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明細書 :インフルエンザ脳症の検査法、及び、ヒト髄液中に発現するタンパク質からなるマーカ、診断薬、診断キット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4399593号 (P4399593)
公開番号 特開2005-292108 (P2005-292108A)
登録日 平成21年11月6日(2009.11.6)
発行日 平成22年1月20日(2010.1.20)
公開日 平成17年10月20日(2005.10.20)
発明の名称または考案の名称 インフルエンザ脳症の検査法、及び、ヒト髄液中に発現するタンパク質からなるマーカ、診断薬、診断キット
国際特許分類 G01N  33/53        (2006.01)
G01N  33/535       (2006.01)
G01N  33/577       (2006.01)
FI G01N 33/53 D
G01N 33/535
G01N 33/577 B
請求項の数または発明の数 16
全頁数 11
出願番号 特願2004-134869 (P2004-134869)
出願日 平成16年4月1日(2004.4.1)
審査請求日 平成19年3月12日(2007.3.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】藤井 克則
審査官 【審査官】赤坂 祐樹
参考文献・文献 特開平10-90262(JP,A)
特開2002-71695(JP,A)
清遠勉,課題対応技術革新促進事業成果報告書 平成14年度 課題対応新技術研究調査事業,2003年
調査した分野 G01N 33/53-33/577
特許請求の範囲 【請求項1】
ヒト髄液中に含まれる14-3-3タンパク質を指標としたインフルエンザ脳症の検査法。
【請求項2】
14-3-3タンパク質のアイソフォームにおいて、β
、θ 、γ
、ζ 、ε
の順に強く検出された場合に、インフルエンザ脳症であると判断する請求項1記載の検査方法。
【請求項3】
検査対象が、小児インフルエンザ脳症であり、ヒト髄液が小児髄液である請求項1または2記載の検査方法。
【請求項4】
インフルエンザ脳症の診断に用いるタンパク質マーカであって、ヒト髄液中に発現する14-3-3タンパク質からなるマーカ。
【請求項5】
14-3-3タンパク質が、β 、θ 、γ
、ζ およびε
のアイソフォームである請求項4記載のマーカ。
【請求項6】
診断対象が、小児インフルエンザ脳症であり、ヒト髄液が小児髄液である請求項4または5記載のマーカ。
【請求項7】
インフルエンザ脳症の診断薬であって、ヒト髄液中に発現する14-3-3タンパク質に特異的に結合する抗体を含む診断薬。
【請求項8】
インフルエンザ脳症の診断薬であって、14-3-3タンパク質におけるβ、θ、γ、ζおよびεのアイソフォームのそれぞれに特異的に結合する抗体を含む診断薬。
【請求項9】
14-3-3タンパク質が、小児髄液中に発現するタンパク質である請求項7または8記載の診断薬。
【請求項10】
抗体がモノクローナル抗体である請求項7から9のいずれかに記載の診断薬。
【請求項11】
インフルエンザ脳症の診断キットであって、ヒト髄液中に発現する14-3-3タンパク質に特異的に結合する一次抗体と、この一次抗体に特異的に結合し、かつ識別標識を有する二次抗体とを含み、前記識別標識の検出により前記14-3-3タンパク質を検出する診断キット。
【請求項12】
一次抗体が、14-3-3タンパク質におけるβ
、θ 、γ
、ζ およびεのアイソフォームのそれぞれに特異的に結合する抗体を含む請求項11記載の診断キット。
【請求項13】
14-3-3タンパク質が、小児髄液中に発現するタンパク質である請求項11または12記載の診断キット。
【請求項14】
一次抗体が、ウサギ由来の抗体であり、前記二次抗体がヤギ由来の抗体である請求項11から13のいずれかに記載の診断キット。
【請求項15】
一次抗体および二次抗体が、それぞれモノクローナル抗体である請求項11から14
のいずれかに記載の診断キット。
【請求項16】
