TOP > 国内特許検索 > ツビフェラールAおよびツビフェラールB > 明細書

明細書 :ツビフェラールAおよびツビフェラールB

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4465466号 (P4465466)
公開番号 特開2005-306838 (P2005-306838A)
登録日 平成22年3月5日(2010.3.5)
発行日 平成22年5月19日(2010.5.19)
公開日 平成17年11月4日(2005.11.4)
発明の名称または考案の名称 ツビフェラールAおよびツビフェラールB
国際特許分類 C07C  59/74        (2006.01)
A61K  31/185       (2006.01)
A61K  31/343       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
C07D 307/93        (2006.01)
FI C07C 59/74
A61K 31/185
A61K 31/343
A61P 35/00
A61P 43/00 105
C07D 307/93
請求項の数または発明の数 2
全頁数 18
出願番号 特願2004-244657 (P2004-244657)
出願日 平成16年8月25日(2004.8.25)
優先権出願番号 2004087334
優先日 平成16年3月24日(2004.3.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年3月2日(2007.3.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】石橋 正己
【氏名】鎌田 和明
審査官 【審査官】小川 由美
参考文献・文献 天然有機化合物討論会講演要旨集,2004年 9月 1日,46,299-304
Tetrahedron,2004年10月25日,60(44),9835-9839
Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1: Organic and Bio-Organic Chemistry,1979年,(1),7-14
調査した分野 C07C 59/74
C07D 307/93
CA/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記(1)式で示されることを特徴とするツビフェラールA。
【化1】
JP0004465466B2_000009t.gif

【請求項2】
下記(2)式で示されることを特徴とするツビフェラールB。
【化2】
JP0004465466B2_000010t.gif
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物であるツビフェラールAおよびツビフェラールBに関する。
【背景技術】
【0002】
21世紀となった現在でも、地球上の人口の6割以上の人は、ふだんの病気や怪我の治療に、身近な自然の中にある植物や菌類(キノコなど)あるいはそれ由来の生薬を用いていると言われている。また、一方では、現在病院や家庭で使われている医薬品の中には、もともと天然の動植物、微生物などの体の中に含まれる化学成分として見つけ出されたもの(以下、「天然物」と言う)が沢山ある。また、天然の化学成分を原形として化学構造に改良を加えることにより、元の天然物よりも更に有効で安全な合成化合物も数多く開発されている。このように新しい有用な天然物を探すという研究(以下、「ものとり」と言う)は、薬を創り出す出発点とも言うべき大変重要なことと位置づけることができる。
【0003】
しかしながら、地球上の全ての生物種の中で、これまでに有効成分を探すための材料として研究されたものは未だ10%にも満たないと言われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑み、天然の動植物、微生物などに含まれる新規の化学成分を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、人間と地球環境との共存・保全の立場を十分尊重しつつ、未利用資源の開発と有効成分の探索研究に力を注いで、野外採取した変形菌の子実体であるコモチクダホコリ(Tubifera dimorphotheca)の成分研究を行い、新規化合物を見出した。なお、今までに野外採取した変形菌の子実体であるコモチクダホコリの成分研究はなされていなかった。
【0006】
かかる本発明の第1の態様は、下記(1)式で示されることを特徴とするツビフェラールAにある。
【0007】
【化1】
JP0004465466B2_000002t.gif

【0008】
本発明の第2の態様は、下記(2)式で示されることを特徴とするツビフェラールBにある。
【0009】
【化2】
JP0004465466B2_000003t.gif

