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明細書 :パラジウム金属多孔質粒子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4415150号 (P4415150)
公開番号 特開2006-225704 (P2006-225704A)
登録日 平成21年12月4日(2009.12.4)
発行日 平成22年2月17日(2010.2.17)
公開日 平成18年8月31日(2006.8.31)
発明の名称または考案の名称 パラジウム金属多孔質粒子の製造方法
国際特許分類 B22F   9/24        (2006.01)
B01J  23/44        (2006.01)
B01J  37/00        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
B01J  20/02        (2006.01)
FI B22F 9/24 E
B01J 23/44 Z
B01J 37/00 K
B22F 1/00 K
B01J 20/02 A
請求項の数または発明の数 6
全頁数 9
出願番号 特願2005-039806 (P2005-039806)
出願日 平成17年2月16日(2005.2.16)
審査請求日 平成19年3月2日(2007.3.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】長谷川 和幸
【氏名】服部 義之
【氏名】加納 博文
【氏名】金子 克美
審査官 【審査官】米田 健志
参考文献・文献 特開2003-239028(JP,A)
調査した分野 B22F 9/00~9/30
特許請求の範囲 【請求項1】
ポリビニルアルコール又はポリビニルアルコール誘導体からなる乾燥フィルムにパラジウム化合物を分散吸着させ、前記ポリビニルアルコール又は前記ポリビニルアルコール誘導体のヒドロキシル基によって前記パラジウム化合物におけるパラジウムイオンをパラジウム金属に還元させる工程、
加熱により前記乾燥フィルムを消失させる工程、を有するパラジウム金属多孔質粒子の製造方法。
【請求項2】
前記加熱により前記乾燥フィルムを消失させる工程は、還元性又は非酸化性の雰囲気で行われることを特徴とする請求項1記載のパラジウム金属多孔質粒子の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥フィルムにおける前記ポリビニルアルコール又は前記ポリビニルアルコール誘導体は、鹸化度が60%以上であり、更に、数平均分子量が500以上20000以下であることを特徴とする請求項1記載のパラジウム金属多孔質粒子の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥フィルムにおける前記ポリビニルアルコール又は前記ポリビニルアルコール誘導体は、側鎖官能基の60%以上がヒドロキシル基であることを特徴とする請求項1記載のパラジウム金属多孔質粒子の製造方法。
【請求項5】
前記パラジウム化合物は、有機酸塩又は無機酸塩の少なくとも1種以上を含んでなることを特徴とする請求項1記載のパラジウム多孔質金属体の製造方法。
【請求項6】
前記加熱により前記乾燥フィルムを消失させる工程は、400℃以上900℃以下の範囲内の温度で行うことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質のパラジウム金属粒子(以下「パラジウム金属多孔質粒子」という。)及びその製造方法に関する。
【0002】
パラジウムは水素化反応、選択水素化反応、酸化反応、脱水素反応、水素化分解、脱ハロゲン、カルボニレーション、脱カルボニレーション、オレフィンの移動化反応、デオキソ反応、水素化精製など多くの反応に使用されており、触媒、吸着材、ガス吸蔵材、燃料電池用電極材、選択透過膜等の機能材料として有用である。パラジウムを触媒として用いた場合、表面において分解、付加、置換反応が行われ、しかもその反応が律速となるため、比表面積の大きなものほど触媒活性が高くなることが知られており、比表面積の大きなパラジウム金属粒子とすることが望まれている。またこのことは吸着材やガス吸蔵材として用いた場合においても同様である。
【0003】