識別標識が、酵素標識若しくは蛍光標識である請求項11から15のいずれかに記載の診断キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、インフルエンザ脳症の検査法、及び、ヒト髄液中に発現する14-3-3タンパク質からなるマーカ、診断薬、診断キット関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト髄液中にはアルブミンをはじめとして様々なタンパクが含有されている。髄液は脳表面および脳内部を循環することから、その成分はヒトの中枢神経疾患の病態を鋭敏に反映することが知られている。すなわち、脳出血では髄液中に赤血球が、髄膜炎や脳炎では白血球が、また多発性硬化症では免疫グロブリンが増加する。
【0003】
14-3-3タンパク質は種を超えて高度に保存された2量体タンパク質であり、細胞の増殖分化、恒常性の維持、抗アポトーシス作用などを担っている。人体組織細胞中に広く存在するが、中でも脳神経細胞には細胞のタンパク重量の1%を占める程、豊富に含まれていることが知られている。
【0004】
14-3-3タンパク質は正常髄液では検出されないが、異常プリオンタンパクによって発症するCreuzfeldt-Jakob(クロイツフェルトヤコブ)病(以下、CJD)の髄液において高率に検出されることから診断的価値が高いとされ、WHO(世界保健機関)が定めるCJDの診断基準にも14-3-3タンパク質の検出が含まれるようになった。
【0005】
髄液中14-3-3タンパク質は、CJD以外にも脳腫瘍、脳出血、脳梗塞、血管性痴呆、髄膜炎、脊髄炎でも検出されることが報告されており、脳組織崩壊を反映する可能性が示唆されている。これらの報告はすべて成人領域であって、小児領域(おもに18歳以下)での集約された報告は現在までない。
【0006】
14-3-3タンパク質はそのアミノ酸配列の差異から7つのアイソフォーム、β、γ、ζ、θ、ε、σ、ηが知られている。それぞれのアイソフォームはアポトーシスシグナル、増殖分化、細胞内輸送、細胞周期調節などの異なる機能を持つとされるが詳細は不明である。
【0007】
14-3-3タンパク質の7つのアイソフォームの脳内における分布は、マウスの研究からβ、ζ、γ、ηは神経細胞体と神経核に、εは中枢神経灰白質に、ηは小脳核、視床下部核、神経細胞体、神経核に含まれることが報告されている。
【0008】
髄液中に検出される14-3-3タンパク質のアイソフォームは疾患によって特異性があることが知られている。例えばCJDの髄液ではアイソフォームのうちβ、γ、η、εが検出され、またアルツハイマー病の髄液では常にηが検出されることが報告されているが、そのメカニズムについては不明であり、これらアイソフォームのパターン分析が臨床診断に結びつく可能性も示唆されている。
【0009】
インフルエンザ脳症は、インフルエンザウイルス感染に伴っておきる急性脳症であって、インフルエンザ脳炎を含み、小児に頻発し予後不良の疾患である。脳組織および髄液中にウイルスゲノムがほとんど認められず、また治療法も確立されていないことから、小児難病の一つとされてきた。
【0010】
小児神経疾患には、難治性神経疾患が数多くあるが、中でもインフルエンザ脳症はインフルエンザ感染に伴い小児にけいれんや意識障害が生じ、急性増悪して死の転帰を迎える予後不良疾患である。インフルエンザ感染時には高熱を来たすため、けいれん意識障害の初期には、良性である熱性けいれんか、あるいは予後不良のインフルエンザ脳症か臨床的に区別することが困難である。この初期の段階で明らかにインフルエンザ脳症であることを診断できれば、きわめて早期から集中治療を行い臨床的予後が改善できる可能性が考えられる。しかしながら現在まで初期にインフルエンザ脳症であることを診断できる方法は存在せず、早期診断のためのマーカーの開発が期待されている。
【0011】
また急性期の脳障害の指標となる髄液タンパクは、NSE(Neuron Specific Enolase:神経特異性エノラーゼ)、MBP(Myelin Basic Protein)が知られているが、必ずしも病態を鋭敏に反映するとは言えず、適切な病態把握および予後判定のための信頼性の高い髄液タンパクの確立が急務とされている。

【特許文献1】 PCT国際公開番号:WO01/035093
【非特許文献1】 Berg D, Holzman C, Riess O. 14-3-3 proteinsin the nervous system. Nat Rev Neurosci. 2003 Sep;4(9):752-762.
【非特許文献2】 Masters SC, Subramanian RR, Truong A, YangH,Fujii K, Zhang H, Fu H. Survival-promoting functions of 14-3-3 proteins. Biochem Soc Trans. 2002 Aug;30(4)360-365.
