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明細書 :貴金属系触媒担持導電性高分子複合体およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4797166号 (P4797166)
公開番号 特開2007-175558 (P2007-175558A)
登録日 平成23年8月12日(2011.8.12)
発行日 平成23年10月19日(2011.10.19)
公開日 平成19年7月12日(2007.7.12)
発明の名称または考案の名称 貴金属系触媒担持導電性高分子複合体およびその製造方法
国際特許分類 B01J  31/06        (2006.01)
B01J  37/02        (2006.01)
B01J  37/12        (2006.01)
B01J  37/30        (2006.01)
H01M   4/88        (2006.01)
H01M   4/92        (2006.01)
H01M   4/86        (2006.01)
H01M   8/10        (2006.01)
FI B01J 31/06 M
B01J 37/02 301M
B01J 37/12
B01J 37/30
H01M 4/88 K
H01M 4/92
H01M 4/86 M
H01M 8/10
請求項の数または発明の数 10
全頁数 19
出願番号 特願2005-373455 (P2005-373455)
出願日 平成17年12月26日(2005.12.26)
審査請求日 平成20年10月7日(2008.10.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
発明者または考案者 【氏名】出来 成人
【氏名】水畑 穣
個別代理人の代理人 【識別番号】100075409、【弁理士】、【氏名又は名称】植木 久一
【識別番号】100115082、【弁理士】、【氏名又は名称】菅河 忠志
【識別番号】100125184、【弁理士】、【氏名又は名称】二口 治
【識別番号】100125243、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 浩彰
審査官 【審査官】田澤 俊樹
参考文献・文献 特表2005-527956(JP,A)
特開2005-066592(JP,A)
特開2004-359724(JP,A)
特開平08-162133(JP,A)
特開2005-056833(JP,A)
特許第2642888(JP,B2)
Shigehito DEKI et al.,"Fabrication of Pt Nanoparticles-polypyrrole Composite for Electrocatalyst",電気化学および工業物理化学,2004年 6月 5日,Vol.72, No.6,p.415-417
Khalil Amine et al.,"Catalytic Activity of Platinum after Exchange with Surface Active Functional Groups of Carbon Blacks",J. Chem. Soc. Faraday Trans.,1995年12月21日,Vol.91, No.24,p.4451-4458
調査した分野 B01J 21/00-38/74
H01M 4/00-4/98
8/00-8/24
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
酸化処理によりカーボン粉末表面に形成された親水性基の陽イオンが、貴金属系錯体陽イオンでイオン交換されてなる貴金属系錯体を担持するカーボン粉末上に、導電性高分子の原料単量体溶液中で、前記貴金属系錯体を酸化剤として導電性高分子の重合反応を行い、カーボン粉末上に導電性高分子と貴金属系触媒とを同時に生成させることで、前記カーボン粉末を、前記貴金属系触媒を均一に分散担持した導電性高分子で被覆したことを特徴とする貴金属系触媒担持導電性高分子複合体。
【請求項2】
前記貴金属系触媒が、平均粒径3nm以下、最大粒径10nm以下の貴金属粒子である請求項1に記載の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体。
【請求項3】
前記貴金属系触媒が、白金触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、金触媒、パラジウム触媒よりなる群から選択される1種以上のものである請求項1または2に記載の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体。
【請求項4】
前記貴金属系触媒が、白金触媒である請求項1~3のいずれかに記載の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体。
【請求項5】
前記導電性高分子が、ポリピロール、ポリアニリンおよびポリチオフェンよりなる群から選択される1種以上のものである請求項1~4のいずれかに記載の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体。
【請求項6】