比表面積の大きなパラジウム金属粒子を得るための従来の方法としては、活性炭粉末や高分子マトリックスに原子、イオン、分子等の化学種を分散させ、高温焼成や水素還元することが行われている。これにより得られたパラジウム触媒は、多孔質な化学種/高分子複合体又は化学種/炭素複合体になっており大きな比表面積を有している(例えば下記非特許文献1参照)。
<nplcit num="1"><text>室井高城、“工業貴金属触媒-実用貴金属触媒の実際と応用-”、幸書房、2003年5月、7頁</text></nplcit>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の方法で製造すると、高温焼成時にパラジウム金属粒子が相互に凝集・焼結しやすく、パラジウム金属粒子の凝集・焼結により多孔質化に制約が加わり、ナノメートルオーダーの微細孔が形成されたパラジウム金属多孔質粒子になりにくいという課題がある。ナノメートルオーダーの微細孔を形成することができれば、比表面積が飛躍的に増大し、格段に優れた性能を期待できる。
【0005】
そこで本発明は、上記課題を鑑み、より高効率なパラジウム金属多孔質粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るパラジウム金属多孔質粒子の製造方法は、ポリビニルアルコール又はポリビニルアルコール誘導体からなる乾燥フィルムにパラジウム化合物を分散吸着させる工程、
加熱によりパラジウム化合物が分散吸着した乾燥フィルムを消失させる工程、を有することを特徴の一つとする。即ち、ポリビニルアルコール又はその誘導体をマトリックスとして用いることでパラジウム化合物を均一に分散させ、かつ、パラジウム金属に一段階で還元させることができるとともに、この還元されたパラジウム金属粒子に対してマトリックスによる空間的な制限を加えることでパラジウム金属粒子の成長を効率的に抑えることが可能となる。そして更に、この乾燥フィルムを加熱してポリマーマトリックスだけを除去することでナノメートルオーダーのパラジウム金属多孔質粒子を得ることができる。特に、ポリビニルアルコール及びその誘導体は、原子、イオン、分子等に対して強い吸着場を与える上で有効な分散マトリックスであるだけでなく、比較的低温で熱分解を開始し、分解残渣が少なく造膜製にも優れている。なお「ポリビニルアルコール誘導体」とは、 ビニル基モノマー炭素に結合した水素がアルキル基で置換したものをいい、水溶性のものが好ましく、ポリビニルアルコールからなる乾燥フィルムとほぼ同様の効果を示すことができる。
【0007】
また本発明のパラジウム金属多孔質粒子の製造方法において、加熱によりパラジウム化合物が分散吸着した前記乾燥フィルムを消失させる工程は、還元性又は非酸化性の雰囲気で行われることも望ましい。これにより、パラジウム金属表面に金属を残存させ、活性点を炭素で終端させることでパラジウム金属の凝集・焼結を防止することができるとともにパラジウム金属表面が酸化することを防止することができる。
【0008】
また本発明のパラジウム金属多孔質粒子の製造方法において、前記乾燥フィルムにおける前記ポリビニルアルコール又は前記ポリビニルアルコール誘導体は、鹸化度が60%以上、数平均分子量が500以上20000以下であることが望ましい。パラジウム化合物をポリマー側鎖に選択的に取り込むためにはポリビニルアルコール又はその誘導体をフィルム化する必要がある。しかし一方で、ポリマーのフィルム化にはポリビニルアルコールの重合度、鹸化度を高くして溶媒に溶けてしまうことを防止することが重要であるが過度に重合度を高くすると溶媒に対するポリビニルアルコールの分散度が劣り、取扱いも困難になるという問題も生ずる。そのため鹸化度としては60%以上、ポリビニルアルコールの数平均分子量としては500~20000となるように調整することが望ましい。なおより望ましくは鹸化度70%以上、更に望ましくは鹸化度80%以上である。
【0009】
また本発明のパラジウム金属多孔質粒子の製造方法において、パラジウム化合物は乾燥フィルムに分散吸着可能な限りイオン、分子等種々の形態を採用することができるが、有機酸塩又は無機酸塩の形態であることが望ましい。パラジウム化合物を有機酸塩又は無機酸塩とすることで、水溶液とした場合パラジウムイオンとなり、乾燥フィルムに対して均一にパラジウムイオンを分散吸着させることができる。なお、パラジウムイオンはヒドロキシル基に配位結合し、還元されてパラジウム金属となる。パラジウムイオンの効果的な選択結合を実現させる上では、ポリビニルアルコールの側鎖官能基がアルキル基等で置換されておらず、60%以上がヒドロキシル基の側鎖であることが好ましく、より望ましくは70%以上、更に望ましくは80%以上である。また、有機酸塩、無機酸塩の形態としては、乾燥フィルムに対して均一に分散可能な限りにおいて特段に制限はないが、有機酸塩としては例えば酢酸パラジウム、シュウ酸パラジウム等、無機酸塩としては例えば硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、塩化パラジウム等が好適である。