【非特許文献3】 Baxter HC, Liu WG, Forster JL,Aitken A, Fraser JR. Immunolocalisation of 14-3-3 isoforms in normal and scrapie-infected murine brain. Neuroscience.2002;109(1):5-14.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、こうした事情に鑑みて、とくに小児神経疾患の早期診断のための検査法、マーカ、診断薬、診断キットを開発することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、発明者のヒト中枢神経疾患における髄液解析に関しての研究の中で、14-3-3タンパク質の髄液中での検出が疾患診断のみならず病態解析に有用であることを解明した結果に基づくものであり、(1)ヒト髄液中に含まれる14-3-3タンパク質を指標としたインフルエンザ脳症の検査法、(2)14-3-3タンパク質のアイソフォームにおいて、β、θ、γ、ζ、εの順に強く検出された場合に、インフルエンザ脳症であると判断する前記記載の検査方法、(3)検査対象が、小児インフルエンザ脳症であり、ヒト髄液が小児髄液である前記記載検査方法、(4)インフルエンザ脳症の診断に用いるタンパク質マーカであって、ヒト髄液中に発現する14-3-3タンパク質からなるマーカ、(5)14-3-3-タンパク質が、β、θ、γ、ζおよびεのアイソフォームである前記記載のマーカ、(6)診断対象が、小児インフルエンザ脳症であり、ヒト髄液が小児髄液である前記記載のマーカ、(7)インフルエンザ脳症の診断薬であって、ヒト髄液中に発現する14-3-3タンパク質に特異的に結合する抗体を含む診断薬、(8)前記抗体が、14-3-3タンパク質におけるβ、θ、γ、ζおよびεのアイソフォームのそれぞれに特異的に結合する抗体を含む診断薬、(9)14-3-3タンパク質が、小児髄液中に発現するタンパク質である前記記載の診断薬、(10)前記抗体がモノクローナル抗体である前記記載の診断薬、(11)インフルエンザ脳症の診断キットであって、ヒト髄液中に発現する14-3-3タンパク質に特異的に結合する一次抗体と、この一次抗体に特異的に結合し、かつ識別標識を有する二次抗体とを含み、前記識別標識の検出により前記14-3-3タンパク質を検出する診断キット、(12)前記一次抗体が、14-3-3タンパク質におけるβ、θ、γ、ζおよびεのアイソフォームのそれぞれに特異的に結合する抗体を含む前記記載の診断キット、(13)14-3-3タンパク質が、小児髄液中に発現するタンパク質である前記記載の診断キット、(14)前記一次抗体が、ウサギ由来の抗体であり、前記二次抗体がヤギ由来の抗体である前記記載の診断キット、(15)前記一次抗体および二次抗体が、それぞれモノクローナル抗体である前記記載の診断キット、(16)前記識別標識が、酵素標識若しくは蛍光標識である前記記載の診断キット、に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、インフルエンザ感染症初期に伴うけいれん、意識障害の症状の中から、インフルエンザ脳症を高率に診断することができ、集中治療に結びつけることが可能である。インフルエンザ脳症は死亡率も高く、本発明が臨床現場における同疾患を早期に鑑別することにより、救命率の向上および神経学的予後の改善に結びつくことが予想される。また14-3-3アイソフォームを分析することにより、疾患の診断ならびに脳障害部位の推定が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態を具体的に説明する。
【0016】
本発明において、検査対象またはマーカとなるのは、ヒト髄液中に含まれる14-3-3タンパク質である。このタンパク質は、7つのアイソフォームを持つことが知られているが、インフルエンザ脳症においてヒト髄液中に発現するは、β、θ、γ、ζ、εであり、かつこの順に強く検出される。したがって、このアイソフォームの発現パターンの検査により、より正確にインフルエンザ脳症であるか否かを判断できる。さらに、アイソフォームの発現パターン分析により、脳のどの部分に障害が生じているかを予測することができ、この結果、脳症に対する適切な処置をとることができる。
【0017】
14-3-3タンパク質の7つのアイソフォームのアミノ酸配列はすでに同定されておりその相違を示す(図5)。その中でもセリン、スレオニン残基はリン酸化を受ける部位であり、アイソフォーム間で相同性が高く、またリン酸化を受けることにより14-3-3タンパク質自身の機能変化が予想されるため、同部位を特に太線で強調した。
