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明細書 :Gefitinib、及び類薬に感受性を示す細胞・組織におけるDNAの簡便検査方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4528967号 (P4528967)
公開番号 特開2006-223137 (P2006-223137A)
登録日 平成22年6月18日(2010.6.18)
発行日 平成22年8月25日(2010.8.25)
公開日 平成18年8月31日(2006.8.31)
発明の名称または考案の名称 Gefitinib、及び類薬に感受性を示す細胞・組織におけるDNAの簡便検査方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 6
全頁数 10
出願番号 特願2005-038796 (P2005-038796)
出願日 平成17年2月16日(2005.2.16)
審査請求日 平成19年3月2日(2007.3.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】有吉 範高
審査官 【審査官】冨永 みどり
参考文献・文献 N.Eng.J.Med.,2004年,Vol.350,No.21,p.2129-2139
Science,2004年,Vol.304,No.5676 ,p.1497-1500
呼吸,2004年,Vol.23,No.10,p.810-814
調査した分野 C12N 15/00-15/90
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
SwissProt/PIR/GeneSeq
PubMed
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号1記載の塩基配列からなるプライマー、配列番号2記載の塩基配列からなるプライマー及び配列番号3記載の塩基配列からなるプライマー、を含んでなるgefitinib及びEGFRを標的分子としたgefitinibの類薬応答性遺伝子変異検出用プライマーセット。
【請求項2】
配列番号1記載の塩基配列からなるプライマー、配列番号2記載の塩基配列からなるプライマー及び配列番号3記載の塩基配列からなるプライマーを含むプライマーセットを含む反応溶液を用いてPCRを行う工程、
前記PCRを行う工程により得たPCR産物に対して電気泳動を行う工程、を有する
gefitinib及びEGFRを標的分子としたgefitinibの類薬応答性遺伝子変異の判定方法。
【請求項3】
配列番号4記載の塩基配列からなるプライマー及び配列番号5記載の塩基配列からなるプライマーを含んでなるgefitinib及びEGFRを標的分子としたgefitinibの類薬応答性遺伝子変異検出用プライマーセット。
【請求項4】
配列番号4記載の塩基配列からなるプライマー、及び、配列番号5記載の塩基配列からなるプライマーを含むプライマーセットを含む反応溶液を用いてPCRを行う工程、
前記PCRを行う工程により得たPCR産物に対して制限酵素を用いてPCR産物を切断する工程、を有するgefitinib及びEGFRを標的分子としたgefitinibの類薬応答性遺伝子変異の判定方法。
【請求項5】
前記制限酵素は、EaeI、またはそのイソシゾマーであることを特徴とする請求項記載のgefitinib及びEGFRを標的分子としたgefitinibの類薬応答性遺伝子変異の判定方法。
【請求項6】
前記制限酵素は、PvuII、またはそのイソシゾマーであることを特徴とする請求項記載のgefitinib及びEGFRを標的分子としたgefitinibの類薬応答性遺伝子変異の判定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、gefitinib、及び類薬に感受性を示す細胞・組織におけるDNAの検査方法に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
非小細胞肺癌(non-small cell lung carcinoma、NSCLC)の治療に用いられる医薬品gefitinibは、2002年7月に世界に先駆けて我が国で最初に承認された分子標的薬剤であり、本邦では、2004年12月末までに推定8万6千人以上が使用した。しかし、間質性肺炎等の重篤な肺障害の副作用が現れた患者数は報告されただけで1473人に上り、そのうち588人が死亡するに至っている。なお、患者3000人を対象とした市販後調査では、日本におけるこの副作用の発症率は突出して高いとされ、米国の7倍から20倍とも言われている。
【0003】
