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明細書 :基盤に固着した貴金属膜からなる写真画像

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4512818号 (P4512818)
公開番号 特開2005-317885 (P2005-317885A)
登録日 平成22年5月21日(2010.5.21)
発行日 平成22年7月28日(2010.7.28)
公開日 平成17年11月10日(2005.11.10)
発明の名称または考案の名称 基盤に固着した貴金属膜からなる写真画像
国際特許分類 H05K   3/10        (2006.01)
G03C   1/00        (2006.01)
FI H05K 3/10 C
G03C 1/00 Z
請求項の数または発明の数 7
全頁数 9
出願番号 特願2004-162557 (P2004-162557)
出願日 平成16年4月28日(2004.4.28)
審査請求日 平成19年3月2日(2007.3.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】久下 謙一
【氏名】後藤 好正
審査官 【審査官】大光 太朗
参考文献・文献 特開昭61-077393(JP,A)
特公昭46-041877(JP,B1)
調査した分野 H05K 3/10
G03C 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
感光物質であるハロゲン化銀粒子と支持材となるゼラチンを含む写真乳剤を耐熱性基盤上に塗布した写真感光材料を用いて写真撮影を行う工程、
露光画像部に金、白金族元素又はこれらの混合物の微粒子を析出させて、前記ゼラチン中に分散した金、白金族元素又はこれらの混合物の微粒子からなる画像を得る工程、
前記ゼラチンを燃焼除去するとともに前記耐熱性基盤上に金、白金族元素又はこれらの混合物の膜を固着させる工程、を有する写真画像の作製方法。
【請求項2】
前記画像を得る工程は、前記写真感光材料を金、白金族元素又はこれらの混合物のイオンを含む処理液に浸漬する工程を含む、請求項1記載の写真画像の作製方法。
【請求項3】
前記作製される写真画像は、像が耐熱性基板上に固着した金、白金族元素又はこれらの混合物からなる膜で構成されており、ゼラチンが除去されている請求項1記載の写真画像の作製方法。
【請求項4】
1回の露光でポジ画像を得る請求項1記載の写真画像の作製方法。
【請求項5】
前記白金族元素は、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムの少なくともいずれかである請求項1記載の写真画像の作製方法。
【請求項6】
感光物質であるハロゲン化銀粒子と支持材となるゼラチンを含む写真乳剤を耐熱性基盤上に塗布した写真感光材料を用いて写真撮影を行う工程、
露光画像部に金、白金族元素又はこれらの混合物からなる微粒子を析出させて、前記ゼラチン中に分散した白金族元素又はこれらの混合物からなる微粒子からなる画像を得る工程、
前記ゼラチンを燃焼除去するとともに前記耐熱性基盤上に金、白金族元素又はこれらの混合物からなる膜を固着させる工程、を有するプリント基板の作製方法。
【請求項7】
感光物質であるハロゲン化銀粒子と支持材となるゼラチンを含む写真乳剤を耐熱性基盤上に塗布した写真感光材料を用いて写真撮影を行う工程、
露光画像部に金、白金族元素又はこれらの混合物からなる微粒子を析出させて、前記ゼラチン中に分散した白金族元素又はこれらの混合物からなる微粒子からなる画像を得る工程、
前記ゼラチンを燃焼除去するとともに前記耐熱性基盤上に金、白金族元素又はこれらの混合物からなる膜を固着させる工程、を有するガラスマスクの作製方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は,ゼラチンを含まない貴金属膜のみからなる写真画像およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
白黒写真画像は基盤上のゼラチン膜中に銀微粒子が分散した構造を持っている。ゼラチンを支持材として用いることは、写真の歴史の上で画期的な発明であり、ゼラチンはその優れた特性のため写真画像の支持材として必須のものと考えられてきた。しかしながら、この写真画像を構成するゼラチン膜、銀微粒子とも充分安定なものではなく、時間とともに変質するため、保存中の画像の劣化は避けられず、写真画像の保存における重要な問題であった。銀微粒子は空気中の酸素と水分、また定着液残留成分などにより、酸化・硫化反応を受けて、酸化銀・硫化銀などに変化し、退色、階調や色調の変化、汚染や変色の発生などの画像の劣化を生じる。一方ゼラチン膜は湿潤状態では、カビの発生、べたつき、他への付着などを、乾燥状態では膜の乾燥による亀裂、剥離などを生じる。これらはすべて写真画像を損傷する。またゼラチン膜は機械的強度が充分ではなく、かき取りや摩擦によりはがれたり、傷が付いたりするなどの問題も有する。
【0003】
写真画像の保存性を向上するために、画像を構成する銀粒子を他の貴金属などに置き換えることにより銀の変質を防止する、調色という技術が古くから用いられてきた。しかしこの処理は通常の現像処理後に調色という新たな工程を付け加えなければならない。また調色処理の不均一によるムラ、調色処理液の残存による画像の汚染などにより、逆に写真画像が劣化するなどの欠点もある。さらにこの処理はゼラチン膜の持つ欠点に対してはなんら効果がない。

【非特許文献1】 改訂写真工学の基礎-銀塩写真編-、415頁~417頁、日本写真学会編、(1998)
【非特許文献2】 R.W.Henn,B.D.Mack,Photographic Sci.Eng.,9,378-384(1965).