【0010】
また本発明のパラジウム金属多孔質粒子の製造方法において、加熱によりパラジウム化合物が分散吸着した乾燥フィルムを消失させる工程は、 400℃以上900℃以下の範囲内の温度で行うことも望ましい。400℃以上の温度で加熱焼成すると、炭素が残留したパラジウム多孔質体が得られる。また一方で、900℃を超えると凝集・焼結が起こるため、900度以下であることが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0012】
本実施形態に係るパラジウム金属多孔質粒子は、ポリビニルアルコール又はその誘導体からなる乾燥フィルムにパラジウム化合物を分散吸着させる工程、加熱によりパラジウム化合物が分散吸着した乾燥フィルムを消失させる工程、を少なくとも有している。
【0013】
ポリビニルアルコールまたはその誘導体からなる乾燥フィルムは、パラジウム化合物を分散吸着させるためのマトリックスとして使用される。ポリビニルアルコール又はその誘導体からなる乾燥フィルムは様々な方法により作成することができるが、一般的にはガラス等からなる基板上にポリビニルアルコール又はその誘導体の溶液を展開し、室温乾燥することで造膜するいわゆるキャスト法で作成することができる。この方法により得られるポリビニルアルコール又はその誘導体からなる乾燥フィルムには多数のミクロ孔、メソ孔が形成されているため分子吸着能が強化されている。なお、この造膜に際し、ポリマー分子間の相互作用に起因するゲル化を防止すべく、ヒドロキシル基の保護剤としてリン酸水素アンモニウム等を必要に応じ添加することは有用である。
【0014】
またここで乾燥フィルムが含有するポリビニルアルコールの誘導体としては水溶性であることが好ましく、例えばポリジヒドロキシエチレンやポリヒドロキシプロピレンが採用可能である。
【0015】
なおここで用いられる乾燥フィルムは、パラジウム化合物を分散吸着させるに先立ち洗浄、乾燥させておくことが好ましい。
【0016】
ポリビニルアルコール又はその誘導体からなる乾燥フィルムにパラジウム化合物を分散吸着させる工程としては種々採用することができるが、パラジウムの有機酸塩又は無機酸塩を含有する溶液を乾燥フィルムに含浸させる態様がパラジウム化合物を均一に分散させる上で好適である。有機酸塩としては例えば酢酸パラジウム、シュウ酸パラジウム等の有機酸塩が挙げられ、無機酸塩としては硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、塩化パラジウム等が挙げられる。パラジウムの有機酸塩又は無機酸塩を含有する溶液を乾燥フィルムに含浸させると、ポリマー側鎖にあるヒドロキシル基がパラジウムイオンを還元させ金属とすることができ、この還元された金属はマトリックスによる空間的な制限を受けるため、金属粒子としての成長が効率的に抑えられる。なお乾燥フィルムにパラジウム化合物を分散させる他の方法としてはポリビニルアルコール又はその誘導体からなる乾燥フィルムを透過してパラジウム化合物を含有する溶液を流動させる方法等(いわゆる液相法)がある。
【0017】
加熱によりパラジウム化合物が分散吸着した乾燥フィルムを消失させる工程は、加熱することができる限りにおいて種々の工程を採用することができるが、乾燥フィルムを消失させる際に生ずる炭化物が還元作用を呈するため、還元性又は非酸化性の雰囲気中で行うことが好適である。還元性雰囲気としては例えば水素含有ガス等が挙げられ、非酸化性のガスとしては窒素ガス、不活性ガス等が挙げられる。
【0018】