前記導電性高分子が、ポリピロールである請求項1~5のいずれかに記載の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体。
【請求項7】
燃料電池電極として用いられるものである請求項1~6のいずれかに記載の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体。
【請求項8】
カーボン粉末を酸化処理し、
前記カーボン粉末を、貴金属系錯体陽イオンを溶存種として含有する溶液に浸漬した後、乾燥して、前記貴金属系錯体が担持されたカーボン粉末を得、
このカーボン粉末を導電性高分子の原料単量体溶液中で、前記貴金属錯体を酸化剤として導電性高分子の重合反応を行い、カーボン粉末上に導電性高分子と貴金属系触媒とを同時に担持させることを特徴とする貴金属系触媒担持導電性高分子複合体の製造方法。
【請求項9】
酸化剤として、さらに遷移金属錯体を使用する請求項8に記載の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体の製造方法。
【請求項10】
前記遷移金属錯体の前駆体として、塩化鉄、塩化ニッケル、塩化クロム、塩化コバルトおよび塩化マンガンよりなる群から選択される1種以上のものである請求項9に記載の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属系触媒担持導電性高分子複合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白金等の貴金属系触媒は優れた触媒効果を有することから、様々な分野で利用されている。例えば、燃料電池や電気化学プロセスにおいては、カーボン等の担体上に触媒活性成分である貴金属を分散担持させたものが用いられている。
【0003】
近年、環境適合性や高いエネルギー効率から次世代自動車や家庭用の電源として開発が進められている固体高分子型燃料電池(PEFC)の触媒層にも、触媒成分として白金を含む貴金属系触媒が用いられている。上記触媒層については、コスト削減のため、白金の使用量を低減する方法や、燃料に改質ガスを使用した場合のガス中のCOによる電極触媒の被毒を防ぐ方法など、触媒活性の向上や、長期に亘って電極触媒の活性を維持させる方法についての検討が重ねられている。
【0004】
上記触媒層の問題を解決する技術として、例えば、特許文献1には、粒子径の小さな白金微粒子をカーボン粒子上に分散担持させることで、反応表面積を増大させ、単位触媒質量当たりの活性を高める技術が開示されている。
【0005】
また、燃料電池の電極反応はいわゆる3相界面(電解質‐電極触媒‐反応ガス)で起こるが、PEFCでは電解質が固体であるため、反応場が電極と膜との接触界面に限定され、白金の利用率が低下することも知られている。このような問題を解決する手段として、導電性高分子中に触媒微粒子を分散させ、反応場を三次元化することが提案されている。例えば、特許文献2には、塩化白金酸とアニリンとを含む水溶液中に、カーボンペーパーを接触させ、アニリンを電気化学的に酸化重合させることで、このカーボンペーパー表面に、白金イオンを含有するポリアニリン層を形成させ、その後ポリアニリン中の白金イオンを還元して燃料電池電極を製造する方法が開示されている。また、特許文献3には、導電性高分子材料中に微細な貴金属系触媒を均一に分散させた複合体が開示されている。

【特許文献1】特許第2642888号公報
【特許文献2】特開2005‐56833号公報
【特許文献3】特開2004‐359724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
触媒活性を向上させる技術が提案される一方で、触媒活性の経時的な低下に関して新たな問題が認識されつつある。なお、触媒活性の経時劣化について、上述のCO被毒によるものが知られているが、近年、これに加えて、白金触媒の電解質膜への拡散現象が問題視されている。
【0007】
上記白金触媒の電解質膜への拡散は、電極触媒に存在する貴金属微粒子が溶解析出により電極から離れ、電解質層へ拡散することにより起こると考えられている。このような貴金属触媒の拡散現象は、経時的な触媒活性の低下原因となる。しかしながら、かかる問題を解決する技術についての検討はなされておらず、触媒の耐久性向上については、更なる検討の余地があった。
【0008】
本発明は上述のような状況に鑑みてなされたもので、触媒の利用効率が向上され、且つ、触媒微粒子の拡散などによる経時的な触媒活性の低下が生じ難い、貴金属系触媒担持導電性高分子複合体とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体とは、カーボン粉末、貴金属系触媒および導電性高分子を含み、前記カーボン粉末が、前記貴金属系触媒を均一に分散担持した導電性高分子により被覆されているところに要旨を有するものである。
【0010】
上記貴金属系触媒は、凝集することなく、また、上記導電性高分子に被覆された状態で存在しているので、触媒の利用効率が高く、貴金属系触媒がカーボン粉末上から拡散し難いものである。
【0011】
前記貴金属系触媒は、平均粒径3nm以下、最大粒径10nm以下の貴金属粒子であるのが好ましい。
【0012】
前記貴金属系触媒が、白金触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、金触媒、パラジウム触媒、レニウム触媒よりなる群から選択される1種以上のものであるのが好ましく、これらの中でも、白金触媒であることが望ましい。