【0004】
ゼラチンの変質に対しては、防黴剤の添加、硬膜処理による膜強度の増強などがなされている。しかしゼラチン膜がある限り根本的な解決方法とはなりえない。さらにこれらは銀の変質に対しては効力がない。

【特許文献1】 特開平11-184039号公報
【特許文献2】 特開平09-329862号公報
【特許文献3】 特開平09-265147号公報
【特許文献4】 特開平05-011395号公報
【0005】
ゼラチンは写真画像には不可欠のものであるが、あえてゼラチンのない写真画像として、陶磁器上に焼き付けた画像を形成する陶磁器写真などがある。しかしこれらは写真といいながら基本的に一旦画像を別に作ってから陶磁器上に転写して焼き付けるものであって、一種の印刷技術であり、陶磁器上に直接露光して画像を作る、いわゆる像を写し撮る写真ではない。もとの写真画像を作製した後さらに転写像を作製する工程を要し、また転写の際に階調、色調が変化する、解像度が低下する、ムラを生じるといった問題も有している。

【特許文献5】 特開2002-293671号公報
【特許文献6】 特開2002-293670号公報
【特許文献7】 特開2001-30693号公報
【特許文献8】 特公平6-99196
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように保存性の良好な写真両像を得るためにはゼラチンを写真画像の構成要素から排除することと、銀をより安定な貴金属に置き換えるという2つの処理が必要であり、さらにこれらを同時に行うことが重要であるという結論に達した。本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって,写真に不可欠とされるゼラチンを含まず、銀より安定な貴金属で構成された写真画像を作製する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためには、銀より安定な貴金属で写真画像を形成する方法と、写真画像中からゼラチンを取り除く方法の2つを見いだし、これら双方を実施することが不可欠である。そのため本発明者は鋭意検討を重ねた結果,通常の写真現像処理に代わって直接貴金属微粒子からなる画像を形成することと、耐熱性の基盤を用いて加熱焼成によりゼラチン膜を燃焼除去することを合わせて行うことにより、目的が達せられることに到達した。
【0008】
前者の方法として、露光部のハロゲン化銀粒子上に形成される潜像核が、貴金属イオンから金属原子を析出する反応の触媒としても作用することが利用できることを見いだした。ここで潜像核とは露光時にハロゲン化銀の光分解により生じる微小な銀原子の核であり、現像時にこれが酸化還元反応の触媒として作用するため、画像露光部のハロゲン化銀粒子のみが選択的に還元されて金属銀粒子となり、写真画像を生じる。
【0009】
後者の方法として、耐熱性の基盤上にこのような貴金属微粒子で画像を構成しておけば、加熱焼成が可能であり、ゼラチン膜のみが燃焼除去されて、残された貴金属微粒子は基盤に固着した貴金属膜となって画像を形成することを見いだした。通常の白黒写真画像を加熱焼成すると、金属銀粒子はその形を崩して酸化銀に酸化されるため、像が消失してしまうのであるが、酸化されない貴金属微粒子で像を作っておくことにより、加熱焼成が可能となった。
【0010】
本発明は、次のとおりのものである。1.像が耐熱性基盤上に固着した貴金属膜で構成されていることを特徴とする写真画像。2.感光物質であるハロゲン化銀粒子と支持材となるゼラチンを含む写真乳剤を耐熱性基盤上に塗布した写真感光材料を用いて写真撮影を行う工程、露光画像部に貴金属微粒子を析出させてゼラチン膜中に分散した貴金属微粒子からなる画像を得る工程、これを焼成してゼラチンを燃焼除去するとともに耐熱性基盤上に貴金属膜を固着する工程、を有する写真画像の作製方法。3.超微粒子のハロゲン化銀粒子からなる写真乳剤を用いることを特徴とする上記1に記載の写真画像。4.表面反射光で観察するとポジ画像となる像が1回の露光で得られることを特徴とする上記1に記載の写真画像。5.貴金属特有の光沢を有することを特徴とする上記1に記載の写真画像。6.感光物質であるハロゲン化銀粒子と支持材となるゼラチンを含む写真乳剤を耐熱性基盤上に塗布した写真感光材料を用いて写真撮影を行う工程、露光画像部に貴金属微粒子を析出させてゼラチン膜中に分散した貴金属微粒子からなる画像を得る工程、これを焼成してゼラチンを燃焼除去するとともに前記耐熱性基盤上に導電性の貴金属膜を電気回路配線として固着させる工程、を有するプリント基板の作製方法。