しかしながら本剤は、奏効する患者には劇的な効果を示し、極めて有効な薬剤であることも事実である。したがって、gefitinibに応答性を示す患者(レスポンダー)を事前に予測することが可能となれば、重篤な副作用発生の危険を冒しながら効かない患者(ノンレスポンダー)に対して投与することは避けられ、レスポンダーのみに投薬する、即ち適正使用が実現できると考えられる。
【0004】
最近、gefitinibが劇的に奏効した患者のほぼ全例において、本剤の標的分子であるEGFRのキナーゼドメインをコードする遺伝子領域とその近傍に特徴的な体細胞変異が認められ、本剤が奏効しなかった患者にはそれら体細胞変異が認められなかったことが報告されている。これら遺伝子変異を有するEGFRは、野生型に比べ活性が上昇しており、薬剤がより有効に作用するものと考えられている。この現象は、海外における複数の異なる医療機関から報告されているが、観察された症例数は未だ十分とは言えない。厚生労働省は、2005年1月20日に検討会を開催し、現時点において使用を制限する等の措置を講じる必要性は乏しく、引き続き安全対策をとりつつ適正使用を進めることが適当としながら、EGFR遺伝子変異と本剤の治療成績についての研究を早急に進めるべき、との見解を発表している。特に、日本人においては、特定の変異の頻度が欧米人に比べて著しく高いとの報告があり、本邦における検証が急務である。
【0005】
Gefitinibに応答性を示す患者において見出された体細胞変異のうち、その大部分はexon19中の塩基欠失型変異と、exon21中の一塩基置換によるL858R及びL861Qのミスセンス変異であり、これら3種類の遺伝子変異を検出するだけで、既に報告されているgefitinibに応答性を示す患者症例における体細胞変異の9割以上が説明可能と考えることができる。
【0006】
さらに本邦では未だ承認されていないが、海外ではすでに承認されている薬剤で、本剤と同様にEGFRを標的分子とした類薬(例えば、erlotinib)も、同じ変異を有する患者で有効であることが報告されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記変異を検出する方法は、現時点において患者腫瘍組織の細胞より抽出したゲノムDNAから特異的に増幅したEGFR遺伝子における当該領域の塩基配列(シーケンス)解析が一般的であって、簡便に検査できるキットは世界的にも存在しない。
【0008】
しかも、上記シーケンス解析では、自動解析装置に掛けるまでに手間のかかる操作及びコストがかかるという課題がある。具体的にはおよそ以下の操作が必要となる。
【0009】
(1)PCRによるEGFR遺伝子の特異的増幅(2~3時間)
(2)電気泳動、或いはスピンカラム等によるPCR産物の精製とシーケンス反応の鋳型となる精製PCR産物の定量操作(1~1.5時間)
(3)高価な専用試薬とシーケンス用プライマーによるシーケンス反応(3時間)
(4)シーケンス反応生成物の濃縮、bufferへの再溶解と熱変性(0.5時間)
(5)自動シーケンサーへのセット、自動解析(1時間/1サンプル)
【0010】
以上の全操作を連続的に行った場合、要する時間は最短で7時間程度ではあるが、自動シーケンサーにセットするまでの操作の自動化は現時点では困難であり、かなりの人手が必要である。また、シーケンス解析は、試料の調製具合などにより、必ずしも明確に判読できる結果が得られるとは限らない。特に腫瘍組織のようなヘテロな細胞集団では、採取した組織で変異を有する細胞が小集団である場合は、electropherogram上のピークにおいて、ノイズとの判別が困難な場合が多い。加えて、DNAシーケンサーを用いるため、シーケンサーの操作に熟練した者が実施する必要がある。
【0011】
以上、本発明は、上記課題に着目し、gefitinib、および類薬の感受性を示す組織におけるDNAの簡便な検査方法及びそれに用いられるプライマーセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明者は、一般的なサーマルサイクラーと電気泳動装置を用いて実施可能な方法を開発した。つまり具体的には以下の手段を採用する。
【0013】
まず、第一の手段として、配列番号1記載の塩基配列からなるプライマー、配列番号2記載の塩基配列からなるプライマー、配列番号3記載の塩基配列からなるプライマーの少なくともいずれかを用いることとし、更に望ましくは、配列番号1記載の塩基配列からなるプライマー、配列番号2記載の塩基配列からなるプライマー、及び、配列番号3記載の塩基配列からなるプライマーを有するプライマーをセットとする。これらプライマーを用いることでEGFR遺伝子のexon19の増幅が可能となり、しかも前記のプライマーセットを用いれば、PCR、及び電気泳動を行なうことで後述の遺伝子変異の判定が実現できる。
【0014】