【0013】
また、前記導電性高分子は、ポリピロール、ポリアニリンおよびポリチオフェンよりなる群から選択される1種以上のものであるのが好ましく、前記導電性高分子が、ポリピロールであるものが好ましい。
【0014】
上記貴金属系触媒担持導電性高分子複合体を燃料電池電極として用いることは、推奨される本発明の使用態様である。
【0015】
また、本発明の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体の製造方法とは、カーボン粉末を酸化処理し、前記カーボン粉末を、貴金属系錯体陽イオンを溶存種として含有する溶液に浸漬した後、乾燥して、前記貴金属系錯体が担持されたカーボン粉末を得、このカーボン粉末を導電性高分子の原料担量体溶液中で、前記貴金属錯体を酸化剤として導電性高分子の重合反応を行い、カーボン粉末上に導電性高分子と貴金属系触媒とを同時に担持させるところに特徴を有するものである。
【0016】
酸化剤として、上記貴金属錯体に加えて、さらに遷移金属錯体を使用してもよく、前記遷移金属錯体の前駆体としては、塩化鉄、塩化ニッケル、塩化クロム、塩化コバルトおよび塩化マンガンよりなる群から選択される1種以上のものを使用することが推奨される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体では、カーボン粉末表面を被覆する導電性高分子中に、数ナノオーダーの粒子径を有する貴金属系触媒が均一に分散した状態で存在しているので、公知の白金触媒に比して、白金触媒の使用量が低減されている場合にも、触媒活性が極めて高い。また、貴金属系触媒は、導電性高分子によりカーボン粉末上に固定されているので、貴金属系触媒が凝集し難く、且つ、貴金属系触媒の経時的な拡散も生じ難いため、長期に亘って高い触媒活性を維持するものと考えられる。従って、本発明に係る貴金属系触媒担持導電性高分子複合体は、燃料電池用触媒;水の電気分解による水素製造、電気化学的手法による二酸化炭素の還元などの電気化学プロセス用触媒などとして、幅広く適用できる。
【0018】
本発明の製造方法によれば、カーボン粉末上に、ナノオーダーの粒子径を有する貴金属系触媒を容易に所望の量だけ、均一に分散担持させることができる。また、貴金属系触媒の原料である貴金属錯体を重合酸化剤として導電性高分子の重合反応を行うことで、同時に貴金属錯体が還元されるので、カーボン粉末上に、貴金属系触媒と導電性高分子とを一工程で担持させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体(以下、「本発明の複合体」と言う場合がある)とは、カーボン粉末、貴金属系触媒及び導電性高分子を含み、前記貴金属系触媒が、導電性高分子と共に、カーボン粉末上に均一に分散していることを特徴とするものである。ここで、図1を参照して、本発明の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体について説明する。図1は、本発明の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体を模式的に表した図であり、図中、1は貴金属系触媒担持導電性高分子複合体を、2はカーボン粉末を、3は貴金属系触媒、4は導電性高分子をそれぞれ示している。図1に示すように、本発明の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体1は、カーボン粉末2上に、貴金属系触媒3と共に導電性高分子4を有するものであり、当該導電性高分子4中に、数ナノオーダーの粒子径を有する貴金属系触媒3が均一に分散して存在している。
【0020】
本発明の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体に含まれるカーボン粉末としては、多孔質で、導電性を有するものが好ましい。具体的には、黒鉛粉末を脱ガス化処理して得られるアセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、活性炭、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、チャーなどのカーボン材料粉末などが挙げられる。これらの中では、アセチレンブラックがより好ましい。
【0021】
上記カーボン粉末は、走査型電子顕微鏡等で測定した粒径が0.1μm以上、100μmであるのが好ましい。より好ましくは1μm以上、10μm以下である。また、上記カーボン粉末は、BET法で測定した比表面積が50m2/g以上、2000m2/g以下であるのが好ましい。より好ましくは100m2/g以上であり、300m2/g以下である。このような表面積を有するカーボン粉末としては、電気化学工業株式会社製の「デンカブラック(登録商標)」、CABOT社製の「Vulcan XC72R」、CABOT社製の「ブラックパール」などが挙げられる。また、比表面積が上記範囲であれば、カーボン粉末の形状は限定されず、扁平状、楕円状、多角形状、板状、球状粒子の他、カーボン繊維状であってもよく、また、微細なカーボンが凝集した凝集カーボン粒子であっても差し支えない。なお、導電性の程度としては特に限定されないが、たとえば、燃料電池用の電極に使用する場合、燃料電池用のガス拡散電極としては80体積%以上の空隙率を有することが期待されるため、電極成形時に1mS/cm程度以上の導電性を示すカーボン粉末を用いることが推奨される。