7.上記6に記載の方法で作製されるプリント基板。8.感光物質であるハロゲン化銀粒子と支持材となるゼラチンを含む写真乳剤を透明な耐熱性基盤上に塗布した写真感光材料を用いて写真撮影を行う工程、露光画像部に貴金属微粒子を析出させてゼラチン膜中に分散した貴金属微粒子からなる画像を得る工程、これを焼成してゼラチンを燃焼除去するとともに前記透明な耐熱性基盤上に導電性の貴金属膜を電気回路配線として固着させる工程、を有するガラスマスクの作製方法。9.上記8に記載の方法で作製されるガラスマスク。なお、本明細書では基板上に像が構成されたものを写真画像として表現している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると,像が耐熱性基盤上に固着した貴金属膜で構成されていることを特徴とする写真画像(請求項1)および感光物質であるハロゲン化銀粒子と支持材となるゼラチンを含む写真乳剤を耐熱性基盤上に塗布した写真感光材料を用いて写真撮影を行う工程、露光画像部に貴金属微粒子を析出させてゼラチン膜中に分散した貴金属微粒子からなる画像を得る工程、これを焼成してゼラチンを燃焼除去するとともに耐熱基盤上に貴金属膜を固着させる工程、を有する写真画像の作製方法(請求項2)および超微粒子のハロゲン化銀粒子からなる写真乳剤を用いることを特徴とする写真画像(請求項3)および表面反射光で観察するとポジ画像となる像が1回の露光で得られることを特徴とする写真画像(請求項4)および貴金属特有の光沢を有することを特徴とする写真画像(請求項5)および感光物質であるハロゲン化銀粒子と支持材となるゼラチンを含む写真乳剤を耐熱性基盤上に塗布した写真感光材料を用いて写真撮影を行う工程、露光画像部に貴金属微粒子を析出させてゼラチン膜中に分散した貴金属微粒子からなる画像を得る工程、これを焼成してゼラチンを燃焼除去するとともに前記耐熱性基盤上に導電性の貴金属膜を電気回路配線として固着させる工程、を有するプリント基板の作製方法(請求項6)およびこの方法により作製されるプリント基板(請求項7)および感光物質であるハロゲン化銀粒子と支持材となるゼラチンを含む写真乳剤を透明な耐熱性基盤上に塗布した写真感光材料を用いて写真撮影を行う工程、露光画像部に貴金属微粒子を析出させてゼラチン膜中に分散した貴金属微粒子からなる画像を得る工程、これを焼成してゼラチンを燃焼除去するとともに前記透明な耐熱性基盤上に導電性の貴金属膜を電気回路配線として固着させる工程、を有するガラスマスクの作製方法(請求項8)及びこの方法により作製されるガラスマスク(請求項9)が提供できるようになった。
【0012】
本発明で得られた写真画像はガラス等の基盤とその上の貴金属膜からなり、両者とも化学的にきわめて安定である。そのため,保存中に化学的に変質しにくく、またカビなどの生物的変質を受けにくい写真画像を作製することが可能となった。さらに、画像は基盤に固着した貴金属膜からなり、この膜はゼラチン膜より強固であるので、通常の写真画像よりかき取り、摩擦などに対して強い機械的強度を持つ。したがって,変質しにくく、機械的強度のある、保存性、耐久性のある写真画像の製造への応用が最適である。
【0013】
本発明で得られた写真画像は強い金属光沢を有し、高露光部ほど光沢が強く明るく見えるので、ポジ像として観察されることがわかった。したがって,1回の露光でポジ像が得られる、直接ポジ画像製造方法としての応用に適している。
【0014】
本発明で得られた写真画像は強い金属光沢を有するため、通常の光沢のない白黒画像とは異なって観察された。したがって,金属光沢で画像が表現されている新しい写真表現手法による写真画像を作製することができる。
【0015】
本発明で得られた写真画像は貴金属の膜からなるため、膜部は良好な電気伝導性を有していた。さらに、本発明で得られた写真画像は、用いた写真感光材料を通常の写真現像法で処理したときとほぼ同等の解像度を有したので、細かいパターンも記録できる。したがって、電気回路を描き込んだマスクを通して露光することにより、電気回路パターンを形成することが可能となり、微細な回路網の作製に適している。
【0016】
