b)における直線ではR=0.960、図5(c)における直線ではR=0.976といずれも高い相関を有する検量線を描くことができ、この波長範囲で積分を行うことでグルコース濃度との相関を非常に正確に評価することができることが確かめられた。これは特に同一人におけるグルコース濃度の評価に極めて有用である。具体的には、この測定に先んじて予めグルコース濃度とピーク面積との関係を例えば検量線という形で求めておき、測定においてピーク面積を求め、検量線に基づいて求めたピーク面積に対応するグルコース濃度を求めることができる。なおもちろん、予め求める関係は検量線という一次関数の形式でもよいし、データのテーブルといった形式でもよく、ピーク面積とグルコース濃度との対応がとれているものであれば特に限定はない。
【0028】
なお、本実施例である図5(a)~(c)のそれぞれにおける検量線はそれぞれ(1)、(2)、(3)に示す式で示された。
【数1】
JP0004719891B2_000003t.gif
【数2】
JP0004719891B2_000004t.gif
【数3】
JP0004719891B2_000005t.gif

【0029】
次に、これら図5(a)~(c)を一つの図中に纏め、血清間における相関について評価を行った。この結果を図6に示す。
【0030】
一つの血清に由来するサンプル同士ではグルコース濃度と積分値との間で極めて高い相関性を有しているものの、図6の結果によると異なる血清間では相関が薄くなってしまっていることが分かる。これについて検討を行ったところ、これは総蛋白質による影響が大きく、特に1400cm-1付近を中心に大きなピークを有するアルブミンが影響しているものと考えられた。なおアルブミンのピークは1450cm-1から1750cm-1の範囲で現れている。(図7参照)。
【0031】
そこで、上記3つの検量線の総蛋白質濃度に対する依存性を調べた。なお、上記サンプルの総蛋白質濃度は、No.1~4においては38.0g/l、No.5~8においては64.6g/l、No.9~12においては85.6g/lであった。
【0032】
図8(a)に各検量線における傾きと総蛋白質濃度との関係を示し、図8(b)に各検量線の切片と総蛋白質濃度との関係を示す。なお図中それぞれの直線は最小二乗法により求めた。
【0033】
この結果、図8(a)ではR=0.966と非常によい相関を得ることができた。なお図8(b)ではR=0.807であった。またこの直線式はそれぞれ以下で示された。
【数4】
JP0004719891B2_000006t.gif
【数5】
JP0004719891B2_000007t.gif

【0034】
そして以上の上記の式(1)乃至(5)から、1019~1039cm-1の積分値と総蛋白質濃度を変数としたグルコース濃度を求める式を得ることができた。
【数6】
JP0004719891B2_000008t.gif

【0035】
以上により、血清毎の相関を取り入れることができ、血液中の血糖値を正確に定量化することができた。
【0036】
ここで、本実施例の結果の信頼性を確かめるべく、他のサンプルとして4種類の血清を用いて同様の測定を行った。用いたサンプルの成分については下記表2に示し、この結果を図9に示す。ここでは他のグルコース濃度を測る基準として酵素法によるグルコース濃度との関係を評価した。なおこれらサンプルにはグルコース溶液を加えるなどの調整は行っていない。
【表2】
JP0004719891B2_000009t.gif

【0037】
図9によると本実施例における結果と酵素法における結果との間にR=0.807という高い相関を有しており、この結果からも本実施例における分析が有用であることが示された。
【0038】
以上、本実施例により、赤外吸収スペクトルを用いて血糖値の定量化を正確に実現することができた。
【0039】
なお本実施例では、サンプル中の総蛋白質濃度に予め測定した値を用いたが、総蛋白質濃度については1450cm-1から1750cm-1の範囲で現れる赤外吸収ピークを2点ベース法により積分して求めることでも十分定量化できる。特にこの範囲の赤外吸収ピークは十分大きく、グルコース濃度に比べて非常に容易かつ正確に定量化することができる。従ってこの場合、血清を採取した後、1400cm-1近傍から900cm-1近傍の範囲の赤外吸収ピークを測定し、1020~1040cm-1近傍(若しくは1030±20cm-1)では二次微分を行いグルコースに由来する積分値を求める一方、1450cm-1近傍から1750cm-1近傍の範囲では総蛋白質に由来する積分値を求めることで、極めて正確に定量化することができるようになり有用である。またこの総蛋白質の積分値を求める際も2点ベース法が有用である。
【0040】
(比較例1)
本発明の効果を確認するための比較例として、一般のATR型赤外分光法による測定を行い、グルコース濃度の基準となる酵素法による結果と比較した。サンプルは全部で9種類のサンプルについて行った。なお、実施例1における赤外分光法とは積分する波長範囲が異なっており、950~1140cm-1で行った。また、溶液ホルダーについても実施例1とは異なり、図3で示す溶液ホルダーを用いて行った。この結果を図10に示す。
【0041】
この結果、R=0.206と図9のR=0.807に比べ極めて低い相関しか有していなかった。従って、実施例1における測定方法が従来法に比べて有用であることが確認できた。なお、上記の実施の例では血液を採取する実施の様態を示しているが、赤外吸収スペクトルを測定することができる限りにおいて血液を採取することなく非侵襲の測定にも適用がありえる。例えば、人間の指先等を押し当て、上述の赤外領域の光を入射及び反射させてその光を受光する手段を吸収スペクトル測定手段として採用することで、血液中のグルコース濃度を測定することができるようになる。そこで、本方法を用いて実際に非侵襲測定を試みた。具体的にはアルコールを浸した綿で人差し指を拭き、その指をATRプリズムに密着させ、血清と同様の方法で測定を開始し、積算終了後、同様の二次微分スペクトルを得た。この結果、グルコースの特徴的な吸収帯を特定することに成功した。即ち、この吸収帯の面積から、血清の測定と同様の処理によりグルコース濃度を決定できることが分かった。この間の測定時間は1分間と極めて短い時間で測定を完了することができ、この実験結果は今回の全反射型赤外分光法による血糖値の測定が、非侵襲測定に応用できることを示すことを確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1におけるサンプリングプレートと溶液ホルダーを示す斜視図。
【図2】実施例1におけるサンプリングプレートと溶液ホルダー近傍の断面図。
【図3】従来例におけるサンプリングプレートと溶液ホルダー近傍の断面図。
【図4】(a)実施例1における赤外吸収スペクトルを示す図、(b)実施例1における赤外吸収スペクトルに基づく二次微分スペクトルを示す図。
【図5】実施例1の各サンプルにおける積分値とグルコース濃度との関係を示す図。
【図6】実施例1の各サンプルにおける積分値とグルコース濃度との関係を示す図。
【図7】900~1750cm-1近傍の実施例1における赤外吸収スペクトルを示す図。
【図8】総蛋白質濃度とグルコース濃度の検量線との関係を示す図。
【図9】実施例の測定方法により求めたグルコース濃度と酵素法により求めたグルコース濃度との関係を示す図。
【図10】従来のATR型赤外分光法と酵素法による結果の相関関係を示す図。
【符号の説明】
【0043】
1…溶液ホルダー、2…サンプリングプレート、3…ATRプリズム
図面
【図4】
0
【図7】
1
【図8】
2
【図1】
3
【図2】
4
【図3】
5
【図5】
6
【図6】
7
【図9】
8
【図10】
9