【0022】
上記貴金属系触媒としては、具体的には、白金触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、イリジウム触媒、パラジウム触媒、レニウム触媒などを挙げることができる。これらの貴金属系触媒は、1種類を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、上記貴金属触媒から選ばれるいくつかの成分が合金化された貴金属触媒や、上記貴金属触媒と遷移金属との合金触媒も使用できる。
【0023】
上記貴金属触媒と遷移金属との合金触媒としては、例えば、白金‐鉄(Pt‐Fe)触媒、白金‐クロム(Pt‐Cr)触媒、白金‐マンガン(Pt‐Mn)触媒、白金‐コバルト(Pt‐Co)触媒、白金‐ニッケル(Pt‐Ni)触媒などが例示できる。
【0024】
本発明にかかる複合体における貴金属系触媒の担持量は、用途に応じて適宜決定することができる。後述する本発明の製造方法によれば、任意の量の貴金属系触媒を担持させることができるが、例えば、貴金属系触媒の担持量は、担体であるカーボン粉末の質量の10質量%以上、50質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは10質量%以上、20質量%以下である。
【0025】
また、上記貴金属系触媒の粒子径は平均粒径が3nm以下で、最大粒径が10nm以下であるのが好ましい。平均粒径は1nm以下であるのがより好ましく、最大粒径は5nm以下であるのがより好ましい。貴金属系触媒の粒子径が上記範囲であれば、反応表面積の増大により、単位触媒質量当たりの活性が高められる。本発明における、貴金属系触媒の平均粒径および最大粒径の値は、透過型電子顕微鏡による直接観察で測定した値であり、平均粒径は100×100nmの視野中に分散した少なくとも200個の貴金属系触媒粒子の平均値を、最大粒径は視野中において視認できる最大の粒径を有する粒子の粒径を意味する。尚、貴金属触媒の形状が球状以外の形状である場合、例えば楕円形である場合には長軸の値を粒径とし、また、その他の形状である場合には、円相当径を粒径として測定した。
【0026】
本発明の複合体に含まれる導電性高分子としては、当該技術分野で導電性高分子として知られているものは何れも使用可能であり、例えば、ポリアセチレン、ポリ‐p‐フェニレン、ポリアニリン、ポリアルキルアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリインドール、ポリ‐1,5‐ジアミノアントラキノン、ポリアミノジフェニル、ポリ(o‐フェニレンジアミン)、ポリ(キノリニウム)塩、ポリピリジン、ポリキノキサリン、ポリフェニルキノキサリン等が挙げられる。これらの中でも、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンが好ましく、より好ましいのはポリピロールである。
【0027】
なお、単に、貴金属系触媒の拡散を抑制すると言う観点からは、導電性高分子に限られず、絶縁性を示す高分子を用いてもよい。かかる絶縁性高分子材料としては、ポリフェノール、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。ただし、燃料電池などの電極触媒として使用する場合には、貴金属系触媒の拡散防止に加えて、電子伝導媒体としての機能を付与し得る導電性高分子を用いることが推奨される。
【0028】
後述の本発明の製造方法において説明するように、本発明の複合体に含まれる導電性高分子量は、カーボン粉末上に存在する貴金属系触媒量に依存する。したがって、本発明の複合体に含まれる導電性高分子量の上限は、カーボン粉末に担持される貴金属系触媒に応じて定まるが、必ずしも、貴金属系触媒量に応じた担持量である必要はなく、例えば、原料単量体の使用量を少なくしたり、重合反応を途中で終了させたり、電解重合を行なうことによって、導電性高分子の生成量を制御してもよい。尚、貴金属系触媒の拡散を防止する観点からは、カーボン粉末の質量に対して5~30質量%程度の導電性高分子を備えていることが推奨される。より好ましくは10~20質量%である。
【0029】
次に本発明の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体の製造方法について説明する。
【0030】
本発明の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体の製造方法とは、カーボン粉末を酸化処理し、前記カーボン粉末を、貴金属系錯体陽イオンを溶存種として含有する溶液に浸漬した後、乾燥して、前記貴金属系錯体が担持されたカーボン粉末を得、このカーボン粉末を導電性高分子の原料単量体溶液中で、前記貴金属錯体を酸化剤として導電性高分子の重合反応を行い、カーボン粉末上に導電性高分子と貴金属系触媒とを同時に担持させるところに特徴を有するものである。
【0031】
上述のように、本発明法によれば、容易に任意量の貴金属系触媒をカーボン粉末に担持させることができる上、貴金属系錯体の還元と、導電性高分子の生成とを同時に行えるため、単純な工程でカーボン粉末上に貴金属系触媒と導電性高分子とを担持させることができる。また、酸化剤である貴金属系錯体の近傍で導電性高分子の重合反応が進行するため、貴金属系触媒は、導電性高分子中に均一に分散した状態で、カーボン粉末上に固定される。以下に、本発明の製造方法により、カーボン粉末上に貴金属系触媒および導電性高分子が担持される様子を示す模式図である図2を参照しながら、本発明の製造方法について詳細に説明する。