本発明で得られた写真画像は高露光部では光学濃度が5以上あり、十分な遮光性を有していた。また膜は基盤に固着したきわめて薄い貴金属膜からなっており、写真感光材料を用いたマスクのように画像部の厚みによる像のにじみを生じない。したがって、基盤に透明で平面性の良いガラス板を用いて電気回路図を描き込むことで、プリント基板を作製する際のマスクとして使用することが可能であり、精細なガラスマスクの作製に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下,この発明の実施形態を図面に示すモデル的実施態様に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0018】
第1図は本発明の一実施態様(以下、単に本発明ともいう)を示すものである。第1図(a)は無色透明のガラス基盤11の上にゼラチン膜12中に分散したハロゲン化銀粒子13からなる乳剤層が設けられた写真乾板を示す。この乾板に画像露光を行った後、画像部に金を沈着させるために金イオンを含む処理液に浸漬すると、第1図(b)に示すように露光部14のハロゲン化銀粒子上に形成された潜像核が触媒となって、潜像核を持つハロゲン化銀粒子上に金微粒子15が析出する。未露光部16はハロゲン化銀のみである。ついで一般的な写真定着液で処理すると、第1図(c)に示すようにすべてのハロゲン化銀は除去されて、露光部14に金微粒子のみがゼラチン膜12に保持されて残る。このとき金微粒子からなる写真画像が形成されている。次にこの画像を電気炉中で400~480℃で焼成すると、ゼラチン膜は炭化した後燃え尽き、その間に金微粒子は凝集、溶融してガラス基盤上に固着するので、第1図(d)に示すようにガラス基盤上11に固着した金の膜17からなる写真画像が形成される。
【0019】
以下に具体的な実施例を示す。写真感光材料としてホログラム記録用超微粒子写真乾板を用い,また貴金属として金を用いたモデル例である。写真乾板と電子写真の解像度測定用チャートを重ねて、写真引伸機を用いて50~150秒の密着露光を与えた。また大型カメラに写真乾板を装填し、露光時間40秒で直接風景を撮影した。露光後の写真乾板を金沈着処理液に浸漬した。全暗黒中で処理液を20℃に保ち、3~48時間浸漬した。浸漬終了後清浄な水で水洗を繰り返し、金錯体を十分洗浄除去した後、F-5写真定着液に5~10分間浸漬した。その後流水で十分水洗することにより、残留定着液成分を除去した。
【0020】
本発明で用いた金の沈着処理のための処理液は、清浄な水に金チオシアン酸カリウム水溶液を加えた後、それより少ない量の塩化金酸ナトリウム水溶液を加えて、金チオシアネート錯体を形成させ、さらに臭化カリウムを加えて臭化物イオン濃度を調整したものである。処理液の処方の一例は次のとおりである。300mLの2回蒸留水に1mol/Lのチオシアン酸カリウム水溶液5mLを加えて混合した後、5×10-2molの塩化金酸ナトリウム水溶液5mLを撹拌しながら、ゆっくり滴下した。滴下と同時に生じた沈殿が撹拌とともに消失して透明になってから次の液滴を加えた。すべての塩化金酸ナトリウム水溶液を加え終わった後、0.4mol/Lの臭化カリウム水溶液10mLを加え混合した後、2回蒸留水を加えて全量を500mLとした。
【0021】
ここで貴金属として金の他に白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムなどの白金属元素や、これらの混合したもの、また金と混合したものが可能である。また、ここで錯体を形成する配位子としてはこのほかにチオ硫酸イオン、チオ尿素など、中心金属イオンと配位して可溶性の錯体を形成しうるものが可能である。また、臭化カリウムより低い濃度のヨウ化カリウムをここへ加えることにより金の析出速度を大きくすることができる。
【0022】
写真感光材料として各種の白黒感光材料が使用可能であるが、粒径60nm以下の超微粒子のハロゲン化銀粒子からなり、ゼラチンの割合の少ない高銀量の写真乳剤からなる感光材料の使用で、サイズのそろった平均粒径30nmの金微粒子が作製された。これは金微粒子は膜中のハロゲン化銀粒子の隙間に成長するので、超微粒子のハロゲン化銀を密に充填した写真乳剤では隙間のサイズが小さくなり、サイズのそろった金の超微粒子が成長したものである。サイズのそろった超微粒子にすることはその後の焼成の過程で均一な金膜の作製に有利である。
【0023】
金微粒子を形成した膜からなる試料を、電気炉中で徐々に昇温して約480℃に達してから数時間焼成し、加熱を停止してから電気炉中で室温に戻るまで徐冷した。途中300℃ぐらいからゼラチンが炭化して全体が黒い膜となるが、400℃を超えると燃焼しきって無くなり、後にガラス基盤に金膜の固着した写真画像が得られた。
