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明細書 :温室の冷房装置及びそれを用いた冷房方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4431789号 (P4431789)
公開番号 特開2006-006105 (P2006-006105A)
登録日 平成22年1月8日(2010.1.8)
発行日 平成22年3月17日(2010.3.17)
公開日 平成18年1月12日(2006.1.12)
発明の名称または考案の名称 温室の冷房装置及びそれを用いた冷房方法
国際特許分類 A01G   9/24        (2006.01)
FI A01G 9/24 R
請求項の数または発明の数 6
全頁数 14
出願番号 特願2004-183196 (P2004-183196)
出願日 平成16年6月22日(2004.6.22)
審査請求日 平成19年3月2日(2007.3.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】古在 豊樹
【氏名】大山 克己
【氏名】戸井田 宏美
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
審査官 【審査官】坂田 誠
参考文献・文献 特開2002-330640(JP,A)
特開2002-51657(JP,A)
国際公開第98/005432(WO,A1)
実公平5-47576(JP,Y2)
実開昭63-95460(JP,U)
調査した分野 A01G 9/24
A01K 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
水を送るポンプと、
該ポンプで送られた水を導く配管と、
該配管に接続され、上向きに細霧を発生させる細霧ノズルと、を有する冷房装置であって、
該細霧ノズルの下側に配置されて上向きの乱流を発生させる送風機と、を有し、前記細霧ノズル及び前記送風機は植物群落より上に設置されることを特徴とする温室の冷房装置。
【請求項2】
前記細霧ノズルは、鉛直線と0~30度の角度で細霧を上向きに発生させることを特徴とする請求項1に記載の温室の冷房装置。
【請求項3】
水を送るポンプと、該ポンプで送られた水を導く配管と、前記配管に接続され、上向きに細霧を発生させる複数の細霧ノズルと、前記複数の細霧ノズル各々の下側に配置されて上向きの乱流を発生させる送風機と、を有し、前記細霧ノズル及び前記送風機が植物群落より上に設置される温室の冷房装置。
【請求項4】
前記細霧ノズルは、鉛直線と0~30度の角度で細霧を上向きに発生させ、前記送風機は、上向きの乱流を発生させることを特徴とする請求項3に記載の温室の冷房装置。
【請求項5】
植物群落より上で細霧を上向きに発生させ、前記細霧に対し、鉛直方向下側から上側に乱流を発生させることにより前記細霧の蒸発を促進させる温室の冷房方法。
【請求項6】
前記細霧は鉛直線と0~30度の角度で細霧を上向きに発生させることを特徴とする請求項5に記載の温室の冷房方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は植物等を栽培する栽培ハウス等の温室を冷房するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
夏季高温期の栽培ハウス等の温室内では、気温が作物の栽培適温に比べ過度に上昇することがあるため、温室の生産効率を高めるべく人為的に冷房を行う必要がある。この人為的な冷房を行う方法は種々考案されているが、その中でも細霧冷房方法が簡便である。細霧冷房方法とは、細霧を発生させ、その細霧を気化させて潜熱を奪い、温室内の気温を下げる冷房方法である。この方法に用いられる装置は、水を送るポンプと、ポンプで送られた水を導く配管と、配管に接続され、細霧を発生させる細霧ノズルと、を設けることで実現できるため、構造自体が非常に簡単で、取り扱いも容易で、しかも安価であるという利点を有し、この種の温室の冷房方法として有効である。
【0003】