【0032】
本発明の製造方法においては、まず、カーボン粉末に酸化処理を施す。この酸化処理によって、カーボン粉末表面のC-C結合からなるグラファイト構造の末端に、カルボキシル基(-COOH)、ヒドロキシル基(-OH)、カルボニル基(>C=O)等の官能基が形成される(図2(a))。本発明法は、上記官能基の中でも、容易に解離し得る水素イオン(H)を有する酸性基であるカルボキシル基を利用するものであり、この水素イオンを、後述する貴金属系錯体に含まれる錯陽イオンとイオン交換することにより、カーボン粉末上に貴金属系錯体を担持させる。
【0033】
上記酸化処理は、カーボン粉末表面に酸性基を形成し得る方法であれば特に限定されず、様々な方法が採用できる。例えば、カーボン粒子を過マンガン酸カリウム水溶液や硝酸水溶液などの強電解質水溶液中に浸漬させる液相法、カーボン粒子を酸素ガス、オゾンガス等の酸化性ガス気流と接触させる気相法等が挙げられる。これらの方法の中でも、オゾンを使用する方法は、室温下で容易に行えるため好ましい。
【0034】
酸化処理の条件は、カーボン粉末に担持させる貴金属触媒量や使用する酸化剤に応じて適宜選択すればよい。例えば、代表的な酸化剤を使用する場合の条件を例示すれば、下記表1のようになる。なお、液相法を採用する場合には、反応溶液中におけるカーボン粉末濃度は25g/l以下とするのが好ましい。
【0035】
【表1】
JP0004797166B2_000002t.gif

【0036】
上記酸化処理後のカーボン粉末表面に存在する酸性基の量は、カーボン粉末1g当たり0.05meq/g以上、1.9meq/g以下であるのが好ましい。より好ましくは0.5meq/g以上、1.2meq/g以下である。カーボン粉末上に存在する酸性基の量が少なすぎる場合には、カーボン粉末表面に存在するカルボキシル基量も少なくなるため、貴金属系触媒の担持量が減少し、十分な触媒活性が得られ難くなる。一方、酸性基が多くなると、触媒成分の担持量は増加するが、これに応じて導電性高分子量も増加する場合があるため、例えば、燃料電池の電極触媒として用いた場合に、ガス拡散能が低下し、担持量に見合う触媒活性が得られ難い場合がある。なお、カーボン粉末表面に存在する酸性基の量は、例えば、所定量のカーボン粉末を懸濁させた塩化ナトリウム水溶液を既定濃度の水酸化ナトリウムあるいは炭酸水素ナトリウム水溶液で滴定し、このときのpHの変化をpHメーターで測定した値から算出することにより求められる。
【0037】
次いで、酸化処理後のカーボン粒子を、貴金属系錯体陽イオンを溶存種として含有する溶液に浸漬する。このとき、カーボン粒子表面に形成された親水性基の有する陽イオン(カルボキシル基の水素イオン)が、貴金属系錯体陽イオンと交換される。したがって、このカーボン粉末を乾燥させれば、貴金属系錯体を担持するカーボン粉末が得られる(図2(b))。
【0038】
上記貴金属系錯体としては、上述の貴金属系触媒を生成し得るもので、且つ、溶液中で、貴金属元素が陽イオンあるいは錯陽イオンの状態で存在するものが好ましい。本発明法で使用可能な貴金属系錯体の前駆体としては、溶液中で貴金属元素を中心金属とする錯陽イオンを生成し、かつ、上述の貴金属系触媒を生成し得る貴金属化合物であれば特に限定されない。かかる貴金属化合物としては、たとえば、テトラアンミン白金(II)水酸化物([Pt(NH34]OH2、テトラアンミン白金(II)塩化物([Pt(NH34]Cl2、ヘキサアンミン白金塩化物([Pt(NH36Cl4])、ジニトロジアンミン白金([Pt(NO22(NH32])などの白金錯体、塩化パラジウム(PdCl2)、テトラアンミンパラジウム塩化物([Pd(NH34]Cl2)などのパラジウム錯体、塩化ロジウム(RhCl3)などのロジウム化合物、塩化ルテニウム(RuCl3)などのルテニウム化合物、塩化イリジウム(IrCl4])などのイリジウム化合物等の貴金属化合物を挙げることができる。
【0039】
カーボン粉末上に、貴金属触媒と遷移金属との合金触媒を担持させる場合には、上記貴金属系錯体と共に、遷移金属錯体を用いればよい。かかる遷移金属錯体は、カーボン粉末上における貴金属系触媒の担持量のコントロールにも用いられる。すなわち、貴金属系触媒の担持量を低減したい場合には、遷移金属錯体の使用量を増量すればよい。かかる遷移金属錯体の前駆体としては、後述する導電性高分子の重合反応において酸化剤として機能し得るものを使用するのが好ましい。具体的には、塩化鉄(FeCl3)、塩化ニッケル(NiCl2)、塩化クロム(CrCl3)、塩化コバルト(CoCl2)、塩化マンガン(MnCl2)などの遷移金属化合物が挙げられる。上述の中でも塩化鉄(FeCl)を用いるのが好ましい。
【0040】
上記貴金属系錯体のカーボン粉末に対する使用量(例えば、白金の場合はPt/C、質量比)は、0.03以上であるのが好ましく、より好ましくは0.1以上であり、0.40以下であるのが好ましく、より好ましくは0.2以下である。なお、遷移金属錯体を使用する場合には、貴金属系錯体と遷移金属錯体の質量の総和を、上記範囲とするのが好ましい。
【0041】