【0018】
前記14-3-3タンパク質の検出方法は、特に制限されないが、抗体を用いた検出方法が好ましい。前記抗体は、特に制限されないが、例えば、ウサギ、ヤギ、マウス、ラット、ブタ、ヒツジ、イヌなどの各種の動物由来のものが使用できる。また、抗体の作製は、14-3-3タンパク質を用い、一般の方法で、前記動物を免疫することにより実施できる。前記抗体としては、モノクローナル抗体が好ましい。
【0019】
前記抗体を用いた検出方法は、特に制限されないが、検出精度と操作方法の簡便性からELISA法が好ましい。ELISA法は、検出対象タンパク質(本発明では、14-3-3タンパク質、若しくはそのβ、θ、γ、ζ、εのアイソフォーム)に特異的に結合する一次抗体と、この一次抗体に特異的に結合し、かつ酵素標識(ラベル)を有する二次抗体を使用する方法である。前記識別標識としては、後述のように酵素標識の他に、蛍光標識やABC法を使用してもよい。ELISA法は、特に制限されず、後述の実施例のように、髄液をSDS-PAGEで電気泳動したあと、ウエスタンブロッティングによりタンパク質をニトロセルロース膜に転写し、これに一次抗体および二次抗体を添加し、前記二次抗体の識別標識を検出することにより実施することができる。この他に、ポリスチレンビーズなどの固相に一次抗体を結合させ、これに髄液を供給して14-3-3タンパク質を結合させ、この状態で、B/F分離を行い、そして、14-3-3タンパク質に特異的に結合し、かつ標識を有する二次抗体を添加して前記タンパク質に結合させ、前記標識を検出するサンドイッチ法であってもよい。
【0020】
酵素標識の具体例として、Hoarse Raddish Peroxidase(HRP)を用いる方法がある。これにより蛍光発色させることが可能となり、14-3-3タンパク質を可視化同定することが可能である。
【0021】
なお、本発明における「β、θ、γ、ζおよびεのアイソフォームのそれぞれに特異的に結合する抗体」とは、それぞれのアイソフォームの特異的アミノ酸配列を認識して結合する免疫グロブリン抗体を、
同じく本発明における「モノクロナール抗体」とは、単一免疫B細胞より分泌される単一の免疫グロブリンからなる抗体群を、
同じく本発明における「ウサギ由来の抗体」とは、ウサギに14-3-3タンパク質(アイソフォーム)を免疫接種することにより血清中から回収される免疫グロブリン抗体を、
同じく本発明における「ヤギ由来の抗体」とは、ヤギに14-3-3タンパク質(アイソフォーム)を免疫接種することにより血清中から回収される免疫グロブリン抗体を、
同じく本発明における「酵素標識」とは、二次抗体の標識にHRP(Horseradish peroxidase,西洋わさび過酸化酵素)やAP(alkaline phoaphtase、アルカリフォスファターゼ)などの酵素を用いて、酵素反応の結果生じた沈殿物の色素を検出する方法を、
同じく本発明における「蛍光標識」とは、二次抗体の標識にFITC(fluorescein isothiocyanate:緑色蛍光を発する)やローダミン(rhodamine:赤色蛍光を発する)などを用いて、それぞれに対応する波長の励起光を当てて蛍光を発検出する方法を、
同じく本発明における「ABC法」とは、二次抗体の標識にビオチン(biotin)を用いるが、このビオチンにアビジンと酵素の複合体を結合させることで、抗体1分子あたりに結合する酵素の量が増し、高感度に検出できる方法を、
いう。
【実施例】
【0022】
ヒト髄液中の14-3-3タンパクを検出するために、まず採取された髄液を遠心分離し(3000g、10分間)、髄液中に含まれる細胞成分を除去した。上清を採取しMicrocon YM-10(Millipore社製、USA)を用いて遠心分離(13000g)を行うことにより髄液を10倍に濃縮させた。濃縮した髄液はSDSサンプルバッファーを加えて95度で5分間熱いた。その後髄液タンパク30μg量を12.5%SDS-PAGEで電気泳動し、ウエスタンブロッティング(15V、120分)を行うことによりニトロセルロース膜に髄液タンパクを転写した。転写後5%ミルクTBS-T液に浸して、常温で15分間振盪しニトロセルロース膜上のタンパクを固定した。1次抗体としてウサギ抗14-3-3β抗体(sc-627,Santa Cruz Biotechnology社,USA)を1:100濃度で4℃で一晩反応させ、さらに2次抗体としてHRP標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(sc-2004、Santa Cruz Biotechnology社,USA)を1:2500濃度で常温にて1時間反応させた。