また、第二の手段として、gefitinib、および類薬の応答性遺伝子変異の判定方法において、配列番号1記載の塩基配列からなるプライマー、配列番号2記載の塩基配列からなるプライマー、及び、配列番号3記載の塩基配列からなるプライマーを含む反応溶液を用いてPCRを行う工程、PCRを行う工程により得られたPCR産物に対して電気泳動を行う工程、とする。これにより、上記の効果に加え、ごく一般的なサーマルサイクラーと電気泳動装置があれば判定が可能となるため、人手及び判別・機器操作の熟練についての負担の軽減が図れ、要する時間もシーケンス解析に比べ極めて短縮できる。更に、コストの面でも遥かに安価となる。
【0015】
また、第三の手段として、配列番号4記載の塩基配列からなるプライマー、配列番号5記載の塩基配列からなるプライマーの少なくともいずれかを用いることとし、更にのぞましくは配列番号4記載の塩基配列からなるプライマー、及び、配列番号5記載の塩基配列からなるプライマーを含んでなるプライマーをセットとする。これらプライマーを用いることでEGFR遺伝子のexon21の増幅が可能となり、しかも前記のプライマーセットを用いれば、PCR、及び制限酵素を用いたPCR産物の切断を介して後述の遺伝子変異の判定が実現できる。
【0016】
また、第四の手段として、gefitinib、および類薬の応答性遺伝子変異の判定方法において、配列番号4記載の塩基配列からなるプライマー、及び、配列番号5記載の塩基配列からなるプライマーを含む反応溶液を用いてPCRを行う工程、前記PCRを行う工程により得られたPCR産物に対して制限酵素処理を行ってPCR産物の切断を行なう工程、を有するものとし、望ましくは制限酵素としてEaeI、あるいはそのイソシゾマー、PvuII、あるいはそのイソシゾマーの少なくともいずれかを用いることが望ましい。これにより、上記の効果に加え、ごく一般的なサーマルサイクラー、電気泳動装置と恒温槽を用いることで判別が可能となり、人手及び判別・機器操作の熟練についての負担の軽減が図れ、要する時間ももシーケンス解析に比べ極めて短縮できる。更に、コストの面でも遥かに安価となる。なお、上述の第一乃至第三及び本手段におけるプライマーは、同一の増幅条件にてPCRを行うよう設計されているため、PCRで増幅する場合、上記効果に加え、各反応を同時に実施することができるという利点もある(即ち3種類の変異を判定するためには、exon19用とexon21用の2本のPCRチューブを同じサーマルサイクラーにセットするだけで良い)。
【発明の効果】
【0017】
以上、gefitinib、および類薬の感受性を示す組織におけるDNAの簡便検査方法、及びそれに用いられるプライマーセットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例】
【0019】
(exon19の塩基欠失型変異検出法)
exon19の塩基欠失型変異には、いくつかの欠失パターンが認められるが、既知のその全てに共通しているものは、コドン747から750までのコアとなる4アミノ酸残基LREA(ロイシン、アルギニン、グルタミン酸、アラニン)の欠失である。従って、この4アミノ酸残基の欠失を特異的に検出するように以下のプライマーを設計した(配列番号1~3参照)。
【0020】
Ex19F :5’-ATCGCTGGTAACATCCAC-3’
Ex19midR :5’-GGAGATGTTGCTTCTCTTAATTC—3’
Ex19R :5’-TGAGGTTCAGAGCCATG-3’
【0021】
そして、上記3種類のプライマーを、10×PCR buffer(MgCl含有)2.5μL、dNTPs(2.5mM each)2.0μL、Ex19Fプライマー (20μM)0.5μL、Ex19midR、及びEx19Rプライマー(各10μM)0.5μL、Taq DNApolymerase(Takara Taq 5unit/μLを使用)1unit、template DNA0.5~1.0μL(10~50ng)、残りは水とする25μLの反応溶液を調製してPCRを行った。なお、MgCl、dNTPs、各プライマーの濃度、鋳型となるゲノムDNAの量は適宜調節が可能である。またTaq DNApolymeraseも他社製のものに変更が可能である。
【0022】
PCRの条件としては、94℃3minの熱変性の後、95℃20secのサイクル熱変性、56℃30secのアニーリング、72℃45secの伸長反応を35~40サイクル程度行う。実施例では35サイクル行なった。
【0023】
PCR後の産物は、その適量(3~5μL程度)を3%(W/V)アガロースゲル電気泳動にて泳動する。実施例では5μLを泳動した。野生型ホモ接合体とヘテロ接合体の泳動パターンは泳動時間が短かすぎる際にはほぼ同じように見え、誤判定の原因となるので、50V低電圧で泳動する場合は少なくとも15分後に判定を行なうことが極めて望ましい(100Vではもっと短くても良い。)
【0024】