貴金属系錯体(および遷移金属錯体)を溶解させる溶剤は、これらを溶解させ得るものであれば特に限定されず、水、アルコール、アセトン等が使用可能である。また、上記カーボン粉末を浸漬させる貴金属錯体系触媒含有溶液の濃度は、水素イオンと貴金属系錯体陽イオンとの交換反応を速やかに進行させる観点から、10g/l以上、50g/l以下とするのが好ましい。
【0042】
次いで、貴金属系錯体を担持したカーボン粉末を分取、乾燥後、導電性高分子の原料単量体溶液中に浸漬する。そして、この溶液中で、カーボン粉末上に存在する貴金属系錯体(および遷移金属錯体)を酸化剤として、導電性高分子の酸化重合反応を行い、カーボン粉末上に導電性高分子と貴金属系触媒とを同時に生成させる(図2(c))。図2(c)では、菱形で示すPt0周囲の黒塗りの糸状物が導電性高分子を示している。尚、この図は、模式図であるので、大きさ、比率等は実物とは異なるものである。
【0043】
上記導電性高分子の原料単量体としては、アセチレン、p‐フェニレン、アニリン、アルキルアニリン、ピロール、チオフェン、インドール、1,5‐ジアミノアントラキノン、アミノジフェニル、o‐フェニレンジアミン、キノリニウム、ピリジン、キノキサリン、フェニルキノキサリン等を挙げられる。これらの中でも、ピロール、アニリン、チオフェンが好ましく、より好ましいのはピロールである。
【0044】
上記導電性高分子の原料単量体を溶解させる溶媒としては、上記原料単量体が溶解し、且つ、反応生成物である重合体(導電性高分子)が溶解しないものであれば特に限定はないが、水を用いるのが好ましい。上記原料単量体溶液は白金系金属イオンの還元反応を完結させるため、その濃度を0.001~0.5g/lとするのが好ましい。より好ましくは0.01~0.1g/lである。
【0045】
本発明の製造方法では、あらかじめ、カーボン粉末に担持させた貴金属系錯体(および遷移金属錯体)が酸化剤として働くため、カーボン粉末表面には、カーボン粉末上に存在する貴金属系錯体(および遷移金属錯体)量に応じた導電性高分子が生成することになる。また、導電性高分子の原料単量体の重合反応は、カーボン粉末上の貴金属錯体近傍で進行し、このとき同時に貴金属系錯体の還元反応も起こるため、カーボン粉末表面には、還元により生成した貴金属系触媒を含み、且つ、当該カーボン粉末を被覆する導電性高分子層が形成される。
【0046】
なお、貴金属系錯体と導電性高分子の原料単量体との混合比は、反応の化学量論的な観点からは、[導電性高分子原料単量体]/[貴金属系触媒](モル比)で、1.5以上とするのが好ましく、より好ましくは3以上であり、20以下とするのが好ましく、より好ましくは8以下である。上述のように、本発明の製造方法では、カーボン粉末上に存在する貴金属系触媒量に応じて導電性高分子が生成する。したがって、化学量論的な混合比を超える量の導電性高分子を使用しても、過剰に用いられた導電性高分子の単量体は、反応に関与せず反応終了後も、単量体のままで残留することとなる。よって、本発明法には、予め導電性高分子を調製してカーボン粉末などと混合する従来法に比べて、原料の浪費が少ないという利点もある。
【0047】
なお、白金触媒の被覆を目的として、より多くの導電性高分子をカーボン粉末に付着担持させたい場合には、電気化学的な電解重合法を用いることは差し支えない。この場合、[導電性高分子原料単量体]/[貴金属系触媒](モル比)は任意に設定できる。ただし、本発明に係る複合体を電極触媒に用いる場合には、過剰な導電性高分子の生成によって白金への反応物の付着が妨げられることにより電極の活性が低下する虞があるため、[導電性高分子原料単量体]/[貴金属系触媒]の混合比は、上述の範囲とするのが望ましい。
【0048】
重合反応の時の条件は特に限定されず、反応の進行状態を確認しながら適宜調整すればよいが、通常、大気圧下、20℃~30℃で行うことが推奨される。反応時間も特に限定されず、反応の進行状況を確認しながら、適宜決定すればよいが、例えば1~2時間とするのが好ましい。なお、導電性高分子を速やかに生成させる観点からは、上記反応は攪拌下で行うのが好ましい。
【0049】
反応終了後、反応溶液から分離したカーボン粉末を、洗浄し、乾燥すれば、貴金属系触媒が導電性高分子と共にカーボン粉末上に均一に分散した本発明の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体が得られる。
【0050】
ここで、本発明に係る貴金属系触媒担持導電性高分子複合体について、後述する実施例の調製例1で得られた複合体を示す図3~5を参照しながら具体的に説明する(C:Pt:PPy=75.0:14.8:10.2(質量比))。図3(a)は、貴金属系触媒として白金、導電性高分子としてポリピロールを担持する本発明に係る貴金属系触媒担持導電性高分子複合体の粒子の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。図3(b)~(d)は、図3(a)の複合体をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)で分析した結果を示す図である。カーボン粉末に由来する炭素の存在を示す図3(b)、ポリピロールに由来する窒素の存在を示す図3(c)、白金の存在を示す図3(d)のいずれにおいても、図3(a)と同様の輪郭が確認されており、カーボン粉末の表面には、白金が均一に分散担持され、且つ、カーボン粉末を被覆するようにポリピロール(導電性高分子)が生成していることが確認できる。