14-3-3タンパク質はECLキット(Amersham Bioscience社,USA)を用いてバンドとして可視化した。また、14-3-3タンパク質が検出された場合には、そのアイソフォームを検出するためそれぞれの14-3-3タンパク質のアイソフォーム特異抗体、anti-β antibodies(sc-628,Santa Cruz Biotechnology,USA),anti-γ antibodies(sc-731,Santa Cruz Biotechnology,USA),anti-ζ antibodies(sc-1019,Santa Cruz Biotechnology,USA),anti-ε antibodies(sc-1020,Santa Cruz Biotechnology,USA),anti-η antibodies(sc-17286,Santa Cruz Biotechnology,USA),anti-θ antibodies(sc-732,Santa Cruz Biotechnology,USA),and anti-σ antibodies(sc-7681,Santa Cruz Biotechnology,USA))、ないし、Anti-Human 14-3-3 Protein Rabbit IgG Affinity Purify(18649,IBL,Japan),Anti-Human 14-3-3 β Protein Rabbit IgG Affinity Purify(18641,IBL,Japan),Anti-Human 14-3-3 γ Protein(63A1)Mouse IgG MoAb(10037,IBL,Japan),Anti-Human 14-3-3 γ Protein Rabbit IgG Affinity Purify(18647,IBL,Japan),Anti-Human 14-3-3 ε Protein Rabbit IgG Affinity Purify(18643,IBL,Japan),Anti-Human 14-3-3 ζ Protein Rabbit IgG Affinity Purify(18644,IBL,Japan),Anti-Human14-3-3 η Protein Rabbit IgG Affinity Purify,(18645,IBL,Japan),Anti-Human 14-3-3 σ Protein(69)Rabbit IgG Affinity Purify(18640,IBL,Japan),Anti-Human 14-3-3 σ Protein(C)Rabbit IgG Affinity Purify(18642,IBL,Japan),Anti-Human 14-3-3 σ Protein(N)Rabbit IgG Affinity Purify(18646.IBL,Japan),Anti-Human 14-3-3 τ Protein(33A)Mouse IgG MoAb(10017,IBL,Japan)を用いて、それぞれのアイソフォーム同定を行った。この一連の作業を、インフルエンザ感染症、インフルエンザ脳症、非インフルエンザ感染の急性脳症の3群のみならず、小児神経疾患全般についても検討した。
【0023】
図1は、小児神経疾患の中で髄液中に14-3-3タンパク質が検出された具体例を示す。この結果から、髄液中14-3-3タンパク質は、インフルエンザ脳症(IAE)、ミトコンドリア異常症(MELAS)、Hemiconvulsion-Hemiplegia症候群(HH症候群)、ウイルス性および細菌性髄膜炎、脊髄小脳変性症、悪性リンパ腫で検出されることがわかった。
【0024】
図2は髄液中に14-3-3タンパク質が検出された例の頭部MRI写真を示す。HH症候群、インフルエンザ脳症、脊髄小脳変性症でそれぞれ障害されている脳部位を矢印で示した。これらの結果から、矢印で示された患者の脳障害部位が髄液中の14-3-3タンパク質検出の責任病巣であることがわかった。また、これらの障害部位と14-3-3タンパク質アイソフォームが関連することも推測できる。
【0025】
図3は、インフルエンザ感染症のみで脳症非発生例、インフルエンザ脳症例、非インフルエンザ感染症に伴う脳症例の臨床的特徴および髄液データである。この結果から、インフルエンザ脳症が小児で発生しやすいこと、一般に行われる髄液検査だけではインフルエンザ脳症かどうか区別できないこと、インフルエンザタイプBでもインフルエンザ脳症を発症しうることが判明した。