図1に、変異を起こした細胞集団と変異を起こしていない細胞集団がほぼ等量含まれており、また染色体の数に異常が起こっていない状態において、野生型ホモ接合体(w/w)、ヘテロ接合体(w/del)及び変異型ホモ接合体(del/del)をそれぞれ代表する検体を判定した結果を示す。なお図1(A)はそれぞれの遺伝子型に対応するダイレクトシーケンスの結果を、図1(B)は今回開発した検査法による判定結果をそれぞれ示している。
【0025】
図1(A)の結果では、ヘテロ接合体(w/del)において明瞭なelectro- pherogramが得られていないことが分かる。ダイレクトシーケンスにおいては、理論上、ヘテロ接合体の場合は、図面左端から塩基欠失部位(野生型ホモ接合体で黒四角で囲んだ12塩基領域)までは単一の明瞭なピークパターンを示すはずであり、実際、自動解析時のピーク同定では、野生型ホモ接合体及び変異型ホモ接合体とほぼ同じ塩基がアサインされている。一方、欠失部位以降はフレームシフトのため、理論上、バラバラのピークパターンを示すはずであり、実際そうなっている。しかし、この実施例によると、欠失部位以前も明瞭な解析結果が得られていない。これは、PCR産物がヘテロデュープレックスを生成することによるシーケンス反応の妨害が主な原因と考えられ、一般の施設ではシーケンス反応の失敗か、変異の存在を意味する結果であるかの判別が付きにくく、判定結果を下すことは容易ではない(明確な結論を得るためには、PCR産物のサブクローニングとさらなるシーケンスが必要である)。
【0026】
これに対し、図1(B)で示す本検査法での判定結果によると、野生型ホモ接合体(w/w)では予想される235bpのメインバンドと、164bpのバンド、更には、これらバンドよりも高分子量の位置にあるバンドが出現する。この高分子量のバンドは上記2種類のPCR産物のヘテロデュープレックスに起因するバンドであって、無関係のゲノムDNA領域から増幅した非特異的な産物ではない。なお、ヘテロ接合体(w/del)においてもこのヘテロデュープレックスに起因するバンドが生じるが、更に、野生型ホモ接合体のメインバンドのやや上に別のヘテロデュープレックスに起因する新たなバンドが出現する。このバンドは、野生型遺伝子から得られる235bpのバンドと、図1(B)の例では変異型遺伝子から得られる223bpのバンドから生じるヘテロデュープレックスである。また、変異型ホモ接合体(del/del)では、欠失した塩基数だけ短いバンドが一本のみ検出されている(図1(B)では223bpのバンドのみ検出されている)。
【0027】
以上、本検査法は、2本のプライマーを用いる通常のPCRではなく、3本のプライマーを同時に用いたPCRを行った後に、更にその増幅産物同士がヘテロデュープレックスを生成する点に着目して開発した点が主たる特徴であって、これにより野生型ホモ接合体とヘテロ接合体の判別を可能とする。なお、腫瘍組織から抽出したDNAでは、ヘテロ接合体で検出されることがほとんどであると報告されているが、変異を起こした細胞集団と変異を起こしていない細胞集団が採取した組織内に等量に含まれることはむしろ稀である。その場合、シーケンス解析によって、欠失型変異の存在をelectrophero- gramから判定するのは更に至難の技と考えられるが、本判定法はヘテロデュープレックスの出現を検出する方法であるため、容易に判定が可能である。
【0028】
(exon21、L858Rをもたらす一塩基置換変異の検出法)
既に報告されているexon21の変異では、コドン858のロイシンがアルギニンに置換する一塩基置換型変異(T>G)が最も多く、この変異は欧米人に比べ日本人で著しく多いとされている。この塩基置換は制限酵素EaeI、あるいはそのイソシゾマーの認識配列(Y/GGCCR)の消失を招くため、変異部位を挟んでPCRを行い、制限酵素での切断で変異を検出できるよう、以下のプライマーを設計した(配列番号4、5参照)。
【0029】
Ex21F:5’-TGGATCAGTAGTCACTAACG-3’
Ex21R:5’-CAATACAGCTAGTGGGAAGG-3’
【0030】
そして、上記2種類のプライマーを、10×PCR buffer(MgCl含有)2.5μL、dNTPs(2.5mM each)2.0μL、Ex21Fプライマー及びEx21Rプライマー(各10μM)0.5μL、Taq DNApolymera—se(Takara Taq 5 unit/μLを使用)1unit、templa—te DNA0.5~1.0μL(10~50ng)、残りは水とする25μLの反応溶液を調製してPCRを行った。なお、MgCl、dNTPs、各プライマーの濃度、鋳型となるゲノムDNAの量は適宜調節が可能である。またTaq DNApolymeraseも他社製のものに変更が可能である。なおPCRの増幅条件は上記exon19の増幅と同じ条件とした。
【0031】