【0051】
また、調製例1の複合体の他の粒子の走査電子顕微鏡(SEM)写真(図4)と、図4で示した線分X-X’における元素分布プロファイル(線分析)の結果(図5)においても、Pt(白金)とポリピロールに由来するNのピークが、カーボン粉末に由来するCのピークと同じ位置に確認できる。このことからも、本発明に係る複合体において、貴金属系触媒が、カーボン粉末を被覆する導電性高分子中に均一に分散担持されていることが明らかである。
【0052】
上述の製法により得られた本発明の複合体は、燃料電池用触媒;水の電気分解による水素製造、電気化学的手法による二酸化炭素の還元などの電気化学プロセス用触媒などに好適に用いられる。以下に、本発明の複合体を用いて電極触媒を製造する方法について具体的に説明する。
【0053】
結着剤として、デュポン社製のフッ素樹脂「テフロン(登録商標)」(ポリテトラフルオロエチレン)の粒子分散液0.5~2質量%と、界面活性剤(たとえば「トリトンX-100」など)1質量%の混合溶液を用い、この結着剤と、本発明の複合体とを混合して、シート状に成形する。次いで、得られたシート状成形物を400℃に加熱して、このシート状成形物に含まれるフッ素樹脂を溶解させ、カーボン粒子を結着させることにより、触媒層を作成する。次いで、このシート状の触媒層に、パーフルオロスルホン酸(デュポン社製「Nafion(登録商標)」)などのイオン伝導性高分子の溶液を若干量塗布して、イオン交換膜(電解質膜)と加熱圧縮させることより圧着させれば、本発明の複合体を含む電極と電解質膜との接合体が得られる。なお、当該接合体には、上記ナフィオン溶液を結着剤として使用して、ガス拡散層としてカーボン繊維焼結体を接着してもよい。
【0054】
上記本発明の複合体を用いれば、電極厚み50μmの場合には、電極面積当たりの白金担持量が0.4mg/cm2の電極触媒を作製することができる。また、電極厚みが200μmの場合には、白金担持量が1.2mg/cm2の電極触媒の作製も可能であり、本発明に係る複合体を用いれば電極面積当たりの触媒量を任意の量に制御できる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0056】
(透過型電子顕微鏡:TEM)
透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製JEM・2010、加速電圧:200kV)を用いて、試料の形態観察を行なった。尚、測定試料は、下記調製例で得られた生成物を蒸留水中に超音波によって分散させ、カーボンを蒸着した銅メッシュ上に滴下し、自然乾燥させたものを用いた。
【0057】
(走査型電子顕微鏡:SEM)
エネルギー分散型X線元素分析装置(EDX)を備えた走査型電子顕微鏡(JEOL JSM-6335F)を用いて、試料の成分分析を行った。尚、測定試料は、下記調製例で得られた複合体(白金/ポリピロール担持カーボン粉末)を超音波洗浄機にて分散し、真ちゅう製の試料台に吸着分散させたものをそのまま観察した。EDXでは、白金、炭素およびピロールの存在を示す窒素についてそれぞれ観察した。
(試料の調製)
調製例1
市販のカーボン粉末(商標名「Vulcan XC-72R」、Cabot社製、比表面積257m2/g)1gを、0.4mol/l(2規定)の過マンガン酸カリウム水溶液と68%の硝酸水溶液の混合溶液(KMnO4水溶液:HNO3水溶液=2:1、体積比)200ml中に加え、攪拌下、70℃で4時間反応させた。反応終了後、反応液をろ過し、カーボン粉末を約70℃の蒸留水で十分洗浄した後、さらに100℃の温水中で30分間攪拌した。次いで、ろ取したカーボン粉末を4mol/lの塩酸中で20時間攪拌し、100℃の温水中で30分間攪拌した後、カーボン粉末をろ過し、150℃で真空乾燥した。
【0058】
酸化処理後のカーボン粉末を、白金含有量10g/lのヘキサアンミン白金(IV)水酸化物([Pt(NH34])OH2)水溶液中に浸漬し、室温で1時間攪拌しながらイオン交換させた。次いで、反応液をろ過し、イオン交換後のカーボン粉末を蒸留水で洗浄し、150℃で真空乾燥させて、白金イオンを担持したカーボン粉末(Ptイオン交換済み試料)を得た(収量:0.4mg、カーボン粉末1g当たりのカルボキシル基存在量0.8meq/g)。
【0059】
上記白金イオン担持カーボン粉末53mg(白金量5mg)を、蒸留水50mlにピロール2.96μl(4.26mmol、アルドリッチ社製)を溶解させた水溶液に加え、室温にて、2時間攪拌した。なお、このときの白金(Pt)/ピロール(Py)の混合比は0.15であった。反応終了後、溶液中に分散している生成物を遠心分離(14000rpm、1時間)によって分離し、蒸留水で洗浄した。さらに、分離した生成物を再び超音波洗浄機によって蒸留水中に分散させ、遠心分離(14000rpm、1時間)を行なった。この精製操作を上澄み液が無色透明になるまで繰り返した(2回)。得られた生成物を、100℃で12時間真空乾燥させて、カーボン粉末上に白金およびポリピロールを担持する複合体を得た。尚、このとき得られた複合体を窒素・酸素質量分析装置(堀場製作所社製、EMGA‐650)および金属中炭素・硫黄分析装置(堀場製作所製EMIA‐520)で分析したところ、カーボン(C):白金(Pt):ポリピロール(PPy)(質量比)を、75.0:14.8:10.2の割合で含むものであった。
【0060】
調製例2