この細霧冷房方法における細霧ノズルとしては、細霧を発生させる方向(以下「噴霧方向」という。)が横方向又は斜め上方(図3参照)となっている細霧ノズルが知られている。噴霧方向が横に向けられたものとしては水平面(床面)に対しおよそ平行(0度)のものがあり、噴霧方向が斜め上方に向けられたものとしては水平面に対し0度より少し大きい所定の角度を有して配置されたものがある。(なお、細霧は実際のところ細霧ノズル端面からある程度の角度の広がりをもって発生するため、ここでの噴霧方向とはその広がりにおける中心の軸を指すこととする(例えば図3においては符号Aで指し示す軸を噴霧方向とする。後述する図1、2において同じである。))。
【0004】
また従来技術として、下記特許文献1には、単孔ノズルと衝突体とを用いて薄く横方向に円盤状に広がる細霧を発生させつつ、温室上部に設けられた空気循環器を用いて細霧循環流を形成し、細霧を有効に蒸発させようとする技術が開示されている。

【特許文献1】特開昭59-98628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般の細霧冷却方法では、細霧の多くの部分が細霧噴霧方向の周辺約1mの範囲で気化するため、その範囲で気温を低下させることができる。しかし、この気温低下の範囲は細霧ノズル周辺に限定されしまうため、周辺とそれ以外の範囲で気温差が生じてしまう。この気温差は下降気流を作り、この下降気流に未蒸発の細霧が巻き込まれて下降し、植物群落に必要以上の水滴として付着する場合がある。この場合、病害発生や植物光合成活動の抑制の原因となってしまう虞がある。特に、この未蒸発の細霧は細霧発生量の半分以上に達してしまう場合もあり大きな問題となることがある。なお、この未蒸発の細霧を防ぐには蒸発率を向上させることが有用である。(本明細書では蒸発した細霧量を噴霧した細霧量で割った値を蒸発率と定義する。)
【0006】
また一方で、細霧ノズル周辺の狭い領域のみに限定されしまう気温低下範囲は、温室全体における気温低下の不均一さも生じさせてしまうこともある。これを解消するために細霧ノズルを多数設けて均一化を図ることが考えられるが、上記の未蒸発の細霧の問題を解決しない限り、未蒸発の細霧をより多く発生させてしまうため、単純に多数採用することで解決できるわけではない。
【0007】
また、上記の未蒸発の細霧に関する問題を解消する方法として、一定時間の細霧噴霧後に植物体表面に付着した未蒸発細霧が蒸発するまでの間、細霧の発生を停止させる間欠運転方法という方法がある。しかし、この間欠運転方法を採用すると、気温の急激かつ幅の大きい時間変動を生じさせてしまう虞があり、新たに別の問題を発生させてしまうこととなる。
【0008】
なお、上記特許文献1に記載の技術によると、送風機に近い位置に発生した細霧については有効に蒸発させることができる。しかし、送風機から離れるほどその気流は不均一で弱いものとなり、細霧の蒸発率も不均一で、かつ、低下し、温室における気温低下も不均一となる。
【0009】
以上、本発明は上記課題を解決するためになされるものであり、本発明の目的は、未蒸発の細霧の植物群への必要以上の付着、温室内の気温分布の不均一化および気温の急激かつ幅の大きい時間変動、を十分抑えることのできる、より高性能な温室の冷房装置、冷房方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は具体的に、以下の手段を採用する。
例えば第一の手段として、水を送るポンプと、このポンプで送られた水を導く配管と、この配管に接続され、細霧を発生させる細霧ノズルと、細霧ノズルの下側に配置される送風機と、を有する温室の冷房装置とする。本発明はこのような構成とすることにより、送風機による気流を用いて細霧を広く拡散させ、蒸発率を向上させることができ、また、間欠運転方法が必ずしも必須でなくなるため、気温の大きな変動を抑え、高性能な温室の冷房装置を提供することが可能となる。また、一つの細霧ノズルから発生する細霧は従来技術に比べ広く均一に気温を低下させることができる。
【0011】
また、細霧ノズルに上向きの細霧を発生させ、送風機に上向きの乱流を発生させることは、下側から供給される乱流に細霧をより乗せやすくし、蒸発率を向上させることができ望ましい。
【0012】