PCR後の産物(376bp)は、その適量(1~5μL程度)を制限酵素で切断する。実施例では1μLを以下の切断反応に用いた。典型的な切断反応液の組成として、PCR産物1.0μL、buffer(NEB1を使用)1.5μL、水12.0μL、EaeI(Takara)0.5μLを用いた。これを37℃で30分~一夜切断し、その全量を3%(W/V)アガロースゲル電気泳動にて泳動する(なお、EaeIを制限酵素として用いた場合、切断反応は極めて速やかに進行するため、約30分で判定は可能となる)。また、泳動時間は50V低電圧の場合、10分で可能である。切断反応液の組成は、増幅産物の量などによって適宜調節・変更が可能であり、泳動時間・電圧等も変更可能である。さらに、今回は制限酵素として、EaeIを用いたが、同じ認識配列(Y/GGCCR、YはCかT、RはAかGを示す)を共有する制限酵素(イソシゾマー)、例えばCfrIなどを使用することも可能である。
【0032】
図2に、変異を起こした細胞集団と変異を起こしていない細胞集団がほぼ等量含まれており、また染色体の数に異常が起こっていない状態において、野生型ホモ接合体(w/w)、ヘテロ接合体(w/mt)及び変異型ホモ接合体(mt/mt)の検体を判定した結果を示す。なお図2(A)はそれぞれの遺伝子型に対するダイレクトシーケンスの結果を、図2(B)は今回開発した検査法による判定結果をそれぞれ示している。
【0033】
図2(B)で示す本検査法での判定結果によると、野生型ホモ接合体(w/w)では
本酵素により249bpと127bpに切断されることが確認できるが、変異型ホモ接合体では切断されず376bpのままであり、ヘテロ接合体では、これら3種類のバンド全てが検出されていることが分かる。
【0034】
以上、本検査法では、上記設計した2本のプライマーを用いてPCRを行った後に、制限酵素によって変異部位を含む領域を切断することにより、野生型ホモ接合体、ヘテロ接合体、及び変異型ホモ接合体の検体の判別が可能となった。
【0035】
(exon21、L861Qをもたらす一塩基置換変異の検出法)
Exon21においてアミノ酸置換をもたらす既知の変異のうち、もう一種類は、コドン861のロイシンがグルタミンに置換する一塩基置換型変異(T>A)である。この塩基置換は、制限酵素PvuIIの認識配列(CAG/CTG)の出現を招くため、変異部位を挟んでPCRを行い、制限酵素での切断で変異を検出することができる。変異の部位が上記コドン858に近接しているため、L858R変異を判定するために増幅したPCR産物を利用して、制限酵素をPvuIIに変更するだけで判定が可能となる。今回は制限酵素として、PvuII(Takara)を用いたが、そのイソシゾマー、例えばBavIやDmaIなどを使用することも可能である。
【0036】
本検査において使用するプライマー、反応溶液、反応条件については上述のexon 21、L858Rをもたらす一塩基置換変異の検出法と全く同じくすることができる。ただし、PvuIIを制限酵素として用いる場合、切断反応が比較的緩やかであるため、完全な切断には7時間程度を要するが、陽性対象と同時に行なえば30分の消化でも判定は不可能ではない。しかし、変異を起こした細胞集団と変異を起こしていない細胞集団が均等に含まれていない場合、誤判定を避けるためには切断反応に充分な時間(理想的には一夜)をかけることが望ましい。
【0037】
図3に、変異を起こした細胞集団と変異を起こしていない細胞集団がほぼ等量含まれており、また染色体の数に異常が起こっていない状態において、野生型ホモ接合体(w/w)、ヘテロ接合体(w/mt)及び変異型ホモ接合体(mt/mt)の検体を判定した結果を示す。なお図3(A)はそれぞれの遺伝子型に対するダイレクトシーケンスの結果を、図3(B)は今回開発した検査法による判定結果をそれぞれ示している。
【0038】
図3(B)で示す本検査法での判定結果によると、野生型ホモ接合体(w/w)では切断されず376bpのままであるが、変異型ホモ接合体(mt/mt)では本酵素により259bpと117bpに切断され、また、ヘテロ接合体では、これら3種類のバンド全てが検出されていることが分かる。
【0039】
以上、本検査法では、上記設計した2本のプライマーを用いてPCRを行った後に、制限酵素によって変異部位を含む領域を切断することにより、野生型ホモ接合体、ヘテロ接合体、及び変異型ホモ接合体の検体の判別が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】Exon19の塩基欠失型変異検出法による結果を示す図
【図2】Exon21、L858Rをもたらす一塩基置換型変異の検出法による結果を示す図
【図3】Exon21、L861Qをもたらす一塩基置換型変異の検出法による結果を示す図
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2