【発明の効果】
【0010】
本発明は、コモチクダホコリ(Tubifera
dimorphotheca)由来の新規化合物であるツビフェラールAおよびツビフェラールBを提供することができる。この新規化合物は有用な生物活性が期待でき、大いに有用な医薬品となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明の新規化合物は、上記(1)式で表されるツビフェラールA(Tubiferal A:以下「TD-1」とも略称する)および上記(2)式で表されるツビフェラールB(Tubiferal B:以下「TD-2」とも略称する)である。このツビフェラールAおよびツビフェラールBは、コモチクダホコリから単離することにより製造することができる。例えば、野外採取した変形菌の子実体であるコモチクダホコリから90%メタノールおよび90%アセトンを溶媒として成分を抽出し、分画することにより得ることができ、その方法は限定されない。また、合成してもよい。
【0013】
本発明のツビフェラールAおよびツビフェラールBは、細胞毒性物質として利用できる。テルペノイド系天然物は、ヒト子宮頸がんHeLa細胞やマウス白血病細胞P388等の腫瘍細胞に対する細胞毒性を示すものが多く、特にツビフェラールAの場合分子内にラクトン構造をもつテルペノイドであり、しかも従来前例のない新規化学構造を有するため、新規細胞毒性物質としての有用性が期待される。
【0014】
以下、本発明について実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0015】
(実施例)
野外採取したコモチクダホコリ(3.7g)を、90%メタノール(100mL)で2回、続いて90%アセトン(100mL)で1回、ホモジナイザーで粉砕しながら、室温で約10分ずつ抽出し、溶媒を留去して、抽出物305.0mgを得た。この抽出物を20%メタノール(約10mL)に溶解し、下記の条件でカラムクロマトグラフィーにかけ、各成分を分取した。なお、展開溶媒は(a)~(f)の順に流した。
【0016】
<ODS flash c.c.>
分離用担体:ODS(オクタデシルシラン)、直径20mm×長さ200mm
展開溶媒
(a)MeOH/HO=1/4
(b)MeOH/HO=1/1
(c)MeOH/HO=4/1
(d)MeOH/HO=1/0
(e)CHCl/MeOH=1/1及び1/0
(f)CHCl/Acetone=1/1及び0/1
【0017】
各展開溶媒で分取された成分1A~1Fについて、ODS TLC,90%MeOHを用いて薄層クロマトグラフィー(TLC)を行った。TLC結果から判断して新規化合物が含まれている可能性のあった成分1C((c)の溶離液で分取された成分)20.9mgのうち16.5mgをメタノールに溶解し、さらに下記の条件でHPLCにかけた。
【0018】
<Prep. ODS-HPLC>
カラム:Develosil ODS-HG-5(野村化学社製、直径20mm×長さ2500mm)
移動層:75%MeOH
流速:8.0mL/min
カラム温度:室温
検出波長:254nm
【0019】
これにより、4番目の成分(保持時間Rt32.0分:図1中3Dと記載)としてTD-1(ツビフェラールA)を0.8mg得た。また、分取した1番目の成分(保持時間Rt7.0~11.0分:図1中3Aと記載)9.9mgをメタノールに溶解し、さらに下記条件でHPLCにかけた。
【0020】
<Prep. ODS-HPLC>
カラム:Develosil ODS-HG-5(野村化学社製、直径10mm×長さ250mm)
移動層:65%MeOH
流速:3.5mL/min
カラム温度:室温
検出波長:254nm
【0021】
これにより、2番目の成分(保持時間Rt13.0分:図1中4Bと記載)としてTD-2(ツビフェラールB)を1.2mg得た。図1に分画フロー及び各分取成分の収量を示す。なお図1において、分取した成分を分取した順に左から記載し、1A~1F、3A~3F、4A~4Dという番号を付した。
【0022】
得られたTD-1およびTD-2について、TLCのRf値を測定した。なお測定には、ODS TLC,90%MeOHを用いた。その結果Rf値は、ツビフェラールAが0.39で、ツビフェラールBが0.64であった。この結果から、ツビフェラールBはツビフェラールAよりも極性が高い化合物であることがわかった。
【0023】
また、得られたTD-1およびTD-2について、HRFAB-MS、比旋光度、メタノール中でのUV吸収スペクトル、IRを測定した。各結果を外観とともに表1に、TD-1のメタノール中でのUV吸収スペクトル(測定溶液の濃度:1.24×10—5mol/L)を図2に、TD-2のメタノール中でのUV吸収スペクトル(測定溶液の濃度:2.0×10—5mol/L)を図3に示す。
【0024】
【表1】
JP0004465466B2_000004t.gif

【0025】
次に、ツビフェラールAの構造解析を行った。具体的には、H NMR,13C NMR、H-H COSY、HMQCスペクトル、およびHMBCスペクトルを測定することにより、図5に示した平面構造を決定した。表2に、H NMRおよび13C NMRスペクトルの化学シフト値を、図4にH NMRスペクトルを示す。なお、表2のNo.は、(1)式に付した番号に対応する。また、図5に、平面構造、二次元NMRスペクトルの手法であるH-H COSYスペクトルおよびHMBCスペクトルにおいて観測された相関データを示す。
【0026】
【表2】
JP0004465466B2_000005t.gif