また、細霧ノズルは、鉛直線と0~30度の範囲の角度で細霧を上向きに発生させること、即ち、細霧ノズルから発生する細霧の鉛直線となす角度が30度以下であることにより、細霧ノズルから発生する細霧をもれなく乱流に乗せることができ、より蒸発率を向上させることができる。
【0013】
また、細霧ノズルの下側に配置される送風機は細霧ノズルが発生する細霧を効率よく上側に拡散させるものであるから、細霧ノズルの下側しかも近傍に配置することが望ましい。
【0014】
また、第二の手段として、水を送るポンプと、このポンプで送られた水を導く配管と、この配管に接続され、細霧を発生する複数の細霧ノズルと、複数の細霧ノズル各々の下側に配置される送風機と、を有する温室の冷房装置とする。これにより、第一の手段とほぼ同様の効果を得ることができ、また、複数の細霧ノズルを設けた場合であっても、これら一つ一つの細霧ノズルから発生する細霧は均一に気温を低下させることができているため、温室内を均一に冷房することができる。しかもこの場合においては、蒸発率を向上することができているため、従来技術に比べて細霧ノズルの数を大幅に減らすことができる。
【0015】
また、細霧ノズルに上向きの細霧を発生させ、送風機に上向きの乱流を発生させることは、下側から供給される乱流に細霧をより乗せやすくし、蒸発率を向上させる観点からより望ましい。
【0016】
また、細霧ノズルは、鉛直線と0~30度の範囲の角度で細霧を上向きに発生させること、即ち、細霧ノズルから発生する細霧の鉛直線となす角度が30度以下であることにより、細霧ノズルから発生する細霧をもれなく乱流に乗せることができ、より蒸発率を向上させることができる。
【0017】
また、細霧ノズルの下側に配置される送風機は、細霧ノズルが発生する細霧を効率よく上側に拡散させるものであるから、細霧ノズルの下側かつ近傍に配置することが望ましい。
【0018】
また、第三の手段として、細霧を発生させ、この細霧に対し、鉛直方向下側から上側に乱流を発生させることにより前記細霧の蒸発を促進させる温室の冷房方法とする。これにより、第一の手段とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0019】
またこの場合において、細霧を上向きに発生させることも乱流に細霧を乗せやすくし、蒸発率を向上させ、作物に水滴として付着することの防止を有効にできる。
【0020】
またこの場合において前記細霧を鉛直線と0~30度の角度となるよう上向きに発生することにより、ほぼすべての発生した細霧を乱流に乗せることができ、より蒸発率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上、本発明は細霧を発生させ、この細霧に対し鉛直方向下側から上側に乱流を発生させることで細霧を細霧発生位置より上側に拡散させることができ、細霧の蒸発を促進させ、蒸発率を高くすることができ、未蒸発の細霧の植物群への必要以上の付着を防ぐことができる。また間欠運転方法を採用しなくてもよくなることから温室内の気温の時間変動をも十分抑えた運転が可能となる。また、高い蒸発率と常時運転方法を採用すれば、細霧ノズルの温室内の設置数を減らすことができる。そして、本発明で使用される送風機1個の価格は、通常、細霧ノズル1個の価格より安価である。したがって、送風機を取り付けても細霧ノズルの設置数が減らせるために、本発明の細霧ノズルおよび送風機の設置コストは従来法の細霧ノズルの設置コストと比べて、同等またはそれ以下にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。なお本明細書では、細霧ノズルの向きや送風機の配置などの説明において「上側」、「下側」という用語を用いているが、一般に、これらは鉛直線を基準として定義してある。例えば、「AがBの上側にある」とは、AがBよりもより地面から遠いことを意味する。またこの場合、必ずしもそれぞれが一本の鉛直線に乗っていない場合も含まれる。「下側」もこれにおいて同様に規定する。
【0023】
また、「上向き」「下向き」についても、一般に、鉛直線を基準として定義しており、例えば「Aの方向が上向きとなるよう配置されている」とは、Aの方向の鉛直線に対する射影成分が地面から遠ざかる方向になっていることを意味する。「下向き」もこれにおいて同様に規定する。
【実施例】
【0024】