【0024】
本発明で得られた写真画像は、透過光については途中の焼成前の金微粒子の画像の段階では金微粒子特有の赤紫色を示したが、焼成後の最終画像では濃い青紫色を呈した。焼成前後の吸収スペクトルを第2図に示す。焼成前のスペクトルは540~550nmにピークを持つ鋭い吸収を示し、これは金微粒子のプラズモン吸収に帰属できた。焼成後の吸収スペクトルはより長波長側にピークを持ち、幅の広がったピークを持つ金のバルク吸収に帰属できることから、金微粒子が焼成により凝集して連続した金の膜に変化したことを示していた。
【0025】
本発明で得られた写真画像は強い金光沢を有した。焼成前後の画像の反射スペクトルを第3図に示す。焼成により反射率が増大していることが示された。特に長波長側での反射率が増大しており、青色成分の反射の少ない金光沢を示すときの反射スペクトルに近づいた。これも金微粒子が焼成により凝集して、連続した金の膜に変化したことを示していた。
【0026】
本発明で得られた写真画像は強い金光沢を有しており、高露光部ほど光沢が強く光を強く反射するので明るく観察され、この部分は白黒写真の白い部分と同じように見えた。ネガ像を写真引伸機で焼き付けた写真画像が、金光沢により画像を表している様子を撮影した写真を第4図に示す。この写真画像は透過光で観察したときにはポジ像であるが、第4図のように反射光で画像を観察するともとの画像と同じネガ像として認識された。
【0027】
これは一回の露光操作で直接ポジ画像が得られることを示す。大型カメラで直接撮影して得られた写真画像が、金光沢により画像を表している様子を撮影した写真を第5図に示す。透過光で観察するとネガ像であるが、第5図のように反射光で見た場合ポジ像として認識されている。通常の写真処理ではネガ像が得られるため、ポジ像を得るためには再度印画紙等に焼き付ける操作をしなければならない。直接ポジ像が得られる感光材料もあるが、これは内部潜像型ハロゲン化銀粒子を含有する写真乳剤を用いるなどの特殊な感光材料を使用して得られるものである。本発明では通常の写真感光材料でも直接ポジ像を得ることができた。
【0028】
本発明で得られた写真画像の高露光部は強い金光沢を示し、この部分は良好な電気伝導性を示した。焼成前にはゼラチン膜中に分散していた金微粒子が、焼成により互いに融合して連続した膜となり、導通するようになったものである。連続した膜上1cmの間隔で最小1Ω以下の抵抗値を示し、電気回路として良好な電気伝導性を持っていた。従って、耐熱基盤上にこの電気伝導性を持った膜を固着させることで高精細なプリント基板を作成することができ、また例えば基盤に透明で平面性の良いガラス板を用いて電気回路図を描き込むことで、プリント基板を作製する際のマスクを得ることができる。
【0029】
金沈着時間を延ばすことにより金膜の吸光度は連続的に増加して最大吸光度5以上の膜が得られた。膜は基盤に固着したきわめて薄い金の膜からなっているので、この膜からなるマスクを重ねて露光した場合、膜の厚みに起因する像周辺のにじみが低減される。そのため通常の写真感光材料を用いて作製した銀微粒子からなるマスクより高解像度で画像を焼き付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば変質しにくく強い機械的強度を持つ長期保存が可能な写真画像、金属光沢を用いた写真表現のできる写真画像、1回の露光で表面反射光での観察によりポジ画像が得られる写真画像、貴金属膜の配線からなる電気回路を持つプリント基板、プリント基板を作製するためのガラスマスクなどが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】 本発明の方法によりガラス基盤上に固着した貴金属膜からなる写真画像を得る工程を示す図である。
【図2】 焼成前後の画像が示す吸収スペクトルを示す図である。
【図3】 焼成前後の両像が示す反射スペクトルを示す図である。
【図4】 本発明によりネガ像を写真引伸機で焼き付けて作製した写真画像を示す図である。
【図5】 本発明により風景を撮影して作製した写真画像を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
11…ガラス基盤
12…ゼラチン膜
13…ハロゲン化銀粒子
14…露光部
15…金微粒子
16…未露光部
17…金膜
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4