パラジウム化合物が分散吸着した乾燥フィルムのうちポリビニルアルコール又はその誘導体に由来するポリマー成分が熱分解によって消失すると、その消失箇所が微細孔になる。このとき、高度に分散されたパラジウム化合物が吸着しているポリマーフィルムを還元性又は非酸化性雰囲気下で焼成すると、パラジウム金属やパラジウムイオンが凝集・焼結することなく、ポリマーの痕跡を微細孔として確保したナノ構造を有するパラジウム金属多孔質粒子が出現する。またナノメートルオーダーの粒子状の金属は一般的に酸化されやすいが、金属表面の活性点がポリビニルアルコールの熱分解で生成した炭素で終端するため、得られるパラジウム金属多孔質粒子の耐酸化性が極めて高くなると期待できる。金属表面の活性点が炭素で終端していることは、還元反応で生じたパラジウム金属の凝集・焼結が抑制される原因の一つとも推察される。なおここで「ナノメートルオーダー」とは、概ね1nm~20nm程度であることをいう。
【0019】
以上により、焼成時におけるパラジウム金属粒子相互の凝集・焼結を抑え、ナノメートルオーダーの微細孔が形成されたパラジウム金属多孔質粒子をより高効率に得ることができる。
【実施例】
【0020】
本実施形態のより具体的な例について、以下説明する。なお図1は本実施例に係るパラジウム金属多孔質粒子の製造方法の概略を示す図である。
【0021】
ポリビニルアルコールに10質量%の割合でリン酸水素アンモニウムを混合し、蒸留水に溶解することにより濃度10質量%のポリビニルアルコール水溶液を用意した。その後このポリビニルアルコール水溶液60mlをガラス基板上に滴下し、室温で1週間静置させて乾燥することにより、膜厚1mmのポリビニルアルコールフィルムを作製した。
【0022】
次に、ポリビニルアルコールフィルムを1N-NaOH水溶液に24時間浸漬した後洗浄し、濃度10質量%の硝酸パラジウム飽和水溶液に浸し、24時間超音波をかけてパラジウムイオンとしてポリマー中に固定した。その後蒸留水で洗浄し、室温で乾燥させた。この結果得られたフィルムは剛直性の黒色のフィルムであった。これは、ポリビニルアルコールの側鎖にあるヒドロキシル基がパラジウムイオンによって酸化され、カルボニル基に変化した一方で、酸化反応に共役してパラジウムイオンが金属パラジウムとなり、ナノ粒子を生成し、ポリマーマトリックス内に留まったためと考えられる。
【0023】
その後、このフィルムを1cm角の片に切断して石英管に挿入し、流量50cc/mlの窒素ガスを石英管に送り込みながら500℃で6時間加熱焼成し、薄片状粉体を得た。
【0024】
焼成後の薄片状粉体について粉末X線回折測定を行い、結晶構造と結晶性を評価した。その測定結果を市販のパラジウム黒のものとともに図2に示す。
【0025】
本実施例により得られた薄片状粉体のX線回折パターンは金属パラジウム特有の位置にピークを示し、その他の特徴的なピークはないことから、結晶性の物質として金属パラジウムのみが存在すると考えられる。また、本実施例により得られた薄片状粉体の回折ピークは、市販のパラジウム黒のピークよりも幅広で、その回折角の値と半値幅からシェラーの式を用いて一次粒子の直径を計算すると10nmの値が得られ、非常に微細な粒子が生成したことを示唆する。これに対し市販のパラジウム黒は40nm以上の直径であった。
【0026】
次に、電界放出型走査電子顕微鏡観察も行った。この結果を図3に示す。
【0027】
本実施例より得られたパラジウムナノ粒子は、平均粒径10nm以下の比較的均一な微粒子からなり、試料のどの部分を観察しても同様の微粒子の存在が確認された。これと先のX線回折の結果と考え合わせると、全体としても平均的に10nm以下の金属パラジウム微粒子を得られたと考えることができた。なお、市販のパラジウム黒の粒子径は不均一で、50nmより大きなものも多く見られた。
【0028】
以上、本実施例により均一でナノメートルオーダーのパラジウム金属多孔質粒子を得ることができた。
【0029】
なお、本実施例により得られたパラジウム金属多孔質粒子について元素分析を行った結果、炭素分は27%含まれていること、X線回折に結晶性炭素由来のピークが存在しないことから、アモルファス様炭素が粒子に含まれていることが推定された。このような還元性の炭素がナノメートルオーダーの金属パラジウムの酸化や凝集・焼結を防いでいると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】パラジウム金属多孔質粒子を製造する方法の一例のフローを示す図。
【図2】実施例により得られたパラジウム金属多孔質粒子の粉末X線回折測定の結果を示す図。
【図3】実施例により得られたパラジウム金属多孔質粒子の電界放出型走査電子顕微鏡観察の結果を示す図。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2