図1は、本実施例に係る冷却装置における細霧装置の概略図である。本実施例における細霧装置は、細霧ノズル1と、この細霧ノズル1の下側に配置される2個の送風機2とを有しており、細霧ノズル1及び2個の送風機2は、水平方向にのびる支持棒3に、取り付け具5を介してそれぞれ固定されている。細霧ノズル1には、水を導く配管4が接続されており、細霧のもととなる水はこの配管4から供給される。なお配管4は、水を送るポンプ(図1で図示せず。)に接続され、運転時にはポンプから配管へと水が供給されることとなる。また、細霧ノズル1は上向きに設置されており、平均粒径約30μmの細霧を鉛直線から30度以内の角度(30度以内)で発生させる。送風機2は、下側から上側へ向かう気流(上向きの気流)を発生させるよう配置されており、支持棒3を対称軸として水平面において対称に配置されている。本実施例で使用した送風機2の流量は1分あたり1mである。
【0025】
送風機2が発生させる気流はいわゆる乱流となっており(図1中の符号B1及びB2)、この乱流が細霧を上側に吹き上げ細霧を上方に輸送し拡散させるため効率よく蒸発させることができ、蒸発率を向上させることができる。なお本実施例では、細霧ノズル1から発生する細霧は鉛直線と0~30度の範囲となるよう(図1中のRが30度以下となるよう)に細霧(図1の符号W)を発生させているため、発生した細霧はほぼ全ての部分が送風機2の発生させる気流の中に入ることとなる。これ以上広い場合は蒸発率向上の効果がないわけではないが、送風機が発生させる気流の外に細霧を送ってしまうことがあり、その場合その部分の細霧は拡散されず、広範囲に均一に蒸発率を向上させる効果が薄くなってしまう虞がある。
【0026】
なお送風機2は、細霧に対し効率よく気流を送る観点から、支持棒3及び配管4によって遮られないよう支持棒3及び配管4の直下を避けて配置している。なお支持棒3と配管4においても、送風機が遮る面積をできる限り少なくすべく、鉛直方向から見た場合に重なるように配置してある。もちろん、下記で述べる「ぼた落ち」を防ぐことができるのであれば、送風機は、細霧ノズルの下側であって、支持棒3、配管4の上側に配置してもよい。
【0027】
また、本実施例では支持棒3と配管4とは別々なものを使用しているが、配管に支持棒としての機能を兼ねさせてこれらを一本とした構成としてもよい。このようにすれば、送風機が発生させる気流を妨げないよう支持棒と配管とを合わせる手間を省くことができ、使用中の振動等の要因によってずれることもない。
【0028】
また送風機2は、細霧ノズル1が発生する細霧を上側へ輸送拡散させるためのものであるため、できる限り細霧ノズル1の近傍に配置させることが肝要である。しかし送風機2が細霧ノズル1よりも上側に配置されてしまうと、細霧ノズル1から噴霧された細霧が送風機2に付着して水滴として落下するいわゆる「ぼた落ち」が起こってしまうため、細霧ノズル1の細霧噴き出し面より下側であることが望ましい。従って、送風機2は細霧ノズル1の細霧噴出し面からおよそ10cm程度離れた位置に取り付けることがより望ましい(この範囲を「近傍」ということとする)。なおここで用いられる送風機2は、細霧を上側へ輸送拡散させるためのものであり、小型のもので十分適用可能である。送風機の大きさについては特段制限はないが、およそ直径として10cm程度(重さ100g、消費電力2W程度)のもので十分に効果を達成することができ、コストにおいて有利となる。
また、本実施例における細霧ノズル1は平均粒径約30μmであるが、粒径は50μm以下の範囲であれば特に問題なく使用できる。50μm以上であると、細霧が空中を浮遊しにくいという問題がある。また、冷房効果の観点を考慮すると20μm~40μmの平均粒径がなお望ましい。
【0029】
また、本実施例では送風機を2個使用しているが、コストを考慮した場合、細霧ノズル、配管により多少気流の遮断はあるが、1個の送風機で構成することも可能ではある(後の実験結果にて開示する。)。この場合、細霧を細霧ノズルの上側に均一に拡散させる必要から、送風機の回転軸とノズルの噴霧方向とを概ね同じ向きにすると均一に気温を低下させることができる。もしくは、配管による気流の遮断を考慮して、より大きい風量の送風機1個で構成することも可能である。
【0030】