【0027】
また、二次元NMRスペクトルの手法の一つであるNOESYスペクトルを測定した。図6に、NOESYスペクトルにおいて観測された相関データを示す。
【0028】
上記のデータから、相対立体配置を含めたツビフェラールAの化学構造を下記(1)式のように決定した。この結果、9,10-seco-cycloartane骨格を有する化合物であることが明らかとなった。
【0029】
【化3】
JP0004465466B2_000006t.gif

【0030】
次に、ツビフェラールBの構造解析を行った。具体的には、H NMR,13C NMR、H-H COSY, HMQCスペクトル、およびHMBCスペクトルの測定をした。表2に、H NMRおよび13C NMRスペクトルの化学シフト値を、図7にH NMRスペクトルを示す。なお、表2のNo.は、(2)式に付した番号に対応する。
【0031】
また、ツビフェラールBの測定結果をツビフェラールAと比較すると次の知見が得られた。
(i)UVスペクトルパターンおよび一次元NMRスペクトルがツビフェラールAのものと類似していたことから、ツビフェラールBはツビフェラールAの類縁体であることが考えられた。
(ii)ツビフェラールBの分子式がツビフェラールAよりもHOが1分子増えたことと、ツビフェラールAよりもツビフェラールBの極性が高くなっていることから、ツビフェラールAのラクトン部分が開環し、カルボン酸と水酸基になったのではないかと推測された。
【0032】
この知見及び各種NMRスペクトルの解析によって導き出された部分構造より、ツビフェラールBの平面構造を図8および下記式(2)のように推定した。なお、図8は、ツビフェラールBの平面構造、H-H COSYスペクトルおよびHMBCスペクトルにおいて観測された相関データを示す図である。
【0033】
【化4】
JP0004465466B2_000007t.gif

【0034】
また上記の知見を確かめるべく、ツビフェラールAを2NのKOHにて室温(25℃)で終夜(約12時間)撹拌し、TLC分析を行ったところ、ツビフェラールBの生成を確認でき、上記の知見の信頼性が極めて高いことを確認した。なおTLC分析の条件は、各展開溶媒で分取された成分1A~1Fについて行った条件と同じくODS TLC,90%MeOHとした。
【0035】
また、上記ツビフェラールA及びBの効果を確かめるべく、これらのヒト腫瘍細胞に対する細胞毒性試験を行った。
細胞毒性試験は、細胞を培養した後細胞生存率をMMT法によって決定した。なおここにおいて細胞の培養は、96穴プレート1ウェルあたり細胞195μlを播採し、これをCOインキュベータ内で5%CO-95%空気の雰囲気下、37℃で24時間培養し、サンプル溶液5μl加え、COインキュベータ内で更に37℃で72時間培養することにより行った。
またこの試験において用いた腫瘍細胞はビンクリスチン耐性のヒト上皮癌細胞KB/VJ-300、ヒト前立腺癌細胞LNCaPであり、かつそれらはいずれも10%ウシ胎児血清を含むMEM培地中で維持されているものを用いた。なお上記96穴プレートに播採した細胞の濃度は、KB/VJ-300細胞の場合1.1×10cells/ml、CNCaP細胞の場合2×10cells/mlとした。また本試験は、KB/VJ-300細胞に対しては、100ng/mlのビンクリスチン存在下(VCR(+))及び非存在下(VCR(-))で行っている。本実験の陽性対照としてベラパミル、シスプラチンを用いた。この結果を表3に示す。
【表3】
JP0004465466B2_000008t.gif
上記の結果から、ツビフェラールAは、ビンクリスチン耐性のKB/VJ-300に対し、ビンクリスチン存在下においてIC50値2.7mlで細胞毒性を示した。
以上、この結果によりツビフェラールAがビンクリスチン耐性克服作用を持つことを示すことが確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例の分画フロー及び各分取成分の収量を示す図である。
【図2】ツビフェラールAのメタノール中でのUV吸収スペクトルの測定結果である。
【図3】ツビフェラールBのメタノール中でのUV吸収スペクトルの測定結果である。
【図4】ツビフェラールAのH NMRスペクトルの測定結果である。
【図5】ツビフェラールAの平面構造、H-H COSYスペクトル及びHMBCスペクトルにおいて観測された相関データを示す図である。
【図6】ツビフェラールAのNOESYスペクトルにおいて観測された相関データを示す図である。
【図7】ツビフェラールBのH NMRスペクトルの測定結果である。
【図8】ツビフェラールBの平面構造、H-H COSYスペクトルおよびHMBCスペクトルにおいて観測された相関データを示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7