Pt/Py比を0.6としたこと以外は、調製例1と同様の手順に従って、カーボン粉末上に白金およびピロールを担持する複合体を得た。このとき得られた複合体におけるカーボン(C):白金(Pt):ポリピロール(PPy)の割合(質量比)は、79.4:12.2:8.4であった。
【0061】
図6および図7に、調製例2の複合体の酸化重合反応時における経時変化を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す。図6(a)は、ピロール水溶液へのカーボン粉末の添加から1時間経過後の様子を示すもので、図6(b)は、(a)の拡大図であり、図7は、2時間経過後における複合体の様子を示すものである。反応開始後1時間の時点で、白金粒子の析出が確認でき(図6(a)、(b))、反応開始後2時間では、さらに白金の析出量が増加していることが確認できる(図7)。また、図6および7からは、カーボン粉末上において、白金粒子が凝集することなく分散して存在していることも確認できる。
【0062】
(電極触媒の活性評価)
電極の作製
上記調製例により得られた複合体を用いて電極を作製して、電極触媒活性の評価を行った。
【0063】
上記調製例1で得られた複合体30mgを、結着剤とイオン伝導性層とを兼ねたパーフルオロスルホン酸(Nafion)溶液(5wt%)1mlに添加し、ペースト状になるよう混合した。このぺ-ストを、1cm2の電極面積を有する研磨したグラッシーカーボン電極上に展開し、白金ポリピロール担持カーボン複合体を均一に塗布し、厚み50μmの白金ポリピロール担持カーボン電極を作製した。尚、電極1cm2あたりのペーストの塗布量は、複合体重量6mgに相当するものであり、この電極の単位面積当たりの白金担持量は0.4mg/cm2であった。
【0064】
触媒特性の評価
上記白金ポリピロール担持カーボン電極を作用電極として用い、対極に白金電極を用いて触媒特性の評価を行った。以下の測定は北斗電工製電気化学測定システムHZ-3000により行った。上記作用電極および白金電極を、1規定(0.5mol/l)硫酸溶液中に浸漬し、電位走査範囲を-0.1~1.0V(vs Ag/AgCl電極)、走査速度50mV/secとして、サイクリックボルタモグラムにより、50cc/minの窒素気流中における白金への酸素吸脱着ピークの変化を測定した。
【0065】
上記酸素吸脱着ピークの変化の測定後、電極を、50ml/minの酸素気流中にて、50時間1.0V(vs Ag/AgCl電極)に維持した後、再度、1規定(0.5mol/l)硫酸溶液中にて、電位走査範囲を-0.1~1.0V(vs Ag/AgCl電極)としたサイクリックボルタモグラムにより、50cc/minの窒素気流中における白金上における酸素吸脱着ピークの変化を測定した。結果を図8に示す。
【0066】
図8では、初期(図8の実線A)、および、電極を所定条件下に維持した後(経時、図8の破線B)のいずれにも、白金への酸素の吸着および脱着に相当するピークが観察されており、また、その強度もほとんど変化していないことが確認できる(初期の吸着ピーク:0.6V、経時の吸着ピーク:0.4V、初期脱着ピーク:0.2V、経時の脱着ピーク:0.2V)。すなわち、酸素気流中、所定条件下に維持した後も、調製例1の電極は初期の活性を維持していることが明らかである。
【0067】
上記結果より、本発明の複合体は、貴金属系触媒の経時的な拡散が生じ難いものであり、本発明の複合体を用いた触媒や電極触媒は、初期の触媒活性を長期に亘って維持し得るものであるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、本発明に係る貴金属系触媒担持導電性高分子複合体の模式図である。
【図2】図2(a)~(c)は、カーボン粉末上に貴金属系触媒および導電性高分子が形成される様子を示す模式図である。
【図3】図3(a)は、貴金属系触媒として白金、導電性高分子としてポリピロールを担持する本発明に係る貴金属系触媒担持導電性高分子複合体の粒子の走査電子顕微鏡(SEM)写真であり、図3(b)~(d)は、図3(a)の複合体をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)で分析した結果(元素分布プロファイル)を示す図である。
【図4】図4は、本発明に係る貴金属系触媒担持導電性高分子複合体の粒子の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5】図5は、図4で示した線分X-X’におけるエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による元素分布プロファイル(線分析)の結果を示す図である。
【図6】図6は、調製例2の複合体の酸化重合反応時における経時変化を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、調製例2の複合体の酸化重合反応時における経時変化を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図8】図8は、調製例1の複合体を含む電極のサイクリックボルタモグラムの結果である。
【符号の説明】
【0069】
1 貴金属系触媒担持導電性高分子複合体粒子
2 カーボン粒子
3 白金粒子
4 導電性高分子
図面
【図5】
0
【図8】
1
【図1】
2
【図2】
3
【図3】
4
【図4】
5
【図6】
6
【図7】
7