更に、1つの細霧ノズルに下側から上向きの気流を送るよう圧縮した気流を導くよう送風管を用いる構成もコストや設置の容易性を犠牲にするが、蒸発率向上の利点を有するため採用可能ではある。
【0031】
以上の本実施例の構成により、細霧ノズル1で発生した細霧は送風機2が発生する乱流により細霧ノズル1より上側1m程度の範囲で大部分蒸発させることができ、蒸発率を向上させることができる。なお、一部の細霧が冷却された空気の下降にともない細霧ノズル1の取り付け位置よりも落下してしまう場合があるが、この場合においても、細霧は上方に拡散させられて相当の距離の移動した後落下したものであるため、細霧ノズル1の取り付け位置より下側1m以内でほぼ全て蒸発させることができ、蒸発率を向上させ、しかも常時運転が可能となり、大きな気温の時間変動なく温室を冷房することができる。なお本実施例では常時運転が可能となるが、外気の変動に応じて細霧を停止する等の運転も可能であり、必ずしも間欠運転方法を採用することを否定するものではない。
【0032】
次に、本実施例における実験結果について図4及び表1を用いて説明する。図4は、本実施例における実験結果を比較例の結果とともに示した図である。図4は、冷房装置を用いて細霧を一分間発生させ、細霧発生停止直後、細霧発生停止一分後、細霧発生停止二分後のそれぞれにおける細霧ノズル1の下側50cmの水平面における気温分布を示したものである。なおポンプが水を送る圧力は2MPaで、細霧を発生させる速度は毎分約70gである。また、本実験は送風機の数や細霧ノズルの向き以外はほぼ同じ条件で行い、送風機による乱流以外の気流などによる影響をできる限り排除した室内で行った。
【0033】
図4の結果は4段3列で示されており、各段は各実験条件(細霧ノズルの向き、送風機の数等)に対応し、各列はある所定の時間に対応する気温分布を示している。図4において、最上段は本実施例に係る冷房装置を用いた場合の実験結果であり、細霧ノズルが発生する細霧は上向きで、送風機は2個用いた場合の結果を示している。また図4の上から二段目の結果は、細霧ノズルは上向きの細霧を発生し、送風機が1個である場合の結果を示している。また図4の下から二段目の結果は、細霧ノズルが発生する細霧は上向きであるが、送風機を取り付けていない場合(比較例、図2参照)の結果を示している。また、図4の最下段は、細霧ノズルを上向きではあるが斜め上向き(鉛直方向から30度以上の例。本実施例では75度)に設置し、しかも送風機を取り付けない場合(比較例、図3参照)の結果を示している。
【0034】
まず、図4の細霧ノズルが発生する細霧の方向を斜め方向にし、かつ、送風機を配置していない場合は、細霧が発生する方向に気温を下げる効果が見られるものの、それ以外の方向には殆ど気温の低下が見られなかった。これは細霧発生を停止した後一分、二分においても同様であった。つまり温室の冷房方法としては効果が十分ではなかった。
【0035】
次に、図4の細霧ノズルが上向きであるが送風機がない場合は、細霧発生の停止直後、細霧発生停止後一分及び二分と時間が経過しても、気温が低下した領域は狭いまま広がらなかった。これは即ち細霧が上向きに発生してもそのまま攪拌されず下に落ちていくため、細霧を拡散させることができなかったことを意味する。従って、この場合も温室の冷房方法としては効果が十分とはいえなかった。なお細霧停止後、最も気温が低下した部分と最も低下しなかった部分の差は2度あった。細霧発生をさらに長くする場合には、この気温差はさらに大きくなり、気温分布はさらに不均一になってしまう。
【0036】
これらに対し、図4の最上段の細霧ノズルが上向きに細霧を発生させ、かつ、送風機を二個用いた場合においては、低温領域の狭小化は観測できず、むしろ時間経過に伴い拡大していることが確認できた。また、この場合の平均気温の時間変化は、送風機を配置していない場合と比べて小さく、全体の気温をより均一により低下させていたことが分かる。即ち、この方法は温室の冷房方法として効果が高いことが分かった。
【0037】
なお、図4の上から二段目の細霧ノズルが上向きに細霧を発生させ、送風機を1個用いた場合においては、細霧ノズル周辺で気温の低下が見られたものの送風機2個を用いた場合と比べて気温が低下した領域は狭かった。これは本実施例で使用した送風機の流量が足りずに空気が十分に攪拌されず、細霧を拡散させる効果が少なかったためである。