【0026】
図3は、インフルエンザ感染症のみで脳症非発生例、インフルエンザ脳症例、非インフルエンザ感染症に伴う脳症例における髄液中14-3-3タンパク質の検出を示すウエスタンブロットの結果であり、この結果から、髄液中14-3-3タンパク質はインフルエンザ脳症に特異的に検出され、インフルエンザ脳症の診断に有用であることがわかった。
【0027】
図4は、インフルエンザ脳症例およびミトコンドリア病(MELAS)例における14-3-3タンパク質のアイソフォームの同定に成功したウエスタンブロットの結果であり、この結果から、14-3-3タンパク質の7つのアイソフォームの中でβ、γ、ζ、θ、εの5つがインフルエンザ脳症で陽性であることがわかる。またこの5つのアイソフォームの中でもインフルエンザ脳症ではβ、θ、γ、ζ、εの順に強く検出されることがわかる。一方、ミトコンドリア病(MELAS)ではβ、ζの2つが陽性であり、ほぼ同程度に検出されることがわかった。
【0028】
図6は、ミトコンドリア病(MELAS)患者における病期における頭部MRI画像である。障害部位は矢印で示してある。この結果から、病期によって障害される脳部位が変化していることがわかる。
【0029】
図7は、ミトコンドリア病(MELAS)患者における臨床症状と髄液中14-3-3タンパク質の検出変化を示したものである。MRIは図6で示されたものを病期に当てはめてある。この結果から、髄液中14-3-3タンパク質は障害が進行するたびに髄液中で検出されること、中でも脳卒中発作時にもつとも強く検出されること、これらは頭部MRIで後頭葉と側頭葉が中心であること、これらは臨床上の急性期と一致して出現し安定すると消退することがわかった。
【0030】
図8は、Baxterらによって報告されたマウスの脳における14-3-3タンパク質の脳内分布を示す。これらより14-3-3タンパク質のアイソフォームが脳の一部に限局して存在しており、髄液中に検出される14-3-3タンパク質のアイソフォームと一致してすることが予想できる。
【0031】
図9は、髄液中14-3-3タンパク質の検出メカニズムである。これによると、髄液中14-3-3タンパク質が検出されるメカニズムには、急性期の脳破壊に付随して検出されるものと、慢性期のアポトーシス刺激に随伴して髄液中に放出されるものの、2種類があることがわかる。前者にはインフルエンザ脳症などが、後者には脊髄小脳変性症などが疾患として該当する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の検査法を利用することによって、インフルエンザ脳症の検査用キットが製造できる。また、ヒト髄液中に発現する14-3-3タンパク質からなるマーカ、ヒト髄液中に発現する14-3-3タンパク質に特異的に結合する抗体を含むインフルエンザ脳症の診断薬、14-3-3タンパク質に特異的に結合する一次抗体と、この一次抗体に特異的に結合し、かつ識別標識を有する二次抗体とを含み、前記識別標識の検出により前記14-3-3タンパク質を検出するインフルエンザ脳症の診断キット、が製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】小児神経疾患における髄液中14-3-3タンパク質の検出結果を示す図である。
【図2】髄液中14-3-3タンパク質が検出された症例の頭部MRI画像であり、障害された脳部位を示す図である。
【図3】インフルエンザ感染症のみで脳症非発生例、インフルエンザ脳症例、非インフルエンザ感染症に伴う脳症例における髄液中14-3-3タンパク検出例を示す図である。また年齢、インフルエンザ脳症のタイプ、髄液データ、予後を示す表も併記した。
【図4】インフルエンザ脳症例およびミトコンドリア病(MELAS)における14-3-3アイソフォームの同定を示す図である。
【図5】14-3-3タンパク質の7つのアイソフォームのアミノ酸配列を示す図である。相同性が高くまたリン酸化を受けるセリン、スレオニン残基は太線で強調した。
【図6】ミトコンドリア病(MELAS)患者における頭部MRI画像であり、障害された脳部位を示す図である。
【図7】ミトコンドリア病(MELAS)患者における臨床経過と髄液中14-3-3タンパク質の検出状況を示す図である。図6で示した頭部MRI撮影時期も併記してある。
【図8】報告されている14-3-3タンパク質のアイソフォームの脳内分布図(マウス)を示す。
【図9】髄液中14-3-3タンパク質が検出されるメカニズムを示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8