【0038】
そして、本実験結果におおける細霧を発生させた量(噴霧量(A))と、蒸発しなかった細霧の量(未蒸発細霧量(B))、及び蒸発した細霧の量((A)-(B))、蒸発率(%)、(((A)-(B))/(A)×100)は以下の表1のとおりであった。なお表1において、未蒸発の細霧量とは細霧発生停止2分後に回収して求めたものである。
【0039】
【表1】
JP0004431789B2_000002t.gif

【0040】
表1の送風機2個における結果に着目すると、73gの細霧を発生させたにもかかわらず、殆どの細霧が蒸発しており、96%と蒸発率が非常に高いことが分かる。
また、二段目の送風機が1個の場合の例においても、76.4gの細霧を発生させたにもかかわらず86%もの細霧が蒸発し、高い蒸発率であることが分かる。もちろん、この場合においても1m下では殆どの細霧が蒸発し、地面に付着した水滴は極めてわずかであった。
【0041】
一方、最下段目の送風機がなく斜め上方に細霧を発生させた場合において、最上段、第二段とほぼ同じだけの細霧を発生させたが、47.6gと65%程度しか蒸発しなかった。このとき、地面に水滴が多量に付着したことが確認できた。なお、三段目の場合、細霧ノズルは上向きであるが送風機がない場合においては、最上段、第二段とほぼ同じだけの細霧を発生させたが、44.5gと60%程度しか蒸発せず、むしろ斜め上方に向けた場合よりも蒸発率は低かった。この場合においても地面に水滴が付着していることが確認できた。
【0042】
以上、比較例に対し、本実施例の冷房装置は1.5倍もの蒸発率を有する、即ち冷房効率が高く、しかも均一に気温を低下させることができものでることがわかった。
【0043】
次に、図5を用いてこの実施例で述べた冷房装置を用いた温室の適用について説明する。図5は温室の一例である温室について説明するものである。図5の温室7は、天窓5及び喚起窓6が空けられているが、温室7の外からの外乱を抑えるべく側面や天井をビニール等で仕切られた構造となっている。そしてこの温室7の内部には、水を送るポンプ8と、このポンプが送った水を導く配管2と、この配管2に接続された複数の細霧ノズル1と、これら細霧ノズル1のそれぞれの下側しかも近傍に配置される送風機3を複数有して構成されている。なお配管2は複数の畝に形成される作物群落4に対応して枝分かれ構造となっており、その枝の各々に細霧ノズル1とそれに対応して配置される送風機3を有している。また、配管2は、細霧ノズル1より下に細霧が降下する可能性があることから植物群落上面より1m以上設けると効果的である。但し、本実施例における冷房方法では、1mあればほぼ細霧を蒸発させることができるため、従来よりも低く設置し、冷房装置のメンテナンス等を行いやすくすることもできる。以上、この温室7は、本実施例の細霧ノズル1と送風機2とを対で用いているため、図4の実験結果で示すとおり、温室7のいずれの場所においても均一に気温低下を実現することができる。特に、本実施例の冷房装置では間欠運転方法を採用することなく冷房ができるため、未蒸発の細霧が水として植物等に付着するのを防ぎ、気温の急激かつ幅の大きな時間変動を極力抑えることができ、かつ、温室7の内部で均一な冷房を実現することができる。なお、本冷房装置は1個の細霧ノズルによって冷房できる範囲が広いため、細霧ノズルの数を減らすことでコスト削減にも大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例を示す概略図である。
【図2】本発明の一比較例を示す図である。
【図3】従来の細霧ノズルの配置を示す概略図である。
【図4】本発明および比較例の細霧噴霧停止後の気温の気温分布を示す図である。
【図5】本発明の一実施例について実際の温室に適用した場合を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1…細霧ノズル、2…配管、3…送風機、4…作物群落、5…天窓、6…換気窓、7…温室、8…ポンプ、A…噴霧方向、B1、B2…乱流、R…鉛直線と細霧とのなす角、W…細霧

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4